特許第6361787号(P6361787)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6361787
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】2プレート式射出装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/50 20060101AFI20180712BHJP
【FI】
   B29C45/50
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-114178(P2017-114178)
(22)【出願日】2017年6月9日
【審査請求日】2017年11月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】宇部興産機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】きさらぎ国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】有馬 祐一朗
(72)【発明者】
【氏名】大串 拓也
(72)【発明者】
【氏名】柳川 彰一
【審査官】 関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−309737(JP,A)
【文献】 特開平08−057921(JP,A)
【文献】 特開平02−307714(JP,A)
【文献】 特開2000−084987(JP,A)
【文献】 米国特許第05129808(US,A)
【文献】 特開2006−192687(JP,A)
【文献】 特開2000−108175(JP,A)
【文献】 米国特許第06386853(US,B1)
【文献】 特開平08−156046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定プレートと、該固定プレートに対して進退可能に設けられた移動プレートと、該移動プレートを前記固定プレートに対して進退させる一対のボールねじ機構と、該一対のボールねじ機構を駆動するための射出モータと、軸を中心として回転可能な状態で前記移動プレートに支持されたスクリュと、該スクリュを軸を中心として回転させるための可塑化モータとを備え、前記移動プレートを前記固定プレートに対して進退させることで前記スクリュが進退可能な2プレート式射出装置であって、
前記一対のボールねじ機構の一方のねじ軸と他方のねじ軸とを通る仮想平面を境として、一方側に前記射出モータが配置され、他方側に前記可塑化モータが配置されており、
前記射出モータ及び前記可塑化モータの一方は、前記固定プレート側に配置され、前記射出モータ及び前記可塑化モータの他方は、前記移動プレート側に配置されており、
前記射出モータ及び前記可塑化モータの各出力軸は、前記一対のボールねじ機構の各ねじ軸に対して平行に延在しており、前記一対のボールねじ機構の両ねじ軸の間隔が、前記射出モータの出力軸と前記可塑化モータの出力軸との間隔よりも小さい
ことを特徴とする2プレート式射出装置。
【請求項2】
前記スクリュは、前記一対のボールねじ機構の各ねじ軸と平行、かつ、前記仮想平面に沿って位置するように、前記一対のボールねじ機構の中間に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の2プレート式射出装置。
【請求項3】
前記固定プレートが固定される載置面を有するベース部を更に備え、
前記固定プレートは、前記仮想平面が前記ベース部の前記載置面と平行となるよう該ベース部に立設されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の2プレート式射出装置。
【請求項4】
前記ベース部は、前記移動プレートの可動範囲に沿って延びる切欠きが形成されており、
前記移動プレートは、前記切欠きを介して前記ベース部の前記載置面よりも下方に延在する下方延出部を有しており、該下方延出部に、前記射出モータ又は前記可塑化モータが配置されている
ことを特徴とする請求項3に記載の2プレート式射出装置。
【請求項5】
前記固定プレートが固定されるベース部を更に備え、
前記固定プレートは、前記仮想平面が前記ベース部に対して垂直となるよう該ベース部に立設されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の2プレート式射出装置。
【請求項6】
前記射出モータ及び前記可塑化モータは、該射出モータの出力軸の中心軸と該可塑化モータの出力軸の中心軸とを結ぶ線が仮想平面と直交するよう配置されている
ことを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載の2プレート式射出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形に用いられる2プレート式射出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数色又は複数種類の樹脂材料を使用して積層成形品を成形する積層成形品専用の射出成形装置として、略同サイズの複数の射出ユニットを有する多色多材射出成形装置が広く用いられている。このような従来の多色多材射出成形装置は、1つの積層成形品に使用される複数色又は複数種類の樹脂材料が略同じ射出充填量である場合には、好適に用いることができる。一方、例えば主材料及び副材料の様に、複数色又は複数種類の樹脂材料間の射出充填量に明確な差異があり、主材料の射出充填量に対して、それ以外の副材料の射出充填量が少ない場合には、副材料を射出充填させる射出ユニット内で、副材料が主材料に対して長く可塑化状態で保持されるため、副材料の品質の低下を招くおそれがある。また、副材料が射出充填される金型キャビティは、主材料が射出充填される金型キャビティよりも複数個所に偏在する場合が多く、この場合には副材料用の金型キャビティへの樹脂流路(ホットランナ)が長くなるため、金型の構造が複雑になるという問題や、副材料用の樹脂流路長の増加に起因して、樹脂流路内における可塑化状態での保持時間が増加し、副材料の品質の低下を招くおそれがあるという更なる問題が生じる。
【0003】
そのため、従来、主材料の射出充填量に対して、それ以外の副材料の射出充填量が少ない場合には、1つのメイン射出ユニットを備える汎用の射出成形装置に小型のサブ射出ユニットを後付けすることが行われている。このようなサブ射出ユニットとしては、3プレート式射出装置と比較して小型な2プレート式射出装置が用いられている。
【0004】
従来の2プレート式射出装置は、図6及び図7に示すように、固定プレート102と、固定プレート102に対して進退可能に設けられた移動プレート104と、移動プレート104を固定プレート102に対して進退させる一対のボールねじ機構106a,106bと、一対のボールねじ機構106a,106bを駆動するための射出モータ108と、軸を中心として回転可能な状態で移動プレート104に支持されたスクリュ110と、固定プレート102に固定され、内部にスクリュ110が挿入される空間を有する加熱バレル112と、スクリュ110を軸を中心として回転させるための可塑化モータ114とを備えている(特許文献1等)。
【0005】
このような構成を有する従来の2プレート式射出装置100は、可塑化モータ114によってスクリュ110を回転させることで、ホッパ(図示せず)から投入された加熱バレル112内の樹脂材料をスクリュ110の先端側に向けて搬送し、この搬送過程において、加熱バレル112による加熱及びスクリュ110の回転によるせん断熱によって樹脂材料を可塑化(溶融)させるよう構成されている。また、従来の2プレート式射出装置100は、スクリュ110を回転させながら移動プレート104を後退させることで計量を行い、計量完了後に、射出モータ108により移動プレート104及びスクリュ110を前進させることで、可塑化された溶融樹脂を加熱バレル112の射出ノズルから射出させるよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平08−9184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の2プレート式射出装置100では、図7に示すように、一対のボールねじ機構106a,106bの両ねじ軸を通る仮想平面Pよりも上方側に、射出モータ108と可塑化モータ114との双方が配置されることが一般的である。しかしながら、金型や金型取付盤に対する取付の自由度を向上させるために、2プレート式射出装置100を小型化する場合、寸法の縮小が可能な機械構成部材に対して、一般的に購入品であり、所定の出力を確保する必要がある射出モータ108や可塑化モータ114は寸法の縮小に制約がある。このため、図7に示す形態で2プレート式射出装置100の小型化を進めると、一対のボールねじ機構106a,106bの両ねじ軸の間隔よりも、射出モータ108の出力軸と可塑化モータ114の出力軸との間隔の方が大きくなり、図7に示す幅方向の寸法Wが、射出モータ108の出力軸と可塑化モータ114の出力軸との間隔に制約を受けてしまう。このため、従来の2プレート式射出装置100のように、射出モータ108及び可塑化モータ114が上方側に偏って配置された構成では、幅方向の寸法Wが大きくならざるを得ず、この幅広な形状に対応するスペースを金型取付盤(固定盤及び可動盤等)や金型において確保できなければ取り付けることができないという問題がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、金型や金型取付盤に対する取付の自由度を向上させることが可能な2プレート式射出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る2プレート式射出装置は、固定プレートと、該固定プレートに対して進退可能に設けられた移動プレートと、該移動プレートを前記固定プレートに対して進退させる一対のボールねじ機構と、該一対のボールねじ機構を駆動するための射出モータと、軸を中心として回転可能な状態で前記移動プレートに支持されたスクリュと、該スクリュを軸を中心として回転させるための可塑化モータとを備え、前記移動プレートを前記固定プレートに対して進退させることで前記スクリュが進退可能な2プレート式射出装置であって、前記一対のボールねじ機構の一方のねじ軸と他方のねじ軸とを通る仮想平面を境として、一方側に前記射出モータが配置され、他方側に前記可塑化モータが配置されていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る2プレート式射出装置において、前記スクリュは、前記一対のボールねじ機構の各ねじ軸と平行、かつ、前記仮想平面に沿って位置するように、前記一対のボールねじ機構の中間に配置されることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る2プレート式射出装置において、前記射出モータ及び前記可塑化モータの一方は、前記固定プレート側に配置され、前記射出モータ及び前記可塑化モータの他方は、前記移動プレート側に配置されることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明に係る2プレート式射出装置は、前記固定プレートが固定されるベース部を更に備え、前記固定プレートが、前記仮想平面が前記ベース部と平行となるよう該ベース部に立設されるとしても良いし、前記仮想平面が前記ベース部に対して垂直となるよう該ベース部に立設されるとしても良い。
【0013】
またさらに、本発明に係る2プレート式射出装置において、前記射出モータ及び前記可塑化モータの各出力軸は、前記一対のボールねじ機構の各ねじ軸に対して平行に延在しており、前記一対のボールねじ機構のねじ軸間の距離が、前記射出モータと前記可塑化モータとの出力軸間の距離よりも短いことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、射出モータ及び可塑化モータをバランス良く配置しつつ、金型や金型取付盤に対する取付の自由度を向上させることが可能な2プレート式射出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る2プレート式射出装置の全体構成を一部省略して概略的に示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係る2プレート式射出装置の軸方向に沿った縦断面を概略的に示す図である。
図3】第1実施形態に係る2プレート式射出装置の水平断面を概略的に示す図である。
図4】第1実施形態に係る2プレート式射出装置における、一対のボールねじ機構と、スクリュと、射出モータ及び可塑化モータとの配置を概略的に示す図である。
図5】第2実施形態に係る2プレート式射出装置における、一対のボールねじ機構と、スクリュと、射出モータ及び可塑化モータとの配置を概略的に示す図である。
図6】特許文献1の2プレート式射出装置を概略的に示す斜視図である。
図7】特許文献1の2プレート式射出装置における、一対のボールねじ機構と、スクリュと、射出モータ及び可塑化モータとの配置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態として、幅方向の寸法を抑制可能な実施形態(第1実施形態)と、高さ方向の寸法を抑制可能な実施形態(第2実施形態)とを説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。以下の説明において、「前方」とは、後述する2プレート式射出装置1の加熱バレル34が突出する方向を意味し、「後方」とは、これとは反対側の方向を意味するものとする。
【0017】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態に係る2プレート式射出装置1について、図1図4を用いて説明する。第1実施形態に係る2プレート式射出装置1は、メイン射出装置(図示せず)を備える射出成形機(図示せず)に適宜の支持部材を用いて後付けすることが可能な小型のサブ射出装置である。第1実施形態に係る2プレート式射出装置1が取り付けられる射出成形機は、種々の射出成形機を任意に採用することが可能であり、例えば、主材料用のメイン射出装置と、固定盤、可動盤及びエンドプラテンと、固定盤に取り付けられた固定金型と、可動盤に取り付けられた可動金型と、固定盤、可動盤及びエンドプラテンの四隅を貫通して設けられた4本のタイバーと、可動盤及びエンドプラテンの間に設けられ、可動盤を固定盤に対して進退させる型締機構とを備える汎用の射出成形機を採用することができる。なお、射出成形機の構成については、公知であるため、その説明を省略する。
【0018】
第1実施形態に係る2プレート式射出装置1は、図1及び図2示すように、固定プレート10と移動プレート20とを備える2プレート方式のインラインスクリュ式射出装置であり、メイン射出装置よりも小型に構成されている。
【0019】
具体的には、2プレート式射出装置1は、図1及び図2示すように、ベース部2と、ベース部2に固定的に立設された固定プレート10と、固定プレート10に対して進退可能に設けられた移動プレート20と、軸を中心として回転可能な状態で移動プレート20に支持されたスクリュ30と、固定プレート10に固定された加熱バレル34と、移動プレート20を固定プレート10に対して進退させる射出駆動機構40と、スクリュ30を回転させる計量駆動機構50と、射出駆動機構40及び計量駆動機構50を制御する制御部(図示せず)とを備えている。
【0020】
ベース部2は、図1及び図2に示すように、2プレート式射出装置1の装置本体を載置可能な長尺状の台であり、移動プレート20の可動範囲に沿って、移動プレート20を摺動可能に支持する一対のレール部4が敷設されている。一対のレール部4間には、ベース部2の後方側から移動プレート20の可動範囲に沿って延びる切欠き6が形成されており、この切欠き6によって、移動プレート20の下方延出部24との干渉を避けるよう構成されている。
【0021】
固定プレート10は、図1及び図2に示すように、ベース部2の前方側に固定的に立設されたプレート状部材であり、その前方側の面から後方側の面に亘って、スクリュ30が貫通する貫通孔12が形成されている。固定プレート10の前方側の面には、貫通孔12と整合する位置に、加熱バレル34の基端部が取り付けられている。また、固定プレート10の上部には、取付部材14を介して、射出駆動機構40の後述する射出モータ46が取り付けられている。
【0022】
移動プレート20は、図1図3に示すように、スライダを介して一対のレール部4上に配置されたプレート状部材であり、その前方側の面から後方側の面に亘って、後述するスクリュ回転支持軸52を支持する貫通孔22aと、射出駆動機構40の後述するボールねじナット42が埋設される一対の取付孔22bとが形成されている。貫通孔22aは、スクリュ30及び加熱バレル34と同軸となる位置に形成されており、一対の取付孔22bは、貫通孔22aを中心として互いに均等に離間した位置に形成されている。移動プレート20は、ベース部2の載置面よりも下方に延在する下方延出部24を有しており、この下方延出部24に、計量駆動機構50が取り付けられている。
【0023】
計量駆動機構50は、図2に示すように、スクリュ30の後端部30aを着脱可能に支持するスクリュ回転支持軸52と、スクリュ30を軸を中心として回転させるための1つの可塑化モータ54と、可塑化モータ54の動力をスクリュ回転支持軸52を介してスクリュ30に伝達する回転伝達機構56とを備えている。
【0024】
スクリュ回転支持軸52は、図2に示すように、一端部がスクリュ30の後端部30aに着脱可能に連結され、他端部が回転伝達機構56に連結されるよう構成された支持部本体52aと、支持部本体52aとの間においてスクリュ30の後端部30aを挟持する分割カラー52bとを備えている。支持部本体52aは、スクリュ30と同軸に延びる軸部材であり、軸を中心として回転可能な状態で、ベアリングを介して移動プレート20の貫通孔22aに支持されている。支持部本体52aの前方側の端部には、スクリュ30の後端部30aが有する凹凸形状(スプライン又はキー等)に対応する凹凸形状(スプライン溝又はキー溝等)を内壁に有し、スクリュ30の後端部30aを相対回転不能な状態で収容する溝付き凹部が形成されている。支持部本体52aの後方側の端部には、回転伝達機構56の後述する従動プーリ56bが取り付けられている。
【0025】
可塑化モータ54は、図2に示すように、その出力軸54aが移動プレート20の後方側の面に延出するよう、移動プレート20の下方延出部24の前方側の面に取り付けられている。可塑化モータ54としては、例えばサーボモータを用いることができる。
【0026】
回転伝達機構56は、図2に示すように、可塑化モータ54の出力軸54aに取り付けられた駆動プーリ56aと、スクリュ回転支持軸52の支持部本体52aの後方側の端部に取り付けられた従動プーリ56bと、駆動プーリ56aと従動プーリ56bとに亘って掛け渡され、駆動プーリ56aの動力により従動プーリ56bを回転させるプーリベルト56cとを備えている。
【0027】
以上の構成を備える計量駆動機構50は、可塑化モータ54の回転力を回転伝達機構56を介してスクリュ回転支持軸52に伝達させ、スクリュ回転支持軸52を回転させることにより、スクリュ回転支持軸52に取り付けられたスクリュ30を一体として回転させるよう構成されている。
【0028】
スクリュ30は、図1図3に示すように、先端部側の所定領域に螺旋状のフライト30cが設けられたスクリュ軸部材である。スクリュ30の後端部30aは、これに近接する軸部(小径部30b)よりも大径に形成されており、その周面に、スクリュ回転支持軸52の支持部本体52aの溝付き凹部内に形成された凹凸形状に対応する凹凸形状(スプライン又はキー等)が形成されている。スクリュ30の先端部には、可塑化した溶融樹脂を加熱バレル34の射出ノズル34aから射出する際の逆流を防止するためのチェックリング30dが設けられている。スクリュ30は、一対のボールねじ軸44と平行、かつ、一対のボールねじ軸44の中心軸A,Aを通る後述の仮想平面P(図4参照)に沿って位置するように、一対のボールねじ機構41の中間に配置されている。なお、スクリュ30は、図示の構成に限定されず、種々の構成を採用することが可能である。
【0029】
加熱バレル34は、図1図3に示すように、スクリュ30のフライト30cが設けられた所定領域が挿入される中空空間を有する筒状部材であり、先端部が前方に向けて延出するよう、その基端部が固定プレート10に固定されている。加熱バレル34の先端部には、射出ノズル34aが取り付けられている。加熱バレル34の基端部側の周面には、中空空間内に連通する材料供給孔36が形成されており、該材料供給孔36と整合する位置に取り付けられる着脱可能な材料供給部38を介して、ペレット状の樹脂材料を中空空間内に投入可能に構成されている。加熱バレル34の周面には、バンドヒータ等の種々の加熱手段が配置されており、該加熱手段により加熱されるよう構成されている。なお、加熱バレル34は、図示の構成に限定されず、種々の構成を採用することが可能である。また、材料供給部38は、一般的なホッパでも良いし、集中材料供給システム等が採用される場合は、同システムに接続される固定配管やホース配管であっても良く、2プレート式射出装置1の取付状況に対して、材料供給孔36へ樹脂材料を供給可能で、材料供給孔36に対して着脱可能な様々な構成が採用可能である。
【0030】
射出駆動機構40は、図1図3に示すように、移動プレート20を固定プレート10に対して進退させる一対のボールねじ機構41と、一対のボールねじ機構41を駆動するための1つの射出モータ46と、射出モータ46の動力を一対のボールねじ機構41に伝達する回転伝達機構48とを備えている。
【0031】
一対のボールねじ機構41は、図3に示すように、それぞれ、移動プレート20の取付孔22bに埋設されたボールねじナット42と、前方側の端部がベアリングを介して固定プレート10に連結され、他方側の端部近傍がボールねじナット42に螺合されたボールねじ軸44とを備えている。一対のボールねじ軸44は、図1及び図3に示すように、スクリュ30を中心として互いに均等に離間した位置において、互いに平行に配置されている。すなわち、一対のボールねじ軸44は、スクリュ30の中心軸Aを中心として軸対称に配置されている。
【0032】
射出モータ46は、図1及び図2に示すように、取付部材14を介して固定プレート10の上部に設けられている。射出モータ46は、その出力軸46aが取付部材14の前方側の面に延出するよう、取付部材14の後方側の面に取り付けられている。射出モータ46としては、例えばサーボモータを用いることができる。
【0033】
回転伝達機構48は、図1図3に示すように、射出モータ46の出力軸46aに取り付けられた駆動プーリ48aと、一対のボールねじ機構41にそれぞれ取り付けられた従動プーリ48bと、駆動プーリ48a及び一対の従動プーリ48bに亘って掛け渡され、駆動プーリ48aの動力により一対の従動プーリ48bを同時に回転させるプーリベルト48cとを備えている。
【0034】
以上の構成を有する射出駆動機構40は、射出モータ46の回転力を駆動プーリ48a、プーリベルト48c及び一対の従動プーリ48bを介して一対のボールねじ軸44に伝達させ、一対のボールねじ軸44を正方向又は逆方向に回転させることにより、移動プレート20及びこれに連結されるスクリュ30を固定プレート10に対して進退させるよう構成されている。なお、図2においては、図を見易くするために、ボールねじ機構41の図示を省略している。
【0035】
制御部は、例えば、CPU、各種制御プログラム等を格納するROM(不揮発性記憶媒体)、演算結果等を格納する読み書き可能なRAM(揮発性記憶媒体)、ハードディスク等の記憶部及びタイマ等を備えるコンピュータであり、ROM等に格納された制御プログラムをCPUで実行させることにより、射出駆動機構40及び計量駆動機構50等に関する各種処理を実行するよう構成されている。
【0036】
第1実施形態に係る2プレート式射出装置1では、図1図3に示すように、一方のボールねじ機構41のボールねじ軸44の中心軸Aと、他方のボールねじ機構41のボールねじ軸44の中心軸Aと、スクリュ30の中心軸Aと、射出モータ46の出力軸46aの中心軸Aと、可塑化モータ54の出力軸54aの中心軸Aとが互いに平行となるよう構成されている。また、第1実施形態に係る2プレート式射出装置1では、小型化に伴う各機械構成部材の寸法の縮小によって、一対のボールねじ軸44の中心軸A,Aの間隔が、射出モータ46の出力軸46aの中心軸Aと可塑化モータ54の出力軸54aの中心軸Aとの間隔よりも小さくなっている。
【0037】
また、第1実施形態に係る2プレート式射出装置1では、図4に示すように、一対のボールねじ軸44の中心軸A,Aを通る仮想平面Pを境として、一方側(第1実施形態では上方側)に1つの射出モータ46が配置され、他方側(第1実施形態では下方側)に1つの可塑化モータ54が配置されている。具体的には、第1実施形態に係る2プレート式射出装置1では、上述のとおり、仮想平面Pがベース部2に対して平行となるよう(一対のボールねじ機構41が水平となるよう)、固定プレート10がベース部2に立設された状態で、射出モータ46が固定プレート10の上部に設けられ、可塑化モータ54が移動プレート20の下方延出部24の前方側の面に設けられている。
【0038】
特に、第1実施形態に係る2プレート式射出装置1では、図4に示すように、射出モータ46の出力軸46aの中心軸Aと可塑化モータ54の出力軸54aの中心軸Aとを結ぶ線Xが仮想平面Pと直交するよう(90度で交差するよう)、仮想平面Pを境として、1つの射出モータ46と1つの可塑化モータ54とが対向するように配置されている。
【0039】
以上の構成を備える2プレート式射出装置1は、制御前進限位置(スクリュ30の制御上の限界前進位置)にスクリュ30を位置させた状態において、計量駆動機構50によってスクリュ30を回転させることで、材料供給部38から投入された加熱バレル34内の樹脂材料をスクリュ30の先端側に向けて搬送し、この搬送過程において、加熱バレル34の外周に配置された加熱手段(図示せず)による加熱及びスクリュ30の回転によるせん断熱によって樹脂材料を可塑化(溶融)させるよう構成されている(可塑化制御)。また、2プレート式射出装置1は、可塑化制御(スクリュ30の回転)と並行して、スクリュ30の先端部と加熱バレル34の先端側の内壁との間の空間(貯留部)に貯留される樹脂量の増加に伴うスクリュ30の後退を、所定の後退抵抗力(背圧)を付与させた状態で許容させ、スクリュ30が所定の計量完了位置まで後退した際(すなわち、貯留部に1回の射出充填に必要な樹脂量が貯留された際)に、スクリュ30の回転及び移動を停止させるよう構成されている(計量制御)。さらに、2プレート式射出装置1は、計量制御後に、射出駆動機構40によってスクリュ30を所定の射出速度で前進させると共に(射出速度制御)、金型キャビティ内が樹脂材料で満たされたタイミング又は位置(VP切換点)でスクリュ30の前進を圧力制御に切り替え、所定の射出圧力で制御前進限位置までのスクリュ30の前進動作を維持させるよう構成されている(射出圧力制御及び保圧制御)。なお、1成形サイクルにおいて実行されるこれら可塑化制御、計量制御、射出速度制御、射出圧力制御及び保圧制御は、いずれも公知であるため、その詳細な説明を省略する。
【0040】
以上説明したとおり、第1実施形態に係る2プレート式射出装置1では、一対のボールねじ軸44の中心軸A,Aを通る仮想平面Pを境として、一方側(第1実施形態では上方側)に1つの射出モータ46が配置され、他方側(第1実施形態では下方側)に1つの可塑化モータ54が配置されている。このように構成された2プレート式射出装置1によれば、図4に示すように、高さ方向の寸法Hが比較的大きくなるものの、幅方向の寸法Wを抑制することが可能となる。このため、2プレート式射出装置1の設置個所が幅狭であっても、金型や金型取付盤に対して取り付けることができるという利点を有する。
【0041】
また、図6及び図7に示す従来の2プレート式射出装置100では、射出モータ108と可塑化モータ114とが互いに干渉しないよう、射出モータ108の位置と可塑化モータ114の位置とを幅方向にずらして、それぞれのモータが固定プレート102と移動プレート104とに配置される。固定プレート102及び移動プレート104の寸法が、射出モータ108及び可塑化モータ114に対して十分に大きい場合、射出モータ108の位置と可塑化モータ114の位置とのバランスの悪さは特に問題にはならない。しかしながら、金型取付盤(固定盤及び可動盤等)や金型に対する取付の自由度を向上させるために、2プレート式射出装置100を小型化する場合、このようなモータ配置に起因して、固定プレート102や移動プレート104に対して作用する重力や振動力のバランスが悪いという問題がある。これに対し、第1実施形態に係る2プレート式射出装置1では、上述のとおり、射出モータ46の出力軸46aの中心軸Aと可塑化モータ54の出力軸54aの中心軸Aとを結ぶ線Xが仮想平面Pと直交するよう、仮想平面Pを境として、1つの射出モータ46と1つの可塑化モータ54とが対向して配置されているため、従来の2プレート式射出装置100と比較して、射出モータ46の位置と可塑化モータ54の位置とのバランスが良く、固定プレート10や移動プレート20に対して作用する重力や振動力のバランスが良いという利点を有する。
【0042】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る2プレート式射出装置1’について、図5を用いて説明する。第2実施形態に係る2プレート式射出装置1’は、第1実施形態に係る2プレート式射出装置1と異なり、一対のボールねじ軸44の中心軸A,Aを通る仮想平面Pがベース部2に対して垂直となるよう、固定プレート10’がベース部2に立設され、射出モータ46が固定プレート10’の一方側(図5中、左側)の側部に設けられ、可塑化モータ54が移動プレート20の他方側(図5中、右側)の側部に設けられている。なお、第2実施形態に係る2プレート式射出装置1’におけるその他の構成は、第1実施形態に係る2プレート式射出装置1と同様であるため、同一符号を用いることでそれらの説明を省略する。
【0043】
このように、第2実施形態に係る2プレート式射出装置1’では、仮想平面Pを境として、一方側(第2実施形態では左側部側)に1つの射出モータ46が配置され、他方側(第2実施形態では右側部側)に1つの可塑化モータ54が配置されている。このように構成された2プレート式射出装置1’によれば、図5に示すように、幅方向の寸法Wが比較的大きくなるものの、高さ方向の寸法Hを抑制することが可能となる。このため、2プレート式射出装置1’の設置個所(設置面)からの突出方向の設置許容寸法が少ない場合であっても、設置個所における幅方向の寸法Wが確保できれば、金型や金型取付盤に対して取り付けることができるという利点を有する。
【0044】
また、第2実施形態に係る2プレート式射出装置1’においても、第1実施形態に係る2プレート式射出装置1と同様に、射出モータ46の出力軸46aの中心軸Aと可塑化モータ54の出力軸54aの中心軸Aとを結ぶ線Xが仮想平面Pと直交するよう、仮想平面Pを境として、1つの射出モータ46と1つの可塑化モータ54とが対向するように配置されているため、従来の2プレート式射出装置100と比較して、射出モータ46の位置と可塑化モータ54の位置とのバランスが良く、固定プレート10や移動プレート20に対して作用する重力や振動力のバランスが良いという利点を有する。
【0045】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に記載の範囲には限定されない。上記各実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0046】
上述した実施形態では、2プレート式射出装置1,1’が、メイン射出装置を備える射出成形機に後付け可能な小型のサブ射出装置であるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、射出成形機のメイン射出装置であるとしても良い。
【0047】
上述した実施形態では、スクリュ30が加熱バレル34に収容されるものとして説明したが、これに限定されず、例えば、2プレート式射出装置1,1’が取り付けられる金型等にホットランナを設け、該ホットランナにスクリュ30を直接収容させる構成としても良い。
【0048】
上述した実施形態では、射出駆動機構40及び計量駆動機構50として、駆動プーリ、従動プーリ及びプーリベルトを備えるベルト式伝達機構を例示したが、これに限定されず、種々の回転伝達機構を採用することが可能である。例えば、歯車及びチェーンで構成されるチェーン式伝達機構を採用としても良いし、歯車のみで構成されるギア式伝達機構を採用しても良い。
【0049】
上述した実施形態では、射出駆動機構40が固定プレート10,10’側に配置され、計量駆動機構50が移動プレート20側に配置されるものとして説明したが、これに限定されず、一対のボールねじ機構41の一方のねじ軸と他方のねじ軸とを通る仮想平面Pを境として一方側に射出モータ46が配置され、他方側に可塑化モータ54が配置される構成であれば、種々の構成を採用することが可能である。例えば、射出駆動機構40を移動プレート20側に配置させ、計量駆動機構50を固定プレート10,10’側に配置させる構成としても良いし、射出駆動機構40及び計量駆動機構50の双方を固定プレート10,10’及び移動プレート20のいずれか一方側にまとめて配置させる構成としても良い。
【0050】
上述した実施形態では、スクリュ30が、一対のボールねじ軸44と平行、かつ、仮想平面Pに沿って位置するように、一対のボールねじ機構41の中間に配置されるものとして説明したが、これに限定されず、スクリュ30と一対のボールねじ軸44とが互いに平行で、かつ、スクリュ30と各ボールねじ軸44との間隔が略均等な態様であれば、種々の構成を採用することが可能である。例えば、スクリュ30の位置を一対のボールねじ軸44の位置に対して高さ方向にずらした構成としても良い。
【0051】
上述した実施形態では、射出モータ46及び可塑化モータ54の出力軸46a,54aが、一対のボールねじ機構41及びスクリュ30と平行に配置されるものとして説明したが、これに限定されず、回転伝達機構48及び回転伝達機構56により動力を伝達可能であれば、射出モータ46及び可塑化モータ54の出力軸46a,54aを一対のボールねじ機構41及びスクリュ30に対して非平行となるよう配置しても良い。
【0052】
上述した実施形態では、射出モータ46の出力軸46aの中心軸Aと可塑化モータ54の出力軸54aの中心軸Aとを結ぶ線Xが仮想平面Pと直交するよう、仮想平面Pを境として、射出モータ46及び可塑化モータ54が対向して配置されるものとして説明したが、これに限定されず、例えば、図4において、射出モータ46及び可塑化モータ54が幅Wの範囲から左右方向にはみ出さない範囲で、射出モータ46及び可塑化モータ54が、これらの出力軸46a,54aの中心軸A,Aを結ぶ線Xが仮想平面Pと所定の角度で交差するよう非対称(非対向)に配置される構成としても良い。また、例えば、図5において、射出モータ46及び可塑化モータ54が高さHの範囲から上下方向にはみ出さない範囲で、射出モータ46及び可塑化モタ54が、これらの出力軸46a,54aの中心軸A,Aを結ぶ線Xが仮想平面Pと所定の角度で交差するよう非対称(非対向)に配置される構成としても良い。
【0053】
上述した実施形態では、固定プレート10,10’が、ベース部2の前方側に固定的に立設されたプレート状部材であり、移動プレート20が、スライダを介して一対のレール部4上に配置されたプレート状部材であり、レール部4もベース部2上に配置されるものとして説明したが、これに限定されず、種々の構成を採用することが可能である。例えば、上記構成に代えて、固定プレート自体が、ベース部の機能を含んでいて、直接金型へ取り付けられ、固定プレートから移動プレート側へ延設させた案内部材により、移動プレートが移動を案内される構成であっても良い。
【0054】
上記のような変形例が本発明の範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0055】
1,1’ 2プレート式射出装置、2 ベース部、10,10’ 固定プレート、20 移動プレート、30 スクリュ、41 ボールねじ機構、44 ボールねじ軸(ねじ軸)、46 射出モータ、46a 射出モータの出力軸、54 可塑化モータ、54a 可塑化モータの出力軸、P 仮想平面
【要約】
【課題】 射出モータ及び可塑化モータをバランス良く配置しつつ、金型や金型取付盤に対する取付の自由度を向上させることが可能な2プレート式射出装置を提供する。
【解決手段】 固定プレートと、固定プレートに対して進退可能に設けられた移動プレートと、移動プレートを固定プレートに対して進退させる一対のボールねじ機構と、一対のボールねじ機構を駆動するための射出モータと、軸を中心として回転可能な状態で移動プレートに支持されたスクリュと、スクリュを軸を中心として回転させるための可塑化モータとを備え、移動プレートを固定プレートに対して進退させることでスクリュが進退可能な2プレート式射出装置であって、一対のボールねじ機構の一方のねじ軸と他方のねじ軸とを通る仮想平面を境として、一方側に射出モータが配置され、他方側に可塑化モータが配置されている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7