(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6361854
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】容器詰めビアテイスト飲料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 2/00 20060101AFI20180712BHJP
C12G 3/04 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
A23L2/00 B
C12G3/04
【請求項の数】16
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-5382(P2014-5382)
(22)【出願日】2014年1月15日
(65)【公開番号】特開2015-130845(P2015-130845A)
(43)【公開日】2015年7月23日
【審査請求日】2016年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】311007202
【氏名又は名称】アサヒビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100193493
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 健史
(72)【発明者】
【氏名】西塚 太一
【審査官】
中村 勇介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−217706(JP,A)
【文献】
特表2013−524857(JP,A)
【文献】
特開2012−065617(JP,A)
【文献】
国際公開第2004/018612(WO,A1)
【文献】
特表2009−531046(JP,A)
【文献】
特開2001−103954(JP,A)
【文献】
特開平11−299473(JP,A)
【文献】
特表2009−532042(JP,A)
【文献】
特表2007−514428(JP,A)
【文献】
宮地 秀夫,ビール醸造技術,1999年,第351−353頁
【文献】
X35 Energy,Cola Malt,2010年,URL,http://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/1397984/from_search/Eeolyz1DgP/?page=5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00− 2/84
C12C 1/00−13/10
C12F 3/00− 5/00
C12G 1/00− 3/14
C12H 1/00− 1/22
C12J 1/00− 1/10
C12L 3/00−11/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビール又は発泡酒である発酵後ビールテイスト液を含有し、
糖類が41〜68g/Lであり、
0.38〜1.02g/Lのリン酸を含む、
容器詰めビアテイスト飲料。
【請求項2】
エキス分が4.8〜7.5質量%である
請求項1記載の容器詰めビアテイスト飲料。
【請求項3】
酸度が0.08〜0.17g/100mLである
請求項1又は2に記載の容器詰めビアテイスト飲料。
【請求項4】
pHが2.9〜4.3である、
請求項1乃至3のいずれかに記載の容器詰めビアテイスト飲料。
【請求項5】
更に、
柑橘類果汁を0.01〜50質量%含有する、
請求項1乃至4のいずれかに記載の容器詰めビアテイスト飲料。
【請求項6】
更に、
コーラ風味となるよう香料を添加した
請求項1乃至5のいずれかに記載の容器詰めビアテイスト飲料。
【請求項7】
更に、
カラメル色素を含有する、
請求項1乃至6のいずれかに記載の容器詰めビアテイスト飲料。
【請求項8】
発酵後ビールテイスト液が発泡酒である
請求項1乃至7のいずれかに記載の容器詰めビアテイスト飲料。
【請求項9】
発酵後ビールテイスト液に糖液を添加して得られる
請求項1乃至8のいずれかに記載の容器詰めビアテイスト飲料。
【請求項10】
糖液由来のBrixが4.05〜6.75である
請求項9に記載の容器詰めビアテイスト飲料。
【請求項11】
糖液が果糖ブドウ糖液糖を含む、
請求項9又は10に記載の容器詰めビアテイスト飲料。
【請求項12】
容器詰めビアテイスト飲料の製造方法であって、
穀物溶液を発酵させて、ビール又は発泡酒である発酵後ビールテイスト液を得る工程と、
発酵後ビールテイスト液と糖液を、飲料中の糖類含有量が41〜68g/Lとなるように混合する工程と、
飲料中のリン酸含有量が0.38〜1.02g/Lとなるように、リン酸を発酵後ビールテイスト液に添加する工程と、
を備える容器詰めビアテイスト飲料の製造方法。
【請求項13】
糖液を混合する工程は、飲料中のエキス分が4.8〜7.5質量%となるように糖液を混合する工程を含む
請求項12に記載の容器詰めビアテイスト飲料の製造方法。
【請求項14】
混合する糖液由来のBrixが4.05〜6.75である
請求項12又は13に記載の容器詰めビアテイスト飲料の製造方法。
【請求項15】
前記リン酸を発酵後ビールテイスト液に添加する工程は、飲料の酸度が0.08〜0.17g/100mLになるようにリン酸を添加する工程を含む
請求項12乃至14のいずれかに記載の容器詰めビアテイスト飲料の製造方法。
【請求項16】
前記リン酸を発酵後ビールテイスト液に添加する工程は、pHが2.9〜4.3になるようにリン酸を添加する工程を含む
請求項12乃至15のいずれかに記載の容器詰めビアテイスト飲料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器詰めビアテイスト飲料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
容器詰め飲料として、ビアテイスト飲料が普及している。容器詰めビアテイスト飲料を含めアルコール飲料には、各種添加剤が添加される場合がある。例えば、特許第4827494号には、リン酸又はその塩と、クエン酸又はその塩とを、酸味料として配合したアルコール飲料が開示されている。また、特開2013−188191号公報には、野菜汁、及び柑橘類果汁を含有する炭酸アルコール飲料が開示されている。更に、特開平9−103283号公報には、日本酒とコーラとを混合したアルコール飲料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4827494号
【特許文献2】特開2013−188191号公報
【特許文献3】特開平9−103283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
嗜好性に優れた容器詰めビアテイスト飲料を得るためには、甘さ等のバランスを整えることが重要である。よって、本発明は、嗜好性に優れた容器詰めビアテイスト飲料及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った。その結果、容器詰めビアテイスト飲料における糖類の含有量を特定の値とすることにより、上記課題が解決できることを見出し、発明を完成するに至った。
具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
(1)発酵後ビールテイスト液を含有し、糖類が27〜81g/Lである、容器詰めビアテイスト飲料。
(2)エキス分が3.5〜8.9質量%である、前記(1)の容器詰めビアテイスト飲料。
(3)更に、酸成分を含有し、酸度が0.05〜0.17g/100mLである、前記(1)又は(2)に記載の容器詰めビアテイスト飲料。
(4)更に、酸成分がリン酸を含む、前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の容器詰めビアテイスト飲料。
(5)pHが2.9〜4.3である、前記(1)乃至(4)のいずれかに記載の容器詰めビアテイスト飲料。
(6)更に、柑橘類果汁を0.01〜50質量%含有する、前記(1)乃至(5)のいずれかに記載の容器詰めビアテイスト飲料。
(7)更に、コーラ風味となるよう香料を添加した、前記(1)乃至(6)のいずれかに記載の容器詰めビアテイスト飲料。
(8)更に、カラメル色素を含有する、前記(1)乃至(7)のいずれかに記載の容器詰めビアテイスト飲料。
(9)発酵後ビールテイスト液が発泡酒である、前記(1)乃至(8)のいずれかに記載の容器詰めビアテイスト飲料。
(10)発酵後ビールテイスト液に糖液を添加して得られる、前記(1)乃至(9)のいずれかに記載の容器詰めビアテイスト飲料。
(11)糖液由来のBrixが2.7〜8.1である、前記(10)に記載の容器詰めビアテイスト飲料。
(12)糖液が果糖ブドウ糖液糖を含む、前記(10)又は(11)に記載の容器詰めビアテイスト飲料。
(13)穀物溶液を発酵させて発酵後ビールテイスト液を得る工程と、発酵後ビールテイスト液と糖液を混合する工程と、を備える容器詰めビアテイスト飲料の製造方法。
(14)糖液を混合する工程は、糖類が27〜81g/Lとなるように糖液を混合する工程を含む、前記(13)に記載の容器詰めビアテイスト飲料の製造方法。
(15)糖液を混合する工程は、エキス分が3.5〜8.9質量%となるように糖液を混合する工程を含む、前記(13)又は(14)に記載の容器詰めビアテイスト飲料の製造方法。
(16)混合する糖液由来のBrixが2.7〜8.1である、前記(13)乃至(15)のいずれかに記載の容器詰めビアテイスト飲料の製造方法。
(17)更に、酸度が0.05〜0.17g/100mLになるように、酸成分を添加して酸度を調整する工程を含む、前記(13)乃至(16)のいずれかに記載の容器詰めビアテイスト飲料の製造方法。
(18)更に、pHが2.9〜4.3になるように、酸成分を添加してpHを調整する工程を含む、前記(13)乃至(17)のいずれかに記載の容器詰めビアテイスト飲料の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、糖類の含有量を特定の値とすることにより、嗜好性に優れた容器詰めビアテイスト飲料及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。
<容器詰めビアテイスト飲料>
本実施形態に係る容器詰めビアテイスト飲料は、発酵後ビールテイスト液を含む飲料であり、糖類が27〜81(g/L)であり、好ましくは41〜68(g/L)であり、より好ましくは54〜68(g/L)である。糖類の含有量をこのような値とすることにより、程よい甘さが得られ、嗜好性に優れた容器詰めビアテイスト飲料が得られる。
発酵後ビールテイスト液とは、穀物溶液を原料として発酵工程を経て得られる液である。発酵後ビールテイスト液は、酒税法上の分類、使用原料やその使用量に関係なく、ビールと同様又は同類の香味を有するアルコール飲料液であればよい。好適には、発酵後ビールテイスト液としては、酒税法でいうビール、発泡酒が用いられる。
糖類とは、単糖類及び二糖類を意味する。単糖類としては、ぶどう糖、果糖、果糖ぶどう糖、木糖、ソルボース、ガラクトース又は異性化糖などが挙げられ、二糖類としては、蔗糖、麦芽糖、乳糖、異性化乳糖又はパラチノースなどが挙げられる。
【0008】
本実施形態に係る容器詰めビアテイスト飲料は、発酵後ビールテイスト液を糖液と混合して得られるものであることが好ましい。糖液は、糖類を含む水溶液である。糖液としては、例えば、果糖液、ぶどう糖液、及び果糖ぶどう糖液などが好適に用いられる。
糖液は、容器詰めビアテイスト飲料中の糖類量を27〜81(g/L)、好ましくは41〜68(g/L)、より好ましくは54〜68(g/L)に調整し、甘みのバランスを整えるために混合される。また、甘みのバランスの観点から、糖液は、容器詰めビアテイスト飲料における糖液由来のBrixが2.7〜8.1、好ましくは4.05〜6.75、より好ましくは5.4〜6.75になるように、混合される。更に、甘みのバランスの観点から、糖液は、容器詰めビアテイスト飲料のエキス分が3.5〜8.9質量%、好ましくは4.8〜7.5質量%、より好ましくは6.2〜7.5質量%になるように、混合される。
【0009】
本実施形態に係る容器詰めビアテイスト飲料には、発酵後ビールテイスト飲料以外の他の飲料が混合されていてもよい。混合される他の飲料としては、特に限定されるものではないが、例えば、ジンジャーエール、レモネード、コーラ、トマトジュース、オレンジジュース、カルピス、紅茶、コーヒーなどの清涼飲料や焼酎、泡盛、ウィスキー、ブランデー、ウォッカ、ラム、テキーラ、ジン、ワイン、及びスピリッツなどのアルコール飲料を用いることができる。また、他の飲料としては、甘酸を持った清涼飲料(例えば、ジンジャーエール、レモネード、及びコーラ)が好適に用いられる。容器詰めビアテイスト飲料中の他の飲料の混合量は、0.1〜99質量%、好ましくは1〜90質量%、より好ましくは5〜80質量%である。
容器詰めビアテイスト飲料には、上記の成分の他、酸成分、香料、果汁、及び色素等の他の成分が混合されていてもよい。
酸成分は、飲みごたえやすっきり感を付与するために、混合される。酸成分は、容器詰めビアテイスト飲料の酸度が0.05〜0.17g/100mL、好ましくは0.08〜0.17g/100mL、より好ましくは0.08〜0.14g/100mLとなるような濃度で、混合される。ここで酸度とは、果実飲料の日本農林規格(平成25年12月24日農水告第3118号)で定められた酸度の測定方法に基づいて算出されたクエン酸換算値を意味する。また、酸成分は、容器詰めビアテイスト飲料のpHが2.9〜4.3、好ましくは2.9〜3.7、より好ましくは3.1〜3.7となるような濃度で、混合される。
酸成分は、酸又はその塩の混合により、容器詰めビアテイスト飲料中に含有させることができる。酸又はその塩としては、例えば、食品衛生法により規定される酸味料(アジピン酸、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL−酒石酸、L−酒石酸、DL−酒石酸ナトリウム、L−酒石酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、氷酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL−リンゴ酸、DL−リンゴ酸ナトリウム、及びリン酸)を用いることができる。酸成分としては、一種類の成分が用いられてもよく、複数の種類の成分が用いられてもよい。好ましくは、酸成分は、リン酸を含む。
【0010】
香料は、香味を付与するために用いられる。香料は、一般の食品に用いられる香料であれば特に限定されず、目的に応じて用いる香料や含有量が適宜選択される。容器詰めビアテイスト飲料中の香料の含有量は、例えば、0.001〜5質量%、好ましくは0.01〜2質量%、より好ましくは0.02〜1質量%が選択される。なお、本発明においては、甘さと酸味のバランスの観点から、コーラ風味を与える香料(コーラフレーバー)が用いられることが好ましい。この場合、コーラフレーバーとしては、単一種類の香料が用いられてもよいし、コーラ風味となるようにスパイス類の香料や柑橘類の香料など複数種類の香料を組み合わせて作成された香料が用いられてもよい。
果汁としては、特に限定されるものではないが、レモン及びオレンジ等の柑橘類果汁、リンゴ、ナシ、モモ、ブドウ、イチゴ、キウイ、パインアップル等を用いることができる。香料としてコーラフレーバーを用いた場合には、香味のバランスの点から、果汁として柑橘類果汁を用いることが好ましく、レモン果汁を用いることがより好ましい。容器詰めビアテイスト飲料中における果汁の濃度は、特に限定されるものではない。容器詰めビアテイスト飲料中の果汁の総含有量は、例えば0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.1〜10質量%である。
色素は、容器詰めビアテイスト飲料の色彩を調整するために用いられる。色素としては、特に限定されるものではないが、香料としてコーラフレーバーを用いた場合には、カラメル色素が好適に用いられる。カラメル色素を含有させることにより、コーラらしさを付与することができる。容器詰めビアテイスト飲料中における色素の含有量は、例えば0.001〜5質量%、好ましくは0.01〜3質量%、より好ましくは0.01〜2質量%である。
【0011】
<容器詰めビアテイスト飲料の製造方法>
本実施形態に係る容器詰めビアテイスト飲料の製造方法は、発酵後ビールテイスト液を得る工程と、発酵後ビールテイスト液と糖液を混合する工程とを含んでいる。
【0012】
[発酵後ビールテイスト液を得る工程]
発酵後ビールテイスト液を得る工程は、穀物溶液調製工程、煮沸工程、及び発酵工程を備える。
(A)穀物溶液調整工程
まず、穀物溶液が調整される。なお、穀物溶液は、発酵後ビールテイスト液を調製するために用いられる溶液であり、単糖、二糖、及び三糖以上の糖類を含む水溶液である。
穀物溶液としては、例えば、デンプン質を含む穀物を加水分解することにより、得ることができる。植物性タンパク質分解物(大豆タンパク質分解物、エンドウタンパク質分解物など)を糖類と共に水に添加することにより、穀物溶液を調製することも可能である。
デンプン質を含む穀物としては、麦芽及びその抽出物が代表的であるが、麦芽以外にも米、コーンスターチ等の他の材料を用いることも可能である。
麦芽を主原料として用いる場合、穀物溶液は、例えば次の工程により、調整される。主原料である麦芽又は麦芽の粉砕物が、必要に応じて副原料としての米やコーンスターチ等と共に温水に加えられ、保温される。これにより、主に麦芽中に含まれるアミラーゼ等の糖化酵素により、麦芽及び他の副原料に含まれるデンプン質が加水分解され、マルトース等の糖が生成する。この場合、麦芽等が加えられた温水は、例えば、35℃から50℃で、20分から90分保持すればよい。
(麦芽の使用量等)
水以外の原料の総量に占める麦芽の使用量は、最終製品に求められる性能や品質に応じて、適宜調整すればよい。
(穀物溶液中の単糖の含有量)
穀物溶液中の単糖の含有量は、マルトース、グルコース、フルクトース等の糖類を添加することにより調整されてもよい。穀物溶液中の単糖の含有率は30質量%以上95質量%以下であることが好ましく、35質量%以上95質量%以下であることがより好ましく、50質量%以上95質量%以下であることが更に好ましく、60質量%以上90質量%以下であることが特に好ましい。穀物溶液中の単糖含有量を調整することにより、穀物香に寄与する香気成分の生成量がより増大し、穀物香がより向上した飲料を製造することができる。
(麦芽を使用しない場合の穀物溶液の調整)
麦芽を使用せずに穀物溶液を調製する場合、デンプン質を含む穀物及び/又は糖類に加えて、麦又は麦芽以外に由来する窒素源(例えば植物性たんぱく質分解物)、色素、等を温水に混合し、アミラーゼ等の糖化酵素による加水分解処理を行って穀物溶液を調製すればよい。これらの糖化酵素としては、従来公知の糖化酵素製剤等を用いればよい。麦又は麦芽以外の窒素源等の原料は、特に限定されるものではなく、従来のアルコール飲料を製造する場合に、通常用いられるものを、通常用いられる量で用いればよい。
(アミノ酸類)
穀物溶液調製工程は、更に、アミノ酸を添加するアミノ酸添加工程を有していてもよい。ここで、穀物溶液に添加されるアミノ酸としては、タンパク質を構成するアミノ酸として従来公知の天然アミノ酸を選択すればよく、アラニン、システィン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、スレオニン、バリン、トリプトファン、及びチロシンからなる群から選択される少なくとも一種を用いればよい。上記アミノ酸としては、システィン、メチオニン、プロリン、及びトリプトファンが好ましく、特に、プロリンが好ましい。これらのアミノ酸は、単独で用いても2種以上を併用して用いてもよい。アミノ酸類は、アミノ酸製剤として添加してもよいし、酵母エキス等のアミノ酸含有素材として添加してもよい。
本発明の製造方法において、穀物溶液にアミノ酸を添加する場合、その添加量は、通常、2mg/100mL以上300mg/100mL以下であることが好ましく、2mg/100mL以上50mg/100mL以下であることが更に好ましい。アミノ酸の添加量を上記の範囲内のものとすることにより、飲料中の穀物香に寄与する香味成分の含有量を効果的に高めることができる。更に、アミノ酸添加工程において、システィン、メチオニン、プロリン、及びトリプトファンからなる群から選ばれる少なくとも一種を用いる場合、その添加量は、それぞれ、2mg/100mL以上20mg/100mL以下、2mg/100mL以上10mg/100mL以下、10mg/100mL以上300mg/100mL以下、及び10mg/100mL以上50mg/100mL以下であることが好ましい。上記各アミノ酸を、上記の含有量で添加することにより、穀物香に寄与する香気成分の含有量を効果的に高めることができるとともに、飲料に、より良好な穀物香を付与することができる。
【0013】
(B)煮沸工程
調製された穀物溶液は、必要に応じてホップを加えて煮沸される。ここで、穀物溶液にホップを添加する場合、ホップは煮沸開始時から煮沸終了時の任意の段階で加えることが好ましい。また、煮沸時間は、特に限定されるものではなく、発泡性飲料の通常の煮沸時間を採用すればよい。
【0014】
(C)発酵工程
煮沸された穀物溶液は、酵母を用いて発酵させられる。煮沸後、穀物溶液から、ワールプールと呼ばれる槽でホップ等の沈殿物が除去され、プレートクーラーにより適切な温度に冷却される。冷却された穀物溶液に酵母を接種して発酵を行う。次いで、必要に応じて得られた発酵液を熟成させ、ろ過により酵母の菌体やタンパク質を除去する。これにより、発酵後ビールテイスト液が得られる。
酵母を用いて穀物溶液を発酵させる際の発酵条件は、発泡性飲料等の製造に当たって通常用いられる発酵条件を採用すればよい。例えば、2℃以上20℃以下の温度で、1日以上10日以下発酵させることができる。
【0015】
[発酵後ビールテイスト液と糖液を混合する工程]
発酵後ビールテイスト液中には、発酵工程で糖類が分解されることから、糖類がほとんど残っていない。そこで、所望の甘さを得るために、発酵後ビールテイスト液が、糖液と混合される。すなわち、本工程において発酵後ビールテイスト液と糖液を混合することにより、最終製品としての容器詰めビアテイスト飲料中における糖類の含有量を所望する値に調整することができ、甘さを整えることができる。
糖液は、容器詰めビアテイスト飲料中の糖類の含有量が、27〜81g/L、好ましくは41〜68g/L、より好ましくは54〜68g/Lとなるように、混合される。また、糖液は、容器詰めビアテイスト飲料中のエキス分が、3.5〜8.9質量%、好ましくは4.8〜7.5質量%、より好ましくは6.2〜7.5質量%となるように混合される。加えて、糖液は、本工程で混合される糖液由来のBrixが2.7〜8.1、好ましくは4.05〜6.75、より好ましくは5.4〜6.75となるように混合される。
【0016】
以上の工程により得られた発酵後ビールテイスト液と糖液との混合物は、必要に応じて更に他の飲料と混合され、本実施形態に係る容器詰めビアテイスト飲料が得られる。また、他の飲料を糖液として発酵後ビールテイスト液と混合し、本実施形態に係る容器詰めビアテイスト飲料を得ることもできる。なお、他の飲料は、発酵後ビールテイスト液と糖液とを混合する前に、発酵後ビールテイスト液に加えられてもよい。
【0017】
(酸成分を混合する工程)
本実施形態に係る製造方法は、更に、発酵後ビールテイスト液と酸成分を混合して酸度を調整する工程を含むことが好ましい。酸成分は、容器詰めビアテイスト飲料の酸度が0.05〜0.17g/100mL、好ましくは0.08〜0.17g/100mL、より好ましくは0.08〜0.14g/100mLになるように、混合される。また、酸成分は、容器詰めビアテイスト飲料のpHが2.9〜4.3、好ましくは2.9〜3.7、より好ましくは3.1〜3.7になるように、混合される。
発酵工程の後に酸成分を混合することによって、容器詰めビアテイスト飲料の酸度及びpHを所望する値に調整しやすくなる。その結果、容器詰めビアテイスト飲料の酸味を調整しやすくなり、酸味と甘さのバランスを整えやすくなる。
(他の成分を混合する工程)
また、本実施形態に係る製造方法は、更に、香料、果汁、及び色素などの他の成分を混合する工程を含むことが好ましい。これら他の成分は、発酵後ビールテイスト液と混合されること、すなわち発酵工程の後にビールテイスト液に混合されることが好ましい。発酵後ビールテイスト液とこれら他の成分とを混合することにより、容器詰めビアテイスト飲料の香味及び色彩などを整えやすくなる。ただし、これらの成分は、発酵工程の前に、穀物溶液に加えられていてもよい。
【実施例】
【0018】
以下、本発明について実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は以下に示す実施
例に何ら限定されるものではない。
<実施例1;糖液の混合量の検討>
発酵後ビールテイスト液に、コーラフレーバー(適宜複数の香料を組み合わせたものを最終濃度として0.1質量%)、レモン果汁(最終濃度として0.1質量%)、カラメル色素(最終濃度として0.1質量%)、85質量%リン酸、クエン酸ナトリウム、及び55%果糖ぶどう糖液糖(糖液)を加え、試料1乃至8を得た。各試料において、85質量%リン酸(酸成分)については、最終的な酸度が0.11g/100mLとなるように加え、クエン酸ナトリウムをpHが3.4になるように加えた。また、試料1乃至8の間において、55%果糖ぶどう糖液糖(糖液)の混合量は、0〜126(g/L)の範囲で変化させた。試料1乃至8に含まれる糖類量は、0〜95(g/L)の範囲であり、エキス分は0.5〜10.2質量%の範囲であった。また、加えた糖液由来のBrixは、0〜9.45の範囲であった。
【0019】
試料1乃至8について、6名のパネリストによる官能評価により、総合評価、甘さのよさ、ビールらしさ、コーラらしさを評価した。各項目は、以下の基準により評価された。
[評価基準(総合評価、甘さのよさ、ビールらしさ、コーラらしさ)]
5:良い
3:普通
1:悪い
【0020】
官能評価(平均値)及びパネリストから得られたコメントが、表1に示されている。
【表1】
【0021】
表1から明らかなように、試料3乃至7において、甘さの良さとして良好な結果が得られた。すなわち、糖類の含有量が27〜81(g/L)、エキス分が3.5〜8.9質量%、糖液由来のBrixが2.7〜8.1である場合に、程よい甘みが得られた。また、試料No.5及び6においては、特に良好な総合評価が得られた。
一方、糖の含有量が27(g/L)より少なく、エキス分が3.5質量%より少なく、糖液由来のBrixが2.7より小さい場合には、酸味や苦みが強く、水っぽくなりやすい傾向にあった。また、糖の含有量が81(g/L)より多く、エキス分が8.9質量%より多く、糖液由来のBrixが8.1より大きい場合には、甘みが強くなりすぎる傾向にあった。
【0022】
<実施例2;酸成分の混合量の検討>
続いて、酸成分の混合量を検討するため、酸成分の混合量を変えた試料9乃至14を調製した。試料9乃至14において、糖液の混合量は、糖液由来のBrixが6.75になるような値とし、クエン酸ナトリウムは実施例1と同量加えた。その他の点については、実施例1と同様の手順を採用した。得られた試料9乃至14について、総合評価、酸味のよさ、ビールらしさ、及びコーラらしさを、実施例1と同様の基準を用いて、6名のパネリストにより官能評価した。
【0023】
結果が表2に示されている。
【表2】
【0024】
表2から明らかなように、試料9乃至13において、3.0ポイント以上の総合評価及び酸味の良さが得られた。すなわち、酸度が0.05〜0.17、pHが2.9〜4.3である場合に、甘さと酸味のバランスが取れた飲料が得られることが理解される。