(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6361968
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】車両のフロントグリル
(51)【国際特許分類】
B60R 19/52 20060101AFI20180712BHJP
【FI】
B60R19/52 K
B60R19/52 E
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-169748(P2014-169748)
(22)【出願日】2014年8月22日
(65)【公開番号】特開2016-43819(P2016-43819A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2017年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】柏崎 望
(72)【発明者】
【氏名】増島 雄三
【審査官】
林 政道
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭60−065160(JP,U)
【文献】
特開2010−105489(JP,A)
【文献】
実開昭61−064059(JP,U)
【文献】
実開昭60−034948(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0190985(US,A1)
【文献】
特開2004−058762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/00−19/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前部に配置されるグリル本体と、
前記グリル本体を車体側に取り付けるために前記グリル本体の後面側の所定の取付位置に固定されるブラケットと、を備え、
前記ブラケットは、差込縁部と、この差込縁部の一端から離間する方向へ傾斜するように前記差込縁部の他端側から直線状に延びるブラケット傾斜部と、前記差込縁部から離間して設けられるブラケット側位置決め部とを有し、
前記グリル本体は、第1開口縁部を含む周縁によって区画される開口部と、前記第1開口縁部の一端から離間する方向へ傾斜するように前記第1開口縁部の他端側から直線状に延びる本体傾斜部と、前記ブラケット側位置決め部が後方の対向位置から係合可能な本体側位置決め部とを有し、
前記差込縁部を第1開口縁部側に傾け、前記ブラケット傾斜部を前記本体傾斜部に沿って摺動させながら、前記差込縁部を前記第1開口縁部に向けて移動させることによって、前記差込縁部が前記第1開口縁部の前方に差込まれ、前記差込縁部の差込みによって前記ブラケット側位置決め部が前記対向位置に案内され、
前記ブラケット側位置決め部を前記対向位置から前方へ移動させて前記本体側位置決め部に係合することによって、前記ブラケットが前記取付位置に位置決めされ、
前記取付位置の前記ブラケットの前記差込縁部は、前記第1開口縁部の前面に近接又は接触する
ことを特徴とする車両のフロントグリル。
【請求項2】
請求項1に記載のフロントグリルであって、
前記ブラケットは、前記差込縁部と前記ブラケット傾斜部とに区画される露出面部を有し、
前記ブラケット側位置決め部は、前記露出面部を挟んで前記差込縁部の反対側に配置され、
前記開口部の周縁は、前記第1開口縁部の前記他端から曲折して直線状に延びる前記本体傾斜部としての第2開口縁部を含み、
前記取付位置の前記ブラケットの前記露出面部は、前記開口部から前方へ露出する
ことを特徴とする車両のフロントグリル。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のフロントグリルであって、
前記ブラケットは、前記差込縁部の差込みにより前記ブラケット側位置決め部が前記対向位置に達した際に、前記グリル本体に当接して前記差込縁部の差込み方向への移動を制限する差込規制部を有する
ことを特徴とする車両のフロントグリル。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のフロントグリル構造であって、
前記開口部の周縁は、前記第1開口縁部と対峙する第3開口縁部を含み、
前記本体側位置決め部は、前記第3開口縁部に配置される
ことを特徴とする車両のフロントグリル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロントグリルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ラジエータグリルを、ラジエータグリル本体の上下端に爪部を設けられた爪部を介して車体に組み付け、ネジを介して車体側に固定する構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−58762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フロントグリル(ラジエータグリル)を車体側に取り付けるために、フロントグリルのグリル本体の後面側にブラケットを固定し、ブラケットを車体側に取り付ける構造がある。係る構造では、グリル本体に対するブラケットの取付位置の誤差によって、車体側に対するフロントグリルの位置が変動するため、グリル本体に対するブラケットの取付位置の精度を高める必要があり、ブラケットの取付作業の煩雑化を招く。
【0005】
そこで本発明は、簡単な作業でグリル本体の所定の取付位置にブラケットを固定することが可能な車両のフロントグリルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、本発明のフロントグリルは、車両の前部に配置されるグリル本体と、グリル本体を車体側に取り付けるためにグリル本体の後面側の所定の取付位置に固定されるブラケットと、を備える。
【0007】
ブラケットは、差込縁部と、ブラケット傾斜部と、ブラケット側位置決め部とを有する。ブラケット傾斜部は、差込縁部の一端から離間する方向へ傾斜するように差込縁部の他端側から直線状に延びる。ブラケット側位置決め部は、差込縁部から離間して設けられる。グリル本体は、開口部と、本体傾斜部と、本体側位置決め部とを有する。開口部は、第1開口縁部を含む周縁によって区画される。本体傾斜部は、第1開口縁部の一端から離間する方向へ傾斜するように第1開口縁部の他端側から直線状に延びる。ブラケット側位置決め部は、本体側位置決め部の後方の対向位置から本体側位置決め部に係合可能である。
【0008】
差込縁部を第1開口縁部側に傾け、ブラケット傾斜部を本体傾斜部に沿って摺動させながら、差込縁部を第1開口縁部に向けて移動させることによって、差込縁部が第1開口縁部の前方に差込まれ、差込縁部の差込みによってブラケット側位置決め部が上記対向位置に案内される。ブラケット側位置決め部を上記対向位置から前方へ移動させて本体側位置決め部に係合することによって、ブラケットが上記取付位置に位置決めされる。取付位置のブラケットの差込縁部は、第1開口縁部の前面に近接又は接触する。
【0009】
上記構成では、フロントグリルを車体側に取り付ける場合、作業者は、グリル本体にブラケットを固定し、ブラケットを車体側に取り付ける。グリル本体に対するブラケットの取付作業では、ブラケットの差込縁部をグリル本体の第1開口縁部側に傾け、ブラケット傾斜部を本体傾斜部に沿って摺動させながら、差込縁部を第1開口縁部に向けて移動させる。係る移動により、差込縁部が第1開口縁部の前方に差込まれ、差込縁部の差込みによってブラケット側位置決め部が上記対向位置に案内される。ブラケット側位置決め部が対向位置に案内された後、ブラケットを前方へ移動させて、ブラケット側位置決め部を本体側位置決め部に係合する。これにより、ブラケットが所定の取付位置に位置決めされ、係る状態でブラケットをグリル本体に固定する。
【0010】
このように、ブラケット傾斜部を本体傾斜部に沿って摺動させることにより、差込縁部が第1開口縁部の前方に差込まれ、本体側位置決め部と係合可能な対向位置にブラケット側位置決め部が案内されるので、グリル本体に対するブラケットの位置決めを容易に行うことができる。
【0011】
また、取付位置のブラケットの差込縁部は、グリル本体の第1開口縁部の前面に近接又は接触するので、車体側に固定されたグリル本体に外力が作用し、グリル本体の第1開口縁部が前方へ移動しようとすると、ブラケットの差込縁部が第1開口縁部と当接して第1開口縁部の前方への移動を規制するとともに、グリル本体に作用する外力が第1開口縁部及び差込縁部を介してブラケットから車体側へ入力する。このような荷重入力に際し、差込縁部と第1開口縁部とが線状に広範囲で当接するので、グリル本体とブラケットとの一体性が高まり、グリル本体の変形を抑制することができる。
【0012】
また、ブラケットは、差込縁部とブラケット傾斜部とに区画される露出面部を有してもよい。ブラケット側位置決め部を、露出面部を挟んで差込縁部の反対側に配置してもよい。開口部の周縁は、本体側傾斜部としての第2開口縁部を含んでもよい。第2開口縁部は、第1開口縁部の他端から曲折して直線状に延びる。取付位置のブラケットの露出面部は、開口部から前方へ露出する。
【0013】
上記構成では、ブラケットの露出面部は、グリル本体の開口部から前方へ露出して、フロントグリルの前面意匠の一部を構成する。従って、露出面部の色彩や質感等を変更することにより、フロントグリルのデザインの幅を広げることができる。
【0014】
また、ブラケットは、差込規制部を有してもよい。差込規制部は、差込縁部の差込みによりブラケット側位置決め部が上記対向位置に達した際に、グリル本体に当接して差込縁部の差込み方向への移動を制限する。
【0015】
上記構成では、ブラケット位置決め部が対向位置から外れるような差込縁部の過剰な差込みを、差込規制部とグリル本体との当接によって確実に防止することができ、ブラケットの位置決めをさらに容易に行うことができる。
【0016】
また、開口部の周縁は、第1開口縁部と対峙する第3開口縁部を含んでもよい。本体側位置決め部は、第3開口縁部に配置される。
【0017】
上記構成では、開口部を挟んで第1開口縁部の反対側となる領域のうち第1開口縁部からの距離が短い第3開口縁部に本体側位置決め部を配置しているので、ブラケット側位置決め部を対向位置から前方に移動させた際の移動軌跡の誤差を低減させることができ、ブラケット側位置決め部を本体側位置決め部に容易に係合させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡単な作業でグリル本体の所定の取付位置にブラケットを固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係るラジエータグリルを斜め前方から視た外観斜視図である。
【
図3】取付位置のカバーを斜め後方から視た斜視図である。
【
図4】グリル本体へのカバーの取付作業を説明するための要部斜視図である。
【
図5】位置決め直前のカバーをグリル本体の斜め前方から視た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明における前後方向方は車両の前後方向であり、左右方向は車両の前方を向いた状態での左右方向である。
【0021】
図1及び
図2に示すように、ラジエータグリル(フロントグリル)2は、グリル本体3と左右1対のカバー(ブラケット)4とを備え、車両1の前面に取り付けられる。グリル本体3は、車両1の前部に配置され、車幅方向に沿って起立する。左右のカバー4は、グリル本体3を車体側に取り付けるために、グリル本体3の後面側の左右の端部の所定の取付位置(
図3参照)にそれぞれ固定される。グリル本体3には、車体側に固定されたラジエータ(図示省略)への通気領域となる開口50が形成されている。なお、グリル本体3の端部及びカバー4は左側と右側とが略対称に構成されるため、以下では一方(左側)について説明し、他方(右側)の説明を省略する。
【0022】
カバー4は、一般面部5と上突出面部(露出面部)6と下突出面部7とが一体形成された板状体である。
【0023】
上突出面部6は、一般面部5の上部から前方へ突出する略台形の平板状領域である。上突出面部6の左端縁である上突出面左縁部10と、右端縁である上突出面右縁部(ブラケット傾斜部)11と、下端縁である上突出面下縁部9とは、それぞれ一般面部5から前方へ段差状に曲折する。上突出面左縁部10、上突出面右縁部11及び上突出面下縁部9の段差形状によって、カバー4の上側領域が補強されて面剛性が増大する。
【0024】
上突出面部6の上端縁である上突出面上縁部(差込縁部)8は、一般面部5の左右の上端縁の間で左右方向(車幅方向)に直線状に延び、左右の一般面部5の上端縁よりも前方及び上方へ突出する。上突出面上縁部8の前面側には、上突出面上縁部8から前方へ突出して補強する畝状の突部12が一体形成される(
図5参照)。上突出面上縁部8の左右両側の一般面部5の上端縁は、後述する左右の差込規制部13として機能し、上突出面上縁部8の左右の側縁は、後述する左右の移動規制部14として機能する。
【0025】
上突出面上縁部8と上突出面下縁部9とは、上突出面部6の上下を区画し、左右方向に延びる。上突出面左縁部10は、上突出面部6の左側を区画し、上下方向に延びる。上突出面右縁部11は、上突出面部6の右側を区画し、上突出面上縁部8の一端(左端)から離間する方向へ傾斜するように上突出面上縁部8の他端(右端)から右下方へ直線状に延びる。上突出面部6の後面には、車体側への取付用クリップ15(
図6参照)が固定される。
【0026】
下突出面部7は、一般面部5の下部から前方へ突出する略台形の平板状領域である。下突出面部7の左端縁である下突出面左縁部18と、右端縁である下突出面右縁部19と、上端縁である下突出面上縁部16と、下端縁である下突出面下縁部17とは、それぞれ一般面部5から前方へ段差状に曲折する。下突出面左縁部18、下突出面右縁部19、下突出面上縁部16及び下突出面下縁部17の段差形状によって、カバー4の下側領域が補強されて面剛性が増大する。下突出面上縁部16と下突出面下縁部17とは左右方向に延び、下突出面左縁部18は上下方向に延び、下突出面右縁部19は右下方へ直線状に傾斜して延びる。
【0027】
カバー4の右上端(上突出面部6の右側)の一般面部5には、上ボルト挿通孔20が形成され、上突出面部6と下突出面部7との間の一般面部5には、上位置決め孔(ブラケット側位置決め部)23と左右の中間ボルト挿通孔21とが形成され、カバー4の下端部(下突出面部7の下方)の一般面部5には、左右の下位置決め孔(ブラケット側位置決め部)24と左右の下ボルト挿通孔22とが形成される。上位置決め孔23及び下位置決め孔24は、上突出面部6を挟んで上突出面上縁部8の反対側に配置され、上突出面上縁部8から離間する。上位置決め孔23は、上突出面下縁部9の下方近傍に配置され、左右の下位置決め孔24は、左右の下ボルト挿通孔22の近傍に配置される。
【0028】
グリル本体3の前面端部には、上開口(開口部)25と下開口26とが形成される。
【0029】
上開口25は、カバー4を取付位置に設定することにより上突出面部6が後方から進入して露出可能なように、上突出面部6よりも僅かに大きい略台形の貫通領域であり、グリル本体3の上端近傍に配置される。上開口25の周縁は、上開口25の上方を区画する上開口上縁部(第1開口縁部)27と、下方を区画する上開口下縁部(第3開口縁部)28と、左側を区画する上開口左縁部29と、右側を区画する上開口右縁部(本体傾斜部、第2開口縁部)30とを含む。上開口上縁部27と上開口下縁部28とは、左右方向に延び、上開口左縁部29は、上下方向に延びる。上開口右縁部30は、上開口上縁部27の一端(左端)から離間する方向へ傾斜するように上開口上縁部27の他端(右端)から右下方へ直線状に延びる。上開口下縁部28と上開口左縁部29と上開口右縁部30とは、上突出面部6の周縁(上突出面下縁部9、上突出面左縁部10、上突出面右縁部11)の前方への突出に合わせて後方へ突出するように、一般面部31からそれぞれ曲折する。上開口上縁部27は、一般面部31の左右の上端縁の間を直線状に連結する橋渡し形状であり、一般面部31の左右の上端縁から後方へ突出するように曲折する。上開口下縁部28、上開口左縁部29及び上開口右縁部30の曲折形状によって、上開口25の周縁が補強される。
【0030】
上開口25の右側には上締結部31が、上開口25の下方の左右には中間締結部32が、下開口26の下方の左右には下締結部33がそれぞれ設けられ、各締結部31,32,33には、ボルト締結孔34が形成される。カバー4が取付位置に設定された状態で、上締結部31のボルト締結孔34は上ボルト挿通孔20と連通し、左右の中間締結部32のボルト締結孔34は左右の中間ボルト挿通孔21とそれぞれ連通し、左右の下締結部33のボルト締結孔34は左右の下ボルト挿通孔22とそれぞれ連通する。係る状態で、各ボルト挿通孔に後方からボルト(ビス)35を挿入してボルト締結孔34に螺合することによって、カバー4が取付位置に固定される。
【0031】
上開口下縁部28には、後方へ突出する上位置決め突起(本体側位置決め部)36が形成され、左右の下締結部33には、後方へ突出する左右の下位置決め突起(本体側位置決め部)37が形成される。カバー4の上位置決め孔23がグリル本体3の上位置決め突起36の後方の対向位置から前方へ移動すると、上位置決め孔23に上位置決め突起36が挿入されて、両者が係合する。同様に、カバー4の左右の下位置決め孔24がグリル本体3の左右の下位置決め突起37の後方の対向位置から前方へ移動すると、左右両側で下位置決め孔24に下位置決め突起37が挿入されて、両者が係合する。
【0032】
下開口26は、カバー4を取付位置に設定することにより下突出面部7が後方から進入して露出可能なように、下突出面部7よりも僅かに大きい略台形の貫通領域であり、上開口25の下方に配置される。下開口26の周縁は、下開口26の上方を区画する下開口上縁部38と、下方を区画する下開口下縁部39と、左側を区画する下開口左縁部40と、右側を区画する下開口右縁部41とを含む。下開口上縁部38と下開口下縁部39とは左右方向に延び、下開口左縁部40は上下方向に延び、下開口右縁部41は、右下方へ直線状に延びる。下開口上縁部38と下開口下縁部39と下開口左縁部40と下開口右縁部41とは、上突出面部6の周縁(上突出面上縁部8、上突出面下縁部9、上突出面左縁部10、上突出面右縁部11)の前方への突出に合わせて、後方へ突出するように一般面部31からそれぞれ曲折する。下開口上縁部38、下開口下縁部39、下開口左縁部40及び下開口右縁部41の曲折形状によって、下開口26の周縁が補強される。
【0033】
図4に示すように、上突出面上縁部8が上開口上縁部27側に傾くように、グリル本体3に対してカバー4を傾け、カバー4の上突出面右縁部11をグリル本体3の上開口右縁部30に左斜め下方から押し当て、上突出面右縁部11を上開口右縁部30に沿って摺動させながら、上突出面上縁部8が上開口上縁部27に向かうようにカバー4を上方へ移動させると、上突出面上縁部8が上開口上縁部27の前方に差込まれる。上突出面上縁部8の差込みによって、カバー4の上位置決め孔23及び下位置決め孔24は、対向位置にそれぞれ案内される。上位置決め孔23及び下位置決め孔24が対向位置に達すると、カバー4の左右の差込規制部13がグリル本体3の上開口上縁部27の左端部27L及び右端部27Rにそれぞれ当接して、上突出面上縁部8(カバー4)の差込み方向(上方)への移動を制限する。また、カバー4の左右の移動規制部14がグリル本体3の上開口上縁部27の左端部27L及び左端部27Rにそれぞれ近接又は接触して、差込み方向と交叉する方向(左右方向)への上突出縁部(カバー4)の移動を規制する。対向位置の上位置決め孔23及び下位置決め孔24は、カバー4の上位置決め突起36及び下位置決め突起37と対向する。
【0034】
上位置決め突起36及び下位置決め突起37が対向位置から前方へ移動するように、グリル本体3に向けてカバー4を前方へ傾動し、上位置決め孔23及び下位置決め孔24を上位置決め突起36及び下位置決め突起37に係合することによって、カバー4が取付位置に位置決めされる。カバー4を取付位置に設定した状態において、カバー4の上突出面部6及び下突出面部7は、グリル本体3の上開口25及び下開口26に後方から進入し、上開口25及び下開口26と係合するとともに、各前面が前方へ露出する。また、カバー4の上突出面上縁部8は、グリル本体3の上開口上縁部27の前面に近接又は接触する。
【0035】
フロントグリル2を車体側に取り付ける場合、作業者は、グリル本体3にカバー4を固定し、カバー4を車体側に取り付ける。グリル本体3に対するカバー4の取付作業では、上突出面上縁部8が上開口上縁部27側に傾くようにグリル本体3に対してカバー4を傾け、上突出面右縁部11を上開口右縁部30に沿って摺動させながら、上突出面上縁部8を上開口上縁部27に向けて移動させる。係る移動により、上突出面上縁部8が上開口上縁部27の前方に差込まれ、カバー4の左右の差込規制部13がグリル本体3の上開口上縁部27の左端部27L及び左端部27Rにそれぞれ当接し、上位置決め孔23及び下位置決め孔24が対向位置に案内される。上位置決め孔23及び下位置決め孔24が対向位置に案内された後、上突出面上縁部8を中心としてカバー4を前方へ傾動させて、上位置決め突起36及び下位置決め突起37に上位置決め孔23及び下位置決め孔24を係合する。これにより、カバー4が所定の取付位置に位置決めされる。カバー4の位置決め後、ボルト35によってカバー4をグリル本体3に固定し、取付用クリップ15を車体側のパネル51に係合して(
図6参照)、フロントグリル2を車体側に取り付ける。
【0036】
本実施形態によれば、上突出面右縁部11を上開口右縁部30に沿って摺動させることにより、上突出面上縁部8が上開口上縁部27の前方に差込まれ、上位置決め突起36及び下位置決め突起37と係合可能な対向位置に上位置決め孔23及び下位置決め孔24が案内される。従って、上突出面上縁部8を上開口上縁部27の前方に直接差込む場合に比べて、カバー4の位置決めを容易に行うことができる。
【0037】
カバー4の上突出面上縁部8は、畝状の突部12によって補強され、取付位置でグリル本体3の上開口上縁部27の前面に近接又は接触する。このため、車体側に固定されたグリル本体3(フロントグリル)に外力が作用し、グリル本体3の上開口上縁部27が前方へ移動しようとすると、カバー4の上突出面上縁部8が上開口上縁部27と当接して上開口上縁部27の前方への移動を規制するとともに、グリル本体3に作用する外力が上開口上縁部27及び上突出面上縁部8を介してカバー4から車体側へ入力する。このような荷重入力に際し、上突出面上縁部8と上開口上縁部27とが線状に広範囲で当接するので、グリル本体3とカバー4との一体性が高まり、グリル本体3の変形を抑制することができる。
【0038】
カバー4の上突出面部6及び下突出面部7は、グリル本体3の上開口25及び下開口26から前方へ露出して、フロントグリルの前面意匠の一部を構成する。従って、上突出面部6及び下突出面部7の各前面の色彩や質感等を変更することにより、フロントグリルのデザインの幅を広げることができる。
【0039】
上位置決め孔23及び下位置決め孔24が対向位置から外れるような上突出面上縁部8の過剰な差込みを、左右の差込規制部13とグリル本体3との当接によって確実に防止することができ、カバー4の位置決めをさらに容易に行うことができる。
【0040】
また、上開口25を挟んで上開口上縁部27の反対側となるカバー4の領域のうち上開口上縁部27からの距離が短い上開口下縁部28に上位置決め突起36を配置しているので、上位置決め孔23を対向位置から前方に移動させた際の移動軌跡の誤差を低減させることができ、上位置決め孔23を上位置決め突起36に容易に係合させることができる。
【0041】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【0042】
例えば、上突出面部6の周縁のうち上突出面右縁部11以外の領域をブラケット傾斜部としてもよく、上開口25の周縁のうち上開口右縁部30以外の領域を本体傾斜部としてもよい。
【0043】
カバー4に上突出面部6を形成せずに差込縁部とブラケット傾斜部とを形成し、差込まれた差込縁部の露出のみを許容するようにグリル本体3の上開口25を小さく(細長状に)形成し、上開口25以外の領域に本体傾斜部を形成してもよい。
【0044】
また、ブラケット側位置決め部を突起形状とし、本体側位置決め部を孔形状としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、様々な車両のフロントグリルに適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 車両
2 ラジエータグリル(フロントグリル)
3 グリル本体3
4 カバー(ブラケット)
6 上突出面部(露出面部)
7 下突出面部
8 上突出面上縁部(差込縁部)
11 上突出面右縁部(ブラケット傾斜部)
13 差込規制部
14 移動規制部
15 取付用クリップ
23 上位置決め孔(ブラケット側位置決め部)
24 下位置決め孔(ブラケット側位置決め部)
25 上開口(開口部)
26 下開口
27 上開口上縁部(第1開口縁部)
28 上開口下縁部(第3開口縁部)
30 上開口右縁部(本体傾斜部、第2開口縁部)
36 上位置決め突起(本体側位置決め部)
37 下位置決め突起(本体側位置決め部)