(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1時刻における前記動作体の前記位置状態は、前記演算処理部により算出される前記動作体の前記位置状態のうちの最新時刻における前記位置状態であることを特徴とする請求項1に記載の位置予測装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る回転角度検出装置の概略構成を示す斜視図であり、
図2は、本実施形態に係る回転角度検出装置の概略構成を示す側面図であり、
図3は、本実施形態における磁気検出装置の概略構成を示すブロック図であり、
図4は、本実施形態における検出部の回路構成を概略的に示す回路図であり、
図5は、本実施形態における磁気検出素子としてのMR素子の概略構成を示す斜視図である。
【0020】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る回転角度検出装置1は、磁石2と、磁石2に対向して配置される磁気検出装置3とを備える。磁石2は、回転軸Cを中心として連続的に回転する軸部11(例えばサーボモータ等のモータ軸等)の軸方向の一端部に固定されており、軸部11の回転に連動して、回転軸Cを中心として回転する。
【0021】
磁石2は、回転軸Cに直交する端面21と、回転軸Cを含む仮想平面を中心として対称に配置されたN極22及びS極23とを有し、回転軸Cに直交する方向(S極23からN極22に向かう方向であって、N極22とS極23との境界に直交する方向)に磁化されている。磁石2は、それが有する磁化に基づいて磁界を発生する。
【0022】
磁気検出装置3は、磁石2の端面21に対向するように配置されており、磁石2による磁界を検出する。本実施形態に係る回転角度検出装置1は、磁気検出装置3の出力に基づいて磁石2の回転角度、すなわち回転移動する軸部11の回転角度を検出することができる。
【0023】
図3に示すように、磁気検出装置3は、検出部31、A/D(アナログ−デジタル)変換部32、演算処理部33、シミュレート部34、推定部35及び予測部36を有する。検出部31は、磁石2(
図1、
図2参照)の磁界を検出する。A/D変換部32は、検出部31から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する。演算処理部33は、A/D変換部32によりデジタル変換されたデジタル信号を演算処理し、回転角度θを算出する。シミュレート部34は、推定部35により推定された回転角度θ
E、角速度ω
E及び角速度α
Eに基づいて、所定のサンプリング時刻における回転角度θ
Sをシミュレートする。推定部35は、シミュレート部34によりシミュレートされた回転角度θ
Sと、演算処理部33により算出された回転角度θのうちの最新の回転角度θとに基づいて、所定のサンプリング時刻における回転角度θ
E、角速度ω
E及び角加速度α
Eを推定する。予測部36は、推定部35による推定結果(回転角度θ
E、角速度ω
E及び角加速度α
E)に基づいて、現在サンプリング時刻における回転角度θ
Pを予測する。本実施形態においては、少なくとも演算処理部33、シミュレート部34、推定部35及び予測部36により、連続的に作動する動作体(例えば連続的に回転するサーボモータのモータ軸等)の位置(回転位置)を予測可能な位置予測装置が構成される。
【0024】
図4に示すように、検出部31は、第1の検出部31A及び第2の検出部31Bを含み、第1及び第2の検出部31A,31Bのそれぞれは、少なくとも1つの磁気検出素子を含む。検出部31は、所定のサンプリング周期(1サンプリング周期は、例えば50〜100μsec程度)で、磁石2の磁界の方向が所定の方向に対するなす角度(回転角度)に関する検出信号(アナログ信号)を生成し、出力する。
【0025】
第1及び第2の検出部31A,31Bのそれぞれは、少なくとも1つの磁気検出素子として、直列に接続された一対の磁気検出素子を含んでいてもよい。この場合において、第1及び第2の検出部31A,31Bのそれぞれは、直列に接続された第1の一対の磁気検出素子と、直列に接続された第2の一対の磁気検出素子とを含むホイートストンブリッジ回路を有する。
【0026】
第1の検出部31Aが有するホイートストンブリッジ回路311は、電源ポートV1と、グランドポートG1と、2つの出力ポートE11,E12と、直列に接続された第1の一対の磁気検出素子R11,R12と、直列に接続された第2の一対の磁気検出素子R13,R14とを含む。磁気検出素子R11,R13の各一端は、電源ポートV1に接続されている。磁気検出素子R11の他端は、磁気検出素子R12の一端と出力ポートE11とに接続されている。磁気検出素子R13の他端は、磁気検出素子R14の一端と出力ポートE12とに接続されている。磁気検出素子R12,R14の各他端は、グランドポートG1に接続されている。電源ポートV1には、所定の大きさの電源電圧が印加され、グランドポートG1はグランドに接続される。
【0027】
第2の検出部31Bが有するホイートストンブリッジ回路312は、第1の検出部31Aのホイートストンブリッジ回路311と同様の構成を有し、電源ポートV2と、グランドポートG2と、2つの出力ポートE21,E22と、直列に接続された第1の一対の磁気検出素子R21,R22と、直列に接続された第2の一対の磁気検出素子R23,R24とを含む。磁気検出素子R21,R23の各一端は、電源ポートV2に接続されている。磁気検出素子R21の他端は、磁気検出素子R22の一端と出力ポートE21とに接続されている。磁気検出素子R23の他端は、磁気検出素子R24の一端と出力ポートE22とに接続されている。磁気検出素子R22,R24の各他端は、グランドポートG2に接続されている。電源ポートV2には、所定の大きさの電源電圧が印加され、グランドポートG2はグランドに接続される。
【0028】
本実施形態において、ホイートストンブリッジ回路311,312に含まれるすべての磁気検出素子R11〜R14,R21〜R24として、TMR素子、GMR素子等のMR素子を用いることができ、特にTMR素子を用いるのが好ましい。TMR素子、GMR素子は、磁化方向が固定された磁化固定層と、印加される磁界の方向に応じて磁化方向が変化する自由層と、磁化固定層及び自由層の間に配置される非磁性層とを有する。
【0029】
具体的には、
図5に示すように、MR素子は、複数の下部電極41と、複数のMR膜50と、複数の上部電極42とを有する。複数の下部電極41は、基板(図示せず)上に設けられている。各下部電極41は細長い形状を有する。下部電極41の長手方向に隣接する2つの下部電極41の間には、間隙が形成されている。下部電極41の上面における、長手方向の両端近傍にそれぞれMR膜50が設けられている。MR膜50は、下部電極41側から順に積層された自由層51、非磁性層52、磁化固定層53及び反強磁性層54を含む。自由層51は、下部電極41に電気的に接続されている。反強磁性層54は、反強磁性材料により構成され、磁化固定層53との間で交換結合を生じさせることで、磁化固定層53の磁化の方向を固定する役割を果たす。複数の上部電極42は、複数のMR膜50上に設けられている。各上部電極42は細長い形状を有し、下部電極41の長手方向に隣接する2つの下部電極41上に配置され、隣接する2つのMR膜50の反強磁性層54同士を電気的に接続する。なお、MR膜50は、上部電極42側から順に自由層51、非磁性層52、磁化固定層53及び反強磁性層54が積層されてなる構成を有していてもよい。また、磁化固定層53を、強磁性層/非磁性中間層/強磁性層の積層フェリ構造とし、両強磁性層を反強磁性的に結合させてなる、いわゆるセルフピン止め型の固定層(Synthetic Ferri Pinned層,SFP層)とすることで、反強磁性層54が省略されていてもよい。
【0030】
TMR素子においては、非磁性層52はトンネルバリア層である。GMR素子においては、非磁性層52は非磁性導電層である。TMR素子、GMR素子において、自由層51の磁化の方向が磁化固定層53の磁化の方向に対してなす角度に応じて抵抗値が変化し、この角度が0°(互いの磁化方向が平行)のときに抵抗値が最小となり、180°(互いの磁化方向が反平行)のときに抵抗値が最大となる。
【0031】
図4において、磁気検出素子R11〜R14,R21〜R24の磁化固定層の磁化の方向を塗りつぶした矢印で表し、自由層の磁化の方向を白抜きの矢印で表す。第1の検出部31Aにおいて、磁気検出素子R11,R14の磁化固定層の磁化の方向は第1の方向D1に平行な方向であり、磁気検出素子R12,R13の磁化固定層の磁化の方向は、磁気検出素子R11,R14の磁化固定層の磁化の方向と反平行方向である。第1の検出部31Aにおいて、磁石2の磁界の第1の方向D1の成分の強度に応じて、出力ポートE11,E12の電位差が変化し、磁石2の磁界の第1の方向D1の強度を表す信号が出力される。
【0032】
第2の検出部31Bにおいて、磁気検出素子R21,R24の磁化固定層の磁化の方向は第2の方向D2(第1の方向D1に直交する方向)であり、磁気検出素子R22,R23の磁化固定層の磁化の方向は、磁気検出素子R21,R24の磁化固定層の磁化の方向と反平行方向である。第2の検出部31Bにおいて、磁石2の磁界の第2の方向D2の成分の強度に応じて、出力ポートE21,E22の電位差が変化し、磁石2の磁界の第2の方向D2の強度を表す信号が出力される。
【0033】
差分検出器37は、出力ポートE11,E12の電位差に対応する信号を第1の信号S1としてA/D変換部32に出力する。差分検出器38は、出力ポートE21,E22の電位差に対応する信号を第2の信号S2としてA/D変換部32に出力する。
【0034】
図4に示すように、第1の検出部31Aにおける磁気検出素子R11〜R14の磁化固定層の磁化方向と、第2の検出部31Bにおける磁気検出素子R21〜R24の磁化固定層の磁化方向とは、互いに直交する。この場合、第1の信号S1の波形は、回転角度θに依存したコサイン(Cosine)波形になり、第2の信号S2の波形は、回転角度θに依存したサイン(Sine)波形になる。本実施形態において、第2の信号S2の位相は、第1の信号S1の位相に対して信号周期の1/4、すなわちπ/2(90°)異なっている。
【0035】
A/D変換部32は、検出部31から所定のサンプリング周期で出力される、第1及び第2の信号(回転角度θに関するアナログ信号)S1,S2をデジタル信号に変換し、当該デジタル信号が演算処理部33に入力される。
【0036】
演算処理部33は、A/D変換部32によりアナログ信号から変換されたデジタル信号についての演算処理を行い、磁石2の回転角度θを算出する。この演算処理部33は、例えば、マイクロコンピュータ等により構成される。演算処理部33により算出された磁石2の回転角度θは、演算処理部33に含まれる記憶部(図示せず)に記憶される。
【0037】
磁石2の回転角度θは、例えば下記式で示すアークタンジェント計算によって算出され得る。
θ=atan(S1/S2)
【0038】
なお、360°の範囲内で、上記式における回転角度θの解には、180°異なる2つの値がある。しかし、第1の信号S1及び第2の信号S2の正負の組み合わせにより、回転角度θの真の値が、上記式における2つの解のいずれかであるかを判別することができる。すなわち、第1の信号S1が正の値のときは、回転角度θは0°よりも大きく180°よりも小さい。第1の信号S1が負の値のときは、回転角度θは180°よりも大きく360°よりも小さい。第2の信号S2が正の値のときは、回転角度θは0°以上90°未満及び270°より大きく360°以下の範囲内である。第2の信号S2が負の値のときは、回転角度θは90°よりも大きく270°よりも小さい。演算処理部33は、上記式と、第1の信号S1及び第2の信号S2の正負の組み合わせの判定とにより、360°の範囲内で回転角度θを算出する。
【0039】
シミュレート部34は、推定部35により推定され、記憶部に記憶されている過去のサンプリング時刻における磁石2の回転角度θ
E、角速度ω
E及び角加速度α
Eから、所定のサンプリング時刻における磁石2の回転角度θ
Sをシミュレートする。例えば、シミュレート部34は、推定部35により推定された過去のサンプリング時刻における磁石2の回転角度θ
E等について、例えば外挿処理等を行うことで、所定のサンプリング時刻における磁石2の回転角度θ
Sをシミュレートすることができる。
【0040】
推定部35は、シミュレート部34により求められた磁石2の回転角度θ
Sに所定のサンプリング時刻における磁石2の回転角度θを反映させることで、当該所定のサンプリング時刻における磁石2の回転角度θ
Eを推定するとともに、角速度ω
E及び角加速度α
Eを推定する。
【0041】
予測部36は、推定部35により推定された磁石2の回転角度θ
E、角速度ω
E及び角加速度α
Eに基づいて、現在サンプリング時刻における磁石2の回転角度θ
Pを予測する。例えば、予測部36は、推定部35により推定された磁石2の回転角度θ
E等について、例えば外挿処理等を行うことで、現在サンプリング時刻における磁石2の回転角度θ
Pを算出する。
【0042】
上記構成を有する回転角度検出装置1において、軸部11の回転に伴い磁石2が回転すると、磁石2の磁界が変化する。その磁界の変化に応じ、検出部31の磁気検出素子R11〜R14,R21〜R24の抵抗値が変化し、第1の検出部31A及び第2の検出部31Bのそれぞれの出力ポートE11,E12,E21,E22の電位差に応じ、所定のサンプリング周期で第1の方向D1及び第2の方向D2における磁石2の磁界強度を表す信号S1,S2が差分検出器37,38から出力される。そして、差分検出器37,38から出力された第1の信号S1及び第2の信号S2が出力され、A/D変換部32によりデジタル信号に変換される。その後、演算処理部33により、磁石2の回転角度θが算出される。
【0043】
本実施形態に係る回転角度検出装置1において、検出部31からの出力に基づくアナログ信号についてのフィルタリング処理、A/D変換部32にてデジタル信号に変換する処理、デジタル信号についてのフィルタリング処理、演算処理部33における演算処理等により遅延が生じる。この遅延を取り戻すために、予測部36による回転角度の予測が重要となる。
【0044】
例えば、本実施形態に係る回転角度検出装置1にて、種々の処理により3サンプリング時刻分の遅延が生じるものとする。すると、現在サンプリング時刻T
nにおいて、現在サンプリング時刻T
nよりも3サンプリング時刻前T
n-3における磁石2の回転角度θ
n-3が、演算処理部33により算出される。一方で、シミュレート部34は、例えば、推定部35により推定された、現在サンプリング時刻T
nよりも4サンプリング時刻前T
n-4における磁石2の回転角度θ
En-4、角速度ω
En-4及び角加速度α
En-4に基づいて、現在サンプリング時刻T
nよりも3サンプリング時刻前T
n-3における磁石の回転角度θ
Sn-3をシミュレートして求める。推定部35は、シミュレート部34によりシミュレートされた磁石2の回転角度θ
Sn-3に、演算処理部33により算出された磁石2の回転角度θ
n-3(現在サンプリング時刻T
nにおける最新の磁石2の回転角度)を反映させて、3サンプリング時刻前T
n-3における磁石2の回転角度θ
En-3を推定するとともに、角速度ω
En-3及び角加速度α
En-3を推定する。そして、予測部36は、推定部35により推定された磁石2の回転角度θ
En-3、角速度ω
En-3及び角加速度α
En-3に基づき、現在サンプリング時刻T
nにおける磁石2の回転角度θ
Pnを予測する。
【0045】
ここで、演算処理部33により算出される磁石の回転角度θには、所定のノイズが含まれる。このノイズを含む回転角度θに基づいて現在サンプリング時刻T
nにおける回転角度θ
Pnを予測しようとすると、予測される回転角度θ
Pnの予測値に含まれるノイズが増幅されてしまい、正確な予測が困難となる。また、本発明者が先に提案した角速度ωや角加速度αを用いた予測方法(特願2015−67498号)においては、予測される回転角度θ
Pnに含まれるノイズの低減が可能であるものの、回転角度θ
Pnの予測値が、演算処理部33にて算出される回転角度θ
nからずれてしまうおそれがある。当該予測方法においては、高速で回転動作する動作体において、サンプリング周期のうちの極めて短期間(例えば、現在サンプリング時刻T
nから遡って3サンプリング周期以下程度)であれば磁石2の回転運動を等速度回転運動又は等加速度回転運動と仮定し、3サンプリング時刻前T
n-3における角速度ω
n-3や角加速度α
n-3と、現在サンプリング時刻T
nにおける角速度ω
nや角加速度α
nとは実質的に同一であると仮定可能であることを前提とし、3サンプリング時刻前T
n-3における磁石2の回転角度θ
n-3の実測値(演算処理部により算出された回転角度θ
n-3)から算出された角速度ω
n-3や角加速度α
n-3に基づいて現在サンプリング時刻T
nにおける磁石2の回転角度θ
Pnを予測することで、回転角度θ
Pnに含まれるノイズを低減することができる。しかし、現在サンプリング時刻T
nにおける磁石2の回転角度θ
Pnを予測するために用いられる3サンプリング時刻前T
n-3における回転角度θ
n-3が実測値(演算処理部33により算出された回転角度θ
n-3)であることで、予測部36により予測される回転角度θ
Pnが実測値からずれてしまうという問題が生じるものと推察される。
【0046】
この点、本実施形態においては、現在サンプリング時刻T
nにおける磁石2の回転角度θ
Pnを予測するために用いられる3サンプリング時刻前T
n-3における回転角度θ
En-3、角速度ω
En-3及び角加速度α
En-3が推定値であることで、予測部36により予測される回転角度θ
Pnが演算処理部33により算出される回転角度θ
nからずれてしまうという問題を解消することができ、現在サンプリング時刻T
nにおける磁石2の回転角度θ
Pnを極めて精確に予測することができる。
【0047】
このように、予測部36により極めて精確に予測される磁石2の回転角度θ
Pnは、軸部11を含む動作体(例えばモータ軸を含むサーボモータ等)の駆動回路等(図示せず)に入力され、当該動作体の動作制御が行われる。したがって、当該動作体の動作制御を高い精度で行うことができる。
【0048】
上述したように、本実施形態に係る回転角度検出装置1によれば、予測部36により現在サンプリング時刻T
nにおける回転角度θ
Pnを予測するために用いられる回転角度θ
En-3、角速度ω
En-3及び角加速度α
En-3が、現在サンプリング時刻T
nのときに演算処理部33により算出される過去のサンプリング時刻における回転角度θ
n-3を、シミュレート部34によりシミュレートされた回転角度θ
Sn-3に反映させることで求められるため、当該回転角度θ
En-3、角速度ω
En-3及び角加速度α
En-3に基づき、現在サンプリング時刻T
nの回転角度θ
Pnを極めて精確に予測することができる。
【0049】
また、本実施形態に係る回転角度検出装置1によれば、現在サンプリング時刻T
nにおける磁石2の回転角度θ
Pnを予測するために推定部35により推定される回転角度θ
En-3、角速度ω
En-3及び角加速度α
En-3が、シミュレート部34がシミュレートした回転角度θ
Sn-3と演算処理部33が算出した最新の回転角度θ
n-3とを用いるだけで求められるため、当該回転角度θ
Pnの予測のために必要な情報量(サンプル数)を少なくすることができるという効果も奏し得る。
【0050】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0051】
上記実施形態において、予測部36は、現在サンプリング時刻T
nにおける回転角度θ
Pnを予測する態様を例に挙げて説明したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、現在サンプリング時刻T
nよりも未来(例えば3サンプリング時刻先T
n+3の回転角度θ
Pn+3を予測してもよい。
【0052】
上記実施形態において、磁界発生部として軸部11に固定された磁石2を用いているが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、少なくとも1組のN極及びS極が交互にリング状に配置された磁石を磁界発生部として用い、当該磁石の外周部に磁気検出装置を対向配置させてなるものであってもよいし、直線状スケールを磁界発生部として用いてもよい。
【0053】
上記実施形態において、磁石2が固定された軸部11が回転軸Cを中心に回転することにより磁石2が磁気検出装置3に対して相対的に回転移動するが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、磁石2(軸部11)と磁気検出装置3とが、互いに反対方向に回転するものであってもよいし、磁石2(軸部11)が回転せずに磁気検出装置3が回転するものであってもよい。
【実施例】
【0054】
以下、実施例等を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例等に何ら限定されるものではない。
【0055】
〔実施例1〕
図3及び
図4に示す構成を有する磁気検出装置3における、予測部36による現在サンプリング時刻T
nにおける回転角度θ
Pnの予測に関し、MATLABを用いてシミュレーションを行い、回転角度θ
Pnの予測値に含まれるノイズを求めた。かかるシミュレーションにおいて、磁石2が10000deg/secで等速回転運動し、検出部31によるサンプリング周期が50μsecであり、演算処理部33により算出される回転角度θに含まれるノイズが±0.1degであり(
図6参照)、3サンプリング時刻分(150μsec)の群遅延が生じるものとした。また、シミュレート部34は、4サンプリング時刻前T
n-4における回転角度θ
En-4、角速度ω
En-4及び角加速度
En-4を用いた外挿処理により3サンプリング時刻前T
n-3の回転角度θ
Sn-3をシミュレートし、推定部35は、3サンプリング時刻前T
n-3の回転角度θ
n-3を回転角度θ
Sn-3に反映させることで回転角度θ
En-3、角速度ω
En-3及び角加速度α
En-3を推定し、それらの推定値θ
En-3、ω
En-3、α
En-3を用いた線形外挿処理によって、予測部36が回転角度θ
Pnを予測するものとした。シミュレーション結果を
図7に示す。
【0056】
〔比較例1〕
演算処理部33により算出された3サンプリング時刻T
n-3〜T
n-5における回転角度θ
n-3〜θ
n-5を用いて線形外挿処理を行うことで現在サンプリング時刻T
nにおける回転角度θ
Pnの予測をすることとした以外は、実施例1と同様にして回転角度θ
Pnの予測値に含まれるノイズを求めた。シミュレーション結果を
図8に示す。
【0057】
〔比較例2〕
4サンプリング時刻T
n-3〜T
n-6における回転角度θ
n-3〜θ
n-6をそれぞれ1回微分した角速度ω
n-3〜ω
n-6を用いた移動平均フィルタ処理を行うことで現在サンプリング時刻T
nにおける回転角度θ
Pnを予測することとした以外は、実施例1と同様にして回転角度θ
Pnの予測値に含まれるノイズを求めた。シミュレーション結果を
図9に示す。
【0058】
実施例1、比較例1及び比較例2の結果(
図7〜9参照)から明らかなように、推定部34により推定された回転角度θ
En-3、角速度ω
En-3及び角加速度α
En-3を用いた予測により、回転角度θに所定のノイズが含まれていたとしても、そのノイズを増幅させることなく、現在サンプリング時刻T
nの回転角度θ
Pnを極めて精確に予測可能であることが確認された。
【0059】
〔実施例2〕
磁石2が2×10
8deg/sec
2で等加速回転運動しているものとし、演算処理部33により算出される回転角度θに含まれるノイズが、
図10に示すように速度が大きくなるに従い増大することとした以外は、実施例1と同様にして回転角度θ
Pnの予測値に含まれるノイズを求めた。結果を
図11に示す。
【0060】
〔比較例3〕
演算処理部33により算出された3サンプリング時刻T
n-3〜T
n-5における回転角度θ
n-3〜θ
n-5を用いて線形外挿処理を行うことで現在サンプリング時刻T
nにおける回転角度θ
Pnの予測をすることとした以外は、実施例2と同様にして回転角度θ
Pnの予測値に含まれるノイズを求めた。シミュレーション結果を
図12に示す。
【0061】
〔比較例4〕
4サンプリング時刻T
n-3〜T
n-6における回転角度θ
n-3〜θ
n-6をそれぞれ2回微分した角加速度α
n-3〜α
n-6を用いた移動平均フィルタ処理を行うことで現在サンプリング時刻T
nにおける回転角度θ
Pnを予測することとした以外は、実施例2と同様にして回転角度θ
Pnの予測値に含まれるノイズを求めた。シミュレーション結果を
図13に示す。
【0062】
実施例2、比較例3及び比較例4の結果(
図11〜13参照)から明らかなように、推定部34により推定された回転角度θ
En-3、角速度ω
En-3及び角加速度α
En-3を用いた予測により、回転角度θに所定のノイズが含まれていたとしても、そのノイズを低減させ、かつ現在サンプリング時刻T
nの回転角度θ
Pnの予測値が真の値(演算処理部33により算出される回転角度θ
n)からはずれることなく、極めて精確に予測可能であることが確認された。
【解決手段】連続的に作動する動作体の所定時刻における位置を予測する位置予測装置は、所定時刻よりも過去の位置推定時刻における動作体の推定位置状態を求める推定部と、推定部により推定された動作体の推定位置状態に基づき、動作体の所定時刻における位置を予測する位置予測部とを備える。