(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362020
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】浴室の洗い場床
(51)【国際特許分類】
E03C 1/20 20060101AFI20180712BHJP
E04H 1/12 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
E03C1/20 A
E03C1/20 E
E04H1/12 301
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-70700(P2014-70700)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-190288(P2015-190288A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2017年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石間 敦
(72)【発明者】
【氏名】武藤 健
【審査官】
中村 百合子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−117257(JP,A)
【文献】
特開2012−172475(JP,A)
【文献】
特開2006−144299(JP,A)
【文献】
米国特許第06003169(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12− 1/33
E04H 1/00− 1/14
E04F 15/00−15/22
A47K 3/02− 4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面と下面が平行とされた発泡樹脂製の平板からなる床基材と、
前記床基材の下面を支持する床支持面を有する支持体と、
洗い場の表面を構成する表面材と、
前記床基材と前記表面材との間に配設されて、一様な厚みを有するクッション材と、
を備え、
前記支持体は、前記床基材の端部から前記洗い場の排水口に向けて前記床支持面が下り
傾斜するように構成され、
前記床支持面の下り傾斜によって、前記洗い場の表面に、前記排水口に向けて下り傾斜
する排水勾配を形成しており、
前記床支持面は、前記排水口に向かう傾斜の方向が異なる複数の傾斜面で構成してなり
、
前記床基材は、前記複数の傾斜面ごとに分割されたことを特徴とする浴室の洗い場床。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡樹脂を主体として形成された、浴室の洗い場床に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室の洗い場床を、発泡樹脂を主体として製造する技術がある。この技術は、特許文献1に示すように、金型内で発泡成形させて床基材の形状を賦形するものであり、安価な金型で洗い場床を形成することができる。また、この特許文献1は、壁パネルを載せる床基材枠と床基材本体とを別部材として、各々最適な製造方法で形成することも提案している。
【0003】
ところが、洗い場には複数のサイズが存在する。そのため、サイズ違いの洗い場ごとに金型が必要であり、金型の数が増大してしまう。そこで、洗い場床の製造コストをさらに下げるためには、洗い場の全体を金型で成形するのを止めることが考えられる。
【0004】
その一例として、発泡樹脂の平板を利用する方法がある。これは、発泡樹脂の平板を、洗い場のサイズにカットして床基材本体を形成し、壁パネルを載せる床基材枠を床基材本体の外周に配置したものである。この床基材枠は、長く帯状に成形されたものを必要なサイズにカットすればよい。そして、床基材本体の上面にクッション材と表皮材を載置して、洗い場の床基材を完成させる。このように作製すれば、金型の必要数を大幅に削減することができ、製造コストを下げることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−117257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、床基材本体は、上面と下面が平行に形成された発泡樹脂の平板なので、洗い場床の表面が水平面となってしまう。そのため、洗い場床の表面には、排水口に向けて下り傾斜する排水勾配が付与されず、洗い場床の排水性能が著しく劣ってしまい、洗い場床が乾燥するまでに長時間かかることになる。
【0007】
そこで、本発明は、上記した問題点を解決し、発泡樹脂の平板を用いながらも、排水勾配を付与することが可能な浴室の洗い場床を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、本発明は、上面と下面が平行とされた発泡樹脂製の平
板からなる床基材と、前記床基材の下面を支持する床支持面を有する床基材と、洗い場の
表面を構成する表面材と、前記床基材と前記表面材との間に配設されて、一様な厚みを有
するクッション材と、を備え、前記床基材は、前記床基材の端部から前記洗い場の排水口
に向けて前記床支持面が下り傾斜するように構成され、前記床支持面の下り傾斜によって
、前記洗い場の表面に、前記排水口に向けて下り傾斜する排水勾配を形成し
ており、前記床支持面は、前記排水口に向かう傾斜の方向が異なる複数の傾斜面で構成してなり、前記床基材は、前記複数の傾斜面ごとに分割されたことを特徴とする。
【0009】
これによれば、発泡樹脂製の平板で形成された床基材、及びクッション材を、一様な厚
みにしつつ、床基材を支える床支持面を排水口に向けて下り傾斜させることにより、床基
材及びクッション材を一様な厚みとしながら洗い場の表面に排水勾配を付与することがで
きる。発泡樹脂の平板は、金型に複雑な形状を要しないので、比較的安価に製造すること
が可能である。
したがって、排水勾配を付与する洗い場床を、発泡樹脂製の平板を用いて低コストで製
造することができる。
さらに、発泡樹脂製の床基材を、床支持面に形成された傾斜する方向が異なる傾斜面に合わせて屈曲させる必要がないので、床基材の上面に床支持面の傾斜面と同等に傾斜させることができる。そのため、洗い場の排水勾配を精度よく形成することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低コストで製造できる発泡樹脂の平板を用いながらも、排水勾配を付与することが可能な浴室の洗い場床を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態にかかる浴室の洗い場床を備えた浴室ユニットを例示する斜視図である。
【
図3】本実施形態の洗い場床の構造を表す分解斜視図である。
【
図5】本実施形態の洗い場床の支持体を表す平面図である。
【
図6】本実施形態の洗い場床の床基材を表す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる浴室の洗い場床を備えた浴室ユニットを例示する斜視図である。
【0015】
図1に表したように、浴室の洗い場床1は、浴槽2の隣りに配置されている。浴槽2と洗い場床1との間には、洗い場と浴槽設置部とを区切る仕切り壁となるバスエプロン9が設けられている。
【0016】
本実施形態に係る洗い場床1は、洗い場床1の下、すなわち洗い場床1と浴室設置面との間の空間に、洗い場床1に設けられた排水口15と浴室外の排水管路とを連通させる排水管5が敷設されている。
【0017】
洗い場床1は、洗い場1aの周縁部の各辺を囲むようにして止水壁1bが設けられることによって周縁部が上側に立ち上げられた浅底の器状(パン状)に形成され、浴室外部に湯水を漏出させないような立体的な形状となっている。
図1に表した洗い場1aの周縁部は、略四辺形である。なお、本実施形態の説明においては、浴槽2側に設けられた止水壁1bについて他の止水壁1bと区別するときは、止水壁1b(W)ということにする。
【0018】
洗い場1aの表面(以下の説明で用いる「表面」は、断りなき場合はいずれも浴室内側の面を指すこととする。)には、洗い場1aの表面に付着した湯水を排水口15まで流すようにするため、排水口15に向けて所定の勾配を持った傾斜面からなる排水勾配面101、102及び103が設けられている。この勾配は、洗い場1aの外周縁の各辺からそれぞれ遠ざかる方向に向けた下り勾配としている。また、互いに隣り合う排水勾配面同士の間の境界線は、排水勾配面101〜103と同様に、排水口15に向けて所定の勾配を有する。その境界線の勾配は、洗い場1aの外周縁の各辺からそれぞれ遠ざかる方向に向けた下り勾配とされている。
【0019】
図2は、
図1に表したA−A切断面の断面図、
図3は本実施形態の洗い場床の構造を表す分解斜視図、
図4は洗い場床を表す斜視図、
図5は支持体の支持面材を表す平面図、
図6は床基材を表す平面図である。
【0020】
図2、
図3に表したように、本実施形態に係る洗い場床1は、支持体11と、床基材12と、クッション材13と、表面材14と、を備える。浴槽2側を除く床基材12の周囲には、図示しない浴室ユニットの壁材を載置可能な壁載せ部材7が付設されている。また、床基材12の浴槽2側には、立壁部8が付設されている。
【0021】
支持体11は、長さ調整可能な支持脚112を有するフレーム111と、フレーム111の上に載せた高強度の支持面材113とが一体化され、設置場所の床高さに対する洗い場床1の表面(洗い場1aの表面)の高さを調整可能とされている。支持面材113の上面が、床基材12を支える床支持面113aとなる。
【0022】
図5に表したように、この支持面材113には、前述した洗い場1aの排水勾配面101、102及び103を形成するための基準面となる傾斜面1131a、1132a及び1133aが形成されている。そのため、支持面材113の床支持面113aは、洗い場1aの端部から洗い場1aの排水口15に向けて下り傾斜した形状となる。
【0023】
傾斜面1131a〜1133aは、排水勾配面101〜103と相似面になっている。
【0024】
なお、排水勾配面の形態および傾斜面の形態は、
図1および
図4に表した例には限定されない。
【0025】
床基材12は、支持体11の上に設けられている。クッション材13は、床基材12の上に設けられ、床基材12のクッション性(弾性)よりも高いクッション性を有する。表面材14は、クッション材13の上に設けられ、クッション材13の硬度よりも高い硬度を有する。本願明細書において、「硬度」とは、「硬さ」と同等であり、例えばビッカース硬さ試験(JIS Z 2244)、ブリネル硬さ試験(JIS Z 2243)、あるいはロックウェル硬さ(JIS Z 2245)などに基づいて測定可能な値をいう。
【0026】
床基材12は、発泡樹脂によって形成され、上面と下面とが平行で勾配のない平板である。そのため、床基材12は、金型の形状を複雑にする必要がなく、安価に製造することが可能である。
【0027】
発泡樹脂としては、例えば発泡ポリプロピレン、発泡ポリスチレン、発泡ポリエチレン、発泡ポリウレタンが用いられる。本実施形態では、一例として発泡ポリプロピレンが用いられている。発泡ポリプロピレンは、他の発泡樹脂に比べて耐衝撃性が高いため、これを用いることで過酷な使用にも耐えうる強度の優れた床構造を提供できることになる。
【0028】
また、
図6に表したように、床基材12は、支持面材113の床支持面113aに形成された傾斜面1131a〜1133a同士の境界線に沿って分割されている(基材構成部材121〜123)。すなわち、床基材12を構成する複数の基材構成部材121〜123は、排水口15に向かう傾斜の方向が異なる複数の傾斜面1131a〜1133aごとに合わせて分割されることになる。そのため、床基材12の下面は、床支持面113aに形成された傾斜面1131a〜1133aに密接し、床基材12の上面は傾斜面1131a〜1133aと同等の傾斜面となる。
【0029】
クッション材13は、床基材12と表面材14との間に設けられている。クッション材13は、例えばポリウレタンなどの弾性を有する材料で一様な厚みに形成されて、洗い場床1に程良い柔らかさを与えることができる。
【0030】
表面材14は、床基材12とクッション材13を覆って洗い場1aの表面を形成する部分14aと、立壁部8を覆って止水壁1bの表面を形成する部分14bと、を有する。
【0031】
図4に示す矢印S1は、排水勾配面101〜105のそれぞれの下り勾配の方向を表している。すなわち矢印S1の向く方向が、下りの方向を示している。このように、排水勾配面101〜105は、洗い場床1の外周縁の各辺を起点として、各辺と直交する方向に下がる傾斜平面になっている。
【0032】
クッション材13は、前述したとおりポリウレタンなどの弾性を有する材料で形成されているため柔らかく、床基材12の上面の傾斜に倣うように変形する。そして、表面材14は、クッション材13の傾斜した表面に倣うように変形され、床基材12の表面を覆うようにして床基材12の周縁部に接着される。
【0033】
本実施形態の洗い場床1によれば、床基材12及びクッション材13に、一様な厚みを持たせるとともに、支持面材113の床支持面113aに、排水口15に向けて次第に下り傾斜させている。これにより、床基材12及びクッション材13を一様な厚みとしながら、床支持面113aの傾斜によって、洗い場1aの表面に、排水口15に向けて下り傾斜する排水勾配を付与している。発泡樹脂の平板は、金型に複雑な形状を要しないので、比較的安価に製造することが可能である。
したがって、排水勾配を付与する洗い場床1を、発泡樹脂製の平板を用いて低コストで製造することができる。
【0034】
また、発泡樹脂製の床基材12を、床支持面113aに形成された傾斜する方向が異なる傾斜面1131a〜1133aに合わせて屈曲させる必要がないので、床基材12の上面に床支持面113aの傾斜面1131a〜1133aと同等に傾斜させることができる。
したがって、洗い場1aの排水勾配を精度よく形成することができる。
【0035】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0036】
1 洗い場床
1a 洗い場
11 支持体
113 支持面材
113a 床支持面
12 床基材
13 クッション材
14 表面材
15 排水口
101〜103 排水勾配面