特許第6362052号(P6362052)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6362052薬剤注入装置のトレーニング装置および当該トレーニング装置をリセットするためのリセット装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362052
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】薬剤注入装置のトレーニング装置および当該トレーニング装置をリセットするためのリセット装置
(51)【国際特許分類】
   G09B 23/28 20060101AFI20180712BHJP
【FI】
   G09B23/28
【請求項の数】17
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-504672(P2016-504672)
(86)(22)【出願日】2014年3月27日
(65)【公表番号】特表2016-515719(P2016-515719A)
(43)【公表日】2016年5月30日
(86)【国際出願番号】EP2014056137
(87)【国際公開番号】WO2014154795
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2017年3月24日
(31)【優先権主張番号】13161552.8
(32)【優先日】2013年3月28日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512115852
【氏名又は名称】エフ.ホフマン−ラ ロッシュ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001346
【氏名又は名称】特許業務法人 松原・村木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガイヨー、マキシム
(72)【発明者】
【氏名】チッパーフィールド、マーク アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】テューチャー、マーク
(72)【発明者】
【氏名】ヘイトン、ポール
【審査官】 吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−500531(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0054332(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 23/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤注入装置のトレーニング装置であって、
近位端と遠位端を有するとともに、内部に空洞が形成された本体(2)と、
近位端と遠位端を有するとともに、前記本体(2)に摺動自在に取り付けられ、前記本体(2)の遠位端に配置されそこから延出するピン(48)を露出させる引込み位置と、前記ピン(48)を覆う延伸位置との間で摺動自在なシールド(1)と、
本体(2)およびシールド(1)に結合され、前記シールドを前記延伸位置側に前進させることができるように前記シールド(1)を付勢するばね(3)と、
前記シールド(1)を前記引込み位置に保持するために、前記本体と前記シールドに設けられ相互に係合する解除可能な協働第1係止部材(27,13,14)と、
前記シールドを前記延伸位置に保持するために、前記本体(2)と前記シールド(1)に設けられ相互に係合する解除可能な協働第2係止部材(241,12)と、を備え、
さらに、前記本体(2)の前記空洞内に摺動自在に配置されたプランジャ(43)を含み、前記プランジャ(43)は、前記プランジャ(43)を前記空洞内で前記本体の遠位端側に移動させるときに、患者に注入する薬剤の注入抵抗に対応する力を前記プランジャに及ぼすように構成された圧縮可能部材(44)を含むことを特徴とするトレーニング装置。
【請求項2】
前記圧縮可能部材は、前記プランジャ(43)の遠位端に取り付けられた板ばね(44)を含み、当該板ばね(44)は、前記プランジャ(43)の一部に沿って延び、そして当該プランジャから半径方向外側に延びることを特徴とする請求項1に記載のトレーニング装置。
【請求項3】
前記本体(2)は、その近位端に当接部(201,202)を備え、当該当接部(201,202)は、前記プランジャ(43)を近位方向に移動させるときに前記空洞から完全に外れてしまうことを防止するように、前記プランジャ(43)に設けられたエンドストップ(440)と協働するように構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のトレーニング装置。
【請求項4】
前記当接部は前記本体(2)の内壁の凹部(201)であり、前記エンドストップは前記圧縮可能部材(44)の近位端(440)であることを特徴とする請求項3に記載のトレーニング装置。
【請求項5】
前記ピン(48)がピン取付け部材(25)内に摺動自在に配置され、当該ピン取付け部材は、前記ピン(48)を近位方向に移動させたときに張力が加わるように構成されたピン付勢部材(47)を含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のトレーニング装置。
【請求項6】
前記第1係止部材(27,13,14)は前記シールド(1)の近位端に配置された解除ラッチ(13,14)を含み、当該解除ラッチは、前記第1係止部材(27,13,14)を離脱させることで、前記シールド(1)を前記延伸位置へ前進させることができるように外側に撓むことができることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のトレーニング装置。
【請求項7】
リセットベース(5)をさらに含み、当該リセットベース(5)は前記トレーニング装置と組み合わせたときに前記第2係止部材(241,12)を離脱させるための解除傾斜面(55,58)を含むことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のトレーニング装置。
【請求項8】
リセットキャップ(6)をさらに含み、当該リセットキャップ(6)は前記トレーニング装置の本体(2)を前記リセットベース(5)の遠位端方向および前記シールド(1)内に押し込むための押圧部材(61,62)を含むことを特徴とする請求項7に記載のトレーニング装置。
【請求項9】
前記プランジャ(43)は、前記プランジャの近位端に配置されたプランジャヘッド(430)を含み、当該プランジャヘッド(430)の半径方向の大きさは、前記リセットベース(5)の開口した近位端の大きさと少なくとも等しく、前記トレーニング装置の前記本体(2)を前記リセットベース(5)の遠位端方向に押し込むときに、前記プランジャヘッドが前記リセットベースの開口した近位端を形成する縁(54)と当接することを特徴とする請求項8に記載のトレーニング装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の薬剤注入装置のトレーニング装置用のリセット装置であって、
当該リセット装置がリセットベース(5)とリセットキャップ(6)を含み、
前記リセットベース(5)は、
前記トレーニング装置の遠位部を収容するための開口した近位端を有する中空体と、
前記トレーニング装置の第2係止部材(241,12)を離脱させることで、前記トレーニング装置の前記シールド(1)を引込み位置に移動させることが可能となるように、前記リセットベース(5)の前記中空体の内側側壁に配された解除傾斜面(55,58)とを含み、
前記リセットキャップ(6)は、
前記トレーニング装置の近位部を収容するための開口した遠位端を有する中空体と、
前記リセットキャップ(6)の内部に配置され、前記リセット装置と前記トレーニング装置を組み付けると、前記トレーニング装置の前記本体(2)をさらに前記リセットベース(5)内に押し込むことを可能とするための押圧部材(61,62)とを含むことを特徴とするリセット装置。
【請求項11】
前記リセットベース(5)は、前記リセットベースの遠位端に配置され、前記リセットベース(5)内でピン保護部材(49)を整列させるための整列部材(51)をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載のリセット装置。
【請求項12】
前記リセットキャップ(6)の前記押圧部材(61,62)は、前記リセットキャップ(6)の内側側壁から延びる突起(61)または前記リセットキャップ(6)の内側近位端壁から延びる縦ピン(62)を含むことを特徴とする請求項10または請求項11に記載のリセット装置。
【請求項13】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のトレーニング装置をリセットする方法であって、
使用済み状態の前記トレーニング装置をリセットベース(5)の中空体に挿入するステップと、
リセットキャップ(6)を前記トレーニング装置の近位部に被せるステップと、
前記リセットベース(5)と前記リセットキャップ(6)を反対向きに押すことで、前記トレーニング装置の本体(2)を前記リセットベースの遠位端方向に押し込み、それにより前記トレーニング装置の第2係止部材(241,12)を離脱させて、前記トレーニング装置のシールド(1)を引込み位置へ前進させることを可能にするとともに前記シールド(1)を前記引込み位置に係止するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
前記トレーニング装置のプランジャ(43)の近位端に取り付けられたプランジャヘッド(430)を前記リセットベース(5)の近位端に当接させることで、前記本体(2)を前記リセットベース(5)の遠位端方向に押し込みながら前記本体(2)から前記プランジャ(43)を引っ込めるステップをさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記トレーニング装置の本体(2)を前記リセットベース(5)の遠位端方向に押し込むステップは、前記リセットキャップ(6)の内部に配された押圧部材(61,62)を設けることで行われ、前記トレーニング装置の第2係止部材(241,12)を離脱させるステップは、前記リセットベース(5)の内側側壁に配された解除傾斜面(55,58)を前記トレーニング装置の前記第2係止部材(241,12)に対して押圧することで行われることを特徴とする請求項13または請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記トレーニング装置を前記リセットベース(5)に挿入する前に、ピン保護部材(49)を前記リセットベース(5)に挿入するステップをさらに含むことを特徴とする請求項13から請求項15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ピンは、遠位側の先端が丸まっていることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のトレーニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤注入トレーニング装置および当該トレーニング装置用のリセット装置の分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
適切に薬剤を投与するために、注射器等の注入装置を介して薬剤を正確に注入することを訓練する必要がある。リウマチ、関節炎、痛風または同様の障害を持つ患者のように、例えば、手先の運動技能に制約がある患者の場合、自己注射の訓練を行うとともに自己注射を実行できるかどうか試してみることが必要になる。
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様では、薬剤注入装置のトレーニング装置が提供される。トレーニング装置は、近位端と遠位端を有するとともに、内部に空洞が形成された本体を含む。トレーニング装置は、近位端と遠位端を有するシールドを含む。シールドは、本体に摺動自在に取り付けられ、本体の遠位端に配置されそこから延出するピンを露出させる引込み位置と、ピンを覆う延伸位置との間で摺動自在である。ばねが本体およびシールドに結合される。ばねは、シールドを延伸位置側に前進させることができるようにシールドを付勢する。トレーニング装置は、シールドを引込み位置に保持するために、本体とシールドに設けられ相互に係合する解除可能な協働第1係止部材と、シールドを延伸位置に保持するために、本体とシールドに設けられ相互に係合する解除可能な協働第2係止部材とをさらに含む。また、トレーニング装置は、本体の空洞内に摺動自在に配置されたプランジャをさらに含む。プランジャは、好適にはプランジャの遠位端に配置された圧縮可能部材を含む。圧縮可能部材は、プランジャを空洞内で本体の遠位端側に移動させるときに、プランジャに力を及ぼすように構成される。この力は、患者に注入する薬剤の注入抵抗に対応する。したがって、薬剤投与時、すなわち薬剤が針を通して患者の体内に押し出されるときに生じる注入抵抗をシミュレートすることができる。
【0004】
トレーニング装置のシミュレートされた注入抵抗は、できる限り実際の注入抵抗に近くなるようにシミュレートするために、好ましくは特定の薬剤を投与する実際の注入装置の注入抵抗と同一か或いは少なくとも当該注入抵抗に非常に近くなるように変更される。
【0005】
実際の装置では、針を通して患者の組織内に押し込まれる薬剤によって注入抵抗が発生する。
【0006】
本発明のトレーニング装置の圧縮可能部材は、実際の注入抵抗(すなわち、空洞との相互作用)をシミュレートするように設計されて構成される。したがって、プランジャを装置の空洞内で移動させるとき、当該プランジャの抵抗は、対応する注入抵抗を伴う実際の注入装置におけるプランジャの抵抗よりも常に高くなる。
【0007】
実際の注入装置は、プランジャの遠位端にストッパを備えるプランジャを含んでいてもよい。ストッパは所定の柔軟性を有する材料からなるものでよい。しかしながら、ストッパは薬剤室を密封する機能を有するが、抵抗を生じさせない或いは最小限の抵抗のみを発生させるものである。ストッパの付加的な抵抗はいずれもその抵抗によりマイナスに作用して、薬剤注入行為をより困難にする。
【0008】
トレーニング装置のプランジャに及ぼされる力は、例えば、圧縮可能部材と本体の空洞の内壁との間で摩擦により生じる抵抗に対応するものでよい。この力は、例えば、軸方向に圧縮可能な部材によって発生する軸方向に向く力でもよい。ほんの一例として、このように軸方向に圧縮可能な部材は、プランジャまたは空洞に組み込まれた1つまたは幾つかのばね、または空洞内に配置された或いはプランジャの一部を形成する可逆的に圧縮可能な部材とすることができる。好適には、圧縮可能部材がプランジャの一体部品を形成する。しかしながら、圧縮可能部材は、例えば、プランジャに直接作用する機械ばねのように、プランジャに取り付けまたは接続された別部品とすることもできる。例えば、対応する本体の空洞内で圧縮または拡張し或いは空洞に沿って案内される圧縮可能手段を用いて注入抵抗をシミュレーションすることで、プランジャの動作と、薬剤をすべてまたは必要に応じた量を投与するのに要する時間をシミュレートすることができる。プランジャに及ぼされる力は、圧縮可能部材の設計または物理特性またはこれらの両方によって影響を受けるものとすることができる。そのため、異なる注入抵抗をシミュレートするためにこれらのパラメータを変化させることで、力を変化させることができる。圧縮可能部材は空洞内である程度圧縮または拡張することで、プランジャが空洞に沿って移動するときにプランジャに所定の力を及ぼす。特に、この力がプランジャの圧縮可能部材と空洞、すなわち空洞の半径方向の大きさを画定する壁との間の抵抗に対応する場合、材料の適切な選択によって当該抵抗を選択し適合させることができる。圧縮可能部材は、トレーニング装置の他の特徴を適合させることなく変更できることが望ましい。例えば、圧縮可能部材の材料の柔軟性、弾性または曲げ剛性を、必要な力または抵抗に応じて選択することができる。また、圧縮可能部材と空洞壁との摩擦は、圧縮可能部材および空洞壁の材料と表面特性によって決定または変更することができる。異なる注入抵抗をシミュレートできることで、トレーニング装置を用いて異なる粘度を有する薬剤の使用をシミュレートすることができる。これにより、薬剤の注入または特定の注入位置での薬剤の適合について使用者の訓練を行うことができる。異なる注入抵抗のシミュレーションは、使用者がある注入装置を扱うことができるかどうかを検査するのに有益である。例えば、使用者は低い粘度(高い流動性)を有する薬剤を自己注射できるが、粘度の高い薬剤を自己注射することができないかもしれない。
【0009】
ピンおよびシールド(ピンを覆うか或いはシールドの遠位端からピンを延出させるように構成される)を設けることで、実際の注入装置の注射針保護システムをシミュレートすることができる。このトレーニング装置では、ピンは遠位側の先端が丸まり、プラスチック材料で構成されることが望ましい。トレーニング装置では露出したピンにより傷つく危険はないが、針を露出させたり覆ったりするような注入装置の機構のシミュレーションを本物のような方法で実現することができる。したがって、トレーニング装置の本体およびシールドを引込み位置または延伸位置で係止および解除することができる解除可能な係止部材が、トレーニング装置に設けられる。もっとも注入装置の使用済み針を覆う延伸位置で係止したシールドは、少なくとも使い捨て注入装置では解除することはできない。本発明のトレーニング装置は反復使用の状態にリセットすることができるので、係止部材は、例えば、以下に詳述する本発明のリセット装置を用いてリセットすることができる解除可能な係止部材として構成される。
【0010】
本発明のトレーニング装置によって、実際の注入装置の形状、特に外形、適用ステップおよび装置の挙動(作動する力、注入抵抗)−好ましくは、機械的および人間工学的な原理を含む−をシミュレートすることができる。本発明のトレーニング装置は、特定の薬剤の投与、好ましくは特定の注入位置での投与に関する特定の注入装置の外見および適用時の挙動をシミュレートするように構成することもできる。さらに、解除可能な係止部材を設けることによって、トレーニング装置が再使用可能、すなわち使用後にリセットして反復使用状態にすることが可能になる。したがって、このようなトレーニング装置は、関節炎またはリウマチの患者のように手先の運動技能に制約があり、注入装置の操作を訓練する必要がある人々に特に適したものであり、さらに、薬剤、例えば、関節炎またはリウマチのような疾病に対する薬剤の自己投与を自分自身で行うためにこのような操作を行えるかどうか検査する場合にも特に適しているが、これらの用途に限定されるものではない。しかしながら、一般にトレーニング装置は、例えば、患者、患者を介護する人、医療従事者等のあらゆる使用者が薬剤の投与を訓練するのに適している。
【0011】
本発明のトレーニング装置の一つの態様によると、圧縮可能部材はプランジャの遠位端に取り付けられた板ばねを含む。そこで板ばねはプランジャの一部に沿って延び、そして、当該プランジャから半径方向外側に延びる。板ばねは製造が簡単で費用対効果が大きい。また、板ばねと空洞の内壁との間で容易に抵抗を変更することができる。例えば、板ばねの材料を変えることにより、壁と板ばねの間で抵抗を変更することができる。例えば、抵抗を大きくするために柔軟性の低い材料を選択し、抵抗を小さくするために柔軟性の高い材料を選択することができる。また、板ばねの材料または板ばねの表面材料を適切に選択することで、それぞれ空洞の内壁と接触する板ばね部との摩擦(ひいては抵抗)に影響を及ぼすことができる。言うまでもなく、本体の材料または空洞の内面の材料を適切に選択することにより、摩擦すなわち抵抗を変更することもできる。ほんの一例として、板ばねまたは空洞を、例えば、ゴム等のエラストマー材料またはプラスチック材料によりカバー、被覆またはオーバーモールドしてもよい。
【0012】
本発明のトレーニング装置の別の態様によると、圧縮可能部材はプランジャに力を及ぼし、この力は実質的にプランジャの長手方向軸(縦軸)の方向に作用する。実質的に長手方向に作用するこのような力は、好適にはばね手段によって実現される。ばね手段は、例えば、1つまたは幾つかの機械ばね或いはプランジャに対して軸方向に作用するプラスチック材料の発泡体のような可逆的に圧縮可能な材料とすることができる。ばね手段は、例えば、空洞内における空洞の遠位端とプランジャの遠位端との間に配置することができる。プランジャが空洞内に押し込まれると、ばね手段が圧縮されてプランジャに力を及ぼすことで、注入抵抗がシミュレートされる。ばね手段、特に機械ばねの形状のばね手段を空洞の外側、例えば、プランジャヘッドと本体の近位端との間に配置して、プランジャが空洞内に押し込まれるとばねが圧縮されるようにすることもできる。
【0013】
特定の実施形態では、圧縮可能材料が気体、例えば、空気であり、圧縮可能部材が気体を含む空洞によって形成される。そして、プランジャの遠位端は、空洞の内側側壁との間に気密接続を形成する。空洞または好適には気密接続には、規定サイズの漏れ口が設けられる。プランジャを空洞内に押し込むことで、空洞内の気体が圧縮され、規定された漏れ口を通して空洞から外に押し出される。空洞の外側にプランジャを引っ込めることで、漏れ口を介して空洞を再度気体で充填することができる。
【0014】
ばね手段の形状の圧縮可能部材をプランジャが空洞内に押し込まれるときに伸張するように配置してもよい。例えば、機械ばねをプランジャの遠位端と空洞または本体の近位端にそれぞれ取り付けてもよい。
【0015】
ばね手段の材料、設計および配置を適切に選択することにより、ばね手段を圧縮または伸張するのに必要な実質的に連続する力を発生させ、連続する注入抵抗をシミュレートすることができる。
【0016】
好適には、ばね手段が一体部品を形成するかプランジャに組み込まれる。例えば、プランジャが圧縮可能材料から構成されるか圧縮可能材料を含むものでよく、例えば、遠位端部がそのような圧縮可能材料から構成されてもよい。また、例えば、空洞の形状を変更してもよく、例えば、空洞は、プランジャが空洞内により深く挿入されるほどプランジャの圧縮可能部材がより圧縮されるように、空洞の遠位端に対して直径が小さくなるテーパーシリンダを形成するものでもよい。
【0017】
プランジャと空洞の壁との間に摩擦を生じさせる圧縮部材をばね手段、特に機械ばねと組み合わせることもできる。例えば、プランジャの遠位端部には、空洞の壁と接触する半径方向に延びる部分を設けてもよい。これらの半径方向に延びる部分は、例えば、固体材料のばね付勢されたプラグ、或いは、例えば、プランジャが空洞に沿って移動するときに空洞壁に沿って擦れる或いは転がるばね付勢されたホイールとすることができる。
【0018】
好適には、圧縮可能部材は、トレーニング装置の使用者に見えないように完全に空洞の内部に配置されている。
【0019】
本発明のトレーニング装置の別の態様によると、本体はその近位端に当接部を備えている。当該当接部は、プランジャが近位方向に移動するときに空洞から完全に外れてしまうことを防止するように、プランジャに設けられたエンドストップと協働するように構成される。反復使用するために数回リセットされるトレーニング装置では、プランジャを空洞から
引っ込めなければならない。プランジャが中に入る本体に当接部を設け、さらにプランジャに対応するエンドストップを設けることにより、エンドストップと当接部が相互に係合するとプランジャが空洞の近位端から脱落することがなくなる。このようなプランジャの保持機構は、トレーニング装置の再使用を可能とするためにプランジャを本体の空洞内に再挿入する必要がないので、トレーニング装置の取り扱いが容易になる。さらに、保持機構により、空洞内におけるプランジャの正確なリセット位置が高い再現性で決められることにもなる。好適には、当接部とエンドストップは、本体およびピストン或いはこれらの一部と一体に形成される。
【0020】
幾つかの実施形態では、当接部は本体の内壁に設けた凹部であり、エンドストップは圧縮可能部材の近位端である。ここで当該近位端は、圧縮可能部材の弾性特性に起因して凹部内に拡張するものでもよい。例えば、当該エンドストップは、板ばねの近位端でもよい。このような保持機構の実施形態は、簡単な構造手段により実現され、圧縮可能部材と一体化することができる。
【0021】
本発明のトレーニング装置の他の態様によると、ピンがピン取付け部材内に摺動自在に配置され、ピン取付け部材は、好適には、トレーニング装置の本体に取り付けられる。ピン取付け部材は、ピンが近位方向に移動したときに張力が加わるように構成されたピン付勢部材を含む。これにより、患者の皮膚に注入される針の注入抵抗をシミュレートすることができる。また、皮膚損傷または痛みを伴うことなく、皮膚に注入する感覚が得られる。ピンは患者の皮膚を貫通することを意図するものでなく、またこのような用途に適したものでもない。針が皮膚を貫通する際の初期抵抗のシミュレーションに加えて、「見えなくなる」針もシミュレートすることができる(実際の装置では針が患者に入り込むが、トレーニング装置では、付勢部材の圧縮によってピンがシールド内に引っ込むことになる)。
【0022】
本発明のトレーニング装置の別の態様によると、第1係止部材はシールドの近位端に配置された解除ラッチを含む。当該解除ラッチは第1係止部材を離脱させるために外側に撓むことができ、これによりシールドを延伸位置へ前進させることができる。好適には、プランジャを遠位方向に移動させることで、外側へ撓み始める。離脱動作は、(薬剤の投与終了に対応する)注入シミュレーションの終了時に行われることが好ましい。これは好適にはプランジャが終端位置に到達したときの場合である。この終端位置では、好適には、プランジャを空洞に沿って本体に押し込むためのプランジャヘッドが解除ラッチを押圧し、強制的に解除ラッチを外側に撓ませることで第1係止手段を解除する。第1係止部材は、例えば、本体の対応する当接面に当接する解除ラッチの当接面でもよい。
【0023】
本発明のトレーニング装置の他の態様によると、トレーニング装置はさらにリセットベースを含む。リセットベースは、リセットベースとトレーニング装置を組み合わせて、好適には相互に反対向きに押されたときに第2係止部材を離脱させるための解除傾斜面を含む。これにより、解除傾斜面が本体またはシールドの係止部材に所定の力を及ぼして、第2係止部材を離脱することができる。第2係止部材を離脱することにより、シールドが引込み位置へ移動することが可能となり、トレーニング装置をリセットすることができる。好適には、第2係止部材の離脱は、トレーニング装置を対応する容積のリセットベースに挿入して、例えば、トレーニング装置とリセットベースを反対向きに押すことで、トレーニング装置または当該トレーニング装置の一部をリセットベース内にさらに押し込むことで行われる。このような押圧操作は手動で行われることが望ましい。しかしながら、トレーニング装置およびリセットベースを保持する適切な保持手段と、これら2つの部品を相互に反対向きに押圧する駆動手段とを備えた電子式リセット装置によって電子的に行うこともできる。
【0024】
リセットベースを含むトレーニング装置の一態様によると、トレーニング装置はリセットキャップをさらに含む。リセットキャップは、トレーニング装置の本体をリセットベースの遠位端方向およびシールド内に押し込むための押圧部材を含む。リセットキャップに設けられた押圧部材により、トレーニング装置のリセットを容易に行うことができる。リセットベースおよびリセットキャップを反対向きに押すことで、トレーニング装置の第2係止部材がリセットベースの解除傾斜面を通過できるようになる。これにより第2係止部材が解除され、本体とシールドは、シールドの引込み位置まで相互に相対的且つ反対方向に移動することができる。このようなシールドと本体の反対方向への相対移動は、第1係止手段が相互に係合してシールドが再度引込み位置で係止され、ピン付勢部材の付勢力に起因してシールドからピンが延出するまで行われる。好ましくは、リセットキャップおよびリセットベースは、リセット装置の取り扱いがより便利になり、トレーニング装置のリセットをさらに容易に行うことができる人間工学的な形状を有するものでもよい。
【0025】
好適には、押圧部材はリセットキャップの内壁から延びる。押圧部材は、リセットキャップをトレーニング装置と組み合わせたときに、トレーニング装置の本体のみに作用することが望ましい。押圧部材は、リセットキャップの内側側壁から延びる突起として形成してもよい。内側側壁の突起は、リセットベースの方向にリセットベース内に動かされるときに、例えば、長手方向に且つプランジャの側面を通過するように案内される。しかしながら、押圧部材は、例えば、1つまたは幾つかのピン或いは中空管の形状で、リセットキャップの内側近位端から延びるように配置することもできる。内側近位端から延びる押圧部材は、プランジャヘッドを通過するように配置され、好適にはプランジャロッドのすぐそばにプランジャロッドに沿って配置される。したがって、プランジャヘッドには、プランジャヘッドを通過する押圧部材に対応して1つまたは幾つかの開口部が設けられている。好適には、トレーニング装置の本体がプランジャヘッドの大きさに実質的に対応する断面の大きさまたは断面形状を有する場合、リセットキャップの内側遠位端から延びる押圧部材が設けられる。押圧部材がトレーニング装置の本体を押圧するために設けられているので、本体の細い形状が、このように押圧部材が本体に作用するのに十分な接触面を提供することができる。
【0026】
本発明のトレーニング装置の別の態様によると、プランジャは、プランジャの近位端に配置されたプランジャヘッドを含み、当該プランジャヘッドの半径方向の大きさは、リセットベースの開口した近位端の大きさと少なくとも等しい。これによりトレーニング装置の本体をリセットベースの遠位端方向に押し込むときに、プランジャヘッドがリセットベースの開口した近位端を形成する縁と当接する。これによって、本体がシールドに挿入されると同時に、そして好適には本体がシールドに挿入されるのと同じ距離だけ、空洞からプランジャを引っ込めることができる。したがって、リセットキャップとリセットベースを好適には1つの直線運動で相互に反対方向に移動すると、シールドがその初期引込み位置にリセットされるだけでなく、プランジャもトレーニング装置を再使用するための初期延伸位置にリセットされる。プランジャヘッドの大きさ、例えば、直径は、リセットベースの近位端を形成する近位縁の大きさと同じであることが好ましい。プランジャヘッドがリセットベースの近位端から半径方向外側に延びている場合、リセットキャップをトレーニング装置に被せることができるように、プランジャヘッドはリセットキャップの内側の大きさよりもさらに小さいことが好ましい。好適には、リセットベースおよびリセットキャップは、実質的に楕円の断面形状または不均一な断面形状を有する。プランジャヘッドの半径方向の大きさは、楕円または不均一な断面の最小部において近位縁に当接することが好ましい。
【0027】
本発明の別の態様によると、上述した薬剤注入装置のトレーニング装置用のリセット装置が提供される。当該リセット装置はリセットベースとリセットキャップを含む。リセットベースは、トレーニング装置の遠位部を収容するための開口した近位端を有する中空体と、リセットベースの中空体の内側側壁に配され、トレーニング装置の係止部材を離脱させるための解除傾斜面とを含む。これにより、トレーニング装置のシールドが引込み位置に移動可能となる。リセットキャップは、トレーニング装置の近位部を収容するための開口した遠位端を有する中空体と、リセットキャップの内部に配置され、リセット装置とトレーニング装置を組み付けるとトレーニング装置の本体をさらにリセットベース内に押し込むことを可能とするための押圧部材とを含む。
【0028】
リセット装置の利点はトレーニング装置の態様に関して既に説明してあるので、繰り返しの説明を省略する。
【0029】
本発明のリセット装置の一態様によると、リセットベースは、リセットベースの遠位端に配置され、リセットベース内でピン保護部材を整列させるための整列部材をさらに含む。ピン保護部材をリセットベース内に挿入し、整列部材によってリセットベースの所定位置に保持することができる。リセットされるトレーニング装置がピン保護部材を備えたリセットベースに挿入される場合には、ピン保護部材は、トレーニング装置をリセットする処理ステップと同様のステップにおいてピンに取り付けられる。ピン保護部材を設けることで、一般に針保護部材が設けられる一方向作動式使用準備済み注入装置のシミュレーション用にさらにトレーニング装置を変更することができる。
【0030】
本発明のリセット装置の別の態様によると、リセットキャップの押圧部材は、リセットキャップの内側側壁から延びる突起を含むか或いはリセットキャップの内側近位端壁から延びる縦ピンを含む。押圧部材は、リセットキャップがトレーニング装置をセットしたリセットベースに組み付けられたときにトレーニング装置の本体を押圧するために設けられる。
【0031】
本発明の別の態様によると、本発明のトレーニング装置をリセットする方法が提供される。当該方法は、使用済み状態のトレーニング装置をリセットベースの中空体に挿入するステップと、リセットキャップをトレーニング装置の近位部に被せるステップと、リセットベースとリセットキャップを相互に反対向きに、好適には相互に重なり合うように押すステップとを含む。これにより、トレーニング装置の本体をリセットベースの遠位端方向に押し込み、それによりトレーニング装置の第2係止部材を離脱させて、トレーニング装置のシールドが係止される引込み位置へ当該シールドを前進させることを可能にする。
【0032】
本発明の方法の一態様によると、当該方法は、トレーニング装置のプランジャの近位端に取り付けられたプランジャヘッドをリセットベースの近位端に当接させることで、本体をリセットベースの遠位端方向に押し込みながら本体からプランジャを引っ込めるステップをさらに含む。リセット方法の間、すなわちリセットキャップとリセットベースを反対向きに押しながらプランジャを本体から引っ込めることによっても、トレーニング装置が完全にリセットされ、さらなる操作を必要とせずに再使用状態にすることができる。
【0033】
本発明の方法の別の態様によると、トレーニング装置の本体をリセットベースの遠位端方向に押し込むステップは、リセットキャップの内部に配された押圧部材を設けることで行われる。さらに、トレーニング装置の第2係止部材を離脱させるステップは、リセットベースの内側側壁に配された解除傾斜面をトレーニング装置の第2係止部材に対して押圧することで行われる。
【0034】
本発明の方法の幾つかの実施形態では、本体を押し込むステップを実行するために、押圧部材は、本体を押圧する前にトレーニング装置のプランジャヘッドの側面を通過してもよい。押圧部材は、プランジャヘッドを貫通して、プランジャヘッドの遠位に配置された本体に達してもよい。
【0035】
本発明の方法の別の態様によると、当該方法は、トレーニング装置、好適には使用済み状態のトレーニング装置をリセットベースに挿入する前に、ピン保護部材をリセットベースに挿入するステップをさらに含む。
【0036】
トレーニング装置をリセットする方法の諸態様の利点は、トレーニング装置の諸態様およびリセット装置に関して既に説明してあるので、繰り返しの説明を省略する。
【0037】
本発明のトレーニング装置は、患者への薬剤の注入をシミュレートするために使用する。好ましくは、ヒトへの薬剤の注入がシミュレートされる。さらに好ましくは、関節炎、リウマチまたは痛風の治療薬を注入することがシミュレートされる。
【0038】
トレーニング装置は拡張指掛け用フランジ部を備えるものでもよい。これによりトレーニング装置は、実際の注入装置の使用を容易にする−注入装置の一体部品または注入装置に取り付けられる別部品としての−拡張指掛け用フランジを備えた実際の注入装置をシミュレートすることができる。拡張指掛け用フランジは、トレーニング装置から横方向に、好適には半径方向に延びる部分である。ほとんどの注入装置は指掛け部を備えている。指掛け部により、薬剤を投与するとき、すなわちプランジャを操作するときに注入装置が把持される。本発明の拡張指掛け用フランジは、好適には、シールドの一部であり、本体にプランジャを押し込むときにトレーニング装置をしっかりと把持することを可能とするものである。拡張指掛け用フランジは、好適には、1本または数本の指を受けるための人間工学的な形状を有する拡張された指掛け部であることが好ましい。拡張指掛け用フランジは、シールドと一体形成されるか或いは別部材でもよい。別部材としての拡張指掛け用フランジは、クリップ留め、締付け具による締め付けなどにより、トレーニング装置に一時的且つ取外し自在に取り付けられることが好ましい。取外し可能な指掛け用フランジは、トレーニング装置の使用後に取り外して、例えば、リセット装置内に収容してもよい。リセット装置、例えば、リセットベースは、トレーニング装置を使用していないときにベース内に拡張指掛け用フランジを収容する十分なスペースを提供することが好ましい。取外し可能な指掛け用フランジを実際の注入装置にも取り付けられるように構成することが好ましい。これにより注入装置の操作が容易になり、同じ拡張指掛け用フランジをトレーニング装置と実際の注入装置に使用することができる。
【0039】
本発明のトレーニング装置またはリセット装置は、本発明のトレーニング装置および本発明のリセット装置を含むトレーニングシステムの部品として提供することもできる。
【0040】
以下の説明では、本発明のトレーニング装置および本発明のリセット装置の諸実施形態を添付の図面を用いて示す。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】トレーニング装置の一実施形態を示す分解図である。
図2】トレーニング装置の別の実施形態を示す分解図である。
図3】使用準備済みの位置にあるトレーニング装置の断面図と、シールドの引込み位置におけるシールドおよび本体の近位端の拡大断面図である。
図4】使用準備済みの位置から使用済みの位置に至るまでの図1のトレーニング装置の一連の動作を示す斜視図である。
図5】使用準備済みの位置から使用済みの位置に至るまでの図1のトレーニング装置の一連の動作を示す斜視図である。
図6】使用準備済みの位置から使用済みの位置に至るまでの図1のトレーニング装置の一連の動作を示す斜視図である。
図7】使用準備済みの位置から使用済みの位置に至るまでの図1のトレーニング装置の一連の動作を示す斜視図である。
図8】使用準備済みの位置から使用済みの位置に至るまでの図1のトレーニング装置の一連の動作を示す斜視図である。
図9】対応するリセット装置を用いた図1のトレーニング装置の一連のリセット動作を示す斜視図である。
図10】対応するリセット装置を用いた図1のトレーニング装置の一連のリセット動作を示す斜視図である。
図11】対応するリセット装置を用いた図1のトレーニング装置の一連のリセット動作を示す斜視図である。
図12】対応するリセット装置を用いた図1のトレーニング装置の一連のリセット動作を示す斜視図である。
図13】対応するリセット装置を用いた図1のトレーニング装置の一連のリセット動作を示す斜視図である。
図14】対応するリセット装置を用いた図1のトレーニング装置の一連のリセット動作を示す斜視図である。
図15】使用準備済みの位置から使用済みの位置に至るまでの図2のトレーニング装置の一連の動作を示す斜視図である。
図16】使用準備済みの位置から使用済みの位置に至るまでの図2のトレーニング装置の一連の動作を示す斜視図である。
図17】使用準備済みの位置から使用済みの位置に至るまでの図2のトレーニング装置の一連の動作を示す斜視図である。
図18】使用準備済みの位置から使用済みの位置に至るまでの図2のトレーニング装置の一連の動作を示す斜視図である。
図19】使用準備済みの位置から使用済みの位置に至るまでの図2のトレーニング装置の一連の動作を示す斜視図である。
図20】対応するリセット装置を用いた図2のトレーニング装置の一連のリセット動作を示す斜視図である。
図21】対応するリセット装置を用いた図2のトレーニング装置の一連のリセット動作を示す斜視図である。
図22】対応するリセット装置を用いた図2のトレーニング装置の一連のリセット動作を示す斜視図である。
図23】対応するリセット装置を用いた図2のトレーニング装置の一連のリセット動作を示す斜視図である。
図24】対応するリセット装置を用いた図2のトレーニング装置の一連のリセット動作を示す斜視図である。
図25】対応するリセット装置を用いた図2のトレーニング装置の一連のリセット動作を示す斜視図である。
図26】拡張指掛け用フランジを含むトレーニング装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1にトレーニング装置の第1実施形態を分解図で示す。トレーニング装置はアウターシールド1を含み、当該アウターシールドは、ばね3と、アウターピン保護キャップ490およびインナーピン保護キャップ491からなるピン保護部材49と、ピン48を収容するためのピンハウジング25と、柔軟なばね47とを収容するとともに、プランジャ43を収容する本体2を収容する。
【0043】
シールド1は略正方形の中空本体部材10を有し、当該中空本体部材10の両面(正面および背面)には、本体2の遠位端に設けられた柔軟な脚部24の各突起241を収容して案内するための長手方向(縦方向)に延びるスロット11が設けられている。本体2は略正方形の中空本体部材20を含む。柔軟な脚部24は本体2の両面(正面および背面)に配置されている。脚部24の遊端には外側を向いた突起241が設けられている。
【0044】
さらに、シールド1にはスナップスロット12が設けられ、当該スナップスロット12は、長手方向に延びるスロット11の近位で本体部材10の両面(正面および背面)に設けられている。スナップスロット12は、柔軟な脚部24の突起241を収容するとともに、シールド1が延伸位置にある状態で本体2に対してシールド1を係止する。
【0045】
シールド1の近位端には、本体2と係合してシールド1を引込み位置に保持するための2つの柔軟な舌部13が設けられている。引込み位置において、舌部13の近位側自由端は、本体2の本体部材20の近位端に設けられた2つのフランジ22を貫通している。柔軟な舌部13はそれぞれ突起130を含む。柔軟な舌部13の突起130の下縁は、シールド1が引込み位置にあるとき、本体部材20の2つのフランジ22に配された上縁(図示せず)にそれぞれ載る。このスナップ嵌合による結合は、柔軟な舌部13を半径方向外側に押圧することで解除することができる。
【0046】
コイルばね3が本体2とシールド3の間に配置される。本体2がシールド1内に保持される引込み位置では、ばね3が圧縮される。シールド1の延伸位置では、ばね3が解除され、本体2が近位方向に押圧されている。
【0047】
また、シールド1は遠位端が開口しており、シールドが引込み位置にあるとき、前記開口した遠位端をピン48が貫通する。
【0048】
ピンハウジング25にはシールド1の長手方向に延びるスロット11内を摺動自在に案内される突起210が設けられることで、シールド1が引込み位置にあるとき、長手方向に延びるスロットの近位端と協働しながら停止部を提供する。さらに、ピンハウジング25は本体2と(解除不能な)スナップ嵌合結合するための係止手段250を含む。柔軟なばね47は、ピンハウジング25内で、ピン48の拡径近位端480と本体2の遠位端における本体2の閉鎖底部23との間に配置される。
【0049】
プランジャ43は、プランジャの2つの対向面(側面)でプランジャの遠位端に配置された2つの板ばね44を含む。板ばね44は材料の一体成形品で形成してもよい。板ばね44はプランジャの遠位端からプランジャの一部分に沿って延び、当該部分から半径方向に延びる。板ばね44はプランジャロッド431の方向に弾性的に圧縮可能であり、板ばね44の選択と形状を通して適合させることで所定の力を付与することができる。プランジャと本体2を組み立てる際に本体部材20の空洞に沿って板ばねを圧縮して移動させるのに必要な力は、薬剤の投与によって生じる実際の注入装置の注入抵抗を表わしこれをシミュレートするものである。
【0050】
図2にトレーニング装置の別の実施形態を分解図で示す。同一または同様の要素には、同一の参照符号を用いた。図1の第1実施形態と異なる特徴について参照する。
【0051】
シールド1の本体部材10は、円形の中空本体を必須要件として有する。引込み位置でシールド1を係止するためのシールドの係止部材は、シールド1の近位端でシールド1の2つの側面において2つのフランジ15に配された2つの短いカンチレバー14として形成されている。カンチレバー14は遠位端に突起141を有し、半径方向外側に柔軟に曲げることができる。カンチレバー14の突起141の下端は、本体2の本体部材20の円周に配された突起27の上縁270にそれぞれ載るように構成される。
【0052】
ピンハウジング25の突起210は、ピンハウジング25から外側を向き、ピンハウジング25の近位端側を向いたフラップとして形成される。当該突起210は、シールド1の長手方向に延びるスロット11内を摺動自在に案内され、シールド1が引込み位置にあるとき、長手方向に延びるスロット11の近位端と協働しながら停止部を提供する。
【0053】
本体2はシールド1内に完全に挿入されてもよい。したがって、本体2の近位端は、本体2がシールド1のフランジ15内に完全に埋まるように十分に小さい直径を有する円形形状であることを必要とする。プランジャ43はプランジャヘッド430を含み、詳細を後述するように、プランジャヘッドは、リセット装置の押圧部材がプランジャヘッドを通過してプランジャロッド431のすぐそばに案内される開放構造を有する。
【0054】
図3では、図1に係る実施形態に関して注入抵抗のシミュレーションをさらに説明ないし示す。しかしながら、注入抵抗のシミュレーションをトレーニング装置の他の特徴を実現することと独立に、同様のまたは類似の方法によって実現してもよい。図3の左側には組立て状態、すなわち使用準備済みのトレーニング装置を略式的に示す。プランジャ43は、本体2の本体部材20の内部に形成された空洞に挿入される。好適には金属板の一体成型品で形成された板ばね44は、プランジャから半径方向に延びてプランジャ43の近位端側に延びる。板ばねはプランジャ43の遠位端に取り付けられている。好適には、板ばねはクリップ留めされ、永久変形したピン441によってプランジャに永久的に取り付けられる。このような構成は、例えば、ピンと好適には熱可塑性材料から形成される或いは熱可塑性材料を含むプランジャまたは遠位プランジャ端を用いて、例えば、超音波溶接によって実現することができる。しかしながら、熱可塑性材料のピンと開放構造を有するプランジャの材料により、ピンの溶融材料がプランジャの材料に浸み込んで形状ロック(form lock)を提供するように構成することも可能である。板ばねの取付けは、例えば、ねじ、リベット、機械的クリップ、或いは板ばねの装着に適した他の任意の方法(例えば、圧入)によって行うこともできる。
【0055】
図3に示すように、プランジャ43の延伸位置では、板ばね44の近位端440が、本体部材20の内壁に形成された凹部201内の近位端側に位置している。板ばね44の近位端440は、凹部201の近位端に設けられた機械的停止部202に当接するエンドストップを提供する。これにより、プランジャ34が(例えば、リセット動作の一部として)延伸位置まで引っ張られたとき、プランジャ43が本体部材20から不用意に外れてしまうことが防止される。さらに、注入シミュレーションの開始位置が規定され、再現可能となる。プランジャヘッド430を介してプランジャ43をトレーニング装置の遠位端方向に押圧することで、板ばね44が圧縮され、本体部材20の内側側壁に対するその抵抗により注入抵抗がシミュレートされる。
【0056】
図4から図8では、図1に係るトレーニング装置の実際の注入装置の使用をシミュレートする動作を示す。図4において、トレーニング装置は、ピン保護部材49がトレーニング装置に装着されている使い捨て使用準備済み注入装置を表わす。シールド1および本体2は、シールド1の延伸位置で相互に係止されている。柔軟な脚部13の突起130は、本体2のフランジ22の内部の対応する縁と係合する。
【0057】
ピン保護部材49を外し(図5)、トレーニング装置を使用者の皮膚の上に置く。ピン48の先端に圧力を加えると、ばね47が圧縮され(図1も参照)、ピン48が部分的にピンハウジング25内に移動する(図6には図示せず)。
【0058】
プランジャ43は、プランジャヘッド430をトレーニング装置の遠位端すなわちシールド1側に押圧することで、本体部材20内部へ移動する。プランジャヘッド430が舌部13の外側端部まで達すると、適量の薬剤を投与するシミュレーションが終了する。そして、舌部13は大径のプランジャヘッド430により外側に曲げられ、シールド1が保持された引込み位置からシールド1が解放される。そして、ばね3が伸びて、本体2およびピン48を近位方向に移動する(図7では、本体2が完全に押し戻されておらず、シールド1も完全に延伸していない)。シールド1に対して案内された本体2の移動は、突起241がスナップスロット12に達してスナップスロット12内に係合することでスナップ嵌合(図8)がなされるまで続く。ピンは完全にシールド1内に配置され、シールド1の延伸位置で針が保護されるシミュレーションがなされる。トレーニング装置は使用済み状態にあり、廃棄処分される状態にある実際の注入装置を表わしている。しかしながら、トレーニング装置を再使用状態にリセットすることができ、このリセット機構を図9から図14に示す。
【0059】
トレーニング装置のリセットを可能にするためには、シールド1をピン48を覆う延伸位置で係止する係止機構を解除しなければならない(図8)。さらに、プランジャ43は本体2から出て、延伸位置(図4および図14)に移動する必要がある。図9から図14において、トレーニング装置、リセット装置またはこれらの装置の部品の移動方向は、白抜き矢印100で示す。
【0060】
使用済みのトレーニング装置をリセットするため、ピン保護部材49を楕円形状のリセットベース5に挿入する。ピン48(図示せず)を収容するためのピン保護部材49の端部は、リセット装置の近位端を向いている(図9)。ピン保護部材49は、リセットベース5の内側底壁から延びる円形形状の突起51の中に整列保持される。使用済みのトレーニング装置がリセットベース5に挿入される(図10)。楕円形状のリセットキャップ6をリセットベース5内でトレーニング装置の上から被せて(図11および図12)、リセットベース5の遠位端方向に押圧する。リセットキャップ6は、リセットキャップ6の2つの対向面(一面のみを図示する)に設けられた長手方向(縦方向)に延びるリブ61を含む。縦リブ61の遠位端610は、本体2のフランジ22の近位側リム220に当接する。これによりトレーニング装置は、プランジャヘッド430がリセットベース5の近位側リム54に当接するまで、リセットベース5内にさらに押し込まれる。そして、プランジャ43ではなく本体2をコイルばね3の力(図1参照)に抗してシールド1内にさらに押し込む。これにより、本体2がベース5の内側側壁に配された解除傾斜面55を通過するときに、脚部24の突起241が内側に押圧される。解除傾斜面55によって突起241が押し込まれることで、突起241がスナップスロット12を通過して、シールド1と本体2の係止を解除することができる。シールド1と本体2は、再度シールドの引込み位置に戻る。これと同じ動作によりプランジャ43が本体2から引き出されて、トレーニング装置が再度使用準備済みとなる。プランジャ43はリセットキャップ6のリブ61によって案内される。リセットベース5には、リセット装置内のトレーニング装置が再度使用準備済みとなるときに突起241が嵌入する開口部57が設けられている。リセットベース5およびリセットキャップ6は、実質的にそれぞれ近位端または遠位端が閉じた中空管であり、リセットされた或いは使用準備済みのトレーニング装置用の収容装置を形成している。したがって、本体2の脚部24を広がった状態に保持することが望ましい。リセットベース5およびリセットキャップ6には、ベースおよびリセットキャップ6を組立て状態に保持するために、これらの間で解除可能なスナップ嵌合を行うための協働スナップ手段56が設けられている。
【0061】
図15から図19では、図2に係るトレーニング装置の動作を示す。ここでもピン保護部材49をトレーニング装置から外し、プランジャヘッド430を本体2内に押し込む。延伸位置において、プランジャヘッド430がシールド1のフランジ15内に完全に挿入され、カンチレバー14の突起141を押圧する(図17)。突起141は半径方向外側に押圧され、シールド1と本体2の係合を解除する。ばね3の力により、本体2およびシールド1はシールド1の延伸位置に相互に相対的に移動し、その間突起241は縦スロット11内を案内される(図18)。この動作は、突起241がスナップスロット12内にスナップ嵌合し、シールドおよび本体2をシールド1の延伸位置で係止させるまで行われる。
【0062】
図20から図25は、図2および図19に係るトレーニング装置のリセット機構を示す。この実施形態において、リセットベース5には、リセットベース5の内側側壁から突出する円周方向に延びるリセット傾斜面58が設けられている(図20)。プランジャヘッド430には4つの貫通孔4301が設けられている(図21)。これらの貫通孔は、リセットキャップ6の近位側内側端壁から延びる4つのピン62を貫通させてプランジャロッド431のすぐそばに案内する(図22から図24)ように、プランジャヘッド430の中心の周りに配置されている。トレーニング装置がリセットベース5内に押し込まれると、プランジャヘッド430がリセットベース5の近位側リム54に当接する。ここでも、コイルばね3の力に抗してピン62を押圧する動作により、プランジャ43ではなく本体2をシールド1内にさらに押し込む。これにより、本体2が解除傾斜面58を通過するときに、脚部24の突起241が内側に押圧される。シールド1と本体2の係止が解除され、シールド1と本体2がシールド1の引込み位置に戻り、カンチレバーの突起141と本体の突起27の上縁227が再度連結される(図25)。これと同じ動作によりプランジャ43が本体2から引き出されて、リセットキャップ6のピン62によって案内される。
【0063】
図26に拡張指掛け用フランジ7を備えたトレーニング装置を示す。拡張指掛け用フランジ7は、トレーニング装置に取り外し可能に装着することができる別部品(図26の左下に示す)として設けられる。拡張指掛け用フランジ7は円盤状部材を切り取った扇形の形状を有している。拡張指掛け用フランジ7をトレーニング装置、すなわちシールド1に取り付けると、トレーニング装置から横方向に拡張指掛け用フランジ7が広がる。拡張指掛け用フランジ7は2つの対向する横方向に延びる。拡張指掛け用フランジ7を適用することで、プランジャ43を装置の本体に押し込む際に装置を把持する役割を果たすシールド1のフランジ22が拡張される。これによりトレーニング装置を把持すること、ひいてはトレーニング装置を操作することを容易に行うことができる。さらに、実際の注入装置に拡張指掛け用フランジが設けられている場合には、そのような実際の装置のシミュレーションをより現実的な方法で行うことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
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