(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種のポンプは、経年劣化や使用時の負担等が蓄積されることで異常が生じることがある。例えば、ダイヤフラムは、強度が比較的弱い材料(弾性材料等)により構成されるため、異常が現れ易く、定量吐出機能の低下につながる。そのため、ダイヤフラムの異常を早期に検出することが望まれている。
【0006】
本発明は、前記提案の技術に関連してなされたものであり、ダイヤフラムの異常を早期に検出することで、ポンプの不具合による影響を抑制して、その使用性を高めることが可能なポンプシステム及びポンプの異常検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するために、本発明は、流体を流入及び流出可能なポンプ室を有するボディと、前記ボディの内部で該ボディの軸線方向に沿って変位自在な変位体と、
前記ボディの内部で前記変位体
に一端が固定される一方で、前記ボディ
に他端が固定される
筒状の連結部と、前記ボディの内部に設けられる充填室に、充填される非圧縮性流体からなる間接媒体と、前記ボディの内部で前記ポンプ室と前記充填室の間に設けられ、前記間接媒体の流動作用下に前記ポンプ室の前記流体を流入又は流出させるダイヤフラムと、を備えるポンプシステムであって、前記充填室は、少なくとも
前記ボディの内面と、前記連結部の内面と、前記ダイヤフラムの一方面とで囲われて前記間接媒体を封液しており、前記充填室内の前記間接媒体の圧力を検出する圧力検出部と、前記圧力検出部が検出した検出値を取得し、前記検出値のみを用いて前記ダイヤフラムの異常を判別する判別処理部と、を備え
、前記ボディは、前記充填室に連通し前記間接媒体を充填するための充填ポートを有し、前記圧力検出部は、前記充填ポートに検出部が挿入固定されて該充填ポートを閉塞していることを特徴とする。
【0008】
上記によれば、ポンプシステムが間接媒体の圧力を検出する圧力検出部と、検出値に基づきダイヤフラムの異常を判別する判別処理部とを備えることで、ユーザは、ダイヤフラムの異常を簡単且つ早期に認識することができる。すなわち、充填室内に封液された間接媒体の圧力はダイヤフラムの変形に直接的に影響を受けるため、判別処理部がその圧力を監視することで、ダイヤフラムの異常を早期に発見することができる。これにより例えば、ポンプのメンテナンスや交換を早い段階で実施することが可能となり、装置に生じ得る経年劣化や負荷の蓄積によるポンプの不具合(流体の吐出量の変化、間接媒体の漏洩等)を良好に抑制することができる。
【0010】
また、圧力検出部の検出部が充填ポートに挿入固定されることで、間接媒体が充填された充填室を容易に閉塞し、また充填室の圧力を確実に検出することができる。さらに、ボディ等に圧力検出部を別に設けるための構成が必要なくなるので構造が簡単化する。
【0011】
また、前記圧力検出部は、前記ダイヤフラムの近傍位置に設けられるとよい。
【0012】
このように、圧力検出部がダイヤフラムの近傍位置に設けられることで、間接媒体がダイヤフラムにかける圧力をより精度よく検出することができる。
【0013】
ここで、前記ポンプシステムは、前記判別処理部が前記ダイヤフラムの異常を判別した場合に、異常を報知する報知手段を有することが好ましい。
【0014】
このように、判別処理部がダイヤフラムの異常を判別した場合に、報知手段により異常を報知することにより、作業者はポンプの異常を容易に認識することができる。
【0015】
また、前記ポンプシステムは、前記ポンプ室に前記流体を供給する又は前記ポンプ室から前記流体を排出する電磁弁を有し、前記判別処理部は、前記ダイヤフラムの異常を判別した場合に、前記電磁弁の駆動を停止する構成としてもよい。
【0016】
このように、判別処理部がダイヤフラムの異常を判別した場合に、電磁弁の駆動を停止することで、ポンプ室に流体が流動することを遮断すると共に、電磁弁に間接媒体が流出して流体に混入することを防ぐことができる。
【0017】
さらに、前記ポンプシステムは、通電作用下に前記変位体を軸線方向に沿って変位させる駆動部を前記ボディの端部に備え、前記判別処理部は、前記ダイヤフラムの異常を判別した場合に、前記駆動部の通電を停止する構成としてもよい。
【0018】
このように、判別処理部がダイヤフラムの異常を判別した場合に、駆動部の通電を停止することで、ポンプによる流体の流動が停止されるので、間接媒体の流出を効果的に抑制することができる。
【0019】
またさらに、前記ポンプシステムは、前記ポンプ室からの前記流体の流出を受ける装置に設けられ、前記判別処理部は、前記装置の制御部に接続される又は前記制御部に併設されるものであり、前記ダイヤフラムの異常を判別した場合に、前記装置の駆動を停止する構成であってもよい。
【0020】
これにより、ポンプシステムを設けた装置を、早期に駆動停止することができ、装置の吐出対象に与える悪影響を抑止することができる。
【0021】
そして、
前記検出値は、前記変位体が前記ダイヤフラムに向かって移動した際に高まる圧力の時間的な変化を示す圧力波形であり、前記判別処理部は、前記検出値の圧力波形のうち安定期の最高圧力と、閾値とを比較して前記ダイヤフラムの異常を判別するとよい。
【0022】
また、
前記検出値は、前記変位体が前記ダイヤフラムに向かって移動した際に高まる圧力の時間的な変化を示す圧力波形であり、前記判別処理部は、前記検出値の圧力波形のうち安定期の平均圧力と、閾値とを比較して前記ダイヤフラムの異常を判別してもよい。
【0023】
前記検出値は、前記変位体が前記ダイヤフラムに向かって移動した際に高まる圧力の時間的な変化を示す圧力波形であり、前記判別処理部は、前記検出値の圧力波形のうち安定期の最低圧力と、閾値とを比較して前記ダイヤフラムの異常を判別してもよい。
【0024】
前記検出値は、前記変位体が前記ダイヤフラムに向かって移動した際に高まる圧力の時間的な変化を示す圧力波形であり、前記判別処理部は、前記検出値の圧力波形のうち圧力の立ち上がり時の最高圧力と、閾値とを比較して前記ダイヤフラムの異常を判別してもよい。
【0025】
前記判別処理部は、所定期間における前記検出値の総和量を算出し、該総和量と総和閾値とを比較して前記ダイヤフラムの異常を判別してもよい。
【0026】
前記検出値は、前記変位体が前記ダイヤフラムに向かって移動した際に高まる圧力の時間的な変化を示す圧力波形であり、前記判別処理部は、前記検出値の圧力波形のいずれかの勾配と、角度閾値とを比較して前記ダイヤフラムの異常を判別してもよい。
【0027】
前記検出値は、前記変位体が前記ダイヤフラムに向かって移動した際に高まる圧力の時間的な変化を示す圧力波形であり、前記判別処理部は、前記検出値の圧力波形のうち圧力の立ち上がりの時間遅れを検出して前記ダイヤフラムの異常を判別してもよい。
【0028】
前記検出値は、前記変位体が前記ダイヤフラムに向かって移動した際に高まる圧力の時間的な変化を示す圧力波形であり、前記判別処理部は、前記検出値の圧力波形のうち安定期に移行するまでの時間遅れを検出して前記ダイヤフラムの異常を判別してもよい。
【0029】
ポンプシステムは、上記にあげた判別処理部の判別方法によって、間接媒体の圧力の変化に基づきダイヤフラムの異常を容易に検出することができる。
【0030】
この場合、前記判別処理部は、複数の異なる種類の判別を行って前記ダイヤフラムの異常を判別することが好ましい。
【0031】
このように、ポンプシステムは、複数の異なる種類の判別を行うことで、ダイヤフラムの状態を異なる方法で判断することができるため、ダイヤフラムの異常をより正確に判別することができる。
【0032】
さらに、前記判別処理部は、前記検出値の圧力波形を複数用いて前記ダイヤフラムの異常を判別する構成であってもよい。
【0033】
このように、ポンプシステムは、検出値の圧力波形を複数用いてダイヤフラムの異常を判別することにより、ダイヤフラムの異常を一層精度よく判別することができる。
【0034】
また、上記の課題を解決するために、本発明は、流体を流入及び流出可能なポンプ室を有するボディと、前記ボディの内部で該ボディの軸線方向に沿って変位自在な変位体と、
前記ボディの内部で前記変位体
に一端が固定される一方で、前記ボディ
に他端が固定される
筒状の連結部と、前記ボディの内部に設けられる充填室に、充填される非圧縮性流体からなる間接媒体と、前記ボディの内部で前記ポンプ室と前記充填室の間に設けられ、前記間接媒体の流動作用下に前記ポンプ室の前記流体を流入及び排出させるダイヤフラムと、を備えるポンプの異常検出方法であって、前記充填室は、少なくとも
前記ボディの内面と、前記連結部の内面と、前記ダイヤフラムの一方面とで囲われて前記間接媒体を封液しており、
且つ前記ボディは、前記充填室に連通し前記間接媒体を充填するための充填ポートと、前記充填ポートに検出部を挿入固定して該充填ポートを閉塞する圧力検出部と、を備え、前記圧力検出部により前記充填室内の前記間接媒体の圧力を検出する工程と、判別処理部により前記圧力検出部が検出した検出値を取得し、前記検出値のみを用いて前記ダイヤフラムの異常を判別する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、ダイヤフラムの異常を早期に検出することで、ポンプの不具合による影響を抑制して、その使用性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明に係るポンプシステムについてポンプの異常検出方法との関係で好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0038】
一実施形態に係るポンプシステム10は、半導体等の製造装置、塗装用装置又は医療用機器等(以下、適用装置12という:
図2参照)に設置され、適用装置12の吐出対象に一定量の流体Lを吐出する機能を有する。なお、ポンプシステム10は、使用用途について特に限定されず、種々の装置や流路に適用してよい。
【0039】
図1に示すように、ポンプシステム10は、ポンプ本体部(以下、単にポンプ14という)と、ポンプ14との間で流体Lの供給及び排出を行う3方弁16と、ポンプ14を駆動制御するコントローラ18とを含む。またコントローラ18には、ポンプ14の異常を報知する報知部20(報知手段)が接続されている。
【0040】
ポンプ14は、所定の部材により内部構造が構成されるボディ22を有し、このボディ22の外側部分にもポンプシステム10を構成する部材が幾つか取り付けられる。なお、以下では、
図1中の矢印A方向及び矢印B方向に沿って各構成の方向又は位置を説明する他、矢印A方向をポンプ14の基端方向(基端側)とも言い、矢印B方向をポンプ14の先端方向(先端側)とも言う。
【0041】
ポンプ14のボディ22は、例えば、金属材料により構成され、内側に中空部26を有するハウジング24と、ハウジング24の矢印B方向の一端部を閉塞するポンプヘッド28とを含む。また、ボディ22の他端側(矢印A方向側)には、ポンプ14を駆動するための回転駆動源30(駆動部)が装着される。さらに、ボディ22の側周面には、前記3方弁16、圧力センサ32(圧力検出部)及び前記コントローラ18が取り付けられる。
【0042】
ボディ22を構成するハウジング24は、矢印B方向に向かって外径及び内径が徐々に大きくなるテーパ状の円筒体となっている。ハウジング24の矢印B方向側の端部には、径方向外側に略直角に屈曲して若干突出し、さらに突出端部から矢印A方向に向かって略直角に屈曲して所定長さ延びる折返部24aが一体成形される。折返部24aは、ハウジング24の主要胴体部の外周面から離間し、ポンプヘッド28と協働して3方弁16を安定的に支持する。
【0043】
ポンプヘッド28は、ハウジング24先端の中空部26の開口を閉塞するブロック体である。ポンプヘッド28は、分割形成された2つのブロック(第1及び第2ブロック34、36)をボディ22の軸方向に重ねて組み付けられる。組付状態では、その内部に所定容積の空洞部38が形成され、また第1ブロック34と第2ブロック36の間には後述するダイヤフラム40が挟持される。
【0044】
従って、ポンプヘッド28の空洞部38はダイヤフラム40を挟んで分割される。ダイヤフラム40よりも基端側の空洞部38a(第1ブロック34が形成する空間)は、非圧縮性流体からなる間接媒体Mが充填される充填室42の一部を構成する。一方、ダイヤフラム40よりも先端側の空洞部38b(第2ブロック36が形成する空間)は、流体Lが流入及び流出するポンプ室44を形成する。
【0045】
充填室42に充填される間接媒体Mは、特に限定されないが、ポンプ室44の流体Lよりも密度の高いものが好ましく、例えばシリコンオイル等の作動油があげられる。一方、ポンプ室44を流動する流体L(ポンプ14が吐出する流体L)は、ポンプシステム10の用途に応じて、例えば、プロセスガス、洗浄液、塗料(コーティング液を含む)、薬液等の種々の流体を適用し得る。以下では、ポンプシステム10が適用装置12の一つである半導体製造装置に搭載され、流体Lとしてコーティング液を吐出するものを代表的に説明する。
【0046】
ポンプヘッド28の第1ブロック34は、ハウジング24の先端面に固着される基端板部46とその周囲を囲う側壁48とを有する。基端板部46の径方向内側の端部により構成される開口空間46aは、後述するベローズ部82の内部空間86に一致する小さな内径に形成され、ハウジング24との装着状態でこの内部空間86に連通する。一方、基端板部46よりも先端側で側壁48に囲われた空間は、ポンプ室44の内径に一致する比較的大きな内径に形成されている。
【0047】
ポンプヘッド28の第2ブロック36は、第1ブロック34の側壁48の外径と一致する外径を有すると共に、充分な厚みを有する板状に形成されている。第2ブロック36の外縁側の基端には、ダイヤフラム40の凸部40cを引っ掛け可能に窪む引掛け部36aが設けられる。この引掛け部36aには、第1ブロック34の外縁側の先端が対向してダイヤフラム40を挟み込む。
【0048】
ポンプ14のポンプ室44は、第2ブロック36の基端面側で第1ブロック34の離間方向に向かって略半球状に凹む半球面44aにより構成される。また、第2ブロック36は、ポンプ室44の所定位置に径方向外側に延びる流体通路50を有する。流体通路50は、半球面44aの所定部分を溝状に切り欠くことでポンプ室44に連通し、ポンプ室44から第2ブロック36の側周面に向かって直線状に延び、側周面に開口形成された流体ポート52に連通する。
【0049】
ポンプヘッド28の側周面には、流体ポート52に対向するように接続プラグ54が固定され、この接続プラグ54の基端面に3方弁16が固定される。接続プラグ54の内部には、流体ポート52に連通する接続通路56が設けられている。この接続通路56は、接続プラグ54の内部を通って基端面に至り、さらに3方弁16の流路に連通する。
【0050】
3方弁16は、例えば、接続通路56に連通する第1ポート58と、図示しない半導体のコーティング液供給源に接続される第2ポート60と、図示しないコーティング液滴下装置に接続される第3ポート62とを有する。そして、3方弁16内の第2ポート60及び第3ポート62の奥側の流路には、電磁弁60a、62aが各々設けられ、互いのポートの連通を切換可能としている。
【0051】
例えば、ポンプ14に流体Lを供給する際には、電磁弁60a、62aの切換作用下に第2ポート60と第1ポート58を連通させて、コーティング液供給源から、第2ポート60、第1ポート58、接続通路56を介して、ポンプ14に流体Lを供給する。逆に、ポンプ14から流体Lを吐出する際には、電磁弁60a、62aの切換作用下に第3ポート62と第1ポート58を連通させて、ポンプ14から、接続通路56、第1ポート58、第3ポート62を通してコーティング液滴下装置に流体Lを吐出する。なお、3方弁16は、上記のように電磁弁60a、62aを内部に備えるだけでなく、第2ポート60及び第3ポート62の奥側の流路に、チェック弁(図示せず)を各々逆向きに設けてもよい。
【0052】
一方、ボディ22の矢印A方向側の端部に設けられる回転駆動源30は、ステッピングモータが適用され、コントローラ18の制御信号S(通電作用)に基づいて回転する駆動軸64を備える。この駆動軸64は、回転駆動源30がハウジング24に連結された状態で、ハウジング24の中空部26に所定長さ挿入される。また、駆動軸64の外周面には雄ねじ部64aが形成され、この雄ねじ部64aには、ボディ22内に構成される変位機構部66の変位ナット68がねじ込まれる。なお、変位機構部66を駆動する構成は、回転駆動源30に限定されず、種々のアクチュエータ(押圧装置等)を適用し得る。
【0053】
変位機構部66は、上記の変位ナット68と、変位ナット68の先端部に固定され変位ナット68及び駆動軸64の一部を覆う有底筒状の筒体70と、筒体70の外周面に設けられたリング体72とを含む。そして、回転駆動源30による駆動軸64の回転作用下に、変位ナット68が筒体70及びリング体72と共にハウジング24の軸線方向に沿って変位する。以下、一体に変位する変位ナット68、筒体70、リング体72をまとめて変位体74という。
【0054】
また、変位機構部66は、ハウジング24の内部にスプリングガイド76及びスプリング78を備える。スプリングガイド76は、後述するベローズ部82の側周面外方を非接触で囲う筒状に形成され、スプリング78の伸縮を案内する。また、スプリングガイド76の矢印B方向側の端部は、径方向外側に突出してスプリング78の座を形成すると共に、第1ブロック34の端面にハウジング24と一緒に固定される固定部76aとなっている。
【0055】
スプリング78は、例えば、コイルスプリングからなり、スプリングガイド76の外周側を囲うように設けられる。スプリング
78の先端部は、スプリングガイド76の固定部76aに装着される一方、スプリング
78の基端部は、リング体72の先端部に形成された座に装着される。このスプリング78は、変位体74を矢印A方向(基端方向)に付勢する。
【0056】
スプリング78及びスプリングガイド76は、回転駆動源30の回転駆動力を変位体74が軸線方向に沿う直線運動に変換する際に、駆動軸64と変位ナット68のバックラッシを防止する。これにより変位体74が精度よく変位して、流体Lが安定的に吐出される。
【0057】
そして、ポンプ14内の変位体74の先端側には、流体Lの定量吐出を行う吐出機構部80が設けられる。吐出機構部80は、上述したダイヤフラム40と、第1ブロック34の基端部と変位機構部66のリング体72の先端部との間に介装されるベローズ部82(連結部)とを含む。
【0058】
ダイヤフラム40は、樹脂材料(例えば、PTFEを含有するゴム等の弾性材料)を円盤状に成形して構成される。このダイヤフラム40は、円盤状の中央部付近の主膜40aと、この主膜40aの径方向外側に連なる周縁膜40bと、周縁膜40bの最外縁で先端側に向かって屈曲した凸部40cとを備える。ダイヤフラム40は、凸部40cをポンプヘッド28に固定することで、主膜40a及び周縁膜40bが面方向と直交する方向に変形自在となる。
【0059】
ベローズ部82は、例えば、SUS等の金属材料により中空円筒状に形成され、その側周面が駆動軸64の軸線方向に沿って径方向に凹凸(波状)を繰り返す蛇腹部84となっている。ベローズ部82の先端は、第1ブロック34の開口空間46aを形成する端部に固着される一方、ベローズ部82の基端部は、筒体70のフランジ部70aに固着される。ベローズ部82と第1ブロック34及び筒体70の固着は、例えば溶接等によりなされる。
【0060】
ベローズ部82の内側の内部空間86は、第1ブロック34の空洞部38に連通しており、間接媒体Mが充填される。すなわち、第1ブロック34の空洞部38a及びベローズ部82の内部空間86は、間接媒体Mを収容する充填室42を構成し、間接媒体Mを封液している。また、内部空間86の軸心部分には筒体70が配置される。
【0061】
ベローズ部82の蛇腹部84は、薄肉に形成されており、凹凸が相互に近接又は離間し易くなっている。そのため、ベローズ部82は、変位体74の変位に伴い駆動軸64(すなわち、ポンプ14)の軸線方向に伸縮する。これにより内部空間86の間接媒体Mに圧力がかかり、間接媒体Mは、充填室42内を軸線方向に流動する。なお、ポンプ14において充填室42を構成する連結部は、ベローズ部82に限定されるものではなく、種々の構成を適用してよい。例えば、連結部は筒状に形成され、その内部(充填室42)をピストンが変位する構成でもよい。
【0062】
また、ポンプヘッド28(第1ブロック34)には、間接媒体Mを充填室42に充填するための充填ポート88が設けられる。この充填ポート88には、間接媒体Mの充填後に圧力センサ32が挿入固定される。つまり、充填室42は、圧力センサ32が充填ポート88に嵌合されることにより閉塞空間となる。
【0063】
圧力センサ32は、充填室42に充填された間接媒体Mの圧力を検出する圧力検出装置である。この圧力センサ32は、充填ポート88内の充填室42を臨む面側に検出部32aを有し、ボディ22の外周面から送信部32bを露出している。送信部32bはコントローラ18に信号伝達可能に接続される。また圧力センサ32は、コントローラ18の指示に応じて(又は定期的に、)検出した間接媒体Mの圧力(検出値)を検出信号Pとしてコントローラ18に送信する。
【0064】
圧力センサ32の検出部32aは、ダイヤフラム40の近傍位置に配置されることが好ましい。これにより、流体Lがダイヤフラム40にかける圧力をより精度よく検出することができる。なお、圧力センサ32は、充填ポート88に設置されるだけでなく、充填室42内の圧力を検出可能な適宜の位置に設けられればよい。また、送信部32bは、ポンプヘッド28の外側で充填ポート88を確実に閉塞するパッキンの役目を有していてもよい。
【0065】
コントローラ18は、ポンプシステム10の駆動を制御するため、ハウジング24の外周面の基端側寄りで、このハウジング24から離間した位置に取り付けられる。コントローラ18は、図示しない入出力部、記憶部、演算部を有する周知の電子回路(コンピュータ)を適用し得る。
【0066】
図2に示すように、コントローラ18は、例えば適用装置12の制御部90から制御指示を受けて、回転駆動源30の駆動軸64を所定のタイミングで回転させる。これにより、変位体74が変位し、間接媒体Mに圧力を加えてダイヤフラム40を変形させ、ポンプヘッド28(ポンプ室44)の流体Lを流動させる。また、コントローラ18は、圧力センサ32により間接媒体Mの圧力の検出値を受信して、この検出値に基づきポンプ14の異常を判別する判別処理部としても機能する。コントローラ18による具体的なポンプ14の異常検出方法については後述する。なお、判別処理部は、ポンプ14毎のコントローラ18に設けられるだけでなく、適用装置12全体を制御する制御部90に併設されてもよい。
【0067】
このコントローラ18には、所定の報知部20が接続されている。コントローラ18は、異常の検出時に、報知部20から適用装置12の作業者にポンプ14の異常を知らせる。報知部20としては、例えば、警告音や音声を出力するスピーカ、警告表示を表示するディスプレイ、又は発光装置等があげられる。
【0068】
或いは、コントローラ18は、3方弁16が電磁弁として動作する場合に、3方弁16の駆動を停止してもよい。これにより、ポンプ14に流体Lが流動することを遮断することができると共に、ダイヤフラム40が破損している場合に3方弁16への間接媒体Mの流出を防ぐことができる。さらに、コントローラ18は、異常の検出時に、回転駆動源30への通電を停止する、つまりポンプ14の駆動を停止してもよい。これにより、ダイヤフラム40に破損が生じている場合に、間接媒体Mの流出を効果的に抑制することができる。またさらに、コントローラ18は、異常を検出時に、適用装置12の駆動を停止してもよい。これにより、適用装置12を早期に停止することができ、適用装置12の吐出対象に与える悪影響を抑止することができる。
【0069】
本実施形態に係るポンプシステム10は、基本的には以上のように構成され、次にポンプシステム10の動作について、
図3、
図4及び
図5を参照して説明する。なお、以下では、
図3中に示される変位体74(変位ナット68、筒体70、リング体72)が回転駆動源30側に変位した位置を初期状態(初期位置)として説明する。
【0070】
初期状態のポンプシステム10は、回転駆動源30の回転駆動に基づき、変位体74のリング体72を、ハウジング24内の内側段差部分に近接又は接触する位置に配置する。この位置では、ベローズ部82が軸線方向に伸長することにより、間接媒体Mも基端側に流動し、ダイヤフラム40の主膜40aを周縁膜40bよりも基端側に凹ませる。その結果、初期状態のポンプ室44には、負圧が生じ、3方弁16から第1ポート58、接続通路56、流体ポート52及び流体通路50を通して所定量の流体Lが流入した状態となっている。
【0071】
ポンプシステム10は、上記の初期状態から、コントローラ18が所定のタイミング(
図5中の時点t1)で回転駆動源30に制御信号Sを出力し、回転駆動源30の駆動軸64を回転させる。これにより、変位機構部66は、駆動軸64の回転を直進動作に変換して、変位体74を先端方向に変位させる。この変位体74の変位に伴いベローズ部82の基端部が先端方向に移動して、ベローズ部82全体が軸方向に圧縮される。これにより、ベローズ部82内の間接媒体Mに押圧力がかかる。
【0072】
つまり
図5に示すように、間接媒体Mは、時点t1よりも若干遅い時点t2で圧力の上昇を開始する。なお、間接媒体Mの検出値は、
図5中において、圧力上昇以降、微小時間に上下振動している。これは間接媒体Mが流動に伴い蛇腹部84の凹凸に接触するためと推定される。よって以下、上下振動する検出値の中間値(
図5中の太線)を基準に間接媒体Mの圧力を説明する。コントローラ18で検出値を処理する際も、適宜の補正により中間値を算出するとよい。
【0073】
間接媒体Mは、押圧力に伴い停止状態から充填室42の先端方向に向かって流動することで、その圧力が急激に上昇する。そのため、
図5中の時点t2〜t3の立ち上がり期間では、検出値が急勾配を描いて上昇する。
【0074】
ダイヤフラム40は、
図4に示すように、流動する間接媒体Mによりポンプ室44の半球面44aに向かって押圧され、主膜40a及び周縁膜40bを先端側に変形させる。これにより、ポンプ室44に流入していた流体Lは、ダイヤフラム40に押し出されて流体通路50に流動し、流体ポート52から、接続通路56、第1ポート58を介して3方弁16内に所定量流出される。
【0075】
3方弁16は、第3ポート62の電磁弁62aを開いて第1ポート58から流体Lを流動させ、この流体Lは、コーティング液滴下装置に供給されて半導体に吐出(滴下)される。すなわち、充填室42の間接媒体Mは、変位体74の変位量と、ダイヤフラム40の押圧によりポンプ室44から吐出される流体Lの流量とを比例させる。そのため、適用装置12は、ポンプ14の変位体74の変位量に応じて、一定量の流体Lの吐出を安定的に享受することができる。
【0076】
ポンプシステム10は、変位体74の進出を、リング体72の先端がスプリングガイド76の基端に近接又は接触する所定位置まで行う。変位体74が先端方向に変位する際の間接媒体Mの圧力は、
図5に示すように、時点t3で最高圧を越えると、時点t3〜時点t4の期間に一旦落ち込み、その後、緩やかに振動しつつ時点t5で安定化した状態に移行する。そして、時点t5〜t6の安定期には、ベローズ部82の圧縮に伴い、検出値が緩やかに上昇する傾向を見せる。
【0077】
流体Lの吐出後(
図5中の時点t6後)、ポンプシステム10は、コントローラ18から回転駆動源30の駆動軸64を逆回転させる制御信号Sを出力して、変位体74を基端方向へ後退させる。これによりベローズ部82が伸長し、時点t7では、間接媒体Mが最もマイナスの圧力(最低圧)となって、基端方向(矢印A方向)に流動する。
【0078】
変位体74は、比較的短い時間に後退し、間接媒体Mがベローズ部82の伸長に応じて基端方向に流動することで、
図3に示すようにダイヤフラム40を再び基端方向に凹ませる。これによりポンプ室44に負圧がかかり、3方弁16の第2ポート60から第1ポート58に流体Lが流動して、ポンプ室44に次の流体Lが吸引される。そして、駆動軸64の回転に基づき変位体74が初期状態(初期位置)に復帰することで、一連の動作が終了する。ポンプシステム10は、以上の動作の繰り返しにより、1動作毎に吐出する流体Lを常に一定量とする。
【0079】
そして、本実施形態に係るポンプシステム10は、圧力センサ32により間接媒体Mの圧力を検出し、検出された検出値をコントローラ18により解析し監視することで、ポンプ14(特にダイヤフラム40)の状態を適切に判別する。コントローラ18によるダイヤフラム40の異常検出としては、例えば、以下の(A)〜(C)に大別した方法等があげられる。
(A)検出値と閾値を比較
(B)検出値の圧力波形を判別
(C)検出値の反応遅れを判別
【0080】
以下、コントローラ18が行う各判別方法について詳細に説明していく。
【0081】
(A)検出値と閾値を比較
〔A−1.安定期の検出値の最高値と閾値を比較〕
コントローラ18は、ダイヤフラム40の異常検出方法において、
図6に示すように、上述した安定期(時点t5〜t6)に間接媒体Mにかかる検出値の最高値(最高圧力)と、閾値th1とを比較してダイヤフラム40の異常を判別する。閾値th1は、ダイヤフラム40の性能に応じた値でコントローラ18(記憶部)に予め保有(記憶)されている。そして、検出値
の最高値が閾値th1を超える場合には、ダイヤフラム40の状態が正常と判別し、検出値
の最高値が閾値th1を超えない場合には、ダイヤフラム40の状態が異常と判別する。つまり、ダイヤフラム40が劣化や破損等を起こした場合は、間接媒体Mがダイヤフラム40にかける圧力が弱まる。特に、安定期における検出値
の最高値は、正常時にポンプ動作を繰り返し行うと概ね一致した値となる。このため、閾値th1を設定して、閾値th1に対する検出値
の最高値の低下を監視することで、ダイヤフラム40の異常を良好に検出することができる。
【0082】
〔A−2.立ち上がり時の検出値の最高値と閾値を比較〕
コントローラ18は、上述した立ち上がり時(時点t3)に間接媒体Mにかかる圧力の最高値を比較する閾値th2を予め保有し、検出値の最高値と閾値th2を比較する構成でもよい。例えば、検出値
の最高値が閾値th2を超える場合にダイヤフラム40の正常を判別する一方、検出値
の最高値が閾値th2を超えない場合にダイヤフラム40の異常を判別する。この方法でも、ダイヤフラム40の異常に伴い間接媒体Mの圧力が立ち上がり時に変化するので、ダイヤフラム40の異常を良好に検出することができる。
【0083】
〔A−3.安定期の検出値の平均値と閾値を比較〕
コントローラ18は、上述した安定期(時点t5〜t6)において間接媒体Mにかかる圧力の平均値(平均圧力)を比較するための閾値th3を予め保有し、検出値の平均値と閾値th3を比較する構成でもよい。例えば、検出値の平均値が閾値th3を超える場合には、ダイヤフラム40を正常と判別する一方、検出値の平均値が閾値th3を超えない場合には、ダイヤフラム40を異常と判別する。つまり、ダイヤフラム40が劣化や破損等を起こした場合は、間接媒体Mがダイヤフラム40にかける圧力が全体的に弱まる。このため、閾値th3に対する検出値の低下を監視することで、ダイヤフラム40の異常を良好に検出することができる。
【0084】
〔A−4.安定期の検出値の最低値と閾値を比較〕
コントローラ18は、上述した安定期(時点t5〜t6)において間接媒体Mにかかる圧力の最低値(最低圧力)を比較するための閾値th4を予め保有し、検出値の最低値と閾値th4を比較する構成でもよい。例えば、検出値の最低値が閾値th4を超える場合には、ダイヤフラム40を正常と判別する一方、検出値の最低値が閾値th4を超えない場合には、ダイヤフラム40を異常と判別する。このように閾値th4に対する検出値の最低値の低下を監視することでも、ダイヤフラム40の異常を良好に検出することができる。
【0085】
〔A−5.立ち下がり時の検出値の最低値と閾値を比較〕
コントローラ18は、間接媒体Mを基端方向に流動させ、その圧力を立ち下げた際(時点t7)における間接媒体Mにかかる圧力の最低値を比較するための閾値th5を予め保有し、検出値の最低値と閾値th5を比較する構成でもよい。例えば、検出値の最低値が閾値th5を下回る場合には、ダイヤフラム40の正常と判別する一方、検出値の最低値が閾値th5を下回らない場合には、ダイヤフラム40の異常と判別する。このように閾値th5に対する検出値の最低値を監視することでも、ダイヤフラム40の異常を良好に検出することができる。
【0086】
(B)検出値の圧力波形を判別
〔B−1.波形全体の検出値の総和量を判別〕
また、コントローラ18は、ダイヤフラム40の異常検出方法において、
図7に示すように、ポンプ14が流体Lを安定的に吐出する動作(時点t5〜t6)の検出値の総和量を監視して、ダイヤフラム40の異常を判別する構成でもよい。つまり、間接媒体Mがトータルにかける圧力を判別することで、ダイヤフラム40の異常を精度よく判別することができる。検出値の総和量は、
図7中の圧力波形の面積(積分値)として簡単に算出することができる。この場合、コントローラ18は、総和量を比較するための図示しない総和閾値を予め保有し、検出値の総和量と総和閾値を比較する。そして例えば、検出値の総和量が総和閾値を超えている場合には、ダイヤフラム40の正常を判別する一方、検出値の総和量が総和閾値を超えていない場合には、ダイヤフラム40の異常を判別する。この場合でも、ダイヤフラム40の異常に伴い間接媒体Mの圧力が全体的に変化するので、ダイヤフラム40の異常を良好に検出することができる。
【0087】
〔B−2.波形の立ち上がり勾配を判別〕
コントローラ18は、間接媒体Mの圧力の立ち上がり期間(時点t2〜t3)における立ち上がり勾配(角度)を監視して、ダイヤフラム40の異常を判別する構成でもよい。立ち上がり勾配は、時点t2から時点t3までの時間と、時点t3の圧力値によって簡単に算出し得る。コントローラ18は、立ち上がり勾配を比較するための第1角度閾値(閾値th6)を予め保有し、検出した立ち上がり勾配と第1角度閾値を比較する。そして例えば、立ち上がり勾配が第1角度閾値よりも大きい場合には、ダイヤフラム40の正常を判別する一方、立ち上がり勾配が第1角度閾値よりも小さい場合には、ダイヤフラム40の異常を判別する。この場合でも、ダイヤフラム40の異常を良好に検出することができる。
【0088】
〔B−3.波形の立ち下がり勾配を判別〕
コントローラ18は、間接媒体Mの圧力の立ち下がり期間(時点t6〜t7)における立ち下がり勾配(角度)を監視して、ダイヤフラム40の異常を判別する構成でもよい。この立ち下がり勾配は、時点t6から時点t7までの時間と、時点t6、t7の圧力値によって簡単に算出し得る。コントローラ18は、立ち下がり勾配を比較するための第2角度閾値(閾値th7)を予め保有し、検出した立ち下がり勾配と第2角度閾値を比較する。そして例えば、立ち下がり勾配が第2角度閾値よりも大きい場合には、ダイヤフラム40の正常を判別する一方、立ち下がり勾配が第2角度閾値よりも小さい場合には、ダイヤフラム40の異常を判別する。この場合でも、ダイヤフラム40の異常を良好に検出することができる。
【0089】
〔B−4.安定期の検出値の勾配を判別〕
コントローラ18は、安定期における間接媒体Mの圧力の緩やかな上昇(以下、安定期勾配という)を監視して、ダイヤフラム40の異常を判別する構成でもよい。コントローラ18は、安定期勾配を比較するための第3角度閾値(閾値th8)を予め保有し、検出した安定期勾配と第3角度閾値を比較する。そして例えば、安定期勾配が第3角度閾値よりも大きい場合には、ダイヤフラム40の正常を判別する一方、安定期勾配が第3角度閾値よりも小さい場合には、ダイヤフラム40の異常を判別する。この場合でも、ダイヤフラム40の異常を良好に検出することができる。
【0090】
(C)検出値の反応遅れを判別
〔C−1.回転駆動源30の駆動と間接媒体Mの圧力の立ち上がりの時間遅れを判別〕
図5に戻り、コントローラ18は、回転駆動源30が駆動を開始した時点t1と、間接媒体Mの圧力が上昇を開始する時点t2との時間遅れを算出して、ダイヤフラム40の異常を判別する構成でもよい。すなわち、ダイヤフラム40に劣化や破損等が生じている場合は、間接媒体Mを流動させたとしても圧力変化の反応が鈍くなることが想定される。この場合、コントローラ18は、立ち上がり時間と比較するための期間閾値(図示せず)を予め保有し、検出した時間遅れ(時点t1〜t2)までの期間と比較する。そして例えば、立ち上がりの時間遅れの期間が期間閾値よりも小さい場合には、ダイヤフラム40の正常を判別する一方、立ち上がりの時間遅れの期間が期間閾値よりも大きい場合には、ダイヤフラム40の異常を判別する。この場合でも、ダイヤフラム40の異常を良好に検出することができる。なお、圧力の時間遅れに基づく判別は、圧力の立ち上がりに限定されず、圧力の立ち下がりのタイミングでもよい。
【0091】
〔C−2.間接媒体Mの圧力の立ち上がりから安定期への移行の遅れを判別〕
コントローラ18は、間接媒体Mの圧力がかかった時点t3から、安定期に移行する時点t5までの移行期間を算出して、ダイヤフラム40の異常を判別する構成でもよい。すなわち、ダイヤフラム40に劣化等が生じている場合は、安定期に移行する期間が正常状態から変動する(長くなる、又は短くなる)ことが想定される。従って、コントローラ18は、移行期間と比較するための期間閾値(図示せず)を予め保有し、検出した移行期間と比較することでも、ダイヤフラム40の異常を良好に検出することができる。
【0092】
なお、コントローラ18は、ダイヤフラム40の異常検出において上記の方法を単独で行うだけでなく、複数の異なる方法を組み合わせてもよい。これにより、ダイヤフラム40の異常をより正確に検出することができる。またコントローラ18は、ポンプ14の吐出を複数回繰り返して、検出値の圧力波形を複数取得し、この複数の圧力波形を用いてダイヤフラム40の異常を判別してもよい。これによりダイヤフラム40の異常を一層精度よく判別することができる。
【0093】
さらに、ポンプシステム10は、ポンプヘッド28が吐出する流体Lの流量を検出する流量計を備え、上記の方法に加えて流体Lの吐出量の変化を加味して、ポンプ14(ダイヤフラム40)の異常を判別する構成であってもよい。またさらに、本実施形態では、上下振動する検出値の中間値を用いてダイヤフラム40の異常を判別したが、コントローラ18は、上下振動する山の頂部や谷の深部に基づきダイヤフラム40の異常を判別してもよい。
【0094】
以上のように、ポンプシステム10は、上記の方法を採用することで、圧力センサ32が検出した検出値に基づきダイヤフラム40の異常を早期に判別し得る。例えば、コントローラ18は、
図8のフローチャートに示すポンプ14の異常検出の処理を実施する。
【0095】
コントローラ18は、ポンプシステム10の動作開始後、圧力センサ32から送信される検出信号Pを受信する(ステップS1:圧力検出工程)。そして、コントローラ18は、取得した検出信号Pを適宜処理し、間接媒体Mの圧力である検出値(圧力波形)を算出して一時的に記憶する(ステップS2)。算出時には、採用しているポンプ14の異常検出方法に応じた検出値を得るように処理することで、後の処理負荷の低減が図られる。
【0096】
さらに、コントローラ18は、算出した検出値に基づき、上述したポンプ14の異常検出方法により、ダイヤフラム40の異常を判別する(ステップS3:判別処理工程)。ダイヤフラム40が正常と判別した場合には、ポンプ14の駆動を継続させ(ステップS4)、異常検出処理を終了する。そして、所定期間経過後に再びスタートから処理を繰り返す。一方、ダイヤフラム40が異常と判別した場合には、ステップS5において報知部20を動作させ、ポンプ14に異常がある旨の報知を行う。これにより、適用装置12の作業者はポンプ14の異常を良好に認識することができる。なお、異常後の処理は、報知部20による報知の他に(又は報知部20の報知に代えて)、回転駆動源30の駆動停止、3方弁16の駆動停止又は適用装置12の駆動停止等の処理を実施してもよい。
【0097】
以上のようにポンプシステム10は、間接媒体Mの圧力を検出する圧力センサ32と、検出値に基づきダイヤフラム40の異常を判別するコントローラ18とを備えることで、ダイヤフラム40の異常を簡単且つ早期に認識することができる。すなわち、充填室42内の間接媒体Mの圧力はダイヤフラム40の変形に直接的に作用するため、コントローラ18がその圧力を監視することで、ダイヤフラム40の異常を早期に発見することができる。これにより、例えば、ポンプ14のメンテナンスや交換を早い段階で実施することが可能となり、適用装置12に生じる可能性があるポンプ14の不具合(流体Lの吐出量の変化、間接媒体Mの漏洩等)を良好に抑制することができる。
【0098】
また、ポンプシステム10は、ポンプ14の使用時に流体Lが空になった場合も、間接媒体Mの圧力波形が変化するので、圧力センサ32及びコントローラ18により流体Lの状態を認識することができる。さらに回転駆動源30や電磁弁60a、62aの異常により流体Lの流動量が変動することでも、間接媒体Mの圧力波形が変動するので、ポンプシステム10は、ダイヤフラム40以外に回転駆動源30や電磁弁60a、62aの異常も検出することができる。
【0099】
そして、ポンプシステム10は、圧力センサ32の検出部32aを充填ポート88に挿入固定していることで、充填室42を容易に閉塞し、また充填室42の圧力を確実に検出することができる。さらにまた、ボディ22等に圧力センサ32を別に設ける必要がなくなるので、構造が簡単化する。
【0100】
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。例えば、コントローラ18は、異常検出のための閾値を予め保有するだけでなく、正常時の圧力波形を利用して閾値を設定してもよい。また、コントローラ18は、所定期間毎に圧力波形を抽出してその変化度合を比較してダイヤフラム40の異常を判別してもよい。