(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、まず先行技術文献について詳細に検討を行った。
特許文献1に記載の風味、呈味改善剤は、乳原料を膜及び酵素で処理するなど製造工程が煩雑であり、パーム油の風味をマスキングする効果は高いものの後味の広がりの点で十分なものではなかった。
特許文献2に記載のルウ用油脂は、焙煎ナタネ油及びパーム系油脂を規定量含有することを特徴としているが、ホワイトソースでのコク味付与効果は不十分で、焙煎風味が感じられるため好みに個人差があったとも記載されていた。
特許文献3に記載のルウ用油脂組成物は、パーム油の分別硬質油を50質量%以上含有し、トランス脂肪酸含量が3質量%以上12質量%未満と低いことを特徴としているが、香味(スパイス感)は増強できるものの、コク味の付与効果については不十分であった。
このように、上記の先行技術に記載されているような従来のルウでは、コク味付与に寄与する成分の製造工程が煩雑である、または油相での特徴付けをしているにも関わらず、コク味を付与する効果が満足できるものではなかった。
【0006】
すなわち、本発明の目的は、煩雑な工程を経ることなく、素材の旨み成分とよく調和し、旨み感の増強及びコク味を付与することができるルウ及びそのルウを使用したソース類またはスープ類を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するべく鋭意研究を行った結果、意外にも水相に豆乳を含有することを特徴とする油中水型乳化物を使用したルウが、コク味の付与作用を有することを見出した。また、該コク味付与作用のあるルウを含有するスープ類またはソース類が、素材の旨み成分とよく調和し、かつ長時間煮込まなくても旨み感のあるコク味を付与することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は
(1)水相に豆乳を含有する油中水型乳化物を原料に用いることを特徴とするルウの製造方法、
(2)水相中の豆乳に由来する脂質含量が2重量%未満である油中水型乳化物を原料に用いる、(1)記載のルウの製造方法、
(3)水相に豆乳を含有することを特徴とするルウ用油中水型乳化物、
(4)該豆乳の脂質含量が2重量%未満である、(3)記載のルウ用油中水型乳化物、
(5)該豆乳が水相中に50重量%以上含有する、(3)又は(4)に記載のルウ用油中水型乳化物、
(6)(3)〜(5)のいずれか1つに記載のルウ用油中水型乳化物を用いたルウ、
(7)(6)に記載のルウと調味成分を含有することを特徴とするソース類またはスープ類、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水相に豆乳を含有することを特徴としたルウ用油中水型乳化物を使用することにより、コク味の付与作用を有するルウを提供することができる。そして、当該ルウを用いることにより、コク味及び旨味が付与されたソース類またはスープ類等の食品を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の油中水型乳化物は、ルウの調製に使用される物であり、一般的な可塑性油脂組成物に求められる耐熱保型性や含気性といった機能は必ずしも必要ではない。また、本発明の油中水型乳化物の乳化形態は、油中水型または油中水中油型の何れでも構わない。
【0011】
本発明の油中水型乳化物中における水相部の含量は、5〜40重量%であることが好ましく、より好ましくは8〜30重量%、最も好ましくは10〜25重量%である。水相が多すぎると油中水型乳化物の乳化安定性が弱くなり、均一なルウを調製しにくくなる場合がある。逆に、水相が少なすぎると、豆乳由来の成分が少なくなり、本発明のコク味付与効果が得られにくい場合がある。
【0012】
本発明の油中水型乳化物に用いる豆乳は、特に制限されることなく、常法に従い製造することができ、また市販品も用いることができる。豆乳の製造方法としては、具体的には、例えば、以下の方法を挙げることができる。大豆に水を添加し、大豆を摩砕することで液状にする。得られた液状物に、遠心分離処理又はろ過処理を行うことでおからを除去し、100〜150℃で1〜60秒間加熱殺菌処理することで、豆乳を得ることができる。おからを除去した後に、ホモジナイザー処理を行うこともできる。なお本発明では、おからが除去されていない豆乳を使用することもできる。例えば前記液状物に、ホモジナイザー等による微細化処理を行った後、100〜150℃で1〜60秒間加熱殺菌処理することで、おからが除去されていない豆乳を得ることができる。
【0013】
本発明の油中水型乳化物に用いる豆乳は、液状の場合、固形分含量が3〜20重量%であるのが好ましく、より好ましく5〜15重量%、最も好ましくは7〜13重量%である。すなわち、加水して低粘度の液状としたものや、減圧濃縮や凍結濃縮等の濃縮加工により高粘度化したものであってもよい。また、噴霧乾燥や凍結乾燥等の粉末加工により粉末状とした場合には、上記の固形分含量になるように水溶液にして水相として用いることができる。さらに、液状と粉末状の豆乳を併用することもできる。ここで、固形分とは、豆乳から水分を除くことで得られる固形の成分のことである。
【0014】
本発明の水相中の豆乳に由来する脂質含量は、豆乳が液状の場合、用いる豆乳の脂質含量と水相中の豆乳比率を乗じて求めることができる。また、豆乳が粉末状の場合も同様に、用いる豆乳粉末の脂質含量と水相中の豆乳粉末の比率を乗じて求めることができる。つまり、水相として液状の豆乳を100%使用する場合、豆乳の脂質含量は2重量%未満が好ましく、より好ましく1.5重量%以下、最も好ましくは低脂肪豆乳の1重量%以下である。例えば、水相に液状の豆乳を50%使用する場合には、豆乳の脂質含量は4重量%未満が好ましく、より好ましく3重量%以下、最も好ましくは2重量%以下である。豆乳に由来する脂質含量をより少なくすることにより、長時間煮込まなくても旨味感のあるコク味を付与することができる。
ここで、水相中の豆乳に由来する脂質含量を低減するには、低脂肪豆乳を用いればよい。低脂肪豆乳としては、豆乳から脂質を除去して得られる低脂肪豆乳や、脱脂大豆を抽出して得られる脱脂豆乳を用いることができる。特に、より良質なコク味を付与できる点から、豆乳から脂質を除去して得られる低脂肪豆乳を用いるのが好ましい。該低脂肪豆乳は、例えば上述のおからが除去された、もしくは除去されていない豆乳をクリームセパレーター等の高速遠心分離機等により遠心分離を行い、脂質が多く含まれる上層と、沈殿層を除去した残りの低脂質の画分を採取することにより得ることができる。なお、低脂肪豆乳は市販品を用いても良い。
【0015】
本発明の油中水型乳化物の水相部における豆乳含量は、豆乳が液状の場合50重量%以上が好ましく、より好ましくは70重量%以上、更に好ましくは100重量%である。油中水型乳化物中の水相部における豆乳含量が50重量%以上であると、当該油中水型乳化物を使用して製造したルウ、ソース等の食品において旨味の増強、及びコク味の付与効果が大きなものとなる。
また、豆乳が粉末状の場合には、豆乳に由来する固形分含量が3〜20重量%、かつ豆乳に由来する脂質含量が2重量%未満となるように水溶液にして水相として用いることができる。
さらに、本発明の油中水型乳化物の水相部には、豆乳以外の成分は特に制限されることなく、例えば、水、食塩、脱脂粉乳、濃縮乳、香料、呈味成分、その他水溶性添加物等を配合することができる。
【0016】
本発明の油中水型乳化物の油相部に使用する油脂は、特に制限されることなく使用することができる。具体的には、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚油、カカオ脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂、動物油脂並びにこれらを水素添加、分別及びエステル交換から選択される一又は二以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。本発明においては、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。特に、より良質なコク味を付与できる点から、油相部のトランス酸含量が2重量%以下である、実質的にトランス酸を含まない油脂を使用することが好ましく、パーム系油脂やラウリン酸系油脂を原料として含有するエステル交換油脂を使用することが最も好ましい。
また、ルウ調製時に他の素材と混合する温度において、油脂結晶量が多すぎると均一に混合しにくい場合には、油中水型乳化物を適宜温調して使用することができる。
さらに、例えば、トコフェロール、香料、着色料、その他油溶性の添加物等を配合することができる。
【0017】
なお、本発明の油中水型乳化物を製造する際に添加する乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、リン脂質等の乳化剤が挙げられる。これらの乳化剤は、単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0018】
本発明の油中水型乳化物には、その他にも、目的に合わせて様々な成分を配合することができる。その他の成分としては、増粘安定剤、塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、糖類や糖アルコール類、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、トコフェロール、茶抽出物(カテキン等)、ルチン等の酸化防止剤、小麦蛋白や大豆蛋白といった植物蛋白、卵及び各種卵加工品、全脂粉乳、乳清蛋白等の乳製品、調味料、pH調整剤、食品保存料、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、ココアマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材や食品添加物が挙げられる。
【0019】
本発明の油中水型乳化物の製造方法は、水相に豆乳を使用する以外は、特に制限されるものではない。具体的には、例えば、連続相となる油相部を加熱融解し、豆乳を含む水相部と混合乳化した後、冷却し、結晶化させることで製造することができる。冷却、結晶化により、油中水型乳化物を得ることができる。冷却可塑化させることが好ましい。冷却する機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えば、ボテーター、コンビネーター、パーフェクター、オンレーター等が挙げられる。急冷捏和処理した後、さらに場合によっては熟成(テンパリング)することによって本発明の油中水型乳化物を得ることができる。本発明の油中水型乳化物は、コク味付与作用を有するルウの製造に特に適したものである。
【0020】
次に、本発明のルウについて説明する。
【0021】
本発明のルウは、水相に豆乳を含有することを特徴とする油中水型乳化物を含む以外は通常の方法により調製することができる。ここで、代表的なルウの調製方法を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、澱粉含有物、水相に豆乳を含有することを特徴とする油中水型乳化物を含む原料を加熱混合した後、トレイ等の容器に充填後、冷却固化して製造される。加熱混合機および冷却機は、ルウを均一に撹拌混合及び熱交換できるものであればよく、熱源や形状、材質等は特に限定されない。また、ルウの調製時、水相に豆乳を含有することを特徴とする油中水型乳化物を、あらかじめ流動性のある状態まで加熱温調しておくと、その他の原料と混合しやすく、かつ更なる加熱を必要としないために好ましい。
【0022】
このようにして加熱溶融したルウを、そのままトレイ等の容器に充填してから冷却することができるが、該混合器中であるいは他の冷却装置を用いて50〜65℃程度に冷却した後、容器に充填してもよい。また、任意の形状及び容量を有する容器を使用することができるが、トレイ状容器を用いるのが好ましい。
【0023】
ルウは、冷却固化後に密封包装をすることができるが、冷却固化の前に密封包装することもできる。上記冷却は、任意の方法で行い得るが、一例として、加熱溶融ルウを充填した容器をスチールなどの金属製の搬送面を有するコンベヤの搬送面に載せて−30〜−10℃の冷却室内に搬送するとともに、上記搬送面を冷却媒体に当てるなどの適当な手段によって冷却し、冷却された搬送面からの熱伝達によって冷却することが好ましい。これにより、加熱溶融ルウの冷却処理を急速に行うことができる。尚、上記冷却は、市販のスチールベルトフリーザーなどを用いて実施することができる。
【0024】
本発明のルウの調製において使用する澱粉含有物としては、小麦、大麦、米、トウモロコシ等の穀類、該穀類を原料とする小麦粉、大麦粉、米粉、コーンフラワー等の穀粉、或いは、馬鈴薯、甘藷、タピオカ、レンコン等を原料とするスターチ、片栗粉等の澱粉、加工澱粉、デキストリン類等が挙げられ、目的の風味、食感等に応じて適宜選択し、これらを単独であるいは組み合わせて使用することができる。これらの原料のなかでは小麦粉が好ましく、ロール粉砕とふすまの篩別および漂白など常法により製造されたものであればその種類に制限はなく、例えば強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、超薄力粉などが例示でき、含有グルテンの量を問わない。
また、澱粉含有物としてローストした小麦粉を使用することもできる。その場合には、ルウの製造時に加熱温調した油中水型乳化物とローストした小麦粉とを含む原料を混合するだけで調製する事が出来る。小麦粉に予めロースト処理を施しておくと、小麦粉中の水分が脱水され、ルウ作成の作業性が向上するので好ましいが、逆に当該ルウを使用したホワイトソースのトロ味が不足する場合がある。
【0025】
本発明のルウの調製において使用する調味料としては、通常、クリームシチュー等のルウを製造するときに使用されるものが挙げられる。具体的には、食塩、各種ブイヨン、グルタミン酸ナトリウム、トマト、リンゴ、ニンジン、ガーリック、ジンジャー、チーズなどの粉末あるいはペースト、脱脂粉乳等が例示できる。
【0026】
本発明のルウにおける油分としては、25〜50重量%が好ましく、特に30〜45重量%が風味や加工適性の点から好ましい。また、本発明の効果を妨げない範囲で、上記原料以外のバターなどを併用する事もできる。
【0027】
次に、本発明のソース類及びスープ類について説明する。
【0028】
本発明のソース類としては、ホワイトソース、ベシャメルソース、ヴルーテソース等が例示できる。具体的なホワイトソースの製造法としては、前述の本発明のルウを湯煎等により融解した後、水、乳原料、乳加工品、クリーミングパウダー及び植物油脂クリームからなる群より選ばれる1種以上とを加えてよくのばし、沸騰するまで常法により加熱混合することにより得ることができる。また、本発明のルウをソース類の原料として使用することにより、長時間煮込まなくても旨み感のあるコク味をソース類に付与することができる。なお、本発明のソース類は、レトルト食品、チルド(冷蔵)食品又は冷凍食品のいずれであってもよい。
【0029】
本発明のソース類は、必要に応じて種々の具材、調味料などを添加することにより、グラタン、シチュー、パスタソース、クリーム煮などソース類が使用される商品に幅広く利用することができる。利用方法としては、例えば、野菜、魚介類を炒めたものをグラタン皿に入れ、本発明のソース類をかけ、粉チーズを上から振ってオーブン等で焼成すれば、簡単にグラタンができる。また、適当な野菜と鶏肉とを炒めておき、本発明のソース類と鶏がらスープを加えて煮込むだけで簡単に野菜のクリーム煮ができる。
【0030】
本発明のスープ類としては、材料を煮込んでそのまま食するようなチャウダー、ミネストローネなどのスープ類、ブイヨンなどでのばしたヴルーテ、牛乳などでのばしたクリーム、いも、野菜、米、豆などを一緒に煮込んで裏ごししてから調味したピューレタイプのポタージュ等が例示できる。本発明のルウをスープ類の原料として使用することにより、長時間煮込まなくても旨み感のあるコク味をスープ類に付与することができる。そのため例えば、スープ類の調製における仕上げ段階で本発明のルウを添加するのが好ましい。
【0031】
本発明のソース類及びスープ類は、本発明のルウと調味成分を含有することを特徴としている。ここで、本発明の調味成分としては、かつお節だし、さば節だし、煮干しだし、昆布だし、チキンエキス、豚骨エキス、コンソメスープ、鶏がらスープ等の天然系旨味素材のだし、抽出エキス類、グルタミン酸ナトリウム、グリシン、アラニン、アスパラギン酸ナトリウム、アルギニン、テアニン、バリン等のアミノ酸、5’‐イノシン酸二ナトリウム、5’‐ウリジル酸二ナトリウム、5’‐グアニル酸二ナトリウム、5’‐シチジル酸二ナトリウム、5’‐リボヌクレオチドカルシウム、5’‐リボヌクレオチド二ナトリウム等の核酸、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム等の有機酸、または、これらのだし、抽出エキス、アミノ酸、核酸、有機酸等を主原料に単独または任意の配合比率で配合して、濃縮、乾燥、造粒などの工程を経て加工された調味料などが例示される。なお、旨味が増強される調味料の種類は、ここに例示したものに限られない。
本発明のソース類及びスープ類において、上記の調味成分の中でも、特に白だしなどの和風のだしと本発明のルウを組み合わせて使用することによりコク味付与の効果が顕著になる。
【0032】
以下に実施例及び比較例を例示して、本発明の効果をより一層に明確にする。
【0033】
(油中水型乳化物の調製)
表1 油中水型乳化物の配合
・ 単位は重量%である。
・ 乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチンを使用した。
・ エステル交換油脂は、パーム油とパーム核オレインを原料とした融点33℃の酵素エステル交換油脂を使用した。本油脂は、実質的にトランス酸を含有していない。
・ 低脂肪豆乳は、不二製油株式会社製の固形分含量が10重量%、脂質含量が1重量%以下のものを使用した。
・ 全脂豆乳は、不二製油株式会社製の無調整豆乳(固形分含量が9重量%、脂質含量が3.6重量%)を使用した。
【0034】
下記の「油中水型乳化物の調製法」に従って、実施例1、2及び比較例1の配合による油中水型乳化物を調製した。
「油中水型乳化物の調製法」
1.食用油脂を60〜70℃で融解し、乳化剤を添加することで油相を調製した。
2.水、低脂肪豆乳あるいは全脂豆乳に、水相原料に分類される原料を添加、溶解した。
3.攪拌中の油相へ水相を添加し、混合した。ここで得られる混合液を調合液と称する。
4.調合液をコンビネーターへ供して、油中水型乳化物を得た。
【0035】
なお、実施例1、2の油中水型乳化物は、水相に液状の豆乳を100%使用し、水相中の豆乳に由来する脂質含量はそれぞれ1重量%以下、3.6重量%であった。一方、比較例1の油中水型乳化物は、水相中に豆乳を使用していないため、豆乳に由来する脂質含量も0%であった。
【0036】
(ルウの調製)
実施例3
あらかじめローストした薄力粉55重量%に、水相に低脂肪豆乳を含有する実施例1の油中水型乳化物45重量%を50〜60℃に加熱温調して添加し、縦型ミキサーにより均一に混合することによってルウを調製した。このルウは、1晩冷凍で保存し、翌日ホワイトソースに使用した。
【0037】
実施例4
水相に全脂豆乳を含有した実施例2の油中水型乳化物45重量%を使用した以外は、実施例3と同様にしてルウを調製した。このルウは、1晩冷凍で保存し、翌日ホワイトソースに使用した。
【0038】
比較例2
水相に豆乳を含有しない比較例1の油中水型乳化物45重量%を使用した以外は、実施例3と同様にしてルウを調製した。このルウは、1晩冷凍で保存し、翌日ホワイトソースに使用した。
【0039】
(ホワイトソースの調製)
実施例5
あらかじめ湯煎により使用するルウを流動性のある状態まで加熱、温調した(ルウの品温 約40℃)。
次に、表2に記載の分量で牛乳、水及び調味成分として和風だし(ヤマキ製割烹白だし)を混合後、約40℃に加熱したものを、あらかじめ温調した実施例3のルウに加えて、泡立て器でダマができないように手早く混ぜた。ついで、約30秒間沸騰するまで加熱することによりホワイトソースの調製を行った。この際、沸騰により減量した場合は、蒸発した水分の調整を行った。
【0040】
実施例6
実施例3のルウに変えて、実施例4のルウを使用した以外は、実施例5と同様にホワイトソースを調製した。
【0041】
比較例3
実施例3のルウに変えて、比較例2のルウを使用した以外は、実施例5と同様にホワイトソースを調製した。
【0042】
比較例4
実施例5とホワイトソースの組成が同じになるように、表2で記載した分量で牛乳、水、低脂肪豆乳及び調味成分として和風だしを調合した水相を約40℃に加熱したものを、あらかじめ温調した比較例2のルウに加えて、泡立て器でダマができないように手早く混ぜた。ついで、約30秒間沸騰するまで加熱することによりホワイトソースの調製を行った。この際、沸騰により減量した場合は、蒸発した水分の調整を行った。
【0043】
実施例7
表2に記載の分量で牛乳、水及びブイヨン(ネスレ製マギーブイヨン)を混合後、約40℃に加熱したものを、あらかじめ温調した実施例3のルウに加えて、泡立て器でダマができないように手早く混ぜた。ついで、約30秒間沸騰するまで加熱することによりホワイトソースの調製を行った。この際、沸騰により減量した場合は、蒸発した水分の調整を行った。
【0044】
実施例8
調味成分としてブイヨンに変えてコンソメ(味の素製コンソメ)を使用した以外は、実施例7と同様にホワイトソースを調製した。
【0045】
比較例5
実施例5とホワイトソースの組成同じになるように、表2で記載した分量で牛乳、水、低脂肪豆乳及びコンソメを調合した水相を約40℃に加熱したものを、あらかじめ温調した比較例2のルウに加えて、泡立て器でダマができないように手早く混ぜた。ついで、約30秒間沸騰するまで加熱することによりホワイトソースの調製を行った。この際、沸騰により減量した場合は、蒸発した水分の調整を行った。
【0046】
表2 ホワイトソースの配合
・ 単位は重量%である。
【0047】
ホワイトソースの評価
得られたホワイトソースは冷凍保存後、ボイル解凍して、10名のパネラーによる官能評価を行なった。官能評価項目であるコク味、旨味の持続性、味のまとまりそれぞれを、下記評価基準に従い採点を行い、平均点を表3にまとめた。
風味の評価基準(点数法)
コク味 : 平均点が3点以上を合格とした。
4 :コク味が非常に強く、濃厚感を感じられる
3 :コク味が強く感じられる
2 :コク味が感じられる
1 :コク味に乏しく、あっさりしている
旨味の持続性 : 平均点が2点以上を合格とした。
3 :旨味の持続性が強い
2 :旨味の持続性がある
1 :旨味の持続性がない
味のまとまり : 平均点が2点以上を合格とした。
3 :調味料と豆乳由来の風味にまとまりがあり、調味料の風味を底上げしている
2 :調味料と豆乳由来の風味にまとまりがある
1 :調味料と豆乳由来の風味を別々に感じる
【0048】
表3 ホワイトソースの風味評価
# : 比較例3では、豆乳を未使用のため、風味のまとまりについての評価は行わなかった。
【0049】
結果と考察
以上の結果から明らかなように、最終組成が同じでホワイトソースであっても、豆乳の分散状態によりホワイトソースの風味が大きく異なっていた。つまり、豆乳がホワイトソースの水相部ではなく、ルウの調製に使用された油中水型乳化物中の水相に存在していることにより、長時間煮込むことなく旨み感のあるコク味を付与したホワイトソースを得ることができた。(実施例5と比較例4の比較)
油中水型乳化物の水相に用いた豆乳に由来する脂質含量が低い方が、より良質なコク味を付与できることが確認された。(実施例5と実施例6の比較)
また、旨み感のあるコク味付与効果は、和風だし等の和風の調味成分だけではなく、ブイヨン、コンソメ等の洋風の調味成分でも確認された。(実施例8と比較例5の比較、実施例7)