特許第6361930号(P6361930)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6361930廃棄物ガス化溶融装置及び廃棄物ガス化溶融方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6361930
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】廃棄物ガス化溶融装置及び廃棄物ガス化溶融方法
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/24 20060101AFI20180712BHJP
   F23G 5/50 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   F23G5/24 BZAB
   F23G5/50 H
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-68215(P2015-68215)
(22)【出願日】2015年3月30日
(65)【公開番号】特開2016-188716(P2016-188716A)
(43)【公開日】2016年11月4日
【審査請求日】2017年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084180
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】奥山 契一
(72)【発明者】
【氏名】堀内 聡
(72)【発明者】
【氏名】野上 有佳子
(72)【発明者】
【氏名】秋山 肇
(72)【発明者】
【氏名】下村 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】内山 武
【審査官】 佐々木 訓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−120916(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/157466(WO,A1)
【文献】 特開2014−234968(JP,A)
【文献】 特開平9−60830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/24
F23G 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉にて廃棄物を熱分解、ガス化、燃焼し、灰分を溶融する廃棄物ガス化溶融装置において、
廃棄物ガス化溶融炉に石炭コークスを供給する石炭コークス供給装置と、石油コークスを供給する石油コークス供給装置とを有し、
石油コークス供給量P(kg/h)が、石油コークスを供給せず石炭コークスのみを供給する操業における石炭コークス供給量Q(kg/h)に対して、次の(1)式で表される石油コークスの炉内残留小球量率A(wt%)を10以下とするように設定されていることを特徴とする廃棄物ガス化溶融装置。
A=P×Rs/Q………………………………………(1)
ここで、Rs(wt%)は算出残留小球率であって、石油コークスのうち、温度1100℃のもとでCOガスとの反応により脆化し細粒化した分を除去した後に目開き2.8mm篩上物として残留する小球の比率であって、算出残留小球率Rとして、石油コークスの反応性指数CRI(%)、目開き2.8mm篩を用いた熱間反応後強度CSR2.8(%)を用いて次の(2)式で表される。
=(100−CRI)×CSR2.8/100……(2)
【請求項2】
シャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉にて廃棄物を熱分解、ガス化、燃焼し、灰分を溶融する廃棄物ガス化溶融装置において、
廃棄物ガス化溶融炉に石炭コークスを供給する石炭コークス供給装置と、石油コークスを供給する石油コークス供給装置とを有し、
石油コークス供給量P(kg/h)が、石油コークスと石炭コークスとを供給する操業における石炭コークス供給量Q(kg/h)に対して、次の(3)式で表される石油コークスのコークスベッド内残留小球量率B(wt%)を15以下とするように設定されていることを特徴とする廃棄物ガス化溶融装置。
B=P×Rs/(Q+P×Rs/100)………(3)
ここで、Rs(wt%)は算出残留小球率であって、石油コークスのうち、温度1100℃のもとでCOガスとの反応により脆化し細粒化した分を除去した後に目開き2.8mm篩上物として残留する小球の比率であって、算出残留小球率Rとして、石油コークスの反応性指数CRI(%)、目開き2.8mm篩を用いた熱間反応後強度CSR2.8(%)を用いて次の(4)式で表される。
=(100−CRI)×CSR2.8/100…(4)
【請求項3】
シャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉にて廃棄物を熱分解、ガス化、燃焼し、灰分を溶融する廃棄物ガス化溶融方法において、
廃棄物ガス化溶融炉に石炭コークスを供給するとともに、石油コークスを供給し、
石油コークス供給量P(kg/h)を、石油コークスを供給せず石炭コークスのみを供給する操業における石炭コークス供給量Q(kg/h)に対して、次の(1)式で表される石油コークスの炉内残留小球量率A(wt%
)を10以下とするように設定することを特徴とする廃棄物ガス化溶融方法。
A=P×Rs/Q………………………………………(1)
ここで、Rs(wt%)は算出残留小球率であって、石油コークスのうち、温度1100℃のもとでCOガスとの反応により脆化し細粒化した分を除去した後に目開き2.8mm篩上物として残留する小球の比率であって、算出残留小球率Rとして、石油コークスの反応性指数CRI(%)、目開き2.8mm篩を用いた熱間反応後強度CSR2.8(%)を用いて次の(2)式で表される。
=(100−CRI)×CSR2.8/100……(2)
【請求項4】
シャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉にて廃棄物を熱分解、ガス化、燃焼し、灰分を溶融する廃棄物ガス化溶融方法において、
廃棄物ガス化溶融炉に石炭コークスを供給するとともに、石油コークスを供給し、
石油コークス供給量P(kg/h)を、石油コークスと石炭コークスとを供給する操業における石炭コークス供給量Q(kg/h)に対して、次の(3)式で表される石油コークスのコークスベッド内残留小球量率B(wt%)を15以下とするように設定することを特徴とする廃棄物ガス化溶融方法。
B=P×Rs/(Q+P×Rs/100)………(3)
ここで、Rs(wt%)は算出残留小球率であって、石油コークスのうち、温度1100℃のもとでCOガスとの反応により脆化し細粒化した熱間反応後強度CSR2.8(%)を用いて次の(4)式で表される。
=(100−CRI)×CSR2.8/100…(4)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物をシャフト炉式ガス化溶融炉内で熱分解、燃焼し、灰分を溶融する廃棄物ガス化溶融装置及び廃棄物ガス化溶融方法に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ごみやシュレッダーダストなどの廃棄物を処理する技術として、廃棄物を熱分解、燃焼して、灰分を溶融しスラグにして排出する廃棄物溶融処理が知られている。
【0003】
この処理方法は、廃棄物を熱分解してガス化することによりその燃焼熱を回収することができるとともに、灰分を溶融してスラグとして排出した後に、埋立処分などで最終処分される量を減容することができる利点を有している。このような溶融処理方法には幾つかの方式があるが、その一つとして、シャフト炉式廃棄物ガス化溶融炉による方法がある。
【0004】
このシャフト炉式廃棄物ガス化溶融炉は、例えば、炉下部に堆積させたコークスを燃焼させ、この高温のコークス上へ廃棄物を投入して、熱分解及び部分酸化させてガス化するとともに灰分を溶融してスラグにする処理を行なう炉である(特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1のシャフト炉式廃棄物ガス化溶融炉においては、竪型筒状をなす炉体の内部が大別して縦(上下)方向で3つの領域に区分される。すなわち、炉下部にコークスを堆積させたコークス床を有する高温燃焼帯が形成され、この高温燃焼帯の上に廃棄物層が形成され、炉上部にて該廃棄物層の上方に大きな空間のフリーボード部が形成されている。
【0006】
かかる廃棄物ガス化溶融炉では、上記3つの領域のそれぞれでは酸素含有ガスの炉内への吹込みが行われる。炉下部における高温燃焼帯には主羽口が設けられていて、酸素富化空気が吹き込まれ、高温燃焼帯では投入されて堆積されたコークス床のコークスが燃焼して、灰分を溶融する溶融熱源となっている。また、廃棄物層には副羽口が設けられ、空気が吹き込まれ、投入されて堆積された廃棄物を緩やかに流動させると共に、廃棄物を熱分解及び部分酸化させる。また、フリーボード部には三段羽口が設けられ、空気が吹き込まれ、廃棄物が熱分解されて生成した熱分解ガス(可燃性ガス)の一部を部分燃焼させて内部を所定温度に維持するようになっている。
【0007】
このようにシャフト炉式廃棄物ガス化溶融炉は、一つの炉で、廃棄物をその炉内での降下に伴い熱分解ガス化処理と溶融処理の両方を行うことのできる設備である。投入された廃棄物は熱分解され、ガスと灰分が生成される。炉下部では、主羽口からの酸素富化空気の送風によりコークス床のコークスが燃焼され高温燃焼帯が形成され、廃棄物の灰分が溶融されスラグとメタルとして排出される。コークス床はコークス同士間に生ずる空隙で、主羽口からの酸素富化空気やコークス燃焼により発生した高温ガスを上昇通ガスさせるとともに、溶融したスラグとメタルを降下通液させる高温火格子としても機能している。高温燃焼帯のコークス燃焼により発生した高温ガスが高温燃焼帯の上に形成された廃棄物層の廃棄物を加熱し、副羽口からの空気の送風により廃棄物は熱分解され、この熱分解により発生した可燃性ガスを含むガスは廃棄物層内を上昇し、フリーボード部を経て、炉内上部に設けられた排出口より、炉外の二次燃焼室へ排出される。ガスは可燃ガスを多量に含んでいて二次燃焼室で燃焼され、ボイラで熱回収され蒸気を発生させその蒸気が発電等に用いられる。ボイラから排出されたガスは、サイクロンで比較的粗いダストが除去され、さらに、減温装置で冷却され、有害物質除去剤との反応により有害ガスが除去され、集塵機で除塵処理されるなど排ガス処理された後、煙突から大気に放散される。
【0008】
シャフト炉式ガス化溶融炉に使用されるコークスとしては、例えば製鉄用コークスや鋳物用コークスに使用される緻密堅牢で高温強度が大きく、低反応性であり高温下でも塊状を保持する石炭コークスが、コークス同士の間隙を維持するため高温火格子として好適であり使用されている。しかし、このような石炭コークスは高価であり、運転費用が嵩むという問題がある。特許文献2には、シャフト炉式廃棄物ガス化溶融炉において石炭コークスの一部の代替えとして、石油精製の際に生ずる石油コークスを使用するガス化溶融炉の操業方法について記載されており、高価な石炭コークスの代わりに安価な石油コークスを用いることにより運転費用の削減が可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平09−060830
【特許文献2】特開2003−120916
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
廃棄物ガス化溶融炉の運転費を低減することを目的として、廃棄物溶融炉における石炭
コークスの使用量を低減するべく、特許文献2のように石炭コークスの一部の代替えとして石油コークスを利用するとしても、次のような問題がある。すなわち、石油コークスは石炭コークスに比べて高温強度が低いため、炉内の高温下で細粒化してしまい、当初から存在している細粒の石油コークスとともに、高温燃焼帯のコークス床の空隙を閉塞し、コークスに求められる高温火格子としての機能を充足することができず、酸素富化空気と燃焼ガスの通気と、溶融スラグの通液が十分にできなくなり、シャフト炉式廃棄物ガス化溶融炉の操業に支障を及ぼす事態がおこるという問題がある。そこで、特許文献2では、供給される石油コークスは30mm以下のものを除去することが好ましい、としている。
【0011】
高温燃焼帯のコークス床において酸素富化空気と燃焼ガスの通気が損なわれると、酸素富化空気や燃焼ガスが均一に上昇することができなくなり、廃棄物の熱分解やコークスの燃焼が十分に行われない箇所が生じ、炉内状況が不均一になる。すなわち、コークス床の空隙が閉塞され酸素富化空気や燃焼ガスが十分に供給されない箇所やその上部の十分なガス流れがなくなった廃棄物層では、廃棄物の熱分解やコークスの燃焼が不充分となり、一方、コークス床の空隙の閉塞がなく酸素富化空気や燃焼ガスが十分に供給される箇所では、廃棄物の熱分解やコークスの燃焼が盛んに行われることになり、炉内において廃棄物の熱分解やコークスの燃焼が不十分な箇所と盛んに行われる箇所が発生して局所的な偏りが生じ炉内状況が不均一になる。炉内状況が不均一になると、廃棄物の熱分解やコークスの燃焼が安定して行われ難くなり、また、炉内のガス流れが不均一になり突発的な吹き抜けが生じるなど、廃棄物ガス化溶融炉の操業に支障を及ぼす、という問題がある。
【0012】
特許文献2にはこのような問題に対して、炉下部の通気性を監視するために主羽口から送風する酸素富化空気の圧力(主羽口送風圧力)を計測しながら、適正な炉内通気性を確保して操業に支障を及ぼさないように石油コークスと石炭コークスの投入比率を調節すること、さらに、主羽口送風圧に基づき算出される炉内通気抵抗係数が所定値を超えた場合に、石油コークスと石炭コークスの合計投入量に対し石炭コークスの投入比率を多くするように調節することが記載されている。
【0013】
しかしながら、特許文献2の上記の方法では、常時、主羽口送風圧を計測して炉内通気抵抗を算出し、その算出値に対応して石油コークスと石炭コークスの投入比率を調整せねばならず、常時、炉下部の通気性を監視して炉内状況を把握する必要がある。また、供給する石油コークスの性状が変った際に石油コークスの適切な供給量を定めることが容易ではなく、操業に支障が生じることがある。
【0014】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、廃棄物ガス化溶融炉における石炭コークスの一部の代替として石油コークスを使用する際に、運転中に炉下部の通気性を監視して炉内状況を把握しなくとも、石油コークスの適切な供給を行うことができ、廃棄物ガス化溶融炉の運転費を低減し、かつ安定した操業ができる廃棄物ガス化溶融装置及び廃棄物ガス化溶融方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によると、廃棄物ガス化溶融装置に関しては次の第一発明及び第二発明により、廃棄物ガス化溶融方法に関しては第三発明及び第四発明により、次のように構成される。
【0016】
[廃棄物ガス化溶融装置]
<第一発明>
シャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉にて廃棄物を熱分解、ガス化、燃焼し、灰分を溶融する廃棄物ガス化溶融装置において、
廃棄物ガス化溶融炉に石炭コークスを供給する石炭コークス供給装置と、石油コークスを供給する石油コークス供給装置とを有し、
石油コークス供給量P(kg/h)が、石油コークスを供給せず石炭コークスのみを供給する操業における石炭コークス供給量Q(kg/h)に対して、次の(1)式で表される石油コークスの炉内残留小球量率A(wt%)を10以下とするように設定されていることを特徴とする廃棄物ガス化溶融装置。
A=P×Rs/Q………………………………………(1)
【0017】
ここで、Rs(wt%)は算出残留小球率であって、石油コークスを温度1100℃でCOガスと2時間反応させI型ドラムで回転処理し、脆化し細粒化した分を目開き2.8mm篩により篩い分け篩上に残る小球の重量比率であり、石油コークスの反応性指数CRI(%)、目開き2.8mm篩を用いた熱間反応後強度CSR2.8(%)を用いて次の(2)式で表される。
=(100−CRI)×CSR2.8/100……(2)
【0018】
<第二発明>
シャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉にて廃棄物を熱分解、ガス化、燃焼し、灰分を溶融する廃棄物ガス化溶融装置において、
廃棄物ガス化溶融炉に石炭コークスを供給する石炭コークス供給装置と、石油コークスを供給する石油コークス供給装置とを有し、
石油コークス供給量P(kg/h)が、石油コークスと石炭コークスとを供給する操業における石炭コークス供給量Q(kg/h)に対して、次の(3)式で表される石油コークスのコークスベッド内残留小球量率B(wt%)を15以下とするように設定されていることを特徴とする廃棄物ガス化溶融装置。
B=P×Rs/(Q+P×Rs/100)………(3)
【0019】
ここで、Rs(wt%)は算出残留小球率であって、石油コークスを温度1100℃でCOガスと2時間反応させI型ドラムで回転処理し、脆化し細粒化した分を目開き2.8mm篩により篩い分け篩上に残る小球の重量比率であり、石油コークスの反応性指数CRI(%)、目開き2.8mm篩を用いた熱間反応後強度CSR2.8(%)を用いて次の(4)式で表される。
=(100−CRI)×CSR2.8/100…(4)
【0020】
[廃棄物ガス化溶融方法]
<第三発明>
シャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉にて廃棄物を熱分解、ガス化、燃焼し、灰分を溶融する廃棄物ガス化溶融方法において、
廃棄物ガス化溶融炉に石炭コークスを供給するとともに、石油コークスを供給し、
石油コークス供給量P(kg/h)を、石油コークスを供給せず石炭コークスのみを供給する操業における石炭コークス供給量Q(kg/h)に対して、次の(1)式で表される石油コークスの炉内残留小球量率A(wt%)を10以下とするように設定することを特徴とする廃棄物ガス化溶融方法。
A=P×Rs/Q………………………………………(1)
【0021】
ここで、Rs(wt%)は算出残留小球率であって、石油コークスを温度1100℃でCOガスと2時間反応させI型ドラムで回転処理し、脆化し細粒化した分を目開き2.8mm篩により篩い分け篩上に残る小球の重量比率であり、石油コークスの反応性指数CRI(%)、目開き2.8mm篩を用いた熱間反応後強度CSR2.8(%)を用いて次の(2)式で表される。
=(100−CRI)×CSR2.8/100……(2)
【0022】
<第四発明>
シャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉にて廃棄物を熱分解、ガス化、燃焼し、灰分を溶融する廃棄物ガス化溶融方法において、
廃棄物ガス化溶融炉に石炭コークスを供給するとともに、石油コークスを供給し、
石油コークス供給量P(kg/h)を、石油コークスと石炭コークスとを供給する操業における石炭コークス供給量Q(kg/h)に対して、次の(3)式で表される石油コークスのコークスベッド内残留小球量率B(wt%)を15以下とするように設定することを特徴とする廃棄物ガス化溶融方法。
B=P×Rs/(Q+P×Rs/100)………(3)
【0023】
ここで、Rs(wt%)は算出残留小球率であって、石油コークスを温度1100℃でCOガスと2時間反応させI型ドラムで回転処理し、脆化し細粒化した分を目開き2.8mm篩により篩い分け篩上に残る小球の重量比率であり、石油コークスの反応性指数CRI(%)、目開き2.8mm篩を用いた熱間反応後強度CSR2.8(%)を用いて次の(4)式で表される。
=(100−CRI)×CSR2.8/100…(4)
【0024】
[発明に到った経緯]
上述の<第一発明>ないし<第四発明>に至った経緯は、次のごとくである。
【0025】
石油コークスは製油所で石油精製される際の副産物であり、組成の制御はされていない。石油コークスは、
(i)直径3mm程度の小球が相互に軽く融着したもの、
(ii)多孔質の塊状物、
(iii)上記(i),(ii)が混合した塊状物、
に大別できる。
【0026】
上記(i)は低荷重で容易に融着が解け解砕するが、解砕後の直径3mm程度の小球は硬くて粉砕されにくく、また1000℃以上の高温下でも、COやOとの反応性は比較的低く残存する傾向にある。一方、(ii)は低荷重で容易に粉砕されないが、1000℃以上の高温下でCOと反応し吸熱しながらガス化し、またOにより燃焼して速やかに消失する。
【0027】
廃棄物ガス化溶融炉に使用する石炭コークスを削減するために、石炭コークスの一部の代替として石油コークスを供給する際、直径20mm以上、より好ましくは30mm以上の塊状の石油コークスを用いると、石油コークスは、廃棄物層を速やかに下降通過し、下降途中でガス化されて消失することなくコークスベッドに到達する。コークスベッドに到達した石油コークスのうち、直径3mm程度の小球で構成される部分は高温下で崩壊する。石油コークスの供給量が少ない場合には、コークスベッドに到達した石油コークスは主羽口から吹き込む酸素富化空気により速やかに燃焼して灰分の溶融熱を発生させることができるため、供給された石油コークスはその等重量の石炭コークスとほぼ等価の熱量を発生することができ、石油コークス供給量とほぼ同等量の石炭コークス量と置換することが可能であり、石炭コークス使用量の削減に効果的である。石油コークスのうち直径3mm程度の小球もコークスベッド上部で燃焼し消失するため、コークスベッド内に残留することはないため問題にならない。
【0028】
しかし、直径30mm以上の塊状の石油コークスを用いても、石油コークスの供給量が増加すると、塊状物と混在している小球の量も多くなり、この小球は高温下でも反応性が比較的低くガス化溶融炉内で消失せず残存するため、コークスベッド下部にまで到達する量が無視できなくなる結果、コークスベッド内の空隙を塞ぎガスや溶融スラグの流れを阻害する。また小球群として検討した場合には小球群は単位体積当たりの表面積が大きいため、小球群はコークスベッド内の酸素を速やかに消費しコークスベッド内の燃焼領域を縮小させた後、COとの吸熱反応を生じ、コークスベッドの温度を低下させる。コークスベッドの温度が低下すると、灰分の溶融が不十分となったり、溶融スラグが十分に加熱されず流動性が低下して、前述したコークスベッド内の空隙閉塞とあいまって、溶融スラグ排出が滞りガス化溶融炉の操業に支障が生じることになる。
【0029】
このように石炭コークス使用量の削減のため石炭コークスの一部の代替として石油コークスを供給する際、石油コークスの供給量が増加すると、含まれる小球によってガス化溶融炉の操業への悪影響が生じることに着目し、炉内に残留する小球量の比率を適切な範囲内とするように石油コークス供給量を設定することにより、ガス化溶融炉の操業に支障を生じさせずに石油コークスの供給量をできるだけ多くして、石炭コークスの代替として用い廃棄物ガス化溶融炉の運転費を低減し、かつ安定した操業ができることを見い出し、本発明に到った。そして、石油コークスの性状から、高温下で残留する小球量の比率を算出残留小球率として求める方法を創出し、使用する石油コークスについてその性状を予め計測しておき、その性状から算出残留小球率を算出して導き、石油コークス供給量に算出残留小球率を乗じて炉内に残留する小球量を求め、この炉内残留小球量の石炭コークス供給量に対する比率を炉内残留小球量率と定義し、この炉内残留小球量率を適切な範囲とするように石油コークス供給量を設定することとする本発明を導き出した。
【0030】
本発明では、石炭コークスの一部の代替として使用できる石油コークス供給量を設定する際、事前に測定できる石油コークスの性状諸元を用いることで、ガス化溶融炉の操業に支障を生じさせないような石油コークス供給量の上限値を実験にもとづき規定した。
【0031】
石油コークスを1100℃でCOと2時間反応させると、小球部分の減少はわずかである。一方、多孔質塊状物部分の多くはガス化され、ガス化されて残った部分は脆くなっている。これをI型ドラムに投入し回転させると、脆くなった部分は細粒化され、目開き2.8mm篩により篩分けを行うとほぼ小球のみが2.8mm篩上に残留する。このような高温下での小球と多孔質塊状物の反応挙動に基づき、高温下で残留する小球量の比率を算出残留小球率として、以下のように求める算出方法を定めた。
【0032】
石油コークスに含まれる、高温下での反応後も残留する小球量の比率を算出残留小球率Rs(wt%)と定義付けた。すなわち、算出残留小球率Rs(wt%)は、石油コークスを温度1100℃でCOガスと2時間反応させI型ドラムで回転処理し、脆化し細粒化した分を目開き2.8mm篩により篩い分け篩上に残る小球の重量比率であり、石油コークスの反応性指数CRI(%)、目開き2.8mm篩を用いた熱間反応後強度CSR2.8(%)を用いて次の(1)式のごとく算出することとした。ここで、CRIはISO18894により規定される反応性指数であって、1100℃でCOと反応させた後の重量減少率であり、CSRは熱間反応後強度指標であり、一般的に用いられる10mm篩上率ではなく、本発明のために2.8mm篩上率(CSR2.8(%))とした。
Rs=(100−CRI)×CSR2.8/100 (1)
【0033】
ガス化溶融炉の安定した運転には、小球の炉内残存量を制限することが必要であり、炉内に残留する小球量の比率を適切な範囲内とするように石油コークス供給量を設定する。主羽口からコークスベッドに吹き込む酸素富化空気により、所定量の小球を消失させることができるため、小球の消失挙動に見合い許容できる小球の炉内残存量の上限が定められる。石油コークス供給量P(kg/h)に算出残留小球率Rs(wt%)を乗じて炉内に残留する小球量を求め、この炉内残留小球量は炉規模により変化するため、石油コークスを供給せず石炭コークスのみを供給する操業における石炭コークス供給量Q(kg/h)を基準として用いた炉内残留小球量の比率を炉内残留小球量率A(wt%)と定義し、この炉内残留小球量率A(wt%)を適切な範囲とするように石油コークス供給量を設定する。このような関係を次の(2)式のごとく定める。この炉内残留小球量率はガス化溶融炉が消費できる小球量を基準にした指標である。
A=P×Rs/Q(2)
【0034】
供給した石油コークスの発熱量の80%以上の発熱量に相当する石炭コークス量を削減する運転を行う場合、炉内残留小球量率A(wt%)を10以下とするのが好ましい。石油コークス供給量Pを、石油コークスを供給せず石炭コークスのみを供給する操業における石炭コークス供給量Qに対して、炉内残留小球量率A(wt%)を10以下とするように設定する。炉内残留小球量率A(wt%)が10を超えるような多くの石油コークスを供給すると、石油コークスの炉内残存量が多くなりコークスベッド内に有効に熱源とならない部分が増加するため好ましくない。溶融スラグ排出が滞りガス化溶融炉の操業に支障が生じる。
【0035】
このように炉内に残留する小球量の比率を適切な範囲内とするように石油コークス供給量を設定することにより、ガス化溶融炉の操業に支障を生じさせずに石油コークスの供給量をできるだけ多くして、石炭コークスの代替として用い廃棄物ガス化溶融炉の運転費を低減し、かつ安定した操業ができる。
【0036】
石油コークスの価格が安価な場合、供給した石油コークスの発熱量に対して削減できる石炭コークスの発熱量の比率である置換効率が低下しても石油コークス供給量を増加させ、石炭コークス使用量を削減した方が廃棄物ガス化溶融炉の運転費を低減でき経済的な場合がある。この場合には、石油コークス供給量の上限を導く指標としてコークスベッド内に残留する小球量の比率であるコークスベッド内残留小球量率B(wt%)を用いる。
【0037】
ガス化溶融炉下部に形成されるコークスベッドが、石炭コークスと石油コークスのうち残留する小球とから構成されるとし、石油コークス供給量P(kg/h)に算出残留小球率Rs(wt%)を乗じてコークスベッド内に残留する小球量を求め、このコークスベッド内残留小球量と石油コークスと石炭コークスとを供給する操業における石炭コークス供給量Q(kg/h)との和であるコークスベッド量に対するコークスベッド内残留小球量の比率をコークスベッド内残留小球量率B(wt%)と定義し、このコークスベッド内残留小球量率B(wt%)を適切な範囲とするように石油コークス供給量を設定する。このような関係を次の(3)式のごとく定める。
B=P×Rs/(Q+P×Rs/100)………(3)
【0038】
コークスベッド内に残留小球が増加し、溶融スラグ排出に支障が生じることを避けるためには、コークスベッド内残留小球量率B(wt%)は15以下とすることが好ましい。石油コークス供給量Pを、石油コークスと石炭コークスとを供給する操業における石炭コークス供給量Qに対して、コークスベッド内残留小球量率B(wt%)を15以下とするように設定する。コークスベッド内残留小球量率B(wt%)が15を超えることになるほど石油コークス供給量を多くすると、コークスベッド内残留小球量が多くなり、溶融スラグ排出が滞りガス化溶融炉の操業に支障が生じる。
【0039】
このようにコークスベッド内残留小球量率B(wt%)を適切な範囲内とするように石油コークス供給量を設定することにより、ガス化溶融炉の操業に支障を生じさせずに石油コークスの供給量をできるだけ多くして、石炭コークスの代替として用い廃棄物ガス化溶融炉の運転費を低減し、かつ安定した操業ができる。
【0040】
以上のように、廃棄物ガス化溶融炉に供給しようとする石油コークスの性状であるCRI,CSR値を測定し、これらの性状値と石油コークス供給量とから導く炉内残留小球量率やコークスベッド内残留小球量率を適切な範囲とするように石油コークス供給量を設定することにより、安定した操業を確保しながら石炭コークスの一部を石油コークスに代替して運転コストを低減できる経済的な運転が実現できる。また、供給する石油コークスの性状が変化した場合にも迅速な対応が可能になる。また、予め石油コークスのCRI,CSR値を測定し把握することにより、石炭コークスを効果的に削減できる石油コークスの品種を選定できる。
【0041】
かくして、石油コークスの性状を事前に計測して、算出残留小球率Rsを求めておくことで、石油コークス供給量の適切な範囲を導く指標として、第一そして第三発明では、石油コークスの炉内での残留小球量の観点から炉内残留小球量率Aを規定し、第二そして第四発明では、石油コークスのコークスベッド内での残留小球量の観点からコークスベッド内残留小球量率Bを規定し、これらの指標に基づき石油コークス供給量の適切な範囲を求めるようにした。
【0042】
本発明では、石油コークスを炉内に投入し燃焼中に炉内の状況の観察、例えば、特許文献2のような実際の主羽口送風圧を計測したり、それにもとづき炉内通気抵抗を算出したりせずとも、事前に石油コークスについて性状を計測するだけで、石油コークスを許容最大限の供給量のもとに石炭コークスの一部に代えて使用でき、その結果、廃棄物ガス化溶融炉の運転コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明は、以上のように、シャフト炉式ガス化溶融炉で廃棄物を熱分解し、灰分を溶融処理する際に、廃棄物ガス化溶融炉に供給しようとする石油コークスの性状であるCRI,CSR値を測定し、これらの性状値と石油コークス供給量とから導く炉内残留小球量率やコークスベッド内残留小球量率を適切な範囲とするように石油コークス供給量を設定することにより、安定した操業を確保しながら石炭コークスの一部を石油コークスに代替して運転コストを低減できる経済的な運転が実現できる。また、供給する石油コークスの性状が変化した場合にも迅速な対応が可能になる。
【0044】
本発明では、石油コークスを炉内に投入し燃焼中に炉内の状況の観察、例えば、主羽口送風圧を計測したり、それにもとづき炉内通気抵抗を算出したりせずとも、事前に石油コークスについて性状を計測するだけで、石油コークスを許容最大限の供給量のもとに石炭コークスの一部に代えて使用でき、その結果、廃棄物ガス化溶融炉の運転コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明の一実施形態装置の概要構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、添付図面の図1にもとづき、本発明の実施形態を説明する。本実施形態の廃棄物ガス化溶融装置は、石炭コークスと石油コークスを燃料として供給し、主羽口から炉下部内へ酸素富化空気を吹き込むシャフト炉式廃棄物ガス化溶融炉と、その周辺装置とを備えているが、この廃棄物ガス化溶融装置についての説明に先立ち、これに用いられるシャフト炉式廃棄物ガス化溶融炉の概要構成を説明する。
【0047】
<シャフト炉式廃棄物ガス化溶融炉の概要構成>
図1に示される本発明の一実施形態のシャフト炉式廃棄物ガス化溶融炉には、該廃棄物ガス化溶融炉1の炉上部に、処理対象物としての廃棄物、燃料としての石炭コークス及び石油コークス、生成されるスラグの成分調整材としての石灰石を炉内へ投入するための投入口2が設けられ、また、上部側方には炉内のガスを炉外へ排出するためのガス排出口3が設けられている。また、廃棄物ガス化溶融炉1の炉底部には溶融スラグと溶融金属を排出するための出滓口4が設けられている。
【0048】
廃棄物ガス化溶融炉1の上方には、都市ごみ等の廃棄物、石炭コークス、石油コークス、石灰石をそれぞれ供給する廃棄物供給装置20、石炭コークス供給装置21、石油コークス供給装置22、石灰石供給装置23が配設されており、それぞれの供給装置21〜23から供給された石炭コークス、石油コークス、石灰石は搬送コンベア(図示せず)により搬送され、廃棄物供給装置20からの廃棄物とともに炉上部の上記投入口2から炉内に投入される。
【0049】
ガス排出口3には二次燃焼室10が接続して設けられており、廃棄物を熱分解して生成した可燃性ガスを燃焼する。該二次燃焼室10は、二次燃焼のための空気を吹き込む空気送風口11が設けられている。また、この二次燃焼室10には、該二次燃焼室10で可燃性ガスを燃焼した燃焼ガスから熱回収するボイラ12が隣接して設けられている。
【0050】
このようなシャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉1では、炉内の内部空間が縦方向で四つの領域に区分されていて、下方から、コークス充填層A、移動層B、ガス化層C、フリーボード部Dが形成される。
【0051】
かかる廃棄物ガス化溶融炉1では、上記コークス充填層A及びガス化層Cのそれぞれで、羽口が設けられ酸素含有ガスの炉内への吹込みが行われる。
【0052】
炉下部におけるコークス充填層Aには主羽口5が設けられていて、酸素富化空気が吹き込まれる。ガス化層Cには副羽口6が設けられ、空気が吹き込まれる。
【0053】
このような羽口を有するガス化溶融炉内に石炭コークスと石油コークスが投入されると、この石炭コークスと石油コークスが炉下部に下降し、主羽口5から吹き込まれる酸素富化空気により石炭コークスと石油コークスが燃焼し、二種の燃料が燃焼し発生する高温の燃焼ガスが廃棄物の熱分解の熱源となり、さらに、灰分を溶融する熱源となる。
【0054】
ガス化層Cには、副羽口6から空気が吹き込まれ、高温の燃焼ガスにより廃棄物が乾燥され、次いで熱分解及び部分酸化され可燃分がガス化される。
【0055】
また、フリーボード部Dでは、廃棄物が熱分解されて生成した熱分解ガス(可燃性ガス)の一部を部分燃焼させて炉内部を所定温度に維持する。
【0056】
酸素富化空気供給装置(図示せず)は、空気に酸素を混入して得られた酸素含有ガスとしての酸素富化空気を上記主羽口5の送気管に供給する。
【0057】
<石油コークス供給量の設定>
かかる本実施形態装置において、石油コークスの炉内残留小球量又はコークスベッド内残留小球量に着目し、次の(I)、(II)、(III)の要領で石油コークス供給量を定める。廃棄物ガス化溶融炉に供給しようとする石油コークスの性状であるCRI,CSR値を測定し、これらの性状値と石油コークス供給量とから導く炉内残留小球量率やコークスベッド内残留小球量率を適切な範囲とするように石油コークス供給量を設定することにより、安定した操業を確保しながら石炭コークスの一部を石油コークスに代替して運転コストを低減できる経済的な運転が実現できる。また、供給する石油コークスの性状が変化した場合にも迅速な対応が可能になる。
【0058】
(I)算出残留小球率の算出
石油コークスのうち高温下で残留する小球量の比率を算出残留小球率として、以下のように算出する。石油コークスに含まれる、高温下での反応後も残留する小球量の比率を算出残留小球率Rs(wt%)と定義付ける。石炭コークスの強度の指標として広く用いられているCRI(%),CSR値の測定方法により、供給しようとする石油コークスの性状であるCRI,CSR値を測定し、算出残留小球率Rsを次の(1)式のごとく算出する。ここで、CRIはISO18894により規定される反応性指数であって、1100℃でCOと反応させた後の重量減少率であり、CSRは熱間反応後強度指標であり、一般的に用いられる10mm篩上率ではなく、本発明のために2.8mm篩上率(CSR2.8(%))を用いる。
Rs=(100−CRI)×CSR2.8/100 (1)
【0059】
この熱間反応後強度CSRの測定方法は、所定の粒度範囲に調整されたコークス試料を1100℃の温度でCOガスと一定時間反応させ、反応後のコークス試料を特定の試験装置(I型ドラム)に装入し、一定回転数(例えば、600回転)回転させた後、目開き2.8mmの篩により篩い分け、篩上に残るコークス重量の、試験装置に投入した反応後のコークス試料の重量に対する割合を上記熱間反応後強度(CO反応後強度、CSR)としているものである。すなわち、熱間反応後強度CSRは、CO2ガスと反応させた後のコークスが、特定の試験装置での回転によっても破壊されることなく残留している割合を示しており、CO2反応後のコークス強度を示す指標とされている。このCSRが高いほどコークス強度が大きいこと、換言すれば、熱間反応後強度指標(CSR)が低い場合は、CO反応後にコークスが破壊され粉状になる量が多くなることを意味する。
【0060】
(II)供給した石油コークスの発熱量の80%以上の発熱量に相当する石炭コークス量を削減する運転を行う場合
【0061】
この場合には、石油コークスの炉内残留小球量に着目して、炉内残留小球量率A(wt%)に基づき石油コークス供給量を適切な範囲とする。
【0062】
ガス化溶融炉の安定した運転には、小球の炉内残存量を制限することが必要であり、炉内に残留する小球量の比率を適切な範囲内とするように石油コークス供給量を設定する。主羽口からコークスベッドに吹き込む酸素富化空気により、所定量の小球を消失させることができるため、小球の消失挙動に見合い許容できる小球の炉内残存量の上限が定められる。石油コークス供給量P(kg/h)に算出残留小球率Rs(wt%)を乗じて炉内に残留する小球量を求め、この炉内残留小球量の石油コークスを供給せず石炭コークスのみを供給する操業における石炭コークス供給量Q(kg/h)に対する比率を炉内残留小球量率A(wt%)と定義し、この炉内残留小球量率Aを適切な範囲とするように石油コークス供給量を設定する。このような関係を次の(2)式のごとく定める。
A=P×Rs/Q(2)
【0063】
供給した石油コークスの発熱量の80%以上の発熱量に相当する石炭コークス量を削減する運転を行う場合、炉内残留小球量率A(wt%)を10以下とするのが好ましい。石油コークス供給量Pを、石油コークスを供給せず石炭コークスのみを供給する操業における石炭コークス供給量Qに対して、炉内残留小球量率A(wt%)を10以下とするように設定する。炉内残留小球量率A(wt%)が10を超えるような多くの石油コークスを供給すると、石油コークスの炉内残存量が多くなり有効に熱源とならない部分が増加するため好ましくない。溶融スラグ排出が滞りガス化溶融炉の操業に支障が生じる。
【0064】
このように炉内に残留する小球量の比率を適切な範囲内とするように石油コークス供給量を設定することにより、ガス化溶融炉の操業に支障を生じさせずに石油コークスの供給量をできるだけ多くして、石炭コークスの代替として用い廃棄物ガス化溶融炉の運転費を低減し、かつ安定した操業ができる。
【0065】
(III)供給した石油コークスの発熱量に対して削減できる石炭コークスの発熱量の比率である置換効率が低下しても石油コークス供給量を増加させ、石炭コークス使用量を削減した方が廃棄物ガス化溶融炉の運転費を低減でき経済的な場合
【0066】
この場合には、石油コークスのコークスベッド内残留小球量に着目して、コークスベッド内残留小球量率Bに基づき石油コークス供給量を適切な範囲とする。
【0067】
石油コークスの価格が安価な場合、供給した石油コークスの発熱量に対して削減できる石炭コークスの発熱量の比率である置換効率が低下しても石油コークス供給量を増加させ、石炭コークス使用量を削減した方が廃棄物ガス化溶融炉の運転費を低減でき経済的な場合がある。この場合には、石油コークス供給量の上限を導く指標としてコークスベッド内に残留する小球量の比率であるコークスベッド内残留小球量率Bを用いる。
【0068】
ガス化溶融炉下部に形成されるコークスベッドが、石炭コークスと石油コークスのうち残留する小球とから構成されるとし、石油コークス供給量P(kg/h)に算出残留小球率Rs(wt%)を乗じてコークスベッド内に残留する小球量を求め、このコークスベッド内残留小球量と、石油コークスと石炭コークスとを供給する操業における石炭コークス供給量Q(kg/h)との和であるコークスベッド量に対するコークスベッド内残留小球量の比率をコークスベッド内残留小球量率B(wt%)と定義し、このコークスベッド内残留小球量率Bを適切な範囲とするように石油コークス供給量を設定する。このような関係を次の(3)式のごとく定める。
B=P×Rs/(Q+P×Rs/100)………(3)
【0069】
コークスベッド内に残留小球が増加し、溶融スラグ排出に支障が生じることを避けるためには、コークスベッド内残留小球量率B(wt%)は15以下とすることが好ましい。石油コークス供給量Pを、石油コークスと石炭コークスとを供給する操業における石炭コークス供給量Qに対して、コークスベッド内残留小球量率B(wt%)を15以下とするように設定する。コークスベッド内残留小球量率B(wt%)が15を超えることになるほど石油コークス供給量を多くすると、コークスベッド内残留小球量が多くなり、溶融スラグ排出が滞りガス化溶融炉の操業に支障が生じる。
【0070】
このようにコークスベッド内残留小球量率Bを適切な範囲内とするように石油コークス供給量を設定することにより、ガス化溶融炉の操業に支障を生じさせずに石油コークスの供給量をできるだけ多くして、石炭コークスの代替として用い廃棄物ガス化溶融炉の運転費を低減し、かつ安定した操業ができる。
【0071】
このように石油コークスと石炭コークスが投入される本実施形態における廃棄物ガス化溶融炉装置では、廃棄物のガス化溶融処理は次の要領で行われる。その要領を、廃棄物ガス化溶融炉でのガス化溶融と、供給制御の順に説明する。
【0072】
<廃棄物ガス化溶融炉でのガス化溶融>
各供給装置20〜23からの廃棄物、上述のごとく供給量が設定された石炭コークスと石油コークスそして石灰石が廃棄物ガス化溶融炉1の上部に設けられた投入口2を経て、それぞれ所定量ずつ炉内へ投入され、主羽口5から酸素富化空気が、副羽口6から空気が炉内へ吹き込まれる。
【0073】
炉内に投入された石炭コークスと石油コークスは炉下部に下降し、石炭コークス、石油コークスが主羽口5から吹き込まれる酸素富化空気によって燃焼し、廃棄物の灰分を溶融する熱源を提供するとともに、発生した高温の燃焼ガスを上昇させ廃棄物の熱分解のために加熱する熱源を提供する。
【0074】
上記投入口2から投入された廃棄物は、炉内に堆積して廃棄物のガス化層Cを形成し、炉下部のコークス充填層Aから移動層Bを通過し上昇してくる高温の燃焼ガス及び副羽口6から吹き込まれる空気によって加熱され、乾燥され、次いで熱分解される。熱分解により生成した可燃性ガスを含む燃焼ガスは上昇し、可燃性ガスの一部がフリーボード部Dにて燃焼され、炉内部を所定温度に維持し、熱分解により発生した有害物とタール分を分解させる処理が施されるように用いられる。フリーボード部Dを通過したガスは炉上部に設けられた排出口3より、炉外の二次燃焼室10へ排出される。ガスは可燃性ガスを多量に含んでいて二次燃焼室10で燃焼され、ボイラ12で熱回収され蒸気を発生させその蒸気が発電等に用いられる。ボイラ12から排出されたガスは、サイクロン(図示せず)で比較的粗いダストが除去され、さらに、減温装置(図示せず)で冷却され、有害物質除去剤との反応により有害ガスが除去され、集塵機(図示せず)で除塵処理されるなど排ガス処理された後、煙突(図示せず)から大気に放散される。
【0075】
ガス化層Cで廃棄物は熱分解されてガスが生成され、さらに、熱分解により生じた固定炭素や灰分は、石炭コークス、石油コークス及び石灰石とともに下降し移動層Bを形成する。移動層Bでは、コークス充填層Aから上昇してくる高温のガスにより下降する固体の昇温が行われると同時に、高温のCOガスにより廃棄物の熱分解により生じた固定炭素がガス化される。コークス充填層Aでは主羽口5から送風される酸素富化空気により石炭コークス、石油コークスとガス化されずに残った廃棄物の固定炭素が燃焼され、この燃焼熱により廃棄物の灰分が溶融され溶融スラグと溶融メタルが生成される。石灰石は灰分が溶融されたスラグの性状を好ましいものとする調整材として働く。さらに、発生した高温の燃焼ガスが上昇し廃棄物の熱分解のために加熱する熱源となる。
【0076】
主羽口5から下方の炉下部では、高温になりながらも燃え尽きていない石炭コークスがコークス塊同士の間隙を保持して充填された状態でコークス充填層Aを形成しており、溶融スラグと溶融メタルはコークス塊同士の間隙を滴下し炉底に達する。溶融スラグと溶融メタルは炉底に達するまでに均質化され性状が安定化され、炉底に設けられた出滓口4から排出され、炉外に設けられた水砕装置(図示せず)に供給され冷却固化され、冷却固化された水砕スラグと水砕金属が回収される。主羽口5から送風される酸素富化空気と、石炭コークス、石油コークスと固定炭素の燃焼により発生した高温の燃焼ガスとは、コークス充填層Aから移動層Bを通過しガス化層Cへ上昇して廃棄物を加熱し、ガス化層Cの廃棄物が副羽口6から供給される空気により部分酸化、熱分解される。コークス充填層Aでは、石炭コークス、石油コークスが燃焼して灰分溶融と廃棄物熱分解の熱源となり、石炭コークスが塊同士の間隙を保持して酸素富化空気と高温の燃焼ガスとを通気させ、溶融スラグと溶融メタルとを通液させる高温火格子の機能を有している。
【0077】
廃棄物ガス化溶融炉1に供給する石油コークスについてその性状を計測し把握しておくことで、その性状のもとで適切な範囲に設定された供給量の石炭コークスと石油コークスを炉内へ供給する。廃棄物ガス化溶融炉1の炉下部に石炭コークスと石油コークスを下降させ、廃棄物の灰分、固定炭素とともに移動層Bを形成し、コークス充填層Aで石炭コークスと石油コークスが燃焼して、廃棄物の灰分を溶融する熱源と、廃棄物を熱分解する熱源となる。石炭コークスの炉内への投入量は、高温火格子を形成することに必要な量となっており、また熱源として必要な熱量を石油コークスにより補うこととなる。
【0078】
このような廃棄物のガス化溶融処理過程において、燃料としての石炭コークスと石油コークスのうち、石炭コークスは炉内への供給当初から塊状をなしており、炉下部で、石炭コークス塊同士間での隙間により、通気と通液を確保して高温火格子を形成する。石油コークスは石炭コークスに比べて高温強度が低いため、炉内の高温下で塊状物は細粒化し燃焼して消失し、石油コークスの小球が残留し石炭コークスとともに存在するようになるが、石油コークスは許容最大限の供給量で投入されているので、石油コークスの残留小球が炉内又はコークスベッド内で残留する残留小球量率を所定範囲内として、溶融スラグ排出が滞るなどガス化溶融炉の操業に支障を生じさせずに石油コークスの供給量をできるだけ多くして、石炭コークスの代替として用い廃棄物ガス化溶融炉の運転費を低減し、かつ安定した操業ができる。
【符号の説明】
【0079】
1 廃棄物ガス化溶融炉
21 石炭コークス供給装置
22 石油コークス供給装置
,P 石油コークス供給量
,Q 石炭コークス供給量
図1