(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
熱転写リボン等の感熱転写媒体を用いた熱転写印刷によれば、同じオンデマンドの印刷でも例えばインクジェット印刷や電子写真法を利用した印刷などでは得ることのできない、厚みが大きくてしかも高い隠蔽性を有する特に白色の印刷層を形成できる。また熱転写印刷によれば、被印刷体の同じ場所に熱転写印刷を重ねることによって、当該印刷層の隠蔽性をさらに高めたり、厚みをさらに大きくしたりすることも可能である。
【0003】
これらの特性を生かして、例えば透過性あるいは半透過性の被印刷体に
、裏面から模様等を形成するといった用途に熱転写印刷を適用すること等が提案されている(特許文献1等)。
熱転写印刷により白色の印刷層を形成するためには、感熱転写媒体として
、白色顔料によって白色に着色された
、熱転写印刷が可能な着色層(白色層)を備えたものを用いるのが一般的である。
【0004】
白色層は、白色顔料を任意のバインダで結着して形成される。
バインダとしては、例えば成膜性を有し白色層を形成しうる種々の樹脂が挙げられる。
またバインダとしては、上記樹脂に対する相溶性が小さくかつ基材に対する離型性を有する上、融点が高く熱転写印刷時に溶融しにくいワックスを併用するのが一般的である(特許文献2、3等)。
【0005】
バインダとして樹脂とともにワックスを併用すると白色層の膜切れをよくして熱転写印刷の感度を向上したり、熱転写印刷時に熱転写領域に隣接する非転写領域の白色層まで基材から剥離するいわゆる余剥離を生じにくくしたりできる。
白色層には、特に熱転写印刷を重ねるためにその厚みを小さくしても高い明度および白色度を確保することが求められ、そのために他の色の着色層に比べて着色剤としての白色顔料を多めに配合する必要がある。
【0006】
また白色顔料としては、高い隠蔽性を有し厚みを小さくしても高い明度および白色度を有する白色層を形成できる酸化チタンが好適に使用される。
ところが白色顔料を多めに配合した白色層は、柔軟性や基材に対する追従性が低くなって非転写時に基材に応力が加わる等した際に不用意に基材から剥離したりしやすくなって、いわゆる感熱転写媒体のハンドリング性が低下するという問題がある。特に白色顔料として比重が大きく重い酸化チタンを使用した場合にかかる問題を生じやすい。
【0007】
特許文献2に記載された、樹脂との相溶性に優れたゴム状弾性体物質をバインダとして樹脂やワックスとともに併用すると、白色層の柔軟性や基材に対する追従性、接着性を向上して上記ハンドリングの問題をある程度は解消できる。
ゴム状弾性体物質としては熱可塑性エラストマやゴム等が挙げられる。
しかしゴム状弾性体物質を配合すると白色層の膜切れが悪くなって熱転写印刷の感度が低下したり余剥離を生じたりしやすくなったりする傾向がある。そこで特許文献2では、ワックスを通常よりも多めに配合してこれらの問題が生じるのを防止している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、基材上に、少なくとも酸化チタン、アクリル樹脂、
熱可塑性アクリルエラストマおよびワックスを含む熱転写印刷が可能な白色層が形成された感熱転写媒体である。
【0014】
中でもポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルのフィルムが機械的強度、寸法安定性、耐熱性、価格等の見地から好ましい。
基材の強度(引張強度等)を確保しながら熱転写プリンタのサーマルヘッドによって白色層にできるだけ効率よく熱伝達することを考慮すると、当該基材の厚みは1μm以上、特に2μm以上であるのが好ましく、30μm以下、特に15μm以下であるのが好ましい。
【0015】
基材の、白色層を形成する側の表面には、従来同様に離型処理をしてもよい。また基材の、白色層を形成する側と反対面(背面)には、従来同様に上記サーマルヘッドと接触する当該背面の耐熱性、滑り性、耐擦過性等を向上するための背面層を形成してもよい。
〈白色層〉
(酸化チタン)
白色層を形成する酸化チタンとしてはルチル型、アナターゼ型等の各種の酸化チタンがいずれも使用可能である。
【0016】
酸化チタンは、白色層に高い明度や白色度を付与することを考慮すると、平均粒子径が0.2μm以上、0.3μm以下であるのが好ましい。
かかる酸化チタンとしては、いずれもルチル型酸化チタンである石原産業(株)製のR−820(0.26μm)、R−830(0.25μm)、R−930(0.25μm)、R−980(0.24μm)、R−550(23μm)、R−630(0.24μm)、R−680(0.21μm)(以上、硫酸法酸化チタン)、CR−95(0.28μm)、CR−953(0.28μm)、CR−97(0.25μm)、UT771(0.25μm)、CR−60(0.21μm)、CR−60−2(0.21μm)、CR−63(0.21μm)、CR−67(0.21μm)、CR−50(0.25μm)、CR−50−2(0.25μm)、CR−57(0.25μm)、CR−Super70(0.25μm)、CR−80(0.25μm)、CR−90(0.25μm)、CR−90−2(0.25μm)、CR−93(0.28μm)(以上、塩素法酸化チタン)等の1種または2種以上が挙げられる。なおカッコ内の数値は平均粒子径である。
【0017】
酸化チタンの配合割合は、白色層を形成する固形分の総量中の50質量%以上、
70質量%以下であり、特に60質量%以上であるのが好まし
い。
酸化チタンの配合割合がこの範囲未満では白色層の明度や白色度が不十分になおそれがある。また酸化チタンの配合割合が上記の範囲を超える場合には相対的にバインダの割合が不足し、白色層の柔軟性や基材に対する追従性、接着性が低下して感熱転写媒体のハンドリング性が不十分になるおそれがある。
【0018】
これに対し酸化チタンの配合割合を上記の範囲とすることにより、感熱転写媒体の良好なハンドリング性を維持しながら、さらに明度や白色度に優れた白色層を形成できる。
(アクリル樹脂)
白色層を形成するバインダのうちアクリル樹脂としては、成膜性を有し、なおかつ透明性に優れた種々のアクリル樹脂がいずれも使用可能である。またアクリル樹脂としては任意の溶剤に可溶で塗料用、インキ用等として粒度等が調整された微粉状で、なおかつ熱可塑性のアクリル樹脂が好適に使用できる。
【0019】
これらの条件を満足する熱可塑性のアクリル樹脂としては、例えば三菱レイヨン(株)製のダイヤナール(登録商標)BRシリーズの各種製品、例えばBR−50、BR−52、BR−53、BR−60、BR−64、BR−73、BR−75、BR−77、BR−79、BR−80、BR−82、BR−83、BR−85、BR−87、BR−88、BR−90、BR−93、BR−95、BR−100、BR−101、BR−102、BR−105、BR−106、BR−107、BR−108、BR−112、BR−113、BR−115、BR−116、BR−117、BR−118等の1種または2種以上が挙げられる。
【0020】
なお印刷の定着性など堅牢性を向上させることを目的として、例えば転写後や後述する再転写後に熱を加える等して白色層を硬化させる工程を経て印刷を完成することも考えられ、その場合にはアクリル樹脂として熱硬化性のものを採用することも可能である。
(熱可塑性アクリルエラストマ)
熱可塑性アクリルエラストマとしては、アクリル樹脂と相溶性を有し、なおかつアクリル樹脂よりも柔軟でしかも透明性の高い種々の熱可塑性アクリルエラストマがいずれも使用可能である。
【0021】
かかる熱可塑性アクリルエラストマとしては、例えばメタクリル酸メチル(MMA)ブロック(ハードセグメント)と、アクリル酸ブチル(BA)ブロック(ソフトセグメント)とのブロック共重合体である(株)クラレ製のクラリティ(登録商標)シリーズのうちLA2250、LA2140e、LA2230、LA4285、LB550、LM730H等の1種または2種以上が挙げられる。
【0022】
(ワックス)
ワックスとしては、アクリル樹脂および/または熱可塑性アクリルエラストマに対する相溶性が小さくかつ基材に対する離型性を有する上、融点が高く熱転写時に溶融しにくい種々のワックスがいずれも使用可能である。
かかるワックスとしては天然あるいは合成の種々の炭化水素系ワックスなどの、分子中にOH基を全くあるいはごく僅かしか有しない無極性ないし低極性のワックス、特に無極性のワックスが好ましく、その具体例としては例えばパラフィンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の1種または2種以上が挙げられる。
【0023】
ワックスの融点は100℃以上
であり、特に110℃以上であるのが好ましい。
融点がこの範囲以上のワックスを使用することで、熱転写時に白色層が溶けすぎるのを抑制して余剥離の発生をより確実に防止したり、熱転写印刷後の耐擦過性を向上したりできる。
ただし融点が高すぎる場合には熱転写印刷の感度が低下して転写不良によるかすれを生じるおそれがあるため、ワックスの融点は、上記範囲でも125℃以下、特に115℃以下であるのが好ましい。
【0024】
かかるワックスとしては、例えば日本精蝋(株)製のFT−115(フィッシャー・トロプシュワックス、融点:113℃)、FT−105(フィッシャー・トロプシュワックス、融点:102℃)、東洋アドレ(株)製のポリワックス725(融点:104℃)、ポリワックス1000(融点:113℃)、ポリワックス2000(融点:126℃)、ポリワックス3000(融点:129℃)等の1種または2種以上が挙げられる。
【0025】
ワックスの配合割合は、白色層を形成する固形分の総量中の2質量%以上、
10質量%以下であり、特に4質量%以上であるのが好ましく
、7質量%以下であるのが好ましい。
ワックスの配合割合がこの範囲未満では白色層の膜切れをよくして熱転写印刷の感度を高めたり余剥離を防止したりする効果が不十分になるおそれがある。
一方、ワックスの配合割合が上記の範囲を超える場合には当該ワックスの透明性が低いため白色層の明度や白色度が不十分になるおそれがある。
【0026】
またワックスの配合割合が上記の範囲を超える場合には、上記のように融点の高いワックスを使用しているため、却って熱転写印刷の感度が低下したりするおそれもある。
これに対し、ワックスの配合割合を上記の範囲とすることにより、白色層の明度や白色度を良好な範囲に維持しながら当該白色層の膜切れをよくして熱転写印刷の感度を高めたり余剥離を防止したりする効果をさらに向上できる。
【0027】
(アクリル樹脂、熱可塑性アクリルエラストマの配合割合)
アクリル樹脂と熱可塑性アクリルエラストマの合計の配合割合は、白色層を形成する固形分の総量から酸化チタンやワックス等の配合割合を差し引いた残量
である。
【0028】
すなわち、アクリル樹脂と熱可塑性アクリルエラストマの合計の配合割合は、白色層を形成する固形分の総量中の20質量%以上、
48質量%以下であり、特に23質量%以上であるのが好ましく
、36質量%以下であるのが好ましい。
またアクリル樹脂と熱可塑性アクリルエラストマの質量比(アクリル樹脂)/(熱可塑性アクリルエラストマ)は3/7以上、
7/3以下であり、特に4/6以上であるのが好ましく
、6/4以下であるのが好ましい。
【0029】
両者の質量比が上記の範囲未満、すなわち上記範囲より熱可塑性アクリルエラストマが多い場合には先に説明した範囲でワックスを配合しているにも拘らず白色層の柔軟性や基材に対する追従性、接着性が強くなりすぎて膜切れが悪くなってしまい、熱転写印刷の感度が低下したり余剥離を生じたりしやすくなるおそれがある。
一方、両者の質量比が上記の範囲を超える、すなわち上記範囲より熱可塑性アクリルエラストマが少ない場合には白色層の柔軟性や基材に対する追従性、接着性が低下して感熱転写媒体のハンドリング性が不十分になるおそれがある。
【0030】
これに対し、アクリル樹脂と熱可塑性アクリルエラストマの質量比を上記の範囲とすることにより、感熱転写媒体の良好なハンドリング性を維持しながら、白色層の膜切れをよくして熱転写印刷の感度を高めたり余剥離を防止したりする効果をさらに向上できる。
(白色層の形成)
白色層は、上記各成分を任意の溶剤に溶解または分散させた塗剤を基材の表面に塗布したのち乾燥させて形成したり、上記各成分を加熱して溶融させた状態で基材の表面に塗布したのち冷却して固化させるいわゆるホットメルト塗工によって形成したりできる。
【0031】
(厚み)
白色層の厚みは、感熱転写媒体の用途に応じて任意に設定できるものの、単位面積当たりの固形分量で表して2g/m
2以上、特に3g/m
2以上であるのが好ましく、6g/m
2以下、特に5g/m
2以下であるのが好ましい。
〈接着層〉
被印刷体がアクリル系である場合は、上記白色層を直接に被印刷体の表面に熱転写印刷できるため接着層は不要である。なお被印刷体がアクリル系とは、被印刷体の全体がアクリル樹脂からなる場合や、表面にアクリル樹脂からなる表面処理層を形成した場合を指す。
【0032】
また被印刷体の表面に接着層を形成して、白色層上の接着層を省略することもできる。
しかし被印刷体がアクリル系以外、特にアクリル系との相溶性を有しない樹脂やガラス、金属、あるいは紙等である場合は、白色層の上に、熱転写印刷時の熱によって粘着性を示す感熱性の接着層を積層するのが好ましい。
かかる感熱性の接着層は、例えばエポキシ樹脂によって形成できる。また白色層の明度や白色度が低下するのを防止するため、当該接着層にも酸化チタン等の白色の顔料を配合できる。
【0033】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂としては種々のエポキシ樹脂がいずれも使用可能である。
かかるエポキシ樹脂としては例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;水添ビスフェノールAD型エポキシ樹脂;プロピレングリコールグリコキシエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル等の脂肪族系エポキシ樹脂;脂肪族もしくは芳香族アミンとエピクロルヒドリンとから得られるエポキシ樹脂;脂肪族もしくは芳香族カルボン酸とエピクロルヒドリンとから得られるエポキシ樹脂;複素環エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂;エポキシ変性樹脂;ブロム化エポキシ樹脂等の1種または2種以上が挙げられる。
【0034】
(厚み)
接着層の厚みは、やはり感熱転写媒体の用途に応じて任意に設定できる
ものの、単位面積当たりの固形分量で表して0.3g/m
2以上、特に0.5g/m
2以上であるのが好ましく、2g/m
2以下、特に1.5g/m
2以下であるのが好ましい。
〈再転写印刷〉
本発明の感熱転写媒体を使用することにより、従来は形成が困難であった厚みの大きい白色の印刷層を、任意の被印刷体の表面に形成できる。
【0035】
ただし硬質プラスチックやガラス、あるいは金属からなり、硬くかつ熱を逃がしやすい板状の被印刷体の表面に厚みの大きい白色の印刷層を形成する場合は、以下に説明する再転写印刷を実施するのが好ましい。
すなわちサーマルヘッドを用いた通常の熱転写印刷では、感熱転写媒体に対してマイクロ秒レベルのごく短時間の加熱しかできないため、例えば柔軟で薄くしかも熱を逃がしにくい紙や樹脂のフィルム等の表面には、接着性に優れた熱転写印刷をすることが可能である。
【0036】
しかし上記のように硬くかつ熱を逃がしやすい板状の被印刷体の表面には、たとえ通常の熱転写印刷を繰り返したとしても、厚みの大きい白色の印刷層を、高い接着性でもって形成するのは困難である。
これに対し再転写印刷によれば、以下の手順を経ることにより、上記板状の被印刷体の表面に、白色層の積層体からなる厚みの大きい白色の印刷層を高い接着性でもって形成することが可能となる。
【0037】
すなわち再転写印刷では、まず柔軟で薄くしかも熱を逃がしにくい樹脂のフィルム等からなり、その表面に離型処理をした中間転写体を用意する。
そしてこの中間転写体の離型処理をした表面に、白色層上に接着層を積層した感熱転写媒体の当該接着層を接触させた状態で、感熱転写媒体の基材の背後から熱転写プリンタのサーマルヘッドによって白色層を所定のパターンに対応させて加熱して、1層目の白色層を、上記接着層を介して上記所定のパターン形状に熱転写印刷する。
【0038】
この操作を必要な厚みとなるまで繰り返して中間転写体の表面に、パターン形成された白色層の積層体を形成する。
なお2層目以降の感熱転写媒体としては、下地が同じ白色層であるため接着層を省略したものを用いてもよいし、確実に熱転写印刷するために接着層を形成したものを用いてもよい。また後者の場合は1層目と2層目以降で同じ感熱転写媒体を使用でき交換の手間を省くことができるという利点もある。
【0039】
次いで、上記のようにして形成した白色層の積層体の最表面、もしくは被印刷体の表面に、必要に応じて接着層を形成する。
接着層は、例えばスクリーン印刷法等の任意の印刷方法で白色層のパターンに対応させてパターン形成してもよいし、例えばスプレーコート法、ロールコート法等の任意の塗装方法で白色層の積層体の最表面を含む中間転写体の表面の全面や被印刷体の表面の全面に形成していてもよい。
【0040】
また接着層は、感熱転写媒体に使用したのと同じ感熱性の接着層でもよいし、加圧によって粘着性を示す感圧性の接着層であってもよい。
また被印刷体がアクリル系である場合は、被印刷体の表面に白色層を直接に熱転写印刷できるため接着層は省略できる。被印刷体がアクリル系とは、先に説明したように被印刷体の全体がアクリル樹脂からなる場合や、表面にアクリル樹脂からなる表面処理層を形成した場合を指す。
【0041】
次いで、接着層が感熱性のものである場合は中間転写体上の白色層の積層体を、上記接着層を介して被印刷体の表面に接触させた状態で、例えば一方が加熱された一対のロール間を通して中間転写体をその背面側から、サーマルヘッドを用いた通常の熱転写印刷よりも長い時間、大きい熱量、および高い圧力条件でもって加熱、加圧することにより、上記被印刷体の表面に白色層の積層体をしっかりと再転写させたのち、中間転写体を剥離する。
【0042】
白色層の積層体を、接着層を介さずに直接に非印刷体の表面に再転写させる場合も同様である。
また接着層が感圧性のものである場合は、白色層の積層体を、上記接着層を介して被印刷体の表面に接触させた状態で、一対のロール間を通して中間転写体をその背面側から、サーマルヘッドを用いた通常の熱転写印刷よりも長い時間、および高い圧力条件でもって加圧することによってしっかりと再転写させたのち、中間転写体を剥離する。
【0043】
そうすると従来は形成不可能であった、例えば10μm以上といった厚みの大きい白色の印刷層を、前述した硬くかつ熱伝導率の高い板状の被印刷体の表面に、より強固に接着させた状態で形成できる。
しかもかかる印刷層は厚み方向に複数層の白色層からなる積層構造を有し、なおかつ各白色層ごとに隠蔽性の大きい酸化チタンを含むため、例えば20μm以下の厚みでも十分な明度および白色度を有する上、高い隠蔽性も確保できる。
【0044】
そのため上記の積層構造とすることにより、例えば従来はスクリーン印刷法等で厚み25μm程度までしか薄肉化できなかった白色の印刷層を、その明度や白色度、隠蔽性は同等またはそれ以上としつつより薄肉化できる。
したがって、被印刷体の表面に白色の印刷層を形成した物品の薄肉化、軽量化が可能となる。
【実施例】
【0045】
〈実施例1〉
(白色層用の塗材の調製)
下記の各成分を、溶剤としてのメチルエチルケトン(MEK)31.60質量部、およびトルエン31.60質量部と配合して白色層用の塗材を調製した。
【0046】
【表1】
【0047】
表1中の各成分は下記のとおり。
酸化チタン:石原産業(株)製のR−550(平均粒子径:23μm)
アクリル樹脂:三菱レイヨン(株)製のダイヤナールBR−106
熱可塑性アクリルエラストマ:(株)クラレ製のクラリティLA2250
ワックス:日本精蝋(株)製のFT−115(フィッシャー・トロプシュワックス、融点:113℃)
(感熱転写媒体の作製)
次いで上記塗材を、基材としてのPETフィルムの、離型処理をした表面に5g/m
2の塗布量で塗布し、乾燥させて、単位面積当たりの固形分量が1.84g/m
2の白色層を形成して感熱転写媒体を作製した。
【0048】
白色層における、アクリル樹脂と熱可塑性アクリルエラストマの質量比(アクリル樹脂)/(熱可塑性アクリルエラストマ)は5/5、ワックスの配合割合は、白色層を形成する固形分の総量中の5.4質量%であった。
〈
比較例1〉
アクリル樹脂の量を2.22質量部、熱可塑性アクリルエラストマの量を8.88質量部としたこと以外は実施例1と同様にして塗材を調製し、感熱転写媒体を作製した。
【0049】
白色層における、アクリル樹脂と熱可塑性アクリルエラストマの質量比(アクリル樹脂)/(熱可塑性アクリルエラストマ)は2/8、ワックスの配合割合は、白色層を形成する固形分の総量中の5.4質量%であった。
〈実施例
2〉
アクリル樹脂の量を3.33質量部、熱可塑性アクリルエラストマの量を7.77質量部としたこと以外は実施例1と同様にして塗材を調製し、感熱転写媒体を作製した。
【0050】
白色層における、アクリル樹脂と熱可塑性アクリルエラストマの質量比(アクリル樹脂)/(熱可塑性アクリルエラストマ)は3/7、ワックスの配合割合は、白色層を形成する固形分の総量中の5.4質量%であった。
〈実施例
3〉
アクリル樹脂の量を4.44質量部、熱可塑性アクリルエラストマの量を6.66質量部としたこと以外は実施例1と同様にして塗材を調製し、感熱転写媒体を作製した。
【0051】
白色層における、アクリル樹脂と熱可塑性アクリルエラストマの質量比(アクリル樹脂)/(熱可塑性アクリルエラストマ)は4/6、ワックスの配合割合は、白色層を形成する固形分の総量中の5.4質量%であった。
〈実施例
4〉
アクリル樹脂の量を6.66質量部、熱可塑性アクリルエラストマの量を4.44質量部としたこと以外は実施例1と同様にして塗材を調製し、感熱転写媒体を作製した。
【0052】
白色層における、アクリル樹脂と熱可塑性アクリルエラストマの質量比(アクリル樹脂)/(熱可塑性アクリルエラストマ)は6/4、ワックスの配合割合は、白色層を形成する固形分の総量中の5.4質量%であった。
〈実施例
5〉
アクリル樹脂の量を7.77質量部、熱可塑性アクリルエラストマの量を3.33質量部としたこと以外は実施例1と同様にして塗材を調製し、感熱転写媒体を作製した。
【0053】
白色層における、アクリル樹脂と熱可塑性アクリルエラストマの質量比(アクリル樹脂)/(熱可塑性アクリルエラストマ)は7/3、ワックスの配合割合は、白色層を形成する固形分の総量中の5.4質量%であった。
〈
比較例2〉
アクリル樹脂の量を8.88質量部、熱可塑性アクリルエラストマの量を2.22質量部としたこと以外は実施例1と同様にして塗材を調製し、感熱転写媒体を作製した。
【0054】
白色層における、アクリル樹脂と熱可塑性アクリルエラストマの質量比(アクリル樹脂)/(熱可塑性アクリルエラストマ)は8/2、ワックスの配合割合は、白色層を形成する固形分の総量中の5.4質量%であった。
〈
比較例3〉
アクリル樹脂の量を6.36質量部、熱可塑性アクリルエラストマの量を6.36質量部、ワックスの量を0.38質量部としたこと以外は実施例1と同様にして塗材を調製し、感熱転写媒体を作製した。
【0055】
白色層における、アクリル樹脂と熱可塑性アクリルエラストマの質量比(アクリル樹脂)/(熱可塑性アクリルエラストマ)は5/5、ワックスの配合割合は、白色層を形成する固形分の総量中の1.0質量%であった。
〈実施例
6〉
アクリル樹脂の量を6.05質量部、熱可塑性アクリルエラストマの量を6.05質量部、ワックスの量を1.00質量部としたこと以外は実施例1と同様にして塗材を調製し、感熱転写媒体を作製した。
【0056】
白色層における、アクリル樹脂と熱可塑性アクリルエラストマの質量比(アクリル樹脂)/(熱可塑性アクリルエラストマ)は5/5、ワックスの配合割合は、白色層を形成する固形分の総量中の2.7質量%であった。
〈実施例
7〉
アクリル樹脂の量を5.05質量部、熱可塑性アクリルエラストマの量を5.05質量部、ワックスの量を3.00質量部としたこと以外は実施例1と同様にして塗材を調製し、感熱転写媒体を作製した。
【0057】
白色層における、アクリル樹脂と熱可塑性アクリルエラストマの質量比(アクリル樹脂)/(熱可塑性アクリルエラストマ)は5/5、ワックスの配合割合は、白色層を形成する固形分の総量中の8.2質量%であった。
〈
比較例4〉
アクリル樹脂の量を3.75質量部、熱可塑性アクリルエラストマの量を3.75質量部、ワックスの量を5.60質量部としたこと以外は実施例1と同様にして塗材を調製し、感熱転写媒体を作製した。
【0058】
白色層における、アクリル樹脂と熱可塑性アクリルエラストマの質量比(アクリル樹脂)/(熱可塑性アクリルエラストマ)は5/5、ワックスの配合割合は、白色層を形成する固形分の総量中の15.2質量%であった。
〈
比較例5〉
ワックスとして、日本精蝋(株)製のFT−0165(フィッシャー・トロプシュワックス、融点:73℃)を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして塗材を調製し、感熱転写媒体を作製した。
【0059】
白色層における、アクリル樹脂と熱可塑性アクリルエラストマの質量比(アクリル樹脂)/(熱可塑性アクリルエラストマ)は5/5、ワックスの配合割合は、白色層を形成する固形分の総量中の5.4質量%であった。
〈比較例
6〉
熱可塑性アクリルエラストマに代えて同量のスチレン系熱可塑性エラストマ〔SEP、(株)クラレ製のセプトン(登録商標)2063〕を配合したこと以外は実施例1と同様にして塗材を調製し、感熱転写媒体を作製した。
【0060】
〈比較例
7〉
アクリル樹脂に代えて同量の熱可塑性ポリエステル樹脂〔ユニチカ(株)製のエリーテル(登録商標)UE3320〕を配合したこと以外は実施例1と同様にして塗材を調製し、感熱転写媒体を作製した。
〈比較例
8〉
アクリル樹脂の量を11.10質量部とし、熱可塑性アクリルエラストマを配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして塗材を調製し、感熱転写媒体を作製した。
【0061】
〈明度評価〉
実施例、比較例で作製した感熱転写媒体を用いて、被印刷体としてのアクリル板の表面にベタ面を熱転写印刷したのち黒の紙上で、色彩計〔ビデオジェット・エックスライト(株)製のX−Rite 918〕を用いた0°/45°測定によって上記ベタ面のLab値を求めて、下記の基準で明度を評価した。
【0062】
○○○:90以上。
○○:80以上、90未満。
○:75以上、80未満。
×:
75未満。
【0063】
〈感度評価〉
実施例、比較例で作製した感熱転写媒体を用いて、被印刷体としてのアクリル板の表面に、5cm×5cmのベタ面を熱転写印刷した際の転写状態を観察して、下記の基準で感熱転写媒体の熱転写印刷の感度を評価した。
○○:5cm×5cmのベタ面の全面で完全に熱転写印刷されていた。
【0064】
○:上記ベタ面のごく一部に熱転写印刷されていない領域があったが、その面積率は
5%以下であった。
×:上記ベタ面に、面積率5%を超える範囲(全面不転写を含む)で熱転写されていない領域が見られた。
〈ハンドリング性評価〉
実施例、比較例で作製した感熱転写体を一定面積に切り出して手で揉んだ際の白色層の状態を観察して、下記の基準でハンドリング性を評価した。
【0065】
○○:白色層は基材から全く剥離していないか、剥離したとしてもその面積率は10%未満であった。
○:白色層が剥離した領域の面積率は10%以上、20%未満であった。
△:白色層が剥離した領域の面積率は20%以上、30%未満であった。
×:白色層が剥離した領域の面積率は30%以上であった。
【0066】
〈余剥離評価〉
実施例、比較例で作製した感熱転写媒体を用いて、被印刷体としてのアクリル板の表面にローマ字大文字の「A」(フォント:ゴシック、サイズ:9ポイント)を10回繰り返し熱転写印刷し、上記「A」中の三角形の穴が抜けていた回数を計数して、下記の基準で余剥離の有無を評価した。
【0067】
○:10回とも抜けていた。
×:
1回以上、抜けていない場合があった。
以上の結果を表2〜表4に示す。
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
【表4】
【0071】
表2〜4の実施例1〜
7、比較例1
〜8の結果より、バインダとしてともに透明性に優れたアクリル樹脂と熱可塑性アクリルエラストマとを併用するとともに、ワックスを配合することで、ハンドリング性に優れるため白色層が非転写時に不用意に基材から剥離したりせず、また膜切れもよいため熱転写印刷の感度に優れる上、余剥離を生じにくく、しかも白色層の明度や白色度にも優れた感熱転写媒体が得られることが判った。
【0072】
ただし実施例1〜
5、比較例1、2の結果より、上記アクリル樹脂と熱可塑性アクリルエラストマの質量比(アクリル樹脂)/(熱可塑性アクリルエラストマ)を3/7〜7/3の範囲とすることにより、感熱転写媒体の良好なハンドリング性を維持しながら、白色層の膜切れをよくして熱転写印刷の感度を高めたり余剥離を防止したりする効果をさらに向上できることが判った。
【0073】
また実施例1と実施例
6、7、比較例3、4の結果より、ワックスの配合割合を、白色層を形成する固形分の総量中の2質量%以上、10質量%以下の範囲とすることにより、白色層の明度や白色度を良好な範囲に維持しながら当該白色層の膜切れをよくして熱転写印刷の感度を高めたり余剥離を防止したりする効果をさらに向上できることが判った。
さらに実施例1と
比較例5の結果より、ワックスとしては融点が100℃以上であるものを用いることにより、熱転写時に白色層が溶けすぎるのを抑制して余剥離の発生をより確実に防止したり、熱転写印刷後の耐擦過性を向上してさらに明度を高めたりできることが判った。
【0074】
〈実施例
8〉
(接着層用の塗材の調製)
下記の各成分を、溶剤としてのMEK40.60質量部、およびトルエン17.40質量部と配合して接着層用の塗材を調製した。
【0075】
【表5】
【0076】
表5中の2成分は下記のとおり。
エポキシ樹脂:三菱化学(株)製のjER(登録商標)1003〔エポキシ当量:670〜770、分子量:約1300〕
白色顔料分散体:酸化チタンの分散液(固形分濃度50質量%)
(接着層の形成)
実施例1で形成した白色層の上に、上記接着層用の塗材を4.6g/m
2の塗布量で塗布し、乾燥させて、単位面積当たりの固形分量が1.0g/m
2の接着層を形成して感熱転写媒体を作製した。
【0077】
〈比較例
9〉
比較例
8で形成した白色層を用いたこと以外は実施例
8と同様にして感熱転写媒体を作製した。
上記実施例、比較例で作製した感熱転写媒体について、先に説明した各評価を実施した。
【0078】
なお明度については、被印刷体としてのアクリル板の表面に、4回重ねて熱転写印刷した状態で、同じ基準で評価をした。
結果を表6に示す。
【0079】
【表6】
【0080】
表6の比較例
9の結果より、従来の白色層の上に接着層を積層するとハンドリング性が低下するとともに余剥離を生じることが判った。
これに対し実施例
8の結果より、本発明の白色層の上に接着層を積層しても感度やハンドリング性に影響がなく、余剥離も生じない上、明度が向上していることから、重ねて印刷することで隠蔽性を向上できることが判った。