【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によると、廃棄物ガス化溶融装置に関しては次の第一発明及び第二発明により、廃棄物ガス化溶融方法に関しては第三発明及び第四発明により、次のように構成される。
【0016】
[廃棄物ガス化溶融装置]
<第一発明>
シャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉にて廃棄物を熱分解、ガス化、燃焼し、灰分を溶融する廃棄物ガス化溶融装置において、
廃棄物ガス化溶融炉に石炭コークスを供給する石炭コークス供給装置と、石油コークスを供給する石油コークス供給装置とを有し、
石油コークス供給量P
1(kg/h)が、石油コークスを供給せず石炭コークスのみを供給する操業における石炭コークス供給量Q
1(kg/h)に対して、次の(1)式で表される石油コークスの炉内残留小球量率A(wt%)を10以下とするように設定されていることを特徴とする廃棄物ガス化溶融装置。
A=P
1×Rs/Q
1………………………………………(1)
【0017】
ここで、Rs(wt%)は算出残留小球率であって、石油コークスを温度1100℃でCO
2ガスと2時間反応させI型ドラムで回転処理し、脆化し細粒化した分を目開き2.8mm篩により篩い分け篩上に残る小球の重量比率であり、石油コークスの反応性指数CRI(%)、目開き2.8mm篩を用いた熱間反応後強度CSR2.8(%)を用いて次の(2)式で表される。
R
S=(100−CRI)×CSR2.8/100……(2)
【0018】
<第二発明>
シャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉にて廃棄物を熱分解、ガス化、燃焼し、灰分を溶融する廃棄物ガス化溶融装置において、
廃棄物ガス化溶融炉に石炭コークスを供給する石炭コークス供給装置と、石油コークスを供給する石油コークス供給装置とを有し、
石油コークス供給量P
2(kg/h)が、石油コークスと石炭コークスとを供給する操業における石炭コークス供給量Q
2(kg/h)に対して、次の(3)式で表される石油コークスのコークスベッド内残留小球量率B(wt%)を15以下とするように設定されていることを特徴とする廃棄物ガス化溶融装置。
B=P
2×Rs/(Q
2+P
2×Rs/100)………(3)
【0019】
ここで、Rs(wt%)は算出残留小球率であって、石油コークスを温度1100℃でCO
2ガスと2時間反応させI型ドラムで回転処理し、脆化し細粒化した分を目開き2.8mm篩により篩い分け篩上に残る小球の重量比率であり、石油コークスの反応性指数CRI(%)、目開き2.8mm篩を用いた熱間反応後強度CSR2.8(%)を用いて次の(4)式で表される。
R
S=(100−CRI)×CSR2.8/100…(4)
【0020】
[廃棄物ガス化溶融方法]
<第三発明>
シャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉にて廃棄物を熱分解、ガス化、燃焼し、灰分を溶融する廃棄物ガス化溶融方法において、
廃棄物ガス化溶融炉に石炭コークスを供給するとともに、石油コークスを供給し、
石油コークス供給量P
1(kg/h)を、石油コークスを供給せず石炭コークスのみを供給する操業における石炭コークス供給量Q
1(kg/h)に対して、次の(1)式で表される石油コークスの炉内残留小球量率A(wt%)を10以下とするように設定することを特徴とする廃棄物ガス化溶融方法。
A=P
1×Rs/Q
1………………………………………(1)
【0021】
ここで、Rs(wt%)は算出残留小球率であって、石油コークスを温度1100℃でCO
2ガスと2時間反応させI型ドラムで回転処理し、脆化し細粒化した分を目開き2.8mm篩により篩い分け篩上に残る小球の重量比率であり、石油コークスの反応性指数CRI(%)、目開き2.8mm篩を用いた熱間反応後強度CSR2.8(%)を用いて次の(2)式で表される。
R
S=(100−CRI)×CSR2.8/100……(2)
【0022】
<第四発明>
シャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉にて廃棄物を熱分解、ガス化、燃焼し、灰分を溶融する廃棄物ガス化溶融方法において、
廃棄物ガス化溶融炉に石炭コークスを供給するとともに、石油コークスを供給し、
石油コークス供給量P
2(kg/h)を、石油コークスと石炭コークスとを供給する操業における石炭コークス供給量Q
2(kg/h)に対して、次の(3)式で表される石油コークスのコークスベッド内残留小球量率B(wt%)を15以下とするように設定することを特徴とする廃棄物ガス化溶融方法。
B=P
2×Rs/(Q
2+P
2×Rs/100)………(3)
【0023】
ここで、Rs(wt%)は算出残留小球率であって、石油コークスを温度1100℃でCO
2ガスと2時間反応させI型ドラムで回転処理し、脆化し細粒化した分を目開き2.8mm篩により篩い分け篩上に残る小球の重量比率であり、石油コークスの反応性指数CRI(%)、目開き2.8mm篩を用いた熱間反応後強度CSR2.8(%)を用いて次の(4)式で表される。
R
S=(100−CRI)×CSR2.8/100…(4)
【0024】
[発明に到った経緯]
上述の<第一発明>ないし<第四発明>に至った経緯は、次のごとくである。
【0025】
石油コークスは製油所で石油精製される際の副産物であり、組成の制御はされていない。石油コークスは、
(i)直径3mm程度の小球が相互に軽く融着したもの、
(ii)多孔質の塊状物、
(iii)上記(i),(ii)が混合した塊状物、
に大別できる。
【0026】
上記(i)は低荷重で容易に融着が解け解砕するが、解砕後の直径3mm程度の小球は硬くて粉砕されにくく、また1000℃以上の高温下でも、CO
2やO
2との反応性は比較的低く残存する傾向にある。一方、(ii)は低荷重で容易に粉砕されないが、1000℃以上の高温下でCO
2と反応し吸熱しながらガス化し、またO
2により燃焼して速やかに消失する。
【0027】
廃棄物ガス化溶融炉に使用する石炭コークスを削減するために、石炭コークスの一部の代替として石油コークスを供給する際、直径20mm以上、より好ましくは30mm以上の塊状の石油コークスを用いると、石油コークスは、廃棄物層を速やかに下降通過し、下降途中でガス化されて消失することなくコークスベッドに到達する。コークスベッドに到達した石油コークスのうち、直径3mm程度の小球で構成される部分は高温下で崩壊する。石油コークスの供給量が少ない場合には、コークスベッドに到達した石油コークスは主羽口から吹き込む酸素富化空気により速やかに燃焼して灰分の溶融熱を発生させることができるため、供給された石油コークスはその等重量の石炭コークスとほぼ等価の熱量を発生することができ、石油コークス供給量とほぼ同等量の石炭コークス量と置換することが可能であり、石炭コークス使用量の削減に効果的である。石油コークスのうち直径3mm程度の小球もコークスベッド上部で燃焼し消失するため、コークスベッド内に残留することはないため問題にならない。
【0028】
しかし、直径30mm以上の塊状の石油コークスを用いても、石油コークスの供給量が増加すると、塊状物と混在している小球の量も多くなり、この小球は高温下でも反応性が比較的低くガス化溶融炉内で消失せず残存するため、コークスベッド下部にまで到達する量が無視できなくなる結果、コークスベッド内の空隙を塞ぎガスや溶融スラグの流れを阻害する。また小球群として検討した場合には小球群は単位体積当たりの表面積が大きいため、小球群はコークスベッド内の酸素を速やかに消費しコークスベッド内の燃焼領域を縮小させた後、CO
2との吸熱反応を生じ、コークスベッドの温度を低下させる。コークスベッドの温度が低下すると、灰分の溶融が不十分となったり、溶融スラグが十分に加熱されず流動性が低下して、前述したコークスベッド内の空隙閉塞とあいまって、溶融スラグ排出が滞りガス化溶融炉の操業に支障が生じることになる。
【0029】
このように石炭コークス使用量の削減のため石炭コークスの一部の代替として石油コークスを供給する際、石油コークスの供給量が増加すると、含まれる小球によってガス化溶融炉の操業への悪影響が生じることに着目し、炉内に残留する小球量の比率を適切な範囲内とするように石油コークス供給量を設定することにより、ガス化溶融炉の操業に支障を生じさせずに石油コークスの供給量をできるだけ多くして、石炭コークスの代替として用い廃棄物ガス化溶融炉の運転費を低減し、かつ安定した操業ができることを見い出し、本発明に到った。そして、石油コークスの性状から、高温下で残留する小球量の比率を算出残留小球率として求める方法を創出し、使用する石油コークスについてその性状を予め計測しておき、その性状から算出残留小球率を算出して導き、石油コークス供給量に算出残留小球率を乗じて炉内に残留する小球量を求め、この炉内残留小球量の石炭コークス供給量に対する比率を炉内残留小球量率と定義し、この炉内残留小球量率を適切な範囲とするように石油コークス供給量を設定することとする本発明を導き出した。
【0030】
本発明では、石炭コークスの一部の代替として使用できる石油コークス供給量を設定する際、事前に測定できる石油コークスの性状諸元を用いることで、ガス化溶融炉の操業に支障を生じさせないような石油コークス供給量の上限値を実験にもとづき規定した。
【0031】
石油コークスを1100℃でCO
2と2時間反応させると、小球部分の減少はわずかである。一方、多孔質塊状物部分の多くはガス化され、ガス化されて残った部分は脆くなっている。これをI型ドラムに投入し回転させると、脆くなった部分は細粒化され、目開き2.8mm篩により篩分けを行うとほぼ小球のみが2.8mm篩上に残留する。このような高温下での小球と多孔質塊状物の反応挙動に基づき、高温下で残留する小球量の比率を算出残留小球率として、以下のように求める算出方法を定めた。
【0032】
石油コークスに含まれる、高温下での反応後も残留する小球量の比率を算出残留小球率Rs(wt%)と定義付けた。すなわち、算出残留小球率Rs(wt%)は、石油コークスを温度1100℃でCO
2ガスと2時間反応させI型ドラムで回転処理し、脆化し細粒化した分を目開き2.8mm篩により篩い分け篩上に残る小球の重量比率であり、石油コークスの反応性指数CRI(%)、目開き2.8mm篩を用いた熱間反応後強度CSR2.8(%)を用いて次の(1)式のごとく算出することとした。ここで、CRIはISO18894により規定される反応性指数であって、1100℃でCO
2と反応させた後の重量減少率であり、CSRは熱間反応後強度指標であり、一般的に用いられる10mm篩上率ではなく、本発明のために2.8mm篩上率(CSR2.8(%))とした。
Rs=(100−CRI)×CSR2.8/100 (1)
【0033】
ガス化溶融炉の安定した運転には、小球の炉内残存量を制限することが必要であり、炉内に残留する小球量の比率を適切な範囲内とするように石油コークス供給量を設定する。主羽口からコークスベッドに吹き込む酸素富化空気により、所定量の小球を消失させることができるため、小球の消失挙動に見合い許容できる小球の炉内残存量の上限が定められる。石油コークス供給量P
1(kg/h)に算出残留小球率Rs(wt%)を乗じて炉内に残留する小球量を求め、この炉内残留小球量は炉規模により変化するため、石油コークスを供給せず石炭コークスのみを供給する操業における石炭コークス供給量Q
1(kg/h)を基準として用いた炉内残留小球量の比率を炉内残留小球量率A(wt%)と定義し、この炉内残留小球量率A(wt%)を適切な範囲とするように石油コークス供給量を設定する。このような関係を次の(2)式のごとく定める。この炉内残留小球量率はガス化溶融炉が消費できる小球量を基準にした指標である。
A=P
1×Rs/Q
1 (2)
【0034】
供給した石油コークスの発熱量の80%以上の発熱量に相当する石炭コークス量を削減する運転を行う場合、炉内残留小球量率A(wt%)を10以下とするのが好ましい。石油コークス供給量P
1を、石油コークスを供給せず石炭コークスのみを供給する操業における石炭コークス供給量Q
1に対して、炉内残留小球量率A(wt%)を10以下とするように設定する。炉内残留小球量率A(wt%)が10を超えるような多くの石油コークスを供給すると、石油コークスの炉内残存量が多くなりコークスベッド内に有効に熱源とならない部分が増加するため好ましくない。溶融スラグ排出が滞りガス化溶融炉の操業に支障が生じる。
【0035】
このように炉内に残留する小球量の比率を適切な範囲内とするように石油コークス供給量を設定することにより、ガス化溶融炉の操業に支障を生じさせずに石油コークスの供給量をできるだけ多くして、石炭コークスの代替として用い廃棄物ガス化溶融炉の運転費を低減し、かつ安定した操業ができる。
【0036】
石油コークスの価格が安価な場合、供給した石油コークスの発熱量に対して削減できる石炭コークスの発熱量の比率である置換効率が低下しても石油コークス供給量を増加させ、石炭コークス使用量を削減した方が廃棄物ガス化溶融炉の運転費を低減でき経済的な場合がある。この場合には、石油コークス供給量の上限を導く指標としてコークスベッド内に残留する小球量の比率であるコークスベッド内残留小球量率B(wt%)を用いる。
【0037】
ガス化溶融炉下部に形成されるコークスベッドが、石炭コークスと石油コークスのうち残留する小球とから構成されるとし、石油コークス供給量P
2(kg/h)に算出残留小球率Rs(wt%)を乗じてコークスベッド内に残留する小球量を求め、このコークスベッド内残留小球量と石油コークスと石炭コークスとを供給する操業における石炭コークス供給量Q
2(kg/h)との和であるコークスベッド量に対するコークスベッド内残留小球量の比率をコークスベッド内残留小球量率B(wt%)と定義し、このコークスベッド内残留小球量率B(wt%)を適切な範囲とするように石油コークス供給量を設定する。このような関係を次の(3)式のごとく定める。
B=P
2×Rs/(Q
2+P
2×Rs/100)………(3)
【0038】
コークスベッド内に残留小球が増加し、溶融スラグ排出に支障が生じることを避けるためには、コークスベッド内残留小球量率B(wt%)は15以下とすることが好ましい。石油コークス供給量P
2を、石油コークスと石炭コークスとを供給する操業における石炭コークス供給量Q
2に対して、コークスベッド内残留小球量率B(wt%)を15以下とするように設定する。コークスベッド内残留小球量率B(wt%)が15を超えることになるほど石油コークス供給量を多くすると、コークスベッド内残留小球量が多くなり、溶融スラグ排出が滞りガス化溶融炉の操業に支障が生じる。
【0039】
このようにコークスベッド内残留小球量率B(wt%)を適切な範囲内とするように石油コークス供給量を設定することにより、ガス化溶融炉の操業に支障を生じさせずに石油コークスの供給量をできるだけ多くして、石炭コークスの代替として用い廃棄物ガス化溶融炉の運転費を低減し、かつ安定した操業ができる。
【0040】
以上のように、廃棄物ガス化溶融炉に供給しようとする石油コークスの性状であるCRI,CSR値を測定し、これらの性状値と石油コークス供給量とから導く炉内残留小球量率やコークスベッド内残留小球量率を適切な範囲とするように石油コークス供給量を設定することにより、安定した操業を確保しながら石炭コークスの一部を石油コークスに代替して運転コストを低減できる経済的な運転が実現できる。また、供給する石油コークスの性状が変化した場合にも迅速な対応が可能になる。また、予め石油コークスのCRI,CSR値を測定し把握することにより、石炭コークスを効果的に削減できる石油コークスの品種を選定できる。
【0041】
かくして、石油コークスの性状を事前に計測して、算出残留小球率Rsを求めておくことで、石油コークス供給量の適切な範囲を導く指標として、第一そして第三発明では、石油コークスの炉内での残留小球量の観点から炉内残留小球量率Aを規定し、第二そして第四発明では、石油コークスのコークスベッド内での残留小球量の観点からコークスベッド内残留小球量率Bを規定し、これらの指標に基づき石油コークス供給量の適切な範囲を求めるようにした。
【0042】
本発明では、石油コークスを炉内に投入し燃焼中に炉内の状況の観察、例えば、特許文献2のような実際の主羽口送風圧を計測したり、それにもとづき炉内通気抵抗を算出したりせずとも、事前に石油コークスについて性状を計測するだけで、石油コークスを許容最大限の供給量のもとに石炭コークスの一部に代えて使用でき、その結果、廃棄物ガス化溶融炉の運転コストを低減することができる。