【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度独立行政法人科学技術振興機構 研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム 産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
無菌状態に維持される作業室内に、培養容器や遠沈管を含む容器類を収納する収納手段と、上記収納手段に収納された容器類を保持して移送するロボットとを備えた自動培養操作装置において、
上記収納手段は、立設された回転軸と、上記回転軸を回転駆動する駆動手段と、上記回転軸に設けられた上記培養容器を載置させる載置テーブルと、上記遠沈管を起立状態で支持する支持テーブルとを備え、
上記支持テーブルは、載置テーブルよりも下方で載置テーブルの外周縁よりも半径方向外方に突出して設けられ、
これら載置テーブルおよび支持テーブルに収納された各容器類は、上記駆動手段によってロボットの受け渡し位置まで順次回転移送されることを特徴とする自動培養操作装置。
上記回転軸は上記作業室の床を貫通して設けられ、上記載置テーブルおよび支持テーブルを作業室内に、上記駆動手段を作業室の床の下方にそれぞれ設けたことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の自動培養操作装置。
上記駆動手段により回転軸が回転駆動される伝達状態と、上記駆動手段の駆動力が遮断されて人手により回転軸を回転させることが可能な非伝達状態とに切り替える切替手段を設けたことを特徴とする請求項4に記載の自動培養操作装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図示実施例について説明すると、
図1は本実施例にかかる自動培養操作装置1の平面図を、
図2は側面図をそれぞれ示し、この自動培養操作装置1は内部に形成された作業室2aが無菌状態に維持されるアイソレータ2と、上記作業室2aに接続されて培養操作に使用する器具類や容器類および液体類を搬入するためのパスボックス3と、作業室2aに接続されるとともに収容した被培養物を培養するインキュベータ4とを備え、この自動培養操作装置1はアイソレータ2に隣接して設けられた制御手段5によって制御されるようになっている。
上記アイソレータ2の作業室2aには、上記容器類を保持して移送する第1ロボット6および第2ロボット7と、これら第1ロボット6と第2ロボット7との間で上記容器類を受け渡すための仮置き部と、上記容器類を収納する収納手段としてのロータリストッカ8と、遠心分離を行う遠心分離手段9と、上記液体類を供給する液体供給手段10と、被培養物を検査する検査手段11と、被培養物を上記インキュベータ4に対して搬出入する搬出入手段12とが設けられている。
そして本実施例では、上記被培養物としての細胞を培地に播種する播種作業や培地交換作業といった培養操作を、上記制御手段5の制御による上記第1、第2ロボット6、7等の動作によって自動的に行うことが可能となっている。
【0009】
上記培養操作に使用する上記容器類としては、細胞の培養に使用する培養容器としてのディッシュ21や、先端がテーパ状に形成された遠沈管22がある(
図6参照)。
また上記器具類としては、上記液体供給手段10で使用するピペット23(
図9参照)およびアスピレータノズル24(
図10参照)、細胞の検査に使用する観察プレート25(
図12参照)、上記遠沈管22や上記液体類を収容した液体容器に装着するカバーキャップ26(
図6、
図9参照)がある。
上記遠沈管22やピペット23は、
図3に示すように第1、第2ロボット6、7のグリッパ6b、7bによって把持され、遠沈管22はグリッパ6b、7bに形成された大径部材を把持するためのV字形状の第1凹部6c、7cを用いて把持され、ピペット23は小径部材を把持するための円弧形状の第2凹部6d、7dを用いて把持されるようになっている。
【0010】
上記被培養物としては人間の細胞の他、組織や血液等があり、これらは液体類として上記遠沈管22と同形状を有する検体容器28(
図6参照)に収容された状態でアイソレータ2に搬入されるようになっている。
また上記培養操作に使用する上記液体類としては、培地やPBS(リン酸緩衝生理食塩水)、トリプシン、トリパンブルー等の薬液があり、それぞれ培地容器29、PBS容器30、トリプシン容器31(
図8参照)、試薬容器32(
図13参照)に収容されている。
そして、上記遠沈管22、検体容器28、培地容器29、PBS容器30、トリプシン容器31には、パスボックス3に搬入される際にはそれぞれ口部に図示しないスクリューキャップが螺着されているが、これらは上記第1、第2ロボット6、7による開閉が煩雑であるため、作業室2aの内部において螺合の必要のない上記カバーキャップ26に交換されるようになっている。
さらに上記培養操作で使用する器具類としては他に、上記ディッシュ21を搬送するためのアタッチメント33(
図4参照)や、上記試薬容器32の試薬を分注するマイクロピペット34(
図13参照)がある。
【0011】
図4を用いて上記ディッシュ21および上記アタッチメント33について説明すると、上記ディッシュ21は底の浅い円形の皿形容器となっており、当該ディッシュ21にはカバー21aが装着されている。そして
図4(a)は平面図を、(b)は(a)におけるb−b部の断面図を示している。
上記アタッチメント33は第1、第2ロボット6、7のグリッパ6b、7bによって把持されるグリップ33aと、上記ディッシュ21を支持する保持部33bと、これらを連結する連結部材33cとから構成されている。
上記グリップ33aは断面略四角形の柱状部材となっており、上記グリッパ6b、7bのV字形状の第1凹部6c、7cによって把持されることで、アタッチメント33がグリッパ6b、7bに対して回転しないようになっている。
上記保持部33bは略U字形の部材となっており、当該U字形の形状の基部側に上記連結部材33cが連結され、先端側には所要の隙間が形成されている。また保持部33bはその周方向に沿って略L字形の断面形状を有しており、その底面部分でディッシュ21の底面を下方から支持し、また側面部分でディッシュ21の側面を支持するようになっている。
さらに、上記保持部33bのU字形における基部側と、これに対して直交した位置とには、それぞれ当該保持部33bより外方に突出する逃がし部33dが形成されており、当該逃がし部33dは垂直な壁面によって構成されている。
そして、上記連結部材33cには2つの位置決め孔33eが穿設されており、一つは上記保持部33bとグリップ33aとの間に、もう一つは上記グリップ33aの位置に設けられている。
なお培養操作において、
図4に示すディッシュ21の他に、当該ディッシュ21よりも小径の小径ディッシュを用いる場合には、当該小径ディッシュの下面に上記ディッシュ21の外径と略同径の円盤状のホルダを設けて、当該ホルダごと上記アタッチメント33によって保持することが可能となっている。
【0012】
上記観察プレート25は、
図12に示すように細胞がその表面に載置されるガラスなどからなるプレート25aと、当該プレート25aを保持するプレートホルダ25bとから構成されている。
上記プレートホルダ25bは上記プレート25aの略三方を囲繞するように形成された略コ字形の薄板状部材となっており、当該プレートホルダ25bには第1、第2ロボット6、7のグリッパ6b、7bによって把持されるグリップ25cと、2つの位置決め孔25dが設けられている。
【0013】
上記マイクロピペット34は、
図13、14に示すように従来公知のマイクロピペット34を使用することができ、交換式のマイクロピペットノズル35が装着される筒状の先端管34aと、液体の吸排を操作をするための吸引ボタン34bと、当該吸引ボタン34bを囲繞して設けられた上記マイクロピペットノズル35を離脱させるためのイジェクトボタン34cとが設けられている。
また上記マイクロピペット34を上記第1、第2ロボット6、7によって保持するため、マイクロピペット34の胴部には平板状の保持部材36が固定されている。
当該保持部材36はマイクロピペット34の側方に突出し、当該突出した部分には上記第1、第2ロボット6、7のグリッパ6b、7bによって把持されるグリップ36aと、2つの位置決め孔36bとが設けられている。
【0014】
上記アイソレータ2は、その内部に形成された作業室2aが予め除染処理された状態で、
図2に示すアイソレータ2の上部に設けた無菌状態維持手段37が清浄化された空気を上方より下方に向けて流通させることにより、陽圧に維持されて無菌状態を維持するようになっている。
また、作業室2aにおいて異なる細胞を扱う場合や、異なる培養操作を行う際には、作業室2aの内部は除染ガス(過酸化水素蒸気)を供給する除染ガス供給手段38(
図1参照)によって除染処理されるようになっている。
【0015】
上記パスボックス3はアイソレータ2の外部右側面に設けられており、その内部空間には上記除染ガス供給手段38から除染ガスが供給されて除染されるようになっている。
またアイソレータ2の作業室2aとパスボックス3の内部空間とは開閉扉39を開閉することで連通させることができ、パスボックス3内の器具類や容器類および液体類等の搬入物をアイソレータ2の作業室2aに搬入する際に開放されるようになっている。
またパスボックス3には外部空間に向けて外部開閉扉3aが設けられており、当該外部開閉扉3aを介して上記搬入物をパスボックス3内に搬入するようになっている。
【0016】
上記パスボックス3を介して作業室2aに搬入される上記器具類や容器類は、予め
図2に示す樹脂製の包装袋Bに収容された状態で放射線殺菌されており、当該包装袋Bを作業室2aに搬入する際には、その外面を上記除染ガス供給手段38の除染ガスによって除染するようになっている。
パスボックス3の内部には上記包装袋Bをつりさげるためのフック3bが設けられており、これにより包装袋Bの外面全体に除染ガスを付着させて除染することが可能となっている。
一方、パスボックス3を介して作業室2aに上記検体容器28や液体類を搬入する際、これらを収容した検体容器28および液体容器29〜32の内部に除染ガスが入り込むのを避けるため、これらについては除染ガスによる除染は行わず、上記包装袋を作業室2aに搬入した後にパスボックス3内に搬入されるようになっている。
その際に同時にパスボックス3内に搬入したアルコール(消毒用エタノール)、オキシドール(過酸化水素水溶液)、過酢酸、次亜塩素酸ナトリウム等の消毒液を用いて検体容器28や液体容器29〜31の表面をふき取り、表面の殺菌を行うようになっている。
【0017】
そして上記パスボックス3より作業室2aに上記器具類や容器類、および液体類などの搬入物を搬入する作業や、これらの搬入物を作業室2aに配置する作業は、アイソレータ2およびパスボックス3の正面壁部に設けたグローブ40を装着した作業者によって手作業により行われる。
このうち、上記開閉扉39に隣接して設けられたグローブ40は、パスボックス3と作業室2aとの間で搬入物の搬出入を行うための搬出入用グローブ40aとなっている。
上記搬出入用グローブ40aを用いてパスボックス3から作業室2aに搬入物を搬入する際は、まず作業者が上記開閉扉39に隣接するアイソレータ2側およびパスボックス3側の搬出入用グローブ40aを装着し、上記開閉扉39を手動で開放する。
その状態で、作業者はパスボックス3側の搬出入用グローブ40aを用いてパスボックス3内の搬入物を作業室2aの内部に移動させると、これをアイソレータ2側の搬出入用グローブ40aによって受け取ることができる。
なお、上記搬出入用グローブ40aについては、一人の作業者が装着して上記作業を行うことが可能であるが、2人の作業者が装着して作業を行うようにしてもよい。
【0018】
しかしながら、パスボックス3を介して作業室2aに搬入した搬入物のうち、上記液体供給手段10で使用するアスピレータノズル24および液体容器29〜32は、上記搬出入用グローブ40aでは作業範囲が限定されるため所定位置に配置することができない。
そこで本実施例では、作業室2aのほぼ中央に、液体供給手段10にアスピレータノズル24や液体容器29〜32を配置するための配置用グローブ40bを設け、さらに上記搬出入用グローブ40aの作業範囲と上記配置用グローブ40bの作業範囲との間で移動する移動テーブル41を設けたものとなっている。
上記移動テーブル41は、作業室2aの正面側に左右方向に向けて設けられたレール41aに沿って、上記搬出入用グローブ40aを装着した作業者の手作業によって移動するようになっている。
上記移動テーブル41には、上記液体供給手段10で使用する器具類としてアスピレータノズル24を載置し、また液体容器として培地容器29、PBS容器30、トリプシン容器31を載置するようになっている。
これらアスピレータノズル24や液体容器29〜31は、上記パスボックス3から作業室2aに搬入された後、上記搬出入用グローブ40aを装着した作業者が上記移動テーブル41に載置するようになっている。
その後、作業者が当該移動テーブル41を配置用グローブ40bの作業範囲まで移動させ、さらに配置用グローブ40bを装着した作業者が、これらをそれぞれ上記液体供給手段10の所定の位置に配置するようになっている。
【0019】
上記第1、第2ロボット6、7は、同型の産業用多関節ロボットを使用することができ、互いの可動範囲の一部が重複するように作業室2aの中央部に配置され、第1ロボット6は上記パスボックス3側に設けられ、第2ロボット7は上記インキュベータ4側に設けられている。
第1、第2ロボット6、7はそれぞれ複数の軸から構成されたアーム6a、7aと、当該アーム6a、7aの先端に設けられた上記グリッパ6b、7bとを備え、これらは上記除染ガスに対して防護されている。
【0020】
そして本実施例では、上記第1ロボット6と第2ロボット7との間で容器類を受け渡すための仮置き部として、上記ディッシュ21および観察プレート25を載置する受渡しテーブル42と、遠沈管22を支持する遠沈管ホルダ43と、細胞を収容したディッシュ21を受け渡すための加温庫44とを備えている。
また、アイソレータ2の背面側には、第1、第2ロボット6、7が保持している上記遠沈管22やピペット23等の容器類や器具類を撮影するためのカメラ45が設けられている。
【0021】
上記受渡しテーブル42は第1ロボット6および第2ロボット7の略中間に設けられており、その上面には、図示しないが上記観察プレート25およびアタッチメント33に形成された位置決め孔25d、33eに嵌合する位置決めピンが設けられている。
例えば第1ロボット6から第2ロボット7にディッシュ21を受け渡す際、第1ロボット6は上記アタッチメント33ごと上記ディッシュ21を上記受渡しテーブル42に載置する。
その際、上記アタッチメント33の位置決め孔33eを上記位置決めピンに嵌合させることで、アタッチメント33が所定の位置に位置ずれしないように載置される。
その後第2ロボット7はこの受渡しテーブル42に載置されたアタッチメント33のグリップ33aを保持することで、ディッシュ21の受け渡しが完了する。
また上記観察プレート25についても、上記アタッチメント33と同様に第1ロボット6と第2ロボット7との間で受け渡すことが可能であり、また上記アタッチメント33だけを受け渡す場合に用いてもよい。
【0022】
上記遠沈管ホルダ43は上記受渡しテーブル42の前方に隣接した位置に設けられ、複数本の遠沈管22を支持するようになっている。
この遠沈管ホルダ43においても、上記ディッシュ21の場合と同様に第1、第2ロボット6、7によって上記遠沈管22の受け渡しを行うことができ、また複数個の遠沈管22を支持可能とすることで、一方のロボットが所要の作業を行う間に、他方のロボットが別の作業を繰り返して、複数個の遠沈管22を遠沈管ホルダ43に支持させることが可能となっている。
【0023】
上記加温庫44は、
図5に示すように5つのディッシュ21を上記アタッチメント33ごと収容するように構成されており、最上段には培養操作の際に上記ディッシュ21に振動を与えるためのタッピング手段46が設けられている。
また上記加温庫44の各段には上記アタッチメント33を位置決めする位置決めピン44aと、プレート状の加温手段44bが設けられており、加温手段44bは、ディッシュ21が載置されると当該ディッシュ21の底面に密着して所定の温度に加温するようになっている。
上記タッピング手段46は、上記ディッシュ21を載置するプレート状の載置部46aと、載置部46aを挟んで設けられるとともにエアシリンダ等の駆動手段によって往復動する打撃部材46bとから構成されている。
上記打撃部材46bが往復動してディッシュ21の側面に衝突することで、培養の間にディッシュ21の底面に張り付いた細胞を振動により剥離させるようになっている。
また上記受渡しテーブル42と同様、上記加温庫44を用いて上記第1、第2ロボット6、7との間でアタッチメント33だけの受け渡しを行うことも可能である。
【0024】
上記カメラ45は、上記受渡しテーブル42の近傍を撮影範囲とするように設けられ、実際には
図13に示すように除染ガスから防護するためのケーシング45aの内部に設けられている。
第1、第2ロボット6、7が保持した遠沈管22やピペット23をこのカメラ45の撮影範囲内に移動させると、上記カメラ45はこれらを撮影し、制御手段5は上記グリッパ6b、7bがこれらを正常に保持しているか否かを確認する。
また、上記カメラ45がグリッパ6b、7bに保持された遠沈管22内を撮影して、当該遠沈管22内の液体の残量等を確認することも可能となっている。
【0025】
上記ロータリストッカ8は、
図6に示すように、作業室2aの床2bに回転可能に設けられた回転軸51と、当該回転軸51の上方から順に設けられた、一枚のアタッチメント載置テーブル52と、5枚のディッシュ載置テーブル53と、一枚の遠沈管支持テーブル54と、一枚の検体容器支持テーブル55とを備えている。
またロータリストッカ8に隣接した位置には、上記各テーブル53〜55に載置された容器類の有無を認識する容器類検出センサ56が設けられている。
上記回転軸51はアイソレータ2の内部に形成した作業室2aの床2bを貫通して固定された筒状部材51aに、ベアリング51bを介して回転可能に立設されるとともに、上記床2bより下方の空間2cに突出した部分にはサーボモータからなる駆動手段57が連結されている。
そして、上記回転軸51と上記駆動手段57との間には、駆動手段57の駆動力を回転軸51に伝達させる伝達状態と、上記駆動手段57の駆動力が遮断されて人手により回転軸51を回転させることが可能な非伝達状態とに切り換える切替手段58が設けられており、上記非伝達状態とした際には、上記各テーブル52〜55を手動で回転させることが可能となっている。
さらに上記回転軸51の下端部に隣接した位置には、回転位置センサ59が設けられ、上記回転軸51の下端部には当該回転位置センサ59によって検出される検出片59aが設けられている。
そして上記回転位置センサ59が上記検出片59aを検出することにより、制御手段5は回転軸51の回転角度を認識し、上記駆動手段57を制御して各テーブル52〜55に載置された容器類を所要の受け渡し位置に移動ならびに停止をさせるようになっている。
【0026】
上記アタッチメント載置テーブル52には5つのアタッチメント33および一つの上記観察プレート25が載置可能となっており、これらアタッチメント33および観察プレート25に設けた位置決め孔33e、25dと嵌合する位置決めピン52aが設けられている。
【0027】
上記5枚のディッシュ載置テーブル53にはそれぞれ4個のディッシュ21を載置可能となっており、具体的には
図4に示すディッシュ載置部60が上記回転軸51を中心に四方に設けられている。
上記ディッシュ載置部60は、上記回転軸51に連結される連結部60aと、連結部60aの先端に形成された載置部60bと、この載置部60bの周縁から放射状に突出する突出片60cと、各突出片60cの先端から上方に突出する係合突起60dとから構成されている。
上記突出片60cは上記アタッチメント33における先端側の隙間と逃がし部33dに対応する位置に設けられ、また上記係合突起60dはディッシュ21の外径の位置に合わせて設けられ、かつ上記ディッシュ21の側面を支持するようになっている。
【0028】
上記アタッチメント33と上記ディッシュ載置部60とは、
図4(a)に示す向きでディッシュ21の受け渡しを行うようになっており、制御手段5が上記第1ロボット6およびロータリストッカ8の駆動手段57を制御してこの図のような状態とする。
具体的には、第1ロボット6が保持した上記アタッチメント33の保持部33bの先端側の隙間がディッシュ載置部60の連結部60aと干渉せず、かつアタッチメント33の逃がし部33dが載置部60bの突出片60cと干渉しないようにする。
そして、載置部60bにディッシュ21が載置された状態で、第1ロボット6が上記アタッチメント33を載置部60bの下方から上方に移動させることで、ロータリストッカ8から第1ロボット6にディッシュ21が受け渡される。
逆に、第1ロボット6が保持したアタッチメント33にディッシュ21が載置された状態で、第1ロボット6が上記アタッチメント33を載置部60bの上方から下方に移動させることで、第1ロボット6からロータリストッカ8にディッシュ21が受け渡されることとなる。
【0029】
上記遠沈管支持テーブル54は上記ディッシュ載置テーブル53の外周縁よりも半径方向外方に突出して大径に形成され、その外周縁に沿って遠沈管22の外周面を支持する複数の孔部54aと、その下方で遠沈管22の下端部分を支持する受け部材54bとを備え、上記遠沈管22を等間隔に起立状態で支持するようになっている。
このように、遠沈管22の支持部をディッシュ載置テーブル53より外方に配置することにより、上記第1ロボット6は保持した遠沈管22を上方へ抜き出すことが可能となっている。
上記検体容器支持テーブル55は上記遠沈管支持テーブル54よりも大径で円弧状を有した部材となっており、当該円弧状の部材の円周方向に沿って上記遠沈管支持テーブル54と同様の孔部55aおよび受け部材55bとを備え、上記検体容器28および上記試薬容器32を起立状態で支持し、また上記マイクロピペット34のマイクロピペットノズル35を起立状態で支持するようになっている。
さらに、検体容器支持テーブル55では上記マイクロピペット34を保持可能となっており、このため当該検体容器支持テーブル55の端部には、図示しないが上記マイクロピペット34の保持部材36に形成した2つの位置決め孔36bと嵌合する位置決めピンが設けられている。
なお、検体容器支持テーブル55には、以下の培養操作の各作業においては説明しないが、培養操作に使用する所要の試薬等を収容した遠沈管22も支持可能となっている。
【0030】
そして上記各テーブル52〜55は、その少なくとも一部が上記第1ロボット6の可動範囲内に位置するようになっており、上記制御手段5の制御によって各テーブル52〜55に載置された所要の容器類等を第1ロボット6の可動範囲内の所定の受け渡し位置に位置させるようになっている。
これにより、上記第1ロボット6はロータリストッカ8に収容されたすべての容器類や器具類等を保持することが可能となり、多数の容器類や器具類等をアイソレータ2の作業室2a内に収納するとともに、これらを効率的に取り出すことで培養操作を効率的に行うことが可能となる。
また上記各テーブル52〜55は回転軸51に対して上下方向に複数段設けられていることから、作業室2aの床2bに対して占める割合を少なくすることができ、上記容器類や器具類等をコンパクトに収納することが可能となっている。
また上記各テーブル52〜55のうち、上記アイソレータ2の正面に設けられた搬出入用グローブ40aに隣接した部分は、当該搬出入用グローブ40aの作業範囲内に位置している。
これにより、搬出入用グローブ40aを装着した作業者がパスボックス3より作業室2aに容器類等を搬入した後、上記切替手段58を非伝達状態とすることにより、各テーブル52〜55を手動で回転させて、ロータリストッカ8に容器類等を収容することが可能となる。
【0031】
図7は上記ロータリストッカ8の切替手段58の断面図を示し、当該切替手段58は、上記回転軸51と一体的に回転する連結部材61と、上記筒状部材51aに対して回転可能に設けられたプーリ62と、これら連結部材61とプーリ62との間に設けられた複数のボール63とを備えている。
上記連結部材61の内面にはキー61aが設けられるとともに、上記回転軸51の外面には上下方向にキー溝51cが形成されており、これらが相互に係合することにより連結部材61と回転軸51とは一体的に回転し、かつ連結部材61は回転軸51に対して上下方向に移動可能になっている。
また上記連結部材61の下端部には、上記回転軸51の下端部に設けたばね受51dとの間にばね64が弾装され、これにより連結部材61は常時上方向に向けて付勢されている。
上記プーリ62は上記連結部材61の上部に位置するとともに、上記筒状部材51aの下端部にボールベアリング65を介して回転可能に保持されている。
また上記プーリ62は上記駆動手段57との間にベルト57aが張設されており、当該プーリ62に駆動手段57の駆動力が作用するようになっている。
上記ボール63は連結部材61の上面に円周方向に沿って複数形成された凹部61bに脱落しないように収容され、またプーリ62の下面には上記ボール63の頂部が嵌合する略半球状の凹部62aが形成されている。
【0032】
図7に示す上記切替手段58は伝達状態となっており、当該伝達状態において上記ボール63はプーリ62の下面に形成された凹部62aに嵌合している。
このとき上記連結部材61は上記ばね64によって上方に付勢されており、当該ばね64の付勢力によってボール63が上記凹部62aに嵌合した状態が維持される。
このため、この伝達状態において上記駆動手段57がベルト57aを介してプーリ62を回転させると、上記ボール63を介して連結部材61に駆動力が伝達され、回転軸51に固定された各回転テーブル52〜55を回転させるようになっている。
【0033】
そして切替手段58を上記伝達状態から非伝達状態とするには、上記ボール63をプーリ62の凹部62aより離脱させて、上記プーリ62と連結部材61とが相互に回転可能な状態とすればよい。
具体的に説明すると、まず切替手段58を非伝達状態とする際、上記駆動手段57は作動しておらず、上記ベルト57aを介してプーリ62の回転が阻止された状態となっている。
この状態から、作業者がテーブル52〜55を手動で回転させると、最初は上記切替手段58が伝達状態となっていることから、作業者には回転の阻止されたプーリ62からの抵抗が作用する。
作業者はこの抵抗力に対してさらにテーブル52〜55を回転させ、これにより上記ボール63が上記プーリ62の凹部62aより離脱し、上記連結部材61がばね64の付勢力に抗して下降する。
上記凹部62aより離脱することで、ボール63はプーリ62の下面に対して移動可能な状態となり、上記連結部材61がプーリ62に対して回転可能な状態となることから、作業者は少ない力でテーブル52〜55を回転させることが可能となる。
そして作業者がさらにテーブル52〜55を回転させると、上記ボール63が再びプーリ62の凹部62aに嵌合し、連結部材61がばね64の付勢力で上昇するため、切替手段58は再度伝達状態となる。
なお、上記切替手段58については、上記構成を有する機械的な切替手段ではなく、例えば上記駆動手段57としてのサーボモータのサーボ指令をOFFにする切替手段としてもよい。
【0034】
上記遠心分離手段9は、
図1に示すように上記第2ロボット7とインキュベータ4との間に設けられており、従来公知の遠心分離機を使用することができる。
遠心分離手段9は、
図2に示すようにアイソレータ2の作業室2aの床2bより下方に突出するように設けられるととともに、略中央で図示しないモータによって回転する回転軸に設けられた4つのバケット9aを備え、当該バケット9aに上記遠沈管22が収容されるようになっている。
そして本実施例において、上記遠心分離手段9は少なくともその一部が第2ロボット7の可動範囲内に入っており、制御手段5の制御によって所要のバケット9aを上記第2ロボット7の可動範囲内に位置させるようになっている。
また遠心分離を行う際、上記細胞等を収容した遠沈管22に対向する位置に収容するカウンターウェイトは、上記液体供給手段10において新たな遠沈管22にPBSを分注させて第1ロボット6や第2ロボット7により作成することができる。
【0035】
液体供給手段10は、
図8に示すように、液体の分注を行う第1〜第3液体給排手段71A〜71Cと、液体類を収容した液体容器29、30を保持する第1、第2容器保持手段72A,72Bと、不要な液体を吸引除去するアスピレータ73と、上記遠沈管22や液体容器29〜31に装着したカバーキャップ26やディッシュ21のカバー21aを保持する第1〜第4蓋保持手段74A〜74Dとから構成されている。
上記構成のうち、上記第1液体給排手段71Aおよび第1容器保持手段72Aは培地を上記容器類に供給する培地供給手段を構成しており、上記第3液体給排手段71Cは容器類に被培養物を分配する分配手段を構成している。
また液体供給手段10の近傍には、複数のピペット23を収容するピペット支持部としてのピペットホルダ75と、上記トリプシン容器31を収容する容器ホルダ76と、使用済みのピペット23や遠沈管22を廃棄するための廃棄部としての廃棄箱77とが設けられている。
上記第1〜第3液体給排手段71A〜71C、上記アスピレータ73、上記第1〜第4蓋保持手段74A〜74Dは、略門型の保持部材78によって作業室2aの上方に設けられており、これらはいずれも第1、第2ロボット6、7の可動範囲内に位置している。
さらに具体的には、上記第1液体給排手段71Aは上記第1ロボット6側に設けられ、上記第2液体給排手段71Bは上記第2ロボット7側に設けられ、第3液体給排手段71Cは第1液体給排手段71Aと第2液体給排手段71Bとの間に設けられている。
また上記第1容器保持手段72Aは上記第1液体給排手段71Aの下方に設けられており、上記第2容器保持手段72Bは上記第2液体給排手段71Bの下方に設けられている。
また上記第1、第2蓋保持手段74A、74Bは、それぞれ上記第1、第2容器保持手段72A,72Bの上方に設けられ、第3蓋保持手段74Cは第1ロボット6の付近に配置され、第4蓋保持手段74Dは第2ロボット7の付近に配置されている。
そして、上記トリプシン容器31を収容する容器ホルダ76は第2ロボット7の可動範囲内に設けられ、トリプシン容器31は当該第2ロボット7によって上記容器ホルダ76ごと保持されるようになっている。
【0036】
以下、
図9を用いて第2液体給排手段71B、第2容器保持手段72B、第2蓋保持手段74Bについて説明する。なお第2液体給排手段71Bと共通の構成を有する第1、第3液体給排手段71A,71C、並びに第2容器保持手段72Bと略共通の構成を有する第1容器保持手段72Aについては説明を省略する。
第2液体給排手段71Bは、上記保持部材78に固定されて上記ピペット23と接続される接続部79と、上記ピペット23を保持してこれを上記接続部79に接続させる昇降手段80と、上記接続部79に接続されるとともに作業室2aの床2bの下方の空間2cに設けられた給排手段81とから構成されている。
上記接続部79は樹脂製で蛇腹状を有した筒状の部材であって、上記保持部材78にステーを介して固定され、上部には上記給排手段81との間にチューブ7が配設され、下部には上記ピペット23が密着するようになっている。
上記昇降手段80は、エアシリンダ等によって開閉して上記ピペット23を把持するグリッパ80aと、当該グリッパ80aを昇降させるエアシリンダ80bとから構成されている。
そして、上記グリッパ80aがピペット23を保持した状態で、上記エアシリンダ80bがピペット23を上昇位置に位置させると、上記ピペット23の上端部が上記接続部79を圧縮しながら密着し、上記給排手段81とピペット23とを連通させるようになっている。
上記給排手段81は上記第1〜第3液体給排手段71A〜71Cのそれぞれについて設けられており、上記制御手段5の制御によって上記ピペット23に所定量の液体を吸引して保持させ、また当該ピペット23に保持された液体を所定量吐出させるようになっている。
【0037】
上記第2容器保持手段72Bは、上記PBS容器30および調整されていない培地を収容した培地容器29Aを保持する保持部材82と、当該保持部材82を昇降させる移動手段83とから構成されている。
本実施例で使用する上記PBS容器30の口部30aは底部30bに対して傾斜して設けられており、上記保持部材82はPBS容器30の底部30bを傾斜した状態で保持するようになっている。
これにより、当該底部30bとこれに隣接する側部との角部が上記口部30aの真下に位置し、上記口部30aに真上からピペット23が挿入されると、当該ピペット23の先端が上記角部に位置するようになっている。
一方、図示しないが培地容器29Aは角柱状を有しており、その上部に口部が形成され、当該培地容器29Aを保持する保持部材82は、培地容器29Aの底部が水平を向いた状態で保持するようになっている。
また上記第1容器保持手段72Aは調整された培地を収容する培地容器29を保持し、当該培地容器29も上部に口部が設けられた筒状を有しており、底部が水平な状態で保持されるようになっている。
【0038】
上記移動手段83は、上記保持部材82を昇降させる昇降機構84と、上記保持部材82を水平方向に回転させる回転機構85とから構成され、上記保持部材82に保持されたPBS容器30を昇降させるとともに横方向に旋回させるようになっている。
上記昇降機構84は、作業室2aを上下に貫通する円柱状の支持柱84aと、上記保持部材82が固定されるとともに上記支持柱84aに沿って上下動可能に設けられた昇降部材84bと、上記昇降部材84bを昇降させるスライド機構84cとから構成されている。
上記昇降部材84bには下方に向けて連結棒84dが設けられており、上記スライド機構84cはこの連結棒84dを介して昇降部材84bを昇降させるようになっている。
上記回転機構85は、作業室2aの床2bの下方の空間2cに設けられたサーボモータ85aと、上記連結棒84dに設けられたプーリ85bと、これらの間に張設されたベルト85cとから構成されている。
上記サーボモータ85aが上記プーリ85bを駆動すると、上記連結棒84dが回転して上記昇降部材84bが支持柱84aに対して回転し、上記保持部材82を水平方向に回転させるようになっている。
この時、上記連結棒84dの下端部における上記スライド機構84cとの連結部分にはボールリンク85dが設けられており、連結棒84dの回転を許容するようになっている。
【0039】
図10は上記アスピレータ73を示し、先端に上記アスピレータノズル24が装着される吸引管86と、上記吸引管86を回転可能に保持する回転手段87と、上記吸引管86に接続されたチューブ88と、上記チューブ88の途中に設けられた2つの廃液ボトル89A、89Bと、上記2つの廃液ボトル89A、89Bへの流路を切替える切替手段90と、上記アスピレータノズル24に負圧を発生させる吸引手段91とを備えている。
上記吸引管86の先端には上記アスピレータノズル24が交換可能に設けられ、このアスピレータノズル24は上記配置用グローブ40bを装着した作業者によって交換されるようになっている。なおロボットによって交換するようにしてもよい。
上記回転手段87は上記吸引管86に装着された上記アスピレータノズル24の傾きを変更するようになっており、例えば遠沈管22の液体を排出する際には当該遠沈管22を上下方向に向けた状態で保持するとともにアスピレータノズル24を上下方向に向けて使用し、ディッシュ21内の液体を排出する際には、当該ディッシュ21を傾斜させて液体を下方に位置させ、この傾きに合わせてアスピレータノズル24を傾斜させるようになっている。
【0040】
上記廃液ボトル89A、89Bは作業室2aの床2bの下方の空間2cに設けられており、その上部には上記吸引管86に連通するチューブ88Aと、吸引手段91に連通するチューブ88Bとがそれぞれ接続されている。
このような構成により、上記吸引手段91が負圧吸引力を発生させると、上記廃液ボトル89A、89Bを介して負圧が上記アスピレータノズル24に作用し、アスピレータノズル24が吸引した液体が廃液ボトル89A、89Bに回収されるようになっている。
さらに上記吸引手段91は、自動培養操作装置1が作動している間、常時負圧を発生するようになっており、これによりアイソレータ2の作業室2aの空気を常時吸引することで、廃液ボトル89A、89Bからの液体や外部空間の空気が作業室2aに流入するのを防止するようになっている。
上記チューブ88はそれぞれ2股に分岐して2つの廃液ボトル89A、89Bに接続されており、この分岐部分に上記切替手段90が設けられている。
上記切替手段90は上記分岐したチューブ88の流路を切替えることにより、上記廃液ボトル89Aまたは廃液ボトル89Bのいずれか一方を上記吸引管86および吸引手段91に連通させるようになっている。
そして、例えば培養操作中に一方の廃液ボトル89Aが満杯となったら、制御手段5は上記切替手段90を制御して他方の廃液ボトル89Bに流路を切替え、当該廃液ボトル89Bにおいて廃液を回収する間に、満杯となった廃液ボトル89Aを空の廃液ボトルに交換することが可能となっている。
【0041】
上記第1〜第4蓋保持手段74A〜74Dは、それぞれ下端部に設けられた吸着ヘッド74aによってディッシュ21のカバー21aや遠沈管22や液体容器29〜31のカバーキャップ26を吸着保持するようになっている。
上記第1、第2容器保持手段72A,72Bの上方に設けられた第1、第2蓋保持手段74A、74Bは、これら第1、第2容器保持手段72A,72Bが保持する培地容器29やPBS容器30(培地容器29A)のカバーキャップ26を一時的に保持するものとなっている。
上記第3蓋保持手段74Cは、上記第1ロボット6が保持するディッシュ21や遠沈管22に装着されたカバー21aやカバーキャップ26を一時的に保持するものとなっている。
これと同様、第4蓋保持手段74Dは、上記第2ロボット7が保持するディッシュ21や遠沈管22に装着されたカバー21aやカバーキャップ26を一時的に保持するものとなっている。
【0042】
図11に示すように、上記廃棄箱77には、培養操作において不要となったピペット23や遠沈管22を廃棄するようになっており、第1ロボット6の可動範囲および搬出入用グローブ40aの作業範囲内に設けられている。
上記廃棄箱77は前後に2つの廃棄空間77a、77bが形成されており、これら廃棄空間77a、77bには予め廃棄袋がセットされている。
このうち第1ロボット6側のピペット用廃棄空間77aは縦長の空間で、ここには上記ピペット23を廃棄し、アイソレータ2の壁面側のその他容器類用廃棄空間77bには遠沈管22やディッシュ21などのピペット23以外のものを廃棄するようになっている。
これにより、細長いピペット23を上記ピペット用廃棄空間77a内で上下方向を向いた状態で揃えることができ、上記遠沈管22やディッシュ21等と同じ空間に廃棄した場合に比べて廃棄物の容積を小さくすることが可能となる。
さらに、上記廃棄箱77における上記ピペット用廃棄空間77aに隣接した位置には、空の遠沈管22を斜めに保持する保持部材77Aが設けられており、当該保持部材77Aに保持される空の遠沈管22には使用済みのピペット23が収容されるようになっている。
また、上記保持部材77Aは上記遠沈管22を上記ピペット用廃棄空間77aの上方に向けて斜めに保持し、ピペット23の上端部が廃棄箱77の上方に突出するようになっている。これにより遠沈管22の中でピペット23が位置決めされ、ロボットで保持することが可能となっている。
【0043】
上記構成を有する液体供給手段10の動作について説明する。
まず上記第1〜第3液体給排手段71A〜71Cには、自動培養操作装置1において培養操作を行う前に、上記第1ロボット6がピペット23を装着するようになっている。
まず、上記パスボックス3よりアイソレータ2に搬入されたピペット23は、搬出入用グローブ40aを装着した作業者によって先端部が上方を向いた状態で上記ピペットホルダ75に収容される。
そして第1ロボット6は、上記ピペットホルダ75よりピペット23を取り出すと、これを180°回転させて先端部を下方に向け、その状態で上記第1〜第3液体給排手段71A〜71Cに移動させる。
その際、第1ロボット6と第2ロボット7との間でピペット23を直接受け渡しながら、90°ずつピペット23を回転させるようにしてもよい。
図9を用いて説明すると、ピペット23が装着されていない状態において、上記昇降手段80は上記グリッパ80aを下降位置に位置させており、その状態で上記第1ロボット6が当該グリッパ80aにピペット23を受け渡す。
すると、上記昇降手段80がピペット23ごとグリッパ80aを上昇させて、当該ピペット23の上端部を接続部79に下方から密着させ、これによりピペット23が給排手段81に連通し、ピペット23が第2液体給排手段71Bに保持されることとなる。
そしてこれと同様の動作を行うことにより、第1、第3分注手段71A,71Cにもピペット23の装着を行う。
【0044】
次に、第1液体給排手段71Aを用いて遠沈管22に培地を分注する際の動作について説明する。なお第2液体給排手段71Bを用いてディッシュ21にPBSを分注する際の動作も同様であるため、説明は省略する。
まず、上記培地容器29を上記パスボックス3から作業室2a内に搬入する際、予め制御手段5には当該培地容器29における培地の液面高さが登録されている。
具体的な液面高さを認識する方法としては、液面高さ検出手段としての重量計によって計測した培地容器29の重量から認識する方法や、光学式、超音波式、静電容量式など市販のセンサを用いて培地容器29の口部から液面高さを直接計測する方法が考えられる。
次に、第1液体給排手段71Aのピペット23に所定量の培地を吸引させる。
具体的には、上記第1容器保持手段72Aは培地容器29を上記第1液体給排手段71Aに隣接する第1蓋保持手段74Aに移動させて、カバーキャップ26を吸着保持させる。
さらに、第1容器保持手段72Aは培地容器29を第1液体給排手段71Aに移動させ、ピペット23を培地容器29に挿入させる。すると給排手段81が作動して上記ピペット23に所定量の培地が吸引される。
その際、上記制御手段5には培地容器29における培地の液面高さが登録されているため、制御手段5は上記第1容器保持手段72Aの移動手段83を制御して、上記ピペット23と培地容器29の培地の液面との相対高さを調整する。
具体的には、上記培地容器29の培地に挿入される上記ピペット23の挿入量が最小限の深さとなるようにし、第1液体給排手段71Aが培地容器29の培地を吸引して液面高さが減少すると、制御手段5は移動手段83を制御して、当該液面高さの減少に応じて上記培地容器29を上昇させる。
これにより上記ピペット23の外面に付着する培地の接触面積を最小限とし、当該ピペット23の外面に付着した培地が作業室2a内に落下してしまうことを防止するようになっている。
そして、培地容器29から培地が吸引されると、第1容器保持手段72Aは培地容器29を第1蓋保持手段74Aに移動させてカバーキャップ26を装着させ、その後培地容器29を下降位置まで下降させる。
【0045】
このようにして第1液体給排手段71Aのピペット23に所定量の培地が吸引されたら、この培地を例えば第2ロボット7が保持した遠沈管22に吐出する動作を行う。
具体的には、第2ロボット7が作動して上記遠沈管ホルダ43より遠沈管22を取り出し、これを第2ロボット7に隣接した第4蓋保持手段74Dに移動させてカバーキャップ26を保持させる。
そして、第2ロボット7が上記遠沈管22を第1液体給排手段71Aのピペット23の下方に位置させると、制御手段5は給排手段81を制御して、ピペット23に収容された培地を所定量だけ遠沈管22に排出させる。
その際においても、制御手段5は上記遠沈管22に収容されている液体の量を記憶しており、上記第2ロボット7は上記ピペット23と保持した遠沈管22との相対的な高さを調整するようになっている。
遠沈管22に予め所定量の細胞を含んだ液体が収容されている場合、第2ロボット7は当該液体の液面に対して若干上方にピペット23の先端が位置するように遠沈管22を位置させる。
そして、上記ピペット23から培地が吐出されて液面高さが上昇すると、第2ロボット7はこの液面高さの上昇に合わせて遠沈管22を下降させ、ピペット23に遠沈管22内の液体が接触しないようにする。
このようにして遠沈管22に所定量の培地が分注されると、第2ロボット7は当該遠沈管22を上記第4蓋保持手段74Dに移動させて遠沈管22にカバーキャップ26を装着させる。
【0046】
上記第1液体給排手段71Aは第1容器保持手段72Aの培地容器29に収容された培地を、第2液体給排手段71Bは第2容器保持手段72BのPBS容器30に収容されたPBSをそれぞれ扱うのに対し、本実施例の第3液体給排手段71Cは、トリプシン容器31に収容されたトリプシンを扱うほか、例えば遠沈管22において細胞を含む液体と培地とからなる懸濁液を作成する際にも使用される。
まず、トリプシンを分注する際には、上記第2ロボット7がトリプシン容器31を容器ホルダ76ごと保持し、上記第4蓋保持手段74Dにおいてカバーキャップ26を一時的に保持させてから、第3液体給排手段71Cにおいてトリプシンを吸引させる。
この時も、制御手段5にトリプシン容器31内のトリプシンの液面高さを登録しておくことで、ピペット23にトリプシンが吸引されて液面高さが下降するのに応じて、トリプシン容器31を上昇させるようになっている。
【0047】
そして第3液体給排手段71Cでは、上記トリプシンの分注が終了し、その後上記懸濁液を作成する際には、トリプシンの分注に使用した使用済みのピペット23を新たなピペット23に交換するようになっている。
上記第1ロボット6は予め廃棄箱77近傍に設けられた上記保持部材77に支持された空の遠沈管22を取り出して、これを第3液体給排手段71Cのピペット23の下方に位置させる。
すると、第3液体給排手段71Cの昇降手段80がピペット23を下降させて接続部79より離脱させ、さらに保持したピペット23を解放することにより、当該ピペット23を第1ロボット6が保持した遠沈管22の内部に落下させる。
第1ロボット6は、上記ピペット23を収容した遠沈管22を上記保持部材77Aに収容し、これにより遠沈管22およびピペット23は傾斜した状態となる。
その結果、上記傾斜した遠沈管22の開口部の下方には必ずピペット23が位置することとなり、第1ロボット6が上記ピペット23を確実に把持することが可能となる。
第1ロボット6は、この傾斜した遠沈管22からピペット23を取り出すと、当該ピペット23が上下方向を向くように回転させ、さらに上記廃棄箱77におけるピペット用廃棄空間77aの上方に位置させてから落下させる。
ピペット23は上下方向を向いたまま落下するため、その後他のピペット23を廃棄しても、上記ピペット用廃棄空間77aのすべてのピペット23が上下方向を向くこととなり、廃棄する際の容積を小さくすることができる。
このように、第1ロボット6が保持した遠沈管22にピペット23を落下させてから、当該ピペット23を遠沈管22ごと廃棄箱77の近傍に移動させ、その後当該ピペット23を廃棄箱77に廃棄することで、ピペット23を廃棄箱77まで移動させる間に、当該ピペット23に付着した液体がアイソレータ2の床2bに落下してしまうのを防止することができる。
このようにして使用済みのピペット23を廃棄したら、第1ロボット6はピペットホルダ75から新たなピペット23を保持して、これを第3液体給排手段71Cに装着する。
【0048】
上記検査手段11は、第2ロボット7の可動範囲内に配置され、
図12に示ようにアイソレータ2の背面側より外方に突出した上下に狭い観察空間11Sの上下に設けた撮像手段11aおよび照明手段11bとから構成されている。
上記観察空間11Sは上記アイソレータ2の作業室2aと連通しており、その上面および下面にはガラスなどの光透過部材が設けられており、第2ロボット7に保持された観察プレート25が当該観察空間11Sに挿入されるようになっている。
上記撮像手段11aは上記観察空間11Sの上方に、上記照明手段11bは観察空間11Sの下方にそれぞれ設けられ、上記照明手段11bの光は上記光透過部材を透過するとともに上記観察プレート25のプレート25aを透過し、撮像手段11aが当該プレート25a上の細胞の拡大画像を撮影するようになっている。
そして上記撮像手段11aが撮影した画像は、上記制御手段5において画像処理され、例えば観察範囲における生存する細胞の生存数と、死滅した細胞の死滅数とを計数し、ここから細胞の生存率が算出されるようになっている。
なお、アタッチメント33に載置させたディッシュ21を観察空間11Sに挿入させて、ディッシュ21内に収容された細胞と培養の混合物における細胞の占有率を画像処理にて求めることもできる。
【0049】
そして、本実施例における後述する継代作業では、上記液体供給手段10において、培地供給手段を構成する第1液体給排手段71Aが培地容器29より吸引した培地を上記ロボットが保持する第2の培養容器としての新たな空のディッシュ21に供給する。
一方、分配手段を構成する第3液体給排手段71Cが第1の培養容器としての遠沈管22から細胞と培地とによる懸濁液を吸引し、これを上記ロボットが移送した複数の上記第2の培養容器としてのディッシュ21に分注することにより、細胞を新たなディッシュ21に分配するようになっている。
その際、本実施例では、上記検査手段11の検査結果に基づいて、今回の継代作業に新たに必要な培地の量を求め、これに基づいて分配する新たなディッシュ21の個数を決定するようになっており、その判定を行う判定手段は上記制御手段5に設けられている。
上記判定手段は、上記検査手段11において細胞の生存数が計数されると、上記生存率が所定のしきい値を超えるか否かを判定し、上記しきい値を超えない場合には使用する培地の量として標準量を選択し、これに伴う所定個数のディッシュ21に細胞を継代させる標準継代モードで上記継代作業を実行させる。
一方、検査結果において細胞の生存数が上記しきい値を超えた場合には、多数の細胞が生存していることから、これを上記標準継代モードで継代を行う場合に比べて、より多くの培地が必要となる。
このため、上記判定手段は、上記標準よりも多量の培地量を選択して、これに伴う上記標準継代モードよりも多数のディッシュ21に細胞を継代させる優良継代モードで上記継代作業を実行させるようになっている。
例えば、上記標準継代モードにおいて一つの遠沈管22に収容されていた細胞を10個の新たなディッシュ21に継代する場合、上記優良継代モードでは15個のディッシュ21に細胞を継代させるようになっている。
なお、細胞の検査は培養されている細胞の一部を抽出して行われるため、求めた生存数に所定の係数を掛けて必要な培地の量を算出する。また、算出した分配する培地の量をディッシュ21一つ当たりに収容する培地量で割って、ディッシュ21の数を求めるようにしてもよい。
【0050】
また検査手段11はおよび判定手段は、上記継代作業において培養するディッシュ21の個数を決定するだけではなく、上記継代操作を行うか否かの判断にも用いることができる。
例えば第2ロボット7が上記インキュベータ4から所定の間隔、例えば毎朝決まった時間にディッシュ21を取り出して、当該ディッシュ21ごと細胞を上記検査手段11に移動させる。
すると検査手段11の撮像手段11aがディッシュ21内の細胞を撮影して当該細胞の画像に占める占有率を測定し、制御手段5はこの細胞の占有率に基づいて、細胞が十分に培養されていると判定された場合には上記継代操作を行うことを決定する。
【0051】
上記観察手段11で上記細胞の観察を行う際、上記観察プレート25に載置した細胞に上記試薬容器32に収容されたトリパンブルーを加えることで、細胞の生存数を上記撮像手段11aによって容易に計測することができる。
そのため、上記作業室2aには、上記観察プレート25に上記トリパンブルーを供給する試薬供給手段101と、上記細胞やトリパンブルーを観察プレート25に供給するために使用する上記マイクロピペット34のマイクロピペットノズル35を交換するためのノズル交換手段102とを設け、これらの作業を自動的に行うようになっている。
【0052】
図13に示すように、上記試液供給手段101はカメラ45を収納したケーシング45aに設けられており、かつ第1、第2ロボット6、7の可動範囲に設けられている。
上記ケーシング45aにはマイクロピペット34を保持する保持手段103が固定され、保持されたマイクロピペット34の下方には上記マイクロピペットノズル35を廃棄するための遠沈管22が配置されている。また上記ケーシング45aの近傍には試薬容器32を保持する試薬容器ホルダ104が設けられている。
上記保持手段103の上面には上記マイクロピペット34に装着された保持部材36が載置されるようになっており、当該保持部材36に設けられた2つの位置決め孔36bに嵌合する図示しない位置決めピンが設けられている。
上記マイクロピペットノズル35を廃棄するための遠沈管22は、上記マイクロピペット34のイジェクトボタン34cが操作されると、落下したマイクロピペットノズル35を回収するようになっており、その後当該マイクロピペットノズル35は上記遠沈管22ごと廃棄箱77に廃棄されるようになっている。
【0053】
上記ノズル交換手段102は上記ロータリストッカ8に隣接した位置に設けられ、第1ロボット6の可動範囲に設けられている。
図14に示すように、ノズル交換手段102は、上記試液供給手段101の保持手段103と同様の構成を有する保持手段103Aと、当該保持手段103Aの下方に設けられてマイクロピペットノズル35をマイクロピペット34の先端管34aに装着するための装着手段105とから構成されている。
上記装着手段105は、上記マイクロピペットノズル35を保持する貫通孔を備えた保持部材105aと、当該保持部材105aを昇降させるエアシリンダ等の昇降手段105bとから構成されている。
【0054】
そして本実施例において上記マイクロピペット34は以下のようにして使用される。
まず、第1ロボット6はロータリストッカ8の検体容器支持テーブル55よりマイクロピペットノズル35を保持してこれを上記ノズル交換手段102に移動させ、上記装着手段105の保持部材105aに保持させる。
続いて、第1ロボット6は上記検体容器支持テーブル55からマイクロピペット34を保持して、これをノズル交換手段102の上記保持手段103Aに保持させる。
このとき、上記装着手段105の保持部材105aは昇降手段105bによって下降位置に位置し、この状態から保持部材105aを上昇させることで、上記マイクロピペットノズル35が上記先端管34aに強固に装着されるようになっている。
その際、第1ロボット6はマイクロピペット34を上方から押圧し、マイクロピペット34が保持手段103より脱落しないようにする。
【0055】
このようにしてマイクロピペット34にマイクロピペットノズル35が装着されると、第1ロボット6は当該マイクロピペット34を上記試液供給手段101に移動させる。
続いて第2ロボット7は細胞を含む懸濁液が収容された遠沈管22を試液供給手段101におけるマイクロピペット34の下方に移動させる。そして第1ロボット6が当該マイクロピペット34の吸引ボタン34bを操作して、マイクロピペット34に少量の懸濁液を吸引する。
続いて、第2ロボット7は観察プレート25をマイクロピペット34の下方に位置させ、第1ロボット6が再度吸引ボタン34bを操作すると、観察プレート25に所定量の懸濁液が吐出される。
第2ロボット7は上記細胞の載置された観察プレート25を受渡しテーブル42に載置し、第1ロボット6はマイクロピペット34のイジェクトボタン34cを操作して、装着されていたマイクロピペットノズル35を遠沈管22に落下させる。
【0056】
その後第1ロボット6は当該マイクロピペット34を上記ノズル交換手段102に移動させて、新たなマイクロピペットノズル35を装着させ、当該新たなマイクロピペットノズル35が装着されたマイクロピペット34を再度試液供給手段101に移動させる。
第2ロボット7は試薬容器32を試薬容器ホルダ104より保持して試液供給手段101に移動させ、第1ロボット6がマイクロピペット34を操作することにより、所定量の試薬を吸引させる。
次に、第2ロボット7は観察プレート25をマイクロピペット34の下方に移動させ、第1ロボット6がマイクロピペット34を操作することにより、観察プレート25の細胞に上記試薬を供給する。
その後、第2ロボット7は当該観察プレート25を上記観察手段11に移動させて、上記細胞の観察を行う。
一方、第1ロボット6はマイクロピペット34を操作して、使用したマイクロピペットノズル35を遠沈管22に回収し、上記ノズル交換手段102にマイクロピペット34を移動させる。
【0057】
上記インキュベータ4は、内部空間が細胞の培養に最適な温度や湿度に維持され、上記アイソレータ2とインキュベータ4とは接続手段111によって接続されている。このように、本実施例の自動培養操作装置1は、インキュベータ4を備え、被培養物を培養する培養装置として構成されている。
またインキュベータ4は
図2に示す台車4aによって移動可能に設けられ、アイソレータ2より離隔した位置において細胞の培養を行うことが可能となっている。
またインキュベータ4の内部には所定個数のディッシュ21を収容する図示しないラックと、当該ラックから所定のディッシュ21を取り出してアイソレータ2内の搬出入手段12に受け渡す搬送手段4bとが設けられている。
上記搬送手段4bは上記アタッチメント33の保持部33bと同じ形状を有した保持部4cを備え、当該保持部4cを昇降させることで、上記ラックの所要の位置にディッシュ21を収容するようになっている。
【0058】
図1に示すようにアイソレータ2の側面における上記2つのインキュベータ4が接続される位置には、それぞれ第1、第2連通口部2dA、2dBが形成され、これら第1、第2連通口部2dA、2dBは連通口開閉部材としてのアイソレータ側シャッタ112によって開閉されるようになっている。
一方、上記インキュベータ4の側面には搬出入口部4dが形成され、当該搬出入口部4dは搬出入口開閉部材としてのインキュベータ側シャッタ113によって開閉されるようになっている。
以下、
図15を用いて第1連通口部2dAに接続される接続手段111について説明すると、当該接続手段111は、アイソレータ2の連通口部2dAおよびインキュベータ4の搬出入口部4dの周囲を囲繞して、アイソレータ2の側面とインキュベータ4の側面に気密を保った状態で設けられる筒状の連結部材114と、アイソレータ2とインキュベータ4とを接続状態に維持する接続機構115とを備えている。
上記アイソレータ2の連通口部2dAには環状の中空シール部材116が設けられるとともに、上記アイソレータ側シャッタ112は駆動手段としてのエアシリンダ112aによってガイドレール112bに案内されて昇降可能に設けられている。
上記アイソレータ側シャッタ112が上記連通口部2dの高さに位置すると、上記中空シール部材116にエアが供給されて膨張し、アイソレータ側シャッタ112に密着して密封するようになっている。
【0059】
インキュベータ側シャッタ113は駆動手段としての開閉用モータ117の駆動力によりガイドレール118に案内されて昇降してインキュベータ4の搬出入口部4dを開閉し、またロック用モータ119によって上昇状態が維持されるようになっている。
上記インキュベータ側シャッタ113が搬出入口部4dの高さに位置する際、当該搬出入口部4dに設けた環状の中空シール部材120にエアを供給して膨張させると、インキュベータ側シャッタ113に密着して密封されるようになっている。
上記開閉用モータ117の回転軸はインキュベータ4の側壁を貫通しており、当該回転軸の先端には略U字形の第1凹部121aが形成されたアーム121が設けられている。
上記第1凹部121aは上記インキュベータ側シャッタ113の側部下方に設けられた第1突起113aに係合し、
図16(a)に示す閉鎖状態と(b)に示す開放状態との間では、上記開閉用モータ117がアーム121を上下に揺動させて、上記第1凹部121aに連動させて上記第1突起113aを押圧し、インキュベータ側シャッタ113を昇降させるようになっている。
【0060】
上記ロック用モータ119の回転軸もインキュベータ4の側壁を貫通しており、当該回転軸により回転される回動体122には略U字形の第2凹部122aが形成されている。これに対し、上記インキュベータ側シャッタ113の側部には上記第2凹部122aに係合する第2突起113bが形成されている。
そして
図16(a)に示す上昇状態では、上記ロック用モータ119により第2凹部122aが横方向を向き、これにより第2突起113bの上下方向への移動を阻止して、インキュベータ側シャッタ113の閉鎖状態を維持するようになっている。
開放状態とするには、上記ロック用モータ119が上記第2凹部122aを下方に向け、第2突起113bの下方への移動を許容し、インキュベータ側シャッタ113が開放可能となる。
このように、アイソレータ2の連通口部2d、インキュベータ4の搬出入口部4dとも、駆動手段を備えて開閉作動されるシャッタを開閉部材として採用しているため、自動化に対応可能であり、開放時に第2ロボット7や搬出入手段12の可動に干渉することはない。
【0061】
上記連結部材114は、上記アイソレータ2の側面に固定されるとともに上記アイソレータ2の第1、第2連通口部2dA、2dBのそれぞれを囲繞するように設けられた筒状の部材であって、その先端には環状シール部材123が設けられ、インキュベータ4の搬出入口部4dの外壁側の周囲を囲繞して密封するようになっている。
これにより、当該連結部材114によって連結されたアイソレータ2とインキュベータ4との間には、外部雰囲気から隔離された除染空間Sが形成されるようになっている。
上記接続機構115は、アイソレータ2の側面に設けられた4つの係合ピン115aと、上記インキュベータ4の側面に設けられて上記係合ピン115aに係合する4つの係合フック115bと、係合ピン115aを出退させるエアシリンダ115cから構成されている。
上記係合ピン115aを突出させて、すべての係合ピン115aが上記係合フック115bに係合することで、アイソレータ2に対しインキュベータ4が連結保持され、上記連結部材114の内側に密閉された除染空間Sを形成する。
【0062】
そして、第1、第2連通口部2dA、2dBに対応する各接続手段111の連結部材114には、供給通路124を介して上記除染ガス供給手段38から除染ガスが供給されるようになっている。
上記供給通路124は、第1連通口部2dAに設けた連結部材114に接続される通路124Aと、第2連通口部2dBに設けた連結部材114に接続される通路124Bとに分岐され、各々に制御手段5によって制御される開閉弁125が設けられ、これによりいずれか一方の接続手段111に除染ガスを供給するための切換手段が構成されている。
このような構成により、上記供給通路124を介していずれか一方の連結部材114に除染ガスを供給すると、当該連結部材114によって形成された除染空間Sに除染ガスが充満し、外部雰囲気に露出していたアイソレータ側シャッタ112やインキュベータ側シャッタ113の表面を除染できるようになっている。
除染空間Sに除染ガスが供給され、所定時間が経過すると、当該除染空間S内の除染ガスは各連結部材114に設けた排出通路126の開閉弁127を開いて、当該除染空間Sの除染ガスを触媒128により無害化して排出し、その後、所定時間にわたって無菌エアを流してエアレーションが行われるようになっている。
そして、このような除染ガスによる除染は、インキュベータ4の接続時と離脱時に実施されるようになっている。
【0063】
ここで、本実施例では上記連結部材114によってアイソレータ2の第1、第2連通口部2dA、2dBおよびインキュベータ4の搬出入口部4dを囲繞する狭小な除染空間Sを形成し、これを除染ガスによって除染するため、容積の大きな空間を除染する場合に比べて短時間で除染が行えるようになっている。
【0064】
上記アイソレータ2とインキュベータ4との間でディッシュ21の受け渡しを行う搬出入手段12は、上記2つの連通口部2dA,2dBの近傍にそれぞれ設けられている。
上記搬出入手段12は、ディッシュ21を載置するディッシュ載置部12aと、当該ディッシュ載置部12aを水平方向に移動させる移動手段12bとによって構成されている。
上記ディッシュ載置部12aはロータリストッカ8におけるディッシュ載置テーブル53のディッシュ載置部60と同じ形状を有しており、上記移動手段12bによって第2ロボット7の作業範囲内とインキュベータ4の内部との間で往復動するようになっている。
上記ディッシュ載置部60が上記移動手段12bによって第2ロボット7側に位置すると、上記第2ロボット7が保持したアタッチメント33を介してディッシュ21の受け渡しが行われ、当該位置が第2ロボット7による上記インキュベータ4に対するディッシュ21の搬出入位置となる。
そしてディッシュ載置部60がインキュベータ4の内部に位置すると、当該インキュベータ4の搬送手段4bとの間でディッシュ21の受け渡しを行うようになっている。
【0065】
以下、上記構成を有する自動培養操作装置1の動作について説明する。
上記第1、第2ロボット6、7を用いた培養操作を行う前に、上記パスボックス3からアイソレータ2に上記器具類や容器類を搬入し、またこれら器具類および容器類を所定の位置に配置する準備作業を、作業者による手作業によって行う。
まず作業者は上記パスボックス3の外部開閉扉3aを開放して、器具類や容器類が収容された包装袋Bを当該パスボックス3内のフック3bにぶら下げ、包装袋Bの外面を除染ガス供給手段38の除染ガスによって除染する。
作業者はアイソレータ2およびパスボックス3に設けられた搬出入用グローブ40aを装着し、上記パスボックス3内の包装袋Bをアイソレータ2の作業室2a内に搬入する。
その際、作業者は上記ロータリストッカ8の切替手段を非伝達状態として各テーブル52〜55を手動で回転させ、上記ディッシュ21や遠沈管22を各テーブル52〜55に収容し、また上記ピペット23をピペットホルダ75に載置する。
また作業者は、上記アスピレータノズル24を上記移動テーブル41に載置し、さらに器具類や容器類を取り出した後の包装袋Bを廃棄箱77に廃棄する。
【0066】
次に、作業者はパスボックス3の外部開閉扉3aより検体容器28や液体類をパスボックス3内に搬入し、さらに上記搬出入用グローブ40aを装着してこれら検体容器28や液体類を収容した液体容器29〜32を消毒液によりふき取る。
続いて作業者は上記開閉扉39を開放して上記液体類をアイソレータ2に搬入し、具体的には上記ロータリストッカ8に検体容器28および試薬容器32を収容し、上記培地容器29、PBS容器30、トリプシン容器31をそれぞれ上記移動テーブル41に載置する。
このとき、作業者は上記遠沈管22や検体容器28や各液体容器29〜32に装着されていたスクリュー式のキャップを、回転操作が不要なカバーキャップ26へと交換する。
作業者が上記移動テーブル41を手動で液体供給手段10の前方まで移動させると、作業者はさらに上記配置用グローブ40bを装着して、当該移動テーブル41上のアスピレータノズル24をアスピレータ73に装着し、また上記液体容器29〜31を所定の位置に配置する。
なお、上記アタッチメント33およびマイクロピペット34は予めアイソレータ2に載置されているが、これらを上記包装袋Bに収容して、培養操作を行うたびに外部より搬入するようにしてもよい。
このように、上記器具類や容器類および液体類の搬入作業および配置作業は、ロボットによる動作では煩雑な作業となるため、作業者により迅速に行うようになっている。
【0067】
これらの準備作業が終了すると、上記制御手段5によって上記第1、第2ロボット6、7や液体供給手段10等による自動的な培養操作が可能となるが、各培養操作を行う前に、上記制御手段5の制御によって以下の作業が行われる。
まず、制御手段5は上記第1ロボット6を制御して、上記ピペットホルダー75に載置されたピペット23を上記液体供給手段10の上記第1〜第3液体給排手段71A〜71Cにそれぞれ装着させる。
これと同時に、上記制御手段5は上記ロータリストッカ8の切替手段58を伝達状態に復帰させる動作を行う。具体的には、駆動手段57によってプーリ62を回転させ、上記準備作業によって上記切替手段58が非伝達状態のままであった場合には、上記プーリ62が上記連結部材61に対して相対的に回転するが、その後さらにプーリ62が回転すると、上記ボール63が当該プーリの凹部62aに嵌合して、上記連結部材61が上方に移動して上記伝達状態となる。
このようにして切替手段58が伝達状態となったら、制御手段5はさらに駆動手段57によって回転軸51を回転させ、当該回転軸51に設けた検出片59aを上記回転位置センサ59によって認識し、かつ各テーブル52〜55に作業者が載置した容器類や器具類を上記器具類センサ57によって認識する。
これにより、制御手段5は各テーブル52〜55の回転位置を認識するとともに、各テーブル52〜55に載置されている器具類や容器類の位置や有無を記憶する。
【0068】
以下上記培養操作として、細胞を培地とともに培養容器に収容させる播種作業、古くなった培地を交換する培地交換作業、一つの培養容器の細胞を複数の新たな培養容器に分配する継代作業、培養の終了した細胞を回収する回収作業について説明する。
なお、上記培養操作における上記第1、第2ロボット6、7や液体供給手段10等の動作は、予め制御手段5に登録された動作に従って行われるが、下記動作はあくまでも一例であり、異なる動作順序によって培養操作を行うことも、上記記載した作業以外の作業も行うことも可能であることは言うまでもない。
【0069】
図17は播種作業のフローを示し、上記パスボックス3からアイソレータ2には、容器類としてディッシュ21および遠沈管22が、器具類としてピペット23、アスピレータノズル24が、液体類として、培地容器29、PBS容器30、試薬容器32がそれぞれ搬入されている。また、これらとは別に細胞を収容した検体容器28が搬入される。
まず、検体容器28の細胞を複数の遠沈管22に分注する作業を行う(A−1)。
第1ロボット6は上記検体容器28をロータリストッカ8から取り出し、これを液体供給手段10の第3液体給排手段71Cまで移動させ、ピペット23に検体容器28の細胞を含む液体を吸引する。
第1ロボット6は、空になった検体容器28を廃棄箱77に廃棄し、続いてロータリストッカ8から空の遠沈管22を取り出してこれを上記第3液体給排手段71Cに移動させ、ピペット23から当該遠沈管22に所定量の細胞を分注する。
そして第1ロボット6は細胞の分注された遠沈管22を上記遠沈管ホルダ43に支持させる。
【0070】
次に、上記遠沈管22にPBSを分注する作業を行う(A−2)。
上記液体供給手段10の上記第2液体給排手段71Bと第2容器保持手段72Bとが作動して、ピペット23に所定量のPBSを吸引する。
続いて第1ロボット6は上記遠沈管ホルダ43に支持された遠沈管22を取り出し、これを上記第2液体給排手段71Bに移動させ、ピペット23から所定量のPBSを当該遠沈管22に吐出する。
そして第1ロボット6はPBSの分注された遠沈管22を再度遠沈管ホルダ43に支持させる。
【0071】
次に、上記PBSの分注された細胞を遠心分離する作業を行う(A−3)。
第2ロボット7は上記遠沈管ホルダ43に支持された遠沈管22を取り出してこれを遠心分離手段9に収容し、その際第2ロボット7および液体供給手段10によって新たな遠沈管22からカウンターウェイトを作成する。
続いて遠心分離手段9が作動し、これにより遠沈管22内の液体が下方の細胞を含む液体と上方の上澄みとに分離する。
遠心分離が終了したら、第2ロボット7は当該遠心分離手段9より遠沈管22を取り出してこれを上記アスピレータ73まで移動させ、アスピレータ73は遠沈管22の上澄みを吸引除去する。
そして第2ロボット7は上澄みの除去された遠沈管22を遠沈管ホルダ43に支持させる。
【0072】
次に、上記遠沈管22内の細胞についての検査を行う(A−4)。
上記液体供給手段10の上記第1液体給排手段71Aおよび第1容器保持手段72Aが作動し、上記ピペット23に所定量の培地を吸引する。
続いて第1ロボット6は上記遠沈管ホルダ43の遠沈管22を取り出してこれを上記第1液体給排手段71Aへと移動させ、ピペット23から所定量の培地を当該遠沈管22に吐出する。
そして第1ロボット6は培地の分注された遠沈管22を遠沈管ホルダ43に支持させる。
その後、上記第1、第2ロボット6、7によって観察プレート25を保持し、上記検査手段11において上述した手順に基づき上記遠沈管22内の細胞の一部について検査を行う。
検査のために一部の細胞が採取された遠沈管22は、再度上記遠沈管ホルダ43に支持される。
【0073】
次に、培地と細胞とによる懸濁液を作成し、これをディッシュ21に移す作業を行う(A−5)。
第1ロボット6はB−1の作業において検体容器28から細胞を含む液体を吸引する際に使用した上記第3液体給排手段71Cのピペット23を、ピペットホルダ75に収容された新たなピペット23に交換し、使用済みのピペット23を廃棄箱77に廃棄する。
第2ロボット7は遠沈管ホルダ43の遠沈管22を取り出してこれを第3液体給排手段71Cに移動させ、ピペット23に遠沈管22内の液体の吸い込みと吐出を繰り返して懸濁液を作成し、これをさらにピペット23に吸引する。
第2ロボット7は、空になった遠沈管22を遠沈管ホルダ43を介して第1ロボット6に受け渡し、これを廃棄箱77に廃棄する。
次に第1ロボット6はロータリストッカ8からアタッチメント33を使って新たな空のディッシュ21を取り出し、これを上記第3液体給排手段71Cへと移動させ、ピペット23から当該ディッシュ21に上記懸濁液を吐出する。
そして第1ロボット6は、懸濁液の分注されたディッシュ21をアタッチメント33ごと受渡しテーブル42に載置する。
【0074】
最後に、上記懸濁液の分注されたディッシュ21を上記インキュベータ4に搬入する作業を行う(A−6)
まず、上記第2ロボット7は受渡しテーブル42に載置されたディッシュ21をアタッチメント33ごと保持し、当該ディッシュ21を上記搬出入手段12に載置する。
アイソレータ側シャッタ112およびインキュベータ側シャッタ113を開放させると、搬出入手段12は当該ディッシュ21をインキュベータ4の内部へと移動させて、インキュベータ4の搬送手段4bへと受け渡す。
ここで、上記A−5にかかる懸濁液を分注する作業では、第3液体給排手段71Cに吸引した懸濁液を複数個のディッシュ21に分注するようになっており、このため上記A−5およびA−6の作業を繰り返すことにより、所定数のディッシュ21をインキュベータ4に収容する。
【0075】
図18は培地交換作業のフローを示し、アイソレータ2に接続されたインキュベータ4には培養された細胞を収容したディッシュ21が収容され、アイソレータ2には、器具類としてピペット23およびアスピレータノズル24が搬入され、液体類として培地容器29が予め搬入されている。
まず、インキュベータ4内のディッシュ21を取り出す作業を行う(B−1)。
インキュベータ側シャッタ113およびアイソレータ側シャッタ112が開放され、搬出入手段12がディッシュ載置部12aをインキュベータ4の内部に移動させる。
搬出入手段12がインキュベータ4内の搬送手段4bよりディッシュ21を受け取ると、搬出入手段12は当該ディッシュ21をアイソレータ2内に移動させ、第2ロボット7が当該ディッシュ21を受け取る。
【0076】
次に、上記ディッシュ21内の古い培地を新たな培地に交換する作業を行う(B−2)。
上記ディッシュ21を保持した上記第2ロボット7は、当該ディッシュ21を上記アスピレータ73に移動させ、アスピレータ73によって当該ディッシュ21内の古い培地を吸引除去する。
一方、上記液体供給手段10における第1液体給排手段71Aおよび第1容器保持手段72Aが作動し、ピペット23が所定量の培地を吸引する。
その後、第2ロボット7は上記使用済みの培地が除去されたディッシュ21を第1液体給排手段71Aに移動させ、ピペット23から当該ディッシュ21に所定量の培地を吐出し、培地の交換が終了する。
【0077】
最後に、上記ディッシュ21をインキュベータ4に搬入する作業を行う(B−3)。
第2ロボット7は上記ディッシュ21を、可動範囲の受け渡し位置に位置させた搬出入手段12のディッシュ載置部12aに受け渡し、搬出入手段12は当該ディッシュ21をインキュベータ4の内部に移動させ、インキュベータ4では上記搬送手段4bが当該ディッシュ21を所定のラックに収容する。
そして制御手段5はインキュベータ4内のディッシュ21の全てについて、上記B−1〜B−3の各作業を繰り返し、すべてのディッシュ21の培地交換を行う。
【0078】
図19は継代作業のフローを示し、このときアイソレータ2に接続されたインキュベータ4には細胞を収容したディッシュ21が収容され、またアイソレータ2には、容器類としてディッシュ21、遠沈管22、器具類としてピペット23、アスピレータノズル24が搬入され、液体類として培地容器29、トリプシン容器31、試薬容器32が搬入されている。
まず、インキュベータ4内のディッシュ21を搬出する作業と(C−1)、当該ディッシュ21より古い培地を除去する作業を行い(C−2)、これらの動作は培地交換作業のB−1、B−2と同様の動作であるため詳細な説明は省略する。
そして培地の除去されたディッシュ21はアタッチメント33ごと受渡しテーブル42に載置される。
【0079】
次に、ディッシュ21にトリプシンを分注する作業を行う(C−3)。
まず第2ロボット7は容器ホルダ76ごとトリプシン容器31を取り出してこれを第2液体給排手段71Bに移動させ、ピペット23にトリプシンを吸引する。この継代作業ではPBSを使用しないため、本作業では第2液体給排手段71Bにトリプシンを吸引させることができる。
その後、第1ロボット6が受渡しテーブル42上のディッシュ21を保持してこれを第2液体給排手段71Bに移動させ、第2液体給排手段71Bは当該ディッシュ21に上記ピペット23のトリプシンを吐出する。
そして第1ロボット6は、トリプシンの分注されたディッシュ21をアタッチメント33ごと加温庫44に収容し、当該加温庫44ではディッシュ21を所定の温度まで加温する。
【0080】
次に、細胞とトリプシンとからなる懸濁液をひとつの遠沈管22に集約する作業を行う(C−4)
まず第2ロボット7は加温庫44から所定温度に加温されたディッシュ21を取り出す。その際、第2ロボット7は上記ディッシュ21を加温庫44のタッピング手段46に移動させ、タッピング手段46では当該ディッシュ21に振動を与えてディッシュ21の底に張り付いた細胞を剥離させる。
続いて、第2ロボット7は上記ディッシュ21を上記第3液体給排手段71Cに移動させ、ピペット23によりディッシュ21内の細胞とトリプシンとを吸引および排出を繰り返して懸濁液を作成し、これをピペット23に吸引する。
そして第2ロボット7は、空になったディッシュ21を第1ロボット6に受け渡し、廃棄箱77に廃棄する。
一方、第1ロボット6はロータリストッカ8から空の遠沈管22を保持してこれを第3液体給排手段71Cに移動させ、ピペット23から懸濁液を当該遠沈管22に吐出する。
第2ロボット7は、上記加温庫44に収容されているディッシュ21に対して上記動作を繰り返し、複数個のディッシュ21に収容された懸濁液を上記第1ロボット6が保持する遠沈管22に集約する。
そして遠沈管22に所定量の懸濁液が収容されると、第1ロボット6は当該遠沈管22を遠沈管ホルダ43に支持させる。
【0081】
続いて、遠沈管22内の懸濁液を遠心分離する作業(C−5)、細胞の検査をする作業(C−6)、培地との懸濁液を作成してこれをディッシュ21に分注する作業(C−7)、上記ディッシュ21をインキュベータ4に搬入する作業(C−8)をそれぞれ行う。
これらの作業は上記播種作業におけるA−3〜A−6と同様の作業であるが、上記C−6にかかる細胞の検査をする作業では、上記制御手段5に設けた判定手段によって、懸濁液を分配するディッシュ21の個数を決定する。
具体的には、上記C−6にかかる検査の作業において、上記検査手段11において観察プレート25上における細胞の生存数を測定し、この生存数に基づいて新たに必要となる培地の量を求め、これに基づいてC−7の動作を上記通常継代モードもしくは優良継代モードで行うかを決定する。
【0082】
上記判定手段がC−7の分注作業を上記通常継代モードで行うと決定すると、制御手段5は第1の培養容器としての一つの遠沈管22に集約された細胞を含む懸濁液を、例えば10個の第2の培養容器としてのディッシュ21に分注するよう、上記第1、第2ロボット6、7や液体供給手段10を制御する。
この時、制御手段5は第1液体給排手段71Aおよび第1容器保持手段72Aを制御して、第1液体給排手段71Aのピペット23には、上記10個のディッシュ21に分注する培地の合計した量が吸引される。
一方、判定手段がC−7の分注作業を優良継代モードで行うと決定すると、制御手段5は遠沈管22に収容された細胞を含む懸濁液を、例えば15個のディッシュ21に分注させる。
その際も、制御手段5は第1液体給排手段71Aおよび第1容器保持手段72Aを制御して、第1液体給排手段71Aのピペット23に上記15個のディッシュ21に分注する培地の合計した量が吸引される。なお、一度に全量の培地を吸引できない場合には、複数回に分けて吸引および吐出を行うこともでき、また、ディッシュ21毎に分注するものとして、ディッシュ21の個数と同じだけ同じ操作を繰り返すように上記第1、第2ロボット6、7や液体供給手段10を制御するようにしても良い。
なお、新たに必要な培地の量は、計測した生存数に所定の係数を掛けて求めることができ、求めた培地の量に対して一つのディッシュ21に収容させる培地の量から、分配するディッシュ21の数を求めるようにしてもよい。
【0083】
このように、継代作業ではインキュベータ4より取り出したディッシュ21の数よりも多くのディッシュ21に細胞を分配するため、C−8にかかるインキュベータ4へとディッシュ21を搬入する作業において、1台のインキュベータ4にすべてのディッシュ21を収容できない時には、他のインキュベータ4にディッシュ21を収容するようになっている。
その際、培養操作開始時にアイソレータ2に接続されていた2台のインキュベータ4にすべてのディッシュ21を収容できない時には、1台目のインキュベータ4に対してディッシュ21の収容が完了したら、2台目のインキュベータ4と作業室2aとが連通している間に、直ちに当該インキュベータ4の接続手段111の除染空間Sを除染して離脱させ、3台目のインキュベータ4を接続する。
そして2台目のインキュベータ4が作業室2aと連通可能な状態でディッシュ21の搬入を行う間に、当該3台目のインキュベータ4の接続手段111において上記除染空間Sの除染を行うことで、当該3台目のインキュベータ4に対しても作業室2aと連通可能な状態とすることで、ディッシュ21の搬入を行うことができる。
その際、上述したように本実施例の接続手段111は狭小な除染空間を除染すればよいことから、上記1台目のインキュベータ4の離脱と3台目の接続を迅速に行うことができ、効率的に継代作業を行うことが可能となっている。
また、インキュベータ4を離脱させる際に除染を行うことで、作業室2a内から検体固有のウイルスなどが外部に漏出することが防止され、また接続させる際に除染を行うことで、外部の菌や微生物が作業室2aに持ち込まれることを防止する。
【0084】
図20は回収作業のフローを示し、アイソレータ2に接続されたインキュベータ4には細胞の収容されたディッシュ21が保管され、また上記パスボックス3からは、容器類としてディッシュ21、遠沈管22、器具類としてピペット23、アスピレータノズル24が搬入され、液体類、培地容器29、トリプシン容器31、試薬容器32がそれぞれ搬入されている。
回収作業では、インキュベータ4からディッシュ21を搬出する作業(D−1)、ディッシュ21より古い培地を除去する作業(D−2)、当該ディッシュ21にトリプシンを分注する作業(D−3)、懸濁液を遠沈管22に分注する作業(D−4)、遠沈管22の懸濁液を遠心分離する作業(D−5)をそれぞれ行う。これらの作業は上記継代作業のC―1〜C−7と同様の作業であるため、詳細な説明は省略する。
そして上記D−5にかかる遠心分離作業の結果、上澄みの除去された細胞を収容した複数の遠沈管22が得られ、これらは遠沈管ホルダ43に支持される。
【0085】
続いて、遠心分離された細胞を一つの遠沈管22に集約する作業を行う(D−6)。
上記第1液体給排手段71Aおよび第1容器保持手段72Aにより、ピペット23に培地を吸引し、第2ロボット7は上記遠沈管ホルダ43の遠沈管22を取り出してこれを上記第1液体給排手段71Aに移動させ、ピペット23から当該遠沈管22に培地を吐出する。
そして第2ロボット7は当該培地の分注された遠沈管22を遠沈管ホルダ43に支持させる。
一方第1ロボット6は、予め第3液体給排手段71CにおいてD−2にかかる培地を除去する際に使用したピペット23を、ピペットホルダ75に収容された新たなピペット23に交換し、使用済みのピペット23は廃棄箱77に廃棄する。
続いて第1ロボット6は、上記遠沈管ホルダ43から上記培地の分注された遠沈管22を取り出してこれを第3液体給排手段71Cに移動させ、ピペット23に遠沈管22内の培地と細胞とを吸引および排出を繰り返して懸濁液を作成し、これをピペット23に吸引する。
そして第1ロボット6は使用済みの遠沈管22を廃棄箱77に廃棄する。
続いて第1ロボット6は新たな遠沈管22をロータリストッカ8から取り出してこれを第3液体給排手段71Cに移動させ、ピペット23から当該新たな遠沈管22に懸濁液を吐出する。
制御手段5は、上記D−5の作業において遠沈管ホルダ43に支持されたすべての遠沈管22の全てについて上記懸濁液を作成し、これを上記第1ロボット6が保持する1本の新たな遠沈管22に集約する。
その際、インキュベータ4に収容されていた全ての細胞を、1サイクルの上記D−1〜D−5の作業では遠心分離手段9において処理できない場合、上記D−6の作業を行う間に、2サイクル目のD−1〜D−5の作業を繰り返し、当該2サイクル目の作業で得られた懸濁液についても上記1本の遠沈管22に集約する。
そして第1ロボット6は、上記懸濁液の分注された遠沈管22を遠沈管ホルダ43に支持させる。
【0086】
次に、上記1本の遠沈管22に集約された細胞を再度遠心分離する作業を行う(D−7)
第2ロボット7は上記懸濁液を収容した遠沈管22を遠沈管ホルダ43より取り出してこれを上記遠心分離手段9に収容し、遠心分離手段9は当該遠沈管22内の懸濁液を遠心分離する。
遠心分離が終了すると、第2ロボット7は遠沈管22を取り出してこれを上記アスピレータ73に移動させ、アスピレータ73は遠沈管22より上澄みを除去する。
【0087】
次に、上記上澄みの除去された遠沈管22内の細胞について検査する作業を行う(D−8)。
上記D−8に係る検査作業は上記継代作業にかかるC−6の検査作業と同様であるので詳細な説明については省略する。
最後に、細胞を回収する作業を行う(D−9)。
上記検査が終了すると、第1ロボット6は遠沈管22をロータリストッカ8に収容し、制御手段5は上記第1、第2ロボット6、7等の動作を停止させる。
その後、作業者は搬出入用グローブ40aを装着し、上記細胞の収容された遠沈管22をパスボックス3を介して搬出するようになっている。
【0088】
上記実施例に示すように、本実施例の自動培養操作装置1では、上記アイソレータ2の作業室2aにロボットを備え、ロータリストッカ8に対応させて第1ロボット6を、上記インキュベータ4、遠心分離手段9に対応させて第2ロボット7をそれぞれ設けている。
これにより、ロータリストッカ8に収納した容器類については上記第1ロボット6によって取扱い、またインキュベータ4への培養容器の搬出入また遠心分離手段9への遠沈管のセットについては第2ロボット7によって取り扱うことができ、作業の分担による効率的な培養操作を行うことができる。
その際、上記第1ロボット6と第2ロボット7との間に、これらの間で容器類を受け渡すための、仮置き部としての受渡しテーブル42、遠沈管ホルダ43、加温庫44を設けて、上記第1ロボット6と第2ロボット7とはこれらの間で相互に容器類を受け渡すようになっている。
このため、例えば一方のロボットが作業中であっても、他のロボットが仮置き部に容器類を載置することにより、当該他のロボットは別の作業を行うことが可能となる。
【0089】
また本実施例では、上記アイソレータ2の作業室2aにおけるパスボックス3の近傍にロータリストッカ8を配置するとともに、上記パスボックス3およびロータリストッカ8に対して作業が可能な搬出入用グローブ40aを設けている。
このため、パスボックス3からアイソレータ2に上記容器類を搬入しロータリストッカ8に収納する際には、上記搬出入用グローブ40aを装着した作業者によってこれらの搬入作業を行うことができ、ロボットでは煩雑となる作業を迅速に行うことができる。