特許第6361721号(P6361721)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイキン工業株式会社の特許一覧

特許6361721洗浄剤組成物及び洗浄方法、並びに溶剤組成物、油類のための溶剤としてのその使用、及びそれを含む油類組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6361721
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】洗浄剤組成物及び洗浄方法、並びに溶剤組成物、油類のための溶剤としてのその使用、及びそれを含む油類組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 7/30 20060101AFI20180712BHJP
   C11D 7/50 20060101ALI20180712BHJP
   C23G 5/028 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   C11D7/30ZAB
   C11D7/50
   C23G5/028
【請求項の数】11
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-220620(P2016-220620)
(22)【出願日】2016年11月11日
(65)【公開番号】特開2018-76465(P2018-76465A)
(43)【公開日】2018年5月17日
【審査請求日】2017年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加留部 大輔
【審査官】 吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/035765(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/080283(WO,A1)
【文献】 特表2011−510119(JP,A)
【文献】 米国特許第02742428(US,A)
【文献】 国際公開第2014/144558(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/161723(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D
C23G
C10M
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,1,3−トリクロロ−2,3,3−トリフルオロプロペン(CFO−1213ya)を含む、溶剤組成物又は洗浄剤組成物。
【請求項2】
さらに他の溶剤を含む、請求項1に記載の溶剤組成物又は洗浄剤組成物。
【請求項3】
他の前記溶剤として、1,1,2−トリクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(CFO−1213xa)を含む、請求項2に記載の溶剤組成物又は洗浄剤組成物。
【請求項4】
他の前記溶剤として、CFO−1213xa、1,2−ジクロロエチレン及びイソプロパノールからなる群より選択される少なくとも一種の溶剤を含む、請求項に記載の溶剤組成物又は洗浄剤組成物。
【請求項5】
油類のための溶剤又は洗浄剤として用いられる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の溶剤組成物又は洗浄剤組成物。
【請求項6】
前記油類が、潤滑油である、請求項5に記載の溶剤組成物。
【請求項7】
前記潤滑油が、シリコーンオイル、フッ素オイルや鉱物系オイル、グリース及びワックスからなる群より選択される少なくとも一種の潤滑油である、請求項6に記載の溶剤組成物。
【請求項8】
油類、及び
請求項1〜4のいずれか一項に記載の溶剤組成物
を含む、油類組成物。
【請求項9】
前記油類が、潤滑油である、請求項8に記載の油類組成物。
【請求項10】
前記潤滑油が、シリコーンオイル、フッ素オイルや鉱物系オイル、グリース及びワックスからなる群より選択される少なくとも一種である、請求項9に記載の油類組成物。
【請求項11】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の洗浄剤組成物を被処理面に適用する工程を含む、洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄剤組成物及び洗浄方法、並びに溶剤組成物、油類のための溶剤としてのその使用、及びそれを含む油類組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンオイル、フッ素系オイルや鉱物系オイル、グリース及びワックスなどの潤滑油を含め、様々な油類が諸用途のため使用されている。これら油類は、潤滑を必要とする基材面もしくは機械部品面に単独で適用することができるが、所定の必要性あるいは目的に鑑みて溶剤に溶解した上で使用されることも多い。例えば、粘度などを調整する必要がある場合や、被適用面に油類の潤滑膜を形成させる目的に使用される場合等が挙げられる。
【0003】
また、これらの溶剤と同様の組成を有し、様々な油類を溶解させて洗浄するために用いられるものは特に洗浄剤、洗浄用溶剤などとも呼ばれる。
【0004】
溶剤あるいは洗浄剤としては、不燃性であることが要求されることがある。不燃性の溶剤としては、従来、商品名「アサヒクリン AK−225」、「ゼオローラH」及び「ノベック」等に代表される、低毒性のフッ素系溶剤が用いられている。
【0005】
しかし、これらの不燃性及び低毒性を利点とする従来のフッ素系溶剤ないし洗浄剤においては、オゾン層破壊のおそれや、地球温暖化に寄与するおそれ等の、環境破壊の面での問題があることが指摘されている。また、これらの状況に鑑みて環境配慮型溶剤として各種ハイドロフルオロオレフィンや1,2−ジクロロエチレンといった製品が開発されており、例えばクロロフルオロオレフィン(沸点46℃)(特許文献1)、ハイドロクロロフルオロオレフィン(沸点53℃)(特許文献2)、1,2−ジクロロエチレン(沸点48℃)及びそれと前述のハイドロフルオロオレフィンとの混合物、環状ハイドロフルオロカーボン(沸点83℃)(特許文献3)等が挙げられる。
【0006】
しかし、一方で、これらの環境配慮型溶剤には、溶解性が低い、溶剤自体が燃焼性を示す、溶剤自体の燃焼性を低減するために不燃性の第二の溶剤を混合させる場合に、当該混合溶剤が共沸となるよう組成比を調整する必要がある、沸点が適していない、及び地球温暖化係数の低減が十分でない、といった諸課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−224383号公報
【特許文献2】特開2016−98334号公報
【特許文献3】特開2001−354985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、溶解性といった溶剤又は洗浄剤としての基本的特性に優れ、かつ沸点、燃焼性、毒性、GWP及びODPが、いずれも好ましい範囲内にある溶剤及び洗浄剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、一般式:CXCX=CX(式中、Xは、同一又は異なって、F又はClであり、少なくとも1つのXはFであり、かつ少なくとも3つのXはClである)を有するハイドロクロロプロペンであって、大気圧沸点が50℃以上であるハイドロクロロフルオロプロペンを含む、溶剤組成物又は洗浄剤組成物によって、上記課題を解決できることを見出した。
【0010】
本発明は、上記の知見に基づき、さらなる試行錯誤を経て完成されたものであり、下記の態様を含む。
【0011】
項1.
一般式:CXCX=CX(式中、Xは、同一又は異なって、F又はClであり、少なくとも1つのXはFであり、かつ少なくとも3つのXはClである)を有するハイドロクロロフルオロプロペンであって、大気圧沸点が50℃以上であるハイドロクロロフルオロプロペンを含む、溶剤組成物又は洗浄剤組成物。
項2.
前記ハイドロクロロフルオロプロペンとして、1,1,2−トリクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(CFO−1213xa)及び/又は1,1,3−トリクロロ−2,3,3−トリフルオロプロペン(CFO−1213ya)を含む、項1に記載の溶剤組成物又は洗浄剤組成物。
項3.
さらに他の溶剤を含む、項1又は2に記載の溶剤組成物又は洗浄剤組成物。
項4.
他の前記溶剤として、1,2−ジクロロエチレン及び/又はイソプロパノールを含む、項1〜3のいずれか一項に記載の溶剤組成物又は洗浄剤組成物。
項5.
油類のための溶剤又は洗浄剤として用いられる、項1〜4のいずれか一項に記載の溶剤組成物又は洗浄剤組成物。
項6.
前記油類が、潤滑油である、項5に記載の溶剤組成物。
項7.
前記潤滑油が、シリコーン系、フッ素系オイル、鉱物油系オイル、グリース及びワックスからなる群より選択される少なくとも一種の潤滑油である、項6に記載の溶剤組成物。
項8.
油類、及び
項1〜4のいずれか一項に記載の溶剤組成物を含む、油類組成物。
項9.
前記油類が、潤滑油である、項8に記載の油類組成物。
項10.
前記潤滑油が、シリコーン系、フッ素系オイル、鉱物油系オイル、グリース及びワックスからなる群より選択される少なくとも一種である、項9に記載の油類組成物。
項11.
項1〜4のいずれか一項に記載の洗浄剤組成物を被処理面に適用する工程を含む、洗浄方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、溶解性といった溶剤又は洗浄剤としての基本的特性に優れ、かつ沸点、燃焼性、毒性、GWP及びODPが、いずれも好ましい範囲内にある溶剤又は洗浄剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1. 溶剤組成物又は洗浄剤組成物
1.1. ハイドロクロロフルオロプロペン
本発明では、一般式:CXCX=CX(式中、Xは、同一又は異なって、F又はClであり、少なくとも1つのXはFであり、かつ少なくとも3つのXはClである)を有するハイドロクロロフルオロプロペンであって、大気圧沸点が50℃以上であるハイドロクロロフルオロプロペンを使用する。
【0014】
本発明者の検討によって、上記一般式を有するハイドロクロロフルオロプロペンは、溶解性といった溶剤又は洗浄剤としての基本的特性に優れ、かつ燃焼性、毒性、GWP及びODPが、いずれも好ましい範囲内にある溶剤成分又は洗浄剤成分として適していることが見出された。また、これらのハイドロクロロフルオロプロペンは、多くの場合、大気圧沸点が50℃以上となり、沸点の点においても溶剤成分又は洗浄剤成分として使用する上で好ましい。大気圧沸点が50℃以上となる前記ハイドロクロロフルオロプロペンの例として、1,1,2−トリクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(CFO−1213xa)及び1,1,3−トリクロロ−2,3,3−トリフルオロプロペン(CFO−1213ya)等が挙げられる。CFO−1213xaの大気圧沸点は、88℃であり、CFO−1213yaの大気圧沸点は、87℃である。
【0015】
1.2. その他の溶剤
本発明の溶剤組成物又は洗浄剤組成物は、さらに、その他の溶剤を含んでいてもよい。その他の溶剤は、対象物の溶解性をさらに向上させるため等の目的で配合される。
【0016】
その他の溶剤としては、特に限定されず、幅広く使用することができる。例えば、1,2−ジクロロエチレン及びイソプロパノール等が挙げられる。本発明の溶剤組成物又は洗浄剤組成物は、溶剤の総量に対して、その他の溶剤を1〜90重量%、好ましくは5〜50重量%含有する。
【0017】
1.3. その他の成分
本発明の溶剤組成物又は洗浄剤組成物は、さらに、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分として、本発明の溶剤組成物及び洗浄剤組成物は、共通して、例えば、酸化防止剤、安定剤、防腐剤及び界面活性剤等が挙げられる。本発明の溶剤組成物又は洗浄剤組成物は、その他の成分として、上記群から選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。
【0018】
本発明の溶剤組成物は、上記とは異なるものとして、さらに、潤滑性能を向上させるための潤滑剤及び分散剤からなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。
【0019】
本発明の洗浄剤組成物は、上記とは異なるものとして、さらに、界面活性剤等を含んでいてもよい。
【0020】
本発明の溶剤組成物又は洗浄剤組成物は、前記ハイドロクロロフルオロプロペンを、総量で、組成物全体を基準として、1〜100重量%含む。対象物を溶解させる性能の点、及び/又は組成物全体としての燃焼性を低減する点で、前記ハイドロクロロフルオロプロペンを、総量で、組成物全体を基準として、5〜100重量%含むことが好ましく、50〜100重量%含むことがより好ましい。
【0021】
1.4. 用途
本発明の溶剤組成物又は洗浄剤組成物は、特に限定されず、幅広い用途のために使用できる。例えば、油類のための溶剤又は洗浄剤として用いられる。
【0022】
油類としては、特に限定されず、幅広い油類のために使用できる。特に溶剤組成物の用途として、例えば、潤滑油の溶剤として有効に使用できる。
【0023】
潤滑油は、特に限定されず、幅広い潤滑油のために使用できる。潤滑油としては、例えば、シリコーン系、フッ素系オイル、鉱物油系オイル、グリース及びワックス等が挙げられる。本発明の溶剤組成物は、これらの一種の潤滑油のために用いられるものであってもよいし、複数種の潤滑油の組合せのために用いられるものであってもよい。
【0024】
洗浄剤組成物の具体的用途としては、油類に特に限定されず、幅広い汚染物質を洗浄対象とすることができる。例えば、フォトレジスト、はんだフラックス、樹脂加工くず、離型剤、加工油、ほこり、インク及び染料等が挙げられる。また、油類を対象とする洗浄方法においても幅広く使用することができ、例えば、精密機械部品、自動車部品、IC、プリント基板、液晶表示器及び磁気記録器等の電子部品、並びに光学レンズ及び光学センサー等の光学部品の洗浄;樹脂加工品及び金属成型品等の製造工程、組立工程及び仕上げ工程等における洗浄、並びに加工用金型等の洗浄等が挙げられる。
【0025】
2. 油類組成物
本発明の油類組成物は、油類、及び上記溶剤組成物を含む。
【0026】
油類については、溶剤組成物において説明したのと同様の説明が該当する。
【0027】
本発明の油類組成物は、特に限定されず、油類の種類、用途等にもよるが、通常、油類を、組成物全体を基準として、1〜50重量%含んでいてもよい。
【0028】
本発明の油類組成物は、特に限定されず、幅広い用途に使用できる。例えば、基材面又は機械部品面を潤滑させる用途で用いられる。その際、油類組成物がそのまま潤滑作用を発揮するような態様で、潤滑を必要とする基材面もしくは機械部品面に油類組成物を適用することができる。あるいは、それらの表面に油類組成物からなる潤滑膜を形成させることもできる。
【0029】
3. 洗浄方法
本発明の洗浄方法は、本発明の洗浄剤組成物を被処理面に適用する工程を含む。
被処理面としては、特に限定されず、幅広く選択することができる。被処理面を有する物品は特に限定されない。ある物品の全体を被処理面としてもよいし、少なくとも一箇所の部分を被処理面とすることもできる。
【0030】
洗浄方法の具体例としては、例えば、IC、プリント基板、液晶表示器及び磁気記録器等の電子部品の製造工程;光学レンズ及び光学センサー等の光学部品の製造工程におけるはんだフラックス、並びにほこり及びフォトレジスト等の洗浄;並びに精密機械部品、自動車部品、樹脂加工品及び金属成型品等の製造工程における離型剤及び加工油等の洗浄等が挙げられる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0032】
<実施例1>
25℃において、粘度が約1.0万cPの50gのシリコーンオイルと、100gのCFO−1213yaとを混合したところ、二成分が互いに相溶し、均一溶液を得ることができる。CFO−1213yaのGWPは10以下となる。また、セタ密閉式引火点測定を実施するところによると、CFO−1213yaには引火点はなく不燃性である。
【0033】
<実施例2>
25℃において、粘度が約1.0万cPの100gのシリコーンオイルと、85gのCFO−1213yaと、15gの1,2−ジクロロエチレンとを混合したところ、三成分が互いに相溶し、均一溶液を得ることができる。
【0034】
<実施例3>
25℃において、粘度が約1.5万cPの3gのフッ素重合体オイルと、100gのCFO−1213yaとを混合したところ、二成分が互いに相溶し、均一溶液を得ることができる。
【0035】
<比較例1>
25℃において、粘度が約1.5万cPの3gのフッ素系オイルと、100gの1,2−ジクロロエチレンとを混合したところ、二成分は互いに相溶せず分離する。