(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6361904
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/84 20180101AFI20180712BHJP
F24F 3/14 20060101ALI20180712BHJP
F24F 7/08 20060101ALI20180712BHJP
F24F 11/70 20180101ALI20180712BHJP
【FI】
F24F11/84
F24F3/14
F24F7/08 101Z
F24F11/70
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-21720(P2013-21720)
(22)【出願日】2013年2月6日
(65)【公開番号】特開2014-152971(P2014-152971A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2015年11月18日
【審判番号】不服2017-6800(P2017-6800/J1)
【審判請求日】2017年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(72)【発明者】
【氏名】多川 勝之
【合議体】
【審判長】
山崎 勝司
【審判官】
藤原 直欣
【審判官】
佐々木 正章
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−349270(JP,A)
【文献】
特開2005−16881(JP,A)
【文献】
特開平4−292720(JP,A)
【文献】
特開2010−255970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F1/00
F24F3/14
F24F7/08
F24F11/02
F24F5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外機と室内機との間で冷媒を循環させることにより前記室内機において冷風または温風を調製する構成の空冷ヒートポンプパッケージ方式の空調機を主体として構成され、前記室内機により調製した冷風または温風を空調対象室に対して給気することにより該空調対象室に対する空調を行う構成の空調システムであって、
前記空調機における冷媒配管の途中に前記冷媒との熱交換により選択的に指定した冷水または温水を調製する熱交換器ユニットを設置し、該熱交換器ユニットにより調製した冷水または温水を冷温水配管を通して前記空調対象室に天井面に設置した天井放射パネルに循環供給することにより該空調対象室に対して天井面から輻射冷暖房を行う構成とされ、
前記熱交換器ユニットは、前記冷媒と前記冷水または温水との間で熱交換を行う熱交換器本体と、前記冷水または温水を前記冷温水配管を通して前記熱交換器本体と前記天井放射パネルとの間で循環させるためのポンプと、前記冷水または温水の熱膨張を吸収するための膨張タンクと、前記熱交換器本体への前記冷媒の供給量を膨張弁の操作により制御することによって前記冷水または温水の温度を制御するための制御手段とを具備してなることを特徴とする空調システム。
【請求項2】
前記熱交換器ユニットの前記熱交換器本体、前記ポンプ、前記膨張タンク、および前記制御手段は、一のケーシング内に収納されていることを特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記熱交換器ユニットは、非居室の天井裏空間に設置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の空調システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の空調システムであって、
前記天井放射パネルにより前記空調対象室におけるインテリア負荷を処理可能とし、前記室内機により前記空調対象室におけるペリメータ負荷を処理可能としたことを特徴とする空調システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の空調システムであって、
前記室内機により前記空調対象室における外気負荷を処理可能としたことを特徴とする空調システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の空調システムであって、
前記空調対象室へ外気を導入しつつ該空調対象室から排気を行うとともにそれら外気と排気との間で水分の交換を行うことにより前記空調対象室の湿度を制御する外気処理装置を備えたことを特徴とする空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建物を対象とする空調システム、特に空冷ヒート
ポンプパッケージ方式の空調機からの給気による冷暖房と天井面からの輻射冷暖房を併用する構成の空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物を対象とする空調システムとしては各種の方式のものがあり、以前は建物全体の負荷に見合う大規模な冷凍機やボイラ、冷温水発生機等の中央熱源機によって調製した冷水や温水を大容量のポンプにより大径の配管を通して建物全体に分配供給するというセントラル(中央)方式によるものが一般的であったが、近年においては比較的小規模の空調機を建物内の各所に分散配置してそれらを独立に運転し制御する個別方式によるものが主流である。
【0003】
特に、個別方式のなかでも空冷ヒートポンプパッケージ方式の空調機(エアコン)によるものは、室外機と室内機との間で冷媒を循環させることにより室内機において冷風または温風を調製して空調対象室に直接送風する構成であって、システム全体を簡易にかつ安価に構成可能であるし、空調対象室ごとに独立に運転・制御が可能であるので効率的であり、しかも1台の屋外機に対して複数台の室内機を組み合わせることで合理的なマルチシステムを構成することも可能であることから、最も一般的な空調システムとして広く普及している。
【0004】
また、たとえば特許文献1に示されるように天井、床、壁に設置したパネルに対して冷水や温水を供給することによって輻射冷暖房を行う装置についての提案もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−174368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
輻射冷暖房システムは快適な環境を効率的に得られる有効なシステムではあるが、現時点で提案されている各種の輻射冷暖房システムはセントラル方式の熱源にて冷水または温水を調製し、ポンプにて供給するというシステムが必須となり、システム全体が複雑かつ大がかりとならざるを得ない。
そのため、輻射冷暖房システムはその有効性が認められつつも、個別空調方式を適用するような比較的小規模あるいは簡易な建物に対しては適用し難いものであって、現時点ではセントラル方式の空調システムを適用するような大規模な建物や特殊な建物に適用されるに留まり、広く普及するに至っていない。
【0007】
上記事情に鑑み、本発明は天井輻射冷暖房を一般の建物に対しても広く適用することを可能とする合理的で有効適切な空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、室外機と室内機との間で冷媒を循環させることにより前記室内機において冷風または温風を調製する構成の空冷ヒート
ポンプパッケージ方式の空調機を主体として構成され、前記室内機により調製した冷風または温風を空調対象室に対して給気することにより該空調対象室に対する空調を行う構成の空調システムであって、前記空調機における冷媒配管の途中に前記冷媒との熱交換により
選択的に指定した冷水または温水を調製する熱交換器ユニットを設置し、該熱交換器ユニットにより調製した冷水または温水を冷温水配管を通して前記空調対象室に天井面に設置した天井放射パネルに循環供給することにより該空調対象室に対して天井面から輻射冷暖房を行う構成とされ、前記熱交換器ユニットは、前記冷媒と前記冷水または温水との間で熱交換を行う熱交換器本体と、前記冷水または温水を前記冷温水配管を通して前記熱交換器本体と前記天井放射パネルとの間で循環させるためのポンプと、前記冷水または温水の熱膨張を吸収するための膨張タンクと、前記熱交換器本体への前記冷媒の供給量を膨張弁の操作により制御することによって前記冷水または温水の温度を制御するための制御手段とを具備してなることを特徴とする。
請求項2記載の発明は、前記熱交換器ユニットの前記熱交換器本体、前記ポンプ、前記膨張タンク、および前記制御手段は、一のケーシング内に収納されていることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、前記熱交換器ユニットは、非居室の天井裏空間に設置されていることを特徴とする。
【0009】
請求項
4記載の発明は、請求項1
から3のいずれか一項に記載の空調システムであって、前記天井放射パネルにより前記空調対象室におけるインテリア負荷を処理可能とし、前記室内機により前記空調対象室におけるペリメータ負荷を処理可能としたことを特徴とする。
【0010】
請求項
5記載の発明は、請求項1
から4のいずれか一項に記載の空調システムであって、前記室内機により前記空調対象室における外気負荷を処理可能としたことを特徴とする。
【0011】
請求項
6記載の発明は、請求項1
から5のいずれか一項に記載の空調システムであって、前記空調対象室へ外気を導入しつつ該空調対象室から排気を行うとともにそれら外気と排気との間で水分の交換を行うことにより前記空調対象室の湿度を制御する外気処理装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来のように輻射冷暖房システムを採用するために大がかりな中央方式の空調システムを前提とする必要がなく、汎用の空冷ヒートポンプパッケージ方式の空調機による簡易な個別空調システムを基本としつつ天井輻射冷暖房システムを有機的に組み合わせた合理的で効率的な空調システムを実現できる。
したがって本発明によれば、小規模な建物や簡易な建物も含めて様々な建物に対しても天井放射パネルによる快適かつ効率的な天井輻射冷暖房システムを支障なく適用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の空調システムの一実施形態を示す図である。
【
図2】本発明の空調システムの他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明の空調システムの一実施形態を示す図である。
これは、室外機2と室内機3とを冷媒配管4により接続してそれらの間で冷媒を循環させることにより室内機3において冷風または温風を調製する構成の空冷ヒート
ポンプパッケージ方式の空調機1を主体として構成されたもので、室内機3により調製した冷風または温風を空調対象室5に対して給気ダクト6を介して給気SAとして供給することによりその空調対象室5に対する空調を行う構成としたうえで、空調対象室5の天井面に設置した天井放射パネル7により輻射冷暖房を行う構成とされ、しかもその天井放射パネル7による輻射冷暖房を上記の空調機1(すなわち空冷ヒート
ポンプパッケージ)により行うことを主眼とする。
【0015】
すなわち、本実施形態の空調システムでは、空調機1における冷媒配管4の途中に冷媒との熱交換により冷水または温水を調製する熱交換器ユニット8を設置し、その熱交換器ユニット8により調製した冷水または温水を冷温水配管15を通して天井放射パネル7に循環供給することによって、空調対象室5に対して天井面から輻射冷暖房を行う構成とされている。
【0016】
本実施形態における熱交換器ユニット8は、天井放射パネル7に供給する冷水または温水(以下、冷温水という)と冷媒との間で熱交換を行う熱交換器本体9と、冷温水を冷温水配管15を通して熱交換器本体9と天井放射パネル7との間で循環させるためのポンプ10と、冷温水の熱膨張を吸収するための膨張タンク11と、熱交換器本体9への冷媒の供給量を膨張弁の操作により制御することによって冷温水の温度を制御するための制御手段12とを具備している。
【0017】
なお、本実施形態の熱交換器ユニット8は、上記の各要素の全てをケーシング13内に収納した構成として、たとえば二重天井内に設置可能な程度のコンパクトな形状・寸法としておくことが好ましい。
また、熱交換器ユニット8を廊下等の非居室(非重要室)の天井裏空間に設置することにより、万一の漏水事故が発生した際にもその被害を最少限に食い止めることができる。
さらに、膨張タンク11を密閉式としてそれには補給水を供給しない構成とするとともに、ケーシング13内の底部にはドレンパン(図示略)を備えておくことにより、万一の漏水事故が発生した際にも保有水が漏水するに留まるし、それをドレンパンにより受けることで漏水被害を確実に防止することが可能である。
【0018】
そして、本実施形態では、主として天井放射パネル7によって空調対象室5におけるインテリア負荷を処理し、室内機3は主として空調対象室5におけるペリメータ負荷と外気負荷を処理可能としている。
すなわち、空調対象室5の外壁に面するペリメータゾーンは内部のインテリアゾーンに比べて外壁を通しての熱ロス(スキンロード)および日射負荷が大きいことから、図示しているように室内機3からの給気SAを給気ダクト6を通してペリメータゾーンに対して直接的かつ集中的に供給することにより、ペリメータゾーンに対する冷暖房能力を増強している。
なお、ペリメータゾーンにファンコイルユニットを設置しても良く、その場合、上記の熱交換器ユニット8により調製した冷温水をそのファンコイルユニットに供給することも可能である。
【0019】
さらに、本実施形態においては、空調対象室5に供給するべき所要量の外気OAを外気ダクト16を通して室内機3に取り込み、所定の外気処理を行ったうえで給気SAとともに供給するようにしている。
なお、図示例では室内機3から給気SAおよび外気OAを供給するのみとしているが、必要であれば破線で示すように空調対象室5からの還気RAを還気ダクト17を通して室内機3に戻して循環させるようにしても良いし、さらに外気OAの導入量に見合う排気を行っても良い。
【0020】
本実施形態の空調システムによれば、汎用の空冷ヒートポンプパッケージ方式の空調機1による一般的な空調システムに対して、熱交換器ユニット8および天井放射パネル7を付加することで、室内機3からの給気SAによる冷暖房と天井放射パネル7による天井面からの輻射冷暖房を支障なく併用することが可能である。
【0021】
また、本実施形態において用いる熱交換器ユニット8は、ケーシング13内に熱交換器本体9とポンプ10、膨張タンク11の全体を組み込んだだけの簡易かつコンパクトな構成のものであるし、それにより調製する冷温水の温度を制御するために冷媒の供給量を膨張弁の操作により制御する構成の制御手段12も組み込んでいるので、水温制御のための複雑かつ高価な電動三方弁による高度な制御を不要とできるものであり、この点においてもシステム全体を充分に簡易にかつ安価に構築することが可能である。
【0022】
以上のことから、本発明によれば、従来のように輻射冷暖房システムを適用するために大がかりなセントラル方式の空調システムを前提とする必要はなく、汎用の空冷ヒートポンプパッケージ方式の空調機1による簡易な個別空調システムを基本としつつ、それに対して天井輻射冷暖房システムを有機的に組み合わせた効率的な空調システムを実現できるものであり、小規模な建物や簡易な建物も含めて様々な建物に対しても天井放射パネル7による快適かつ効率的な輻射冷暖房を合理的に適用することが可能となる。
【0023】
図2は本発明の空調システムの他の実施形態を示す。
図1に示した先の実施形態では室内機3により外気処理を行うものとしたが、本実施形態では外気処理を専用の外気処理装置20により行うようにしている。
【0024】
すなわち、本実施形態における外気処理装置20は、空調対象室5へ外気ダクト16を通して外気OAを導入しつつ空調対象室5から排気ダクト18により排気EAを行うとともに、それら外気OAと排気EAとの間で水分の交換を行うことによって空調対象室5の湿度を制御する構成としたものである。
【0025】
そのような外気処理装置20としては、水分を吸着しかつ放出する素材であるデシカント吸着材とヒートポンプとを組み合わせた構成のもの、具体的には、交互に蒸発器および凝縮器として機能するヒートポンプの2つの熱交換器に対してそれぞれデシカント吸着材を付着させた構成とし、一方の熱交換器を蒸発器として機能せしめてそのデシカント吸着材に水分を吸着(除湿)しつつ、同時に他方の熱交換を凝縮器として機能せしめてそのデシカント吸着材から水分の放出(加湿)を行う構成のものが好適に採用可能であり、本発明の空調システムに対してそのような外気処理装置20を具備することによって空調対象室5の湿度をきめ細かくしかも精度良く制御することが可能である。
【0026】
なお、本実施形態では室内機3によりインテリア負荷の一部も処理するものとして、図示しているように給気SAを空調対象室5全体に供給することを想定しているが、先の実施形態と同様に室内機3によりペリメータ負荷のみを処理するものとして給気SAをペリメータゾーンに対して集中的に供給することでも良い。
逆に、先の実施形態においても、本実施形態と同様に、室内機3によりペリメータ負荷のみならずインテリア負荷の一部も処理することとして給気SAを空調対象室5全体に供給することでも良いし、先の実施形態に対して本実施形態の外気処理装置20を付加することでも勿論良い。
【符号の説明】
【0027】
1 空調機(空冷ヒートポンプパッケージ)
2 室外機
3 室内機
4 冷媒配管
5 空調対象室
6 給気ダクト
7 天井放射パネル
8 熱交換器ユニット
9 熱交換器本体
10 ポンプ
11 膨張タンク
12 制御手段(膨張弁)
13 ケーシング
15 冷温水配管
16 外気ダクト
17 還気ダクト
18 排気ダクト
20 外気処理装置