特許第6362010号(P6362010)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6362010-改良された二酸化炭素の還元方法 図000009
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362010
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】改良された二酸化炭素の還元方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 27/06 20060101AFI20180712BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20180712BHJP
   B01J 21/06 20060101ALI20180712BHJP
   C07C 29/159 20060101ALI20180712BHJP
   C07C 31/04 20060101ALI20180712BHJP
   C07C 47/04 20060101ALI20180712BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20180712BHJP
【FI】
   C07C27/06
   B01J35/02 J
   B01J21/06 Z
   C07C29/159
   C07C31/04
   C07C47/04
   !C07B61/00 300
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-203238(P2015-203238)
(22)【出願日】2015年9月28日
(65)【公開番号】特開2017-66122(P2017-66122A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2017年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】505393614
【氏名又は名称】森屋 市郎
(72)【発明者】
【氏名】森屋 市郎
【審査官】 桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−071578(JP,A)
【文献】 特開2015−048351(JP,A)
【文献】 特開2014−062081(JP,A)
【文献】 特開2013−006180(JP,A)
【文献】 特開平11−128750(JP,A)
【文献】 特開2008−169058(JP,A)
【文献】 特開2005−007287(JP,A)
【文献】 特開2010−270094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 27/06
B01J 21/06
B01J 35/02
C07C 29/159
C07C 31/04
C07C 47/04
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子二酸化チタン光触媒と固体触媒からなる一体化物を
電気伝導性物質上に散布した構成体を
イオンブロワーによる静電気除去により一体化物表面の静電気を除去した後、
水蒸気と二酸化炭素を含む混合気体中に配置し、
一体化物の表面を薄い水膜で覆った後に、
一体化物に太陽光や紫外光を照射して、
有機化合物を生成させることを特徴とする二酸化炭素の還元方法。
【請求項2】
ることを特徴とする請求項1に記載された二酸化炭素の還元方法。
【請求項3】
薄い水層が大気中の水蒸気の凝結によりなされることを特徴とする請求項1に記載された二酸化炭素の還元方法。
【請求項4】
固体触媒が酸化ジルコニウムおよび/またはアルミニウムである請求項1に記載された二酸化炭素の還元方法
【請求項5】
請求項1のすべてが大気中(気相)でなされることを特徴とした二酸化炭素の還元方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光照射の下で水蒸気と二酸化炭素から、常温でメタノール、ホルムアルデヒド等の有用な有機化合物を常温で生成する二酸化炭素の還元方法に関する。広い意味では人工光合成の好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大気中の二酸化炭素濃度の増加により大気の温暖化が進み、異常気象が頻発して地球規模での大きな社会問題になっている。そこで、大気中の二酸化炭素を削減し大気の温暖化を防止するための研究が行なわれている。また、この二酸化炭素を資源として有用な有機化合物に変換する研究が行われており、これらの研究の重要性は益々高まって来ている。
【0003】
それらの研究の中で、二酸化炭素分子を構成する炭素を低分子量有機物に変換する試みとしては、藤嶋等は、二酸化チタン光触媒に強い紫外線を照射して二酸化炭素を還元してホルムアルデヒド(HCHO)とメタノール(CHOH)を生成したことを報告している。(先行技術文献の文献3参照)しかしこの報告は、高エネルギーの紫外線を用いたものであってブラックライトの弱いエネルギーや太陽光に含まれる弱い紫外光エネルギーでなされたものではない。その後、大気の温暖化が観測され、大気中の二酸化炭素分子の増加と関連付けて、大気の温暖化防止のため二酸化炭素分子を還元して有用な有機化合物への変換を目指した研究が活発になっているが未だ実用には至っていない。また、植物の光合成を参考にして二酸化炭素を還元する目的で新規な有機化合物を合成する方法も活発に研究されているが、実用には至っていない。
【0004】
なお、光触媒を用いた二酸化炭素の固定化実験はほとんどが水中に二酸化チタンの粒子や結晶を浸漬または分散状態にして、擬似太陽光や高エネルギーの紫外光を照射する形態であり、また、酸化され易い犠牲試薬を添加して還元作用を強めるものであり、還元された有機化合物の量も微量であって、本発明がめざす“気相で犠牲試薬なしで太陽光の照射によって空気中の二酸化炭素を実用可能な量で還元”をめざした報告は見出されない。
【0005】
本発明がめざす中でも特に、気相での二酸化炭素の還元に関する提案はほとんど見出せないが、光触媒と二酸化炭素還元触媒を複合化して二酸化炭素と水を原料として太陽光の照射下でメタノールを含む低分子量の有機化合物を製造する提案がなされている。
(先行特許文献1および2参照)
【0006】
しかし特許文献1、2共に、光触媒にて水から水素イオンを生成し、二酸化炭素を供給して二酸化炭素還元触媒の作用によりメタノール等の有機化合物を生成させる技術であり、触媒と光触媒とから構成され二酸化炭素の還元は光触媒ではなく触媒によって為されることが特徴である。この提案の考え方は本発明と同様であるが、二酸化炭素の還元触媒が本発明のものと異なり、本発明の特徴である触媒を水の薄層で覆う発想はない。また二酸化炭素還元触媒を有効に機能させるためには二酸化炭素還元触媒の近傍を比較的高温の環境にすることが必要であり、生成物の量も少量である。
【0007】
また、本発明で用いる一体化物の表面を薄い水層で覆う考案は、二酸化チタンに紫外線を照射して水素分子と酸素分子を生成するために、佐藤等によって提案されているが(参考文献4、5)、本発明の場合は二酸化炭素を還元して有機物を生成させるのが目的であるから目的が異なり、薄い薄膜を形成させる対象(固体触媒粉末)が異なり、また薄い水層の作り方が本発明の場合とは異なっている。さらに後述するように本発明においては一体化物表面の薄い水の膜は、▲1▼紫外線の照射によって微粒子二酸化チタンの光触媒作用のうちの酸化作用により水素イオン(H)を生成し、▲2▼紫外線照射中の一体化物表面への窒素分子の吸着を防ぎ、その上、▲3▼水の膜が二酸化炭素の還元の反応場ともなっているので薄い水の層の働きも異なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】 特開2003−275599号公報(第1〜6頁)
【特許文献2】 特開2004−59507号公報(第1〜7頁)
【技術文献】
【0009】
【文献3】
Inoue,T,,Fujishima,A.,Konishi,S.,Honda,K.,Photoelectrocatalytic reduction of carbon dioxide in aqueous suspensions of semiconductor powders.Nature 277,637−638(1979)
【文献4】
Sato,S.,White,J.M.,Photodecomposition of water over Pt/TiOcatalysis.Chem,Phys.Lett.,72,83,(1980).
【文献5】
佐藤しんり著 光触媒とはなにか 株式会社講談社刊 第1刷 154〜159ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、大気中の二酸化炭素を気相で還元してホルムアルデヒドやメタノールのような低分子量の有機化合物を得ることによって、大気中の二酸化炭素の低減と、有用な低分子量の有機化合物を得ることである。
【0011】
そして二酸化炭素を還元するための光源として、約3%の紫外光を含む太陽光やブラックライト等の弱いエネルギーで実現できることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、二酸化炭素を気相で還元することを試みてきたが、触媒として微粒子二酸化チタンと各種金属や金属酸化物との一体化物を用いた場合に、当初は触媒調整後に弱いエネルギーの紫外線を照射しても、目的とする反応物(低分子量の有機化合物)は全く得られなかった。
【0013】
そこで、本発明者は、一体化物を銅板上に散布して冷蔵庫に48時間以上保存した後、日本の夏の高温多湿の空気と共に閉じられた空間(たとえば、ガスバリア袋内)に設置し、ブラックライトが発する弱い紫外線や太陽光に含まれる紫外光光源を照射する方法を見出すことによって二酸化炭素を常温で還元することに成功した。
【0014】
その理由として、一体化物の粒子を冷蔵庫に保存中に、表面に付着した吸着分子が脱着し、清浄な表面が復活して、微粒子二酸化チタン表面や触媒の活性点が再生されると考えた。また冷蔵庫から取り出してすぐの触媒粒子表面に結露によってごく薄い水の膜が形成され、このごく薄い水の膜が紫外線照射中に微粒子二酸化チタン表面や触媒表面への吸着物の再吸着を防止すると考えた。その後この水の膜は、作用は別として、形態としては佐藤等が以前に発表していた触媒表面の水の薄膜と同様なもの(膜厚は、本発明のものが薄いと思われるが)であろうということに思い至った。
【0015】
佐藤等は、白金を担持した微粒子二酸化チタン表面に薄い水の層を形成し、二酸化チタンのバンドギャップエネルギーに相当する(波長約380nmの)紫外光を照射することによって、酸素分子(O)と水素分子(H)の生成を確認している(先行技術文献の文献4参照)。その際に水の層が正負の電極で生成したO分子とH分子の合体を防ぎ大気中へ分子状のまま通過させる働きをすると述べている。(先行技術文献の文献5参照)
【0016】
光触媒は、その物質特有のバンドギャップエネルギーに相当する波長よりも短波長(高エネルギー)の光を受けると、価電子帯の電子が伝導帯へ励起され還元能を有する電子が生成し、価電子帯には高い酸化能を有する正孔が生じる。光照射で生成する電子と正孔は通常は大部分が再結合して熱として失活するが、一部は拡散し表面に達し、酸化反応や還元反応を起こす。代表的な光触媒としては、二酸化チタンが知られている。
【0017】
本発明の場合は、微粒子二酸化チタンを白金担持せずに用いているので、下記の反応式のように、酸化作用によって水素分子でなく水素イオン(H)が生成していると思われる。また、還元作用で生じた電子は、触媒による二酸化炭素の還元に寄与すると考える。
TiO+2光子(hv)→2e+2h
TiOの酸化サイトで: HO+2h → 1/2O+2H
TiOの還元サイトで: 2eの生成(COの還元に作用)
【0018】
本発明者は、これまで、二酸化チタンは照射紫外線に応答して光触媒作用によって電子と正孔を生成するが、光触媒表面近傍に水が解離して生じた水素イオンがあって、さらに二酸化炭素があると、電荷分離した電子の還元作用によって水素イオンが二酸化炭素に結合してホルムアルデヒドやメタノール等の低分子有機化合物を生成すると考えてきた。つまり、二酸化炭素の還元反応は光触媒からの励起電子による還元作用によると考えてきた。
【0019】
しかし、光触媒による二酸化炭素の還元はホルムアルデヒドの生成には4電子反応、メタノールの生成には6電子反応とするのが定説なので、アナターゼ型微粒子二酸化チタン(利用できる波長は380nm以下)を用いた場合に、従来の実験結果はブラックライトを照射した場合(波長365nmで0.39mW/cm)でも、太陽光(波長365nmで1mW/cm前後)を照射した場合でも、波長365nmでの量子効率(生成した有機物が利用した電子数/一体化物が受光した電子数×100)の計算値は10%を大きく超えてしまい光触媒反応では説明しにくいことがわかった。
【0020】
本発明においては、一体化物の表面は結露した水の薄膜で覆われる。そして、二酸化炭素は水に対して溶解性があり、解離して水中で水素イオン(H)と炭酸イオンを生成する。
化学便覧5版基礎編IIによると、炭酸イオンからホルムアルデヒドやメタノールが生成する反応の標準電極電位は、
ホルムアルデヒドが生成する場合は、
メタノールが生成する場合は、
となっている。
標準電極電位はその電池反応の標準ギブズエネルギー変化と次式で関係している。
エネルギーを超えれば自然に反応が右へ進むということである。したがって、電子の大きな励起エネルギーを考えなくても、触媒表面で活性化エネルギーを超えれば、反応は右に進んでホルムアルデヒドやメタノールが生成する。さらに、生成物であるホルムアルデヒドやメタノールは水層から揮発するので右への反応は続き消費された炭酸イオンを補うために、二酸化炭素の溶解や炭酸イオンへの解離も連続して起きる。つまり、生成物(ホルムアルデヒドやメタノール)の生成と揮発→生成物(ホルムアルデヒドやメタノール)のさらなる生成反応→反応物である炭酸イオン(CO2−)の減少→二酸化炭素の水薄膜への溶解および炭酸イオン(CO2−)への解離→炭酸イオン(CO2−)濃度の回復→生成物(ホルムアルデヒドやメタノール)の生成と揮発 というサイクリックな連鎖反応が生じる。そうであれば、光子の量子効率という制約もなくなりホルムアルデヒドやメタノールの大きな生成量とも矛盾しない。
【0021】
これまでの本発明者に限らず、光触媒は酸化作用と還元作用を発現するので、還元作用によって二酸化炭素を還元しようという発想が一般的である。しかし、光触媒の還元作用をどんなに効率よく出来ても、量子効率が10%を大きく超えることは通常の手段では難しい。
【0022】
それよりも、光触媒の酸化作用で水から水素イオン(H)を取り出し、二酸化炭素の還元は触媒に任せた方が、生成物の生成量の多さでも有利であると思われる。
【0023】
本発明者は従来、特許公開制度を通して“二酸化炭素の還元方法”という題名で、いくらかの提案をして来た。その中で数種類の一体化物の提案をして来た。それらの提案で、微粒子二酸化チタンと組み合わせた化合物は、おそらく還元触媒の働きをする成分であったと訂正したい。例えば、微粒子二酸化チタンの酸化作用を強めて、その結果として二酸化チタンの還元作用を強めるために一体化物の成分として加えたと書いた成分などは、そのものが還元触媒作用をなす(または強める)成分であったと思われる。各特許明細書を記載した時点で、ブラックライトから受ける光量測定をせず、量子効率を計算していなかったのが推論を誤った原因である。ただし、それぞれの出願特許で示したホルムアルデヒドとメタノールの生成量のデータはそのままで正しい値である。
【0024】
そこで、還元触媒としてこれまで提案して来た一体化物の中で、特に、安全であり、安価であり還元生成量の大きな、微粒子二酸化チタンと{酸化ジルコニウムおよび/またはアルミニウム}の一体化物を提案する。(その他の一体化物も有効であるので使用する価値はある。)
【0025】
さらに、特願2015−182264に記したように、イオンブロワーによる静電気除去によって一体化物の表面の静電気による電荷を除去すると、一体化物表面に物理吸着している窒素分子を除去できるので、それまで困難であった生成物の量のバラツキを少なく出来、その量も高い値で得られ、さらに、その直後の冷蔵庫内保存の時間も短縮できるという新たな重要な手段を見出した。真に効果のある静電気除去方法としては、正負のイオンを一体化物表面に接触させて、静電気を除去する必要があるが、イオンブロワー方式で正負のイオンを一体化物表面に吹き付けるのが特に好ましい。
【0026】
その結果、従来提案して来た方法にイオンブロワーによる静電気除去処理を組み込むことにより、問題点をすべて解決でき、ようやく本発明を完成させた。
【0027】
ここで一体化物とは、2種類以上の粒子が圧着し接合した状態の粉体を言う。つまり、2種類以上の個体粒子が機械的な力でこすり合わされて、圧着、接合し一体になったものである。なお、一体化という文言は広辞苑にも記載のある一般語である。
【0028】
従来、複合体あるいは複合化物という名称が一般的に用いられているが、複合とは2種類以上の物質が付着した状態にあるのか、または、不均一に混合された状態にあるのか、または、均一に混合された状態にあるのかが、不明確である。
本発明の一体化物は、2種類以上の物質が単にこすり合わされた状態、つまり、互いに界面を維持したまま、圧着、接合して一体になったものを言う。
【0029】
さらに、本発明の場合は、微粒子二酸化チタンと{酸化ジルコニウムおよび/またはアルミニウム}の一体化物を用いるのが好ましいが、これらの粒子に限定されるものではない。
【0030】
つまり、本発明は、上記の成果を基に、以下の内容をその要旨とするものである。
(1)微粒子二酸化チタン光触媒と固体触媒からなる一体化物を
電気伝導性物質上に散布した構成体を
イオンブロワーによる静電気除去により一体化物表面の静電気を除去した後
水蒸気と二酸化炭素を含む混合気体中に配置し、
一体化物の表面を薄い水層で覆った後に、
一体化物に太陽光や紫外光を照射して、
有機化合物を生成させることを特徴とする二酸化炭素の還元方法。
反応でなされることを特徴とする請求項1に記載された二酸化炭素の還元方法。
(3)薄い水層が大気中の水蒸気の凝結によりなされることを特徴とする(1)に記載された二酸化炭素の還元方法。
(4)固体触媒が酸化ジルコニウムおよび/またはアルミニウムである(1)に記載された二酸化炭素の還元方法
(5)(1)のすべてが大気中(気相)でなされることを特徴とした二酸化炭素の還元方法。
【発明の効果】
【0031】
本発明の二酸化炭素の還元方法を用いることにより、太陽光や弱いエネルギーの紫外光の照射により、水蒸気と二酸化炭素を原料として、メタノール、ホルムアルデヒド等の有用な低分子量の有機化合物を生成することが可能となる。メタノールはそれ自体有用な有機化合物であり、ホルムアルデヒドは、より付加価値の高い有機化合物の原料となる。
【0032】
本発明は、紫外光の光源として太陽光を用いることが出来る。その場合は、人工光合成に相当する。
【0033】
被還元剤として二酸化炭素を選択する場合は、空気中に微量に含まれる二酸化炭素でもよいし、二酸化炭素をより多く含む燃焼排ガスでも良いので、近年注目されている二酸化炭素の削減ならびに再資源化となる。
【0034】
本発明は、本発明者が以前の提案で用いていた白金を用いないで二酸化炭素を還元できるので、材料コストが安価であり、貴重な資源である白金の調達に神経を使わずに済む。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は二酸化炭素の還元を大気中(気相)で行うことを目指しており、その場合について述べる。水中(液相)で行う場合は、水中に窒素ガスが存在しないので光触媒表面への窒素の吸着による活性の低下がなく、一体化物(A)をそのまま水中へ投入すればよい。
【0036】
本発明は、まず二酸化チタンと{酸化ジルコニウムおよび/またはアルミニウム}からなる一体化物(A)をイオンブロワーにより1時間程度静電気除去した後、電気伝導性物質上に散布したもの(B)を冷蔵庫内で冷却しておき、次に水蒸気と二酸化炭素を含む混合気体中に、冷却しておいた(B)を配置し、一体化物(A)に太陽光や紫外光を含む光を照射する。このような形態とすることで、冷却しておいた(A)の表面に雰囲気中の水分が結露して水の薄膜が形成され、一体化物表面への窒素の多層物理吸着層生成を防止する結果、光触媒や触媒本来の作用が発現し、二酸化炭素を還元して低分子量の有機化合物が生成する。
【0037】
一体化物(A)は、通常では(調整直後でも)表面に窒素分子等が吸着しており大気中での触媒活性を低下させているが、イオンブロワーによる静電気除去により表面の電荷を除くと窒素分子等が脱離して触媒活性が回復する。
【0038】
一体化物表面は、吸着した窒素分子を除いても大気と接触した状態で太陽光や紫外光を照射すると大気中の窒素分子の物理吸着が先行して生じて窒素の多層吸着層が生じるため、大気中の水分や二酸化炭素が一体化物表面と接触できなくなって二酸化炭素の還元に対する触媒としての活性が著しく阻害される。
しかし冷却した清浄表面に、結露による水の薄膜が窒素の吸着よりも早く形成されれば、窒素分子の吸着による触媒活性の阻害が防止出来て、触媒本来の性質(触媒活性)を発現することになる。
【0039】
そして、結露により生じた水の薄膜中の、おそらく一体化物表面で二酸化炭素が還元される。段落[0020]で記したように二酸化炭素が水の薄膜に溶解し、炭酸イオンに解離した後に、主に{酸化ジルコニウムおよび/またはアルミニウム}の触媒作用、さらに確認は出来ていないが、微粒子二酸化チタンの触媒還元作用または光触媒還元作用でメタノールやホルムアルデヒドなどの低分子有機化合物が生成する。
【0040】
本発明では、二酸化チタンと{酸化ジルコニウムおよび/またはアルミニウム}からなる一体化物(A)を電気伝導性物質上に散布したもの(B)をシャーレなどの皿状容器に入れて使用すると実験が容易である。シャーレはガラス製で良いが、熱容量が大きな皿状のものが長期間冷却効果を有するので好ましい。
【0041】
以降(A)を電気伝導性物質上に散布したもの(B)をシャーレなどの皿状容器に入れたものを試験体と称する。
【0042】
本明細書においては、微粒子二酸化チタンと酸化ジルコニウムの一体化物について実施例でくわしく記述するが、微粒子二酸化チタンとアルミニウムの一体化物については、特願2014−233108で提案した。その提案にイオンブロワーによる静電気除去処理を加えたものは、本発明に含まれる。
【0043】
微粒子二酸化チタンと酸化ジルコニウムの一体化物についても特開2015−071578で提案したが、その提案にイオンブロワーによる静電気除去処理を加え本発明となった。
【0044】
ここで、被還元物として二酸化炭素を含む大気を用いる場合を説明する。
まず、一体化物(A)を電気伝導性の板または箔上に散布させ(B)シャーレに入れたもの(試験体)をイオンブロワーにより静電気を除去した後、冷蔵庫の中に保存して冷却しておき、次に例えば光が透過する袋状、箱状または管状容器内に、冷却しておいた試験体を配置し、二酸化炭素ガスと水蒸気を含む混合気体を容器内に導入し、上部または周囲から紫外光を含む光を照射すれば良い。光源は容器の外側でも良いし、内部に設置しても良い。混合気体は大気を用いても良いし、水蒸気と二酸化炭素を含む人工的な気体でも良いし、二酸化炭素濃度が高い燃焼排気ガスでも良い。
【0045】
混合気体中の水蒸気と二酸化炭素は水蒸気の結露と二酸化炭素の有機化合物への変化および水層からの離脱により消費されて混合気体の組成は変化する。そこで、混合気体を一定時間ごとに取り出して生成した二酸化炭素の還元物(低分子量の有機化合物)を回収し、新しい初期の混合気体と交換しても良いし、生成物である二酸化炭素の還元物(低分子量の有機化合物)を回収しつつ、初期の混合気体を連続で供給しても良い。
【0046】
一体化物の表面に結露する結露水の厚さは、容器に供給する大気の容積と温度、湿度および一体化物(A)の表面績によってほぼ決まると思われる。容器に供給する大気の温度、湿度の適値は、供給する大気の容積、一体化物(A)の重量、一体化物の散布状態によって変化するので一概には言えず、実際に大気を供給して生成する低分子有機生成物の濃度を測定して最も濃度が高い時の温度、湿度を維持するのが好いが、0.2gの一体化物を直径55mmの円形にほぼ均一に散布させた場合には、温度が30〜35℃、湿度が60〜80%で好結果が得られた。しかし、これらの条件はあくまでも目安であって、実際の装置で実際の運転条件のもとで、その都度、最適値を求めるのが好い。
【0047】
その他の要素としては、一体化物周辺の温度や湿度が低いと結露で生じた水の膜厚が薄いため、紫外光の照射中に光触媒による酸化作用および水の蒸発により、一体化物(A)表面の結露部分が消失し窒素分子の吸着が始まるので好ましくなく、一方、温度や湿度が高すぎると結露量が多すぎて光触媒表面の水の液膜が厚くなり、炭酸イオンが一体化物(A)表面に接触しにくくなって二酸化炭素の還元が起こりにくくなり、また、生成物の揮発速度が遅くなって低分子有機化合物の生成が減少するので好ましくない。
【0048】
また本発明の二酸化炭素の還元においては、一体化物(A)が大気と接触した時に一体化物(A)の表面が結露する温度に保たれている必要がある。さらに、還元中も一体化物(A)の表面が露点以下の温度に保たれているのが好ましい。すなわち、一体化物(A)を取り囲む混合気体が一体化物(A)の表面に氷結せずに隙間なく液膜を生成するように、一体化物(A)の表面温度が1℃〜露点温度に保たれているのが好い。
【0049】
段落[0046][0047][0048]にも記したように、結露した液膜の厚さは、供給する大気の温度と湿度、一体化物(A)の多少や散布状態による表面積の大きさによって微妙に変化し、結露した液膜の厚さによって二酸化炭素の還元量が変化するので好ましい液膜の厚さを維持するのが重要である。
【0050】
本発明を実施するには、2つの形態が考えられ、
(a)一体化物(A)から生成する低分子有機物の量が減少したら、別に用意した一体化物(A)を冷却しておいたものと交換し、水蒸気と二酸化炭素を含む大気を供給する操作を繰り返す。
(b)容器内の試験体の直下に氷や保冷剤または低温媒体を接触させて、連続して冷却することにより、(A)の表面を絶えず適度な液膜厚の結露状態にして、水蒸気と二酸化炭素を含む大気を連続または断続的に供給して二酸化炭素の還元を連続して行う。一体化物表面を絶えず結露状態に維持する方法としては、一体化物の表面温度を雰囲気の露点以下に保てば良く、一体化物を乗せた金属板を冷却して、間接的に一体化物を冷却してもよい。
【0051】
2つの形態には、下記のような特徴がある。
(a)は、供給する大気は結露に必要な条件を満たしていれば良いが、一体化物(A)を含む試験体を、冷却が終了した別の試験体に定期的に取り換える必要がある。
(b)は、連続して還元を行えるが適度の液膜厚となる結露状態を安定して維持する必要があるので、一体化物の温度と供給する大気の温湿度を絶えず管理する必要が有り(a)よりも高度な管理が必要となる。
【0052】
本発明に使用する一体化物(A)の調整は大気中で行って良いが、調整後は低温の大気中に保つのが好ましい。
【0053】
さらに、本発明の構成の他の点について述べる。
【0054】
一体化物(A)は特に電気伝導性物質上に散布しなくとも二酸化炭素が還元されるが、電気伝導性物質上に散布したほうが、二酸化炭素の還元量が増大する。
【0055】
酸化ジルコニウムおよびアルミニウムは、高純度試薬、標準純度試薬、工業材料用粉末または裁断した薄膜を用いることができ、粒径または膜厚が小さいほど好ましい。
【0056】
本発明に用いる微粒子二酸化チタンとしては粒径の小さなものほど表面積が大きいので好ましいが粒状であれば市販の材料でも良い。微粒子二酸化チタンは、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型を用いる事が出来るがアナターゼ型が特に好ましい。粒径は小さいほど単位重量当たりの表面積が大きくなるので好ましく、100nm以下が好ましく特に10nm以下が好ましい。
【0057】
また本発明の二酸化炭素の還元は一体化物(A)を1〜8℃程度に冷却し、(A)が0.2g程度の少量の場合、導入する大気などの混合気体が日本の太平洋側の夏季の温湿度程度の大気を用いて実施できるが、導入混合気体の温湿度は一体化物表面に混合気体の水分が適度な液膜厚で結露可能な温湿度である必要がある。
【0058】
つまり、一体化物の表面に結露による適度な膜厚の液膜が生成すればよいので、混合気体が燃焼排ガスのように高温の場合でも適量の水蒸気が含まれている場合には、一体化物の表面温度が露点以下であれば結露が生じると思われるので、二酸化炭素の還元が可能と思われる。
【0059】
次に、本発明の構成成分である(A)の調製方法について述べる。
【0060】
まず、(A)の調製方法は、室温で乳鉢に微粒子二酸化チタンと{酸化ジルコニウムおよび/またはアルミニウム}を取りスパチェラ等で均一に混ぜてから強くこすって圧着すればよい。通常は室温で使用できるが、さらに圧着後に700℃以下で焼成、粉砕してもよい。700℃以上に昇温すると二酸化チタンがアナターゼ型からルチル型へ変化し易いので好ましくない。また、圧着する場合には、各種のボールミルで摩砕・接合しても良い。
【0061】
(A)の配合割合(重量比)は、各成分の粒径等によるが、二酸化チタンと触媒(酸化ジルコニウム、アルミニウム、酸化ジルコニウムとアルミニウム)の配合割合が、二酸化チタン/触媒=10/90〜90/10が好ましい。特に好ましくは、二酸化チタン/触媒=10/90〜80/20である。
【0062】
本発明で、配合割合は重量比であり、以下も同じである。
【0063】
次いで、一体化物(A)を、電気伝導性物質(例えば銅板)上に散布するが、散布方法は、単に上部から電気伝導性物質上に平面的に均一に落下させてもよく、落下させた後に金属板やプラスチック板で軽くこすってさらに均一に分布させても良い。一体化物を懸濁液にして電気伝導性の板に塗布し乾燥させてもよい。
【0064】
次に、一体化物(A)を電気伝導性物質上に分散したシャーレ等に入れた試験体を、イオンブロワーにより静電気を除去した後、冷蔵庫に保存する。保存時間は、一体化物の量や原料微粒子の表面積によるが、実施例で用いた一体化物の重量が0.2gの場合には冷蔵庫内での保存時間は10時間以上が好ましく、20時間以上がさらに好ましい。
【0065】
さらに、本発明の他の構成成分について述べる。
【0066】
本発明に用いる水蒸気は、大気中に存在する水蒸気を用いてもよいし、大気が乾燥している場合には地下水や純水を蒸発させて加湿してもよい。本発明時の実験においては、真夏の高温、高湿度の大気をそのまま用いた場合に、エタノール、ホルムアルデヒドの発生量が高い傾向が認められた。また、加湿用の水は、不純物が少ないほうがよく、純水が好適である。水道水は塩素が含まれていることが多く好ましくない。
【0067】
被還元物である二酸化炭素は、大気中の二酸化炭素、燃焼排ガス中の二酸化炭素等を用いる事ができる。燃焼排ガス中の二酸化炭素濃度は、大気中の二酸化炭素濃度よりも格段に高いので、一体化物表面の水の薄膜への炭酸イオンの供給が増して有用な有機物の生成に有利である。燃焼排ガスを用いる場合にはエアフィルタ等で排ガス中の微粒子を除去し、水蒸気と二酸化炭素以外の微量なガス成分を除去したほうが良い。また、大気中の二酸化炭素を濃縮してもよい。
【0068】
本発明に使用する電気伝導性物質は、電気伝導度の高い物質なら種類を選ばないが、銅やアルミニウムなどの金属の板状または箔状のものが好ましく、特に銅板が好ましい。
【0069】
本発明に使用する紫外線を含む光源は、太陽光や紫外線ランプ、ブラックライト等の紫外線を含む光源が利用できる。実施例では、人工光合成を示すために太陽光でも二酸化炭素の還元が可能なことを示したが、太陽光の場合はアナターゼ型の二酸化チタンが利用できる波長380nm以下の紫外線は数%しか含まれていないため非常に効率が悪い。ブラックライトは、波長360nm付近の狭い波長分布の紫外光を発するので、光線のすべてを利用できるので好適である。
【0070】
本発明は二酸化炭素ガスを還元して化学工業などの産業原料として有用な低分子有機化合物を生み出すものであるから、工場建屋内で実施される場合が多いと思われ、特に自然光にこだわる必要はなく、安価な紫外線源を用いるのが好い。ブラックライトと同様な波長のLEDが入手できれば、長寿命で、使用電力に対して高効率で、波長としても無駄なく利用できるので最も好ましいと思われる。
【0071】
次に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではない。また、実施例中の「%」および「部」は特に別途注記しない限り重量基準である。なお、太陽光照射中の実験装置(写真)を図1に示す。
【実施例1】
【0072】
1.1 一体化物(A)の調整
乳鉢にテイカ株式会社製アナターゼ型の結晶構造を有する白色の二酸化チタンAMT−100(粒径6nm 比表面積260m/g)の0.5gと関東化学株式会社製試薬の酸化ジルコニウム3N(粉末、純度99.9% 粒径約10μm)の0.5g(AMT100/酸化ジルコニウム=1/1)を取り均一にかきまぜた後強く擦りながらかき混ぜて(A)を調製した。
【0073】
1.2 二酸化炭素の還元実験
内径55mmと62mmのガラス製シャーレを2重にして底部に銅板を敷いたものに1.1で得られた一体化物(A)0.2gを銅版上に一様に散布し、静電気除去器(AS ONE株式会社製イオンブロワー AS‐18)を用いてイオン量および風量をHIGHで試験体にイオン風を当てて(一体化物と静電気除去器の間隔を約15cmとし、一体化物がずり落ちない角度にして銅板を静電気除去器に正対させて)一体化物表面の電荷を除去した後、試験体を冷蔵庫(冷蔵庫内での結露を防止するためエステー株式会社製家庭用除湿剤ドライペット(成分塩化カルシウム)を入れた)中で20時間冷却した。冷却後取り出し(取り出し時の冷蔵庫内温湿度は2℃、16%)、ガスバリア袋(大倉工業株式会社製、OE−4)に入れ、入り口を熱シールする。ガスバリア袋に1cm角のウレタンテープを貼り、袋内の空気が約1000mlになるように注射器で空気を注入し、屋外にて真夏の太陽光下に表1の実験条件で静置した。実験場所は実施例のすべてで千葉県船橋市 北緯35.70°東経140.02°である。
バリア袋内の試験体の位置での波長365nmでの照度を表1に記す。
照度はウシオ電機株式会社製USHIO紫外線照度計(UNIMETER)UIT201に受光器(UVD‐365PD)を取り付けて測定した。太陽光照射後、袋内のメタノールガス濃度を株式会社ガステック製検知管No.111L(検出範囲:20〜1000PPM)、ホルムアルデヒドガス濃度を株式会社ガステック製検知管No.91M(検出範囲:8〜6400ppm)を用いて測定し、光触媒1gで1時間照射あたりのメタノールガスおよびホルムアルデヒドガスのμmol数を算出(ガス濃度(ppm)×残存空気容積(ml)/{照射時間(Hr)×光触媒重量(0.2g)×22400})した。注入した空気の温湿度と測定条件および測定結果は表1および表2の通りであった。
なお、ブラックライト照射後にバリア袋内に残った気体はガス検知管2種類の測定で吸引した吸引量を含め1000mlであった。
【実施例2】
【0074】
2.1 一体化物(A)
実施例1で調整、使用した一体化物(A)を用いた。
【0075】
2.2 二酸化炭素の還元実験
実施例2.1の一体化物(A)を用いて、実施例1.2と同様に実施した。
一体化物を冷蔵庫から取り出した時の庫内温湿度は4℃、20%であった。
【実施例3】
【0076】
3.1 一体化物(A)
実施例1で調整、使用した一体化物(A)を用いた。
【0077】
.2 二酸化炭素の還元実験
実施例3.1の一体化物(A)を用いて、実施例1.2と同様に実施した。
一体化物を冷蔵庫から取り出した時の庫内温湿度は2℃、18%であった。
【実施例4】
【0078】
4.1 一体化物(A)
実施例1で調整、使用した一体化物(A)を用いた。
【0079】
4.2 二酸化炭素の還元実験
実施例4.1の一体化物(A)を用いて、実施例1.2と同様に実施した。
一体化物を冷蔵庫から取り出した時の庫内温湿度は3℃、16%であった。
【実施例5】
【0080】
5.1 一体化物(A)
実施例1で調整、使用した一体化物(A)を用いた。
【0081】
5.2 二酸化炭素の還元実験
実施例5.1の一体化物(A)を用いて、実施例1.2と同様に実施した。
一体化物を冷蔵庫から取り出した時の庫内温湿度は3℃、15%であった。
【実施例6】
【0082】
6.1 一体化物(A)
実施例1で調整、使用した一体化物(A)を用いた。
【0083】
6.2 二酸化炭素の還元実験
実施例6.1の一体化物(A)を用いて、実施例1.2と同様に実施した。
一体化物を冷蔵庫から取り出した時の庫内温湿度は4℃、16%であった。
【実施例7】
【0084】
7.1 一体化物(A)
実施例1で調整、使用した一体化物(A)を用いた。
【0085】
7.2 二酸化炭素の還元実験
実施例7.1の一体化物(A)を用いて、実施例1.2と同様に実施した。
一体化物を冷蔵庫から取り出した時の庫内温湿度は2℃、18%であった。
【実施例8】
【0086】
8.1 一体化物(A)
実施例1で調整、使用した一体化物(A)を用いた。
【0087】
8.2 二酸化炭素の還元実験
実施例8.1の一体化物(A)を用いて、試験体を封入したガスバリア袋の全体をアルミフォイルで巻いて、太陽光が透過しない様にして、実施例1.2と同様に実施した。
一体化物を冷蔵庫から取り出した時の庫内温湿度は5℃、23%であった。
【実施例9】
【0088】
9.1 触媒
微粒子二酸化チタン(AMT100)のみ使用。
【0089】
9.2 二酸化炭素の還元実験
実施例1.1の一体化物(A)のかわりに微粒子二酸化チタンのみを用いて、実施例1.2と同様に実施した。
一体化物を冷蔵庫から取り出した時の庫内温湿度は2℃、14%であった。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
また、本実験で用いたバリア袋は、酸素分子や窒素分子は透過しないが、二酸化炭素分子は、比較的透過しやすいことがわかった。したがって、袋内の二酸化炭素分子が消費されると、濃度勾配が生じて、袋の外(つまり、大気中)の二酸化炭素分子が袋内へ侵入し、その二酸化炭素分子も還元されるので、還元生成物であるメタノールやホルムアルデヒドの濃度が大きな値となった可能性が高い。仮にそうであれば、実施例の結果は還元前のバリア袋内の二酸化炭素量によらず、本発明の一体化物の二酸化炭素還元能力の真の値が示されたと言える。
【0093】
実施例8で暗条件ではホルムアルデヒドは検出されなかったがメタノールが検出された。
このメタノールの生成は触媒反応である。
【0094】
実施例9で微粒子二酸化チタンのみでも表面を薄い水の膜で覆うとメタノールとホルムアルデヒドが検出された。これは触媒還元反応と思われる、生成量は照度が高い割には本発明の一体化物と比べて少なかった。(水の膜で覆わない条件では、メタノールもホルムアルデヒドも検出されなかった。つまり、光触媒還元反応は起こらなかった。)
【0095】
実施例1〜7の結果をグラフ化して図2に示す。図2からメタノール、ホルムアルデヒドともに照度が増大すると生成量が増大する傾向が認められる。メタノールは照度の増加に対して生成量の増加が緩やかだが、ホルムアルデヒドは照度の増加に対して生成量が大きく増加した。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の方法を用いることにより、太陽光や、ブラックライト程度の比較的波長の大きな(つまり、比較的エネルギーが小さな)紫外線を含む光の照射の下で水蒸気と二酸化炭素からメタノール、ホルムアルデヒド等の有用な有機化合物が常温で多量に生成するので、大気中や燃焼排ガス中の二酸化炭素が化学工業資源となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
図1】太陽光照射中の実験装置(図面代用写真)
【0098】
図2】太陽光照度と生成したメタノールおよびホルムアルデヒドの関係図
図1
図2