(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、CO
2吸収液再生塔の塔底部では、CO
2吸収液をCO
2吸収塔に送液するポンプのキャビテーションを防ぐために、液面計を用いてCO
2吸収液の液面レベルを所定範囲に制御している。しかしながら、従来のCO
2回収装置のCO
2吸収液再生塔では、CO
2吸収液を安定して送液するために一定量のCO
2吸収液を塔底部に確保する必要があり、塔底部に貯留したCO
2吸収液が熱劣化する場合があった。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、CO
2吸収液の再生時の熱劣化を低減できるCO
2回収装置及びCO
2回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のCO
2回収装置は、被処理気体とCO
2吸収液とを接触させて前記被処理気体に含まれるCO
2を前記CO
2吸収液に吸収させるCO
2吸収塔と、CO
2を吸収した前記CO
2吸収液を加熱して当該CO
2吸収液からCO
2を放出させて前記CO
2吸収液を再生するCO
2吸収液再生塔と、を具備し、前記CO
2吸収液再生塔は、前記CO
2吸収液が一時的に貯留される第1貯留部と、前記第1貯留部の底部から下方に向けて設けられ、前記第1貯留部より相対的に容量が小さ
く、内径d2が前記第1貯留部の内径d1に対して相対的に小さい第2貯留部と、前記第2貯留部に配設され、前記第1貯留部と前記第2貯留部との間で変化する前記CO
2吸収液の液面レベルを測定する液面測定装置と、前記液面測定装置の測定結果に基づいて第1貯留部と前記第2貯留部との間で前記CO
2吸収液の液面レベルを制御する制御装置と、を有することを特徴とする。
【0007】
このCO
2回収装置によれば、第1貯留部より相対的に容量が小さい第2貯留部を設けるので、CO
2吸収液再生塔からCO
2吸収塔へ安定して送液するために必要なCO
2吸収液の液量を削減することができる。これにより、CO
2回収装置は、CO
2吸収液再生塔内におけるCO
2吸収液の滞留時間を削減でき、CO
2吸収液の再生時の熱劣化を低減することが可能となる。しかも、CO
2吸収液の液量を削減した場合であっても、第1貯留部の下方に第1貯留部より相対的に容量が小さい第2貯留部を設けるので、液面レベルの高さを確保でき、CO
2吸収液の送液に伴うCO
2吸収液再生塔内のガスの巻き込みを防ぐこともできる。
またこの構成により、CO2吸収液再生塔からCO2吸収塔へ安定して送液するために必要なCO2吸収液の液量を更に削減することが可能になるので、CO2吸収液再生塔内におけるCO2吸収液の滞留時間を削減でき、CO2吸収液の再生時の熱劣化をより一層低減できる。
【0008】
本発明のCO
2回収装置においては、前記第2貯留部の内径d2が、前記第1貯留部の内径d1に対して相対的に小さいことが好ましい。この構成により、CO
2吸収液再生塔からCO
2吸収塔へ安定して送液するために必要なCO
2吸収液の液量を更に削減することが可能になるので、CO
2吸収液再生塔内におけるCO
2吸収液の滞留時間を削減でき、CO
2吸収液の再生時の熱劣化をより一層低減できる。
【0009】
本発明のCO
2回収装置においては、前記第2貯留部の内径d2と前記第1貯留部の内径d1との比率(d2:d1)が、1:10〜1:2の範囲内であることが好ましい。この構成により、CO
2吸収液再生塔からCO
2吸収塔へ安定して送液するために必要なCO
2吸収液の液量を更に削減することが可能になるので、CO
2吸収液再生塔内におけるCO
2吸収液の滞留時間を削減でき、CO
2吸収液の再生時の熱劣化をより一層低減できる。
【0010】
本発明のCO
2回収装置においては、前記第2貯留部は、前記CO
2吸収液再生塔の底部に設けられた円筒状部材であることが好ましい。この構成により、CO
2吸収液再生塔からCO
2吸収塔へ安定して送液するために必要なCO
2吸収液の液量を更に削減することが可能になるので、CO
2吸収液再生塔内におけるCO
2吸収液の滞留時間を削減でき、CO
2吸収液の再生時の熱劣化をより一層低減できる。
【0011】
本発明のCO
2回収装置においては、前記第2貯留部内から前記CO
2吸収塔に送液する前記CO
2吸収液の液流速が0.3m/s以下であることが好ましい。この構成により、CO
2吸収液の液流速が適度な範囲となるので、CO
2吸収液の送液に伴うCO
2吸収液再生塔内のガスの巻き込みを防ぐことができる。
【0012】
本発明のCO
2回収方法は、被処理気体とCO
2吸収液とを接触させて前記被処理気体に含まれるCO
2を前記CO
2吸収液に吸収させるCO
2吸収工程と、CO
2を吸収した前記CO
2吸収液をCO
2吸収液再生塔で加熱して当該CO
2吸収液からCO
2を放出させて前記CO
2吸収液を再生するCO
2吸収液再生工程と、を含み、前記CO
2吸収液再生工程において、CO
2吸収液再生塔の前記CO
2吸収液が一時的に貯留される第1貯留部と、前記第1貯留部より相対的に容量が小さ
く、内径d2が前記第1貯留部の内径d1に対して相対的に小さい第2貯留部との間で変化する前記CO
2吸収液の液面レベルを測定し、測定した液面レベルに基づいて第1貯留部と前記第2貯留部との間で前記CO
2吸収液の液面レベルを制御することを特徴とする。
【0013】
このCO
2回収方法によれば、第1貯留部より相対的に容量が小さい第2貯留部を設けるので、CO
2吸収液再生塔からCO
2吸収塔へ安定して送液するために必要なCO
2吸収液の液量を削減することができる。これにより、CO
2回収方法は、CO
2吸収液再生塔内におけるCO
2吸収液の滞留時間を削減でき、CO
2吸収液の再生時の熱劣化を低減することが可能となる。しかも、CO
2吸収液の液量を削減した場合であっても、第1貯留部の下方に第1貯留部より相対的に容量が小さい第2貯留部を設けるので、液面レベルの高さを確保でき、CO
2吸収液の送液に伴うCO
2吸収液再生塔内のガスの巻き込みを防ぐこともできる。
またこの方法により、CO2吸収液再生塔からCO2吸収塔へ安定して送液するために必要なCO2吸収液の液量を更に削減することが可能になるので、CO2吸収液再生塔内におけるCO2吸収液の滞留時間を削減でき、CO2吸収液の再生時の熱劣化をより一層低減できる。
【0014】
本発明のCO
2回収方法においては、前記第2貯留部の内径d2が、前記第1貯留部の内径d1に対して相対的に小さいことが好ましい。この方法により、CO
2吸収液再生塔からCO
2吸収塔へ安定して送液するために必要なCO
2吸収液の液量を更に削減することが可能になるので、CO
2吸収液再生塔内におけるCO
2吸収液の滞留時間を削減でき、CO
2吸収液の再生時の熱劣化をより一層低減できる。
【0015】
本発明のCO
2回収方法においては、前記第2貯留部の内径d2と前記第1貯留部の内径d1との比率(d2:d1)が、1:10〜1:2の範囲内であることが好ましい。この方法により、CO
2吸収液再生塔からCO
2吸収塔へ安定して送液するために必要なCO
2吸収液の液量を更に削減することが可能になるので、CO
2吸収液再生塔内におけるCO
2吸収液の滞留時間を削減でき、CO
2吸収液の再生時の熱劣化をより一層低減できる。
【0016】
本発明のCO
2回収方法においては、前記第2貯留部は、前記CO
2吸収液再生塔の底部に設けられた円筒状部材であることが好ましい。この方法により、CO
2吸収液再生塔からCO
2吸収塔へ安定して送液するために必要なCO
2吸収液の液量を更に削減することが可能になるので、CO
2吸収液再生塔内におけるCO
2吸収液の滞留時間を削減でき、CO
2吸収液の再生時の熱劣化をより一層低減できる。
【0017】
本発明のCO
2回収方法においては、前記第2貯留部内から前記CO
2吸収塔に送液する前記CO
2吸収液の液流速が0.3m/s以下であることが好ましい。この方法により、CO
2吸収液の液流速が適度な範囲となるので、CO
2吸収液の送液に伴うCO
2吸収液再生塔内のガスの巻き込みを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、CO
2吸収液の再生時の熱劣化を低減できるCO
2回収装置及びCO
2回収方法を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明者らは、従来のCO
2回収装置においては、CO
2吸収液を加熱してCO
2吸収液を再生するCO
2吸収液再生塔内ではCO
2吸収液の滞留時間に応じてCO
2吸収液が熱劣化することに着目した。そして、本発明者らは、CO
2吸収液再生塔の第1貯留部としての塔本体部の下部に塔本体部より相対的に容量が小さい第2貯留部を設けることにより、CO
2吸収塔に安定して送液するためにCO
2吸収液再生塔の塔底部に確保する必要があるCO
2吸収液の液量を削減し、CO
2吸収液再生塔内におけるCO
2吸収液の滞留時間を削減してCO
2吸収液の熱劣化を防ぐことができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、適宜変更して実施可能である。また、以下の各実施の形態に係るCO
2回収装置の構成は適宜組み合わせて実施可能である。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係るCO
2回収装置の概略図である。
図1に示すように、このCO
2回収装置1は、ボイラやガスタービンなどの産業設備から排出されたCO
2を含有する排ガス(被処理気体)11A中のCO
2を吸収して高濃度のCO
2ガスとして回収する装置である。このCO
2回収装置1は、ボイラやガスタービンなどの産業設備から排出されたCO
2を含有する排ガス11Aを冷却する冷却塔12と、この冷却塔12の後段に設けられ、冷却された排ガス11AとCO
2吸収液13とを接触させて排ガス11A中のCO
2をCO
2吸収液13に吸収させて除去するCO
2吸収塔14と、このCO
2吸収塔14の後段に設けられ、CO
2を吸収したCO
2吸収液13からCO
2を放出させてCO
2吸収液13を再生するCO
2吸収液再生塔15とを具備する。
【0023】
このCO
2回収装置1においては、CO
2吸収液13がCO
2吸収塔14とCO
2吸収液再生塔15との間を循環している。CO
2吸収液13(リーン溶液)は、CO
2吸収塔14でCO
2を吸収してCO
2吸収液13(リッチ溶液)としてCO
2吸収液再生塔15に供給される、また、CO
2吸収液13(リッチ溶液)は、CO
2吸収液再生塔15でほぼ全てのCO
2が除去され再生されてCO
2吸収液13(リーン溶液)としてCO
2吸収塔14に供給される。
【0024】
冷却塔12は、排ガス11Aを冷却する冷却部121を有する。この冷却塔12の底部と冷却部121の頂部との間には、循環ラインL
1が設けられている。この循環ラインL
1には、冷却水W
1を冷却する熱交換器122と、冷却水W
1を循環ラインL
1内で循環させる循環ポンプ123とが設けられている。
【0025】
冷却部121では、排ガス11Aと冷却水W
1とを向流接触させることにより、排ガス11Aが冷却される。熱交換器122は、排ガス11Aとの間での熱交換により加熱された冷却水W
1を冷却する。循環ポンプ123は、熱交換器122を介して冷却塔12の底部に流下した冷却水W
1を冷却部121の頂部に供給する。
【0026】
CO
2吸収塔14は、CO
2吸収塔14の下部側に設けられ、冷却塔12で冷却された排ガス11Aが供給されるCO
2吸収部141と、CO
2吸収塔14の上部側に設けられた水洗部142とを備える。水洗部142の底部には、CO
2が除去された排ガス11Bを洗浄する洗浄水W
2を貯留する液貯留部144が設けられている。この液貯留部144と水洗部142の上部との間には、液貯留部144で回収されたCO
2吸収液13を含む洗浄水W
2を水洗部142の頂部側から供給して循環させる循環ラインL
2が設けられている。この循環ラインL
2には、洗浄水W
2を冷却する熱交換器21と、熱交換器21を介して液貯留部144で回収されたCO
2吸収液を含む洗浄水W
2を循環ラインL
2内で循環させる循環ポンプ22が設けられている。また、循環ラインL
2には、洗浄水W
2の一部(洗浄水W
3)を抜き出してCO
2吸収部141に供給する抜き出しラインL
3が設けられている。この抜き出しラインL
3には、CO
2吸収液13(リーン溶液)に供給する洗浄水W
3の供給量を調整する調整弁23が設けられている。
【0027】
CO
2吸収部141では、CO
2を含有する排ガス11Aとアルカノールアミンなどを含むCO
2吸収液13とが対向流接触する。これにより、排ガス11A中のCO
2は、下記式に示す化学反応によりCO
2吸収液13に吸収される。この結果、CO
2を含有する排ガス11Aは、CO
2吸収部141を通過することにより、CO
2が除去された排ガス11Bとなる。
R−NH
2+H
2O+CO
2→R−NH
3HCO
3
【0028】
水洗部142では、CO
2が除去された排ガス11Bがチムニートレイ145を介して上昇する。そして、排ガス11Bは、水洗部142の頂部側から供給される洗浄水W
2と気液接触して排ガス11Bに同伴するCO
2吸収液13が循環洗浄により回収された排ガス11Cとなる。この排ガス11Cは、ミストエリミネータ146でガス中のミストが捕捉されてCO
2吸収塔14の塔頂部14aから外部へ排出される。
【0029】
CO
2吸収塔14の塔底部14bとCO
2吸収液再生塔15の上部との間には、CO
2吸収塔14でCO
2を吸収したCO
2吸収液13(リッチ溶液)をCO
2吸収液再生塔15の上部側に供給するリッチ溶液供給管50が設けられている。このリッチ溶液供給管50には、CO
2吸収塔14でCO
2を吸収したCO
2吸収液13(リッチ溶液)をCO
2吸収液再生塔15に向けて供給するリッチソルベントポンプ51と、CO
2を吸収したCO
2吸収液13(リッチ溶液)を水蒸気で加熱されてCO
2が除去されたCO
2吸収液13(リーン溶液)によって加熱するリッチ・リーン溶液熱交換器52とが設けられている。
【0030】
CO
2吸収液再生塔15は、CO
2吸収液再生塔15の中央部に設けられ、CO
2吸収したCO
2吸収液13が供給される本体部(第1容量部)151と、本体部151の下部の塔底部15bの鏡面部152と、鏡面部152の底部に設けられたブーツ部(第2容量部)153とを備える。ブーツ部153は、鏡面部152の底部から下方に向けて設けられている。ブーツ部153には、CO
2吸収液再生塔15からCO
2吸収塔14へ供給するCO
2吸収液13の液面レベルを測定する液面計(液面測定装置)101が設けられている。液面計101で測定された液面レベルは、制御装置102に伝達される。
【0031】
CO
2吸収液再生塔15のブーツ部153の底部には、塔底部に流下したCO
2吸収液13を循環する循環ラインL
4が設けられている。この循環ラインL
4には、飽和水蒸気SによってCO
2吸収液13を加熱する再生加熱器31が設けられている。
【0032】
CO
2吸収液再生塔15の塔頂部15aには、水蒸気を伴ったCO
2ガス41を排出するガス排出ラインL
5が設けられている。このガス排出ラインL
5には、CO
2ガス41中の水分を凝縮するコンデンサ42と、CO
2ガス41と凝縮水W
5とを分離する分離ドラム43とが設けられている。凝縮水W
5が分離されたCO
2ガス44は、分離ドラム43の上部から外部に放出される。分離ドラム43の底部とCO
2吸収液再生塔15の上部との間には、分離ドラム43にて分離された凝縮水W
5をCO
2吸収液再生塔15の上部に供給する凝縮水ラインL
6が設けられている。凝縮水ラインL
6には、分離ドラム43にて分離された凝縮水W
5をCO
2吸収液再生塔15の上部に供給する凝縮水循環ポンプ45が設けられている。
【0033】
また、CO
2吸収液再生塔15の塔底部とCO
2吸収塔14のCO
2吸収部141の上部には、CO
2吸収液再生塔15の塔底部のCO
2吸収液13(リーン溶液)をCO
2吸収部141の上部に供給するリーン溶液供給管53が設けられている。このリーン溶液供給管53には、水蒸気で加熱されてCO
2が除去されたCO
2吸収液13(リーン溶液)によってCO
2を吸収したCO
2吸収液13(リッチ溶液)を加熱するリッチ・リーン溶液熱交換器52と、CO
2吸収液再生塔15の塔底部のリーン溶液をCO
2吸収部141の上部に供給するリーン溶液ポンプ54と、CO
2吸収液13(リーン溶液)を所定の温度に冷却する冷却部55とが設けられている。このリーン溶液ポンプ54は、制御装置102によってCO
2吸収液13(リーン溶液)の供給量が制御可能になっている。
【0034】
次に、
図2から
図5を参照してCO
2回収装置1におけるCO
2吸収液再生塔15のCO
2吸収液13の液面レベルの制御について詳細に説明する。
図2及び
図3は、一般的なCO
2吸収液再生塔15の塔底部15bの模式的な拡大図であり、
図4及び
図5は、本実施の形態に係るCO
2吸収液再生塔15の塔底部15bの模式的な拡大図である。なお、
図2から
図5においては、説明の便宜上、リボイラーなどの機器を省略して示している。
【0035】
図2に示すように、一般的なCO
2吸収液再生塔15は、所定の内径d1を有する円筒状の本体部151と、この本体部151の下部に設けられた曲面状の鏡面部152とを備える。本体部151の上部には、複数の貫通孔が設けられたチムニートレイ154が設けられている。このチムニートレイ154を介してCO
2吸収液再生塔15の塔底部に貯留されたCO
2吸収液13が加熱されて発生した蒸気13Sが上昇するように構成されている。鏡面部152の底部には、CO
2吸収液13をCO
2吸収塔14に向けて送液する送液管156が設けられている。
【0036】
また、本体部151の上部には、チムニートレイ154の外周縁部に貯留されたCO
2吸収液13を抜き出してリボイラー(不図示)に送液する送液管157と、リボイラーで加熱(例えば、120℃)されて一部が気化した気液混合のCO
2吸収液13をCO
2吸収液再生塔15内に送液する送液管158とが設けられている。この送液管158には、気液混合のCO
2吸収液13をCO
2吸収液再生塔15内に分散させる分散器159が接続されている。この分散器159は、中央部に切欠部159aが設けられた略円筒状部材であり、この切欠部159aから下方に向けて気液混合のCO
2吸収液13を分散させる。
【0037】
本体部151の鏡面部152の底から所定範囲R1には、CO
2吸収液13が一時的に貯留されている。この範囲に貯留されるCO
2吸収液13は、CO
2吸収液再生塔15からCO
2吸収塔14に安定してCO
2吸収液13を送液するために確保する必要があるCO
2吸収液13である。また、本体部151には、所定範囲R1に貯留されたCO
2吸収液13の液面レベルを測定する液面計101が設けられている。この液面計101によって測定された液面レベルは、制御装置102によって伝送される。制御装置102は、液面計101で測定された液面レベルに応じてCO
2吸収液再生塔15からCO
2吸収塔14へ送液するリーン溶液ポンプ54の送液量を調整する。
【0038】
液面計101は、一般的なCO
2吸収液再生塔15においては、鏡部152の上端部152aから所定高さHに設置される。これにより、所定範囲R1の上端と液面計101との間の所定範囲R2でCO
2吸収液13の液量を制御することにより、吸収液再生塔15からCO
2吸収塔14に安定してCO
2吸収液13を送液するために必要なCO
2吸収液13の液量を確保しつつ、同時に、制御液面から送液管156までの距離が保たれるため、送液管156へのガス巻き込みも防ぐことが可能となる。制御装置102は、CO
2吸収液13の液面レベルが所定範囲R2の下端以下に低下した場合には、リーン溶液ポンプ54のキャビテーションを防ぐために、リーン溶液ポンプ54からのCO
2吸収液13の送液を停止する。このように液面計101を設置して所定範囲R2の液面レベルを制御することにより、分散器13でCO
2吸収液13を分散してCO
2吸収液再生塔15内に供給する際に発生する泡の巻き込みを防ぐことができる。
【0039】
ところで、上述したように、一般的なCO
2吸収液再生塔15においては、CO
2吸収液再生塔15からCO
2吸収塔14に安定してCO
2吸収液13を送液するために、所定範囲R2の下端以下の部分に常に所定量のCO
2吸収液13を確保する必要がある。このため、鏡部152を含む所定範囲R2の下端以下の部分は、常にCO
2吸収液13が滞留するデッドスペースとなり、CO
2吸収液13の熱劣化が増大する場合がある。
【0040】
そこで、例えば、
図3に示すように、液面計101を鏡面部152に設置し、CO
2吸収液再生塔15からCO
2吸収塔14に安定して送液するために必要なCO
2吸収液13の液量を、鏡面部152の上端部152aとCO
2吸収液再生塔15の塔底部15bとの間の所定範囲R3に削減することも考えられる。しかしながら、この場合には、塔底部に貯留されたCO
2吸収液13の液面と送液管156との間の距離が小さくなるので、分散器159で分散して流下するCO
2吸収液13が塔底部に貯留されたCO
2吸収液13に接触した際に生じる泡が送液管156に侵入しやすくなる場合がある。また、この場合であっても、CO
2吸収液13の液量を所定範囲R3の下端以下の部分には依然として所定容量のデッドスペースが生じることとなる。
【0041】
そこで、本実施の形態では、
図4に示すように、CO
2吸収液再生塔15に、所定の内径d1を有する円筒状の本体部151(第1貯留部)と、この本体部151の下部に設けられた曲面部を有する鏡面部152と、この鏡面部152の底部に鏡面部152の底部から下方に向けて円筒状部材としてのブーツ部(第2貯留部)153とを設ける。ブーツ部153の鏡面部153aの底部には、送液管156が設けられている。CO
2吸収液13は、本体部151、鏡面部152及びブーツ部153に一時的に貯留される。ブーツ部153は、本体部151の内径d1に対して相対的小さい内径d2を有している。本体部151の内径d1とブーツ部153の内径d2との比率(d2:d1)は、例えば、1:5である。本体部151には、ブーツ部153の底から所定高さR1となるようにCO
2吸収液13が一時的に貯留されている。液面計101は、ブーツ部153の下端部の鏡部153aの上端部153bから所定高さHに設置され、ブーツ部153内のCO
2吸収液13の液面レベルを測定する。この液面計101によって測定されたブーツ部153内の液面レベルは、制御装置102によって伝送される。制御装置102は、液面計101によって測定されるブーツ部153内の液面レベルに応じてリーン溶液ポンプ54によってCO
2吸収液再生塔15の塔底部15bから送液するCO
2吸収液13の液量を調整する。
【0042】
本実施の形態に係るCO
2吸収液再生塔15においては、本体部151より相対的による容量が小さいブーツ部153を鏡面部152の下部に設けるので、
図2に示した一般的なCO
2吸収液再生塔15と比較し、CO
2吸収液再生塔15からCO
2吸収塔14に安定して送液するために確保する必要があるCO
2吸収液13の液量を削減することが可能となる。これにより、
図5に示すように、CO
2吸収液再生塔15の下部に生じるCO
2吸収液13のデッドスペースをR5の範囲まで削減することが可能となるので、CO
2吸収液13の熱劣化を防ぐことが可能となる。そして、塔底部のCO
2吸収液13の液量を削減した場合であっても、本体部151より相対的による容量が小さいブーツ部153を設けているので、CO
2吸収液再生塔15の下部に貯留したCO
2吸収液13の液面と送液管156との間の距離を十分に確保することができるので、CO
2吸収液再生塔15内のガスの巻き込みを防ぐことができる。
【0043】
本実施の形態に係るCO
2回収装置1においては、ブーツ部153の内径d2と本体部151の内径d1との比率(d2:d1)が、1:10〜1:2の範囲内であることが好ましい。この構成により、上述したように、CO
2吸収液13の液面レベルの制御に必要なCO
2吸収液13を効率良く削減できると共に、CO
2吸収液13の液面レベルの制御が容易となる。ブーツ部153の内径d2と本体部151の内径d1との比率(d2:d1)は、上述した作用効果が一層向上する観点から、1:8〜1:3がより好ましく、1:5が更に好ましい。
【0044】
また、本実施の形態に係るCO
2回収装置1においては、ブーツ部153内からCO
2吸収塔14に送液するCO
2吸収液13の液流速が0.3m/s以下であることが好ましい。この構成により、CO
2吸収液再生塔15に本体部151より相対的に内径d2が小さいブーツ部153を設けてCO
2吸収液13の液面レベルの制御に必要なCO
2吸収液13の液量を削減した場合であっても、ブーツ部153から送液されるCO
2吸収液13へのCO
2吸収液再生塔15内のガスの巻き込みを防ぐことが可能となる。ブーツ部153内からCO
2吸収塔14に送液するCO
2吸収液13の液流速としては、0.25m/s以下がより好ましく、0.20m/s以下が更に好ましい。
【0045】
なお、上述した実施の形態では、中央部に切欠部159aが設けられた略円筒状部材の分散器159を用いた例について説明したが、分散器はこの構成に限定されない。
図6は、本実施の形態に係るCO
2吸収液再生塔15の他の構成例を示す図である。
図6に示す例では、本体部151の上部の壁面近傍に、先端が本体部151の周面に沿った曲面160a(
図7A及び
図7B参照)をなしており、両側方に開口部160bが設けられた分散器160が設けられている。この分散器160は、送液管158から供給された気液混合のCO
2吸収液13を開口部160bから本体部151の周面に沿って両側方に分散させる(
図7A参照)。これにより、CO
2吸収液13は、本体部151の周面に沿って流下するので、CO
2吸収液再生塔15内を流下するCO
2吸収液13とCO
2吸収液再生塔15の下部に貯留したCO
2吸収液13とが接触した際の泡の発生を防ぐことが可能となり、送液管156への泡の巻き込みを一層防止できる。
【0046】
なお、
図6に示した例では、一つの分散器160を設けた例について説明したが、この構成に限定されない。
図7Aに示すように、分散器160を用いる場合には、送液管158から供給されるCO
2吸収液13が分散器160の先端の曲面160aに沿って分散されて両側方に設けられた開口部160bから両側方の曲面に沿ってそれぞれ分散される。このため、
図7Bに示すように、本体部151に設けた分散器160の対向面に別の分散器161を設けてもよい。この分散器161は、分散器160と同様に、本体部151の周面に沿った曲面161aと、両側方に設けられた開口部161bとを有する。このように2つの分散器160、161を対向して配置することにより、一方の送液管158aに接続された分散器160及び他方の送液管158bに接続された分散器161でそれぞれCO
2吸収液13が分散されるので、効率良くCO
2吸収液13を分散させることが可能となる。
【0047】
次に、本実施の形態に係るCO
2回収装置1の全体動作について説明する。ボイラやガスタービンなどの産業設備から排出されたCO
2を含有する排ガス11Aは、冷却塔12に導入されて冷却水W
1と向流接触されて冷却される。冷却された排ガス11Aは、煙道16を介してCO
2吸収塔14に導入されると共に、CO
2吸収塔14に導入される排ガス11Aの流量が測定される。CO
2吸収塔14に導入された排ガス11Aは、CO
2吸収部141でアルカノールアミンなどを含むCO
2吸収液13と対向流接触され、排ガス11A中のCO
2がCO
2吸収液13に吸収されてCO
2が除去された排ガス11Bとなる。
【0048】
CO
2が除去された排ガス11Bは、チムニートレイ145を介して上昇して水洗部142の頂部側から供給される洗浄水W
2と気液接触して排ガス11Bに同伴するCO
2吸収液13を循環洗浄により回収された排ガス11Cとなる。この排ガス11Cは、ミストエリミネータ146でガス中のミストが捕捉されてCO
2吸収塔14の塔頂部14aから外部へ排出される。
【0049】
CO
2吸収塔14でCO
2を吸収したCO
2吸収液13(リッチ溶液)は、リッチ溶液供給管50を介してリッチ・リーン溶液熱交換器52でCO
2吸収液13(リーン溶液)との間で熱交換された後、リッチソルベントポンプ51によってCO
2吸収液再生塔15の上部に供給される。CO
2吸収液再生塔15に供給されたCO
2吸収液13は、CO
2吸収液供給部151を介して塔底部に流下する間にCO
2が除去されてセミリーン溶液となる。このセミリーン溶液は、循環ラインL
4を循環して再生加熱器31で飽和水蒸気Sによって加熱されてCO
2吸収液13(リーン溶液)となる。加熱後の飽和水蒸気Sは、水蒸気凝縮水W
4となる。CO
2吸収液13から除去されたCO
2ガス41は、コンデンサ42によって水分が凝縮された後、分離ドラム43の上部から凝縮水W
5が分離されたCO
2ガス44として外部に放出される。
【0050】
CO
2吸収液再生塔15の塔底部15bのCO
2吸収液13(リーン溶液)は、リーン溶液供給管53を介してリッチ・リーン溶液熱交換器52によってCO
2吸収液13(リッチ溶液)との間で熱交換された後、リーン溶液ポンプ54によってCO
2吸収塔14のCO
2吸収部141の上部に供給される。ここでは、制御装置102が流量計101で測定された液面レベルに応じてブーツ部153の上部153cと本体部151との間の所定範囲R4内となるように液面レベルを制御する。ここでは、制御装置102は、本体部151の範囲R41、鏡面部152の範囲R42及びブーツ部の範囲R3のそれぞれに設定された液量と液面レベルとの関係式に基づいて全範囲R4で液量と液面レベルとが比例関係となるように制御する。これにより、安定した液面制御が可能となる。なお、制御装置102は、CO
2吸収液13の送液時のガスの巻き込みを防ぐ観点から、ブーツ部153におけるCO
2吸収液13を0.3m/s以下とすることが好ましい。
【0051】
以上説明したように、本実施の形態によれば、CO
2吸収液再生塔15の塔底部に本体部151より相対的に容量が小さいブーツ部153を設けるので、CO
2吸収液再生塔15からCO
2吸収塔14へ安定して送液するために必要なCO
2吸収液13の液量を削減することができる。これにより、CO
2回収装置1は、CO
2吸収液再生塔15内におけるCO
2吸収液13の滞留時間を削減でき、CO
2吸収液13の再生時の熱劣化を低減することが可能となる。しかも、CO
2吸収液13の液量を削減した場合であっても、本体部151の下方に本体部151より相対的に容量が小さいブーツ部153を設けるので、液面レベルの高さを確保でき、CO
2吸収液13の送液に伴うCO
2吸収液再生塔15内のガスの巻き込みを防ぐことができる。これらの結果、本実施の形態によれば、CO
2吸収液再生塔15の塔底部15bにブーツ部153を設けることにより、CO
2吸収液再生塔15の塔底部15bに貯留されたCO
2吸収液13の液量を50%削減することが可能となり、CO
2吸収液再生塔15全体の熱劣化によるアミンの損失量を50%削減することが可能となる。
【0052】
なお、上述した実施の形態においては、ブーツ部153を円筒状部材として設けた例ついて説明したが、ブーツ部153の形状は、この構成に限定されない。ブーツ部153としては、本体部151より相対的に容量が小さい部材であればよく、例えば、三角柱、四角柱などの多角柱状の部材であってもよい。
【0053】
また、上述した実施の形態においては、ボイラやガスタービンなどの産業設備から排出されたCO
2を含有する排ガス11AをCO
2吸収液13で処理する例について説明したが、CO
2吸収液13で処理する被処理気体としては、CO
2を含有するガスであれば各種ガスに適用可能である。