(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の水洗大便器装置は、ジェット水の進行方向を切り替えてタンク貯水することは開示されている。しかしながら特許文献1の水洗大便器装置は便器側にジェット水を供給する便器洗浄モードからジェット水の進行方向を切り替えてタンク貯水するタンク貯水モードへ切り替わる際に、遮蔽部がジェット水を遮蔽することで力を受けて吸引口に押し付けられるようになる。そのため、ジェット水をタンク貯水する水位に到達してもジェット水によって遮蔽部が吸引口に押し付けられて便器洗浄モードからタンク貯水モードに瞬時に切り替えることができない。さらに、遮蔽部がジェット水と干渉すると、ジェットポンプ作用が低下し、便器の洗浄性能や汚物搬送性能に寄与しない水が便器側に供給され、無駄水となってしまい、洗浄する際に使用する水の総流量が増加してしまうという課題が発生する。
【0010】
特許文献2の水洗大便器装置は、ジェット水の進行方向を切り替えてタンク貯水することは開示されている。また、便器洗浄モードからタンク貯水モードに切り替わる際にジェット水を遮蔽する球体をジェット水によってスロート管に引き込むことが開示されている。しかしながら特許文献2の水洗大便器装置は、スロート管に球体を引き込む際にジェット水と球体が衝突すると衝突したジェット水は不規則に進むことになり、球体は球体に対して全方向に力を受けることになり、便器洗浄モードからタンク貯水モードに瞬時に切り替えることができない。さらに、球体をスロート管内に引き込むように作用するジェット水は、スロート管を通じて便器側に排出されるため、特許文献1と同様に便器の洗浄性能や汚物搬送性能に寄与しない水が便器側に供給され、無駄水となってしまい、洗浄する際に使用する水の総流量が増加してしまうという課題が発生する。
【0011】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、進行方向が切り替えられたジェット水の力を受けて便器洗浄モードからタンク貯水モードに瞬時に切り替えることができる水洗大便器装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明に係る水洗大便器装置は、洗浄水によって汚物を排水管に排出する水洗大便器装置であって、汚物を受け止めるボウル部と、洗浄水として供給される水を前記ボウル部に導くための導水路と、を有する大便器本体と、内部に水を貯留しており、当該水を前記導水路に供給することができるよう設けられたタンクと、前記タンクの内部において少なくとも一部が水没した状態で配置されたジェットポンプユニットと、を備え、前記ジェットポンプユニットは、一端側に吸引口が形成された管であって、前記吸引口から内部に流入した水が前記導水路に供給されるように配置されたスロート管と、前記吸引口から前記スロート管の内部に向けて高速のジェット水を噴射することにより、ジェットポンプ作用を誘発させるノズルと、前記ジェット水の進行方向を前記スロート管の内部から前記スロート管の外部へと切り替えることで、前記ジェット水を前記導水路に供給する便器洗浄モードと前記ジェット水を前記タンク内に供給するタンク貯水モードとを切り替える進行方向切替手段と、を備えており、前記進行方向切替手段は、前記タンク貯水モード時において、前記ジェット水の進路を遮蔽することで前記ジェット水の進行方向を前記スロート管の外部へと切り替える遮蔽部と、前記遮蔽部を前記便器洗浄モード時の位置か
ら前記タンク貯水モード時の位置に移動させる移動機構と、を有しており、前記遮蔽部は、
前記ジェット水と干渉すると共に前記ジェット水の進行方向を切り替えるガイド面を有し
、前記遮蔽部が前記便器洗浄モード時の位置から前記タンク貯水モード時の位置に向かう方向を第1の方向とし、前記便器洗浄モードから前記タンク貯水モードに切り替わる過程において、前記ジェット水により前記遮蔽部に加わる力が前記第1の方向に付与されることを特徴とする。
【0013】
このように構成された第1の発明においては、
遮蔽部が便器洗浄モード時の位置からタンク貯水モード時の位置に向かう方向を第1の方向とし、便器洗浄モードからタンク貯水モードに切り替わる過程において、ジェット水により遮蔽部に加わる力が第1の方向に付与されるようにしたため、遮蔽部をタンク貯水モード時の位置に押す力が大きく働くようにできる。これにより、進行方向が切り替えられたジェット水の力を受けて便器洗浄モードからタンク貯水モードに瞬時に切り替えることができる。
【0014】
さらに、便器洗浄モードからタンク貯水モードに瞬時に切り替えることで、ジェット水の一部が遮蔽部に干渉することで流量の低下した水が便器に供給される時間を短くすることができるため、洗浄する際に使用する水の総流量を少なくすることができる。
【0015】
第2の発明では、前記遮蔽部が前記タンク貯水モード時の位置から
前記便器洗浄モード時の位置に向かう方向を第2の方向とし、前記ガイド面は、進行方向が切り替えられた前記ジェット水の略全てが前記第2の方向側に進行するよう前記遮蔽部の前記第1の方向側の端部に設けられていることを特徴とする。
【0016】
このように構成された第2の発明においては、略全てのジェット水の進行方向を第2
の方向側に切り替えることで、ジェット水の進行方向を切り替えることによって遮蔽部に与える第1
の方向側の力をより大きくすることができるため、便器洗浄モードからタンク貯水モードへより瞬時に切り替えることができる。
【0017】
第3の発明の前記ガイド面は、進行方向が切り替えられた後の前記ジェット水の拡散が抑制されるよう断面形状が凹状に形成されていることを特徴とする。
【0018】
このように構成された第3の発明においては、進行方向が切り替えられた後のジェット水の拡散が抑制されることで、より多くのジェット水をガイド面によって第2の方向
側に向けることができる。そのため、ジェット水によって受ける遮蔽部の第1の方向
側の力が大きくなり、便器洗浄モードからタンク貯水モードにより瞬時に切り替えることができる。
【0019】
第4の発明の前記ガイド面は、前記ジェット水の進行方向が切り替わることによる当該ジェット水の減速が抑制されるよう曲面状に延設されていることを特徴とする。
【0020】
このように構成された第4の発明においては、ジェット水の進行方向が切り替わることによる当該ジェット水の減速が抑制されることで、ジェット水の流速が速い状態を維持することができるため、より大きい第1の方向
側の力が遮蔽部に付与されることになり、便器洗浄モードからタンク貯水モードに瞬時に切り替えることができる。
【0021】
第5の発明では、前記
遮蔽部は、前記ノズルから噴射された前記ジェット水が衝突する衝突領域と、該衝突領域に衝突した前記ジェット水が前記スロート管の内側に向かうことを遮る遮蔽領域と、前記衝突領域に衝突した前記ジェット水を前記スロート管の外側に向わせる開放領域とを有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の水洗大便器装置によれば、進行方向が切り替えられたジェット水の力を受けて便器洗浄モードからタンク貯水モードに瞬時に切り替えることができる水洗大便器装置を提供することにある。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要件に対しては、可能な限り同一の符合を付して、重複する説明は省略する。
【0025】
本発明の実施形態に係る水洗大便器装置について、
図1及び
図2を参照しながら説明する。
図1は、水洗大便器装置FTの断面図であって、水洗大便器装置FTをその左右方向に垂直な面で切断した場合の断面を示している。
図2は、水洗大便器装置FTの上面図である。
図2では、後に説明するタンク20の内部構造を示すため、タンク20の上蓋201を取り外した状態を描いている。
【0026】
図1及び
図2に示したように、水洗大便器装置FTは、大便器本体10と、大便器本体10の後方側(
図1では右側、
図2では上側)において大便器本体10の上面101に設置されたタンク20とを備える。水洗大便器装置FTは、大便器本体10によって汚物を受け止めて、当該汚物を、タンク20から供給される水(洗浄水)によって、排水管SWに排出する装置である。
【0027】
なお、以下の説明においては、特に断らない限り、大便器本体10に着座した状態の使用者から見て右側(
図2では左側)のことを「右側」と称し、大便器本体10に着座した状態の使用者から見て左側のことを「左側」(
図2では右側)と称する。また、大便器本体10に着座した状態の使用者から見て前方側(
図1では左側、
図2では下側)のことを「前側」又は「前方側」と称し、大便器本体10に着座した状態の使用者から見て後方側(
図1では右側、
図2では上側)のことを「後側」又は「後方側」と称する。
【0028】
大便器本体10は、ボウル部110と、リム部120と、導水路130と、排水トラップ管路140とを有する。ボウル部110は、上方から落下する汚物を一時的に受け止める部分である。リム部120は、ボウル部110の上縁部に形成されており、
図1に示したように、ボウル部110の内側面の一部を外周側に向けて後退させたような形状となっている。後に説明するように、リム部120は、ボウル部110に向けて供給された水が旋回して流れる流路となっている。リム部120は、ボウル部110の上縁に沿って一周するような略円形(上面視)の流路として形成されている。
【0029】
導水路130は、タンク20から供給された水をボウル部110に導くために、大便器本体10の内部に形成された流路である。導水路130は、その一端が大便器本体10の上面101に開口しており、タンク20から供給される水の入口131となっている。入口131が形成されている位置は、大便器本体10の上面101のうち後方側の部分であり、且つ左右方向における中央の部分である。
【0030】
導水路130は、その下流側において二つの流路(第一導水路132、第二導水路134)に分岐している。一方の流路である第一導水路132は、その下流側の端部がリム部120のうち右側の部分において開口しており、当該開口が水の出口(吐水部133)となっている。タンク20から入口131に水が供給されると、その一部は第一導水路132の内部を通り、吐水部133から噴出してリム部120に供給される。
【0031】
他方の流路である第二導水路134は、その下流側の端部がリム部120のうち左側且つ後方寄りの部分において開口しており、当該開口が水の出口(吐水部135)となっている。タンク20から入口131に水が供給されると、その一部は第二導水路134の内部を通り、吐水部135から噴出してリム部120に供給される。
【0032】
吐水部133から水が噴出する方向は、略円形の流路として形成されたリム部120の円周に沿う方向であり、且つ上面視において反時計回りの方向となる。吐水部135から水が噴出する方向も、略円形の流路として形成されたリム部120の円周に沿う方向であり、且つ上面視において反時計回りの方向となる。
図2において矢印で示したように、吐水部133及び吐水部135からリム部120に噴出した水は、いずれもリム部120に沿って反時計回りに旋回して流れながら、リム部120の全体からボウル部110に向けて流下する。
【0033】
排水トラップ管路140は、ボウル部110の下端と排水管SWとを接続する流路である。排水トラップ管路140は、ボウル部110の下端から下流に向かう方向に沿って上り勾配となるように形成されている上昇流路141と、上昇流路141の上端から下流に向かう方向に沿って下り勾配となるように形成されている下降流路142とを有する。このような構成により、ボウル部110の下部から上昇流路141の下部に亘る部分には水を貯留することが可能となっており、貯留した水によって封水WTが形成されている。下降流路142の下端には排水管SWが接続されている。排水管SWは建物の内部に配置された配管であって、その下流側の端部が不図示の下水管に接続されている。
【0034】
タンク20からボウル部110に向けて水が供給されると、上記のように、当該水はリム部120を旋回して流れながら、リム部120の全体からボウル部110に向けて流下する。水はボウル部110に対して上方から追加され、ボウル部110の下端部から上昇流路141及び下降流路142を通って排出される。その結果、ボウル部110に貯留されている水(封水WT)には下向きの流れが生じることとなる。
【0035】
ボウル部110において一時的に受け止められていた汚物は、上方のリム部120から供給される水によって下方に向けて押し込まれ、ボウル部110の下端に向かって移動する。その後、汚物は水流によって上昇流路141を通り下降流路142に到達して、水と共に排水管SWに向けて落下する。
【0036】
タンク20は内部に水が貯留された容器であって、当該水を導水路130の入口131に供給するためのものである。タンク20は、第一タンク部210と、第一タンク部210の底壁211の一部を下方に伸ばすように形成された第二タンク部220とを有している。第一タンク部210と第二タンク部220はいずれも略直方体の容器であって、両者の内部空間が互いに連通している。第二タンク部220は、第一タンク部210の底壁211のうち後方側の部分に接続されている。
【0037】
第一タンク部210の底壁211(第二タンク部220よりも前方側の部分)は、大便器本体10の上面101のうち後方側の部分に対して上方から近接した状態となっている。具体的には、大便器本体10の上面101のうち後方側の部分には入口131が形成されているが、第一タンク部210の底壁211は、入口131の周囲を上方から覆うように、大便器本体10の上面101に対して上方から近接した状態となっている。また、底壁211には入口131と略同一形状の開口212が形成されており、開口212と入口131とが上面視で重なっている。このため、タンク20の内部に貯留されている水は、開口212及び入口131を通って導水路130の内部に流入し、ボウル部110に向かって流れることが可能となっている。
【0038】
第一タンク部210を上記のように配置した結果、第二タンク部220は大便器本体10よりも後方に位置している。すなわち、大便器本体10の後方側端部よりも更に後方側に位置した状態となっている。また、第二タンク部220の底壁221は、大便器本体10の上面101よりも低い位置に配置されている。
【0039】
上記のようにタンク20が配置されることにより、タンク20の前端部が、大便器本体10の後端部よりも前方側に位置している。また、タンク20の下端部が、大便器本体10の上面101よりも下方側に位置している。その結果、水洗大便器装置FT全体の前後方向における寸法と、上下方向における寸法とが、いずれも小さくなっており、水洗大便器装置FTのデザイン性が向上している。
【0040】
次に、タンク20の内部の構成について説明する。
図3は、水洗大便器装置FTを後方側から見た場合における、タンク20の内部を示す斜視図である。
図3に示したように、タンク20の内部には、給水管231と、主弁233と、パイロット弁234と、ジェットポンプユニット300とが配置されている。
【0041】
給水管231は、主弁233に向けて水を供給するための管であって、第二タンク部220の底壁221から鉛直上方に向かって伸びるように配置されている。給水管231の下端は、タンク20の外部において不図示の水道管に接続されている。また、給水管231の上端は、タンク20の内部において主弁233に下方から接続されている。給水管231は、タンク20の内部のうち左右方向における中央よりも左側となる位置に配置されている。
【0042】
給水管231の途中(水道管と主弁233との間)には、
図3では図示しない定流量弁232が配置されている。主弁233が開いた状態において主弁233に流入する水の流量は定流量弁232によって一定となり、水道管内の水圧によって変動することがない。
【0043】
主弁233は開閉弁であって、給水管231からジェットポンプユニット300に向かう水の流路の開閉を行うものである。主弁233とジェットポンプユニット300との間にはバキュームブレーカー235が備えられており、バキュームブレーカー235の上流側が負圧となって水が逆流してしまうことが防止されている。なお、上記のように給水管231が上方に向かって伸びており、主弁233とバキュームブレーカー235とはタンク20内の高い位置に配置されている。このため、タンク20の水位が満水位となった状態においても、バキュームブレーカー235が水没してしまうことはない。
【0044】
主弁233にはパイロット弁234が備えられており、パイロット弁234の動作によって主弁233の開閉が切り替えられる構成となっている。パイロット弁234には、タンク20の外側に配置された操作レバー236が、タンク20の内部に配置された伝達機構237を介して接続されている。また、パイロット弁234には、タンク20の内部に配置されたフロート238が更に接続されている。
【0045】
水洗大便器装置FTの使用者によって操作レバー236が操作されると、当該操作が伝達機構237を介してパイロット弁234に伝達され、パイロット弁234が開かれる。これにより主弁233が開かれた状態となり、給水管231からジェットポンプユニット300に向かって水が流れる。後に説明するように、ジェットポンプユニット300に向かって流れた水は、タンク20の内部に貯留されていた水と共に洗浄水として導水路130に供給される。このため、タンク20の内部における水位は次第に低下していく。
【0046】
ボウル部110の洗浄が終了した後も、主弁233は閉じられず、給水管231からジェットポンプユニット300に向かって引き続き水が流れる。ジェットポンプユニット300に向かって流れた水はタンク20の内部に供給されて、次回の洗浄のために貯留される。タンク20の内部に向けた水の供給(タンク20への注水)が行われると、タンク20の内部における水位は次第に上昇して行く。タンク20の内部においてパイロット弁234に接続されているフロート238は、水位の上昇に伴って上昇し、これによりパイロット弁234が閉じられる。
【0047】
このように、タンク20の内部における水位が上昇すると、フロート238が受ける浮力の変化によってパイロット弁234が閉じられる。パイロット弁234が閉じられると、主弁233が閉じられた状態となり、給水管231からジェットポンプユニット300への水の供給が停止される。この時点においてタンク20の内部に貯留されている水の量が、次回の洗浄のために必要な量となるように(所定の満水位となるように)、フロート238の配置が調整されている。
【0048】
ジェットポンプユニット300は、給水管231から供給された水によりジェットポンプ作用を誘発させ、これにより導水路130に向けた水の供給を行うためのものである。ジェットポンプユニット300は、ノズル310と、スロート管320とを有している。
【0049】
ノズル310は、一端が接続管339を介してバキュームブレーカー235に接続されており、他端には噴射口311が形成されている管である。ノズル310は、第二タンク部220の底壁221の近傍に配置されている。主弁233が開かれると、給水管231から供給された水は、接続管239を流れてノズル310に到達し、噴射口311から高速の水流として噴射される。ノズル310は、第二タンク部220のうち後方側且つ右側の隅(上面視における隅)に配置されている。
図3に示したように、ノズル310はU字形状となっており、その下流側が上記隅から折り返されている。噴射口311は、その噴射方向がスロート管320の内部に向けられている。
【0050】
スロート管320は、断面が円形の管であって、底壁211に形成された開口212を一部が貫通した状態で、タンク20の内部に配置されている。スロート管320の一端は導水路130の入口131に接続されており、他端には開口である吸引口321が形成されている。スロート管320は、導水路130の入口131側の部分が鉛直方向に沿っており、吸引口321側の部分が水平面に対して傾斜している。このため、その全体が逆U字形状となっている。
図2に示したように、スロート管320は、上面視において前後方向に対して傾斜した状態で、タンク20の内部に配置されている。
【0051】
スロート管320の具体的な形状について更に詳しく説明する。スロート管320は、吸引口321から斜め上方に向けて伸びる上昇部322と、上昇部322の下流側(上側)に配置された屈曲部323と、屈曲部323の下流側(下側)に配置され、屈曲部323から下方に向かって伸びる下降部324とを有する。
【0052】
上昇部322は、その管径が全体において均一な円筒形状の管であって、水平面に対して傾斜した状態で配置されている。吸引口321は上昇部322の下端に形成されている。吸引口321は、その縁の全体が水平面に沿うように(水平面と平行になるように)形成されている。
【0053】
下降部324は、その管径が全体において均一な円筒形状の管であって、鉛直方向に沿って配置されている。下降部324の管径は、上昇部322の管径よりも大きい。屈曲部323のうち上昇部322側の管径は、上昇部322の管径に等しい。また、屈曲部323のうち下降部324側の管径は、下降部324の管径に等しい。このため、管径が互いに異なる上昇部322と下降部324とが、屈曲部323によって滑らかに繋がれているということができる。
【0054】
図4は、タンク20の内部における構成を模式的に示している。既に説明したように、タンク20の内部には、給水管231と、主弁233と、ジェットポンプユニット300とが配置されている。
【0055】
ボウル部110の洗浄が行われていない状態(待機状態)においては、タンク20の水位は満水位となっている。水洗大便器装置FTの使用者によって操作レバー236が操作されると、既に説明したように主弁233が開かれた状態となり、ノズル310の噴射口311から水が噴射される(
図4の矢印AR1)。タンク20の内部に貯留されていた水は、スロート管320の内部に引き込まれて(
図4の矢印AR2)、洗浄水としてリム部120に供給される(
図4の矢印AR3)。
【0056】
リム部120への水の供給が終了すると、ノズル310からの水の供給先が進行方向切替手段350によって切り替えられて、タンク20への注水が開始される(
図4の矢印AR4)。タンク20内の水位は次第に上昇して行き、満水位となった時点でフロート238によりパイロット弁234が閉じられる。これと同時に主弁233が閉じられることによりタンク20への注水が終了し、待機状態に戻る。
【0057】
タンク20の内部におけるその他の構成について、再び
図3を参照しながら説明する。
図3に示したように、タンク20の内部にはスロート管320の下降部324を囲むような隔壁240が配置されている。隔壁240は、底壁211から上方に向かって伸びるように形成されている。隔壁240、タンク20の前側壁面213、左側壁面214、及び第一タンク部210の底壁211によって、タンク20の内部空間の一部が区画され、小タンク260が構成されている。小タンク260は、その上部がタンク20の内部に開放された容器であって、第一タンク部210のうち前方側且つ左側の隅に配置されている。スロート管320は、下降部324の下端部分が小タンク260の内側に配置されている。また、吸引口321が小タンク260の外側に配置されている。
【0058】
隔壁240のうち下端部近傍には開閉窓241が設けられている。開閉窓241は通常は開かれた状態となっており、開閉窓241を通じて小タンク260の内部と外部(隔壁240よりも後方側の空間)とが連通している。このため、ボウル部110の洗浄が行われていない状態(待機状態)においては、タンク20内に貯留された水の水位と、小タンク260内に貯留された水の水位は等しくなっている。
【0059】
操作レバー236は、二つの方向(大方向、小方向)に操作することが可能である。操作レバー236が大方向に操作された場合には、開閉窓241が開かれた状態のまま、パイロット弁234及び主弁233が開かれる。小タンク260に貯留されていた水は、開閉窓241を通過して第二タンク部220に流出し、吸引口321に到達する。このため、タンク20の内部に貯留されていた水は、小タンク260に貯留されていた分を含む殆どが、スロート管320の内部に引き込まれてリム部120に供給される。
【0060】
一方、操作レバー236が、小方向に操作された場合には、開閉窓241が閉じられると同時にパイロット弁234及び主弁233が開かれる。このため、タンク20の内部に貯留されていた水のうち小タンク260に貯留されていた水は、開閉窓241を通過することができずに小タンク260の内部に残留したままとなる。その結果、洗浄水としてリム部120に供給される水の量は少量となる。
【0061】
なお、以下の説明において「タンク20に貯留されている水の水位」又は「タンク20内の水位」等というときには、小タンク260の外部における水位を示すものとする。すなわち、隔壁240によって二つに分けられた空間のうち、吸引口321が配置されている方の空間に貯留されている水の水位を示すものとする。小タンク260に貯留されている水の水位については、以下の説明では考慮しない。
【0062】
続いて、リム部120へ洗浄水として供給される水の流量(吐水部133、135に供給される水の流量といってもよい)について、
図5を参照しながら説明する。
図5は、水洗大便器装置FTの、洗浄時における動作の流れを説明するためのフローチャートである。
【0063】
まず、水洗大便器装置FTの使用者によって操作レバー236が操作されると(ステップS01)、ノズル310から水が噴射され、既に説明したようにジェットポンプ作用によってリム部120に水が供給される(ステップS02)。
【0064】
ノズル310からの水の噴射が開始されてから、タンク20内の水位が低下して、噴射された水の進行方向が進行方向切替手段350により切り替えられるときの位置(このときの水位を、以下では「第一水位」とも称する)となるまでの期間においては、ジェットポンプ効果によって大流量の水がリム部120に供給される(ステップS03)。
【0065】
タンク内の水位が第一水位まで低下すると、継続して噴射されているノズル310からの水により、タンク20内への貯水が行われる(ステップS04)。タンク20内の水位が上昇して、満水位となると、ノズル310からの水の噴射が停止され、タンク20内への水の貯水が停止される(ステップS05、S06)。
【0066】
図6は、進行方向切替手段350および進行方向切替手段350に含まれる遮蔽部352を表す側面図である。
図6(A)は、進行方向切替手段の移動を示す一例である。
図6(B)は、ノズル310から噴射されるジェット水がスロート管320の内部に向う便器洗浄モードにおける進行方向切替手段350を示す図である。
図6(C)はノズル310から噴射されるジェット水がスロート管320の外部に向うタンク貯水モードにおける進行方向切替手段350を示す図である。
図6(D)は便器洗浄モード時の右側面図である。
【0067】
図6(A)に示したように、進行方向切替手段351は、ジェット水の進行方向を切り替える遮蔽部352と遮蔽部352を便器洗浄モードとタンク貯水モードとに移動させる移動機構353から構成される。また、移動機構353は便器洗浄モードからタンク貯水モードに移行する際に移動する方向を、第
1の方向D1と第
1の方向D1とは逆方向のD2方向とに遮蔽部352を移動させる。
【0068】
図6(B)は、便器洗浄モードにおける進行方向切替手段350を示す図であり、便器洗浄モード時では遮蔽部352が第
2の方向D2において最大限移動している位置に配置される。便器洗浄モード時の遮蔽部352の位置はノズル310から噴射されるジェット水と干渉しない位置であることが好ましい。
【0069】
図6(C)は、タンク給水モードにおける進行方向切替手段350を示す図であり、タンク貯水モード時では遮蔽部352が第
1の方向D1において最大限移動している第二の位置に配置される。
【0070】
図6(C)に示したように、遮蔽部352は、便器洗浄モードからタンク貯水モードに切り替わる際に、ノズル310から噴射された水を第
2の方向D2
側に指向させるように構成されたガイド面355を有している。進行方向切替手段350の遮蔽部352はノズル310から噴射されたジェット水がスロート管320の内部に流入しないようジェット水の進行方向を遮蔽する。ノズル310から噴射された水は、このガイド面355に沿って、進行方向がスロート管320の外部に向うようになる。
【0071】
図6(C)に示すように、ガイド面355はジェット水の進行方向を切り替える際に切り替えられたジェット水が第
1の方向D1
側よりも第
2の方向D2
側に多く進むように、遮蔽部352の第
1の方向D1側の端部に設けられるよう構成されている。
【0072】
また、
図6(C)に示すように、ガイド面355はジェット水の進行方向を切り替える際にジェット水がガイド面355に衝突して減速することがないような曲面形状となっている。
【0073】
図6(D)はタンク貯水モード時の進行方向切替手段350の右側面図である。
図6(D)に示すように、遮蔽部352のガイド面355はジェット水の進行方向を切り替える際にジェット水がガイド面355に衝突して拡散することがないように、凹型形状に形成されている。ジェット水がガイド面355に衝突することで拡散しようとするが、ガイド面355を凹型形状とすることでジェット水の拡散を抑制することができる。ここで言う凹型形状とは、滑らかな曲面形状のものも含むものとする。
【0074】
図6に示した移動機構353は進行方向切替手段350の遮蔽部352を回動させるように移動させる例を挙げたが、遮蔽部352を移動させることができればよく、回動させるような移動機構353の他にも、遮蔽部を直線上でスライドさせるような移動機構353とすることもできる。
【0075】
図6に示した進行方向切替手段350にはタンク20内の水位に連動してジェット水の進行方向を切り替えるフロート部材351を備えている。このようなフロート部材351を備えていることから、タンク20内の水位に連動して、遮蔽部352を移動させることができる。しかし、フロート部材351によって遮蔽部352を移動させることは一例であり、遮蔽部352を移動させることができればよいため、電気式で動かすような移動機構353も含むものとする。
【0076】
図7乃至
図9を参照して、便器洗浄モードからタンク貯水モードへの移行する際の遮蔽部352の位置および遮蔽部352に加わる力を説明する。
図7は便器洗浄モード時の遮蔽部352の位置を示す図である。
図7に示すように、便器洗浄モード時はノズル310から噴射されるジェット水はスロート管320の内部に向かうようになっている。便器洗浄モード時の遮蔽部352はスロート管320の内部に向かうジェット水と干渉しない位置となるように配置される。
【0077】
図8は、便器洗浄モードからタンク貯水モードへの移行途中の遮蔽部352の位置及び進行方向が切り替えられたジェット水によって遮蔽部352が受ける力を説明する図である。
図8(A)は、便器洗浄モードからタンク貯水モードへの移行途中の遮蔽部352およびガイド面355の位置を示す図である。ジェット水に遮蔽部352のガイド面355が干渉することにより、スロート管320内部に向かうジェット水と、ガイド面355に沿って第
2の方向D2
側へ向かうジェット水とに分けられる。ガイド面355によって第
2の方向D2
側に向けられたジェット水はスロート管320の外部に向いているため、タンク20(
図1参照)の水位が上昇することになる。
図6(C)および
図6(D)に示したように、ガイド面355は、遮蔽部352の第
1の方向D1側の端部に設けるように形成されている。さらにガイド面355は、進行方向が切り替えられたジェット水がガイド面355に衝突して拡散しないように凹型形状に形成されている。さらに、ガイド面355は、ジェット水の進行方向が切り替わることにより減速が抑制されるよう曲面状に形成されている。
【0078】
図8(B)は、便器洗浄モードからタンク貯水モードに切り替わる途中に遮蔽部352が受ける力を示す図である。
図8(B)に示すように、第
2の方向D2
側であるスロート管320の外部に向うジェット水による反力により、タンク貯水モードに切り替える方向である第
1の方向D1
側の力Fが遮蔽部352に付与される。この力Fは、遮蔽部352が、タンク貯水モードに切り替わる第
1の方向D1に移動すれば移動するほど、第
2の方向D2
側に向うジェット水の量が大きくなり力Fも大きくなる。
【0079】
これにより、遮蔽部352は第
2の方向
D2側に向かうジェット水の反力を利用してタンク貯水モードに切り替わる第
1の方向D1
側の力を受けることとなり、便器洗浄モードからタンク貯水モードへと瞬時に切り替えることができる。便器洗浄モードからタンク貯水モードに瞬時に切り替えることで、ジェット水の一部が遮蔽部に干渉することで流量の低下した水が便器に供給される時間を短くすることができるため、洗浄する際に使用する水の総流量を少なくすることができる。
【0080】
ガイド面355は、遮蔽部352の第
1の方向D1側の端部に設けるように形成され、略全てのジェット水の進行方向を第
2の方向
D2側に切り替えることで、ジェット水の進行方向を切り替えることによって遮蔽部に与える第
1の方向D1
側の力Fをより大きくすることができるため、便器洗浄モードからタンク貯水モードへより瞬時に切り替えることができる。
【0081】
ガイド面355は、進行方向が切り替えられたジェット水がガイド面355に衝突して拡散しないように凹型形状に形成され、進行方向が切り替えられた後のジェット水の拡散が抑制されることで、より多くのジェット水をガイド面355によって第
2の方向
D2側に向けることができる。そのため、ジェット水によって受ける遮蔽部352の第
1の方向
D1側の力Fが大きくなり、便器洗浄モードからタンク貯水モードにより瞬時に切り替えることができる。
【0082】
ガイド面355は、ジェット水の進行方向が切り替わることにより減速が抑制されるよう曲面状に形成され、ジェット水の進行方向が切り替わることによるジェット水の減速が抑制されることで、ジェット水の流速が速い状態を維持することができるため、より大きい第
1の方向D1
側の力Fが遮蔽部352に付与されることになり、便器洗浄モードからタンク貯水モードに瞬時に切り替えることができる。
【0083】
図9は、タンク貯水モード時の遮蔽部352およびガイド面355の位置を示す図である。
図9(A)は、タンク貯水モード時における遮蔽部352の位置を示す図である。
図9(A)に示したように、ジェット水がスロート管320の外部に向う第
2の方向D2
側に向うような位置に配置される。つまり、遮蔽部352は第
1の方向D1に最大限移動している位置である。遮蔽部352およびガイド面355によって進行方向を切り替えられたジェット水はタンク20に給水されることになりタンク20内の水位が上昇することになる。
【0084】
図9(B)は、タンク貯水モード時に遮蔽部352が受ける力を示す図である。
図9(B)に示したように、タンク貯水モード時には遮蔽部352およびガイド面355によってほぼ全てのジェット水が第
2の方向D2
側に進行方向を切り替えている状態となる。第
2の方向D2
側に進むジェット水によって遮蔽部352はジェット水の反力である力Fを受けることになる。最大限まで移動した遮蔽部352はこの力Fによってタンク貯水モードの位置を維持することができる。
【0085】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。