特許第6361822号(P6361822)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6361822自動運転機器システム、非常停止端末、及び操作端末の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6361822
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】自動運転機器システム、非常停止端末、及び操作端末の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04Q 9/00 20060101AFI20180712BHJP
【FI】
   H04Q9/00 301B
【請求項の数】12
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-517829(P2017-517829)
(86)(22)【出願日】2016年4月8日
(86)【国際出願番号】JP2016061612
(87)【国際公開番号】WO2016181734
(87)【国際公開日】20161117
【審査請求日】2017年8月10日
(31)【優先権主張番号】特願2015-96934(P2015-96934)
(32)【優先日】2015年5月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】村中 武
【審査官】 白川 瑞樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−293412(JP,A)
【文献】 特開2003−212333(JP,A)
【文献】 特開2007−107305(JP,A)
【文献】 特開2013−030641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G1/00−1/133
1/14−1/20
35/00−37/02
B66F9/00−11/04
E02F9/00−9/18
9/24−9/28
H03J9/00−9/06
H04Q9/00−9/16
H05K3/30
13/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転機器を備える自動運転機器システムであって、
前記自動運転機器を非常停止させるための非常停止端末と、
前記自動運転機器の動作制御を行う制御装置とを備え、
前記非常停止端末は、
非常停止ボタンと、
前記制御装置との間で無線通信を行うことができる第一通信部であって、前記非常停止ボタンが操作された場合に、前記制御装置との間における無線通信の状態を変更する第一通信部とを有し、
前記制御装置は、(a)前記自動運転機器の動作制御のための指示を送信する操作端末、および、前記非常停止端末の両方と無線通信が可能である場合、前記操作端末からの指示に応じた前記自動運転機器の動作制御を行い、(b)前記第一通信部との間の無線通信の状態が変更された場合、前記自動運転機器の動作を停止させる
自動運転機器システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記第一通信部との無線通信を継続して行っている期間において、前記操作端末から前記指示を受信した場合、前記指示に応じた前記自動運転機器の動作制御を行い、
前記第一通信部との無線通信が停止した場合に、前記自動運転機器の動作を停止させる
請求項1記載の自動運転機器システム。
【請求項3】
前記非常停止端末はさらに、前記操作端末との間で、前記自動運転機器の動作制御の可能化のための、所定の情報の送信及び受信の少なくとも一方を含む可能化通信を行う第二通信部を有し、
前記制御装置は、前記可能化通信が行われた後に、前記操作端末および前記非常停止端末の少なくとも一方から送信される信号を受信した場合、前記操作端末からの前記指示に応じた前記自動運転機器の動作制御を行う
請求項1または2に記載の自動運転機器システム。
【請求項4】
前記第一通信部は、前記第二通信部が、前記操作端末との間で前記可能化通信を行った後に、前記所定の情報である、前記操作端末に関する情報を含む信号を前記制御装置に送信し、
前記制御装置は、前記非常停止端末から送信される、前記操作端末に関する情報を含む信号を受信したことを少なくとも1つの条件として、前記操作端末からの前記指示に応じた前記自動運転機器の動作制御を行う
請求項3記載の自動運転機器システム。
【請求項5】
前記第二通信部は、前記可能化通信において、前記所定の情報である、前記操作端末の識別情報である第一識別情報を、前記操作端末から受信し、
前記第一通信部は、前記操作端末に関する情報である前記第一識別情報を含む信号を前記制御装置に送信する
請求項4記載の自動運転機器システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記操作端末から送信される、前記非常停止端末に関する情報を含む信号を受信したことを少なくとも1つの条件として、前記操作端末からの前記指示に応じた前記自動運転機器の動作制御を行う
請求項3〜5のいずれか1項に記載の自動運転機器システム。
【請求項7】
前記第二通信部は、前記可能化通信において、前記所定の情報である、前記非常停止端末の識別情報である第二識別情報を、前記操作端末に送信し、
前記制御装置は、前記操作端末から送信される、前記非常停止端末に関する情報である前記第二識別情報を含む信号を受信したことを少なくとも1つの条件として、前記操作端末からの前記指示に応じた前記自動運転機器の動作制御を行う
請求項6記載の自動運転機器システム。
【請求項8】
前記非常停止端末はさらに、人体のいずれかの位置に前記非常停止端末を着脱自在に装着させる装着部材を有する
請求項1〜7のいずれか1項に記載の自動運転機器システム。
【請求項9】
制御装置により動作制御が行われる自動運転機器を非常停止させるための非常停止端末であって、
前記制御装置は、無線通信を介して操作端末から送信される指示に応じて前記自動運転機器の動作制御を行うことが可能であり、
前記非常停止端末は、
非常停止ボタンと、
前記制御装置との間で無線通信を行うことができる第一通信部であって、前記非常停止ボタンが操作された場合に、前記制御装置との間における無線通信の状態を変更する第一通信部と、
前記操作端末との間で、前記操作端末からの指示に応じた前記自動運転機器の動作制御の可能化のための、所定の情報の送信及び受信の少なくとも一方を含む可能化通信を行う第二通信部と
を備える非常停止端末。
【請求項10】
自動運転機器の動作制御を行う制御装置に無線通信を介して指示することで、前記指示に応じた自動運転機器の動作制御を前記制御装置に行わせることが可能な操作端末の制御方法であって、
前記自動運転機器との間で無線通信を行う非常停止端末であって、前記自動運転機器を非常停止させることのできる非常停止端末との間で、前記自動運転機器の動作制御の可能化のための、所定の情報の送信及び受信の少なくとも一方を含む可能化通信を行う可能化通信ステップを含む
操作端末の制御方法。
【請求項11】
さらに、前記可能化通信ステップの後に、前記所定の情報である、前記非常停止端末に関する情報を含む信号を、前記制御装置に送信する信号送信ステップを含む
請求項10記載の操作端末の制御方法。
【請求項12】
前記可能化通信ステップは、前記所定の情報である、前記非常停止端末の識別情報を受信する識別情報受信ステップを含み、
前記信号送信ステップでは、前記識別情報受信ステップにおいて受信した、前記非常停止端末に関する情報である前記識別情報を含む信号を前記制御装置に送信する
請求項11記載の操作端末の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動運転機器と、自動運転機器の動作制御を行う制御装置と、自動運転機器を非常停止させる非常停止端末とを備える自動運転機器システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無人で荷物を搬送する搬送台車等の自動運転機器を備える自動運転機器システムが存在する。このような自動運転機器システムでは、作業者は、例えば、携帯型の操作端末を操作することで、無線通信を介した自動運転機器の遠隔操作を行うことができる。
【0003】
例えば特許文献1には、搬送台車等の設備を、リモートコントローラを用いて操作する通信システムが開示されている。この通信システムでは、リモートコントローラと設備との間で、赤外線と無線とを併用して通信する。リモートコントローラから設備へ、赤外線通信により無線通信用の周波数を指定すると共に、設備からリモート制御装置へ指定された周波数で無線で返信する。
【0004】
上記構成によれば、赤外線は指向性があるので、意図しない設備にリモートコントローラから呼びかけることはない。また設備はリモートコントローラへ、指定された周波数で無線で返信するので、無線通信が干渉する可能性を小さくできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−260773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
搬送台車等の自動運転機器の動作範囲およびその周辺の領域は、例えば、人の立ち入りを制限する侵入防止柵によって、人(作業者)の通常の活動領域から隔離されている。
【0007】
また、自動運転機器を、無線通信を介して操作するための操作端末として、例えば、市販されている汎用の携帯型端末装置を採用する場合、自動運転機器を非常停止させる機能(非常停止機能)であって、所定の安全規格を満たす非常停止機能を実装させることは、困難または実質的に不可能である。そのため、作業者が携帯する無線式の操作端末からの操作は、作業者(操作端末)が侵入防止柵の外に存在するときのみに限定される。また、自動運転機器のメンテナンス等のために、作業者が侵入防止柵の中に立ち入った場合、作業者は、有線式の非常停止ボタン付きリモコンを用いて、自動運転機器を操作する必要がある。
【0008】
つまり、作業者は、無線式かつ携帯型の操作端末から、自動運転機器を制御する制御装置等と通信ケーブルで接続された操作端末に持ち替えて、メンテナンス等の作業を行う必要がある。このことは、例えば、メンテナンス等の作業効率の観点から好ましいとは言えない。
【0009】
本発明は、上記従来の課題を考慮し、安全で作業性のよい自動運転機器システム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る自動運転機器システムは、自動運転機器を備える自動運転機器システムであって、前記自動運転機器を非常停止させるための非常停止端末と、前記自動運転機器の動作制御を行う制御装置とを備え、前記非常停止端末は、非常停止ボタンと、前記制御装置との間で無線通信を行うことができる第一通信部であって、前記非常停止ボタンが操作された場合に、前記制御装置との間における無線通信の状態を変更する第一通信部とを有し、前記制御装置は、(a)前記自動運転機器の動作制御のための指示を送信する操作端末、および、前記非常停止端末の両方と無線通信が可能である場合、前記操作端末からの指示に応じた前記自動運転機器の動作制御を行い、(b)前記第一通信部との間の無線通信の状態が変更された場合、前記自動運転機器の動作を停止させる。
【0011】
この構成によれば、操作端末と非常停止端末とのペアが、制御装置と無線通信が可能である場合、制御装置は、操作端末からの指示に応じた自動運転機器の動作制御(操作端末からの機器操作)を行う。
【0012】
このように、制御装置が、操作端末を用いた自動運転機器の遠隔操作が可能となるよう動作した場合であっても、作業者は、非常停止端末を用いた遠隔操作による自動運転機器の非常停止が可能であるため、所定の安全性は確保される。
【0013】
また、操作端末および非常停止端末は、ともに、制御装置と無線通信を行うため、例えば通信用のケーブルが、作業者が行う自動運転機器のメンテナンスの作業等の邪魔になるようなことがない。
【0014】
このように、本態様の自動運転機器システムは、安全で作業性のよい自動運転機器システムである。
【0015】
また、本発明の一態様に係る自動運転機器システムにおいて、前記制御装置は、前記第一通信部との無線通信を継続して行っている期間において、前記操作端末から前記指示を受信した場合、前記指示に応じた前記自動運転機器の動作制御を行い、前記第一通信部との無線通信が停止した場合に、前記自動運転機器の動作を停止させるとしてもよい。
【0016】
この構成によれば、作業者が操作端末を用いて自動運転機器を操作している場合、その操作が行われている間は、非常停止端末と制御装置との間の無線通信が継続して行われている。そのため、非常停止端末による自動運転機器の非常停止がより確実化され、操作端末からの機器操作における安全性がより向上する。
【0017】
また、本発明の一態様に係る自動運転機器システムにおいて、前記非常停止端末はさらに、前記操作端末との間で、前記自動運転機器の動作制御の可能化のための、所定の情報の送信及び受信の少なくとも一方を含む可能化通信を行う第二通信部を有し、前記制御装置は、前記可能化通信が行われた後に、前記操作端末および前記非常停止端末の少なくとも一方から送信される信号を受信した場合、前記操作端末からの前記指示に応じた前記自動運転機器の動作制御を行うとしてもよい。
【0018】
この構成によれば、操作端末と非常停止端末との間で、所定のルールに従った通信が行われることで、操作端末および非常停止端末の少なくとも一方から制御装置に信号が送信される。その結果、制御装置は、操作端末からの指示に応じた自動運転機器の動作制御を行う。
【0019】
つまり、制御装置は、例えば操作端末および非常停止端末の一方のみとの間の無線通信が確立している場合、他方から送信される信号を受信することで、操作端末および非常停止端末の両方が、制御装置と無線通信が可能な状態にあることを確認することができる。その結果、制御装置は、操作端末からの指示に応じた自動運転機器の動作制御を行うように動作する。言い換えると、可能化通信の成立は、操作端末と非常停止端末とのペアが有効な状態であることの証明となり、その結果、制御装置は、操作端末からの機器操作が可能となるよう動作する。
【0020】
例えば、操作端末を携帯した作業者が自動運転機器に比較的に近い位置に存在することなどにより、操作端末からの機器操作が一旦禁止された場合であっても、可能化通信が行われることで、操作端末からの機器操作が可能となる。この場合であっても、作業者は、非常停止端末を用いて自動運転機器を非常停止させることが可能であるため、所定の安全性は確保される。
【0021】
また、本発明の一態様に係る自動運転機器システムにおいて、前記第一通信部は、前記第二通信部が、前記操作端末との間で前記可能化通信を行った後に、前記所定の情報である、前記操作端末に関する情報を含む信号を前記制御装置に送信し、前記制御装置は、前記非常停止端末から送信される、前記操作端末に関する情報を含む信号を受信したことを少なくとも1つの条件として、前記操作端末からの前記指示に応じた前記自動運転機器の動作制御を行うとしてもよい。
【0022】
この構成によれば、制御装置は、非常停止端末を介して、操作端末に関する情報を取得することができる。そのため、制御装置は、例えば、操作端末と非常停止端末とのペアの存在を的確に認識することができる。つまり、制御装置は、操作端末および非常停止端末のうちの非常停止端末から送信される情報のみに基づいて、操作端末の認証を行うことが可能である。
【0023】
また、本発明の一態様に係る自動運転機器システムにおいて、前記第二通信部は、前記可能化通信において、前記所定の情報である、前記操作端末の識別情報である第一識別情報を、前記操作端末から受信し、前記第一通信部は、前記操作端末に関する情報である前記第一識別情報を含む信号を前記制御装置に送信するとしてもよい。
【0024】
この構成によれば、制御装置は、非常停止端末を介して、操作端末の識別情報を取得することができる。そのため、制御装置は、例えば、その後に自動運転機器の動作制御についての指示を受信した場合に、その指示の送信元の端末の適否の判断をより確実にまたはより迅速に行うことができる。
【0025】
また、本発明の一態様に係る自動運転機器システムにおいて、前記制御装置は、前記操作端末から送信される、前記非常停止端末に関する情報を含む信号を受信したことを少なくとも1つの条件として、前記操作端末からの前記指示に応じた前記自動運転機器の動作制御を行うとしてもよい。
【0026】
この構成によれば、制御装置は、操作端末を介して、非常停止端末に関する情報を取得することができる。そのため、制御装置は、例えば、操作端末と非常停止端末とのペアの存在を的確に認識することができる。つまり、操作端末が、適式な非常停止機能を有する非常停止端末と組み合わされた端末であることを、制御装置が認識することができる。すなわち、制御装置は、操作端末および非常停止端末のうちの操作端末からの情報のみに基づいて、操作端末の認証を行うことができる。
【0027】
また、本発明の一態様に係る自動運転機器システムにおいて、前記第二通信部は、前記可能化通信において、前記所定の情報である、前記非常停止端末の識別情報である第二識別情報を、前記操作端末に送信し、前記制御装置は、前記操作端末から送信される、前記非常停止端末に関する情報である前記第二識別情報を含む信号を受信したことを少なくとも1つの条件として、前記操作端末からの前記指示に応じた前記自動運転機器の動作制御を行うとしてもよい。
【0028】
この構成によれば、制御装置は、操作端末を介して、非常停止端末の識別情報を取得することができる。そのため、制御装置は、操作端末の認証をより確実にまたはより迅速に行うことができる。
【0029】
また、本発明の一態様に係る自動運転機器システムにおいて、前記非常停止端末はさらに、人体のいずれかの位置に前記非常停止端末を着脱自在に装着させる装着部材を有するとしてもよい。
【0030】
この構成によれば、例えば、作業者は、非常停止端末を、腕または手首などの、非常停止ボタンを押しやすい位置、または、メンテナンス等の作業の邪魔にならない位置に容易に装着できる。このことは、自動運転機器システムにおける安全性または作業性の向上に寄与する。
【0031】
また、本発明の一態様に係る非常停止端末は、制御装置により動作制御が行われる自動運転機器を非常停止させるための非常停止端末であって、前記制御装置は、無線通信を介して操作端末から送信される指示に応じて前記自動運転機器の動作制御を行うことが可能であり、前記非常停止端末は、非常停止ボタンと、前記制御装置との間で無線通信を行うことができる第一通信部であって、前記非常停止ボタンが操作された場合に、前記制御装置との間における無線通信の状態を変更する第一通信部と、前記操作端末との間で、前記操作端末からの指示に応じた前記自動運転機器の動作制御の可能化のための、所定の情報の送信及び受信の少なくとも一方を含む可能化通信を行う第二通信部とを備える。
【0032】
この構成によれば、非常停止端末は、操作端末との間で、操作端末からの機器操作を可能化するための可能化通信を行うことができる。また、可能化通信が行われることで、制御装置が、操作端末からの機器操作を許容するよう動作した場合において、作業者は、非常停止端末を用いて自動運転機器を非常停止させることが可能である。つまり、非常停止端末によれば、操作端末からの無線通信を介した自動運転機器の操作と、緊急時における自動運転機器の非常停止とを両立させることができる。
【0033】
また、本発明の一態様に係る操作端末の制御方法は、自動運転機器の動作制御を行う制御装置に無線通信を介して指示することで、前記指示に応じた自動運転機器の動作制御を前記制御装置に行わせることが可能な操作端末の制御方法であって、前記自動運転機器との間で無線通信を行う非常停止端末であって、前記自動運転機器を非常停止させることのできる非常停止端末との間で、前記自動運転機器の動作制御の可能化のための、所定の情報の送信及び受信の少なくとも一方を含む可能化通信を行う可能化通信ステップを含む。
【0034】
この制御方法によれば、操作端末に、非常停止端末との間で、所定の情報の送信及び受信の少なくとも一方を含む可能化通信を行わせることができる。つまり、操作端末と非常停止端末とがペアとなって所定のルールに従って通信を行うため、例えば、制御装置に、操作端末と非常停止端末とのペアの存在を認識させることが可能となる。
【0035】
また、本発明の一態様に係る操作端末の制御方法はさらに、前記可能化通信ステップの後に、前記所定の情報である、前記非常停止端末に関する情報を含む信号を、前記制御装置に送信する信号送信ステップを含むとしてもよい。
【0036】
この制御方法によれば、操作端末から制御装置へ、非常停止端末に関する情報が通知される。これにより、制御装置は、例えば、操作端末と非常停止端末とのペアの存在を的確に認識することができる。
【0037】
また、本発明の一態様に係る操作端末の制御方法において、前記可能化通信ステップは、前記所定の情報である、前記非常停止端末の識別情報を受信する識別情報受信ステップを含み、前記信号送信ステップでは、前記識別情報受信ステップにおいて受信した、前記非常停止端末に関する情報である前記識別情報を含む信号を前記制御装置に送信するとしてもよい。
【0038】
この制御方法によれば、制御装置は、操作端末を介して、非常停止端末の識別情報を取得することができる。そのため、制御装置は、操作端末の認証をより確実にまたはより迅速に行うことができる。
【0039】
なお、本発明は、上記の操作端末の制御方法に含まれる1以上のステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現すること、および、そのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能なCD−ROMなどの記録媒体として実現することもできる。また、当該プログラムは、インターネット等の通信ネットワークを介して配信されてもよい。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、安全で作業性のよい自動運転機器システム等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1は、実施の形態における自動運転機器システムの構成概要を示す斜視図である。
図2図2は、実施の形態における非常停止端末の構成概要を示す斜視図である。
図3図3は、実施の形態における自動運転機器システムの構成概要を示すブロック図である。
図4A図4Aは、実施の形態における操作端末の構成概要を示す図である。
図4B図4Bは、実施の形態における操作端末に表示されるユーザインタフェース画面の一例を示す図である。
図5図5は、操作端末からの機器操作が行われている状態を示す模式図である。
図6図6は、操作端末からの機器操作が不可能化された状態を示す模式図である。
図7図7は、操作端末からの機器操作が可能化された状態を示す模式図である。
図8図8は、実施の形態に係る自動運転機器システムにおける通信シーケンスの一例を示すシーケンス図である。
図9図9は、実施の形態に係る可能化通信およびその結果である機器操作の可能化の詳細例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下に、本発明の実施形態における自動運転機器システムについて、図面を参照しながら説明する。なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示したものではない。
【0043】
また、以下で説明する実施の形態は、包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0044】
まず、図1図3を用いて、本発明の実施の形態における自動運転機器システム10の構成概要を説明する。
【0045】
図1は、実施の形態における自動運転機器システム10の構成概要を示す斜視図である。図2は、実施の形態における非常停止端末200の構成概要を示す斜視図である。図3は、実施の形態における自動運転機器システム10の構成概要を示すブロック図である。
【0046】
図1に示すように、実施の形態における自動運転機器システム10は、スタッカクレーン30と、スタッカクレーン30の動作制御を行う制御装置100と、スタッカクレーン30を非常停止させるための非常停止端末200とを備える。
【0047】
スタッカクレーン30は、自動運転機器の一例であり、制御装置100から送信される制御信号に従って、荷物90の搬送およびラック80との間での荷物90の移載を行う装置である。
【0048】
本実施の形態では、スタッカクレーン30は、下部台車32および上部台車(図示せず)と、下部台車32および上部台車を接続する2本のマスト31と、2本のマスト31に沿って昇降する昇降台35とを備える。
【0049】
下部台車32は、例えば床面に設置された下レール12に沿って走行する台車であり、上部台車は、例えば天井面に設置された上レール(図示せず)に沿って走行する台車である。下部台車32と上部台車とは同期して移動し、これにより、2本のマスト31は鉛直方向と略平行な姿勢に維持される。
【0050】
昇降台35には、荷物90の移載を行う移載装置40が設置されている。本実施の形態における移載装置40は、スライドフォーク59によって荷物90の移載を行う装置である。スライドフォーク59は、例えばトッププレート、ミドルプレートおよびベースプレートで構成されるテレスコピック構造により、ラック80の方向に出退(伸縮)する。なお、移載装置40が実行する荷物90の移載方法に特に限定はなく、当該移載方法として、スカラーアーム方式またはプッシュプル方式が採用されてもよい。
【0051】
昇降台35は、ワイヤロープで懸吊され、昇降駆動装置60が有する昇降用モータの回転に応じて、2本のマスト31にガイドされながら昇降する。
【0052】
スタッカクレーン30は、軌道(下レール12および上レール)に沿って走行し、昇降台35を昇降させ、かつ、移載装置40のスライドフォーク59を出退させる。スタッカクレーン30は、このような動作により、荷物90の搬送およびラック80およびステーション85等の間での荷物90の受け渡し(移載)を行うことができる。
【0053】
なお、ステーション85は、荷物90の一時的な載置場所である。例えば、ラック80に収容されている荷物90は、スタッカクレーン30によってラック80から取り出されて搬送され、一時的にステーション85に置かれた後に、所定の場所に向けて運び出される。
【0054】
ラック80は、複数の支柱81を備える構造体であり、一対の支持部材で構成される棚82を複数備えている。一対の支持部材のそれぞれは、前後2本の支柱81に架橋状に設置されている。
【0055】
スタッカクレーン30によって搬入された荷物90は、ラック80の前面からラック80に収容される。また、ラック80に収容された荷物90は、スタッカクレーン30によって、ラック80の前面から取り出される。より詳細には、棚82を構成する一対の支持部材の間を、移載装置40のスライドフォーク59が上下方向に通過することで、棚82への荷物90の載置、または、棚82に載置された荷物90の取り出しのための荷物90の持ち上げが実行される。
【0056】
制御装置100は、スタッカクレーン30の動作制御を行う装置である。本実施の形態では、制御装置100は、所定の条件の下で、無線通信を介して操作端末300から送信される指示に応じてスタッカクレーン30の動作制御を行う。制御装置100はさらに、非常停止端末200との無線通信が停止した場合に、スタッカクレーン30の動作を停止させる。
【0057】
つまり、制御装置100は、例えば、自動運転機器システム10の上位のコンピュータである管理装置から送信される指示に従って、荷物90の搬送等のためのスタッカクレーン30の通常の動作制御を行うことができる。制御装置100はさらに、操作端末300からの指示に基づいて、スタッカクレーン30の動作制御を行うことができる。なお、制御装置100による各種の情報処理は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、メモリ等の記憶装置、および情報の入出力のためのインタフェース等を備えたコンピュータが所定のプログラムを実行させることにより実現される。
【0058】
本実施の形態では、操作端末300と制御装置100とは、例えば無線LAN(Local Area Network)等の無線通信を介して情報の送受信が可能である。また、操作端末300は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、ノート型PC(Personal Computer)、ヘッドマウントディスプレイ等の汎用の携帯型端末装置である。操作端末300は、スタッカクレーン30を操作するためのアプリケーションプログラム(以下、「機器操作アプリ」という。)を実行することができる。
【0059】
つまり、作業者は、機器操作アプリを実行する操作端末300に対して所定の操作を行うことで、スタッカクレーン30の動作制御のための指示を制御装置100に行うことができる。言い換えると、作業者は、操作端末300を用いて、スタッカクレーン30を遠隔操作することが可能である。
【0060】
ここで、本実施の形態では、操作端末300として、上述のように汎用の携帯型端末装置が採用されている。そのため、操作端末300に、スタッカクレーン30を非常停止させるための、所定の安全規格を満たす非常停止機能を実装させることは、困難または実質的に不可能である。
【0061】
そのため、操作端末300からの指示に応じたスタッカクレーン30の動作制御(以下、「操作端末300からの機器操作」という)は、安全性の確保の観点から、スタッカクレーン30の周辺では原則として禁止される。例えば、スタッカクレーン30のおよびラック80を含む所定の領域は、人の立ち入りを制限する侵入防止柵(図5図7を用いて後述)で囲まれており、この侵入防止柵の内方では、操作端末300からの機器操作は原則として禁止される。
【0062】
しかしながら、本実施の形態に係る自動運転機器システム10では、所定の条件下において、スタッカクレーン30に比較的に近い位置における操作端末300からの機器操作を許容することができるシステムが構築されている。
【0063】
具体的には、制御装置100は、操作端末300および非常停止端末200の両方と無線通信が可能である場合、操作端末300からの指示に応じたスタッカクレーン30の動作制御を行う。
【0064】
より詳細には、本実施の形態では、操作端末300と非常停止端末200とが、操作端末300からの機器操作を可能化するための可能化通信を行うことで、操作端末300からの機器操作が可能化される。可能化通信の詳細については図5図9を用いて後述する。
【0065】
非常停止端末200は、スタッカクレーン30を非常停止させるための、制御装置100と無線通信を行う端末装置である。本実施の形態では、図2に示すように、非常停止端末200は、ウェアラブル端末として実現されている。
【0066】
非常停止端末200は、ハードウェア構成として、筐体201と、筐体201に収容された無線モジュール220と、筐体201に配置された非常停止ボタン210と、筐体201に取り付けられた装着部材230とを備える。なお、非常停止端末200は、例えば、動作用の電源としての二次電池等の他の要素も備えているが、これら他の要素の図示および説明は省略する。
【0067】
非常停止端末200は、機能的な構成として、第一通信部221を有する。本実施の形態では、無線モジュール220が、第一通信部221として機能する。
【0068】
第一通信部221は、制御装置100との間で無線通信を行い、非常停止ボタン210が操作された場合に、制御装置100との間における無線通信の状態を変更する。
【0069】
制御装置100は、第一通信部221との間の無線通信の状態が変更された場合、スタッカクレーン30の動作を停止させる。つまり、非常停止ボタン210が操作された場合、スタッカクレーン30は非常停止される。
【0070】
本実施の形態では、第一通信部221は、非常停止ボタン210が操作された場合に、制御装置100との間における無線通信を停止することで、当該無線通信の状態を変更する。制御装置100は、第一通信部221との無線通信を継続して行っている期間において、操作端末300から指示を受信した場合、当該指示に応じたスタッカクレーン30の動作制御を行う。また、制御装置100は、第一通信部221との無線通信が停止した場合に、スタッカクレーン30の動作を停止させる。
【0071】
非常停止端末200はさらに、第二通信部222を有する。第二通信部222は、操作端末300との間で、操作端末300からの指示に基づくスタッカクレーン30の動作制御の可能化のための、所定の情報の送信及び受信の少なくとも一方を含む可能化通信を行う。なお、本実施の形態では、無線モジュール220が、第二通信部222として機能する。
【0072】
ここで、第一通信部221は、制御装置100との間で、スタッカクレーン30の非常停止のための信号の送受信を所定の間隔で(例えば数ミリ秒ごと)繰り返し行っている。第一通信部221と制御装置100とは、例えば2つのチャンネル(通信路)で並行して信号の送受信を行っている。制御装置100は、2チャンネル(通信路)のうちの少なくとも一方の信号の送受信が途切れた場合、スタッカクレーン30を動作させるための動力回路を遮断する。
【0073】
つまり、非常停止端末200において非常停止ボタン210が操作(本実施の形態で押下)された場合、非常停止端末200の第一通信部221は、制御装置100への、非常停止のための信号の送信を停止する。その結果、制御装置100と非常停止端末200との間における無線通信の停止が、制御装置100によって検出され、制御装置100は、スタッカクレーン30を動作させるための動力回路を遮断する。これにより、スタッカクレーン30は非常停止する。
【0074】
なお、第一通信部221と制御装置100とが2つのチャンネル(通信路)で並行して信号の送受信を行うことは必須ではなく、第一通信部221と制御装置100とが1つのみのチャンネル(通信路)で信号の送受信を行ってもよい。また、制御装置100は、少なくとも1つのチャンネル(通信路)における信号の送受信が途切れた場合、スタッカクレーン30を動作させるための全電源を遮断してもよい。
【0075】
装着部材230は、人体のいずれかの位置に非常停止端末200を着脱自在に装着させる部材である。本実施の形態では、装着部材230は、例えば樹脂等を素材とする繊維が編まれることで形成された、固定用のバックル等(図示せず)を備えるベルトである。
【0076】
作業者は、非常停止ボタン210の押しやすさ等を考慮して決定した位置に、装着部材230を用いて非常停止端末200を装着する。例えば、作業者の利き手とは反対側の手首に、非常停止ボタン210が内側に向くように、非常停止端末200が装着される。
【0077】
このように、非常停止端末200は、装着部材230を有することで、非常停止ボタン210を押しやすい位置、または、メンテナンス等の作業の邪魔にならない位置に容易に装着できる。このことは、自動運転機器システム10における安全性または作業性の向上に寄与する。
【0078】
以上のように構成された自動運転機器システム10において実行される、操作端末300からの機器操作、および、機器操作の可否の切り換えに関する動作について、図4A図9を用いて説明する。
【0079】
図4Aは、実施の形態における操作端末300の構成概要を示す図であり、図4Bは、実施の形態における操作端末300に表示されるユーザインタフェース画面の一例を示す図である。
【0080】
図5は、操作端末300からの機器操作が行われている状態を示す模式図である。図6は、操作端末300からの機器操作が不可能化された状態を示す模式図である。図7は、操作端末300からの機器操作が可能化された状態を示す模式図である。
【0081】
図4Aに示すように、実施の形態における操作端末300は、ハードウェア構成として、CPU302と、記憶装置304と、ディスプレイ装置306とを有する。CPU302は、記憶装置304に記憶されている機器操作アプリを実行することで、ディスプレイ装置306に、例えば図4Bに示す操作画面320を表示させる。
【0082】
操作画面320には、例えば、スタッカクレーン30に指示を与えるための各種の操作キー321と、スタッカクレーン30の状態を示す状態情報322とが表示される。
【0083】
ディスプレイ装置306は、例えばタッチパネルによって、情報の表示と作業者からの操作の受け付けとを行う装置である。例えば複数の操作キー321のいずれかが作業者にタッチ(タップ)された場合、当該操作キー321に対応する情報処理がCPU302によってなされる。
【0084】
また、図4Bに示す例では、操作対象のスタッカクレーン30を識別する情報“1号機”と、スタッカクレーン30の昇降台35(図1参照)の位置とが状態情報322に示されている。
【0085】
つまり、操作端末300からの機器操作が可能なスタッカクレーン30が複数存在する場合、機器操作アプリの起動後に、選択画面(図示せず)が表示され、作業者は、所定の操作を行うことで、複数のスタッカクレーン30のうちの、1つのスタッカクレーン30を、操作対象として選択することができる。操作対象として選択されたスタッカクレーン30を特定する情報は、制御装置100に送信される。これにより、制御装置100は、制御装置100が動作制御を行うことが可能な複数のスタッカクレーン30のうち、操作端末300からの機器操作を許可する1つのスタッカクレーン30を特定することができる。
【0086】
作業者は、操作端末300に表示された操作画面320に対して操作キー321のタップ等の所定の操作を行うことで、選択したスタッカクレーン30の操作を行う。また、このような、操作端末300からの機器操作は、例えば、図5に示すように、作業者が侵入防止柵500の外方に存在する場合に行われる。
【0087】
図5図7に示すように、本実施の形態において、スタッカクレーン30の動作範囲およびその周辺の、ラック80等を含む領域は、侵入防止柵500に囲われている。侵入防止柵500には、スタッカクレーン30のメンテナンス等のための作業者の出入りを可能とする扉510が設けられている。このような構造の侵入防止柵500では、作業者の出入りが管理されている。
【0088】
作業者は、例えば、自動運転機器システム10を管理する管理装置に対して所定の操作を行うことで、侵入防止柵500の内方に立ち入ることができる。
【0089】
例えば、作業者は、侵入防止柵500の外側に配置された管理装置に差し込まれているキーを、「メンテナンス」の位置まで回転させて抜き取る。これにより、管理装置と通信する制御装置100は、通常の動作制御(つまり、スタッカクレーン30の自動運転)を停止し、操作端末300からの機器操作も不可とする。また、自動運転中にロックされていた扉510のロックが解除され、作業者は、侵入防止柵500の内方に立ち入ることができる。
【0090】
侵入防止柵500の内方に立ち入った作業者は、扉510を閉じた後に、例えば、制御装置100と電気的または機械的に接続されたシリンダに、管理装置から抜き取ったキーを差し込み、「手動運転」の位置まで回転させる。その後、制御装置100は、操作端末300および非常停止端末200の両方と無線通信が可能である場合、操作端末300からの機器操作(つまり、スタッカクレーン30の手動運転)を行うよう動作する。
【0091】
つまり、簡単にいうと、作業者が侵入防止柵500の内方に立ち入った場合、操作端末300からの機器操作を行うことができない状態となる。その後、制御装置100が、操作端末300および非常停止端末200のペアの存在を確認することで、操作端末300からの機器操作が可能な状態となる。
【0092】
なお、侵入防止柵500の内方における人の存在または不存在の検出は、扉510の開閉を検出すること、もしくは、撮像画像の解析することで行われてもよく、または、人体そのものを検出することで行われてもよい。つまり、人の存在または不存在の検出を行う検出部としては、キー操作を検出または認識する装置等の他に、扉510の開閉を検出するセンサ、撮像装置、人感センサ、および光電センサ等が例示される。また、操作端末300の位置を検出することで、間接的に、侵入防止柵500の内方における人の存在または不存在の検出を行ってもよい。すなわち、スタッカクレーン30の周辺の所定の領域内における人の存在または不存在の検出の手法に特に限定はなく、当該検出の結果を、制御装置100が取得できればよい。
【0093】
このように、本実施の形態では、スタッカクレーン30の動作範囲が侵入防止柵500に囲まれており、侵入防止柵500の内方に人が存在しない場合、制御装置100は、操作端末300からの機器制御を許可する。
【0094】
例えば、スタッカクレーン30が、荷物90の搬送等の通常の動作を行っていない期間において、侵入防止柵500の外方に存在する作業者は、操作端末300で機器操作アプリを起動させる。これにより、作業者は、侵入防止柵500の外方から、スタッカクレーン30の操作(スタッカクレーン30の動作確認、または、手入力した情報に基づく荷物90の移動等)を行うことができる。
【0095】
また、図6に示すように、作業者が、侵入防止柵500の内方に立ち入った場合、制御装置100は、操作端末300からの機器制御を禁止する。つまり、自動運転機器を含む所定の領域内に人が存在する場合、制御装置100は、操作端末300からの指示に応じた当該自動運転機器の動作制御を行わない。
【0096】
例えば、制御装置100は、操作端末300から送信される指示を受信した場合であっても、当該指示を無視する。なお、操作端末300からの機器制御の不可能化の手法に特に限定はなく、例えば、操作端末300で実行される機器操作アプリと、制御装置100とが通信し、機器操作アプリが、制御装置100からの制御を受けて全ての処理を停止してもよい。
【0097】
なお、図6では、操作端末300を携帯した作業者が、扉510から侵入防止柵500の内方に入る様子が図示されている。しかし、操作端末300を携帯しているか否かによらず、侵入防止柵500の内方に人が立ち入る場合は、原則、上記のように管理装置でのキー操作が行われるため、その結果、操作端末300からの機器操作が禁止される。
【0098】
ここで、操作端末300からの機器操作が禁止された場合、従来であれば、作業者は、例えば、操作端末300から、制御装置100に有線接続された非常停止ボタン付きのリモートコントローラに持ち替えて、スタッカクレーン30のメンテナンス等のための操作を行う必要がある。この場合、例えば、当該リモートコントローラと制御装置100とを接続する通信ケーブルが、メンテナンス等の作業の邪魔になることもある。また、操作端末300と当該リモートコントローラとの操作手順が異なることにより、メンテナンス等の作業の効率が低下することも考えられる。
【0099】
しかし、本実施の形態に係る自動運転機器システム10では、図7に示すように、操作端末300と非常停止端末200とが可能化通信を行うことで、操作端末300からの機器操作が可能化される。つまり、自動運転機器を含む所定の領域内に人が存在する場合であっても、制御装置100は、無線通信を介して操作端末300から送信される指示に応じて、当該自動運転機器の動作制御を行う。
【0100】
これにより、作業者は、自身の意思によるスタッカクレーン30の非常停止が可能な環境の中で、制御装置100と無線通信を行う操作端末300を用いてスタッカクレーン30の操作を行うことができる。
【0101】
なお、本実施の形態では、非常停止端末200は、通常は、充電台520に置かれており、例えば、非接触方式で、非常停止端末200に内蔵された二次電池に充電が行われる。
【0102】
以上の自動運転機器システム10における、操作端末300からの機器操作の可能化に関する動作を、図8および図9に示される通信シーケンス図を用いて説明する。
【0103】
図8は、実施の形態に係る自動運転機器システム10における通信シーケンスの一例を示すシーケンス図である。図9は、実施の形態に係る可能化通信およびその結果である機器操作の可能化の詳細例を示すシーケンス図である。
【0104】
図8に示すように、制御装置100は、例えば、上述のように、管理装置においてキー操作がなされることで、侵入防止柵500の内方に存在するとみなされる人を検出する(S10)。これにより、制御装置100は、操作端末300からの指示に応じた機器操作を不可能化する(S11)。
【0105】
その結果、例えば、操作端末300からスタッカクレーン30の動作制御のための指示が、制御装置100に送信された場合であっても、当該指示は、制御装置100において無視される。
【0106】
その後、侵入防止柵500の内方に立ち入った作業者が、非常停止端末200を、充電台520から持ち上げることで、非常停止端末200が起動する(S20)。つまり、無線モジュール220(第一通信部221、第二通信部222)等の構成要素が動作可能な状態となる。
【0107】
なお、非常停止端末200の起動のトリガに特に限定はなく、例えば、非常停止端末200に設けられた機械式のスイッチの操作によって非常停止端末200が起動してもよい。
【0108】
非常停止端末200は、起動後、制御装置100との間で、スタッカクレーン30の非常停止のための信号の送受信である確認用通信を開始する(S21)。例えば、非常停止端末200の第一通信部221は、自身の存在を他に知らせる信号(例えば「ビーコン」と呼ばれる)を送信し、当該信号を受信した制御装置100は、当該信号への応答を示す信号を非常停止端末200に送信する。このような信号のやり取りである確認用通信が継続することで、制御装置100および非常停止端末200の一方は他方によって存在が確認される。なお、確認用通信が、上述のように2つのチャンネル(通信路)で並行して実行されること(確認用通信の二重化)により、スタッカクレーン30の非常停止についての信頼性を向上させることが可能である。このようにして開始された確認用通信は、後述する非常停止ボタン210の押下まで継続される。
【0109】
その後、例えば、作業者が、操作端末300において機器操作アプリの起動等の所定の操作を行うことで、操作端末300と非常停止端末200との間で可能化通信が行われる(S30)。
【0110】
可能化通信は、非常停止端末200の第二通信部222と、操作端末300との間で行われる通信であって、スタッカクレーン30の動作制御(つまり、操作端末300の機器操作)の可能化のための、所定の情報の送信及び受信の少なくとも一方を含む通信である。
【0111】
つまり、可能化通信は、その成立が、操作端末300と非常停止端末200とのペアが有効な状態であることの証明となる通信の一例である。可能化通信が行われた結果、制御装置100は、操作端末300からの機器操作が可能となるよう動作する。
【0112】
ここで、本実施の形態では、非常停止端末200の第二通信部222と、操作端末300とは、近接無線通信によって、所定の情報の送信及び受信が行われている。このような近接無線通信としては、例えば、Bluetooth(登録商標)または赤外線通信などが挙げられる。
【0113】
つまり、操作端末300と非常停止端末200との間の可能化通信が、近接無線通信によって行われた場合、操作端末300を操作する作業者が操作可能な範囲に、非常停止端末200が存在するとみなすことができる。従って、非常停止機能を有しない操作端末300からの機器操作が可能化された場合であっても、所定の安全性が確保される。
【0114】
上記可能化通信では、操作端末300および非常停止端末200は、例えば、接続相手を特定するための情報のやり取り(例えば、「ペアリング」と呼ばれる)を実行する。
【0115】
このような可能化通信の完了後、操作端末300および非常停止端末200のそれぞれから、所定の情報を含む信号が、制御装置100に送信される(S40、S41)。
【0116】
制御装置100は、これら信号を受信したことを条件として、ステップS11において、一旦不可能化した、操作端末300からの機器操作の可能化を行う(S50)。その結果、操作端末300から、スタッカクレーン30の動作制御のための指示が送信された場合(S60)、制御装置100は、当該指示を受け付けて適正に処理する。これにより、当該指示に応じたスタッカクレーン30の動作制御が実行される(S61)。
【0117】
つまり、制御装置100は、ステップS21において開始された確認用通信が継続して行われている期間において、操作端末300から指示を受けた場合、当該指示に応じたスタッカクレーン30の動作制御を行う。
【0118】
なお、制御装置100は、ステップS40またはステップS41において送信される、操作端末300および非常停止端末200の少なくとも一方の信号から、制御装置100が受け付けるべき、スタッカクレーン30の動作制御の指示の送信元の操作端末300を特定することができる。つまり、制御装置100は、操作端末300の認証を行うことができる。
【0119】
また、制御装置100は、複数のスタッカクレーン30の動作制御が可能である場合、特定した操作端末300から、例えばステップS60において、機器操作のための指示とともに送信される、操作対象のスタッカクレーン30を示す情報(図4B参照)を受信する。これにより、当該指示に応じて動作制御すべき1つのスタッカクレーン30(制御対象機器)を特定することができる。
【0120】
つまり、制御装置100は、スタッカクレーン30の動作制御の指示の送信元が、特定(認証)した操作端末300である場合に、当該指示を受け付けて、当該指示に応じた制御対象機器の動作制御を行うことができる。
【0121】
その後、非常停止端末200において非常停止ボタン210が押下された場合、第一通信部221は、確認用通信を停止する(S70)。具体的には、第一通信部221は、ステップS21において開始した、自身の存在を他に知らせる信号の送信を停止する。
【0122】
制御装置100は、非常停止端末200からの当該信号を受信しないことによって、確認用通信の停止を検出する(S72)。より詳細には、制御装置100は、確認用通信が行われている少なくとも1つのチャンネル(通信路)において、非常停止端末200からの当該信号を受信しない場合、確認用通信の停止を検出する。
【0123】
制御装置100は、確認用通信の停止を検出した場合、スタッカクレーン30を動作させるための動力回路を遮断する。これによりスタッカクレーン30の動作のための電源が遮断される(S73)。その結果、スタッカクレーン30は非常停止する。このように、本実施の形態では、制御装置100は、確認用通信の停止を検出することで、スタッカクレーン30の動力回路を遮断する。言い換えると、制御装置100は、確認用通信が継続している期間は、スタッカクレーン30の動作のための電力供給が維持されるように動作する。
【0124】
なお、制御装置100は、複数のスタッカクレーン30の動作制御が可能である場合、上述のように制御対象機器として特定した1つのスタッカクレーン30を動作させるための動力回路を遮断する。
【0125】
以上の自動運転機器システム10における通信および動作の流れのうちの、可能化通信(S30)、および、操作端末300からの機器操作の可能化(S50)のより具体的な例を、図9を用いて説明する。
【0126】
図9に示すように、操作端末300は、可能化通信(S30)において、操作端末300の識別情報である第一識別情報(例えば“ID_a”)を、非常停止端末200に送信する(S31)。
【0127】
非常停止端末200の第二通信部222は、可能化通信(S30)において、非常停止端末200の識別情報である第二識別情報(例えば“ID_b”)を、操作端末300に送信する(S32)。
【0128】
なお、図9では省略されているが、操作端末300および非常停止端末200は、相手方の識別情報を受信した場合に応答を返信するなどの、所定のルールに従って可能化通信を行う。
【0129】
その後、非常停止端末200は、操作端末300の識別情報である“ID_a”を含む信号を、制御装置100に送信する(S40)。操作端末300は、非常停止端末200の識別情報である“ID_b”を含む信号を、制御装置100に送信する(S41)。なお、ステップS40およびSステップ41は、いずれが先に実行されてもよい。
【0130】
制御装置100は、ステップS40およびステップS41で送信された各信号に基づいて、操作端末300からの機器操作の可能化を行う(S50)。
【0131】
具体的には、制御装置100は、ステップS40およびステップS41で送信された各信号に基づいて、操作端末300を認証する(S51)。当該認証が成功した場合、制御装置100は、認証した操作端末300から送信された指示の受け付けを開始する(S52)。つまり、操作端末300からの機器操作が可能化される。
【0132】
なお、上記認証の手法に特に限定はない。例えば、ステップS40において、非常停止端末200は、自身の識別情報“ID_b”と相手方の操作端末300の識別情報“ID_a”とを含む信号を制御装置100に送信してもよい。また、ステップS41において、操作端末300は、自身の識別情報“ID_a”と相手方の非常停止端末200の識別情報である“ID_b”とを含む信号を制御装置100に送信してもよい。
【0133】
制御装置100は、操作端末300および非常停止端末200から受信した2つの信号がともに、“ID_a”と“ID_b”とのペアを含んでいることで、識別情報“ID_a”を有する操作端末300を認証することができる。
【0134】
なお、制御装置100は、可能化通信(S30)の後に、操作端末300および非常停止端末200のいずれか一方から送信される信号を受信したことを少なくとも1つの条件として、操作端末300からの指示に応じたスタッカクレーン30の動作制御を行ってもよい。つまり、可能化通信の後に、操作端末300および非常停止端末200の両方が、制御装置100に、自身または相手方の識別情報等の所定の情報を含む信号を送信することは必須ではない。また、可能化通信の後に、制御装置100に送信される信号に含まれる所定の情報は、操作端末300または非常停止端末200の識別情報でなくてもよい。
【0135】
例えば、非常停止端末200の第一通信部221は、第二通信部222が可能化通信を行った後に、所定の情報である、操作端末300に関する情報を含む信号を制御装置100に送信する。この場合、制御装置100は、非常停止端末200から送信される、操作端末300に関する情報を含む信号を受信したことを少なくとも1つの条件として、操作端末300らの指示に応じたスタッカクレーン30の動作制御を行ってもよい。
【0136】
なお、操作端末300に関する情報としては、上記第一識別情報以外には、操作端末300が非常停止端末200に予め記憶された端末であることを示す情報(操作端末300が非常停止端末200に認証されたことを示す情報)、および、操作端末300を操作する作業者の識別情報などが例示される。
【0137】
この場合、制御装置100は、非常停止端末200を介して、操作端末300に関する情報を取得することができる。また、非常停止端末200は、起動した後に開始した確認用通信(図8におけるステップS21)を制御装置100との間で継続して実行している。そのため、制御装置100は、例えば、操作端末300と非常停止端末200とのペアの存在を的確に認識することができる。すなわち、制御装置100は、非常停止端末200から送信される情報のみに基づいて、操作端末300の認証を行うことができる。
【0138】
また、制御装置100は、操作端末300から送信される、非常停止端末200に関する情報を含む信号を受信したことを少なくとも1つの条件として、操作端末300からの指示に応じたスタッカクレーン30の動作制御を行ってもよい。
【0139】
なお、非常停止端末200に関する情報としては、上記第二識別情報以外には、非常停止端末200が操作端末300に予め記憶された端末であることを示す情報(非常停止端末200が操作端末300に認証されたことを示す情報)、および、非常停止端末200を操作する作業者の識別情報などが例示される。
【0140】
この場合、制御装置100は、操作端末300を介して、非常停止端末200に関する情報を取得することができる。そのため、制御装置100は、例えば、操作端末300と非常停止端末200とのペアの存在を的確に認識することができる。つまり、操作端末300が、適式な非常停止機能を有する非常停止端末200と組み合わされた端末であることを、制御装置100が認識することができる。すなわち、制御装置100は、操作端末300から送信される情報のみに基づいて、操作端末300の認証を行うことができる。
【0141】
なお、上記動作を行う自動運転機器システム10において、操作端末300が行う、可能化通信等の動作は、操作端末300が所定のプログラムを実行することで実現されている。当該所定のプログラムは、例えば以下に示される、操作端末300の制御方法に含まれる1以上のステップを、操作端末300が有するコンピュータ(CPU302等)に実行させるためのプログラムである。
【0142】
操作端末300の制御方法は、スタッカクレーン30との間で無線通信を行う非常停止端末200であって、スタッカクレーン30を非常停止させることのできる非常停止端末200との間で、スタッカクレーン30の動作制御の可能化のための、所定の情報の送信及び受信の少なくとも一方を含む可能化通信を行う可能化通信ステップを含む。
【0143】
また、本実施の形態では、操作端末300の制御方法は、さらに、可能化通信ステップの後に、当該所定の情報である、非常停止端末200に関する情報を含む信号を、制御装置100に送信する信号送信ステップを含む。
【0144】
また、本実施の形態では、可能化通信ステップは、当該所定の情報である、非常停止端末200の識別情報を受信する識別情報受信ステップを含み、信号送信ステップでは、識別情報受信ステップにおいて受信した、非常停止端末200に関する情報である当該識別情報を含む信号を制御装置100に送信する。
【0145】
なお、当該プログラムは、例えば、操作端末300の記憶装置304に記憶されており、CPU302に読み出されて実行される。また、当該プログラムは、操作端末300が実行する機器操作アプリの一部として、記憶装置304に記憶されていてもよい。
【0146】
以上説明したように、本実施の形態に係る自動運転機器システム10では、制御装置100は、操作端末300および非常停止端末200の両方と無線通信が可能である場合、操作端末300からの指示に応じたスタッカクレーン30の動作制御を行う。すなわち、制御装置100が、操作端末300を用いた無線通信による機器操作が可能となるよう動作した場合であっても、作業者は、非常停止端末200を用いて自動運転機器を非常停止させることが可能であるため、所定の安全性は確保される。
【0147】
また、操作端末300および非常停止端末200は、ともに、制御装置100と無線通信を行うため、例えば通信用のケーブルが、作業者が行う自動運転機器のメンテナンスの作業等の邪魔になるようなことがない。
【0148】
また、操作端末300と非常停止端末200とを併用するため、スマートフォンまたはタブレット端末等の、非常停止機能の実装が実質的に不可能な汎用の携帯型端末装置を、操作端末300として採用することができる。そのため、例えば、自動運転機器システム10が設置される国もしくは地域、または、使用環境(温度または湿度の高低、室内であるか否かなど)等に適した携帯型端末装置を、操作端末300として選択することができる。
【0149】
従って、本実施の形態における自動運転機器システム10は、安全で作業性のよい自動運転機器システム10である。
【0150】
また、本実施の形態では、制御装置100は、スタッカクレーン30の周辺の所定の領域において人が検出された場合、原則として、操作端末300からの機器操作を禁止する。その後、操作端末300と非常停止端末200とが、所定の情報の送信及び受信の少なくとも一方を含む可能化通信を行うことで、操作端末300からの機器操作が可能な状態となる。
【0151】
具体的には、制御装置100は、可能化通信の後に、操作端末300および非常停止端末200の少なくとも一方から送信される信号を受信した場合、操作端末300からの指示に応じたスタッカクレーン30の動作制御を行う。
【0152】
ここで、制御装置100が、例えば、操作端末300との間で無線通信が確立している状態である場合を想定する。この場合、非常停止端末200から送信される信号を受信することで、操作端末300および非常停止端末200の両方が、制御装置100と無線通信が可能な状態にあることを確認することができる。その結果、制御装置100は、操作端末300からの機器操作が行えるよう動作する。
【0153】
また、可能化通信では、例えば、操作端末300および非常停止端末200の一方は、他方から送信される識別情報を受信し、受信した識別情報を制御装置100に送信する。その結果、制御装置100は、例えば、操作端末300および非常停止端末200のペアが適正であることを確認すること(当該ペアの認証)ができる。
【0154】
以上、本発明の自動運転機器システムについて、実施の形態に基づいて説明した。しかしながら、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を実施形態等に施したものも、あるいは、上記説明された複数の構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0155】
例えば、上記実施の形態では、スタッカクレーン30を含む所定の範囲を囲うように設けられた侵入防止柵500に人が立ち入った場合、可能であった操作端末300からの機器操作が一旦禁止(不可能化)され、その後に、当該機器操作が可能化されるとした。しかし、侵入防止柵500は自動運転機器システム10に必須の構成要素ではない。また、操作端末300からの機器操作が、何らかの条件によって一旦禁止されることは、自動運転機器システム10において必須ではない。
【0156】
例えば、制御装置100は、常に、操作端末300と非常停止端末200とのペアが有効であること(当該ペアが制御装置100と無線通信が可能な状態であること)を条件として、操作端末300からの機器操作を行うよう動作してもよい。
【0157】
つまり、制御装置100は、作業者がスタッカクレーン30に近い位置にいるか否かに関係なく、操作端末300および非常停止端末200の両方と無線通信が可能であることを条件として、操作端末300からの機器操作を行うよう動作してもよい。これにより、作業者が、操作端末300を用いてスタッカクレーン30を手動運転している間は、作業者の存在位置に依存せずに、非常停止端末200を用いた遠隔操作によるスタッカクレーン30の非常停止が可能となる。その結果、自動運転機器システム10における安全性がさらに向上する。
【0158】
また、制御装置100が、操作端末300からの機器操作を行うための条件として、操作端末300と非常停止端末200との間における可能化通信は必須ではない。例えば、制御装置100は、操作端末300および非常停止端末200のそれぞれが、他方の動作に依存せずに送信する信号によって、操作端末300と非常停止端末200とのペアが有効であることを確認することも可能である。つまり、操作端末300および非常停止端末200それぞれは、他方と通信することなく、制御装置100に、制御装置100との間で無線通信が可能であることを知らせてもよい。
【0159】
また、制御装置100は、非常停止端末200との確認用通信が停止した場合、スタッカクレーン30を非常停止させるとしたが、スタッカクレーン30を非常停止のトリガは、確認用通信の停止でなくてもよい。制御装置100は、例えば、非常停止端末200から送信された所定の信号を受信した場合に、スタッカクレーン30を非常停止させてもよい。つまり、非常停止端末200の第一通信部221は、非常停止ボタン210が操作された場合、制御装置100との間における無線通信を開始することで、当該無線通信の状態を変更してもよい。
【0160】
また、例えば、操作端末300と非常停止端末200とは、通信ケーブルを介して可能化通信を行ってもよい。例えば、非常停止端末200から延設された通信ケーブルの端部のプラグを操作端末300に挿し込むことで、操作端末300と非常停止端末200とが有線接続されてもよい。
【0161】
この場合、通信ケーブルの長さを、例えば数十cm以内に限定する。これにより、可能化通信が行われた場合に、操作端末300を操作する作業者が操作可能な範囲に、非常停止端末200が存在するとみなすことができる。従って、非常停止機能を有しない操作端末300からの機器操作が可能化された場合であっても、所定の安全性が確保される。
【0162】
また、非常停止端末200は、情報の入出力のためのインタフェース(物理キーまたはタッチパネル等)を備えてもよい。この場合、例えば、操作端末300および非常停止端末200の一方が生成して表示したコードを、他方に入力することで、操作端末300および非常停止端末200の相互の認証を行わせてもよい。
【0163】
また、操作端末300または非常停止端末200への情報入力の手法にも限定はなく、例えば、作業者の動作を画像解析等で特定し、特定した動作に対応する情報が、操作端末300または非常停止端末200に入力されてもよい。また、作業者が発話した音声、作業者の眼球の動き、または、脳波の変化等に基づいて特定される情報が、操作端末300または非常停止端末200に入力されてもよい。つまり、作業者のジェスチャーまたは脳波の変化等を検知し、検知結果に基づいて、スタッカクレーン30等の自動運転機器の動作制御が行われてもよい。
【0164】
また、非常停止端末200が有する装着部材230の種類はバンドでなくてもよい。装着部材230は、例えば、作業者の胸元に非常停止端末200を位置させるネックストラップであってもよい。また、装着部材230は、例えば、作業者に固定された部材と着脱自在に係合する係合部材、または、作業者に固定された部材と磁力によって接続される金属もしくは磁石であってもよい。
【0165】
また、非常停止端末200において、無線モジュール220によって、第一通信部221および第二通信部222の機能が実現されるとした。しかし、第一通信部221および第二通信部222のそれぞれの機能は、物理的に別体の2つの無線モジュールによって実現されてもよい。
【0166】
また、図4Bに示される操作画面320は、操作端末300に表示されるユーザインタフェース画面の一例であり、例えば、操作画面320に、状態情報322が表示されなくてもよい。
【0167】
また、自動運転機器システム10が備える自動運転機器の種類は、スタッカクレーン30に限定されない。例えば、上位コンピュータからの指示に従って荷物の搬送を行う無人搬送車、または、上位コンピュータからの指示に従って自動で荷物を仕分ける仕分け装置等の、物流システムに用いられる機器(物流システム機器)が、自動運転機器システム10が備える自動運転機器として採用されてもよい。
【0168】
また、例えば、コンピュータ制御の下で金属材料の切削等を行う工作機械が、自動運転機器システム10が備える自動運転機器として採用されてもよい。また、例えば、コンピュータ制御の下で糸を織って布を作製する自動織機、または、コンピュータ制御の下で所定の動作を実行する遊具が、自動運転機器システム10が備える自動運転機器として採用されてもよい。
【0169】
いずれの場合であっても、操作端末300および非常停止端末200の両方が制御装置100と無線通信が可能である場合に、制御装置100が操作端末300からの機器操作を行うよう動作することで、メンテナンス等の作業性のよさと、安全性の確保とが両立される。
【産業上の利用可能性】
【0170】
本発明に係る自動運転機器システムは、安全で作業性のよい自動運転機器システムである。そのため、本発明に係る自動運転機器システムは、荷物の搬送作業を行う搬送車(スタッカクレーンまたは無人搬送車など)を備える自動運転機器システム、および、工作機械または自動織機等の産業機械を備える自動運転機器システム等として有用である。
【符号の説明】
【0171】
10 自動運転機器システム
12 下レール
30 スタッカクレーン
31 マスト
32 下部台車
35 昇降台
40 移載装置
59 スライドフォーク
60 昇降駆動装置
80 ラック
81 支柱
82 棚
85 ステーション
90 荷物
100 制御装置
200 非常停止端末
201 筐体
210 非常停止ボタン
220 無線モジュール
221 第一通信部
222 第二通信部
230 装着部材
300 操作端末
304 記憶装置
306 ディスプレイ装置
320 操作画面
321 操作キー
322 状態情報
500 侵入防止柵
510 扉
520 充電台
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9