(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
切れ刃(41)を配置するためのヘッド部(11)と、前記ヘッド部(11)から長手方向(L)に延在する略四角柱形状のシャンク部(12)とを有する工具ボデー(10、110)であって、
流体を噴出する流体噴出口(26)と、前記流体噴出口(26)に接続する流体流路(27)と、前記流体流路(27)に接続する流体供給口(28、111)とを有し、
前記流体供給口(28、111)は、前記シャンク部(12)の前記長手方向(L)に延びるシャンク側面(15)に開口し、
前記流体流路(27)は、前記流体供給口(28、111)に向かうにつれ断面積が増加する拡径部(27a)を含み、
前記シャンク側面(15)は、前記流体供給口(28、111)を取り囲む平坦部(29)を有し、
前記平坦部(29)の表面粗さ(Ra)は、0.01μm以上0.8μm以下であり、
前記シャンク部(12)は、前記シャンク側面(15)と交差する第2のシャンク側面(16)を有し、
前記流体供給口(28、111)の開口部の寸法について、前記第2のシャンク側面(16)と直交する方向を高さ方向とすると、前記流体供給口(28、111)の開口部の高さ(A、A2)は、1mm以上10mm以下であり、
前記シャンク側面(15)の高さ(F)は、8mm以上20mm以下であり、
前記第2のシャンク側面(16)と直交する方向を高さ方向とすると、前記流体供給口(28、111)からの前記平坦部(29)の高さ(E1、E2)の最小値は、前記第1のシャンク側面(15)の高さ(F)に対して、20%以上48%以下であり、
前記シャンク側面(15)に対向する方向から見て、前記流体供給口(28)は、略円形状であり、
前記流体供給口(28)の直径(D)は、1mm以上5.1mm以下である工具ボデー。
前記シャンク側面(15)に対向する方向から見て、前記長手方向(L)における前記シャンク部(12)と反対側の前記ヘッド部(11)の最外端(19)について、前記最外端(19)から前記流体供給口(28、111)までの前記長手方向(L)における最小寸法(C)は、60mm以上95mm以下である請求項1から6のいずれか1項に記載の工具ボデー。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。また、以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0009】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る切削工具1を示す斜視図である。
図2は、切削工具1の内部構造がわかるように、隠れ線(破線)を表示した図である。この実施形態に係る切削工具1は、切削インサート40を有する旋盤用のバイトである。
【0010】
図1及び
図4に示すように、切削工具1は、クランプ部材(締め付けねじ)50を用いて、切削インサート40を工具ボデー10に固定している。
【0011】
切削インサート40は切れ刃41を有する。切削インサート40は、工具ボデー10のインサート座25へクランプするための、貫通穴を有する。切削インサート40は、略多角形板状である。すなわち、切削インサート40は、略多角形の2つの端面と、これらの端面をつなぐ周側面とを有する。この実施形態に係る切削インサート40の端面は、頂角が55°及び125°の略菱形である。切削インサート40の少なくとも一方の端面のうち、切れ刃41に接続する部分は、すくい面として機能する。切れ刃41に接続する周側面の部分は、逃げ面として機能する。なお、切削インサート40の形状は、略菱形に限らず様々なものが知られている。切削インサート40の形状は、本発明を適用するにあたって制限がないため、ここでは切削インサート40の詳細な説明を省略する。
【0012】
工具ボデー10は、ヘッド部11とシャンク部12とを有する。ヘッド部11とシャンク部12とは、接続部13で接続されている。ただし、この実施形態に係る工具ボデー10は、接続部13に徐々に変化する部分がなく、ヘッド部11とシャンク部12とが直接接続していると見ることもできる。
図3に示すように、工具ボデー10は、切削インサート40を着脱自在に受容するインサート座25をヘッド部11に有する。
図1から
図4に示すように、シャンク部12は略四角柱形状である。
図3及び
図4に示すように、シャンク部12に関して長手方向Lが定まる。すなわち、シャンク部12は、ヘッド部11から長手方向Lに延在している。
【0013】
工具ボデー10は、ヘッド部11側のヘッド端面20と、シャンク部12側のシャンク端面14と、これらを接続する側面とを有する。ヘッド端面20は、前端面と呼称することもできる。シャンク端面14は、後端面と呼称することもできる。ここでは、切削インサート40のすくい面に対応する側面を、上面と呼称し、切削インサート40の逃げ面に対応する側面を右側面と呼称する。また、上面と対向する側面を下面と呼称し、右側面と対向する側面を左側面と呼称する。ヘッド部11の右側面を第1のヘッド側面21と呼称し、シャンク部12の右側面を第1のシャンク側面15と呼称する。以下、同様に、ヘッド部11の上面を第2のヘッド側面22と呼称し、シャンク部12の上面を第2のシャンク側面16と呼称し、ヘッド部11の左側面を第3のヘッド側面23と呼称し、シャンク部12の左側面を第3のシャンク側面17と呼称し、ヘッド部11の下面を第4のヘッド側面24と呼称し、シャンク部12の下面を第4のシャンク側面18と呼称する。この実施形態に係る切削工具1のヘッド端面20からシャンク端面14までの寸法は、約120mmである。第1のシャンク側面15から第3のシャンク側面17までの寸法Fは、約12mmである。第1のシャンク側面15から第3のシャンク側面17までの寸法は、シャンク部12の高さFと呼称することもできる。また、高さ方向は第2のシャンク側面16(上面)と直交する方向と一致している。すなわち、シャンク部12の高さFは、第2のシャンク側面16と直交する方向の第1のシャンク側面15の高さFと一致している。第2のシャンク側面16から第4のシャンク側面18までの寸法は、約12mmである。すなわち、シャンク部12は約12mm角である。
【0014】
前述のとおり、ヘッド部11とシャンク部12とは、接続部13で接続されている。したがって、第1のシャンク側面15は第1のヘッド側面21と接続部13で接続されている。同様に、第2のシャンク側面16は第2のヘッド側面22と接続部13で接続され、第3のシャンク側面17は第3のヘッド側面23と接続部13で接続され、第4のシャンク側面18は第4のヘッド側面24と接続部13で接続されている。
【0015】
シャンク部12の角部は面取り面を有する。すなわち、第1のシャンク側面15と第2のシャンク側面16との交差稜線部は面取り面35を有する。同様に、第2のシャンク側面16と第3のシャンク側面17との交差稜線部は面取り面35を有し、第3のシャンク側面17と第4のシャンク側面18との交差稜線部は面取り面35を有し、第1のシャンク側面15と第4のシャンク側面18との交差稜線部は面取り面35を有する。これらの面取り面35は、シャンク面取り面35と呼称することもできる。さらに、シャンク端面14と第1のシャンク側面15との交差稜線部は面取り面を有する。同様に、シャンク端面14と第2のシャンク側面16との交差稜線部は面取り面を有し、シャンク端面14と第3のシャンク側面17との交差稜線部は面取り面を有し、シャンク端面14と第4のシャンク側面18との交差稜線部は面取り面を有する。この実施形態に係る切削工具1のシャンク面取り面35は、第1のシャンク側面15に対向する方向から見て、幅が約0.5mmである。同様に、シャンク部12のすべての面取り面の幅は、約0.5mmである。
【0016】
切れ刃41を有する切削インサート40を、工具ボデー10のヘッド部11に配置する。すなわち、工具ボデー10は、切れ刃41を配置するためにヘッド部11を有し、ヘッド部11がインサート座25を有し、切削インサート40を着脱自在にインサート座25へ装着する。切れ刃41は、工具ボデー10の第2のヘッド側面22と第1のヘッド側面21との交差稜線部に相当する位置に配置する。すなわち、切削インサート40を用いるとき、切削インサート40のすくい面を第2のヘッド側面22の一部とみなし、切削インサート40の逃げ面の一部の相当部分を第1のヘッド側面21の一部とみなす。
【0017】
工具ボデー10の第2のヘッド側面22とヘッド端面20との交差稜線部に相当する位置にも、切れ刃41を配置している。逆に言えば、切れ刃41が配置される位置に対応するように、第2のヘッド側面22及び第1のヘッド側面21を定める。
【0018】
第2のヘッド側面22には、ノズル部材31を装着している。ノズル部材31は、流体噴出口26を有する。この実施形態に係る切削工具1は、ヘッド端面20と第1のヘッド側面21との交差稜線部の付近にも、流体噴出口26を有する。ここでは、ノズル部材31に設けられた流体噴出口26を、第1の流体噴出口26aと呼称し、ヘッド端面20側に設けられた流体噴出口26を、第2の流体噴出口26bと呼称する。第1の流体噴出口26aは、すくい面側から切れ刃41に向けてクーラントやミスト又はエアーなどの流体を噴出する。第2の流体噴出口26bは、逃げ面側から切れ刃41に向けてクーラント、ミスト又はエアーなどの流体を噴出する。
【0019】
各々の流体噴出口26に流体流路27が接続している。流体流路27に流体供給口28が接続している。すなわち、流体流路27によって、流体供給口28と各々の流体噴出口26とが接続されている。この実施形態に係る切削工具1は、流体噴出口26が2つあるため、流体流路27は途中で2つの経路に分岐している。分岐した流体流路27の一部は、ノズル部材31の内部を通過する。すなわち、流体流路27の一部は、第2のヘッド側面22からノズル部材31へ延伸している。ノズル部材31は、切削加工中に動かないように、また、流体が漏れ出さないように、固定部材(ねじ)によって、第2のヘッド側面22に押し付けられている。なお、流体流路27は、ドリル加工などによる形成を容易にするため、一旦、穴をあけてから埋め栓32などで塞ぐこともできる。この実施形態に係る切削工具1は、2つの埋め栓32を用いて、流体流路27の使用しない部分を塞いでいる。埋め栓32は、おねじ部品又は閉塞部材と呼称することもできる。ただし、埋め栓32は着脱する必要性がないため、おねじ部品に限定されない。流体が漏れないように閉塞できれば、どのような埋め栓でもよい。
【0020】
図1から
図3に示すように、流体供給口28は、第1のシャンク側面15に開口している。
図3に示すように、第1のシャンク側面15に対向する方向から見て、流体供給口28の形状は略円形状である。流体供給口28の開口部の直径Dは、約5mmである。また、
図3に示すように、第2のシャンク側面(上面)16と直交する方向を高さ方向とすると、流体供給口28の開口部の高さAは、約5mmである。流体供給口28の中心は、第4のシャンク側面(下面)18から約6mmの位置にある。したがって、第4のシャンク側面18から流体供給口28までの距離E1は、約3.5mmである。また。流体供給口28の中心は、第2のシャンク側面16から約6mmの位置にある。第2のシャンク側面16から流体供給口28までの距離E2は、約3.5mmである。流体供給口28は、第2のシャンク側面16と第4のシャンク側面18との中央に配置されている。
【0021】
図3に示すように、第1のシャンク側面15に対向する方向から見て、長手方向Lにおける工具ボデー10のシャンク部12と反対側のヘッド部11の最外端19を定める。最外端19から流体供給口28までの長手方向Lにおける最小寸法Cは、約70mmである
【0022】
流体流路27は、流体供給口28の付近に拡径部27aを有する。拡径部27aは、流体供給口28に向かうにつれ、流体流路27の断面積を増加する。この実施形態に係る切削工具1の拡径部27aは、面取り面である。拡径部27aの面取りの幅は約0.5mmである。
【0023】
流体流路27は、流体供給口28の付近に、めねじ部31を有する。ただし、
図1から
図3は、めねじ部31のねじ形状が省略されて、簡易的に描かれている。実際の切削工具1には、めねじが形成されている。めねじ部31により、流体供給口28を使用しない場合に、おねじ部材(図示しない)によって流体流路27の一部を閉塞することができる。閉塞する場合のおねじ部材は、前述した埋め栓32や後述する従来タイプのおねじ部材34と同様の形状で、寸法がめねじ部31と係合するように異なる形状でよい。すなわち、めねじ部31と係合するおねじ部材は、六角穴付き止めねじなどでよい。
【0024】
切削工具1は、流体供給口28を取り囲むように、平坦面29を有する。なお、この実施形態に係る切削工具1は、第1のシャンク側面15の全面が平坦面29として機能する。この実施形態に係る切削工具1の平坦面29の表面粗さは、約0.5μmである。なお、ここでは表面粗さを算術平均粗さRa(JIS B 0601:2013)としている。
【0025】
この実施形態に係る切削工具1は、第1のシャンク側面15の平面部全体が平坦面29として機能する。すなわち、平坦面29の幅の最小値は、第4のシャンク側面18又は第2のシャンク側面16から、流体供給口28までの距離E1,E2からシャンク面取り面35の幅を差し引いた寸法であり、約3mmである。
【0026】
この実施形態に係る切削工具1は、従来技術の切削工具のように、ホースなども接続できる従来タイプの流体供給口33を2つ有する。
図2に示すように、従来タイプの流体供給口33は、シャンク端面14と第3のシャンク側面17とに、それぞれ1つずつ開口している。流体流路27は、流体供給口28からの流体流路と、従来タイプの流体供給口33からの流体流路とが合流する合流箇所を有する。従来タイプの流体供給口33が2つあるので、合流箇所も2つ有する。流体流路27は、従来タイプの流体供給口33の周辺に、各々のめねじ部を有し、従来タイプのおねじ部材34によって閉塞されている。従来タイプの流体供給口33を使用する際は、従来タイプのおねじ部材34を取り外す。なお、めねじ部はホースなどを接続するための接続部材と係合させてもよい。従来タイプの流体供給口33を使用する際は、前述のとおり、流体供給口28からの流体流路27をおねじ部材によって閉塞する。
【0027】
次に、第2の実施形態に係る切削工具100について説明する。切削工具100の説明は、第1の実施形態に係る切削工具1との主たる違いを説明し、同じ構成には同じ符号を付して説明を省略する。
【0028】
図5及び
図6に切削工具100の形状を示す。切削工具100は、クランプ部材(ねじ)50を用いて、切削インサート40を工具ボデー110に固定している。
【0029】
切削インサート40は切れ刃41を有する。工具ボデー110は、ヘッド部11とシャンク部12とを有する。切削インサート40の切れ刃41は、工具ボデー110の第2のヘッド側面22と第1のヘッド側面21との交差稜線部に相当する位置に配置している。また、工具ボデー110の第2のヘッド側面22とヘッド端面20との交差稜線部に相当する位置にも、切れ刃41を配置している。
【0030】
流体供給口111は、第1のシャンク側面15に開口している。
図6に示すように、第1のシャンク側面15に対向する方向から見て、流体供給口111の開口部の形状は略長円形状である。すなわち、流体流路27は、流体供給口111の付近に略長穴形状の凹部112を有する。第2のシャンク側面(上面)16と直交する方向を高さ方向とすると、流体供給口111の開口部の高さA2は、約6mmである。第1のシャンク側面15に対向する方向から見て、高さ方向と直交する方向を幅方向とすると、流体供給口111の開口部の幅Bは、約30mmである。
【0031】
切削工具1、100の切れ刃41周辺の材質は、特に限定されるものではないが、例えば超硬合金、サーメット、セラミックスおよび立方晶窒化ほう素を含む焼結体等の硬質材料、これら硬質材料の表面にPVD又はCVDによる被覆膜を被膜したもの、又は単結晶ダイヤモンド或いはダイヤモンドを含む焼結体の中から選定するとよい。
【0032】
以上のように構成された工具ボデー10、110は、次のように製造される。まず、工具ボデー10、110の外郭形状を切削加工する。次に、インサート座25の形状を切削加工する。このとき、ノズル部材31を装着するための穴やねじ形状を同時に切削加工してもよい。次に、流体流路27をドリルなどで切削加工する。次に、流体流路27の一部に拡径部27a及びめねじ部31を切削加工する。工具ボデー110のように、流体供給口111の開口部の形状を略長円形状などにする場合は切削加工する。最後に、めねじ部31におねじ部材を螺入することで、流体流路27の一部を閉塞する。この際に、埋め栓32や従来タイプのおねじ部材34などで閉塞する箇所があれば、すべての箇所を閉塞する。
【0033】
切削工具1、100の切削インサート40は、
図1に示すようにクランプ部材(締め付けねじ)を穴に差し込んで、締め付けねじにより締め付けることにより工具ボデー10、110に取り付けられる。なお、この切削インサート40の固定方法は特に限定されず、押さえ駒やくさびにより固定してもよい。旋盤加工時には、被切削物を旋盤のチャックに固定し、例えば水平軸周りに回転させる。そして、切削工具1、100の切れ刃41側を被切削物に近づけて、切れ刃41により被切削物を切削する。
【0034】
次に、これらの実施形態に係る切削工具1、100が奏する作用と効果について説明する。また、本発明の好ましい形態についても説明する。
【0035】
切削工具1、100は、旋盤加工に適する。実施形態に係る切削工具1、100は、いずれも頂角が55°及び125°の略菱形板状の切削インサート40を用いたが、これに限定されない。本発明は、突っ切り・溝入れ加工用やねじ切り加工用の切削工具にも適用できる。ただし、本発明は、機内のスペースが狭い小型の旋盤用の切削工具に、特に適する。例えば、自動盤と呼称される小型の旋盤用の切削工具に、特に適する。機内のスペースが狭い小型の旋盤は、機内にホースを設置すると、切りくずとホースとの接触による不具合が発生しやすいため、ホースを用いない接続方法が好ましい。
【0036】
本発明の切削工具1、100を、ホースを用いることなく旋盤の刃物台に装着するためには、流体供給口28、111に対応する刃物台流体流路の刃物台開口部(図示しない)を刃物台に有する旋盤を用いる。ここでは、工作機械側の構成の説明を省略する。工作機械側は、刃物台の対応する位置に刃物台流体流路の刃物台開口部を有していればよい。
【0037】
切削工具1、100は、流体供給口28、111が刃物台開口部と直接接続されることで機能する。すなわち、切削工具1、100の流体供給口28、111は、刃物台開口部に位置合わせされ、流体が漏れないように密閉されることで機能する。流体が漏れないように密閉するためには、例えば、シールなどで隙間を塞ぐことが考えられる。しかし、シールなどを用いると、シールの劣化によって、かえって流体が漏れ出すことがある。また、小型の旋盤用の切削工具は、一般的にシャンク部が細い。例えば、第2のシャンク側面(上面)16と直交する方向を高さ方向とすると、第1のシャンク側面15の高さ(F)は、8mm以上20mm以下の切削工具が使用される。このため、シールなどを配置するスペースが少なく、十分な密閉効果を得にくい。また、切削工具1、100の刃物台への着脱を繰り返したときなど、シールが脱落することもある。本発明の切削工具1、100は、シールなどを用いず、流体供給口28、111の周囲に平坦部29を有することで、流体が漏れ出すことを防止できる。
【0038】
平坦部29の表面粗さRaは、0.01μm以上0.8μm以下が好ましい。平坦部29は、旋盤の刃物台と密着して、流体が漏れ出さない程度の表面粗さRaとする。表面粗さRaは0.8μmを超えると、例えば流体の圧力が5MPa程度で、流体が漏れ出すことがある。平坦部29の表面粗さRaの下限値は、使用するときには制限されないが、平坦部29の表面粗さを0.01μm未満に形成すると製造コストが増大する場合がある。
【0039】
平坦部29の寸法について、第2のシャンク側面(上面)16と直交する方向を高さ方向とする。平坦部29の流体供給口28、111からの高さE1、E2の最小値は、0.5mm以上10mm以下が好ましい。平坦部29の流体供給口28、111からの幅の最小値が0.5mm未満のときは、平坦部29の幅が不足し、例えば流体の圧力が5MPa程度で、流体が漏れ出すことがある。平坦部29の高さE1,E2の最小値の上限値は、使用するときには制限されないが、高さE1、E2の最小値が10mmを超えるような広い平坦部29を、高精度に、前述の表面粗さRaで形成すると、製造コストが増大する場合がある。
【0040】
平坦部29の流体供給口28、111からの高さE1、E2の最小値は、第1のシャンク側面15の高さFに対して、20%以上48%以下が好ましい。平坦部29の流体供給口28、111からの幅の最小値に割合が20%未満のときは、平坦部29の幅が不足し、例えば流体の圧力が5MPa程度で、流体が漏れ出すことがある。平坦部29の高さの割合の最小値の上限値は、使用するときには制限されないが、割合が48%を超えるような広い平坦部29を、高精度に、前述の表面粗さRaで形成すると、製造コストが増大する場合がある。高さE1、E2の最小値は、第1のシャンク側面15の高さFに対して、25%以上40%以下が、さらに好ましい。
【0041】
小型の旋盤に用いる場合、切削工具1、100の第1のシャンク側面(15)の高さ(F)は、8mm以上20mm以下が好ましい。さらに、シャンク部12は、8mm角以上20mm角以下の断面正方形の形状が好ましい。
【0042】
流体供給口28、111の開口部の高さA、A2は、1mm以上10mm以下が好ましい。高さA、A2が1mm未満のときは、流体の流量が不足しやすく、十分な量の流体を供給することが難しい。高さA、A2が10mmを超えるときは、例えば、第1のシャンク側面15の高さFが12mm以下の切削工具に適用することが難しい。
【0043】
流体供給口28、111は、略円形状、略長円形状及び略楕円形状から選択されることが好ましい。流体供給口28、111が略円形状であると、周囲の平坦部29の必要面積を狭くすることができ、平坦部29を高精度に形成しやすくなる。一方、流体供給口28、111が略長円形状及び略楕円形状から選択されると、切削工具1、100の突き出し長さを刃物台に対して調整することが容易になる。なお、図示しないが、複数の流体供給口28を並べることでも、切削工具の突き出し長さを刃物台に対して調整することが容易になる。また、図示しないが、刃物台側の刃物台流体流路の刃物台開口部を、略長円形状及び略楕円形状から選択される形状にすることでも、切削工具1、100の突き出し長さを刃物台に対して調整することが容易になる。本発明の第1の実施形態の切削工具1は、刃物台開口部が略長円形状である場合に、流体供給口28が略円形状でも、切削工具1の突き出し長さを刃物台に対して調整できる。また、平坦部29が長手方向Lにおいて十分に広いため、刃物台開口部の略長円形状の全体を密閉することができる。
【0044】
流体供給口28が略円形状の場合、流体供給口28の開口部の直径Dは、1mm以上5.1mm以下が好ましい。直径Dが1mm未満のときは、流体の流量が不足しやすく、十分な量の流体を供給することが難しい。直径Dが5.1mmを超えるときは、ドリルによる切削加工の製造コストが増大する場合がある。
【0045】
流体流路27は、流体供給口28、111に向かうにつれ断面積が増加する拡径部27aを有する。このため、流体供給口28、111の断面積を全体的な流体流路27の断面積よりも広くできる。したがって、流体供給口28、111の形状(断面積)を、刃物台側の刃物台流体流路の形状(断面積)と適合させることが容易になる。また、例えば、全体的な流体流路27の断面積を刃物台流体流路の断面積と同程度にする場合には、切削工具1の装着時の取り付け位置の多少の誤差を吸収し、刃物台流体流路の断面積よりも断面積の狭い部分が流路上に生じないように、切削工具1、100を装着できる。
【0046】
拡径部27aは面取り面であることが好ましい。拡径部27aの面取りの幅は、0.2mm以上2mm以下であることが好ましい。面取り面は、例えば切削加工によって、流体流路27の一部に容易に設けることができる。拡径部27aの面取りの幅は、0.2mm未満のときは、切削工具1の装着時の取り付け位置の誤差を吸収することが難しくなる。拡径部27aの面取りの幅の上限値は、使用する上での制約はないが、2mmを超えると開口部の高さA、A2が増大し、例えば、第1のシャンク側面15の高さFが12mm以下の切削工具に適用することが難しくなる場合がある。
【0047】
流体流路27は、流体供給口111に凹部112を有することで、切削工具1の突き出し長さの調整に加えて、切削工具1の装着時の取り付け位置の多少の誤差を吸収し、刃物台流体流路の断面積よりも断面積の狭い部分が流路上に生じないように、切削工具100を装着できる。流体供給口111の開口部は、刃物台の刃物台流体流路の刃物台開口部を完全に覆うことが好ましい。すなわち、流体供給口111の開口部の高さA2は、刃物台開口部の高さよりも大きいことが好ましく、流体供給口111の開口部の幅Bは、刃物台開口部の幅よりも大きいことが好ましい。
【0048】
長手方向Lについて、流体供給口28、111は、ヘッド部11の最外端19から、最小寸法Cが60mm以上95mm以下 であることが好ましい。特に、装着される旋盤が、自動盤と呼称される小型の旋盤であるときは、最小寸法Cが60mm以上95mm以下 であることが好ましい。最小寸法Cが60mm未満であると、刃物台の経時変化により、流体が漏れやすくなる場合がある。最小寸法Cが95mmを超えると、自動盤と呼称される小型の旋盤への装着が困難になる場合がある。
【0049】
流体供給口28、111は、第1のシャンク側面15に開口することが好ましい。特に、自動盤と呼称される小型の旋盤用の切削工具のときは、逃げ面側に対応する第1のシャンク側面15に開口することが好ましい。流体供給口28、111が第1のシャンク側面15に開口すると、くし型刃物台などに従来から多く用いられる向きに切削工具1を装着するときに、平坦部29が刃物台と密着するように押し付けられる。
【0050】
第1のシャンク側面15と第2のシャンク側面16との交差稜線部は、シャンク面取り面35を有することが好ましい。第1のシャンク側面15と第4のシャンク側面18との交差稜線部は、シャンク面取り面35を有することが好ましい。第2のシャンク側面16と直交する方向を高さ方向とすると、シャンク面取り面35の高さは、0.2mm以上2mm以下であることが好ましい。このような形状にシャンク面取り面35が形成されると、平坦面29を着実に刃物台へ密着させることが容易になる。シャンク部12のすべての角部が面取り面を有することが、さらに好ましい。なお、すべての面取り面が同じ幅にされることには限定されない。面取り面の幅は、場所によって異なってもよい。
【0051】
流体噴出口26は、第2のヘッド側面22、第1のヘッド側面21及びヘッド端面20の少なくとも1つに開口することが好ましい。特に、流体噴出口26は、第2のヘッド側面22に少なくとも1つ開口し、第1のヘッド側面21及びヘッド端面20のいずれか一方に、さらに開口することが好ましい。このように流体噴出口26が配置されると、切れ刃41の近傍から効率よく流体を噴出することができるため、切削性能が向上できる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の切削工具は、種々の変更が可能である。例えば、前述の実施形態では、略菱形板状の切削インサート40を用いたが、それに限定されず様々な形態のものに適用できる。
【0053】
本発明の切削工具は、切削インサートを用いる形態の切削工具にも限定されない。チップをろう付けする形態の切削工具や、一体タイプの切削工具などにも適用可能である。
【0054】
前述した実施形態では本発明をある程度の具体性をもって説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明については、請求の範囲に記載された発明の精神や範囲から離れることなしに、さまざまな改変や変更が可能であることを理解されなければならない。すなわち、本発明には、請求の範囲によって規定される本発明の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が含まれる。
【解決手段】 本発明の工具ボデーは、切れ刃を配置するためのヘッド部と、ヘッド部から長手方向に延在する略四角柱形状のシャンク部とを有する工具ボデーであって、流体を噴出する流体噴出口と、流体噴出口に接続する流体流路と、流体流路に接続する流体供給口とを有する。流体供給口は、シャンク部の長手方向に延びるシャンク側面に開口する。流体流路は、流体供給口に向かうにつれ断面積が増加する拡径部を含む。シャンク側面は、流体供給口を取り囲む平坦部を有する。平坦部の表面粗さRaは、0.01μm以上0.8μm以下である。