(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ランド(8)は、前記幅拡大部分(8a)よりも前記第2の切れ刃(5b)側に、前記第1の切れ刃(5a)側から前記第2の切れ刃(5b)側に向かうにつれ幅が縮小する幅縮小部分をさらに含む、請求項5に記載の切削インサート。
前記第1の端面(2)に対向する方向から見て前記第1の切れ刃(5a)と直交する切断面において、前記第2の端面(3)と平行な直線を角度の基準とし、前記ランド(8)の傾斜角度をすくい角とするとき、前記接続部(6、102)の前記第1の切れ刃(5a)近傍でのすくい角は、前記第1の切れ刃(5a)の前記第1のコーナ部(7a)近傍でのすくい角よりも小さい請求項6に記載の切削インサート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について図面を適宜参照しながら説明する。まず、
図1から
図9を参照しながら、第1の実施形態に係る切削インサート1について説明する。
【0013】
切削インサート1は、2つの端面2、3と、周側面4と、を備えている。2つの端面2、3は、互いに対して実質的に反対側を向いている。周側面4は、2つの端面2、3の間に延在する。
図3に示されるように、切削インサート1は、一方の端面2に対向する方向から見て略三角形状を呈している。また、
図9に示されるように、他方の端面3も、端面3に対向する方向から見て略三角形状を呈している。すなわち、切削インサート1は、略三角形板状を呈している。
【0014】
切削インサート1の形状は、2つの端面2、3を貫通する基準軸線Cに対して、120°回転対称である。すなわち、切削インサート1は、基準軸線Cに対して3回回転対称な形状を呈している。基準軸線Cは、2つの端面2、3の、各々の中央を通る。切削インサート1には、これら2つの端面2、3を貫通するように延びる取り付け穴9が形成されている。取り付け穴9の中心軸線は、切削インサート1の基準軸線Cとほぼ一致する。基準軸線Cは、第1の端面2と直交するように延びている。第2の端面3は、実質的に平坦面である。第2の端面3は、切削インサート1が切削工具20に装着される際に着座面として機能する。第1の端面2と第2の端面3とは、互いに平行に配置されている。したがって、基準軸線Cは、第2の端面3に対しても直交するように延びている。
【0015】
ここでは、説明を容易にするため、2つの端面のうちの一方の端面2を「上面」と称し、他方の端面3を「下面」と称する。しかし、「上」および「下」という用語は、本発明を限定するものではなく、これら用語に基づいて本発明が限定的に解釈されることを意図しない。
【0016】
前述のとおり、切削インサート1は、120°回転対称な略三角形板状を呈している。したがって、上面2には、コーナ部7が3つ配置されている。ここでは、
図3に示すように、上面2に対向する方向から見て、左下に位置するコーナ部7を第1のコーナ部7aと称し、右下に位置するコーナ部7を第2のコーナ部7bと称する。なお、さらに詳しくみると、第1のコーナ部7aと第2のコーナ部7bとの間に鈍角のコーナが存する。しかし、ここではこの鈍角のコーナを無視し、上面2を略三角形として説明する。このような鈍角のコーナは上面2に存しなくてもよい。逆に、上面2は、さらに多くのコーナが存する複雑な輪郭形状とされていてもよい。切削インサート1のコーナ部7の曲率半径は、約0.8mmである。
【0017】
切削インサート1において、上面2と周側面4との交差稜線部の一部に切れ刃5が形成されている。切れ刃5は、上面2と周側面4との交差稜線部に沿うように形成されている。切削インサート1は、上面2の一部がすくい面として機能し、周側面4の一部が逃げ面として機能し、すくい面と逃げ面との交差稜線部が切れ刃5として機能する。切れ刃5は、2つの部分5a、5bを少なくとも含む。切れ刃5の2つの部分5a、5bは、隣り合うコーナ部7、7間に形成される。ここでは、部分5aを主切れ刃5aと称し、部分5bを副切れ刃5bと称する。主切れ刃5aと副切れ刃5bとは、接続部6によって接続されている。切れ刃5は、第1のコーナ部7a側から第2のコーナ部7b側に向かって、主切れ刃5a、接続部6、副切れ刃5bを順に備えている。
【0018】
切削インサート1の形状は120°回転対称であるため、切削インサート1は3つの切れ刃5が形成されている。また、各コーナ部7を挟むように、主切れ刃5aおよび副切れ刃5bが形成されている。切削インサート1による切削加工時は、1つのコーナ部7を挟む主切れ刃5aと副切れ刃5bとが機能する。主切れ刃5aと、当該主切れ刃5aとコーナ部7を挟む副切れ刃5bとは、略直角に交差するか、または90°以下の内角で交差している。さらに詳しく説明すると、切削インサート1は、
図3に示すように上面2に対向する方向から見て、主切れ刃5aと副切れ刃5bとが、コーナ部7を挟んで約89°の内角で交差している。このような形状の切削インサート1は、直角肩削り加工に適している。副切れ刃5bは、正面刃として機能することができる。副切れ刃5bは、仕上げ刃(ワイパー刃)を含むように形成されていてもよい。また、主切れ刃5aは、
図3に示すように上面2に対向する方向から見て、外側に突出するように緩やかに湾曲している。これにより、切削インサート1が切削工具に装着された際の主切れ刃5aの回転軌跡が正確な円筒状に近くなる。
【0019】
前述のとおり、切削インサート1は、3つの切れ刃5を有する。このため、1つの切れ刃5が使用されて摩耗などによって寿命に至っても、他の切れ刃5と位置を入れ替えることにより、当該切削インサート1の使用を継続することが可能である。各切れ刃5は、互いに同一の機能を有する。したがって、説明を簡単にするため、以下、1つの切れ刃5のみについて説明し、他の2つの切れ刃5の説明を省略する。また、上面2などについても、1つの切れ刃5の周辺の部位のみ説明し、他の切れ刃5の周辺の部位の説明を省略する。
【0020】
切削インサート1において、略三角形状の上面2の内接円の直径は、約14mmである。また、上面2の一辺の長さは、約16mmである。切削インサート1の厚さは、約6mmである。切削インサート1の各寸法は、被加工物の形状や切削条件などに応じて適時調整される。また、切削インサート1は、上面2と周側面4との交差稜線部の一部のみに切れ刃5が形成されている。しかしながら、切れ刃5は、交差稜線部の全域に形成されていてもよい。すなわち、接続部6の全域が切れ刃5として機能してもよい。
【0021】
周側面4は、下面3と内角で鈍角に交差している。切削インサート1は、全体として、いわゆるポジティブタイプである。ただし、周側面4は、上面2と鋭角に交差する部分と、鈍角に交差する部分と、を有している。具体的には、副切れ刃5bに接続する周側面4の部分は上面2と鋭角に交差し、主切れ刃5aに接続する周側面4の部分は上面2と鈍角に交差している。すなわち、周側面4のうち、主切れ刃5aに接続する部分は、逃げ角が負となるように形成されている。そして、周側面4のうち、コーナ部7および接続部6に接続する部分は、上面2との交差角度が鋭角と鈍角との間で徐々に変化している。したがって、
図5に示すように、端面2に対向する方向から切削インサート1を見ると、主切れ刃5aに接続する周側面4の部分の一部が見える。周側面4のうち、主切れ刃5aに接続する部分の逃げ角は約−3°であり、略一定である。
【0022】
図6および
図8に示すように、上面2と下面3の間に仮想の中間平面Mを定める。中間平面Mは、下面3と平行で、上面2と下面3との中央に定められることが好ましい。
図6および
図8に示すように、周側面4側から下面3と平行に切削インサート1を見ると、主切れ刃5aは下面3および中間平面Mに対して傾斜している。主切れ刃5aは、第1の傾斜部分5a1を有している。第1の傾斜部分5a1は、第1のコーナ部7a側から第2のコーナ部7b側に向かうにつれて、中間平面Mに近づくように傾斜している。ここでは、
図6に示すように、下面3に対して主切れ刃5aがなす傾斜角度を、「第1の傾斜角度A」と称する。切削インサート1の第1の傾斜角度Aは、約3°である。
【0023】
図6に示すように、接続部6は、主切れ刃5aと副切れ刃5bとを滑らかに接続している。接続部6は、下面3および中間平面Mに対して傾斜する第2の傾斜部分6aを有している。換言すると、接続部6は、主切れ刃5a側から副切れ刃5b側に向かうにつれ中間平面Mから離間する第2の傾斜部分6aを有している。ここでは、
図6に示すように、下面3に対して第2の傾斜部分6aがなす傾斜角度を「第2の傾斜角度B」と称する。切削インサート1の第2の傾斜角度Bは、約30°である。
【0024】
図7に示すように、接続部6は、第2の傾斜部分6aよりも第1の傾斜部分5a1側に、直線状部分6bを有している。直線状部分6bは、下面3および中間平面Mと略平行に、寸法Lで延伸している。寸法Lは、下面3が延びる方向と平行な方向における寸法であり、直線状部分6bの長さと称されることができる。切削インサート1の直線状部分6bの長さLは、約0.5mmである。
【0025】
図3から
図5に示すように、上面2はランド8を有している。ランド8は、帯状であり、切れ刃5および接続部6に沿うように延伸している。
図4および
図5に示すように、ランド8は、接続部6に沿う部分において、主切れ刃5a側から副切れ刃5b側に向かうにつれ幅が拡大する幅拡大部分8aを含んでいる。
【0026】
図示しないが、上面2は、主切れ刃5aと直交する切断面において、上面2と周側面4との交差稜線部(切れ刃5または接続部6)から離間するにつれ中間平面Mに近づくように傾斜している部分を有している。すなわち、上面2の少なくとも一部は、正のすくい角を有している。ここでは、ランド8の部分のすくい角を「ランド8の傾斜角度」と称する。すなわち、ランド8の傾斜角度もすくい角と称される。なお、すくい角およびランド8の傾斜角度の切削インサート1単体での角度の基準(0°)は、下面3と平行な基準線とされることができる。切削インサート1のすくい角およびランド8の傾斜角度は、切れ刃5および接続部6の全周にわたってほぼ一定とされている。しかし、すくい角およびランド8の傾斜角度は、切れ刃5または接続部6に沿って変化するように設けられていてもよい。例えば、接続部6の主切れ刃5a近傍でのすくい角およびランド8の傾斜角度は、主切れ刃5aの第1のコーナ部7a近傍でのすくい角よりも小さくてもよい。
【0027】
切削インサート1の材料は、少なくともその切れ刃5付近が、超硬合金、サーメット、セラミックスおよび立方晶窒化ほう素、それら硬質材料の表面にコーティングを施された材料、またはダイヤモンドなどである。なお切れ刃5付近以外の部分の材料も、同様の硬質材料などであることが好ましい。
【0028】
上記構成を備える切削インサート1は、
図2に示すように、切削工具20の工具ボデー21に対して装着される。切削工具20は回転切削工具である。より詳しくは、切削工具20は、直角肩削り加工を行うことができるラフィングカッタである。切削インサート1は、機械的取り付け手段であるクランプ部材を用いて、工具ボデー21に着脱自在に装着される。以下、
図2を参照しながら切削工具20についてさらに説明する。切削工具20は、クランプ部材として締め付けねじ24を用いている。
【0029】
切削工具20は、複数(ここでは4列5段の20個)のチップ座22が形成された工具ボデー21を備える。各チップ座22には、それぞれ1つの切削インサート1を着脱自在に装着することができる。なお、図示しないが、本発明は1つのみのチップ座が設けられた工具ボデーを備える切削工具を排除しない。
【0030】
工具ボデー21は、全体として略円柱状に形成されている。工具ボデー21は、中心軸線AXの周りに回転するように構成されている。中心軸線AXは、先端21aから後端21b側にかけて工具ボデー21を貫通するように定められる。以下、工具ボデー21の回転に伴ってチップ座22が進行する方向を「回転方向前方」と称する。
【0031】
工具ボデー21の先端21aには、4つのチップ座22が等間隔に形成されている。それぞれのチップ座22の回転方向前方には、切りくずポケット23が形成されている。各切りくずポケット23は、先端21aから後端21b側に向かって螺旋状に延在している。各切りくずポケット23に沿って、5つのチップ座22が階段状に配置されている。この切削工具20で用いられる複数の切削インサート1は、すべて同一構成を有し、同一形状を有する。しかし、複数のチップ座22は、工具ボデー21上の位置に応じて若干形状が異なる場合がある。特に、最も先端21a側に配置されるチップ座22の形状は、当該チップ座22よりも後端21b側に配置されるチップ座22の形状と異なっている。最も先端21a側に配置されるチップ座22は、切削インサート1の副切れ刃5bが正面刃として機能するように形成されている。これに対して、後端21b側のチップ座22は、副切れ刃5bが正面刃として機能することはない。
【0032】
工具ボデー21の各チップ座22には、上面2が回転方向前方を向くように、切削インサート1が装着されている。図示しないが、各チップ座22は、底面と、壁面とを有し、工具ボデー21の外周側に向けて開放されている。また、最も先端21a側に配置されるチップ座22は、工具ボデー21の先端21a側に向けても開放されている。ここでは、切削インサート1の下面3が接触する面を、チップ座22の底面と称している。また、切削インサート1の周側面4が接触する面を、チップ座22の壁面と称している。したがって底面は、回転方向前方を向いている。切削インサート1は、1つのコーナ部7を挟んだ1組の主切れ刃5aと副切れ刃5bとが使用可能になるようにチップ座22に配置され、締め付けねじによって固定される。チップ座22の底面は、締め付けねじ24が螺入されるねじ穴が形成されている。
【0033】
次に、切削インサート1および切削インサート1を備える切削工具20の作用および効果について説明する。また、切削インサート1の好ましい形態についても説明する。
【0034】
切削インサート1は、主切れ刃5aが、下面3に対して傾斜する第1の傾斜部分5a1を有する。このため、主切れ刃5aは、切削抵抗を低減したり、切りくずの排出性を向上したりすることに適している。また、切削インサート1は、主切れ刃5aと副切れ刃5bとの間の接続部6に、直線状部分6bを有する。
図7に示すように、直線状部分6bが下面3に対してなす傾斜角度(0°)は、第1の傾斜部分5a1が下面3に対してなす傾斜角度A(3°)よりも小さい。接続部6は、直線状部分6bを主切れ刃5a側に有する。これにより、接続部6が、主切れ刃5aの第1の傾斜部分5a1に対して急峻に立ち上がることが防止される。この結果、接続部6が主切れ刃5aで生成された切りくずの排出を阻害することがなく、切りくずがスムーズに排出される。さらに、切りくずが溜まることに起因して接続部6から欠損やチッピングが発生することが防止され、切削インサート1の工具寿命が延長される。
【0035】
このような作用・効果を得るためには、十分な長さの直線状部分6bが必要である。直線状部分6bの長さLは、0.2mm以上、かつ5mm以下の範囲にあることが好ましい。直線状部分6bの長さLが0.2mmに満たないと、切りくずをスムーズに排出することができず、接続部6から欠損やチッピングが発生しやすくなる。一方、接続部6は主切れ刃5aと副切れ刃5bとを接続する部分であるため、直線状部分6bの長さLが5mmを超えると、切削インサート1が大きくなり過ぎる。前述のように、切削インサート1は、直線状部分6bが下面3と平行である。このため、
図7に示すように、直線状部分6bの長さLは、下面3が延びる方向と平行な方向における長さと一致する。図示しないが、直線状部分6bが下面3に対して傾斜する場合においても、正面視で下面3が延びる方向と平行な方向における長さを直線状部分6bの長さLと定めるとよい。
【0036】
ところで、
図6に示される傾斜角度Bが0°または負の角度の場合は、副切れ刃5bを有しつつ、複数の切れ刃5を備えることが難しくなる。すなわち、第2の傾斜部分6aは、第1の傾斜部分5a1と逆方向に傾斜しなければ、副切れ刃5bに接続することが難しくなる。また、傾斜角度Bが40°を超えると、主切れ刃5aの第1の傾斜部分5a1に対して第2の傾斜部分6aが急峻に立ち上がるため、切りくずの排出が阻害されやすくなる。切りくずの排出が阻害されると、接続部6の周辺に切りくずが溜まりやすくなり、接続部6から欠損やチッピングが発生しやすくなる。
【0037】
したがって、傾斜角度Bは、0°よりも大きく、かつ40°以下の範囲にあることが好ましい。これにより、主切れ刃5aの傾斜部分5a1に対して接続部6の第2の傾斜部分6aが急峻に立ち上がることが防止される。
【0038】
なお、接続部6に、段階的に複数の傾斜部分が設けられていてもよい。段階的に複数の傾斜部分が設けられる場合は、最も主切れ刃5aに近い傾斜部分を第2の傾斜部分6aとして、前述の傾斜角度Bとするとよい。さらに、すべての傾斜部分の傾斜角度が0°よりも大きく、かつ40°以下の範囲にあることが好ましい。
【0039】
前述のとおり、切削インサート1は、周側面4のうち、主切れ刃5aに接続する部分は、逃げ角が負となるように形成されている。したがって、主切れ刃5aの強度が高く、欠損やチッピングが発生しにくい。なお、切削インサート1は、主切れ刃5aの逃げ角が正となるように切削工具20に装着される。
【0040】
上面2がランド8を有する場合、ランド8は、主切れ刃5a側から副切れ刃5b側に向かうにつれ幅が拡大する幅拡大部分8aを含むことが好ましい。ランド8の幅が拡大されることで、接続部6から欠損やチッピングが発生することを防止することができる。ランド8の幅は、副切れ刃5bに対して滑らかにつながるように変化させることが好ましい。切削インサート1のランド8の幅は、接続部6に接続する部分の中で徐々に変化している。ランド8の幅は、主切れ刃5aに接続する部分で約0.1mmであり、副切れ刃5bに接続する部分で約0.3mmである。
【0041】
幅拡大部分8aを含む場合、ランド8は、幅拡大部分8aよりも副切れ刃5b側に、不図示の幅縮小部分をさらに含んでいてもよい。幅縮小部分は、主切れ刃5a側から副切れ刃5b側に向かうにつれ幅が縮小する部分である。ランド8は、幅拡大部分8aと幅縮小部分とを共に含むことにより、接続部6におけるランド8の幅を、主切れ刃5aや副切れ刃5bにおけるランド8の幅の制約を受けることなく広げることができる。これにより、最も欠損やチッピングが発生しやすい接続部6において、欠損やチッピングを防止することができる。なお、接続部6のランド8の幅は、切削加工に関与する部分では、主切れ刃5aのランド8の幅と同一であることが好ましい。また、幅拡大部分8aは、接続部6の直線状部分6bまたは円弧状部分から幅の拡大が始まることが好ましい。
【0042】
接続部6の主切れ刃5a近傍でのすくい角、またはランド8の傾斜角度は、主切れ刃5aの第1のコーナ部7a近傍でのすくい角よりも小さいことが好ましい。換言すれば、接続部6におけるすくい角、またはランド8の傾斜角度が、主切れ刃5aにおけるすくい角よりも小さいことが好ましい。接続部6の主切れ刃5a近傍でのすくい角、またはランド8の傾斜角度は、0°であることが、さらに好ましい。接続部6におけるすくい角、またはランド8の傾斜角度を小さくすることで、接続部6の強度が高められ、接続部6から欠損やチッピングが発生することを防止することができる。
【0043】
切れ刃5および接続部6は、不図示のホーニングを有していてもよい。接続部6におけるホーニングの寸法は、主切れ刃5aにおけるホーニングの寸法よりも大きいことが好ましい。接続部6におけるホーニングの寸法を大きくすることで、接続部6の強度を高め、接続部6から欠損やチッピングが発生することを防止することができる。なお、ホーニングの寸法は、すくい面側に関するホーニングの幅で代表されることもできる。
【0044】
切削インサート1は、クランプ部材によって工具ボデー21に装着される。クランプ部材として、くさびや押さえ駒など、既知の技術を適用できる。ただし、切削工具20のようなラフィングカッタでは、切りくずを効率良く排出することが求められる。また、ラフィングカッタでは、びびりの発生を防止するため、切削抵抗を低くすることが求められる。このような要求に対応するため、切削インサート1の装着には、締め付けねじ24を用いることが好ましい。締め付けねじ24を用いることにより、切れ刃5に対して中央面部が低い切削インサート1を容易に装着することができる。また、すくい面側にくさびや押さえ駒などの障害物がないため、切りくずを効率良く排出することができる。このような切削工具は、工作機械に装着されることにより、鋼材などの切削加工に利用することができる。
【0045】
次に、
図10から
図13を参照しながら、第2の実施形態に係る切削インサート101について説明する。切削インサート101の構成のうち、第1の実施形態に係る切削インサート1の構成と同様のものには、同一の符号を付して説明を省略する。以下、切削インサート101の構成のうち、第1の実施形態に係る切削インサート1と異なる部分について主に説明する。
【0046】
切削インサート101は、互いに対して実質的に反対側を向いた上面2および下面3と、それらの間に延在する周側面4と、を備えている。
図11に示すように、切削インサート101は、上面2に対向する方向から見て略三角形状を呈している。また、上面2および下面3を貫通するように延びる取り付け穴9が形成されている。
【0047】
切れ刃5は、主切れ刃5aと、副切れ刃5bとを少なくとも含む。主切れ刃5aおよび副切れ刃5bは、隣り合うコーナ部7、7間に形成される。
図12に示すように、上面2と下面3の間に仮想の中間平面Mを定める。主切れ刃5aに接続する周側面4側から下面3と平行に見て、主切れ刃5aは下面3および中間平面Mに対して傾斜している。主切れ刃5aと副切れ刃5bとは、接続部102を介して接続されている。切れ刃5は、第1のコーナ部7a側から第2のコーナ部7b側に向かって、主切れ刃5a、接続部102、副切れ刃5bを順に備えている。
【0048】
図13に示すように、接続部102は、主切れ刃5aと副切れ刃5bとを滑らかに接続している。接続部102は、下面3および中間平面Mに対して傾斜する第2の傾斜部分102aを有する。換言すると、接続部102は、主切れ刃5a側から副切れ刃5b側に向かうにつれ中間平面Mから離間する第2の傾斜部分102aを有する。すなわち、
図12に示すように主切れ刃5aに接続する周側面4側から下面3と平行に見て、接続部102は、右側の部位ほど下面3および中間平面Mから離間する第2の傾斜部分102aを有する。ここでは、
図12に示すように、下面3に対して第2の傾斜部分102aがなす傾斜角度を「第2の傾斜角度B」と称する。切削インサート101の第2の傾斜角度Bは約30°である。
【0049】
図13に示すように、接続部102は、第2の傾斜部分102aより第1の傾斜部分5a1側に、略円弧状に形成された円弧状部分102bを有する。円弧状部分102bは、曲率半径Rの円弧である。曲率半径Rは、約70mmである。ただし、曲率半径Rが大きいため、円弧状部分102bは肉眼ではほぼ直線状に見える。
図10から
図13は、円弧状部分102bの丸みを強調して模式的に示している。また、
図10から
図13において、円弧状部分102bは、第2の傾斜部分102aに滑らかに接続するように描かれている。実際には、円弧状部分102bと第2の傾斜部分102aの間に、それらを滑らかに接続する別の円弧状部分が形成されていてもよい(図示しない)。第1の実施形態における直線状部分6bに相当する円弧状部分102bが形成されれば、別の円弧状部分はどのような形状でもよい。
【0050】
上記構成を備える切削インサート101は、第1の実施形態における切削工具20と同一の工具ボデー21に着脱自在に装着されることができる。切削インサート101が装着された切削工具については、第1の実施形態における切削工具20と同様であるため、説明を省略する。
【0051】
次に、切削インサート101の作用および効果について説明する。また、切削インサート101の好ましい形態についても説明する。
【0052】
切削インサート101は、第1の実施形態における切削インサート1と同様に、主切れ刃5aが、下面3に対して傾斜する第1の傾斜部分5a1を有する。加えて、主切れ刃5aと副切れ刃5bの間の接続部102は、曲率半径Rの円弧状部分102bを有する。接続部102が円弧状部分102bを有するため、主切れ刃5aの第1の傾斜部分5a1に対して急峻に立ち上がることが防止される。これにより、接続部102が主切れ刃5aで生成された切りくずの排出を阻害することがなく、切りくずがスムーズに排出される。この結果、切りくずが溜まることに起因して接続部102から欠損やチッピングが発生することが防止される。
【0053】
曲率半径Rが大きい円弧状部分102bは、第1の実施形態に係る切削インサート1の直線状部分6bと同様の作用・効果を得られる。円弧状部分102bの曲率半径Rは、5mm以上、かつ1000mm以下の範囲にあることが好ましい。曲率半径Rは、50 mm以上、かつ1000mm以下の範囲にあることがさらに好ましい。曲率半径Rは、5mmに満たないと、切りくずの排出が阻害される場合がある。曲率半径Rは、50mm以上にされると、直線状部分6bとほぼ同等の作用・効果が得られる。
【0054】
以上、切削インサートおよび切削工具の実施形態について説明した。しかし、本発明の範囲は前述の実施形態に限定されない。
【0055】
例えば、本発明はニックを有する切削インサートに適用することもできる。また、主切れ刃を直線状としたが、傾斜角度が変動する波状の主切れ刃にされていてもよい。さらに、本発明は、直角肩削りのできるラフィングカッタに限定されず、様々な切れ刃角の正面フライスや、円盤状のサイドカッタなどにも適用可能である。本発明は上記実施形態のような転削工具だけでなく、旋削工具や穴あけ工具等のその他の形態の切削工具にも適用可能である。
【0056】
また、前述した第1の実施形態に係る接続部6は、直線状部分6bを有している。一方、第2の実施形態に係る接続部102は、円弧状部分102bを有している。しかしながら、本発明はこれらの実施形態に限定されない。すなわち、本発明に係る接続部は、直線状部分および円弧状部分の双方を有していてもよい。
【0057】
前述した実施形態およびその変形例等では本発明をある程度の具体性をもって説明したが、本発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではない。本発明については、請求の範囲に記載された発明の精神や範囲から離れることなしに、さまざまな改変や変更が可能であることは理解されなければならない。すなわち、本発明には、請求の範囲によって規定される本発明の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が含まれる。