特許第6362043号(P6362043)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6362043
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】吐水装置
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/08 20060101AFI20180712BHJP
【FI】
   E03C1/08
【請求項の数】8
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-148178(P2017-148178)
(22)【出願日】2017年7月31日
【審査請求日】2017年11月30日
(31)【優先権主張番号】特願2017-15769(P2017-15769)
(32)【優先日】2017年1月31日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】吉野 俊二
(72)【発明者】
【氏名】八板 遼平
(72)【発明者】
【氏名】浮貝 清岳
(72)【発明者】
【氏名】三尾 俊平
(72)【発明者】
【氏名】兼国 伸彦
(72)【発明者】
【氏名】鳩野 広典
【審査官】 中村 百合子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−314960(JP,A)
【文献】 特開2001−327426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/00−1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された湯水をシャワー吐水する吐水装置であって、
吐水装置本体と、
この吐水装置本体内に設けられ、供給された湯水が流入する整流室と、
この整流室内に配置され、多数の微細孔を備えた整流部材と、
この整流部材を通過した湯水を吐出させるための複数の散水ノズルが設けられた散水部材と、を有し、
上記整流部材の表面は、付着した湯水中の気泡が容易に剥離されるように、算術平均粗さRaが0.064μm以上、且つ0.3μm以下に形成されていると共に、二乗平均平方根傾斜RΔqが20度以上、且つ87度以下の凹凸が設けられていることを特徴とする吐水装置。
【請求項2】
上記整流部材の表面は、算術平均粗さRaが0.17μm以下に形成されている請求項記載の吐水装置。
【請求項3】
上記整流部材の表面は、二乗平均平方根傾斜RΔqが54度以下に形成されている請求項記載の吐水装置。
【請求項4】
上記整流部材は、複数の素線から形成された網目構造を有し、少なくとも上記素線同士が交差する部分の表面に凹凸が設けられている請求項1乃至の何れか1項に記載の吐水装置。
【請求項5】
上記整流部材は、通過する湯水が接触する全ての表面に凹凸が設けられている請求項記載の吐水装置。
【請求項6】
上記整流部材は、上記整流室内に流入した湯水が順次通過するように複数設けられ、全ての整流部材の表面に凹凸が設けられている請求項1乃至の何れか1項に記載の吐水装置。
【請求項7】
上記整流部材は、表面に凹凸が設けられるように、ブラスト処理されている請求項1乃至の何れか1項に記載の吐水装置。
【請求項8】
上記整流部材の表面は、二乗平均平方根傾斜RΔqが35度以下、且つ算術平均粗さRaが0.11μm以下に形成されている請求項記載の吐水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吐水装置に関し、特に、供給された湯水をシャワー吐水する吐水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第5168708号公報(特許文献1)には、シャワー装置が記載されている。このシャワー装置においては、供給された水がケーシング内に流入し、流入した水はケーシング内に配置された整流網を通過する。整流網により整流された水は、整流網の下流側に配置された散水板に設けられた複数の散水孔から吐出され、シャワー吐水される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5168708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載のシャワー装置のような一般的なシャワー装置においては、シャワー吐水される湯水(水又は湯)が十分に整流されていないため、吐出された線状の水流に透明感がなく、散水孔から吐出された後、短い距離で細かな水滴に分断してしまう。このような吐水では、シャワー装置から吐出される水流に十分な品位が得られず、高級感、静寂感、心地良い使用感を得ることができない。
【0005】
従って、本発明は、吐出された水流に十分な透明感があり、吐出後、長い距離に亘って線状の流れが維持され、十分な高級感、上質な洗い感、静粛な水流を得ることができる吐水装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、供給された湯水をシャワー吐水する吐水装置であって、吐水装置本体と、この吐水装置本体内に設けられ、供給された湯水が流入する整流室と、この整流室内に配置され、多数の微細孔を備えた整流部材と、この整流部材を通過した湯水を吐出させるための複数の散水ノズルが設けられた散水部材と、を有し、整流部材の表面には、付着した湯水中の気泡との接触面積が小さくなり、気泡が容易に剥離されるように、粗面化処理により凹凸が設けられていることを特徴としている。
【0007】
このように構成された本発明においては、供給された湯水は、吐水装置本体内に設けられた整流室に流入する。整流室内には多数の微細孔を備えた整流部材が配置されており、流入した湯水は整流室内に配置された整流部材を通過し、散水部材に設けられた複数の散水ノズルからシャワー吐水として吐出される。
【0008】
本件発明者は、十分に整流された品位の高い線状の水流が得られる吐水装置の開発を試みたが、特に湯を用いた場合において、十分な整流性を得ることはできなかった。この原因を突き止めるべく、本件発明者が鋭意研究を続けた結果、湯水に溶け込んでいた空気が整流室内で溶け出して気泡を形成するために十分な整流性が得られていないことを見出した。即ち、湯水に溶け込んでいた空気が整流部材の部分で現れ、整流部材に付着したまま成長した大気泡により整流室内の水の流れに乱れが発生するため、吐出される水流に乱れが生じていたのである。この問題は、溶け込んでいる空気が溶け出しやすい湯を吐出している際に顕著であった。そこで本件発明者は、整流部材に粗面化処理を施し、凹凸を設けることにより、整流部材の部分で溶け出した空気が大きな気泡に成長する前に気泡を整流部材から剥離させ、排出することを試みた。
【0009】
上記のように構成された本発明によれば、整流部材の表面に、付着した湯水中の気泡との接触面積が小さくなり、気泡が容易に剥離されるように、粗面化処理により凹凸が設けられているので、整流部材において溶け出した空気が大きな気泡に成長する前に、これを剥離することができる。このため、各散水ノズルから吐出された線状の水流は極めて整流性の高いものとなり、吐出後長い距離に亘って線状のまま維持される。この結果、本発明の吐水装置を、手洗いやキッチン用の吐水装置として使用した場合、透明な線状に維持されたシャワー水流は、手指等に当たったとき独特な心地良い感触があり、手洗いや、食器洗いに使用したとき上質な洗い感を得ることができる。
【0010】
本発明において好ましくは、整流部材の表面は、粗面化処理により、二乗平均平方根傾斜RΔqが20度以上、且つ87度以下にされている。
このように構成された本発明によれば、整流部材の表面は、付着した湯水中の気泡が容易に剥離されるように、粗面化処理により、二乗平均平方根傾斜RΔqが20度以上、且つ87度以下の凹凸が設けられているので、整流部材において溶け出した空気が大きな気泡に成長する前に、これを剥離させることができる。即ち、整流部材の表面の二乗平均平方根傾斜RΔqが20度以上になると、整流部材の表面には、ある程度急峻な傾斜をもつ山や谷が形成されるので、付着した気泡と整流部材の表面の間の接触面積を小さくすることができ、気泡が大きく成長する前に、これを剥離させることができる。このため、各散水ノズルから吐出された線状の水流は極めて整流性の高いものとなり、吐出後長い距離に亘って線状のまま維持される。
【0011】
また、本発明は、供給された湯水をシャワー吐水する吐水装置であって、吐水装置本体と、この吐水装置本体内に設けられ、供給された湯水が流入する整流室と、この整流室内に配置され、多数の微細孔を備えた整流部材と、この整流部材を通過した湯水を吐出させるための複数の散水ノズルが設けられた散水部材と、を有し、整流部材の表面は、付着した湯水中の気泡が容易に剥離されるように、二乗平均平方根傾斜RΔqが20度以上、且つ87度以下の凹凸が設けられていることを特徴としている。
【0012】
本発明において好ましくは、整流部材の表面は、算術平均粗さRaが0.064μm以上、且つ0.3μm以下に形成されている。
このように構成された本発明によれば、整流部材の表面の算術平均粗さRaが0.064μm以上、且つ0.3μm以下に形成されているので、整流部材の表面に十分な大きさの凹凸ができ、付着した気泡と整流部材の表面の間の接触面積が十分に小さくなる。これにより、付着した気泡は容易に剥離され、付着した気泡が成長して大きくなり、整流性を阻害するのを抑制することができる。
【0013】
本発明において好ましくは、整流部材の表面は、算術平均粗さRaが0.17μm以下に形成されている。
整流部材の表面の凹凸を大きくすることにより、整流部材と気泡の接触面積を減じ、気泡を剥離しやすくすることができるが、表面の凹凸が過大になると、その凹凸自体により流れの乱れが発生してしまい、却って整流性が損なわれることとなる。上記のように構成された本発明によれば、整流部材の表面の算術平均粗さRaが0.17μm以下に形成されているので、湯水の流れに大きな乱れを発生させることなく、気泡を剥離しやすくすることができる。
【0014】
本発明において好ましくは、整流部材の表面は、二乗平均平方根傾斜RΔqが54度以下に形成されている。
整流部材の表面の二乗平均平方根傾斜RΔqを大きくすることにより、整流部材と気泡の接触面積を減じ、気泡を剥離しやすくすることができるが、RΔqが大きくなりすぎると、整流部材の表面の凹凸が急峻になりすぎ、凹凸の谷底の部分に空気が滞留してしまう場合がある。谷底に滞留した空気は、整流部材の表面に付着した気泡と合体する場合があり、このような合体が起こると、表面に付着した気泡を大きく成長させてしまう結果となる。上記のように構成された本発明によれば、整流部材の表面の二乗平均平方根傾斜RΔqが54度以下に形成されているので、整流部材の表面の凹凸に空気が滞留しにくく、滞留した空気により気泡が成長してしまうのを抑制することができる。
【0015】
本発明において好ましくは、整流部材は、複数の素線から形成された網目構造を有し、少なくとも素線同士が交差する部分の表面に凹凸が設けられている。
網目構造を形成する整流部材の素線は、素線同士が交差する部分において水が滞留しやすいため、この部分に気泡が付着しやすい。上記のように構成された本発明によれば、整流部材の素線同士が交差する部分の表面に凹凸が設けられているので、この部分に気泡が付着するのを抑制することができ、気泡の成長を効果的に防止することができる。
【0016】
本発明において好ましくは、整流部材は、通過する湯水が接触する全ての表面に凹凸が設けられている。
このように構成された本発明によれば、整流部材の、通過する湯水が接触する全ての表面に凹凸が設けられているので、整流部材全体に気泡を付着しにくくすることができ、より効果的に気泡の成長を防止することができる。
【0017】
本発明において好ましくは、整流部材は、整流室内に流入した湯水が順次通過するように複数設けられ、全ての整流部材の表面に凹凸が設けられている。
このように構成された本発明によれば、整流部材が複数設けられているので、より、整流性を向上させることができる。また、全ての整流部材の表面に凹凸が設けられているので、何れの整流部材においても気泡の付着、成長が起こりにくく、整流性をさらに向上させることができる。
【0018】
本発明において好ましくは、整流部材は、表面に凹凸が設けられるように、ブラスト処理されている。
このように構成された本発明によれば、ブラスト処理により整流部材の表面に凹凸が設けられているので、簡単な処理で、所望の凹凸を有する整流部材を安定して製造することができる。
【0019】
本発明において好ましくは、整流部材の表面は、二乗平均平方根傾斜RΔqが35度以下、且つ算術平均粗さRaが0.11μm以下に形成されている。
本発明においては、整流部材の表面を所定の二乗平均平方根傾斜RΔq及び算術平均粗さRaを有する凹凸に形成することで、整流部材への気泡の付着を抑制している。しかしながら、細い金属の素線等の、微細な構造を有する整流部材の表面に、過大な二乗平均平方根傾斜RΔqや、算術平均粗さRaを有する凹凸を形成すると、整流部材の表面に一様な凹凸を安定して形成することが困難となる。上記のように構成された本発明によれば、整流部材の表面に、二乗平均平方根傾斜RΔqが35度以下、且つ算術平均粗さRaが0.11μm以下の凹凸が形成されるので、十分な気泡の付着抑制効果を有する整流部材を、安定して製造することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の吐水装置によれば、吐出された水流に十分な透明感があり、吐出後、長い距離に亘って線状の流れが維持され、十分な高級感、上質な洗い感、静粛な水流を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態による吐水装置を備えた手洗器全体を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態による吐水装置の側面断面図であり、先端部を拡大して示したものである。
図3】本発明の実施形態による吐水装置の先端部に内蔵されている整流装置の分解斜視図である。
図4図2のIV−IV線に沿う断面図である。
図5】粗面化処理を施していないメッシュの素線の表面を拡大して示す顕微鏡写真、及び種々の粗面化処理を施した表面を拡大して示す顕微鏡写真である。
図6】種々の粗面化処理を施したメッシュを使用して構成した本発明の実施形態による吐水装置から吐出された吐水の整流距離を示す図である。
図7】メッシュにおける表面粗さの測定部分を示す拡大写真である。
図8】種々の粗面化処理を施したメッシュ表面の二乗平均平方根傾斜RΔqと算術平均粗さRaの関係を示すグラフである。
図9】種々の表面状態のメッシュに対する気泡の付着状態を模式的に示す図である。
図10】本発明の実施形態による吐水装置の作用を説明するために、吐水装置の初期使用開始前における整流室内を模式的に示した図である。
図11】本発明の実施形態による吐水装置の作用を説明するために、吐水装置への給水開始直後における整流室内を模式的に示した図である。
図12】本発明の実施形態による吐水装置の作用を説明するために、吐水装置の最初の吐水時における整流室内を模式的に示した図である。
図13】本発明の実施形態による吐水装置の作用を説明するために、吐水装置の最初の吐水中における整流室内を模式的に示した図である。
図14】本発明の実施形態による吐水装置の作用を説明するために、吐水装置の最初の吐水中における整流室内を模式的に示した図である。
図15】本発明の実施形態による吐水装置の作用を説明するために、吐水装置の止水中における整流室内を模式的に示した図である。
図16】本発明の実施形態による吐水装置の作用を説明するために、吐水装置の2回目の吐水開始時における整流室内を模式的に示した図である。
図17】整流室内に配置されたメッシュの枚数を変化させ場合における、散水ノズルから噴射される流れの変化を示す写真である。
図18】本発明の変形例による吐水装置の整流室内を模式的に示した図である。
図19】本発明の変形例による吐水装置の整流室内における湯水の流速分布を模式的に示した図である。
図20】本発明の第2の変形例による吐水装置の整流装置を示す断面図である。
図21】本発明の第2の変形例による吐水装置の整流室内に配置された分流板を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による吐水装置を説明する。
図1は、本発明の実施形態による吐水装置を備えた手洗器全体を示す斜視図である。
図1に示すように、手洗器1は、本発明の実施形態による吐水装置2と、この吐水装置2から吐出された湯水を受ける手洗いボウル4と、を有する。
吐水装置2は、先端に吐水部が設けられた吐水装置本体6と、この吐水装置本体6の先端部に内蔵された整流装置8と、この整流装置8に湯水を供給する給水管10と、吐水装置本体6の先端部に内蔵された人体検知センサ12と、を有する。
吐水装置本体6は概ね長円形断面の金属製の管状部材であり、取付面から概ね鉛直に立ち上がった後、前方に向けてアーチ状に湾曲し、吐水部を設けた先端部が概ね下方に向けられている。
【0023】
このように構成されることにより、本実施形態の吐水装置2は、使用者が吐水部の下方に手指等を差し出すと、これを人体検知センサ12が検知して、手洗いボウル4の下方に収納されている制御装置(図示せず)が電磁弁(図示せず)を開弁させる。これにより、給水管10を介して整流装置8に湯水が供給され、整流装置8において整流された湯水が、吐水装置本体6の先端からシャワー吐水されるように構成されている。本実施形態の吐水装置2によれば、吐出されるシャワー吐水は極めて透明度の高い線状の水流であり、手洗いボウル4に着水するまで、美しい線状の形態が維持されている。
【0024】
次に、図2乃至4を新たに参照して、本発明の実施形態の吐水装置2の内部構造を説明する。図2は、吐水装置2の側面断面図であり、先端部を拡大して示したものである。図3は、吐水装置2の先端部に内蔵されている整流装置8の分解斜視図である。図4は、図2のIV−IV線に沿う断面図である。
【0025】
図2に示すように、吐水装置本体6の先端部には、その先端開口部の形状に合致する形状に構成された整流装置8が取り付けられている。この整流装置8の後端部には給水管接続部8aが設けられ、この給水管接続部8aに給水管10が接続されている。また、人体検知センサ12は、整流装置8外周の凹部8b(図3)の中に配置されており、この人体検知センサ12から、検知信号を制御部(図示せず)に伝送するための信号線12aが延びている。なお、本実施形態においては、人体検知センサ12は、赤外線を射出すると共に、被検知物から反射された赤外線を受光することにより被検知物を検出する赤外線式のセンサである。
【0026】
整流装置8は、図3に示すように、整流装置本体14と、この整流装置本体14内に収容された分流板16と、この分流板16の下流側に6枚配置された板状に形成された整流部材であるメッシュ18と、これらのメッシュ18の下流側に配置された複数の散水ノズルが設けられた散水部材20と、を有する。
【0027】
整流装置本体14は、概ね円弧状に湾曲した断面を有する整流室14aが内部に設けられた樹脂製の部材であり、その後端部には給水管接続部8aが形成されている。これにより、給水管10及び給水管接続部8aを介して供給された湯水は、整流室14aの内部に流入する。また、整流装置本体14の前端部は開放されており、この開口部を介して整流室14aの内部に分流板16及び各メッシュ18が配置される。整流室14aは、上流端から下流端まで概ね一定の流路断面を有し、内部に分流板16及び6枚のメッシュ18が配置されている。
【0028】
分流板16は、整流室14aの断面形状に合致する形状に形成された板状の樹脂製部材であり、その板面を貫通するように複数の貫通孔16a(図2)が形成されている。給水管10から供給された湯水は、整流室14a内の、分流板16の上流側の空間16bに流入する。ここで、給水管10は整流室14aの中央に対して偏心した位置に接続されているため、分流板16の上流側の空間16b内における流れは偏ったものとなっているが、分流板16によって適度な流路抵抗が与えられることにより、分流板16を通過した湯水の流れは概ね均一になる。即ち、分流板16を通過することによって、整流室14a内の流れは、流路断面内の各部で概ね均一の流速にされ、分流板16の下流側のメッシュ18に到達する湯水の流量分布が均等化される。
【0029】
メッシュ18は、ステンレス製の素線を縦横に編むことにより形成された平らな金網であり、整流室14a内に流入した湯水が順次通過するように互いに所定の間隔をあけて6枚配置されている。即ち、各メッシュ18は、整流室14a内の湯水の流れの方向に対して概ね直角に、互いに平行に配置されている(図2)。なお、本実施形態においては、メッシュ18は、線径180μmのステンレス製の素線によって編まれた60メッシュ(1インチの間に60本の素線が縦横に平行に配置された網)の立体網目構造の金網である。これにより、メッシュ18には、縦横約0.24mmの大きさの微細孔18a(図4の素線と素線の間の空間)が多数形成される。好ましくは、メッシュ18として、微細孔18aの縦方向および横方向の大きさが約0.1〜1.0mmとなるようなものを使用する。また、本実施形態においては、各メッシュ18は、微細孔18aの大きさよりも大きい約2mmの間隔をあけて配置されている。好ましくは、各メッシュ18は、0.5〜5.0mmの間隔をあけて配置する。また、各メッシュ18には粗面化処理が施されているが、メッシュ18に施した粗面化処理については後述する。
【0030】
散水部材20は、各メッシュ18を通過した湯水を吐出させるための複数の散水ノズルが設けられた部材である。本実施形態においては、図2に示すように、散水部材20は、弾性部材であるゴム製のノズル形成部材22と、このノズル形成部材22に設けられた各散水ノズルを受け入れる複数の散水穴が形成されたノズル支持部材24から構成されている。
なお、変形例として、板状の部材に複数の貫通孔を設けることにより散水ノズルを形成し、これを散水部材とすることもできる。
【0031】
ノズル形成部材22は、薄板状の平板部22aと、この平板部22aから湯水の吐出方向に突出するように複数形成された散水ノズル22bが一体に形成されたゴム製の部材である。平板部22aは、整流装置本体14先端の開放部と合致する形状に形成された板状の部分であり、整流装置本体14の先端とノズル支持部材24との間にゴム製の平板部22aの周辺を挟むことにより、整流室14aの水密性が確保されている。各散水ノズル22bは、平板部22aから概ね直角に立ち上がる円筒状の部分であり、先端に向かって流路断面積が小さくなるようにテーパ形状に構成されたノズル孔が内部に形成されている。
【0032】
ノズル支持部材24は、整流装置本体14先端の開放部を閉鎖するように形成された板状の部材であり、ノズル形成部材22に設けられた各散水ノズル22bと整合する位置に夫々散水穴24aが設けられている。整流装置8を組み立てた状態では、ノズル形成部材22の各散水ノズル22bは、ノズル支持部材24の散水穴24aに夫々受け入れられており、各散水ノズル22bの先端部がノズル支持部材24から僅かに突出する。
【0033】
次に、図4を参照して、整流室14a内に形成される気泡排出流路を説明する。
図4は、整流装置本体14の整流室14a内にメッシュ18を配置した状態を示す断面図である。上述したように、メッシュ18は整流室14aの流路断面形状と合致する形状に形成されているため、メッシュ18の周縁と、整流室14aの内壁面はほぼ全周に亘り当接している。しかしながら、メッシュ18の両側の端部は僅かに切り欠かれており、これらの切欠部分18bではメッシュ18の周縁と整流室14aの内壁面が当接していない。従って、このメッシュ18が切り欠かれた部分では、整流室14a内の湯水は、メッシュ18の微細孔18aを通過することなくメッシュ18の下流側に流れることができる。また、湯水の中に混入している気泡も、このメッシュ18の切欠部分18bを通って下流側に流れることができる。即ち、メッシュ18の両側の端部に切欠部分18bを設けることにより、整流室14aの内壁面と両側の切欠部分18bの間に2つの隙間が形成され、これらの隙間は、メッシュ18を迂回して気泡を下流側に流すことができる2つの気泡排出流路26として機能する。
【0034】
本実施形態においては、メッシュ18の切り欠きは、6枚のメッシュ18全てに設けられているので、2つの気泡排出流路26は、分流板16の下流側から散水部材20まで連通するように形成される。また、本実施形態においては、各気泡排出流路26の流路断面積は、メッシュ18の各微細孔18aの面積よりも大きく形成されている(図4におけるメッシュ18は模式的に示されており、微細孔18aの大きさは実際のスケールとは異なっている)。
【0035】
また、図2に示すように、6枚のメッシュ18のうちの最も下流側に配置されたメッシュ18と散水部材20との間の、整流室14a内の空間は、バッファ空間28として機能し、2つの気泡排出流路26の下流端は、このバッファ空間28に夫々連通している。
【0036】
次に、図5乃至図9を参照して、各メッシュ18の表面の粗さを粗くする粗面化処理を説明する。
【0037】
図5は、粗面化処理を施していないメッシュの素線の表面を拡大して示す顕微鏡写真、及び種々の粗面化処理を施した表面を拡大して示す顕微鏡写真である。図6は、種々の粗面化処理を施したメッシュを使用して構成した本実施形態による吐水装置から吐出された吐水の整流距離を示す図である。図7は、メッシュにおける表面粗さの測定部分を示す拡大写真である。図8は、種々の粗面化処理を施したメッシュ表面の二乗平均平方根傾斜RΔqと算術平均粗さRaの関係を示すグラフである。図9は、種々の表面状態のメッシュに対する気泡の付着状態を模式的に示す図である。
【0038】
本実施形態においては、メッシュ18の表面の粗面化処理としてブラスト処理を施している。図5は、種々の処理条件においてブラスト処理を施したメッシュ18の素線を拡大して示す顕微鏡写真である。図5の(a)欄はブラスト処理を施していないメッシュ18の素線表面の顕微鏡写真であり、(b)欄は♯120番手のブラストによりブラスト処理を施した素線表面の顕微鏡写真である。同様に、図5の(c)欄乃至(f)欄は、♯150番手、♯220番手、♯600番手、♯1000番手のブラストにより夫々ブラスト処理を施した素線表面の顕微鏡写真である。
【0039】
なお、本実施形態においては、ブラスト処理として、白色溶融アルミナ製の粒子をメッシュの表面に吹き付けた。また、ブラスト処理には、新モース硬度12(ヌーブ硬度HK2050)、平均径115μmの♯120番手から平均径11.5μmの♯1000番手までの種々の粒径の粒子を使用した。図5に示すように、未処理のメッシュ18の表面に、種々の番手の粒子を吹き付けることにより、メッシュ18の素線の表面の粗さが粗くなっている。なお、図5に示す例では、未処理のメッシュ18の素線の表面が最も平滑であり、番手の小さい粒子(粒径の大きい粒子)で処理をすると表面が粗くなり、番手が大きくなると表面の粗さが小さく(凹凸が小さく)なっている。しかしながら、ブラスト処理による表面の状態は、粒子の番手のみに依存するものではなく、粒子を吹き付ける速さ、吹き付ける距離、吹き付けを行う時間等によっても表面の粗さは変化する。
【0040】
本件発明者は、メッシュ18の表面に施すブラスト処理として7種類の処理条件を設定し、各条件で処理されたメッシュ18を製作した。これらのメッシュ18を整流装置本体14の整流室14aの内部に配置して吐水装置2を組み立て、実際に吐水を行った結果を図6に示す。図6は、横軸にブラスト処理の各処理条件を示し、縦軸には吐水装置2の散水ノズル22bから吐出された湯水の整流距離(散水ノズル22bから吐出された水流が乱れ始めるまでの距離)を示すグラフである。なお、散水部材20には、孔径φ1.3mmの散水ノズル22bが17個設けられ、整流室14aの内部には同一条件でブラスト処理したメッシュ18を6枚配置した。また、吐出させる湯水は、湯温42℃、流量3L/minとした。
【0041】
図6に示すように、未処理のメッシュを使用した吐水装置2では、整流距離は約60mmであり、処理条件1で処理したメッシュを使用した場合の整流距離は約70mmであった。これに対し、処理条件2乃至7による処理を施したメッシュを使用した吐水装置2では、何れも約90mm以上の整流距離が得られている。
【0042】
次に、各処理条件で処理されたメッシュの表面の状態を測定した。
測定にはレーザー顕微鏡(OlympusOLS4000)を使用し、拡大率100倍として断面曲線を取得した。さらに、カットオフ値としてλc:8μm、λs:0μmを設定して粗さ曲線を得た。また、測定は、網目構造のメッシュの裏側面(下流側の面)の中央において、素線同士が交差している部分(水が滞留しやすく、気泡が付着しやすい部分)について行った。即ち、図7に拡大して示すメッシュの、想像線で囲った領域内において、素線の中心軸線(図5の写真の中心線と一致)に沿って断面曲線を取得した。
【0043】
このようにして測定された粗さ曲線に基づいて得られる表面特性の中から、本件発明者はメッシュの素線の算術平均粗さRa及び二乗平均平方根傾斜RΔq(JIS B 0601)に着目した。算術平均粗さRaは、粗さ曲線Z(x)に対して下式によって計算される値であり、素線表面の凹凸の、平均的な山の高さに関係するパラメータである。
一方、二乗平均平方根傾斜RΔqは、粗さ曲線Z(x)に対して下式によって計算される値であり、素線表面の凹凸の山の斜面の平均的な傾斜角度に関係するパラメータである。
【0044】
図8は、横軸を二乗平均平方根傾斜RΔqとし、縦軸を算術平均粗さRaとして、各処理条件のメッシュについてこれらの値をプロットしたグラフである。図8に示すように、整流距離が短かった未処理のメッシュを示す菱形のプロット点、及び処理条件1のメッシュを示す逆三角形のプロット点は、グラフの左下に集中している。即ち、これらの整流距離が短いメッシュでは、その素線表面の二乗平均平方根傾斜RΔq及び算術平均粗さRaが何れも小さな値であり、表面の凹凸の山の高さ及び山の傾斜角度とも小さな値となっている。
【0045】
これに対して、長い整流距離が得られたメッシュを示す処理条件2乃至7のプロット点は、整流距離が短い未処理及び処理条件1のメッシュよりも右上に分布している。このように、素線の表面の算術平均粗さRa及び二乗平均平方根傾斜RΔqが所定の値以上のメッシュを使用することにより、吐水装置2から吐出される湯水の整流距離を長くすることが可能になる。
【0046】
図8に示す例においては、素線の表面の二乗平均平方根傾斜RΔqが20度以上、又は素線の表面の算術平均粗さRaが0.064μm以上のメッシュを整流部材として使用することにより、90mm以上の非常に長い整流距離を得ることに成功している。
【0047】
さらに、図6から明らかなように、処理条件2乃至4により粗面化処理を行ったメッシュを使用した吐水装置2では整流距離が約90mmであるのに対して、処理条件5乃至7により処理したメッシュを使用した吐水装置2では約100mmの整流距離が得られている。一方、図8において、処理条件5乃至7に対応するプロット点(プラス、円、米印)は、二乗平均平方根傾斜RΔqが約54度以下、算術平均粗さRaが約0.17μm以下の領域に分布している。このことから、二乗平均平方根傾斜RΔqは、約20度以上、約54度以下、算術平均粗さRaは、約0.064μm以上、約0.17μm以下の範囲(図8において一点鎖線と二点鎖線で囲まれた領域)にあることが、整流距離の延長には、より好ましいことがわかる。
【0048】
また、図5に示すように、ブラスト処理において、粒径の大きい粒子を使用して、メッシュの素線表面に大きな凹凸を設けた場合(例えば、図5の(b)欄、(c)欄等)には、処理されたメッシュのバラツキか大きくなった。これは、素線の幅(図5の各写真の幅とほぼ同一)に対し、表面の凹凸の幅や高さが大きすぎ、処理された素線表面の凹凸が均質になりにくいためであると考えられる。この観点からは、メッシュの素線表面の二乗平均平方根傾斜RΔqは、約20度以上、約35度以下、算術平均粗さRaは、約0.064μm以上、約0.11μm以下の範囲(図8において一点鎖線と破線で囲まれた領域)にあることが好ましい。
【0049】
次に、図9を参照して、メッシュの素線の表面状態が整流距離に与える影響について説明する。
まず、図9の(a)欄に示すように、メッシュの素線表面の算術平均粗さRa、二乗平均平方根傾斜RΔqが共に小さい場合には、表面の凹凸が小さく、なだらかであるため、メッシュの素線の表面で発生した微細な気泡と、素線の表面の間の接触面積が大きく、付着した気泡が剥離されにくいものと考えられる。即ち、素線の表面がなだらかな場合には、素線と気泡が広い面積で接触しているため、素線と気泡の間に湯水が僅かに侵入したとしても、気泡が素線から容易に剥離されることはない。このように、メッシュの表面に付着した気泡が長時間滞留していると、気泡の周辺で後から発生した微細な気泡との合体が発生しやすく、メッシュの表面で発生した微細な気泡が大きな気泡に成長しやすくなる。成長した大きな気泡がメッシュから脱落し、湯水に混入していると、これが散水ノズル22bから吐出された湯水の流れを乱して整流距離が短くなる。
【0050】
これに対して、図9の(b)欄に示すように、メッシュの素線表面の算術平均粗さRa、又は二乗平均平方根傾斜RΔqが所定値以上になると、メッシュの素線の表面で発生した微細な気泡は、表面の凹凸の山頂部付近のみで接触するので、素線表面と気泡の接触面積が小さくなる。このように、素線表面と気泡の接触面積が小さい場合には、素線と気泡の間に湯水が僅かに侵入するだけで、気泡は素線から容易に剥離される。このため、メッシュの表面に付着した気泡は、気泡の周辺で後から発生した微細な気泡と合体しにくく、メッシュの表面で発生した微細な気泡の大きな気泡への成長が起こりにくい。このため、湯水に混入して吐出される気泡は微細なものとなり、散水ノズル22bから吐出される湯水の流れに悪影響を与えにくく、整流距離が長くなる。
【0051】
このように、メッシュの素線表面の算術平均粗さRa、又は二乗平均平方根傾斜RΔqを所定値以上にすることにより、整流距離を長くすることができるが、算術平均粗さRaや二乗平均平方根傾斜RΔqが過大になると、整流距離は逆に短くなるものと考えられる。即ち、図9の(c)欄に示すように、算術平均粗さRaが非常に大きく、素線の表面に大きな山が存在すると、この山自体が近傍を流れる湯水に比較的大きな渦を発生させてしまい、これが整流性能を低下させる結果となる。例えば、算術平均粗さRaが0.3μm程度を超えると、メッシュを通過する湯水の流れに却って大きな乱れを発生させてしまうと考えられる。
【0052】
また、図9の(d)欄に示すように、二乗平均平方根傾斜RΔqが非常に大きく、素線の表面に非常に急峻な山や谷が存在する場合にも整流性能が低下する虞がある。素線の表面に非常に急峻な山や谷が存在すると、急峻な谷底の部分に空気が滞留してしまい、この滞留している空気が、素線の表面に付着した微細な気泡と結びついてしまい、気泡を成長させてしまう虞がある。図8に示すように、二乗平均平方根傾斜RΔqが約87度のメッシュにおいて、整流性能を向上させる効果があることが確認されているが、二乗平均平方根傾斜RΔqが90度以上のメッシュを製作することは事実上困難であると考えられる。
【0053】
次に、図10乃至図16を参照して、本発明の実施形態による吐水装置の作用を説明する。
図10乃至図16は、吐水装置2の使用時における整流装置8の整流室14a内を模式的に示した図である。
図10に示すように、吐水装置2の初期使用開始前においては、整流装置8の整流室14a内は空気で満たされている。
【0054】
次に、図11に示すように、吐水装置2からの吐水を開始すべく整流装置8への給水を行うと、給水管接続部8aから整流室14a内に湯水が流入する。整流室14a内に流入した湯水は、分流板16により、流速分布が均一化される。即ち、給水管接続部8aから整流室14a内に流入した際、湯水の中に存在していた渦が分流板16により細分化され、均一な流れに近くなる。さらに、分流板16を通過した湯水は、分流板16の下流側に配置された6枚のメッシュ18を、上流側から順次通過して整流される。また、分流板16を通過した湯水の一部は、メッシュ18を一部切り欠くことにより形成された気泡排出流路26を通って下流側に流れる。この際、整流室14a内に存在していた空気の多くは、整流室14a内に流入した湯水により、散水ノズル22bを通って整流室14aの外へ押し出される。しかしながら、存在していた空気の一部は、整流室14a内の湯水の流れが遅くなる淀み領域に滞留し、そこに残留空気による気泡38を形成する。
【0055】
次いで、図12に示すように、整流室14a内に流入した湯水が散水部材20まで到達すると、各散水ノズル22bから湯水が噴射される。散水部材20に到達する湯水は、6枚のメッシュ18により十分に整流され、流れのベクトルが高度に均等化される。また、最下流側のメッシュ18を通過した湯水は、最下流側のメッシュ18と散水部材20の間の比較的広い空間であるバッファ空間28に流入してさらに減速され、流れの乱れが低減される。このため、各散水ノズル22bから噴射される湯水は、非常に整流性が高く透明度の高い線状の流れとなり、手洗いボウル4に着水するまで水滴に分断されることはない。なお、図12に示すように、この状態においても残留空気による気泡38は滞留しており、整流室14a外に排出されずに残留する。
【0056】
また、図13に示すように、吐水装置2による吐水を継続していると、整流室14a内に滞留していた空気とは別に、湯水の中に溶けていた空気がメッシュ18を通過する際に微細な気泡40を形成する。しかしながら、上述したように、各メッシュ18には粗面化処理が施されており、気泡40はメッシュ18に付着しにくいため、生成された微細な気泡40は速やかにメッシュ18から剥離される。メッシュ18において生成された気泡40は、生成された直後は極めて小さいため、メッシュ18から速やかに剥離された微細な気泡40は、各メッシュ18の微細孔18aを通過して散水ノズル22bから排出される。このような微細な気泡40は極めて小さいため、散水ノズル22bから噴射する湯水の流れの透明度には殆ど影響を与えることがない。
【0057】
なお、各散水ノズル22bは下流側に向けて流路断面積が小さくなるテーパ形状に構成されているので、各散水ノズルは、流出側に対して流入側の流路断面積が大きくされている。このため、湯水に混入している気泡は各散水ノズル22bに流入しやすく、散水部材20の上流側のバッファ空間28内に気泡が溜まりにくくなる。これにより、バッファ空間28内に滞留した気泡が大きな気泡に成長するのを抑制することができ、噴射される水流への気泡の影響を抑制することができる。
【0058】
さらに、図14に示すように、メッシュ18において生成された微細な気泡40が或る程度の時間メッシュ18に付着していると、同じ箇所で新たに生成された微細な気泡40と結合され、少し大きな気泡42に成長する。即ち、メッシュ18から気泡が剥離されにくく、付着している時間が長くなると、生成された微細な気泡40が、大きな気泡に成長しやすくなる。または、メッシュ18に粗面化処理をすることで気泡を剥離しやすくしていても、メッシュ18から剥離した微細な気泡同士が結合し、少し大きな気泡42に成長する。成長した気泡42は、もはやメッシュ18の微細孔18aを通過することができず、各メッシュ18の間の空間に残留する。しかしながら、各メッシュ18は鉛直方向に対して傾斜して配置されているため、成長した気泡42は各メッシュ18の間の空間を浮力により上方に移動する。各メッシュ18の間の空間の上方には、気泡排出流路26が設けられているため、上方に移動した成長した気泡42は、各メッシュ18を迂回して気泡排出流路26を通って整流室14aの中を下流側に流れる。
【0059】
また、整流室14a内において、各メッシュ18が配置されている部分は流路抵抗が高いため比較的流速が遅いのに対し、各メッシュ18を切り欠くことにより設けられた気泡排出流路26の部分では相対的に流路抵抗が低いため流速が高くなる。このため、整流室14a内では、気泡排出流路26の部分は、各メッシュ18が配置されている部分よりも圧力が低く、成長した気泡42は、この圧力差によっても気泡排出流路26の方へ移動される。
【0060】
ここで、図14に示すように、気泡排出流路26の下流端は散水部材20まで到達しているが、散水部材20の、気泡排出流路26に対向する部分には散水ノズル22bが設けられていない。従って、気泡排出路26内を流れてきた湯水は、散水部材20(ノズル形成部材22の平板部22a)上の衝突面44に衝突し、この衝突によって気泡排出路26内を流れてきた湯水の流速が減速し、散水ノズル22bから吐出される。このように、気泡排出路26内を流れてきた湯水は、散水部材20の衝突面44に衝突することによってその流速が減速して、吐出されるので、気泡排出流路を設けることによる、整流性能の低下を抑制することができる。
【0061】
次いで、図15に示すように、整流装置8への給水が停止されると、各散水ノズル22bからの湯水の噴射も停止される。ここで、整流装置8への給水が停止されたとき整流室14a内に残留している湯水は、その表面張力等により、給水停止後、整流室14a内から殆ど流出せず、各散水ノズル22bから外気が逆流することは殆どない。また、散水ノズル22bを形成しているノズル形成部材22は弾性のあるゴム製であるため、吐水時においては、噴射される湯水の圧力により散水ノズル22bが弾性変形され、流路断面積が僅かに拡張される。これに対して、吐水が停止されると散水ノズル22bに作用する圧力が低下するため、散水ノズル22bの流路断面積は吐水時よりも小さくなる。これにより、止水時における整流室14aからの湯水の流出がさらに抑制され、整流室14a内への外気の逆流も、さらに抑制される。
【0062】
また、整流装置8への給水が停止されると、整流室14a内の湯水の流れによって淀み領域に押し込められていた残留空気による気泡38や、各メッシュ18の間の空間に残留している微細な気泡40、成長した気泡42が、浮力によって整流室14a内で上方に移動する。ここで、各メッシュ18は、鉛直方向に対して傾斜して配置されているので、各メッシュ18の間の気泡は、メッシュ18の間を上方に移動して、上方に位置する気泡排出流路26に到達し、気泡排出流路26に到達した気泡は気泡排出流路26の中をさらに上方に移動する。これにより、止水時において整流室14a内に存在する気泡の多くは、気泡排出流路26の上流端に位置する気泡滞留部46(最上流側のメッシュ18と分流板16の間の空間の最も高い部分)に集められる。
【0063】
即ち、本実施形態においては、気泡排出流路26が各メッシュ18の上方に位置すると共に、整流室14aは斜め下方に向けて配置されているので、気泡排出流路26の上流端が最も高い位置にあり、ここが気泡滞留部46として機能する。従って、気泡滞留部46は、気泡排出流路26と連通するように形成されている。また、例えば、整流室が斜め上方に向けて配置されている場合には、気泡排出流路26の下流端(最下流側のメッシュ18と散水部材20の間の空間の最も高い部分)が気泡滞留部となる。好ましくは、後述するように、気泡滞留部46は次に吐水が開始された際に、集められた気泡が各メッシュ18を通過することなく各散水ノズル22bから排出可能な位置に設ける。
【0064】
次いで、図16に示すように、整流装置8への給水が再開されると、気泡滞留部46に集められていた気泡が、分流板16を介して流入した新たな湯水によって下流側に押し流される。この際、気泡滞留部46は、気泡排出流路26の上流端に位置するので、気泡滞留部46内に集められていた気泡は、各メッシュ18の微細孔18aを通ることなく、気泡排出流路26を通って下流側に流される。気泡排出流路26の流路断面積は、各メッシュ18の微細孔18aよりも大きいため、気泡滞留部46内の気泡は気泡排出流路26内を容易に通過する。気泡排出流路26内を下流端まで流された気泡は、各散水ノズル22bから排出される。気泡滞留部46内の気泡は吐水開始後すぐに排出し終わるので、散水ノズル22bから排出される湯水の流れの美観が大きく損なわれることはない。また、これ以降の吐水では、残留空気による気泡38がほぼゼロになるため、湯水と共に排出される気泡の総量が減少し、吐水開始時における湯水の流れの美観に与える影響はさらに少なくなる。
【0065】
また、整流室が斜め上方に向けて配置され、最下流側のメッシュ18と散水部材20の間の空間の最も高い部分が気泡滞留部となっている場合には、この気泡滞留部に滞留している気泡は、各メッシュ18(の微細孔18a)を通過することなく各散水ノズル22bから排出される。
【0066】
次に、図17を参照して、メッシュの枚数と噴射される湯水の水流の関係を説明する。
図17は、整流室14a内に配置されたメッシュ18の枚数を変化させ場合における、散水ノズル22bから噴射される流れの変化を示す写真である。図17の(a)欄は整流室14a内にメッシュ18を配置しない場合の流れを示し、図17の(b)欄は整流室14a内にメッシュ18を1枚配置した場合の流れを示す。以下、図17の(c)欄乃至(g)欄には、順に、整流室14a内に2乃至6枚のメッシュ18を配置した場合の流れを示す。なお、図17に示す吐水は、図6における処理条件7により処理したメッシュ18を組み込んだ吐水装置によるものである。
【0067】
まず、図17の(a)欄の、整流室14a内にメッシュ18を配置しない場合には、各散水ノズル22bから噴射された直後から水流が乱れ始めている。次に、図17の(b)欄に示すように、メッシュ18を1枚配置した場合には、各散水ノズル22bから約5mmの位置で水流が乱れ始めている。さらに、図17の(c)欄に示すメッシュ2枚では約50mmの位置で水流が乱れ始め、(d)欄に示すメッシュ3枚では約65mmの位置、(e)欄に示すメッシュ4枚では約80mmの位置、(f)欄に示すメッシュ5枚では約120mmの位置、(g)欄に示すメッシュ6枚では約150mmの位置で水流が乱れ始めている。
【0068】
即ち、本発明の実施形態の吐水装置2のように、整流室14a内に6枚のメッシュ18を配置することにより、各散水ノズル22bから噴射された後、約150mmに亘って乱れのない透明感のある線状の水流を得ることができる。また、整流室14a内のメッシュの数をさらに増加させた場合には、乱れのない流れが得られる距離は伸びるものの、その伸びは次第に少なくなり、メッシュを増加させる効果が少なくなる。従って、整流室内には、3枚〜10枚のメッシュを配置するのが好ましい。
【0069】
本発明の実施形態の吐水装置2によれば、整流部材であるメッシュ18の表面に、付着した湯水中の気泡との接触面積が小さくなり、気泡が容易に剥離されるように、粗面化処理により凹凸が設けられているので、整流部材において溶け出した空気が大きな気泡に成長する前に、これを剥離することができる。このため、各散水ノズルから吐出された線状の水流は極めて整流性の高いものとなり、吐出後長い距離に亘って線状のまま維持される。この結果、本発明の吐水装置を、手洗いやキッチン用の吐水装置として使用した場合、透明な線状に維持されたシャワー水流は、手指等に当たったとき独特な心地良い感触があり、手洗いや、食器洗いに使用したとき上質な洗い感を得ることができる。
【0070】
また、本実施形態の吐水装置2によれば、メッシュ18の表面は、付着した湯水中の気泡が容易に剥離されるように、粗面化処理により、二乗平均平方根傾斜RΔqが20度以上の凹凸を設けることで(図8)、メッシュ18において溶け出した空気が大きな気泡に成長する前に、これを剥離させることができる。
【0071】
さらに、本実施形態の吐水装置2によれば、メッシュ18の表面の算術平均粗さRaを0.064μm以上に形成することで(図8)、メッシュ18の素線の表面に十分な大きさの凹凸ができ、付着した気泡とメッシュ18の表面の間の接触面積が十分に小さくなる。これにより、付着した気泡は容易に剥離され、付着した気泡が成長して大きくなり、整流性を阻害するのを抑制することができる。
【0072】
また、本実施形態の吐水装置2によれば、メッシュ18の表面の算術平均粗さRaを0.3μm以下に形成することで、メッシュ18の表面の凹凸により、湯水の流れに大きな乱れを発生させることなく、気泡を剥離しやすくすることができる。
【0073】
さらに、本実施形態の吐水装置2によれば、メッシュ18の表面の二乗平均平方根傾斜RΔqを54度以下、且つ算術平均粗さRaを0.17μm以下に形成することで、メッシュ18の表面の凹凸に空気が滞留しにくく、滞留した空気により気泡が成長してしまうのを抑制することができる。
【0074】
また、本実施形態の吐水装置2によれば、メッシュ18の、通過する湯水が接触する全ての表面に、ブラスト処理により凹凸が設けられているので、メッシュ18全体に気泡を付着しにくくすることができ、より効果的に気泡の成長を防止することができる。
【0075】
さらに、本実施形態の吐水装置2によれば、メッシュ18が複数設けられているので、より、整流性を向上させることができる。また、全てのメッシュ18の表面に凹凸が設けられているので、何れのメッシュ18においても気泡の付着、成長が起こりにくく、整流性をさらに向上させることができる。
【0076】
また、本実施形態の吐水装置2によれば、ブラスト処理によりメッシュ18の表面に凹凸が設けられているので、簡単な処理で、所望の凹凸を有するメッシュ18を安定して製造することができる。
【0077】
さらに、本実施形態の吐水装置2によれば、メッシュ18の表面に、二乗平均平方根傾斜RΔqが35度以下、且つ算術平均粗さRaが0.11μm以下の凹凸を形成することで、十分な気泡の付着抑制効果を有するメッシュ18を、安定して製造することができる。
【0078】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、整流室14a内には6つのメッシュ18(整流部材)が配置されていたが、整流室14a内には1つ以上の任意の個数の整流部材を配置することができる。また、上述した実施形態においては、全てのメッシュ18に粗面化処理が施されていたが、整流部材のうちの一部のみに粗面化処理を施しても良い。さらに、上述した実施形態においては、整流部材は、ステンレス製の素線を編んだメッシュ(網)から構成されていたが、他の材質、他の構造、形態の整流部材を使用することもできる。この場合においても、整流部材の表面を、本発明の実施形態において説明されていたように粗面化処理することにより、必要な整流性能を得ることができる。
【0079】
また、上述した実施形態においては、メッシュ18を形成する素線の表面にブラスト処理により凹凸を設けていたが、他の方法、例えば、化学薬品による処理や、コーティング剤の塗布等により表面を粗面化し、凹凸を設けることもできる。さらに、上述した実施形態においては、素線を網状に形成した後、ブラスト処理により表面に凹凸を設けていたが、素線を網目構造に形成する前に、凹凸を設けるための処理を行うこともできる。なお、ブラスト処理や、化学薬品による処理のように、素線自体の表面形状を粗面化する処理は、処理されたメッシュが長年月に亘り安定して粗面化状態を維持するので、コーティング剤の塗布等による処理に比べ有利である。
【0080】
また、上述した実施形態においては、網目構造に形成されたメッシュ18にブラスト処理を施しているので、メッシュ18を形成する素線表面のほぼ全体に凹凸が形成されるが、例えば、砥石や、ヤスリ状に形成された砥粒により表面を粗面化する場合には、各素線の表面全体に凹凸を設けることは困難である。このような場合には、網目構造の、素線同士が交差する部分(図7の想像線で囲まれた部分)の表面のみに凹凸を設けても良い。特に、整流性能には、メッシュ18の下流側の面において、素線同士が交差する部分の表面における凹凸が大きく寄与するので、この部分のみに凹凸が設けられていても良い。
【0081】
また、上述した実施形態においては、全てのメッシュ18に切欠部分18bが設けられ、これにより気泡排出流路26が形成されていたが、変形例として、一部のメッシュのみに切欠部分を設けても良い。
図18に示すように、この変形例においては、6枚のメッシュのうち上流側の3枚のメッシュ48aには切欠部分が設けられておらず、下流側の3枚のメッシュ48bのみに切欠部分が設けられている。従って、気泡排出流路50は、下流側の3枚のメッシュ48bのみを迂回可能に形成されている。
【0082】
図19は、図18のXV−XV断面における湯水の流速分布を模式的に示す図である。図19の実線に示すように、XV−XV断面における湯水の流速は、メッシュ48bが切り欠かれている一方の端部(気泡排出流路50の下流端の部分)で高くなっている。これは、メッシュ48bが切り欠かれている部分では、湯水は切欠によって形成された気泡排出流路50を流れるため、メッシュ48bの微細孔を通過せず、流速が速くなる。
【0083】
一方、図19の破線には、本発明の第1実施形態(図16)のように、6枚全てのメッシュ18に切欠部分18bが設けられている場合の、同じ断面における流速分布が模式的に示されている。図19の破線に示すように、全てのメッシュ18に切欠部分18bが設けられている場合には、気泡排出流路26の下流端における流速がさらに高くなっている。これは、気泡排出流路26が全てのメッシュ18を迂回するように形成されることにより、図18に示す変形例の場合よりも流路抵抗が小さくなるためである。
【0084】
ここで、全てのメッシュを迂回するように気泡排出流路を設けることにより、整流室内の気泡の排出性能は向上する、一方、整流室内における流速の高い部分の存在は、整流装置の整流性能を悪化させる要因となる。図18に示す変形例のように、設けられたメッシュのうち、一部のもののみを迂回可能に気泡排出流路50を形成することにより、気泡の排出性能と整流性能をバランス良く両立させることができる。また、一部のメッシュのみを迂回可能に構成する場合には、下流側に配置されたメッシュを迂回するように気泡排出流路を設けることが好ましい。即ち、気泡排出流路が設けられていないメッシュには、気泡が滞留する可能性があるが、上流側のメッシュに滞留した気泡は、下流側に比べて整流性能への影響が少ないため、下流側のメッシュに滞留した気泡よりも、噴射される湯水の流れに与える悪影響が少ない。
【0085】
さらに、上述した実施形態においては、整流部材であるメッシュ18に切欠部分18bを設けることにより気泡排出流路26を形成していたが、整流部材に切欠部分を設けることなく、整流部材を迂回する流路を別に設け、これを気泡排出流路とすることもできる。また、整流部材に切欠を設けるのではなく、整流部材に開口部を設けることにより、整流部材の微細孔を通過することなく湯水を通過させる流路を設け、これを気泡排出流路とすることもできる。或いは、気泡排出流路26を設けなくても良い。
【0086】
また、上述した実施形態では、分流板16は、整流室14a内の流れを均一にするための複数の貫通孔16aを有する板状の部材から構成されていたが、第2の変形例として、分流板に、整流室内の流れを方向付ける機能をもたせることもできる。図20は、このような分流板を備えた整流装置の断面図である。図21は、本変形例の吐水装置に備えられている分流板の斜視図である。
【0087】
図20に示すように、本変形例における整流装置60は、整流装置本体62と、この整流装置本体62内に収容された分流板64と、この分流板64の下流側に6枚配置された板状に形成された整流部材であるメッシュ66と、これらのメッシュ66の下流側に配置された複数の散水ノズルが設けられた散水部材68と、を有する。ここで、メッシュ66及び散水部材68の構成は、上述した第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0088】
整流装置本体62は、概ね円弧状に湾曲した断面を有する整流室62aが内部に設けられた樹脂製の部材であり、その後端部の左側には給水管接続部62bが形成されている。これにより、給水管及び給水管接続部62bを介して供給された湯水は、整流室62aの左側後端部に流入する。また、整流装置本体62の前端部は開放されており、この開口部を介して整流室62aの内部に分流板64及び各メッシュ66が配置される。整流室62aは、上流端から下流端まで概ね一定の流路断面を有し、内部に分流板64及び6枚のメッシュ66が配置されている。
【0089】
分流板64は、整流室62aの断面形状に合致する形状に形成された板状の樹脂製部材であり、整流室62aの上流側の端部壁面に当接するように配置されている。分流板64には、その板面を貫通するように、概ね長方形断面の2つの貫通孔64aが形成されている。これらの貫通孔64aは、整流室62a内に湯水を流入させる給水管接続部62bに対向する位置のみに設けられている。また、図20及び図21に示すように、これらの貫通孔64aは、分流板64の板面に対し、分流板64の中央に向かって傾斜するように形成されている。このため、給水管から給水管接続部62bを介して供給された湯水は、整流室62a内に流入する際、分流板64の傾斜して形成された貫通孔64aにより、整流室62a上流端の左端から中央に向けて方向付けられる。これにより、整流室62aの端部から湯水を流入させた場合でも、分流板64の傾斜した貫通孔64aにより、湯水が整流室62aの端部側に偏って流れてしまうことを緩和することができる。さらに、メッシュ18が間隔をあけて配置されていることで、整流室62a内に均等に流れを分布させることができる。
【符号の説明】
【0090】
1 手洗器
2 吐水装置
4 手洗いボウル
6 吐水装置本体
8 整流装置
8a 給水管接続部
8b 凹部
10 給水管
12 人体検知センサ
12a 信号線
14 整流装置本体
14a 整流室
16 分流板
16a 貫通孔
16b 空間
18 メッシュ(整流部材)
18a 微細孔
18b 切欠部分
20 散水部材
22 ノズル形成部材
22a 平板部
22b 散水ノズル
24 ノズル支持部材
26 気泡排出流路
28 バッファ空間
30 ステンレス板
32 水滴
34 ステンレス板
36 気泡
38 残留空気による気泡
40 微細な気泡
42 成長した気泡
44 衝突面
46 気泡滞留部
48a メッシュ
48b メッシュ
50 気泡排出流路
60 整流装置
62 整流装置本体
62a 整流室
62b 給水管接続部
64 分流板
64a 貫通孔
66 メッシュ
68 散水部材
【要約】
【課題】吐出された水流に十分な透明感があり、吐出後、長い距離に亘って線状の流れが維持され、十分な高級感、上質な洗い感、静粛な水流を得ることができる吐水装置を提供する。
【解決手段】本発明は、供給された湯水をシャワー吐水する吐水装置(2)であって、吐水装置本体(6)と、この吐水装置本体内に設けられ、供給された湯水が流入する整流室(14a)と、この整流室内に配置され、多数の微細孔(18a)を備えた整流部材(18)と、この整流部材を通過した湯水を吐出させるための複数の散水ノズル(22b)が設けられた散水部材(20)と、を有し、整流部材の表面には、付着した湯水中の気泡との接触面積が小さくなり、気泡が容易に剥離されるように、粗面化処理により凹凸が設けられていることを特徴としている。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21