(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明について以下詳細に説明する。
なお、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその成分に該当する物質をそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。成分が2種以上の物質を含む場合、成分の含有量は、2種以上の物質の合計の含有量を意味する。
本明細書において、スクリーン印刷性、低抵抗性、及び、基材との接着性のうちの少なくとも1つがより優れることを、本発明の効果がより優れるという場合がある。
【0009】
[導電性組成物]
本発明の導電性組成物(本発明の組成物)は、
導電粒子と、
エポキシ当量が400g/eq以上1500g/eq未満であり、かつ、25℃で固体のエポキシ樹脂A、又は、エポキシ当量が1500g/eq以上3500g/eq未満であり、かつ、25℃で固体のエポキシ樹脂Dと、
エポキシ当量が400g/eq未満であり、かつ、25℃で液状のエポキシ樹脂Bと、
硬化剤Cと、
溶剤と、を含有し、
上記エポキシ樹脂A、上記エポキシ樹脂B及び上記硬化剤Cの総量1が上記導電粒子100質量部に対して3質量部以上10質量部以下であり、又は、上記エポキシ樹脂D、上記エポキシ樹脂B及び上記硬化剤Cの総量2が上記導電粒子100質量部に対して3質量部以上6質量部未満であり、
上記エポキシ樹脂Bに対する、上記エポキシ樹脂A又は上記エポキシ樹脂Dの質量比[(A又はD)/B]が、20/80〜80/20であり、
上記エポキシ樹脂A又は上記エポキシ樹脂Dと上記エポキシ樹脂Bとの合計量に対する、上記硬化剤Cの質量比[C/{(A又はD)+B}]が、2/98〜10/90である、導電性組成物である。
【0010】
本発明の組成物はこのような構成をとるため、所望の効果が得られるものと考えられる。その理由は明らかではないが、エポキシ当量の異なる、固体のエポキシ樹脂A又はDと液状のエポキシ樹脂Bとを併用し、各エポキシ樹脂の含有量等を所定の範囲にすることによって、スクリーン印刷で断線等が起こりにくく、高いアスペクト比の配線を印刷でき、導電粒子の高密度化が可能となり、得られる硬化物が強靭となるため、スクリーン印刷性、低抵抗性、及び、基材との接着性を高いレベルでバランスさせることができると推測する。
以下、本発明の組成物に含有される各成分について詳述する。
【0011】
<<導電粒子>>
本発明の組成物に含有される導電粒子は、導電性を有する粒状の物質であれば特に限定されない。
導電粒子としては、例えば、電気抵抗率が20×10
-6Ω・cm以下の金属材料が挙げられる。
上記金属材料としては、具体的には、例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、及び、ニッケル(Ni)等が挙げられる。
【0012】
上記導電粒子は、本発明の効果により優れるという観点から、銀粉、銅粉及び表面の少なくとも一部を銀でコートされた銀コート導電粉からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
上記銀コート導電粉を構成するコアとしては、例えば、上記金属材料の粒子が挙げられる。
【0013】
導電粒子の平均粒子径は、本発明の効果により優れるという観点から、0.5〜10μmが好ましく、1〜5μmがより好ましい。
ここで、本発明において、導電粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて体積基準の粒度分布を測定して求められる、累積50%における粒子径(50%体積累積径。「平均粒子径(D50)」ともいう。)のことをいう。このようなレーザー回折式粒度分布測定装置としては、例えば、堀場製作所製のLA−500(商品名)に準ずる装置が挙げられる。
【0014】
導電粒子は、本発明の効果により優れるという観点から、フレーク状粒子E及び球状粒子Fからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
本発明において、球状とは、長径/短径の比率が2以下の粒子の形状をいう。また、フレーク状とは、長径/短径の比率が2超の形状をいう。ここで、導電粒子を構成する粒子の長径および短径は、走査型電子顕微鏡(SEM)から得られる画像に基づいて求めることができる。また、「長径」とは、SEMにより得られた粒子画像内において、粒子の略重心を通過する線分のうち最も距離の長いものを指す。「短径」とは、SEMにより得られた粒子画像において、粒子の略重心を通過する線分のうち最も距離の短いものを指す。
【0015】
フレーク状粒子Eは単結晶及び多結晶の何れであってもよい。
フレーク状粒子Eの比表面積は、発明の効果により優れるという観点から、0.2〜1.0m
2/gが好ましく、0.2〜0.8m
2/gがより好ましい。1.0m
2/gより多い場合、高粘度化しやすく印刷性の低下が発生する。適正印刷が可能な粘度域の組成物を得るには溶剤をより多く配合する必要があり、固形分が低下することから印刷・硬化後の配線のアスペクト比が小さくなる問題が発生する。0.2m
2/gより少ない場合、低粘度化しやすく線幅の広がりなど印刷性の低下が発生する。適正印刷が可能な粘度域の組成物を得るには溶剤をより少なく配合する必要があり、製造時の粘度コントロールが困難となる一方、スクリーン印刷等の配線工程で溶剤乾燥による粘度変化が起こりやすい等の問題が発生する。
本発明において、導電粒子の比表面積は、−196℃における窒素の吸着等温線からBET式に基づいて求めた値をいう。
フレーク状粒子Eの平均粒子径は、発明の効果により優れるという観点から、1〜15μmが好ましく、3〜10μmがより好ましい。10μmより大きい場合、スクリーン印刷等の配線工程でメッシュ詰まりを起こしやすく、特に細線パターニング時に断線を起こしやすいという問題が発生する。1μmより小さい場合、導電粒子同士の接点が増え、接触抵抗が大きくなり得られた配線の抵抗が大きくなる。さらに、得られた組成物のチクソ性が低くなることに起因し、スクリーン印刷等の配線工程で高アスペクト比の配線化が困難となる問題が発生する。
【0016】
球状粒子Fの比表面積は、発明の効果により優れるという観点から、0.5〜1.6m
2/gが好ましく、0.5〜1.2m
2/gがより好ましい。1.6m
2/gより多い場合、高粘度化しやすく印刷性の低下が発生する。適正印刷が可能な粘度域の組成物を得るには溶剤をより多く配合する必要があり、固形分が低下することから印刷・硬化後の配線のアスペクト比が小さくなる問題が発生する。0.5m
2/gより少ない場合、低粘度化しやすく線幅の広がりなど印刷性の低下が発生する。適正印刷が可能な粘度域の組成物を得るには溶剤をより少なく配合する必要があり、製造時の粘度コントロールが困難となる一方、スクリーン印刷等の配線工程で溶剤乾燥による粘度変化が起こりやすい等の問題が発生する。
球状粒子Fの平均粒子径は、発明の効果により優れ、印刷性及び導電性に優れるという観点から、0.5〜3μmが好ましく、0.8〜2μmがより好ましい。3μmより大きい場合、粒子間の隙間が多くなり、組成物内の導電粒子密度が低下することで、得られた配線の抵抗が大きくなる。0.5μmより小さい場合、導電粒子同士の接点が増え、接触抵抗が大きくなり得られた配線の抵抗が大きくなる。
【0017】
本発明において、導電粒子として複数の種類の導電粒子を使用する場合、導電粒子の平均比表面積は、発明の効果により優れるという観点から、0.5〜0.8m
2/gが好ましく、0.5〜0.7m
2/gがより好ましい。
本発明において、導電粒子の平均比表面積は、各導電粒子の比表面積とその含有量との積の総和を、各導電粒子の含有量の総和で除することによって得ることができる。
【0018】
導電粒子として上記フレーク状粒子E及び上記球状粒子Fを含有する場合、上記フレーク状粒子Eに対する上記球状粒子Fの質量比(球状粒子F/フレーク状粒子E)は、発明の効果により優れるという観点から、75/25〜25/75が好ましく、70/30〜30/70がより好ましい。
【0019】
導電粒子の製造方法は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
球状の導電粒子(例えば上記球状粒子F)の製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、湿式還元法、電解法やアトマイズ法等により製造したものを好適に用いることができる。
フレーク状の導電粒子(例えば上記フレーク状粒子E)製造方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。例えば、上述した方法で製造された球状の導電粒子を元粉として、当該元粉にボールミル、ビーズミル、振動ミル、攪拌式粉砕機などにより機械的処理を施し、元粉を物理的な力でフレーク化する方法により製造したものを好適に用いることができる。
【0020】
<<エポキシ樹脂>>
本発明の組成物は、所定の、エポキシ樹脂A又はD、及び、エポキシ樹脂Bを含有する。
本発明の組成物に含有されるエポキシ樹脂A、B又はDは、1分子中に2個以上のオキシラン環(エポキシ基)を有する化合物からなる樹脂である。エポキシ樹脂A、B又はDは、1分子中に2個又は3個のオキシラン環を有することが好ましい。
【0021】
<エポキシ樹脂A>
本発明において、エポキシ樹脂Aは、エポキシ当量が400g/eq以上1500g/eq未満であり、かつ、25℃で固体のエポキシ樹脂である。
エポキシ樹脂Aのエポキシ当量は、本発明の効果により優れるという観点から、400〜1000g/eqが好ましい。
【0022】
エポキシ樹脂Aの軟化点は、本発明の効果により優れるという観点から、115℃未満が好ましく、60〜105℃がより好ましい。
本発明において、エポキシ樹脂の軟化点は、JIS K−7234に準じて測定された。
【0023】
エポキシ樹脂Aとしては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールE型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールS型、及び、ビスフェノールAF型のようなビスフェノール骨格のエポキシ樹脂が挙げられる。
なかでも、エポキシ樹脂Aは、本発明の効果により優れるという観点から、例えば、ビスフェノールA型及びビスフェノールF型からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。上記エポキシ樹脂Aとして、ビスフェノールA型及びビスフェノールF型を併用しても良い。
また、エポキシ樹脂Aは、組成物の粘度を適正な範囲とできるため、スクリーン印刷性(特に60μm印刷性)により優れるという観点から、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
エポキシ樹脂Aの粘度は、スクリーン印刷性(特に60μm印刷性)により優れ、組成物の粘度を適正な範囲とできるという観点から、A〜Uであることが好ましく、L〜Uであることがより好ましく、O〜Uであることが更に好ましい。
本発明において、エポキシ樹脂Aの粘度は、例えば、25℃条件下で、ブチルカルビトール40%(固形分)溶液を用いたガードナーホルト法による粘度検査を行うことによって評価できる。
【0024】
<エポキシ樹脂D>
本発明において、エポキシ樹脂Dは、エポキシ当量が1500g/eq以上3500g/eq未満であり、かつ、25℃で固体のエポキシ樹脂である。
エポキシ樹脂Dのエポキシ当量は、本発明の効果により優れるという観点から、1500〜2500g/eqが好ましい。
【0025】
エポキシ樹脂Dの軟化点は、本発明の効果により優れるという観点から、115℃以上150℃以下が好ましく、115〜135℃がより好ましい。
【0026】
エポキシ樹脂Dとしては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールE型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールS型、及び、ビスフェノールAF型のようなビスフェノール骨格のエポキシ樹脂が挙げられる。
なかでも、エポキシ樹脂Dは、本発明の効果により優れるという観点から、ビスフェノールA型及びビスフェノールF型からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。上記エポキシ樹脂Dとして、ビスフェノールA型及びビスフェノールF型を併用しても良い。
また、エポキシ樹脂Dは、エポキシ樹脂Dとしては粘度が低く、組成物の粘度を低下させることができるため、スクリーン印刷性(特に60μm印刷性)により優れるという観点から、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
エポキシ樹脂Dの粘度は、スクリーン印刷性(特に60μm印刷性)により優れ、組成物の粘度を低下させることができるという観点から、V〜Z
5であることが好ましく、V〜Z
2であることがより好ましい。エポキシ樹脂DとしてビスフェノールF型エポキシ樹脂が使用される場合、上記ビスフェノールF型エポキシ樹脂の粘度は、エポキシ樹脂Dとしては粘度が低く、組成物の粘度を低下させることができるため、スクリーン印刷性(特に60μm印刷性)により優れるという観点から、X〜Z
2であることが好ましい。
本発明において、エポキシ樹脂Dの粘度は、例えば、25℃条件下で、ブチルカルビトール40%(固形分)溶液を用いたガードナーホルト法による粘度検査を行うことによって評価できる。
【0027】
<エポキシ樹脂B>
本発明において、エポキシ樹脂Bは、エポキシ当量が400g/eq未満であり、かつ、25℃で液状のエポキシ樹脂である。
エポキシ樹脂Bのエポキシ当量は、本発明の効果により優れるという観点から、100g/eq以上400g/eq未満が好ましく、150〜300g/eqがより好ましい。
エポキシ樹脂Bのエポキシ当量は、本発明の効果(特に低抵抗性)により優れるという観点から、200g/eq以上400g/eq未満が好ましく、250〜390g/eqがより好ましく、300〜380g/eqが更に好ましく、300g/eq超380g/eq以下が特に好ましい。
【0028】
エポキシ樹脂Bの25℃での粘度は、本発明の効果により優れるという観点から、15〜5000mPa・sが好ましく、30〜1000mPa・sがより好ましい。
本発明において、エポキシ樹脂の粘度は、25℃の条件下において、JIS Z 8803に準じて測定された。
【0029】
エポキシ樹脂Bとしては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールE型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールS型、及び、ビスフェノールAF型のようなビスフェノール骨格を有するエポキシ樹脂;
ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂;
ポリ(オキシアルキレン)ポリオールのグリシジルエーテル、及び、アルキレンポリオールのグリシジルエーテルのような多価アルコールグリシジル型エポキシ樹脂;
キレート変性エポキシ樹脂;
ベンゼンジオール(ジヒドロキシベンゼン)骨格を有するエポキシ樹脂及びその水素添加物;
フタル酸骨格を有するエポキシ樹脂及びその水素添加物;
ベンゼンジメタノール骨格を有するエポキシ樹脂;
シクロヘキサンジメタノール骨格を有するエポキシ樹脂;
ジシクロペンタジエンジメタノール骨格を有するエポキシ樹脂;
アニリン骨格を有するエポキシ樹脂;
トルイジン骨格を有するエポキシ樹脂等、が挙げられる。
上記エポキシ樹脂Bはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
なかでも、エポキシ樹脂Bは、本発明の効果により優れるという観点から、ビスフェノール骨格を有するエポキシ樹脂、及び、多価アルコールグリシジル型エポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、
ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールS型、ビスフェノールAF型、及び、多価アルコールグリシジル型エポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、
多価アルコールグリシジル型エポキシ樹脂が更に好ましく、
ポリ(オキシアルキレン)ポリオールのグリシジル型エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0030】
上記多価アルコールグリシジル型エポキシ樹脂を構成し得る、ポリ(オキシアルキレン)ポリオール、又は、アルキレンポリオールは特に制限されない。
上記ポリ(オキシアルキレン)ポリオール、又は、アルキレンポリオールが有するアルキレン基は直鎖状、分岐状、環状、又は、これらの組合せの何れであってもよい。上記アルキレン基の炭素数は例えば、2〜15個とすることができる。
上記アルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基が挙げられる。なかでも、本発明の効果により優れるという観点から、エチレン基が好ましい。
【0031】
上記ポリ(オキシアルキレン)ポリオールが有する繰り返し単位(オキシアルキレン基)の繰り返し単位数は、本発明の効果により優れるという観点から、2〜10が好ましい。
上記ポリ(オキシアルキレン)ポリオールが有する繰り返し単位(オキシアルキレン基)の繰り返し単位数は、本発明の効果(特に低抵抗性)により優れるという観点から、10〜15が好ましい。
【0032】
上記アルキレンポリオールのグリシジルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジグルシジルエーテル、及び、プロピレングリコールジグルシジルエーテルが挙げられる。
上記アルキレンポリオールのグリシジルエーテルの市販品としては、例えば、商品名EX−810(ナガセケムテック社製)が挙げられる。
上記ポリ(オキシアルキレン)ポリオールのグリシジルエーテルとしては、例えば、ポリエチレングリコールジグルシジルエーテル、及び、ポリプロピレングリコールジグルシジルエーテルが挙げられる。
上記ポリ(オキシアルキレン)ポリオールのグリシジルエーテルの市販品としては、例えば、商品名EX−830、EX−841、EX−920(ナガセケムテック社製)等が挙げられる。
【0033】
<(A又はD)/B>
本発明において、上記エポキシ樹脂Bに対する、上記エポキシ樹脂A又は上記エポキシ樹脂Dの質量比[(A又はD)/B]は、20/80〜80/20である。
[(A又はD)/B]は、本発明の効果により優れるという観点から、25/75〜75/25が好ましく、40/60〜60/40がより好ましい。
エポキシ樹脂Aの製造方法は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。エポキシ樹脂D及びエポキシ樹脂Bも同様である。
【0034】
<<硬化剤C>>
本発明の組成物に含有される硬化剤Cは、エポキシ樹脂の硬化剤として使用できるものであれば特に制限されない。なかでも、カチオン系硬化剤が好ましい。カチオン系硬化剤としては、例えば、アミン系、スルホニウム系、アンモニウム系、及び、ホスホニウム系の硬化剤が挙げられる。
【0035】
硬化剤Cとしては、例えば、三フッ化ホウ素エチルアミン、三フッ化ホウ素ピペリジン、三フッ化ホウ素トリエタノールアミンのような、三フッ化ホウ素とアミン化合物との錯体;
三フッ化ホウ素フェノール;
p−メトキシベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルイオドニウムヘキサフルオロホスフェート;
テトラフェニルスルホニウムのようなスルホニウム系硬化剤;
テトラ−n−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエートのようなホスホニウム系硬化剤等が挙げられる。
これらの中でも、体積抵抗率をより低減できるという点から、三フッ化ホウ素とアミン化合物との錯体が好ましく、三フッ化ホウ素とアミン化合物との錯体である、三フッ化ホウ素エチルアミン、三フッ化ホウ素ピペリジン、および、三フッ化ホウ素トリエタノールアミンからなる群より選択される少なくとも1種の錯体を用いることがより好ましい。
硬化剤の製造方法は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0036】
<総量1>
本発明の組成物がエポキシ樹脂Aを含有する場合、上記エポキシ樹脂A、上記エポキシ樹脂B及び上記硬化剤Cの総量1は、上記導電粒子100質量部に対して3質量部以上10質量部以下である。
上記総量1は、本発明の効果により優れるという観点から、上記導電粒子100質量部に対して、3〜8質量部が好ましく、5〜8質量部がより好ましく、5〜7.0質量部が更に好ましい。
【0037】
<総量2>
本発明の組成物がエポキシ樹脂Dを含有する場合、上記エポキシ樹脂D、上記エポキシ樹脂B及び上記硬化剤Cの総量2は、上記導電粒子100質量部に対して3質量部以上6質量部未満である。
上記総量2は、本発明の効果により優れるという観点から、上記導電粒子100質量部に対して、3〜5質量部が好ましい。
【0038】
上記総量2は、本発明の効果(特にスクリーン印刷性及び/又は抵抗特性)により優れるという観点から、上記導電粒子100質量部に対して5.0〜5.4質量部であることが好ましい。
【0039】
また、エポキシ樹脂Bが多価アルコールグリシジル型エポキシ樹脂のみである場合、上記総量2は、本発明の効果(特にスクリーン印刷性及び/又は抵抗特性)により優れるという観点から、上記導電粒子100質量部に対して4.0〜5.4質量部であることが好ましく、4.5〜5.4質量部であることがより好ましい。
【0040】
<<C/{(A又はD)+B}>>
本発明において、上記エポキシ樹脂A又は上記エポキシ樹脂Dと上記エポキシ樹脂Bとの合計量に対する、上記硬化剤Cの質量比[C/{(A又はD)+B}]は、2/98〜10/90である。
[C/{(A又はD)+B}]は、本発明の効果により優れるという観点から、3/97〜10/90が好ましく、3/97〜8/92がより好ましい。
【0041】
<<溶剤>>
本発明の組成物は溶剤を含有する。
上記溶剤は、特に限定されない。例えば、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、イソホロン、α−テルピネオール等が挙げられる。
溶剤として市販品を使用することができる。
【0042】
溶剤の含有量は、本発明の効果により優れるという観点から、エポキシ樹脂A又はD、エポキシ樹脂B、及び、硬化剤C100質量部に対して、20〜200質量部が好ましく、40〜100質量部がより好ましい。
【0043】
(添加剤)
本発明の組成物は、必要に応じて、上記エポキシ樹脂A、B及びC以外のエポキシ樹脂、還元剤、脂肪酸金属塩等の添加剤をさらに含有していてもよい。
上記還元剤としては、具体的には、例えば、エチレングリコール類等が挙げられる。
上記脂肪酸金属塩は、有機カルボン酸の金属塩であれば特に限定されず、例えば、銀、マグネシウム、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、スズおよび鉛からなる群から選択される少なくとも1種以上の金属のカルボン酸金属塩を用いるのが好ましい。これらのうち、銀のカルボン酸金属塩(以下、「カルボン酸銀塩」ともいう。)を用いるのが好ましい。
ここで、上記カルボン酸銀塩は、有機カルボン酸(脂肪酸)の銀塩であれば特に限定されず、例えば、特開2008−198595号公報の[0063]〜[0068]段落に記載された脂肪酸金属塩(特に3級脂肪酸銀塩)、特許第4482930号公報の[0030]段落に記載された脂肪酸銀塩、特開2010−92684号公報の[0029]〜[0045]段落に記載された水酸基を1個以上有する脂肪酸銀塩、同公報の[0046]〜[0056]段落に記載された2級脂肪酸銀塩、特開2011−35062号公報の[0022]〜[0026]に記載されたカルボン酸銀等を用いることができる。
【0044】
本発明の組成物は、高温(700〜800℃)焼成タイプの導電性ペーストとして一般的に用いられるガラスフリットについては特に必要がない。本発明の組成物は、ガラスフリットを実質的に含有しない(ガラスフリットの含有量が上記導電粒子100質量部に対して0〜0.1質量部である)ことが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0045】
(導電性組成物の製造方法)
本発明の組成物の製造方法は特に限定されず、上述した各成分を、例えば、ロール、ニーダー、押出し機、万能かくはん機等により混合する方法が挙げられる。
【0046】
本発明の組成物を例えば、基材に付与し、180〜230℃の条件下で加熱して、上記組成物を硬化させることができる。
基材は特に制限されない。例えば、シリコン基板、ガラス、金属、樹脂基板、フィルム等が挙げられる。上記基材に例えばITO(インジウムスズ酸化物)等のTCO(透明酸化物導電膜)処理がなされていてもよい。
本発明の組成物を用いて形成される硬化物は、例えば、太陽電池セルの電極(集電極)、タッチパネルの電極、LEDのダイボンドとして使用することができる。
本発明の組成物を用いて形成される電極を有する太陽電池セルを用いて太陽電池モジュールを製造することができる。
【実施例】
【0047】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。
<<組成物の製造>>
下記第1表の各成分を同表に示す組成(質量部)で用いて、これらを撹拌機で混合し、組成物を製造した。
【0048】
<<評価>>
上記のとおり製造された組成物を用いて以下の評価を行った。結果を第1表に示す。
【0049】
<体積抵抗率(比抵抗)>
上記のとおり製造した各組成物を、ガラス基板上に、スクリーン印刷で塗布して、2cm×2cmのベタ塗りであるテストパターンを形成した。その後、オーブンにて200℃で30分間乾燥及び硬化し、導電性被膜を作製した。
作製した各導電性被膜について、抵抗率計(ロレスターGP、三菱化学社製)を用いた4端子4探針法により体積抵抗率を評価した。
体積抵抗率が8.0μΩ・cm未満の場合を体積抵抗率が良好であると判断した。
【0050】
<スクリーン印刷性>
スクリーン印刷性について60μm印刷性及びアスペクト比を評価した。
本発明において、以下の評価によって、60μm印刷性が〇又は◎であり、かつ、アスペクト比が〇又は◎である場合、スクリーン印刷性に優れるものとする。
・60μm印刷性
メッシュカウント360メッシュ、乳剤厚25μm、配線開口幅60μm、線径16μm、オープニング55μmのステンレス製スクリーンマスクを用いて、ライン開口幅60μmのスクリーン製版Aを作製した。
次いで、上記のとおり製造した各組成物を、スクリーン製版Aを用いて、印刷速度200mm/秒でスクリーン印刷し、ライン幅が60〜80μmの配線を得た。
上記のとおり、スクリーン印刷で得られた配線を、レーザー顕微鏡(倍率300倍)で観察し、以下の基準により開口幅60μm印刷性の良否を判定した。
断線、蛇行、ニジミおよびメッシュ跡のいずれも確認されない場合を開口幅60μm印刷性が極めて良好なものとして「◎」と評価した。断線は確認されないが、蛇行、ニジミおよびメッシュ跡のいずれか1つが確認された場合を開口幅60μm印刷性が良好なものとして「○」と評価した。断線は確認されないが、蛇行、ニジミおよびメッシュ跡のいずれか2つ以上が確認された場合を開口幅60μm印刷性が劣るものとして「△」と評価した。断線が確認された場合を開口幅60μm印刷性が極めて劣るものとして「×」と評価した。
【0051】
・アスペクト比
上記のとおり、スクリーン印刷で得られた配線を、レーザー顕微鏡(倍率300倍)で観察し、配線の幅及び高さを測定し、その比率(高さ/幅)をアスペクト比として計測した。
アスペクト比が0.3以上である場合を「◎」と評価した。アスペクト比が0.25以上0.3未満である場合を「〇」と評価した。アスペクト比が0.2以上0.25未満である場合を「△」と評価した。アスペクト比が0.2未満である場合を「×」と評価した。
【0052】
<接着性>
シリコン基板の表面に、透明導電層としてITO(Snをドープした酸化インジウム)を製膜した。
次いで、上記のとおり製造した各組成物を、透明導電層上に印刷速度200mm/秒でスクリーン印刷で塗布して、幅60〜80μm、長さ25mmの細線形状のテストパターンを形成した。このとき使用したスクリーン印刷マスクは、360メッシュ、乳剤厚25μm、配線開口幅60μm、線径16μm、オープニング55μmである。
その後、上記テストパターンを200℃の条件下に30分間おいて乾燥及び硬化させ、透明導電層上に配線を20本有する試験サンプルを作製した。
次に、上記配線のすべてに対して直角方向に、1本のテープを貼り、直ちに上記テープを試験サンプルから剥離する剥離試験を実施した。
剥離試験の結果、配線が全く剥離しなかった場合、これを接着性に優れると評価し、「〇」と表示した。
配線が20本中1本又は2本以下剥離した場合、これを接着性がやや劣ると評価し、「△」と表示した。
配線が20本中3本以上剥離した場合、これを接着性が非常に劣ると評価し、「×」と表示した。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
第1表に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
【表4】
また、エポキシ樹脂A−4の粘度(上記ガードナーホルト法)は、O〜Uである。
エポキシ樹脂D−3の粘度(上記ガードナーホルト法)は、X〜Z
2である。
【0057】
なお、第1表及び第2表において、フレーク銀E−1〜E−3は、本発明における導電粒子のフレーク状粒子Eに該当する。
また、球状銀F−1〜F−3は、本発明における導電粒子の球状粒子Fに該当する。
エポキシ樹脂A/D欄のA−2〜A−4は、本発明における上記エポキシ樹脂Aに該当する。
また、エポキシ樹脂A/D欄のD−1〜D−3は、本発明における上記エポキシ樹脂Dに該当する。
エポキシ樹脂B欄のB−1〜B−5は、本発明における上記エポキシ樹脂Bに該当する。
【0058】
第1表に示す結果から明らかなように、所定のエポキシ樹脂Bの代わりにエポキシ樹脂B−6(25℃で液状であるがエポキシ当量が400g/eqを超える)を含有する比較例1は、抵抗が大きく、スクリーン印刷性が劣った。
所定のエポキシ樹脂Aの代わりにエポキシ樹脂A−1(25℃で固体であるがエポキシ当量が400g/eq未満)を含有する比較例2は、スクリーン印刷性が劣った。
所定のエポキシ樹脂Aの代わりにエポキシ樹脂A−5(25℃で固体であるがエポキシ当量が400g/eq未満)を含有する比較例3は、抵抗が大きく、接着性が劣った。
エポキシ樹脂A、エポキシ樹脂B及び硬化剤Cの総量1が所定の範囲を外れる比較例4は、抵抗が大きく、スクリーン印刷性が劣った。
エポキシ樹脂D、エポキシ樹脂B及び硬化剤Cの総量2が所定の範囲を外れる比較例5〜6は、スクリーン印刷性が劣った。
エポキシ樹脂A、エポキシ樹脂B及び硬化剤Cの総量1が所定の範囲を外れる比較例7は、スクリーン印刷性及び接着性が劣った。
エポキシ樹脂A又はエポキシ樹脂Dとエポキシ樹脂Bとの合計量に対する、硬化剤Cの質量比[{C/(A又はD)+B}]が所定の範囲を外れる比較例8は、抵抗が大きく、接着性が劣った。
エポキシ樹脂Bに対するエポキシ樹脂A又はエポキシ樹脂Dの質量比[(A又はD)/B]が所定の範囲を外れる比較例9〜10は、スクリーン印刷性が劣った。
【0059】
これに対して、本発明の組成物は、スクリーン印刷性、低抵抗性、及び、基材との接着性に優れた。
本発明はスクリーン印刷性、低抵抗性、及び、基材との接着性に優れる導電性組成物の提供を目的とする。本発明は、導電粒子と、エポキシ当量が400g/eq以上1500g/eq未満であり、かつ、25℃で固体のエポキシ樹脂A、又は、エポキシ当量が1500g/eq以上3500g/eq未満であり、かつ、25℃で固体のエポキシ樹脂Dと、エポキシ当量が400g/eq未満であり、かつ、25℃で液状のエポキシ樹脂Bと、硬化剤Cと、溶剤と、を含有し、A、B及びCの総量1が導電粒子100質量部に対して3質量部以上10質量部以下であり、又は、D、B及びCの総量2が導電粒子100質量部に対して3質量部以上6質量部未満であり、質量比[(A又はD)/B]が20/80〜80/20であり、質量比[C/{(A又はD)+B}]が、2/98〜10/90である、導電性組成物である。