特許第6361937号(P6361937)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6361937
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】臨時バルブおよび臨時バルブフィルタ
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/01 20060101AFI20180712BHJP
【FI】
   A61F2/01
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-562419(P2015-562419)
(86)(22)【出願日】2014年3月13日
(65)【公表番号】特表2016-510616(P2016-510616A)
(43)【公表日】2016年4月11日
(86)【国際出願番号】IB2014001564
(87)【国際公開番号】WO2014177935
(87)【国際公開日】20141106
【審査請求日】2017年3月2日
(31)【優先権主張番号】61/784,742
(32)【優先日】2013年3月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514271844
【氏名又は名称】バルブ メディカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001346
【氏名又は名称】特許業務法人 松原・村木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リヒター、ヨラム
(72)【発明者】
【氏名】ワイズ、エティ
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァルツ、ボアズ
【審査官】 大屋 静男
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第00/044313(WO,A1)
【文献】 特表2006−507862(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0152760(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0149996(US,A1)
【文献】 特開昭53−012198(JP,A)
【文献】 特表2008−515463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/01
A61F 17/00
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に血流を維持するための経皮的臨時バルブシステムであって、臨時バルブと、管状の中央コアと、前記臨時バルブおよび前記中央コアを収容し、送達するためのシースとを備え、前記臨時バルブは、本体と複数の線材とを備え、各前記線材は第1端で前記バルブ本体の縁に、第2端で前記中央コアに連結され、前記中央コアは、裏返った送達形態を有し前記シースに連結されていることを特徴とする経皮的臨時バルブシステム。
【請求項2】
前記中央コアに直接当接するプッシャをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記中央コアは、押圧面を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記バルブと前記中央コアのそれぞれは、開いた中央領域を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記シースは、フィルタユニットを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正常な血流を維持するための臨時バルブと、正常な血流を維持し、同時に経皮的心臓血管手術の最中における塞栓の捕捉をするための塞栓症フィルタを備える臨時バルブとに関する。本発明はまた、そのようなバルブまたはバルブフィルタ装置と送達装置とを備えるシステム、および、そのような装置を留置する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
人間の心臓において、弁は、最小限の圧力損失でもって一方向に血流を維持するために重要な構造物である。しかしながら、人間の心臓の弁は、様々な理由によって悪化しうる。正常に動作しない心臓の弁は、小葉部が十分に開かない狭窄であることがあり、もしくは、弁体が完全に閉じない逆流性であったり、それらの両方の組合せであったりする。そのため、弁形成術および弁置換術は、自己弁の機能を回復させるように、もしくは、もともとの自己弁を除去しつつまたは除去しないで常設人工弁を移植するように発展してきた。一般的な外科手術は、患者の胸腔を開くことを伴い、これが高侵襲であって、心肺バイパスと長い回復期間を要する。
【0003】
経皮的な弁形成術および弁置換術は、伝統的な開胸手術のより安くより安全な代用として発展してきた。伝統的な外科手術と比較すると、経皮的手術は最小侵襲で、心肺バイパスを不要とする。形成術または常設人工弁の位置決めおよび移植術の最中に自己弁の機能は阻害されるため、心肺バイパスをしないことで、経皮的手術は、正常な循環を速やかに回復するはずである。臨時バルブは、経皮的手術の最中において一方向の血流を維持するのに関連して有益であり、特に、移植の前に組立が必要であるような、モジュール式の経皮的バルブ装置の留置と併用するのがよい。
【0004】
それに加えて、経皮的な弁形成術または弁置換術の最中における送達装置、修復具および/またはバルブ装置の操作は、組織および/またはカルシウム沈着物のような組織付着物を離脱させ、および/または、血栓を発生しうる。この残屑は、循環系を移動する塞栓を形成し、小血管を閉塞するかもしれず、これによって、脳卒中、組織虚血または死亡のような重度の合併症を引き起こすかもしれない。そのため、塞栓を捕捉するフィルタ装置が望まれる。
【0005】
したがって、従来技術の両方の問題を同時に解決することができる一つの装置の必要性が存在する。より具体的には、経皮的な弁形成術または弁置換術の最中に、血流を一方向に維持し、塞栓の移動を阻止することができる装置が強く望まれる。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、経皮的心臓血管手術の最中において用いる、塞栓を阻止するためのフィルタを有する臨時バルブを留置するシステムおよび方法に関する。特に、本発明は、人工的なバルブフィルタ装置と、そのような装置を備えるシステムと、経皮的にその装置を送達および留置する方法を提供する。当該システムと方法は、特に、経皮的心臓弁形成術および弁置換術と併用するのがよい。
【0007】
本発明の目的は、塞栓防止機能と組み合わされた臨時経皮的バルブ―バルブと塞栓フィルタが一つのユニットに統合された一体構造としてのバルブフィルタ装置か、または、バルブと塞栓フィルタ機能が一つのユニットに統合されていないが、結合され、重なり、または、分離される2つのユニットにより実現されるマルチコンポーネント構造としてのバルブフィルタ―を提供することにある。
【0008】
単一ユニット装置の一実施形態においては、バルブフィルタ装置は、例えば穴あき部分のような血液に透過性の領域を除いては、血液に非透過性である。血液透過性の領域は、血液は通すが塞栓は通さない多孔質のフィルタ領域と、フィルタ領域をカバーするフラップとを含む。血液透過性の領域をカバーするフラップは、例えば心臓収縮期においては、血液が血液透過性の領域を通って流れることができるように開き、例えば心臓拡張期においては、血液が血液透過性の領域を通って逆流するのを防止するように閉じる。
【0009】
マルチユニット臨時バルブフィルタ装置においては、バルブとフィルタの機能は、2つの結合されたユニット、つまり、バルブユニットとフィルタユニットによって発揮される。フィルタユニットは、血液は通すが、塞栓は通さない材料によって作ることができる。バルブユニットは、非多孔質で柔軟な材料によって作ることができる。バルブユニットとフィルタユニットは、閉じたまたは折り畳まれた状態で送達され、留置された後に、バルブユニットとフィルタユニットは共に開いた形をとる。一実施形態においては、留置されたバルブユニットとフィルタユニットは、実質的に平坦であり、一形態ではディスク形状であり、他の形態においては、留置されたバルブユニットとフィルタユニットは傘形状である。バルブユニットは、複数の硬い支材またはリングを含むフレームによって支持されることができる。いずれの実施形態の一形態においても、フィルタユニットとバルブユニットは長手方向軸に沿って間隔をおいて離れている。いくつかの実施形態においては、バルブユニットは、内側に折り畳むのに十分な柔軟性のある材料によって作ることができる。そのような材料としては、例えば一実施形態の一形態においては、心臓収縮期に血液が流れることができるように支材の間で折り畳まれ、心臓拡張期において逆流を防ぐように血管壁に向けて外に展開する。バルブユニットとフィルタユニットが実質的に平坦である一実施形態において、フィルタユニットの遠位側に位置するバルブユニットは、心臓収縮期において、フィルタユニットのフィルタ領域を通って血液が流れることができるようにフィルタユニットから離れるように移動し、心臓拡張期においては、逆流を防ぐことができるようにフィルタユニットのフィルタ領域に重なることでカバーする。バルブユニットとフィルタユニットが開いた傘形状を有する実施形態においては、各傘状のキャノピーは、凸形状の表面と凹形状の表面を有し、当該実施形態の一の形態においては、2つのキャノピーの凸形状の表面は、互いに対面し、当該実施形態の他の形態においては、2つのキャノピーの凹形状の表面は、互いに反対側を向いている。
【0010】
また、本発明は、フィルタユニットとともに、または、フィルタユニットと別に用いられ、バルブを留置する独自の方法を提供する臨時経皮的バルブシステムを提供することを目的とする。この実施形態において、臨時バルブシステムはクラゲ形状のバルブと、例えばイントロデューサーシースのようなシースに取り付けられた管状の中央コアを含む。バルブと中央コアは、送達形態においてシース内で裏返った状態で折り畳まれ、プッシャを用いてバルブと中央コアをめくり返して留置される。臨時バルブシステムは、フィルタ要素と共にまたは別に用いられる。当該システムは、臨時バルブ装置が弁置換術で使われるときの常設人工弁の送達のため、または、臨時バルブ装置が弁形成術で使われるときの修復具の送達のためのカテーテルの使用に対応するように設計されている。
【0011】
さらに、本発明の他の目的は、送達装置に実装された臨時バルブフィルタ装置を備えるシステムを提供することにある。バルブフィルタシステムの一実施形態は、臨時バルブフィルタ装置と、カテーテルのような、装置を血管の目標箇所に送達する送達装置とを備えてなる。バルブフィルタ装置は、送達径を最小化するために、例えば折り畳まれたまたは閉じた送達形態を有している。バルブフィルタ装置は、径が潰れた送達形態で送達装置の中または上を送達され、径方向に展開した作動形態に留置される。当該システムは、バルブフィルタ装置が弁置換術で使われるときの常設人工弁の送達のため、または、バルブフィルタ装置が弁形成術で使われるときの修復具の送達のためのカテーテルの使用に対応するように設計されている。臨時バルブがもはや必要でないときには、バルブフィルタ装置は捕捉された塞栓とともに取り除かれる。
【0012】
本発明のさらなる目的は、管腔を有する第1送達装置に装着されたバルブフィルタ装置を備えるシステムを血管内に導入し、前記バルブフィルタ装置は血液の流れと塞栓の捕集を同時に制御するように設計され、前記バルブフィルタ装置は、縁と、中心と、送達形態における閉じた形状と、留置された作動形態における開いた形状とを有し、前記第1送達装置は前記中心を通って延び、中心に取り付けられ、前記バルブフィルタ装置を目標箇所に前進させ、前記送達装置から前記バルブフィルタ装置を留置し、前記バルブフィルタ装置を径方向に展開して前記作動形態にする、経皮的臨時バルブフィルタ装置を留置する方法を提供することである。この方法は、バルブユニットとフィルタユニットを一緒にまたは離して留置することを含む。一実施形態において、上述の方法は、一体の装置、つまり、バルブと塞栓フィルタ機能とが単一のユニットまたは構造に統合された装置であるバルブフィルタ装置を留置するのに用いられる。他の実施形態において、上述の方法はバルブと塞栓フィルタ機能とが単一のユニットに統合されておらず、連結され、結合され、重なりまたは物理的に分離された区別されたユニット、つまり、マルチユニットデバイスであるバルブフィルタ装置を留置するのに用いられる。
【0013】
さらに他の実施形態においては、上述の方法は、経皮的人工バルブの移植または自己弁の修復のために、留置されたバルブフィルタから遠位の血管領域に、バルブフィルタ装置を通して延びる第2送達装置を留置することをさらに含む。つまり、臨時バルブフィルタ装置は、第2送達装置が通り抜けるのに十分に大きな内径の管腔を持つ第1送達装置に設けられる。一の形態において、第2送達装置は経皮的バルブ装置を恒久的な移植のために送達するのに用いられる。留置方法は、前記した展開工程の後で、潰れる工程の前に、前記バルブフィルタ装置の中心部を通して第2送達装置を延ばし、前記経皮的バルブ装置を留置、移植し、前記第2送達装置を後退させることを含む。他の形態において、第2送達装置は、例えば、バルーン弁形成術に用いられるバルーンのような経皮的バルブ修復器具を送達するのに用いられる。留置方法は、前記した展開工程の後で、潰れる工程の前に、前記バルブフィルタ装置の中心部を通して第2送達装置を延ばし、前記バルブ修復具を留置して自己弁を修復し、前記修復器具を後退させ、前記第2送達装置を後退させることを含む。
【0014】
本発明のさらなる目的は、経皮的臨時バルブ装置を留置する方法を提供することにある。一実施形態において、この方法は、臨時バルブと、中心コア と、臨時バルブの縁を中心コアに連結する線材と、シースとを備える臨時バルブ装置システムを準備し、臨時バルブ、線材および中心コアは折り畳まれて、送達のために裏返った形態でシースの中に収容された状態とし、プッシャを使用して中心コアをシースの外に押し、これにより中心コアを裏返して留置形態にし、バルブをシースから解放して開いた形態にする。この実施形態の一形態においては、フィルタユニットもまた臨時バルブ装置とともに使用のために留置される。
【0015】
さらに他の実施形態においては、上述の方法はさらに、送達装置を留置する工程を有し、当該送達装置は、中心コアとバルブ装置を通って経皮的人工弁の移植のためまたは自己弁の修復のために留置されたバルブの遠位の血管領域へ延びる。すなわち、臨時バルブ装置と中心コアは、カテーテルのような送達装置が通り抜けることができる十分な内径を有する管腔を有するシースに装着される。一形態において、送達装置は、経皮的バルブ装置を恒久的な移植のために送達するのに使用される。留置方法は、前記展開工程の後で前記潰れる工程の前に、前記送達装置を前記バルブの中心部と中心コアを通して延ばし、前記経皮的バルブ装置を留置および移植し、前記送達装置を後退させることを含む。他の一形態において、送達装置は、例えばバルーン弁形成術に用いられるバルーンのような経皮的バルブ修復具を送達するのに使用される。留置方法は、前記展開工程の後で前記潰れる工程の前に、前記第2送達装置を前記バルブの中心部と中心コアを通って延ばし、前記バルブ修復具を留置し、自己弁を修復し、前記修復具を後退させ、前記送達装置を後退させる。
【0016】
本発明によって達成される利点は、一つの装置の留置で、血流の維持とともに血流内における塞栓の最小化を実現することである。常設の経皮的人工器官を移植したり自己弁の修復などの経皮的血管手術の開始前に経皮的臨時バルブフィルタを導入することは、広く開いた血液の逆流を防ぐことで、さらなる手術のための時間的圧力を軽減する。言い換えると、本発明の臨時バルブまたは臨時バルブフィルタ装置は、弁置換術または弁形成術の最中のシステムの安定化を可能にする。例えば、置換術の最中にモジュール式の経皮的バルブ装置を使用した場合、臨時バルブ装置は、バルブモジュールをモジュラーフレームの中に留置し、ドッキングするのに十分な時間を提供する。本発明の臨時バルブフィルタの塞栓フィルタ機能は、経皮的手術の最中に発生した塞栓の離脱を最小化し、これにより血管の塞栓封鎖を避けることができる。このようにして、本発明のバルブフィルタ装置は、経皮的心臓血管手術の安全性と結果を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】血管の目標箇所に留置した後の一体構造の臨時バルブフィルタの一実施形態を示す図である。
図1A】フィルタ領域を描いた、図1の円で囲んだ領域の拡大図である。
図2】血管の目標位置に留置された、凸形状が向かい合ったバルブユニットおよびフィルタユニットキャノピーを備えるバルブフィルタ装置のマルチユニットの実施形態と本実施形態のバルブユニットの一形態を示す図である。
図2A図2の凸形状が向かい合ったマルチユニットの実施形態のバルブユニットの他の一形態を示す図である。
図3】血管の目標位置に留置された、凹形状が向かい合ったバルブユニットおよびフィルタユニットキャノピーを備えるバルブフィルタ装置のマルチユニットの実施形態を示す図である。
図4A】心臓拡張期における、実質的に平坦な経皮的バルブフィルタ装置の一実施形態を示す図である。
図4B】心臓収縮期における図4Aの実施形態を示す図である。
図4C】心臓拡張期における、本発明の実質的に平坦な経皮的バルブフィルタ装置の他の実施形態を示す図である。
図4D】心臓収縮期における、本発明の実質的に平坦な経皮的バルブフィルタ装置の他の実施形態を示す図である。
図5A】本発明の経皮的臨時バルブシステムおよびバルブ留置方法を示す断面図であり、折り畳んだ状態を示す。
図5B】本発明の経皮的臨時バルブシステムおよびバルブ留置方法を示す断面図であり、留置を示す。
図5C】本発明の経皮的臨時バルブシステムおよびバルブ留置方法を示す断面図であり、留置された状態を示す。
図6】オプションのフィルタユニットともに完全に留置した図5Cの経皮的臨時バルブを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、経皮的臨時バルブフィルタ装置およびシステムと、例えば血管の中にバルブフィルタ装置を留置する方法を提供する。本発明はまた、経皮的臨時バルブシステムおよび臨時バルブを留置する方法を提供する。当該臨時バルブシステムは、フィルタユニットとともにまたは別に使用される。
【0019】
経皮的臨時バルブフィルタ装置は、統合された、または単一の装置、つまりバルブとフィルタ機能の両方を提供する一つのユニットを含む装置であり、または、分離されたまたは結合されたバルブユニットおよびフィルタユニットを備えてなるマルチユニット装置である。本発明によれば、経皮的臨時バルブフィルタ装置は、例えば、傘形状から実質的に平坦な形状まで、様々な形状を有することができる。実質的に平坦なバルブフィルタ装置は、例えば、ディスク形状とすることができる。当該装置のバルブとして機能する部分は、血液に対して透過性ではない。当該装置のフィルタとして機能する部分は、塞栓に対して透過性ではないが、少なくとも部分的には血液に対して透過性である。フィルタ部の血液に対して透過性の部分の好ましい孔径の範囲は、例えば、10〜200ミクロンであり、50〜500ミクロンであり、80〜250ミクロンであり、80〜200ミクロンであり、100〜200ミクロンであってもよい。
【0020】
本発明の一実施形態において、バルブフィルタ装置は、実質的に平坦なバルブユニットと、実質的に平坦なフィルタユニットとを含む。バルブユニットおよびフィルタユニットはのそれぞれは、例えば、ディスク状の形状、つまり、第1ディスクと第2ディスクとすることができる。この実施形態の一形態においては、第1および第2ディスクは互いに隣接しており、例えば、重なっている。一形態においては、第1および第2ディスクは、中心位置において連結され、その箇所において第1ディスクと第2ディスクは送達装置に取り付けられている。この実施形態の他の形態においては、第1ディスクと第2ディスクは、当該第1および第2ディスクが取り付けられる送達装置によって規定される長手方向軸に沿って間隔をおいて離間している。一実施形態において、第2ディスク、つまり、フィルタユニットは、第1ディスク、つまり、バルブユニットに近接している。すなわち、第2ディスクは、送達装置の、第1ディスクの遠位に位置している。
【0021】
他の実施形態において、単一ユニットのバルブフィルタ装置は、目標箇所に留置された後において、凸形状の表面と凹形状の表面とを有するキャノピーを備える開いた傘形状を有する。傘形状のキャノピーの凹形状の表面は心臓に向かっている。すなわち、血流方向において凹形状の表面は上流に向いている。凹形状は、塞栓を捕捉し収容する集積領域を提供する。バルブフィルタ装置は、一以上のフィルタ領域を除いて、血液に対し非透過性の材料からなる。フィルタ領域は、血液を流すことができるのに充分なサイズであるが塞栓をブロックするのに充分に小さい孔を有する領域を備える。心臓拡張期において血液の逆流を防ぐため、各フィルタ領域は対応するフラップをキャノピーの凸形状の表面上、すなわち、留置されたときの装置の下流側に有する。フラップは、心臓が血液を大動脈に送る心臓収縮期に開き、これにより血液はフィルタ領域を通り抜けることができ、心拍の間に血液がフィルタ領域を通って逆流するのを防ぐため、心臓拡張期に閉じる。フラップは、例えば、一側のヒンジによってであったり、穴をカバーする膜の中心での連結によってであったり、または、下記の詳細を示すように膜の層が見えるようにキャノピーを部分的に切り取って一体部品にするなど、当業者に知られた範囲内の様々な方法で取り付けることができる。
【0022】
さらに本発明の他の実施形態において、バルブフィルタ装置は、結合されたバルブユニットとフィルタユニットを有するマルチユニット装置である。各バルブユニットと各フィルタは傘形状を有し、各傘は凸形状の表面と凹形状の表面を備えるキャノピーを有する。バルブユニットとフィルタユニットは、同等のサイズであるが、それらのキャノピーは逆の方向を向いている。留置されたフィルタユニットのキャノピーは、キャノピーの凹形状の表面が上流、つまり、心臓の方向に向かうように向けられている。フィルタユニットのキャノピーは、血液は通って流れることができるが塞栓はブロックするような透過性の膜または織物構造を含むフィルタ領域を備えてなる。フィルタユニットキャノピーの縁は、好ましくは、留置されたときに、血管壁に対して塞栓を除去するシールを形成しているのがよい。留置されたバルブユニットのキャノピーは、少なくとも心臓拡張期において、凸形状の表面が上流に向かうように配向されている。バルブユニットのキャノピーは、柔軟な材料からなり、硬い支材、例えば3本の支材によって支えられている。他の案として、バルブユニットのキャノピーは、以下に臨時バルブシステムについて説明するように、支材が無くクラゲのように作用することができる。心臓拡張期において、バルブユニットの柔軟なキャノピーは、開いた傘形状に拡張して逆流を防ぐ。心臓収縮期においては、バルブユニットキャノピーは、例えば、複数の支材の間で内側に折り畳まり、血液が通って流れるのを許容する。この実施形態の一形態においては、バルブユニットキャノピーの凹形状の表面とフィルタユニットのそれとは、お互いに反対の方向を向いている(凸形状が向かい合う)。この実施形態の他の形態においては、バルブユニットキャノピーの凹形状の表面と、フィルタユニットのそれとは、互いに向かい合っている(凹形状が向かい合う)。
【0023】
経皮的臨時バルブシステムは、バルブと、バルブ骨格―例えば、中心コアと、バルブを骨格に連結する―例えば、バルブの縁を中央コアに連結する複数の線材と、中央コア、バルブおよび複数の線材を送達のために拘束することができるシースとを含む。中央コアは、自分自身の上に折り返って裏返り、中央コアをプッシャによって押すことでめくり返して留置形態に留置することができる。
【0024】
経皮的臨時バルブは、好ましくは、柔軟でクラゲ形状であり、同様に柔軟であるがバルブよりは硬い管状の中央コアに線材によって取り付けられている。中央コアは、心臓収縮期および心臓拡張期において、クラゲ状バルブを安定した近位―つまり上流―位置に保持する役割を果たし、バルブ本体は心臓拡張期に開き、心臓収縮期に閉じ、線材は、心臓拡張期にバルブの本体が裏返るのをの防ぐように拘束している。中央コアは、紐状に編まれ、または、例えば金属または生地により作られたメッシュであり、または、高い柔軟性を有して自分自身の上に裏返ることができる生体適合性の材料であってよい。バルブと中央コアは裏返った送達形態を有し、例えばイントロデューサーシースのようなシース内に送達のために収容される。バルブと中央コアは、めくれ返った留置形態を有し、シース内でバルブ装置の近位に入っていたプッシャを用いて構成部品は留置される。すなわち、プッシャを押すことで構成部品はめくり返り、シースから留置されるところに取り出される。本発明の経皮的臨時バルブシステムは、フィルタユニットとともにまたは別に使用される。本発明の経皮的臨時バルブシステムは、経皮的弁置換術、特に、米国出願公開第2010/0185275号公報および第2011/0172784号後方で詳細に説明したような、その場での組立を要する経皮的なモジュール式のバルブに関連して特に有用である。
【0025】
上述した実施形態および他の実施形態について、以下、添付した図面を参照して論じ、説明する。図面は本発明の典型例の理解のため、また、本発明の特定の実施形態を模式的に図示するのに用いられていることに留意すべきである。当業者は、本発明の範囲に属する同等の他の似た例を認識することができる。図面は、添付した特許請求の範囲で規定した本発明の範囲を限定する意図のものではない。
【0026】
図1は、本発明の単一ユニットの経皮的臨時バルブフィルタ装置を概略的に示す図であり、この装置は、凹形状の表面、凸形状の表面、および、一以上のフィルタ領域32を有するキャノピー31を有する統合されたバルブフィルタ30を備える。バルブフィルタ30は、その展開した作動形態が図1に示されており、当該作動形態において、バルブフィルタ30は、開いた傘の形状を有し、キャノピー31の凹形状の表面が心臓の方に向いている。この実施形態の一形態においては、キャノピー31の縁は、リング33を含む。リング33は、送達のために小さい直径のおよそ丸い構造になるように径方向に圧縮することができ、これによりバルブフィルタ30は送達形態に維持される。目標箇所に配置されると、リング3は完全に展開してバルブフィルタ30は作動形態をとることができる。リング33は、経皮的人工器具の折りたたみ式の骨格に一般的に使われるような材料、例えば、ニチノール、ステンレス鋼、コバルトクロミウムまたは例えばプラスチックなどの生体適合性材料から作成することができる。リング33は、折り畳みや径方向の圧縮を補助にするために、柔軟な箇所やねじれた箇所を含むことができる。他の案として、リング33は、送達のための径方向圧縮構造とプリセットした展開構造とを有する形状記憶材料から作ることができる。プレセット構造は、体温がトリガーとなってプリセット構造に復帰するように熱機械的にセットすることができる。一形態において、完全に展開すると、リング33は、過度の圧力を与えることなく大動脈壁16に密着することができる直径に達し、これにより、バルブフィルタ30の周りを残屑が通り抜けないように、バルブフィルタ30の縁を大動脈壁16に対して「シール」する。この実施形態の他の形態において、キャノピーの縁はリングが無く、キャノピーの材料それ自体がキャノピーの形状を維持する。
【0027】
キャノピー31は、後述するように、複数のフィルタ領域32を除き、血液に対して透過性でない材料からなる。キャノピー31の材料は、バルブフィルタ30を傘形状に維持することができるように実質的に硬いが、また、曲がって大動脈のアーチに一致し、送達形態に折り畳まることができるのに十分な程度に柔軟である。キャノピー31の材料は、生地、ポリマー、生体組織または他の材料からなる。限定的ではないが好適な生地は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびポリプロピレンを含む。限定的ではないが好適なポリマーは、PEBAX(アルケマ社)のようなポリエーテルブロックアミド、シリコンポリカーボネートウレタン、ポリウレタン、シリコン、ナイロンおよびPETを含む。限定的ではないが好適な生体組織は、牛心膜、ブタ心膜および同等に最小限に免疫原性の生体組織を含む。キャノピー31は、さらに、傘形状を支持するためにリブまたは支材(図示せず)を含むことができる。
【0028】
フィルタ領域32は、キャノピー31の血液透過性の領域である。すなわち、それらは血液が流れることができるのに十分に大きいが、塞栓をブロックするのに十分に小さい多孔質または孔径を有する。例えば、孔径は、10〜200ミクロン、50〜500、80〜250ミクロン、80〜200ミクロン、100〜200ミクロンが好ましい。フィルタ領域32は、最も効果的な血液の通過を達成するため、数、形およびサイズが変わりうる。フィルタ領域32は、どんな幾何学的形状をとることもでき、例えば、図1および1Aに概略的に図示したような楕円または丸または矩形をとることができる。キャノピー31のフィルタ領域32の数は、実施形態によって変わりうる。例えば、キャノピー31は、1〜30のフィルタ領域、または1〜10のフィルタ領域、または1〜5のフィルタ領域、特に、1または2または3のフィルタ領域を有することができる。フィルタ領域32は、透過性の膜を備えることができる。フィルタ領域32はフラップ35を含み、キャノピー31にヒンジで連結されて取り付けることができる。フラップ35は、フィルタ領域32と同じ形であってよく、または、異なる形状であってもよい。好ましくは、各フラップ35は、対応するフィルタ領域32と同じか僅かに大きい領域を有することで、閉じたときにフィルタ領域をカバーすることができる。
【0029】
フィルタ領域32は、キャノピー31と同じ材料によって製造することができるが、多孔質に修正される。他の案として、フィルタ領域は、キャノピーとは異なる材料で作られてもよい。フィルタ領域32を製造するためには、キャノピー31の材料によって、機械的な方法、例えば、レーザードリルまたは穴空けパンチまたは化学反応によってキャノピー31に穴が作られる。一実施形態において、フィルタ領域32は、微細空孔が作られた後にフラップ35が取り付けられたキャノピー31の変更領域である。他の実施形態においては、血液透過性の膜は、キャノピーの穴を閉じてフィルタ領域32を形成するために、キャノピー31に取り付けられる。透過性の膜は、使用材料に適切な公知の方法、例えば、接着剤、熱接合、または従来の機械的固定具によってキャノピー31に取付けられる。フラップ35は、ヒンジで連結されてキャノピー31に取り付けることができる。一実施形態において、このフラップ35の取付け箇所は、金属またはプラスチックにより作られた物理的な構造であるヒンジ36であってよい。ヒンジ36はフラップ35とともに当業者に知られた技術的方法、例えば、接着剤、熱接合、または従来の機械的固定具によって、キャノピー31の凸形状の表面に取り付けられる。他の実施形態においては、フィルタ領域32は、キャノピー31の材料の形状を部分的に切り取り、キャノピーの材料で作ったフラップ35を、フラップ35の部分の材料をキャノピー31に取り付けたままにして作り、ヒンジ36を形成し、キャノピー31のフィルタ領域32に透過性の膜を取り付けることによって作ることができる。「ヒンジ」によりまたは「ヒンジで連結された」は、例えば、スイングドアや二枚貝のようにフラップ35が横軸周りに移動することができるように、結合されまたは柔軟にとりつけられ、旋回軸または支点のように機能することを意味する。透過性の膜の材料は、キャノピー31の切り取った部分をカバーするようにキャノピー31の凹形状の表面に取り付けることができ、これによりフィルタ領域32を形成する。
【0030】
図1に図示した特定の実施形態のように、バルブフィルタ30のキャノピー31は、複数のフィルタ領域32を含むことができる。キャノピー31の凸形状の表面上、つまり、留置された装置の下流側に、各フィルタ領域32は、ヒンジ36によってフィルタ領域32に連結された対応するフラップ35を有している。心臓収縮期において、血液の脈動(図1に矢印で示した)により、フラップ35が開いて血液を通り抜けさせるが、塞栓はフィルタ32を通り抜けられない。心臓拡張期において、フラップ35が閉じて血液がフィルタ領域32を逆流、つまり、心臓に向かうのを阻止する。図1は高い密度のフィルタ領域32を図示しているが、ヒンジフラップ35が付いた2または3のそのようなフィルタ領域32、もしくは、1つの大きなフィルタ領域も好適であると考えられる。フラップ35は、塞栓に対し透過性ではない柔軟な材料で作ることができる。これらの柔軟なフラップの限定的ではない材料の例は、生地、ポリマー、生体組織または他の材料を含む。
【0031】
図1Aは、図1の実施形態のフィルタ領域32の一実施形態の部分拡大図を示している。前記したように、各フィルタ領域32は、血液に対して透過性であるが実質的に塞栓をブロックする膜を含むことができる。限定的ではないが好適な膜の材料は、キャノピー31にとって好ましいものと同様であるが、多孔質、織物、金属メッシュを含むメッシュに作られている。浸透質の膜は、例えば、約10μmから約2000μmの直径、または、約50μmから約500μmの直径、または約80μmから約200μmの直径の孔径を有することができる。各フィルタ領域32は、キャノピー31の凸形状の表面上に対応するフラップ35を有し、フラップ35は、ヒンジ36を介してキャノピーの表面に連結されている。フラップ35は、キャノピー31と同じ材料または血液に対して非透過性の他の材料により作ることができる。フラップ35は、心臓収縮期において、血液がフィルタ領域32を通って心臓から遠ざかる方向へ流れることができるように開き、心臓拡張期において、血液がフィルタ領域32を通って逆の方向へ流れるのを防ぐように閉じる。ヒンジ36は、受動的な構造でよく、キャノピー31の凸形状側、つまり、心臓と逆に向かう側または動脈に沿って下流側に位置している。このようにして、フラップ35は、装置の弁機能を実現する。血液の逆流は、心臓拡張期においてフラップ35を閉じ、これにより血液の流れを心臓から遠ざかる方に限定する。
【0032】
図1は、さらにキャノピー31の頂点38を通って延びるカテーテル20を示し、カテーテル20の遠位端がリング33の遠位に延びている。カテーテルに関し、「遠位」という用語は心臓に近い方向、または動脈に沿って上流側をいう。カテーテル20は、常設バルブまたはバルブ修復具をバルブフィルタ30の遠い箇所に送達することができる。キャノピー31の頂点38は、好ましくはカテーテル20に取り付けられている。キャノピーは、当該技術分野で公知の方法、例えば、接着または熱接合などの接合によってカテーテルまたは送達装置20に取り付けられることができる。
【0033】
経皮的臨時バルブフィルタ30は、図1に図示したように、好ましくは動脈内において、置換される大動脈弁に近いST接合部11と右上腕動脈12の分岐点との間に留置され、これにより、置換または修復によって発生した残屑は、上腕のアーチ内の動脈に入る前に効果的に捕捉される。他の案として、臨時バルブフィルタは、右上腕動脈12と左総頸動脈13の間、または、左総頸動脈13と左鎖骨下動脈14の下、または、さらに「下流」に配置することができる。装置の位置がST接合部11に対してより遠く―特に右上腕動脈12を超えて―であるほど、機能の犠牲が大きくなる。つまり、塞栓を一以上の動脈に入る前に捕捉する効果が徐々に減少する。
【0034】
図2,2Aおよび3は、繋がれたバルブユニット140,240およびフィルタユニット150,250を有するマルチユニットバルブフィルタ装置130,131を示している。各バルブユニット140,240は、バルブキャノピー141,241を有し、各フィルタユニット150,250は、フィルタキャノピー151,251を有する。バルブフィルタ装置130,230が留置されると、バルブユニット140,240は、バルブユニットバルブキャノピー141,241が心臓から遠い方を向く凹形状の表面を有するような作動形態をとり、フィルタユニット150,250は、フィルタキャノピー151,251が心臓の方に向く凹形状の表面を有するような作動形態をとる。バルブキャノピー141,241は、血液に対して透過性ではない柔軟な材料からなり、当該材料は、心臓拡張期において、血液が心臓の方に向かう逆流を防ぐように開いた傘形状に展開する。例えば、バルブキャノピー141,241は、心臓収縮期(図示せず)において、血流がバルブキャノピー141,241の少なくとも一部を径方向内側に曲げて心臓から遠ざかる下流へ血液が流れることができるように、十分に柔軟である。バルブキャノピー141,241の材料の限定的でない例は、生地、ポリマー、生体組織、または図1のキャノピー31用の上述した他の材料を含む。
【0035】
本実施形態の一形態において、バルブユニットとフィルタユニットは隣接しており(図示の通り)、本実施形態の他の形態において、バルブユニットとフィルタユニットは長手方向軸(図示せず)に沿っていくらかの距離をおいて離間している。他の実施形態において、バルブユニット140,240とフィルタユニット150,250は、つながっておらず、長手方向軸(図示せず)に沿っていくらかの距離で離間している。バルブフィルタ装置30の単一ユニットの実施形態のように、マルチユニットバルブフィルタ装置130,230または装置のフィルタユニット150,250は、動脈15内のST接合部11と右上腕動脈12の分岐点との間、または、さらに下流に留置することができる。留置されると、フィルタユニット150,250は、フィルタキャノピー151,251の凹形状の表面を心臓に向けた傘を開いた形状をとる。フィルタキャノピー151,251の縁は、リング153,253である。図1のバルブフィルタ30のリング33と同様に、リング153,253は、フィルタユニット150,250が送達形態にあるときに径方向に圧縮されて折り畳まれ、また、フィルタユニット150,250が作動形態にあるときは展開する。リング153,253は、リング33と同様に作られ、完全に展開したリング153,253は、過度の圧力を与えることなく大動脈壁16に密着し、フィルタユニット150,250の周りを残屑が通り抜けないように制限するシールとなる。フィルタユニット150,250は、血液に対して透過性であるが、塞栓に対して非透過性の材料からなる。好ましくは、80から200μmの穴を有し、孔径は、例えば、50から500μm、または10から2000μmの範囲である。例えば、バルブキャノピー31,141,241と同じ材料であるが多孔質に修正したもの、または、キャノピーの材料とは異なりフィルタ領域32と膜について上述したような、折り畳むのに柔軟な材料であれば、潜在的にはそのような穴を備える材料はフィルタユニット150,250に好適である。フィルタユニット150,250の穴は、繊維から製造することもできる。繊維は、所望の穴とするために、編まれ、織られ、または紐状に編まれる。図1および1Aのフィルタ領域と同様に、マルチユニット装置のフィルタユニットは例えば、10〜200ミクロン、50〜500ミクロン、80〜250ミクロン、80〜200ミクロン、または、100〜200ミクロンの孔径を有することができる。
【0036】
図2に示された実施形態において、バルブキャノピー141とフィルタキャノピー151の凹形状の表面は、互いに反対を向いている(凸形状が向かい合う)。この実施形態の一形態において、図2に示すように、バルブユニット140は、バルブキャノピー141の縁143を、カテーテル20のバルブフィルタ装置の近くに取り付けられたバンド142に連結する複数の線材144を備える。線材144は、ワイヤ、糸であってよく、または、バルブキャノピー141と同じ材料で作られていてもよく、一形態においてはバルブキャノピー141と一体構造であってもよい。組み合わせた状態で、線材144とバンド142は、バルブ140の作動形態を維持する。図2に示すように、この実施形態においては、心臓収縮期における血流の脈動は、バルブキャノピー141の縁143の線材144が連結された箇所間の部分を(径方向内側に曲げて血液を下流に流れるようにする)。心臓拡張期において、逆流は、キャノピーの縁143の線材144が連結された箇所間の部分を血管壁へ径方向外側に向けて曲げ、キャノピー141は完全に開き、これにより血液が下流へ流れるのを限定する。実施形態の一形態において、バンド142は、カテーテルの縁を、線材144を介して動かしながら、カテーテル20に沿って前後にスライド移動することができ、心臓収縮期に血液を流すのを許容し、心臓拡張期において、逆流を防止する。実施形態の他の形態において、バンド142は、開いたバルブキャノピー141の直径をコントロールするのに用いられる。このため、装置は動脈15の直径に調整することができ、大きな動脈内では、バンド142はバルブキャノピー141に向かって遠位へとスライドすることができ、小さな動脈内では、バンド142は、バルブキャノピー141から離れるように近位へとスライドすることができる。
【0037】
図2に示すように、常設バルブまたは修復具を送達するためのカテーテル20は、バルブユニット140とフィルタユニット150をともに通って延び、遠位端がリング153の遠位の空間に延びている。バルブ140の頂点148とフィルタユニット150の頂点158とは、それぞれ、カテーテル20に取り付けられていてもよい。
【0038】
この実施形態の他の形態においては、図2Aに示すように、バルブユニット140aは、支材ヒンジ146によってバルブユニット140aの頂点148に連結された複数の硬い支材145を含む。硬い支材145は、バルブユニット140の作動形態を維持するのを補助する。図2Aに示すように、この実施形態において、血流の脈動は、心臓収縮期においてバルブキャノピー141の硬い支材145同士の間の部分を径方向内側に曲げて血液が下流に流れるようにする。心臓拡張期において、逆流は、バルブキャノピー141の硬い支材145同士の間の部分を血管壁へ径方向外側に向けて曲げ、バルブキャノピー141は完全に開き、これにより血流が下流へ流れるのを限定する。支材ヒンジ146は、バルブフィルタ装置の送達の目的のために、バルブキャノピー141の縁の平面に垂直な平面内で支材が開閉するのを許容する。バルブユニット140aが送達形態にあると、支材145は閉じてバルブユニット140aを小さな断面に拘束する。留置すると、支材145は、ヒンジ146の自己展開機構によって開き、そして、それらは支材の先端が動脈壁16に接触しまたは実質的に閉じるような角度で開く。支材145は、金属やプラスチックのような硬い材料によって作ることができる。そのような材料の限定的でない例は、ニチノール、形状記憶合金、ステンレス鋼やCo−Crなどの金属を含む。
【0039】
図3に示すように、マルチユニット式のバルブフィルタ装置230の他の実施形態において、バルブフィルタ装置230は、バルブユニット240と、フィルタユニット250を含み、これらにおいてバルブキャノピー241とフィルタキャノピー251の凹形状の表面は互いに向かい合っている。バルブユニット240とフィルタユニット250は、構造と材料に関して図2および2Aで図示した実施形態に対応するものと同様に構成されている。この実施形態の一形態においては、バルブフィルタユニット240は、複数の硬い支材245、例えば3つの硬い支材を含んでバルブフィルタ装置のフレームを形成している。キャノピー241および251は、このフレームに取り付けられることができる。他の案として、バルブフィルタユニット240は、フレーム無しであってもよく、例えば図5で後述するような臨時バルブのクラゲ状の実施形態のように構成することもできる。
【0040】
第1送達システムは、バルブフィルタ装置が送達形態にあるときに径方向に拘束するため、カテーテル20およびバルブフィルタ装置を覆うシースまたは機械的拘束構造を含む。目標箇所に到達すると、シースは取り除かれバルブフィルタ装置は留置されて作動形態となる。さらに他の案として、リング33,133および233は、リングが、例えば低い温度において圧縮され、折り畳まれた送達形態をとることができるように形状記憶合金によって作ることができる。圧縮および折り畳みを誘起するため冷生理食塩水を血管中に注入することができる。常設バルブまたはバルブ修復具は、第1の送達装置の管腔を通って延びる第2の送達装置を介して送達することができる。
【0041】
本発明のバルブフィルタシステムは、臨時バルブフィルタ装置と、臨時バルブフィルタ装置を血管の目標箇所に送達する第1送達装置とを備えてなる。バルブフィルタ装置は、キャノピー41またはキャノピー141,151,241,251の頂点を通って延びるカテーテル20に装着されて送達することができる。バルブフィルタ装置は、好ましくは、使用中においてずっと送達装置に取り付けられる。第1送達装置は、カテーテルをさらに含み、当該カテーテルは、送達のため、内部にバルブフィルタ装置を収容することができる。バルブフィルタ装置は、目標箇所で、引張ワイヤおよび/または押し棒によって留置することができる。
【0042】
図3に示すように、凹形状が向かい合うマルチユニットバルブフィルタ装置230は、常設バルブまたは修復具を送達するため、バルブユニット240の頂点248とフィルタユニット250の頂点258の両方を通って延びる第2送達装置、すなわち、カテーテル20をも含み、カテーテル20の遠位部は、バルブユニット240の頂点248の遠位に延びている。図2および2Aのバルブフィルタ装置と同様に、心臓拡張期において、バルブユニット240のバルブキャノピー241の支材の間の部分は、径方向に広がって開いた傘形状になり逆流を防ぐ。心臓収縮期(図示せず)において、バルブキャノピー241の同じ部分は、支材の間で径方向内側に折り畳まり血液が血管を通って流れるのを許容する。そして血液は、フィルタユニット250を通り抜け、どの塞栓もバルブユニット240とフィルタユニット250の間の空間に捕捉され、保持される。
【0043】
他の実施形態において、バルブフィルタ装置60は実質的に平坦な部品を有し、図4A〜4Dに示すように、それはディスク形状であることができ、例えば、円形や、楕円形などであったりする。この実施形態の装置は、第1の実質的に平坦な部分またはディスク61,161と、第2の実質的に平坦な部分またはディスク62,162を備え、前記第1および第2の部分は、同軸上に位置合わせされている。この実施形態において、第1ディスク61,161は血液に非透過性でバルブのように機能し、第2ディスク62,162は、血液に透過性であるが塞栓には非透過性で塞栓フィルタのように機能する。第2ディスク62,162は透過性の膜を備えることができ、図1〜3の実施形態のために上述した材料により構成することができ、例えば、10〜200ミクロン、50〜500ミクロン、80〜250ミクロン、80〜200ミクロンまたは100〜200ミクロンの孔径を有することができる。図4A〜4Cのバルブフィルタ装置は、血液が第1ディスク61,161の周りを流れることができるように設計され、好ましくは心臓収縮期において少なくとも一部が下流に折り畳むことができるのに十分なほど柔軟であり、心臓拡張期においては、その実質的に平坦な構造を取り戻して血液の逆流を最小限に抑えるような十分な剛性と弾性を有する。矢印は血流の方向を示し、図4Aおよび4Cにおいては、バルブが心臓拡張期にどのように逆流を防ぐかを図示している。
【0044】
この実施形態の一形態においては、第1および第2ディスク61,62は同等の直径を有し、図4Aに示すように、互いに隣接して配置されている。例えば、第1ディスク61は、第2ディスク62の上に配置され、心臓拡張期に重なる。図4Aにおいて、第1および第2ディスク61,62の間には、図示を明快にするため、小さな空間が示されている。第1および第2ディスク61,62は、2つのディスクが送達装置20に連結される位置の中心で、周縁(縁)に沿った位置であるいはその両方の位置で互いに取り付けることができる。図4Aに示したように、バルブとして機能する第1ディスク61は完全に開くことができ、その縁は心臓拡張期において血管壁16に接触して血液の逆流を防止する。心臓収縮期において、第1ディスク61は中心へ向かって、例えば、送達装置20へ向かって十分に折り畳まることができ、図4Bに示すように血液が血管を通って流れるのを許容する。経皮的バルブフィルタ装置は、図4Aおよび4Bに示すように、ST接合部11と右上腕動脈12の分岐点の間に配置することができる。他の案として、バルブフィルタ装置は、右上腕動脈12と左総頸動脈13の間、または、左総頸動脈13と左鎖骨下動脈14の間、または、さらに「下流」に配置することができる。
【0045】
この実施形態の他の形態において、第1および第2ディスクは離れているが、図4Cに示すように、共通の長手方向軸に沿って位置している。動脈内への塞栓の濾過を最大化するために、濾過機能を有する第2ディスク62は、ST接合部11と右上腕動脈12の間に位置している。しかしながら、他の案として、第2ディスクは右上腕動脈12と左総頸動脈13の間、または、左総頸動脈13と左鎖骨下動脈14の間に配置することができる。
【0046】
この実施形態のさらに他の形態において、図4Dに示すように、第2ディスク162は、血液に透過性であるが塞栓に非透過性の内周部162aと血液に非透過性の外周部162bとを有することができる。血液に非透過性の第1ディスク161は、心臓拡張期において第2ディスク162の内周部162aに隣接して重なって配置され、透過性の内周部162aを閉じて血液の逆流(図示せず)を制限するが、送達装置20に沿って離れるようにスライドしバルブフィルタ装置を開き、血液は図4Dに示すように第2ディスクの内周部を通って流れることができる。矢印は血流の方向を示す。好ましくは、実施形態のこの形態のバルブフィルタ装置は、送達装置に「留め具」(図示せず)、または、第1ディスク161を第2ディスク162に連結する線材(図示せず)、または、心臓収縮期において第1ディスク161が送達装置20に沿ってスライドする距離を制限する同等の構造を含むことができる。図4Dの実施形態の他の形においては、第1ディスクは第2ディスクに中心で、例えばカテーテルの周囲で取り付けられ、これにより、第1ディスクは、心臓収縮期において血液が第2ディスクの内周部を通って流れることができるように曲がる。図4Dの実施形態は、図4Aおよび4Bの実施形態と同様に血管内に配置することができる。内周部162aのサイズは、血管を通って血液が流れるのに必要な最小半径と同じ大きさである。第2ディスク162の残り、つまり、外周部162bは、バルブフィルタ装置のフィルタ部、つまり第2ディスク162が血管に適合すれば、サイズについては自由である。特定の応用のために適切な断面積のパーセントは当業者の技術範囲内で決定することができる。
【0047】
図4A〜4Dの実施形態の第1および第2ディスクの好ましい材料は発明の他の形態で上述した。第2ディスク162の内周および外周部162a,162bは同じ材料で作ることができ(内周部は機械的または化学的手段によって透過性にして)、または、それらは異なる材料で作ることができる。
【0048】
これら図4A〜4Dのいずれの実施形態の形態においても、バルブフィルタ装置は送達形態を有し、第1(バルブ)ディスク61,161と第2(フィルタ)ディスク62,162は折り畳まれ、または送達装置20の周りでくるまれる。
【0049】
上述したいずれの実施形態においても、バルブフィルタ装置は自己展開することができる。例えば、図4A〜4Dの実施形態において、第2ディスクは自己展開することができる。図2の実施形態のリング142とワイヤ144は、バルブユニットの直径を制御し、略0の直径に縮小することもできる。他の案として、バルブおよびフィルタユニットまたは単一ユニットバルブフィルタユニットは手動で開く。
【0050】
本発明における経皮的臨時バルブシステム70と臨時バルブを留置する方法は図5A〜Cに図示されている。臨時バルブシステムは、臨時バルブ71と、中央コア72と、複数の線材74と、シース75と、プッシャー80とを含む。中央コア72は、開いた近位端(例えばプッシャ80に押される表面を提供するカフ)と、バルブ71に向き合い(隣接または非隣接で)または取り付けられた開いた遠位端とを備える管状である。バルブ71は、送達装置がその中に入るのに十分な大きさの開いた中心領域を有し、中心領域に開くバルブ71のエッジは、中央コア72の遠位端に取り付けられるか、または、中央コア72の遠位端が心臓収縮期においてバルブ中心の位置を支持し、維持することができるのに十分な直径および剛性を有する。複数の線材74は、臨時バルブ71の縁を中央コア72に連結する。複数の線材74のそれぞれは、当該技術分野で公知の手段、例えば、接着または接合によって中央コア72に取り付けることができる。線材74は、同様の手段によってバルブ71に取り付けることができる。好ましくは、線材74はバルブ71と同じ材料によって作られる。より好ましくは、バルブ71と線材74とは一体構造で、取付けを要しない、バルブと線材の全体を含むポリマーによる一体形成で構成される。
【0051】
臨時バルブシステム70は、送達形態を有し、図5Aに示すように、バルブ71と中央コア72は裏返り、例えば裏返った靴下(つま先が開いた)のように自分自身の上に裏返り、線材74とともにシース75の中に収容されている。中央コア72は好ましくはプッシャ80と直接連続しており自分自身の上に裏返ることができ、折り畳まれるとシース75の中に入ることができるような十分な柔軟性を有する材料から作られている。好ましくは、プッシャ80は、シース75の内径と適合する外径を有しシース75内に収容された構成部品をシース外に押し出すことができるようになっている。
【0052】
臨時バルブ71は、一度、中央コア72と臨時バルブ71がシース75の外に押し出された後に機能し始める。中央コア72は、好ましくは、常設バルブ装置またはバルブ修復具を運ぶカテーテルを入れるのに十分な大きさを有しており、常設バルブ装置またはバルブ修復具をバルブの遠位の箇所(でフィルタが使われる箇所)に通して送達する。それ故、使用時には、送達カテーテルはシース内に挿入され、中央コア72の開いた遠位端から出て臨時バルブ(でフィルタが使われる箇所)に通される。
【0053】
図5A〜Cの実施形態において、臨時バルブシステムのバルブ71は、図5Cに示すように、完全に留置された構造において、複数の線材74がバルブ71の縁を中央コア72、例えば、中央コア72の近位端の近くに連結して、クラゲ状の形を有する。他の案として、線材74はシース75(図示せず)に取り付けられていてもよい。この実施形態においては、線材とバルブは、例えばポリマー材料を成形して一つの部品として製造される。他の案として、線材74は、バルブ71に取り付けられたワイヤまたは糸であり、これらのワイヤまたは糸はバルブ71と同じ材料で作ることができる。線材74は、心臓拡張期においてバルブ71の直径を制御するために張力を提供する。線材74は、前後に引っ張られてバルブの直径を制御する。
【0054】
図5Bに示すように、バルブ71と中央コア72は、プッシャ80を使用してバルブと中央コアを裏返して留置される。プッシャ80は、例えば、カテーテルである。複数の線材74のそれぞれは、第1端がバルブ71の縁に取り付けられ、第2端が中央コア72の箇所、例えば中央コアの遠位端72bの近くに取り付けられている―中央コア72の遠位端72bは臨時バルブのキャノピーから最も遠い端にあり、中央コア72の近位端72aは、臨時バルブ71のキャノピーに取り付けられている。図5Cは、中央コアが装置の中心の下に広がった、完全に留置された臨時バルブを示す。図5A〜5Cの臨時バルブシステムは、図6に示すように上述した任意のフィルタユニットとともに使用することができる。
【0055】
一実施形態において、図5A〜5Cの臨時バルブは、左鎖骨下動脈(例えば、図1の要素14を参照)の近位に留置される。図6のような実施形態において、フィルタユニットは、塞栓の捕捉を最大化するため、好ましくは、右上腕動脈とST接合部(例えば、図1の要素12および11)の間に留置される。図6の実施形態の臨時バルブは、フィルタユニットまたはより近位の箇所、例えば左鎖骨下動脈(図1の要素14参照)の付近に留置することができる。臨時バルブとフィルタユニットが隣接していない実施形態において、フィルタユニットは、常設経皮的バルブ装置またはバルブ修復具を送達するのに用いる送達装置を用いて送達および留置することができる。
【0056】
臨時バルブの骨格である中央コア72は、紐状に編まれたものまたはメッシュのような柔軟な材料から作ることができる。中央コア72は、例えばニチノールまたは他の形状記憶合金のような生体適合性の金属から作ることができ、または、例えば重合材料のような生体適合性の生地から作ることができる。重合材料の限定的でない例は、例えば、ダクロンのようなポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリウレタンおよびナイロンを含む。中央コア72は、シース75(または図6に示したようなバルブ体にオプションのフィルタユニットが隣接した―送達装置175)によって拘束することができ、中央コア72を裏返すと、中央コアが解放されることによって中央コアがシースの外に押し出され、自己展開できる。バルブ71は複数の線材74によって中央コア72に取り付けられており、またその頂点―遠位端において取り付けられている。図5A〜Cおよび6の臨時バルブの実施形態の目的のため、「近位」は、装置が動脈に留置されたときに、部品の、心臓に近い方に向いた端をいい、「遠位」は、装置が動脈に留置されたときに、部品の、心臓から遠い方を向いた端をいう。中央コア72が開いた端を備えた管状である本発明の臨時バルブシステムを使用すると、臨時バルブをどこにでも配置することができ、例えば、動脈のアーチに沿って経皮的に臨時バルブを通じて第2送達装置を自己弁まで通し、そこで使用者は、経皮的な弁置換術また弁修復術を行うことができる。
【0057】
臨時バルブシステム70は、フィルタユニット90とともにまたは別に使用される。フィルタユニット90は、図2(フィルタユニット150)で説明したように傘形状のキャノピーを有するか、または図4A〜C(フィルタユニット62)で説明したように実質的に平坦とすることができる。
【0058】
本発明の臨時バルブフィルタ装置および臨時バルブの好ましい材料は、生地、ポリマーおよび生体組織または当該技術分野で公知の他の生体適合性の材料を含む。生地は、例えば、PET、PTFE、ePTFE、ポリプロピレンおよび類似の材料を含む。ポリマーは、例えば、PEBAX、シリコンポリカーボネートウレタン、シリコン、ポリウレタン、ナイロン、PETを含む。生体組織は牛心膜、ブタ心膜またはこれらと同様に免疫原性が最小限の生体組織を含む。
【0059】
本発明の経皮的臨時バルブフィルタシステムは、置換弁装置のような常設人工器官、または石灰化した弁の修復のための修復具をさらに備えてなる。常設装置または修復具は、図1,2,3,4Aおよび4Bに示すように、第1カテーテルであるカテーテル20の直径よりも小さい直径を有する、異なる、つまり、第2のカテーテルを用いて送達することができ、この第2のカテーテルは、カテーテル20を通り抜けて、常設装置または修復具をバルブフィルタまたはバルブの目標箇所の遠位箇所に送達することができる。
【0060】
本発明はまた、臨時バルブ装置を、例えば血管の目標箇所に留置する方法に関する。バルブフィルタ装置は、縮小された断面形状を残して送達形態に圧縮または折り畳まれ、動脈内での移動中にはカテーテルに収容される。バルブフィルタ装置は、例えば血管の目標箇所に到達すると、例えば経皮的手術において一般的に使われる押し棒および/または引張ワイヤによってカテーテルから解放することができる。解放された後、バルブフィルタ装置は作動形態に展開する。図1に示した単一ユニットの実施形態の場合、本発明の一形態において、キャノピー31の材料はバルブフィルタを開いた傘形状になる一方、リング33は円く展開して大動脈壁16に接触することができる。押し棒と引張ワイヤは、バルブフィルタの開いた傘形状を維持するのを補助するのにも用いられる。図2,2Aおよび3のマルチユニットの実施形態において、リング33,153および253は同様に展開してフィルタユニット150,250の縁は大動脈壁16に押し付けられ、塞栓の通過に対して効果的に血管をシールする。複数の支材145,245は、留置の間、例えば図2Aに図示したヒンジ146を介して自己展開機構によって径方向に開き、または、プリセットされた、例えば図3に図示した熱機械的にプリセットされたカーブした形状に展開し、これによりバルブユニット140,140a,240は作動形態に変形する。バルブフィルタ装置130,230が作動形態に留置された後、より小さい直径を有する第2送達装置は、送達装置を通されバルブフィルタ装置を通過して常設バルブ配置または弁形成の箇所に延びる。図4A〜4Dの装置は同様の方法で留置される。
【0061】
一実施形態において、前記臨時バルブフィルタシステムは常設経皮的人工弁をさらに含むことができ、前記方法は、臨時バルブフィルタを留置した後に、第2送達装置、例えばインナーカテーテルを用いて常設人工弁を留置することを含む。他の実施形態において、前記システムは、バルブ修復具をさらに含むことができ、前記方法は、第2送達装置から修復具を留置し、臨時バルブフィルタを留置した後に自己弁を修復することを含む。
【0062】
本発明はまた、臨時バルブを留置する方法に関する。図5A〜5Cで上述したように、前記方法は、折り畳まれた中央コアと、本体および複数の線材を備えてなる臨時バルブとを収容するシースを準備し、前記複数の線材は前記臨時バルブの周囲の縁を前記中央コアに連結し、前記中央コアはシースに取り付けられ、前記折り畳まれた中央コアと臨時バルブをプッシャを用いてシースから押し、これにより中央コアと臨時バルブを裏返して留置形態にする。他の案として線材はシースに取り付けることができる。
【0063】
当業者であれば、本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、各実施形態として特に本明細書中で図示し説明したことに対して多くの変形、追加、変更およびその他の応用を加えることができることが理解できるであろう。したがって、後述する請求項に規定された本発明の範囲は、予見できるあらゆる変形、付加、変更または応用を意図するものである。
図1-1A】
図2
図2A
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図6