特許第6361816号(P6361816)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6361816
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】クロマトグラフ用制御装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/17 20060101AFI20180712BHJP
   G01N 30/74 20060101ALI20180712BHJP
   G01N 30/86 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   G01N21/17 D
   G01N30/74 E
   G01N30/86 Q
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-506003(P2017-506003)
(86)(22)【出願日】2015年3月19日
(86)【国際出願番号】JP2015058377
(87)【国際公開番号】WO2016147415
(87)【国際公開日】20160922
【審査請求日】2017年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 恭章
(72)【発明者】
【氏名】早川 禎宏
【審査官】 横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平4−204374(JP,A)
【文献】 特開平7−98270(JP,A)
【文献】 特開昭63−3257(JP,A)
【文献】 特開昭61−128165(JP,A)
【文献】 特開平5−72191(JP,A)
【文献】 特開昭50−139791(JP,A)
【文献】 特開昭50−99588(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/164952(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/111282(WO,A1)
【文献】 米国特許第5043928(US,A)
【文献】 米国特許第5822060(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/61
G01N 30/00−30/96
G01J 3/00− 3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマトグラムの目的成分のピークの時間帯において、紫外領域以外の1つの波長領域で測定する単波長測定モードでクロマトグラフを動作させる単波長測定部と、
クロマトグラムの前記目的成分のピーク以外の時間帯において、紫外領域を含む複数の波長領域で測定する多波長測定モードでクロマトグラフを動作させる多波長測定部と、
クロマトグラムの前記目的成分のピークの時間帯において前記単波長測定モードに切り替え、クロマトグラムの前記目的成分のピーク以外の時間帯において前記多波長測定モード切り替えるモード切替部と
を備えるクロマトグラフ用制御装置。
【請求項2】
更に、ユーザーにクロマトグラムの時間範囲に応じた単波長測定モードと多波長測定モードの切り替えのスケジュールであるタイムプログラムを作成させるタイムプログラム作成部を備えることを特徴とする請求項1に記載のクロマトグラフ用制御装置。
【請求項3】
クロマトグラフを制御するためのコンピュータを
クロマトグラムの目的成分のピークの時間帯において、紫外領域以外の1つの波長領域で測定する単波長測定モードでクロマトグラフを動作させる単波長測定部と、
クロマトグラムの前記目的成分のピーク以外の時間帯において、紫外領域を含む複数の波長領域で測定する多波長測定モードでクロマトグラフを動作させる多波長測定部と、
クロマトグラムの前記目的成分のピークの時間帯において前記単波長測定モードに切り替え、クロマトグラムの前記目的成分のピーク以外の時間帯において前記多波長測定モード切り替えるモード切替部と
して機能させることを特徴とするクロマトグラフ制御用プログラム。
【請求項4】
更に、ユーザーにクロマトグラムの時間範囲に応じた単波長測定モードと多波長測定モードの切り替えのスケジュールであるタイムプログラムを作成させるタイムプログラム作成部としても機能することを特徴とする請求項3に記載のクロマトグラフ制御用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクロマトグラフに関し、特にその動作を制御するクロマトグラフ用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフ10は、図1に示すように、分離カラム11、移動相12を分離カラム11に送液する送液ポンプ13、試料を移動相中に注入するインジェクタ14、分離カラム11で分離された試料中の成分を検出する検出器15等から成る。なお、成分を検出した後、各成分を分離して取り出すこと(分取)も可能である。
【0003】
検出器15は、図2に示すように、分離カラム11から溶出した試料を収容するサンプルセル24、サンプルセル24に照射するための所定の波長の光を生成する光源21と分光素子22、分光された光をサンプルセル24への照射光とサンプルセル24を通過しない参照光に分割する分割光学系23、サンプルセル24を通過した測定光及びサンプルセル24を通過しない参照光の強度を測定する受光部25等から成り、試料の波長毎の吸光度(吸光度スペクトル)を測定することにより試料中の成分を特定し、或いは、試料中の目的成分に応じた波長の光の吸光度を測定することにより該目的成分の濃度を検出する。
【0004】
多くの物質は特に紫外領域に吸光特性を持つ。よって、目的成分の吸光波長と同時に紫外域の測定を行うと、不純物測定も行うことが出来る。また、分離カラム11での成分の分離が甘くても、成分間の吸光波長に差があれば、波長毎には分離したピークデータを得ることができ、分離した解析を行うことができる。そのため、複数波長を同時に測定するという方法(以下、これを「多波長測定」と呼ぶ。また、これに対して前記の1波長のみを用いる方法を「単波長測定」と呼ぶ。)も行われる。
【0005】
多波長測定には、図3Aに示すように、サンプルセルに多波長の光を照射し、フォトダイオード等の光検出素子を複数並べた多波長検出器(フォトダイオードアレイ)26で複数波長を一挙に測定する方法と、複数の波長を短時間で切り替えることにより実質的に複数波長を同時に測定するようにした方法がある。後者のタイプでは更に、図3Bに示すように、光源(図3BではLED)21a、21bを複数用意して、それらを切り替える方法と、図3Cに示すように、光源21は1つであるものの、分光素子22を回動することにより波長を切り替える方法がある。分光素子22を動かす方法(図3C)は素早い波長の切り替えが難しいため、高速サンプリングが出来ない。よってクロマトピーク幅の狭いような高速分析には適していない。しかしながら低中速の分析の場合は、装置構成が簡単であるため、簡易的に前記メリットを持つ多波長検出を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平04-038446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
多くの物質は紫外領域に吸収波長を持つ。従って、前記不純物測定や、複数成分を含んだサンプルを一斉に分析する一斉分析の場合は測定波長を紫外領域に設定して分析することが多い。しかし、一部の成分には、紫外線により変質して(破壊されて)しまうものがある。目的成分が紫外線による破壊が著しい場合には、強い紫外線を用いることは避けなければならず、可視域や赤外域等の紫外域以外の波長領域で測定するか、減光フィルタを用いて紫外線強度を下げなければならない。
【0008】
そこで、従来、時間を指定して測定波長を切り替えるタイムプログラム機能(特許文献1)を備え、クロマトグラムの目的成分のピークの時間範囲内ではその目的成分が変質しない波長で測定を行い、それ以外の時間範囲では紫外域の波長で測定をする等、測定波長を切り替える機能を持つ検出器が存在した。
【0009】
しかし、現状のタイムプログラム機能は「測定波長を指定する」というコマンドしか存在せず、例えば「目的成分ピークのみ紫外を避け、その他の成分のピークはサンプル吸光波長と紫外域で同時測定する」という設定を行おうとすると設定が煩雑であった。
【0010】
本発明は、これらの問題を解決し、簡易な設定で、目的成分を変質させることなく、不純物測定や一斉分析が可能なクロマトグラフ用制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために成された本発明に係るクロマトグラフ用制御装置は、
クロマトグラムの目的成分のピークの時間帯において、紫外領域以外の1つの波長領域で測定する単波長測定モードでクロマトグラフを動作させる単波長測定部と、
クロマトグラムの前記目的成分のピーク以外の時間帯において、紫外領域を含む複数の波長領域で測定する多波長測定モードでクロマトグラフを動作させる多波長測定部と、
クロマトグラムの前記目的成分のピークの時間帯において前記単波長測定モードに切り替え、クロマトグラムの前記目的成分のピーク以外の時間帯において前記多波長測定モード切り替えるモード切替部と
を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るクロマトグラフ用制御装置において、単波長測定部は、前記のように、測定対象に1波長のみの光を照射し、それを透過した光を測定する。多波長測定部は、測定対象に複数の波長の光を同時に(又は、実質的に同時に)照射し、測定対象を透過した光を測定する。
【0013】
モード切替部は、これら単波長測定部の動作(単波長測定モード)と多波長測定部の動作(多波長測定モード)を、クロマトグラムの時間範囲に応じて切り替える。例えば、クロマトグラムの目的成分のピーク範囲内の時間帯では目的成分が変質しないような1つの波長で測定を行う単波長測定モードとし、それ以外の時間帯では目的成分とそれ以外の成分を検出する多波長測定モードで測定するようにする。
【0014】
目的成分のピークの時間帯は、予め同じ試料で測定することにより調べておく。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るクロマトグラフ用制御装置では、1つのクロマトグラフ測定(クロマトグラム)の中で単波長測定モードと多波長測定モードを適切に使い分けることができるため、簡便に目的成分を変質させることなく、また、他成分ピークも同時検出することができるクロマトグラフの制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明が実施し得る液体クロマトグラフの全体構成図。
図2】液体クロマトグラフの1波長検出器の一例の概略構成図。
図3A】液体クロマトグラフの多波長検出器の一例(フォトダイオードアレイ型)の概略構成図。
図3B】液体クロマトグラフの多波長検出器の他の例(光源切替型)の概略構成図。
図3C】液体クロマトグラフの多波長検出器の更に他の例(分光素子回動型)の概略構成図。
図4】本発明の一実施例である液体クロマトグラフ用制御装置の概略構成図。
図5】実施例の液体クロマトグラフ用制御装置に接続されるワークステーションの画面に表示されるタイムプログラム作成画面の一例を示す図。
図6】実施例の液体クロマトグラフ用制御装置の入力部及び表示部を含む操作パネルの正面図。
図7A】実施例の液体クロマトグラフ用制御装置においてタイムプログラムを作成する際の表示部の一表示例を示す図。
図7B】実施例の液体クロマトグラフ用制御装置においてタイムプログラムを作成する際の表示部の別の表示例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係るクロマトグラフ用制御装置(以下、「制御装置」という。)を用いた液体クロマトグラフによる測定の一例を説明する。本実施例の液体クロマトグラフ10の全体構成は図1に示すとおりであり、分取機能(分取部16)を備えている。検出器15は図3Cに示すタイプのもので、分光素子22には分光波長を変化させるためにその角度を変える回転駆動装置27が設けられている。光源としては、D2(重水素)ランプ及びW(タングステン)ランプのいずれも選択して使用することができる。
【0018】
この液体クロマトグラフ10を制御するクロマトグラフシステム100は、液体クロマトグラフ10の各部を制御することにより試料に含まれる各成分を分離し、更には目的成分を分取するという一連の動作をさせるためのシステムであり、ポンプ13やインジェクタ14、検出器15、分取部16をそれぞれ制御する各制御部33、34、35、36の他、システムコントローラ30及びワークステーション40を含む。各制御部33、34、35、36及びシステムコントローラ30はコンピュータと専用の制御プログラムにより構成されている。ワークステーション40は汎用のコンピュータに各種専用及び汎用プログラムがインストールされたものであり、システムコントローラ30を通じて液体クロマトグラフ10のほぼ全ての動作を制御することができる。従って、本実施例ではクロマトグラフシステム100全体が本発明のクロマトグラフ用制御装置に該当する。
【0019】
本実施例のワークステーション40には、一般のコンピュータに含まれる中央処理部31及び記憶部32の他、本発明に関連する、ユーザーがタイムプログラムを作成することを支援するTMプログラム作成部37と、作成されたタイムプログラムに従って液体クロマトグラフ10の各部を動作させるTMプログラム実行部38が含まれる。これらについては後に詳しく述べる。
【0020】
記憶部32は、中央処理部31が処理を行う際に使用する一時記憶領域の他、電源が切断されても記憶内容を保持する不揮発記憶領域が含まれ、不揮発記憶領域には、上記専用制御プログラムの他、液体クロマトグラフ各部を様々に動作させるためのパラメータ等が記憶される。この不揮発記憶領域に、本液体クロマトグラフ10を1波長モード(単波長動作モード)で動作させるためのプログラム及びパラメータと、2波長モード(多波長動作モード)で動作させるためのプログラム及びパラメータも記憶されている。
【0021】
本実施例のクロマトグラフシステム100により試料中の成分を分離し、特定の一又は複数の目的成分を採取する場合の動作を説明する。この試料に目的成分以外の成分(不純物など)が含まれている場合、検出器15において1波長のみで吸光度測定を行ってもそれらの成分がどれくらいあるか、また、目的ピークから十分に分離できたかを確認できない可能性がある。この場合に分取しても純度は保障されない。そこで、2波長で吸光度測定を行うことにより、より確実な目的成分のみの分離抽出が可能となる。しかし、紫外線はエネルギーの高い放射線であるため、この目的成分が紫外線により変質する可能性がある。この場合、クロマトグラムの目的成分のピークの時間帯(分取する時間帯)においては、その波長の照射を避けなければならない。そこで、本実施例のクロマトグラフシステム100では、予めタイムプログラムを作成しておくことにより、クロマトグラムの任意の時間帯で1波長による検出(1波長モード)と2波長による検出(2波長モード)を使い分けることができるようになっている。
【0022】
タイムプログラムをワークステーション40で作成する場合は、画面上に図5に示すようなタイムプログラム編集画面を表示する。ユーザーは、予め同じ試料について得られたクロマトグラムにより1又は複数の目的成分のピークの時間帯(保持時間帯)を求めておき、そのデータを基に、1波長モードの時間帯と2波長モードの時間帯をタイムプログラムに記入する。図5の例では、時間0.00[min]から8.20[min]の間を250nmと500nmの2波長で測定する2波長測定モード、8.20[min]から9.80[min]の間を500nmだけで測定する1波長測定モード、9.80[min]以降を再び250nmと500nmの2波長で測定する2波長測定モードと設定している。なお、ここでの2波長は、時刻0.00[min]から8.20[min]の時間帯で用いた2波長と異なっていてもよい。
【0023】
次に、再度試料をインジェクタ14から注入し、目的成分の分取を行う。このとき、ユーザーが、先般作成したタイムプログラムを実行することを指定すると、ワークステーション40のTMプログラム実行部38はそのタイムプログラムを記憶部32から読み出し、各行の処理命令に従った動作を行う(各制御部に指示する)。すなわち、時刻0.00[min]から8.20[min]の間は、検出器15の分光素子22を短時間で往復回動させることにより、数値欄に記載された2つの波長(500nmと250nm)で測定を行い、8.20[min]から9.80[min]の間は分光素子22を所定角度に保持することにより数値欄に記載された1波長(500nm)で測定を行う。9.80[min]以降は再び指定された2波長で測定を行う。
【0024】
こうして、ワークステーション40のTMプログラム実行部38の動作により、1波長モードと2波長モードが切り替えて実行され、目的成分が変性することなく、不純物とも分離されたことを確認したうえで、目的成分が分取部16において分取される。
【0025】
上記実施例は、検出器15が図3Cに示す分光素子回動型のものについて説明したが、検出器が図3Bに示すような光源切替型のものであっても本発明は変わりなく実施することができる。
【0026】
上記実施例ではタイムプログラムをワークステーション40で編集する場合について説明したが、システムコントローラ30もしくは検出器制御部35の入力部41を操作することにより、表示部42に表示されるタイムプログラムの各行の入力欄にデータを入力してもよい(図7A及び図7B)。
【0027】
上記実施例では、目的ピークでは1波長で測定し目的ピーク以外の時間範囲では2波長で測定する例であったが、目的ピークを2波長で測定し目的ピーク以外の時間範囲では3波長で測定してもよい。つまりタイムプログラムによりスケジューリングされる波長の数は1波長ないしは2波長に限定されない。

【符号の説明】
【0028】
10…液体クロマトグラフ
11…分離カラム
12…移動相
13…送液ポンプ
14…インジェクタ
15…検出器
16…分取部
21…光源
22…分光素子
23…分割光学系
24…サンプルセル
25…受光部
27…分光素子回転駆動装置
30…システムコントローラ
31…中央処理部
32…記憶部
37…タイム(TM)プログラム作成部
38…タイム(TM)プログラム実行部
40…クロマトグラフ制御用ワークステーション
41…入力部
42…表示部
100…クロマトグラフシステム
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7A
図7B