特許第6361708号(P6361708)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6361708
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】太陽光発電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/35 20060101AFI20180712BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   H02J7/35 K
   H02J3/38 130
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-163588(P2016-163588)
(22)【出願日】2016年8月24日
(65)【公開番号】特開2018-33227(P2018-33227A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2017年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】松本 剛幸
【審査官】 阿部 陽
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−075902(JP,A)
【文献】 特開2013−138530(JP,A)
【文献】 特開2003−338323(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/084396(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00−7/12;7/34−7/36
H02J 3/00−5/00
H02M 7/42−7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池と、当該太陽電池の出力端子に充放電用のDC/DCコンバータを介して接続され、前記太陽電池によって発電された発電電力が充電される蓄電池と、前記DC/DCコンバータを介して供給される前記蓄電池の放電電力を交流電力に変換して系統に供給するパワーコンディショナとを有する太陽光発電システムであって、
前記蓄電池の充電量と、前記蓄電池から放電可能時間と、前記パワーコンディショナから前記系統に供給されるシステム電力に応じたシステム変換効率を示すシステム変換効率特性とに基づいて、制限電力を決定し、前記システム電力を前記制限電力に制限させるシステム電力制御部を具備し、
前記システム電力制御部は、前記放電可能時間以内で最も前記システム変換効率が高くなる前記システム電力を前記制限電力として決定することを特徴とする太陽光発電システム。
【請求項2】
前記システム電力制御部は、前記システム変換効率が最大となる最大効率電力で前記放電可能時間以内に放電可能な場合、前記最大効率電力を前記制限電力として決定すること
を特徴とする請求項記載の太陽光発電システム。
【請求項3】
前記システム電力制御部は、前記制限電力を電力制限指令として前記DC/DCコンバータに出力することで、前記DC/DCコンバータによって前記パワーコンディショナに供給される前記蓄電池の放電電力を前記制限電力に制限させることを特徴とする請求項1又は2記載の太陽光発電システム。
【請求項4】
前記システム電力制御部は、前記制限電力を電力制限指令として前記パワーコンディショナに出力することで、前記パワーコンディショナで入力電力を前記制限電力に制限させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の太陽光発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池を備えた太陽光発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電池を備えた蓄電池併設の太陽光発電システムでは、例えば、日中に太陽電池で発電した発電電力で蓄電池を充電し、夜間に蓄電池から放電させて系統に供給する。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6に示す従来の太陽光発電システム100は、太陽電池1と、接続箱ダイオード2と、DC/DCコンバータ3と、蓄電池4と、パワーコンディショナ5(以下、PCS5と称す)とで構成されている。太陽電池1の出力端子は、逆電流防止用の接続箱ダイオード2を介してリンク点に接続されている。そして、リンク点は、充放電用のDC/DCコンバータ3を介して蓄電池4に接続されていると共に、PCS5を介して系統6に接続されている。
【0004】
このような太陽光発電システム100において、蓄電池4への充電は、点線矢印Aで示すように、太陽電池1−接続箱ダイオード2−DC/DCコンバータ3−蓄電池4の経路となり、蓄電池4からの放電は、点線矢印Bで示すように、蓄電池4−DC/DCコンバータ3−PCS5−系統6の経路となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−138530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年のPCS5は、太陽電池1から最大の電力を取出すための最大電力追尾制御機能(以下、MPPT制御機能と称す)を備えている。従って、PCS5は蓄電池4からの放電時に、MPPT制御機能により最大電力で動作するため、PCS5は、設定された定格電力で運転を行うことになる。
【0007】
しかしながら、蓄電池4からの放電時において、PCS5以外にDC/DCコンバータ3を経由するため、システム変換効率は、PCS5の定格電力での運転が最大にはならない。従って、蓄電池4からの放電が、システム変換効率が低い状態で行われてしまうため、系統6への逆潮流量(売電量)が低下してしまうと共に、発熱量が多くなり、装置寿命が劣化してしまうという問題点があった。
【0008】
本発明の目的は、従来技術の上記課題を解決し、蓄電池からの放電時のシステム変換効率を向上させることができる太陽光発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の太陽光発電システムは、太陽電池と、当該太陽電池の出力端子に充放電用のDC/DCコンバータを介して接続され、前記太陽電池によって発電された発電電力が充電される蓄電池と、前記DC/DCコンバータを介して供給される前記蓄電池の放電電力を交流電力に変換して系統に供給するパワーコンディショナとを有する太陽光発電システムであって、前記蓄電池の充電量と、前記蓄電池から放電可能時間と、前記パワーコンディショナから前記系統に供給されるシステム電力に応じたシステム変換効率を示すシステム変換効率特性とに基づいて、制限電力を決定し、前記システム電力を前記制限電力に制限させるシステム電力制御部を具備し、前記システム電力制御部は、前記放電可能時間以内で最も前記システム変換効率が高くなる前記システム電力を前記制限電力として決定することを特徴とする。
さらに、本発明の太陽光発電システムにおいて、前記システム電力制御部は、前記システム変換効率が最大となる最大効率電力で前記放電可能時間以内に放電可能な場合、前記最大効率電力を前記制限電力として決定しても良い。
さらに、本発明の太陽光発電システムにおいて、前記システム電力制御部は、前記制限電力を電力制限指令として前記DC/DCコンバータに出力することで、前記DC/DCコンバータによって前記パワーコンディショナに供給される前記蓄電池の放電電力を前記制限電力に制限させても良い。
さらに、本発明の太陽光発電システムにおいて、前記システム電力制御部は、前記制限電力を電力制限指令として前記パワーコンディショナに出力することで、前記パワーコンディショナで入力電力を前記制限電力に制限させても良い
【0010】
本発明によれば、システム変換効率が高くなる制限電力にシステム電力を制限させることで、蓄電池からの放電時のシステム変換効率を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る太陽光発電システムの実施の形態の回路構成を示す回路構成図である。
図2図1に示す蓄電池への充放電動作を説明する説明図である。
図3図1に示すシステム変換効率記憶部に記憶されたシステム変換効率特性例を示す図である。
図4図1に示すシステム電力決定部による制限電力の決定動作を示すフローチャートである。
図5】本発明に係る太陽光発電システムの他の実施の形態の回路構成を示す回路構成図である。
図6】従来の太陽光発電システムの回路構成を示す回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
本実施の形態の太陽光発電システム200は、図1を参照すると、太陽電池1と、接続箱ダイオード2と、DC/DCコンバータ3と、蓄電池4と、PCS5と、システム電力制御部10とを備えている。なお、図1においては、電力ラインは実線で、制御ライン及び情報伝達ラインは点線でそれぞれ示されている。
【0013】
太陽光発電システム200は、図2に示すように、日中に太陽電池1で発電した発電電力を充電電力として蓄電池4を充電し、太陽電池1で発電が行われない夜間等の期間に蓄電池4から放電した放電電力を系統6に供給する。
【0014】
太陽電池1の出力端子は、逆電流防止用の接続箱ダイオード2を介してリンク点に接続されている。そして、リンク点は、充放電用のDC/DCコンバータ3を介して蓄電池4に接続されていると共に、PCS5を介して系統6に接続されている。
【0015】
システム電力制御部10は、CPU、ROM、RAM等を備えたマイクロコンピュータ等の情報処理部である。システム電力制御部10のCPUは、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出し、制御プログラムをRAMに展開させる。これにより、システム電力制御部10は、放電容量算出部11と、放電時刻設定部12と、システム変換効率記憶部13と、システム電力決定部14と、電力制限指令出力部15として機能し、蓄電池4からの放電時に、太陽光発電システム200から系統6に逆潮流する電力(以下、システム電力と称す)を制御する。
【0016】
蓄電池4は、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、鉛蓄電池などの化学反応を利用した二次電池や、電気二重層キャパシタで構成され、充電量を検出する充電量検出器を備えている。この充電量検出器は、蓄電池4の出力電圧の計測や、積算充電量の計測によって充電量を検出し、検出した充電量をシステム電力制御部10に出力する。
【0017】
放電容量算出部11は、蓄電池4から入力された充電量に基づいて、蓄電池4から放電可能な放電容量を算出し、算出した放電容量をシステム電力決定部14に出力する。放電容量算出部11には、蓄電池4の容量(X[Wh])と放電を終了させる下限充電量(A%)が予め設定されている。そして、放電容量算出部11は、蓄電池4から充電量(B%)が入力されると、X(B−A)/100を計算することで、放電可能な放電容量(Y[Wh])を算出する。
【0018】
放電時刻設定部12は、蓄電池4からの放電を開始する放電開始時刻tと、放電開始時刻tから放電可能時間(H[h])とを設定する。放電開始時刻tから始まる放電可能時間Hは、図2に示すように、太陽電池1によって発電が行われない夜間等の期間に設定される。なお、放電開始時刻tは、ユーザーによる外部入力等によって予め設定しておいても良く、太陽電池1が停止中であることを発電電圧の検出や太陽光の検出によって検出し、太陽電池1が停止中であることを検出した時刻に基づいて設定するようにしても良い。また、放電可能時間Hは、ユーザーによる外部入力等によって予め設定しておいても良く、放電開始時刻tからユーザーによる外部入力等によって予め設定した放電終了時刻tまでの時間を設定するようにしても良い。
【0019】
システム変換効率記憶部13は、半導体メモリ等の記憶手段であり、図3に示すような、システム電力に応じたシステム変換効率を示すシステム変換効率特性が記憶されている。システム変換効率特性には、システム変換効率が最大となるシステム電力(以下、最大効率電力(E[W])と称す)以上、PCS5の定格電力(E[W])以下のシステム電力に応じたシステム変換効率が示されている。
【0020】
システム電力決定部14は、放電容量算出部11によって算出された放電容量Yと、放電時刻設定部12によって設定された放電可能時間Hと、システム変換効率記憶部13に記憶されているシステム変換効率特性とに基づいて、蓄電池4からの放電時の制限電力(E[W])を決定する。
【0021】
電力制限指令出力部15は、システム電力決定部14によって決定された制限電力Eを、電力制限指令としてDC/DCコンバータ3に出力し、DC/DCコンバータ3からPCS5に供給される放電電力をシステム電力決定部14によって決定された制限電力Eに制限させる。
【0022】
次に、システム電力決定部14による制限電力Eの決定動作について図4を参照して詳細に説明する。
放電開始時刻tに到達すると、放電容量算出部11は、蓄電池4から充電量を取得することで、蓄電池4から放電可能な放電容量Yを算出する(ステップA1)。
【0023】
次に、システム電力決定部14は、最大効率電力Eに放電可能時間Hを乗じた値(E×H)が放電容量Y以下か否かを判断する(ステップA2)。
【0024】
ステップA2で(E×H)が放電容量Y以上である場合、システム電力決定部14は、制限電力Eを最大効率電力Eに決定する(ステップA3)。そして、電力制限指令出力部15は、決定された制限電力Eを電力制限指令としてDC/DCコンバータ3に出力する(ステップA4)。
【0025】
制限電力Eが最大効率電力Eである場合、蓄電池4からの放電は、図2(a)に示すように、放電電力が最大効率電力Eに制限された状態で、放電開始時刻tから始まる放電可能時間H内に行われる。従って、太陽光発電システム200は、最大のシステム変換効率で動作することになり、蓄電池4からの放電時のシステム変換効率を向上させることができる。
【0026】
ステップA2で(E×H)が放電容量Y以上でない場合、システム電力決定部14は、放電容量Yを放電可能時間Hで除算した値(Y/H[W])を算出する(ステップA5)。
【0027】
次に、システム電力決定部14は、ステップA5で算出した値(Y/H)〜定格電力Eにおいて、最もシステム変換効率が高いシステム電力を制限電力Eとして決定し(ステップA6)、ステップA4に至る。なお、図3に示すように、システム変換効率が最大効率電力Eから定格電力Eに向けて逓減する特性を有する場合には、ステップA6では、ステップA5で算出した値(Y/H)が制限電力Eとして決定されることになる。
【0028】
これにより、蓄電池4からの放電は、図2(b)に示すように、放電電力が制限電力Eに制限された状態で、放電開始時刻tから始まる放電可能時間H内に行われる。この制限電力Eは、蓄電池4からの放電を放電開始時刻tから始まる放電可能時間H内に終了させることを条件とした中で、最もシステム変換効率が高いシステム電力となる。従って、太陽光発電システム200は、可能な限り高いシステム変換効率で動作することになり、蓄電池4からの放電時のシステム変換効率を向上させることができる。なお、図2(b)には、放電電力がステップA5で算出した値(Y/H)に制限された状態が示されている。
【0029】
なお、本実施の形態では、電力制限指令出力部15からDC/DCコンバータ3に電力制限指令を出力し、DC/DCコンバータ3からPCS5に供給される放電電力を制限電力Eに制限させるように構成したが、図5に示す太陽光発電システム300のように、システム電力制御部10の電力制限指令出力部15からPCS5に電力制限指令を出力し、PCS5で入力電力を制限電力Eに制限させるように構成しても良い。
【0030】
以上のように、本実施の形態によれば、太陽電池1と、太陽電池1の出力端子に充放電用のDC/DCコンバータ3を介して接続され、太陽電池1によって発電された発電電力が充電される蓄電池4と、DC/DCコンバータ3を介して供給される蓄電池4の放電電力を交流電力に変換して系統6に供給するPCS5とを有する太陽光発電システムであって、蓄電池4の充電量と、蓄電池4から放電可能時間Hと、PCS5から系統6に供給されるシステム電力に応じたシステム変換効率を示すシステム変換効率特性とに基づいて、制限電力Eを決定し、システム電力を制限電力Eに制限させるシステム電力制御部10を備えている。
この構成により、システム変換効率が高くなる制限電力Eにシステム電力を制限させることで、蓄電池4からの放電時のシステム変換効率を向上させることができる。そして、システム変換効率の向上により、系統6への逆潮流量(売電量)を増やすことができると共に、発熱量を減少させ、装置寿命が延ばすことが可能になる。
【0031】
さらに、本実施の形態によれば、システム電力制御部10は、制限電力Eを電力制限指令としてDC/DCコンバータ3に出力することで、DC/DCコンバータ3によってPCS5に供給される蓄電池4の放電電力を制限電力Eに制限させる。
この構成により、既存のPCS5を制御することなく、蓄電池4からの放電時のシステム変換効率を向上させることができる。
【0032】
さらに、本実施の形態によれば、システム電力制御部10は、制限電力Eを電力制限指令としてPCS5に出力することで、PCS5で入力電力を制限電力Eに制限させる。
この構成により、既存のDC/DCコンバータ3を制御することなく、蓄電池4からの放電時のシステム変換効率を向上させることができる。
【0033】
さらに、本実施の形態によれば、システム電力制御部10は、放電可能時間H以内で最もシステム変換効率が高くなるシステム電力を制限電力Eとして決定する。
この構成により、太陽光発電システム200は、可能な限り高いシステム変換効率で動作することになり、蓄電池4からの放電時のシステム変換効率を向上させることができる。
【0034】
さらに、本実施の形態によれば、システム電力制御部10は、システム変換効率が最大となる最大効率電力Eで放電可能時間H以内に放電可能な場合、最大効率電力Eを制限電力Eとして決定する。
この構成により、太陽光発電システム200は、最大のシステム変換効率で動作することになり、蓄電池4からの放電時のシステム変換効率をさらに向上させることができる。
【0035】
以上、本発明を具体的な実施形態で説明したが、上記実施形態は一例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更して実施できることは言うまでも無い。
【符号の説明】
【0036】
1 太陽電池
2 接続箱ダイオード
3 DC/DCコンバータ
4 蓄電池
5 パワーコンディショナ(PCS)
6 系統
10 システム電力制御部
11 放電容量算出部
12 放電時刻設定部
13 システム変換効率記憶部
14 システム電力決定部
15 電力制限指令出力部
100、200、300 太陽光発電システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6