(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)本発明のノイズフィルタ付き導電路は、
前記フィルタ素子が、螺旋巻き部を有し且つ前記螺旋巻き部の軸線を前記端末部と略平行に向けたコイルを含んでおり、
前記螺旋巻き部の両端から延出した接続端部が、前記螺旋巻き部の軸線と略平行をなし且つ軸線と直交する投影面上において前記螺旋巻き部の形成範囲内に配された形態で前記端子金具に接続されていてもよい。
この構成によれば、端子金具と端末部のほぼ全体が、螺旋巻き部の形成範囲内に収まるので、コイルによる局部的な膨らみが小さく抑えられる。
【0010】
(2)本発明のノイズフィルタ付き導電路は、(1)において、
前記スペースが、前記端子金具の外径と前記螺旋巻き部の外径との寸法差に起因して形成されていてもよい。
この構成によれば、コンデンサの存在に起因する局部的な膨らみの発生を回避できる。
【0011】
(3)本発明のノイズフィルタ付き導電路は、
前記端子金具に形成され、前記端末部にカシメ付けによって固着される圧着部と、
前記コンデンサから延出したリード線とを備え、
前記リード線が、前記端末部と共に前記圧着部に固着されていてもよい。
この構成によれば、リード線と端子金具との接続を、溶接によらずに行うことができる。
【0012】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を
図1を参照して説明する。本実施例のノイズフィルタ付き導電路Nは、導電路本体10と、導電路本体10の途中に接続したノイズフィルタ20と、モールド樹脂35とを備えて構成され、全体として細長く延びた形態となっている。ノイズフィルタ付き導電路Nは、ノイズフィルタ20を構成するアース部材29を介して自動車のボディ等の接地部Bに接続されるようになっている。
【0013】
導電路本体10は、2本の電線11と一対の端子金具15とを備えて構成されている。電線11は、導体12の外周を絶縁被覆13で包囲した周知形態のものである。各電線11の端末部14は、絶縁被覆13が除去されて導体12を露出させた状態となっている。両電線11の端末部14は、互いにその軸線14A同士を同軸状とし、且つ互いに軸線14A方向に間隔を空けて対向する位置関係で配置されている。
【0014】
端子金具15は、全体として端末部14の軸線14Aに沿った方向に細長く、オープンバレル状の圧着部16と、板状溶接部19とを一体に成形した形態である。圧着部16は、オープンバレル状のインシュレーションバレル部17と、オープンバレル状のワイヤバレル部18とから構成されている。板状溶接部19は、圧着部16の基板部の先端部から片持ち状に延出した形態であり、板面が段差状をなすように屈曲した形状をなしている。圧着部16の基板部は、電線11の外周面に接触しているため、電線11の軸線14Aに対し径方向(
図1における上方)へ偏心した位置にある。しかし、板状溶接部19は段差状に屈曲しているので、板状溶接部19の延出端部(後述するコイル21の接続端部23が半田24によって溶接される位置)は、径方向において軸線14Aに近い位置又は軸線14Aと重なるように位置する。
【0015】
電線11の端末部14と端子金具15の圧着部16は、導通可能に、且つ軸線14A,16A同士が同軸状をなすように固着されている。即ち、インシュレーションバレル部17には、端末部14のうち絶縁被覆13の端部が圧着されている。このインシュレーションバレル部17の圧着工程では、同時に、端末部14のうち露出している導体12がワイヤバレル部18に圧着される。
【0016】
上記のようにして一対の端子金具15は、2本の電線11の端末部14に個別に接続されている。そして、一対の端子金具15は、互いに圧着部16の軸線16A同士が同軸状をなし、且つ双方の板状溶接部19同士が互いに軸線16A方向に間隔を空けて対向する位置関係で配置されている。軸線16A方向において一対の端子金具15の間に空けられた空間には、後述するコイル21が収容されている。
【0017】
ノイズフィルタ20は、1つのコイル21と、2つのコンデンサ25と、1つのアース部材29とを備えて構成されている。コイル21とコンデンサ25は、π型フィルタを構成している。コイル21は、金属線材を螺旋巻きした形態の螺旋巻き部22と、螺旋巻き部22の両端から延出する一対の接続端部23とから構成されている。コイル21は、螺旋巻き部22の軸線22Aが端末部14及び圧着部16の軸線14A,16Aと平行をなすように配されている。螺旋巻き部22は、端末部14の軸線14A方向において一対の端子金具15(端末部14)の間に位置するように配置されている。また、螺旋巻き部22の軸線22Aは、端末部14及び圧着部16の軸線14A,16Aとほぼ同軸状(つまり、ほぼ平行)をなしている。
【0018】
一対の接続端部23は、螺旋巻き部22の軸線22Aと平行に延出している。この一対の接続端部23は、板状溶接部19に対し、半田24を用いた溶接により個別に接続されている。つまり、接続端部23は、軸線22Aと直交する投影面(図示省略)上において螺旋巻き部22の円形の形成範囲内に配された形態で端子金具15に接続されている。そして、螺旋巻き部22は、端末部14及び圧着部16の軸線14A,16Aと直交する投影面上において、端末部14及び圧着部16の外周よりも外側の領域を占めるように位置する。以上のようにして、2本の電線11の端末部14と、一対の端子金具15と、コイル21が、端末部14の軸線14Aに沿うようにほぼ一列に並ぶように配置されている。
【0019】
コンデンサ25は、コイル21の比べて充分に小さいコンデンサ本体26と、コンデンサ本体26の両端から延出する一対のリード線27とを備えて構成されている。コンデンサ本体26は、ワイヤバレル部18の外面に近傍に配されている。つまり、端末部14及び圧着部16の軸線14A,16Aと平行な方向において、ワイヤバレル部18とコンデンサ本体26がほぼ同じ位置に配置されている。つまり、コンデンサ本体26は、軸線14A,16A方向においてコイル21とは異なる領域に配置されている。
【0020】
一方のリード線27は、電線11の導体12と共に、ワイヤバレル部18に圧着されている。リード線27は、導体12を構成する金属素線と線径が大きく相違しないので、圧着部16との接触信頼性に優れている。また、ワイヤバレル部18におけるカシメ強度も充分高く確保されている。他方のリード線27は、後述するアース部材29に半田28を用いた溶接によって接続されている。
【0021】
アース部材29は、金属製の板状本体30と、合成樹脂製のスペーサ31と、合成樹脂製の一対のホルダ32とを備えて構成されている。板状本体30は、端末部14及び螺旋巻き部22の軸線14A,22Aと平行な方向に細長く平板状に延びた形態である。板状本体30の長さ方向における一方の(
図1における右側)の端部は、ボルト34によってアース部材29を接地部Bに取り付けるためのブラケット33となっている。端末部14及び螺旋巻き部22の軸線14A,22Aと平行な方向において、板状本体30の形成範囲は、一対の端子金具15の全体とコイル21の全体を含む領域に亘っている。つまり、板状本体30の一方の端部は、一方の端子金具15と対応するように位置し、板状本体30の他方の端部は、他方の端子金具15と対応するように位置する。
【0022】
板状本体30は、螺旋巻き部22の外周に沿うように配されているの。スペーサ31は、板状本体30の長さ方向における略中央部に配され、インサート成形等によって板状本体30と一体化されている。スペーサ31は、板状本体30と螺旋巻き部22との間に介在することにより、螺旋巻き部22と板状本体30との間を電気的に絶縁している。また、スペーサ31は、螺旋巻き部22の外周を当接させることで、コイル21をアース部材29に対して位置決めしている。
【0023】
一対のホルダ32は、板状本体30の両端部に配され、インサート成形等によって板状本体30と一体化されている。各ホルダ32には、夫々、コンデンサ本体26が収容されている。このホルダ32により、コンデンサ25がアース部材29に対して位置決めされている。また、板状本体30と端子金具15との間には、圧着部16の外径と螺旋巻き部22の外径との寸法差に起因するスペースSが形成されているのであるが、このスペースS内に、ホルダ32とコンデンサ25が配置されている。
【0024】
次に、本実施例のノイズフィルタ付き導電路Nの製造工程を説明する。まず、端子金具15の圧着部16に、電線11の端末部14とコンデンサ25のリード線27を固着する。このとき、圧着部16に接続するリード線27を真っ直ぐ伸ばした状態にして、コンデンサ本体26が板状溶接部19よりも先方に位置するようにしておく。この後、端子金具15に圧着したリード線27を略L字形に曲げ(図示省略)、コンデンサ本体26をアース部材29のホルダ32に取り付ける。すると、端子金具15と端末部14が、板状本体30に対して略直角をなして離間した位置へ退避した状態となる。この状態で、他方のリード線27を板状本体30に半田28により固着する。
【0025】
リード線27をアース部材29に接続した後、端子金具15に接続されている側のリード線27を略U字形に曲げ、
図1に示すように、ワイヤバレル部18をコンデンサ本体26に接近した位置へ変位させる。すると、各電線11の端末部14の軸線14Aが板状本体30と略平行を向き、2つの端末部14が、その軸線14Aを互いに同軸状に向け、且つ互いに間隔を空けて対向する位置関係となる。この状態で、コイル21の螺旋巻き部22をスペーサ31に当接するようにセットするとともに、一対の接続端部23を板状溶接部19と並ぶように配置する。そして、接続端部23と板状溶接部19を半田24により固着する。
【0026】
以上のようにして2本の電線11の端末部14と一対の端子金具15と2つのコンデンサ25と1つのコイル21とアース部材29を組み付けたら、これを金型(図示省略)にセットする。そして金型内にモールド樹脂35を充填すると、モールド樹脂35内に2本の電線11の端末部14と一対の端子金具15と2つのコンデンサ25と1つのコイル21が埋設されるとともに、アース部材29がモールド樹脂35と一体化される。以上により、ノイズフィルタ付き導電路Nの製造工程が完了する。
【0027】
本実施例のノイズフィルタ付き導電路Nは、端末部14同士が互いに同軸状をなし且つ軸線14A方向に間隔を空けて対向するように配索される2本の電線11と、2本の電線11の端末部14に接続された一対の端子金具15と、端子金具15に接続されたフィルタ素子としてのコイル21とを備える。コイル21の螺旋巻き部22(フィルタ素子の少なくとも一部)は、一対の端子金具15の間に位置し、端末部14の軸線14Aと交差する方向において端末部14及び端子金具15と重なる形態となっている。
【0028】
本実施例のノイズフィルタ付き導電路Nは、コイル21(フィルタ素子)が端子金具15や端末部14よりも大径であるため、その寸法差によって部分的に外径が導電路本体10よりも大きくなる大径部が形成されることは避けられない。しかし、コイル21の少なくとも一部(螺旋巻き部22の中空部)が、一対の端子金具15の間に位置し、且つ端末部14の軸線14Aと交差する方向(軸線14Aと直交する投影面上)において端末部14及び端子金具15と重なる形態となっている。したがって、コイル21による局部的な膨らみを小さく抑えることができる。
【0029】
また、フィルタ素子は、螺旋巻き部22を有し且つ螺旋巻き部22の軸線22Aを端末部14と略平行に向けたコイル21を含んでおり、螺旋巻き部22の両端から延出した接続端部23が、螺旋巻き部22の軸線22Aと略平行をなし且つ軸線22Aと直交する投影面上において螺旋巻き部22の形成範囲内に配された形態で端子金具15に接続されている。そして、接続端部23が接続される板状溶接部19の延出端部は、径方向において電線11の軸線14Aに近い位置又は軸線14Aと重なるように位置している。つまり、コイルの軸線22Aと電線11の軸線14Aとはほぼ同軸状に位置している。この構成によれば、端子金具15と端末部14のほぼ全体が、螺旋巻き部22の形成範囲内に収まるので、コイル21による局部的な膨らみが小さく抑えられる。
【0030】
また、ノイズフィルタ付き導電路Nは、接地部Bに接続されるアース部材29と、端子金具15とアース部材29に接続されるコンデンサ25とを含んでいる。そして、端末部14の軸線14Aと交差する方向において、コンデンサ25が、端末部14の軸線14Aとアース部材29との間のスペースS内に収容されている。この構成によれば、コンデンサ25の存在に起因する局部的な膨らみの発生を回避できる。
【0031】
また、端子金具15には、端末部14にカシメ付けによって固着される圧着部16が形成され、この圧着部16には、コンデンサ25のリード線27が、端末部14と共に圧着部16に固着されている。したがって、リード線27と端子金具15との接続を、溶接によらずに行うことができる。
【0032】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、ノイズフィルタを構成するフィルタ素子としてコイルを用いたが、ノイズフィルタはコイルを含まなくてもよい。
(2)上記実施例では、ノイズフィルタを構成するフィルタ素子としてコンデンサを用いたが、ノイズフィルタはコンデンサを含まなくてもよい。
(3)上記実施例では、ノイズフィルタが1つのコイルと2つのコンデンサとからなるπ型フィルタであったが、ノイズフィルタは、1つのコイルと1つのコンデンサからなるL型フィルタや、2つのコイルと1つのコンデンサとからなるT型フィルタであってもよい。
(4)上記実施例では、ノイズフィルタがコイルとコンデンサとを含んで構成されているが、ノイズフィルタは、コイルを含まず、コンデンサと抵抗とを直列接続したものであってもよい。
(5)上記実施例では、樹脂モールドによってフィルタ素子とアース部材と端子金具を一体化したが、フィルタ素子とアース部材と端子金具を一体化する手段としては、粘着テープを巻き付ける方法や、熱収縮チューブを熱収縮させる方法でも良い。
(6)上記実施例では、アース部材を単一部品としたが、アース部材を2つのアース構成部品によって構成し、フィルタ素子及び端子金具と一体化させた一方のアース構成部品と、接地部に固定した他方のアース構成部品とを接続してもよい。
(7)上記実施例では、コンデンサのリード線と端子金具を圧着によって接続したが、リード線と端子金具は溶接によって接続してもよい。