(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362012
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】ケラバ包みの固定構造およびそれを備えた折板屋根構造ならびにケラバ包みの受け金具
(51)【国際特許分類】
E04D 3/40 20060101AFI20180712BHJP
E04D 13/158 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
E04D3/40 M
E04D13/158
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-100164(P2016-100164)
(22)【出願日】2016年5月19日
(65)【公開番号】特開2017-206879(P2017-206879A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2016年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】591188941
【氏名又は名称】株式会社サカタ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100113804
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 敏
(72)【発明者】
【氏名】小野 瑞穂
【審査官】
坪内 優佳
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−144462(JP,A)
【文献】
特開2002−242395(JP,A)
【文献】
特開2001−164707(JP,A)
【文献】
米国特許第06484461(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 1/00− 3/40
E04D 13/00−15/07
E04B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺折板屋根にケラバ包みを固定するケラバ包みの固定構造であって、
ケラバ包みを固定する長尺折板屋根にその流れ方向に沿って一列に間隔を空けて複数個取り付けたベース金具と、
複数個のベース金具ごとに長尺折板屋根の流れ方向へスライド可能に組み合わせるとともに、ケラバ包みを取り付けた固定金具と、のみからなり、長尺折板屋根の熱伸縮に拘束されずにケラバ包みを固定したことを特徴とするケラバ包みの固定構造。
【請求項2】
長尺折板屋根が二重折板屋根であり、ベース金具は上折板に取り付けられて、上折板の熱伸縮に拘束されずにケラバ包みを固定したことを特徴とする請求項1記載のケラバ包みの固定構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載のケラバ包みの固定構造を備えた折板屋根構造。
【請求項4】
長尺折板屋根にケラバ包みを固定するために長尺折板屋根の流れ方向に沿って一列に間隔を空けて複数個取り付けるケラバ包みの受け金具であって、
ケラバ包みを固定する長尺折板屋根に取り付けるベース金具と、
ベース金具にスライド可能に組み合わせるとともに、ケラバ包みを取り付ける固定金具と、のみからなり、長尺折板屋根の熱伸縮に拘束されずにケラバ包みを固定することを特徴とするケラバ包みの受け金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ケラバ(屋根の妻側の端部)を化粧するために、ケラバを覆うようにして取り付けられる「ケラバ包み」を長尺折板屋根に固定するケラバ包みの固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ケラバ包みの固定構造としては、これまでにも特許文献1乃至特許文献3に開示されたものなどが存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3845648号公報
【特許文献2】特許第2781965号公報
【特許文献3】特開2010−144462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、金属屋根、例えば、二重折板屋根などの長尺折板屋根は、日射を受けるために熱伸縮を繰り返す。このため、金属屋根とケラバ包みとを固定している固定ビスに負荷がかかり、固定ビスが疲労で損傷する(ビス穴が広がってビスが抜ける)危険性がある。
【0005】
上記した特許文献3は、このような金属折板(長尺折板屋根)の熱伸縮による不具合の発生を防止するために、ケラバカバー(ケラバ包み)支持金具の固定板を金属折板(長尺折板屋根)側に固定し、その上に長手方向に沿う所定範囲で摺動自在な状態で付設した摺動支持体にケラバカバー(ケラバ包み)を取付けるものである。
【0006】
これに対して、本願発明は、特許文献3とは異なる構造で長尺折板屋根の熱伸縮による不具合の発生を防止するための「ケラバ包みの固定構造」を提供すべく鋭意試験・研究を行い、本願発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本願発明の第1の発明は、長尺折板屋根にケラバ包みを固定するケラバ包みの固定構造であって、ケラバ包みを固定する長尺折板屋根に取り付けたベース金具と、ベース金具に長尺折板屋根の流れ方向(熱伸縮量の大きい長手方向)へスライド可能に組み合わせるとともに、ケラバ包みを取り付けた固定金具と、を備えて、長尺折板屋根の熱伸縮に拘束されずにケラバ包みを固定したことを特徴とするものである。
第2の発明は、固定金具の代わりにケラバ包みの一部をベース金具へスライド可能に組み合わせたことを特徴とする同ケラバ包みの固定構造である。
第3の発明は、長尺折板屋根が二重折板屋根であり、ベース金具は上折板に取り付けられて、上折板の熱伸縮に拘束されずにケラバ包みを固定したことを特徴とするケラバ包みの固定構造である。
第4の発明は、上記した第1発明乃至第3の発明に係るケラバ包みの固定構造を備えた折板屋根構造である。
第5の発明は、長尺折板屋根にケラバ包みを固定するためのケラバ包みの受け金具であって、ケラバ包みを固定する長尺折板屋根に取り付けるベース金具と、ベース金具にスライド可能に組み合わせるとともに、ケラバ包みを取り付ける固定金具と、からなり、長尺折板屋根の熱伸縮に拘束されずにケラバ包みを固定することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
上記した本願発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)本願発明は、ケラバ包みを直接長尺折板屋根(二重折板屋根の場合には上折板)に固定せずに、受け金具(ベース金具と固定金具、又はベース金具のみ)を介在させることで、長尺折板屋根(二重折板屋根の場合には上折板)の熱伸縮を拘束しない。
(2)そのため、ケラバ包みを固定する固定部材(例えば、固定ビスなど)にかかる負担を軽減し、その破損(例えば、固定ビスの抜け)を防止できる。
(3)また、ケラバ包みを直接長尺折板屋根(二重折板屋根の場合には上折板)に固定しないため、長尺折板屋根(二重折板屋根の場合には上折板)の雨漏りリスクを減少させることができる。
(4)さらに、受け金具(ベース金具と固定金具)を介在させることで、これが支持部材となって、積雪によるケラバ包みの沈み込みを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本願発明の第1実施形態を示す説明図(1)。
【
図2】本願発明の第1実施形態を示す説明図(2)。
【
図3】本願発明の第1実施形態を示す説明図(3)。
【
図4】本願発明の第1実施形態を示す説明図(4)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、ここでは、長尺折板屋根として、スライド断熱金具を使用している二重折板屋根を対象として説明する。「スライド断熱金具」とは、二重折板の熱伸縮が懸念されるような屋根において、上下折板の接合に使用されるものであって、この使用によって上下折板の熱伸縮が拘束されず、断熱金具の有害な疲労損傷を防ぐことができる。
【0011】
図1乃至
図4は、本願発明の第1実施形態を示す説明図である。
図1に図示するように、ケラバ包みの固定構造は、まず、ケラバ包み(図示省略)を固定する二重折板屋根の上折板50にベース金具(A)をビス固定等で取り付け、このベース金具(A)に固定金具(B)を上折板50の流れ方向へスライド可能に組み合わせてなるものである。図示するベース金具(A)と固定金具(B)のスライド可能な組み合わせは、上折板50の流れ方向(熱伸縮量の大きい長手方向)へ延びるベース金具(A)の略V字形レール溝(A1)の内側傾斜面(A2)と、同じ流れ方向に延びる固定金具(B)の略コ字形端部(B1)の傾斜片(B2)とを当接して係合させることによりなっている。
【0012】
但し、ベース金具(A)と固定金具(B)のスライド可能な組み合わせは、図示のものに限定されるものではない。また、図示では、説明の便宜上、ベース金具(A)を上折板50に取り付けてからベース金具(A)と固定金具(B)を組み合わせているが、施工上は、ベース金具(A)と固定金具(B)を組み合わせてからベース金具(A)を上折板50に取り付ける方が効率的である。
【0013】
次に、
図2に図示するように、ベース金具(A)へスライド可能に組み合わせた固定金具(B)にケラバ包み40をビス固定等で取り付ける。これによって、ケラバ包みの固定構造が完成する。
図3は、この完成したケラバ包みの固定構造を水下側から見た断面図である。なお、符号60は下折板、符号70はスライド断熱金具、符号80はL金具、符号90は妻タイトフレームである。
【0014】
図4に図示するように、上記したケラバ包みの固定構造であれば、熱伸縮した上折板50に追従してベース金具(A)が固定金具(B)に対してスライドするだけであり、固定金具(B)とのみ直接固定されているケラバ包み40は、上折板50の熱伸縮を拘束することはない。従って、ケラバ包み40を固定するために用いている固定部材(固定ビス等)に負荷がかかることはなく、固定部材の疲労による損傷を防止できる。
【0015】
図5は、本願発明の第2実施形態を示す説明図である。
図5に図示するように、ケラバ包みの固定構造は、ケラバ包み40を固定する二重折板屋根の上折板50に板状のベース金具(A’)をビス固定等で取り付け、固定金具の代わりにケラバ包み40の一部(端部)を折り曲げて係止部41とし、この係止部41をベース金具(A’)へスライド可能に組み合わせて(ひっかけて)なるものである。その他については、第1実施形態と同じであるので、その説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本願発明は、熱伸縮を繰り返す金属屋根に「ケラバ包み」を固定する構造として幅広く利用できるものである。
【符号の説明】
【0017】
A ベース金具
A1 略V字形レール溝
A2 内側傾斜面
B 固定金具
B1 略コ字形端部
B2 傾斜片
40 ケラバ包み
50 上折板
60 下折板
70 スライド断熱金具
80 L金具
90 妻タイトフレーム