特許第6362108号(P6362108)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6362108半導体素子搭載用リードフレーム及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362108
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】半導体素子搭載用リードフレーム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/50 20060101AFI20180712BHJP
【FI】
   H01L23/50 H
   H01L23/50 D
   H01L23/50 A
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-182254(P2014-182254)
(22)【出願日】2014年9月8日
(65)【公開番号】特開2016-58479(P2016-58479A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2016年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】517363861
【氏名又は名称】大口マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001405
【氏名又は名称】特許業務法人篠原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 崇揮
【審査官】 ▲吉▼澤 雅博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−151069(JP,A)
【文献】 特開2004−247613(JP,A)
【文献】 特開2012−182207(JP,A)
【文献】 特開昭63−047960(JP,A)
【文献】 特開2000−195984(JP,A)
【文献】 特開2012−164877(JP,A)
【文献】 特開2011−129687(JP,A)
【文献】 特開2002−231871(JP,A)
【文献】 特開2014−183134(JP,A)
【文献】 特開2014−165262(JP,A)
【文献】 特開2014−179458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子搭載部及び端子部を有していて、該半導体素子搭載部及び端子部のうち少なくとも一方の側面に、半導体素子搭載側の面から該半導体素子搭載側とは反対側のはんだ実装の面方向へ略垂直に延伸した端面と前記はんだ実装側の面から前記半導体素子搭載の面方向へ凸状に切除され凹状に形成され円弧面と、前記端面と前記円弧面とに接続する先端面とにより形成されてなる突起部を備えていて、前記突起部の前記先端は、略平面あるいは円弧状をなしているとともに肉厚に形成されており、前記突起部は、前記先端面の前記端面と接続する部位における、前記端面の前記半導体素子搭載側の根元部から側面方向への突出長さが10μm以内、厚さが50μm以上であり、前記先端面における前記円弧面と接続する部位が、前記先端面における前記端面と接続する部位よりも前記はんだ実装側の面に近い位置にあり、且つ、前記円弧面は、前記はんだ実装側の面と接続する部位から前記先端面と接続する部位に至るまで一つながりの略半円の円弧形状の面であり、前記円弧面における最も半導体素子搭載側の面に近い部位が、前記先端面における前記端面と接続する部位と同程度の高さ位置又は前記先端面における前記端面と接続する部位よりも前記半導体素子搭載側の面に近い位置にあることを特徴とする半導体素子搭載用リードフレーム。
【請求項2】
前記半導体素子搭載部及び端子部の側面が、粗化処理により粗面化されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体素子搭載用リードフレーム。
【請求項3】
前記半導体素子搭載部及び端子部の側面のうち少なくとも前記突起部を備えている箇所には、めっきが施されていないことを特徴とする請求項2に記載の半導体素子搭載用リードフレーム。
【請求項4】
前記粗面化されている側面は、平均粗さが0.12〜0.20μmであることを特徴とする請求項2又は3に記載の半導体素子搭載用リードフレーム。
【請求項5】
半導体素子搭載部及び端子部を有していて、該半導体素子搭載部及び端子部のうち少なくとも一方の側面に、半導体素子搭載側の面から該半導体素子搭載側とは反対側のはんだ実装側の面方向へ略垂直に延伸した端面と、前記はんだ実装側の面から前記半導体素子搭載側の面方向へ凸状に切除され凹状に形成された円弧面と、前記端面と前記円弧面とに接続する先端面とにより形成されてなる突起部を備えた半導体素子搭載用リードフレームの製造方法であって、
リードフレーム用金属板の前記半導体素子搭載とは反対側の前記はんだ実装側の面における前記円弧面と接続する部位に対応する位置から所定の間隔を置いてエッチング速度制御用レジストパターンを配置することにより、エッチング速度を制御するようにして、前記半導体素子搭載側の面から前記はんだ実装側の方向へ略垂直に延伸した端面と、前記はんだ実装側のから前記半導体素子搭載側の凸状に切除ることにより凹状に形成される円弧面と、前記端面と前記円弧面とに接続する先端面とによりる突起部を形成して、該突起部の前記先端は、略平面あるいは円弧状をなすとともに肉厚となるように形成し、前記突起部が、前記先端面の前記端面と接続する部位における前記端面の前記半導体素子搭載側の根元部からへの突出長さが、10μm以内、厚さが50μm以上であり、前記先端面における前記円弧面と接続する部位が、前記先端面における前記端面と接続する部位よりも前記はんだ実装側の面に近い位置にあり、且つ、前記円弧面は、前記はんだ実装側の面と接続する部位から前記先端面と接続する部位に至るまで一つながりの略半円の円弧形状の面であり、前記円弧面における最も半導体素子搭載側の面に近い部位が、前記先端面における前記端面と接続する部位と同程度の高さ位置又は前記先端面における前記端面と接続する部位よりも前記半導体素子搭載側の面に近い位置にあるようにしたことを特徴とする半導体素子搭載用リードフレームの製造方法。
【請求項6】
前記エッチング速度制御用レストパターンを、前記はんだ実装側の面における前記円弧面と接続する部位に対応する位置から板厚の45〜50%間隔をおいて、板厚の42.5〜47.5%の幅で配置することを特徴とする請求項5に記載の半導体素子搭載用リードフレームの製造方法。
【請求項7】
金属板の面に、一方の面側において半導体素子搭載部と半導体素子と接続される端子部を、他方の面側においてはんだ実装端子部をそれぞれ形成するため開口しためっきレジストパターンを形成し、
形成しためっきレジストパターンから前記金属板の下地の金属が露出している部分に所定の厚さのめっきを施した後、前記めっきレジストパターンを剥離し、
前記金属板の他方の側の面への前記エッチング速度制御用レジストパターンの形成を含んで、前記金属板のにリードフレームパターン形成用エッチングレジストパターンを形成して、前記突起部を含むリードフレームパターンをエッチングにて形成し、その後、前記エッチング速度制御用レジストパターンを含む前記リードフレームパターン形成用エッチングレジストパターンを剥離することを特徴とする請求項5又は6に記載の半導体装置搭載用リードフレームの製造方法。
【請求項8】
めっきされる金属の種類は、Ag、Cu/Ag、Ni/Pd/Au、及びNi/Pd/Au/Agのいずれかであることを特徴とする請求項7に記載の半導体素子搭載用リードフレームの製造方法。
【請求項9】
前記突起部を含む前記リードフレームパターン形成のためのエッチング後に前記エッチング速度制御用レジストパターンを含む前記リードフレームパターン形成用エッチングレジストパターンを残した状態で、露出している前記金属板の側面を粗化液で処理することにより前記半導体素子搭載部及び前記端子部の側面に粗化面を形成するようにしたことを特徴とする請求項7又は8に記載のリードフレームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子を搭載するためのリードフレーム、特に半導体素子搭載部及び端子部の形状と、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子を搭載するリードフレームにおいては、半導体素子と接続されるとともに外部とも接続される端子部に対する封止用樹脂の密着性の向上が製品の信頼性を向上させる重要なポイントの1つであり、封止用樹脂との密着性を向上させて端子部の抜け落ちを防止するための技術が種々提案されている。具体的には、端子部の上面側に突起部(庇)を形成する技術や、端子部の側面を粗化させる技術等がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、表裏からエッチングを施すことで側面に凹凸を形成する技術が開示されている。この技術は、従来から行なわれている表裏面からのエッチング加工において、表面側と裏面側のエッチングマスクに差を付けて形成することで、樹脂部の脱落を防止する技術であり、金属板の厚さと同程度或いは厚さ以下の距離をエッチングする際に、表面側を狭く開口し、裏面側を広く開口したエッチングマスクを形成してリードフレームを製造することなどで目的を達成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−151069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の従来技術による場合、樹脂との密着性を向上させるために形成された突起部であっても、その先端が鋭角となる場合は、封止樹脂にクラックが発生することから、突起部の先端を略平面状又は円弧状に形成する必要がある。
【0006】
特に、QFNやLED用のリードフレームの場合には、実装後に露出する面の端面に対し、素子搭載面の端面がオーバーハングするように設計されて、樹脂剥がれ防止策の一つとして機能させている。しかし、個片へカットする際のブレードとの摩擦時に起こる、高い熱履歴による膨張・収縮や振動の影響で、樹脂がリードフレームから剥がれてしまう不具合が問題視されており、市場においては更なる樹脂密着性の向上が求められている。
【0007】
しかし、端子部の上面側に突起部(庇)を形成することは、端子と樹脂との密着性の向上に寄与するものの、隣接した端子との端子間距離が、突起部(庇)の突き出した長さの分だけ短くなることから、端子間の電気絶縁性を確保するため突起部(庇)の突出長さの分だけ端子間ピッチを広くすることが必要となる。そのため、その分だけ半導体パッケージの外径サイズが大きくなってしまうという欠点があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、端子と封止樹脂との密着性を確保しながら、端子間の電気絶縁性も効果的に満足するようにした半導体素子搭載用リードフレームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明による半導体素子搭載用リードフレームは、半導体素子搭載部及び端子部を有していて、該半導体素子搭載部及び端子部のうち少なくとも一つの側面に、半導体素子搭載側の面から該半導体素子搭載側とは反対側のはんだ実装の面方向へ略垂直に延伸した端面と前記はんだ実装側の面から前記半導体素子搭載の面方向へ凸状に切除され凹状に形成され円弧面と、前記端面と前記円弧面とに接続する先端面とにより形成されてなる突起部を備えていて、前記突起部の前記先端は、略平面あるいは円弧状をなしているとともに肉厚に形成されており、前記突起部は、前記先端面の前記端面と接続する部位における、前記端面の前記半導体素子搭載側の根元部から側面方向への突出長さが10μm以内、厚さが50μm以上であり、前記先端面における前記円弧面と接続する部位が、前記先端面における前記端面と接続する部位よりも前記はんだ実装側の面に近い位置にあり、且つ、前記円弧面は、前記はんだ実装側の面と接続する部位から前記先端面と接続する部位に至るまで一つながりの略半円の円弧形状の面であり、前記円弧面における最も半導体素子搭載側の面に近い部位が、前記先端面における前記端面と接続する部位と同程度の高さ位置又は前記先端面における前記端面と接続する部位よりも前記半導体素子搭載側の面に近い位置にあることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のリードフレームおいては、前記半導体素子搭載部及び端子部の側面が、粗化処理により粗面化されているのが好ましい
【0011】
また、本発明のリードフレームおいては、前記半導体素子搭載部及び端子部の側面のうち少なくとも前記突起部を備えている箇所には、めっきが施されていないのが好ましい
【0012】
また、本発明のリードフレームおいては、前記粗面化されている側面は、平均粗さが0.12〜0.20μmであるのが好ましい
【0013】
また、本発明による半導体素子搭載用リードフレームの製造方法半導体素子搭載部及び端子部を有していて、該半導体素子搭載部及び端子部のうち少なくとも一方の側面に、半導体素子搭載側の面から該半導体素子搭載側とは反対側のはんだ実装側の面方向へ略垂直に延伸した端面と、前記はんだ実装側の面から前記半導体素子搭載側の面方向へ凸状に切除され凹状に形成された円弧面と、前記端面と前記円弧面とに接続する先端面とにより形成されてなる突起部を備えた半導体素子搭載用リードフレームの製造方法であって、リードフレーム用金属板の前記半導体素子搭載とは反対側の前記はんだ実装側の面における前記円弧面と接続する部位に対応する位置から所定の間隔を置いてエッチング速度制御用レジストパターンを配置することにより、エッチング速度を制御するようにして、前記半導体素子搭載側の面から前記はんだ実装側の方向へ略垂直に延伸した端面と、前記はんだ実装側のから前記半導体素子搭載側の凸状に切除ることにより凹状に形成される円弧面と、前記端面と前記円弧面とに接続する先端面とによりる突起部を形成して、該突起部の前記先端は、略平面あるいは円弧状をなすとともに肉厚となるように形成し、前記突起部が、前記先端面の前記端面と接続する部位における前記端面の前記半導体素子搭載側の根元部からへの突出長さが、10μm以内、厚さが50μm以上であり、前記先端面における前記円弧面と接続する部位が、前記先端面における前記端面と接続する部位よりも前記はんだ実装側の面に近い位置にあり、且つ、前記円弧面は、前記はんだ実装側の面と接続する部位から前記先端面と接続する部位に至るまで一つながりの略半円の円弧形状の面であり、前記円弧面における最も半導体素子搭載側の面に近い部位が、前記先端面における前記端面と接続する部位と同程度の高さ位置又は前記先端面における前記端面と接続する部位よりも前記半導体素子搭載側の面に近い位置にあるようにしたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明半導体素子搭載用リードフレームの製造方法においては前記エッチング速度制御用レストパターンを、前記はんだ実装側の面における前記円弧面と接続する部位に対応する位置から板厚の45〜50%間隔をおいて、板厚の42.5〜47.5%の幅で配置するのが好ましい
【0015】
また、本発明半導体素子搭載用リードフレームの製造方法においては、金属板の面に、一方の面側において半導体素子搭載部と半導体素子と接続される端子部を、他方の面側においてはんだ実装端子部をそれぞれ形成するため開口しためっきレジストパターンを形成する工程と、形成しためっきレジストパターンから前記金属板の下地の金属が露出している部分に所定の厚さのめっきを施し、その後、前記めっきレジストパターンを剥離する工程と、前記金属板の他方の側の面への前記エッチング速度制御用レジストパターンの形成を含んで、前記金属板のにリードフレームパターン形成用エッチングレジストパターンを形成して、前記突起部を含むリードフレームパターンをエッチングにて形成し、その後、前記エッチング速度制御用レジストパターンを含む前記リードフレームパターン形成用エッチングレジストパターンを剥離する工程とを備えるのが好ましい
【0016】
また、本発明の半導体素子搭載用リードフレームの製造方法おいては、めっきされる金属の種類は、Ag、Cu/Ag、Ni/Pd/Au、及びNi/Pd/Au/Agのいずれかであるのが好ましい
【0017】
また、本発明の半導体素子搭載用リードフレームの製造方法おいては前記突起部を含む前記リードフレームパターン形成のためのエッチング後に前記エッチング速度制御用レジストパターンを含む前記リードフレームパターン形成用エッチングレジストパターンを残した状態で、露出している前記金属板の側面を粗化液で処理することにより前記半導体素子搭載部及び前記端子部の側面に粗化面を形成するようにするのが好ましい
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、半導体素子搭載部及び端子部を備えた半導体素子搭載用リードフレームにおいて、半導体素子搭載部及び端子部のうち少なくとも一つの側面に、側面方向への突出長さが10μm以内といった、少ない突出長さの突起部形成されるので、端子間の電気絶縁性効果的に満足することができ、また、該突起部は、その先端が略平面状又は円弧状をなしているとともに厚さが50μm以上の肉厚に形成され且つ、先端面における円弧面と接続する部位が、先端面における端面と接続する部位よりもはんだ実装側の面に近い位置にあり、且つ、円弧面は、はんだ実装側の面と接続する部位から先端面と接続する部位に至るまで一つながりの略半円の円弧形状の面であり、円弧面における最も半導体素子搭載側の面に近い部位が、先端面における端面と接続する部位と同程度の高さ位置又は先端面における端面と接続する部位よりも半導体素子搭載側の面に近い位置にあるので、端子と封止樹脂との密着性が格段に向上した状態で端子と封止樹脂との密着性が確保でき、且つ、先端が樹脂封止後のクラックを防止できるとともに、エッチングコンディションに違いが生じても安定して突起部を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明による突起部の形成工程を説明するための要部拡大図である。
図2】突起部先端の形状及び大きさを説明するための要部拡大図である。
図3】本発明による突起部の形態を説明するための説明図である。
図4】本発明による突起部の形成工程を説明するための図1と同様の要部拡大図である。
図5】本発明による突起部の形状及び大きさを説明するための図4と同様の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明による半導体素子搭載用リードフレームは、その半導体素子搭載部及び端子部のうち少なくとも一つの側面に、突起部形成されていることを特徴とする。そして、本発明における突起部は、厚さが50μm以上の肉厚に形成され、該突起部の先端は、略平面状又は円弧状をし、先端面における円弧面と接続する部位が、先端面における端面と接続する部位よりもはんだ実装側の面に近い位置にあり、且つ、円弧面は、はんだ実装側の面と接続する部位から先端面と接続する部位に至るまで一つながりの略半円の円弧形状の面であり、円弧面における最も半導体素子搭載側の面に近い部位が、先端面における端面と接続する部位と同程度の高さ位置又は先端面における端面と接続する部位よりも半導体素子搭載側の面に近い位置にあるように形成されている。更に、本発明における突起部の先端は、該突起部の略垂直方向に伸びた端面の根元よりも、その側面方向への突出長さが10μm以内に形成されている。また、本発明による半導体素子搭載用リードフレームのパターン形成工程は、アルカリ・酸処理を施したリードフレーム用金属板に感光性レジスト層を施し、突起物を形成するためのデザインを含むリードフレーム製造用マスクを用いて感光性レジスト層にデザインを露光・転写し、リードフレーム用金属板の面に半導体素子搭載部と端子部を形成する工程と、該リードフレーム用金属板にエッチングを施して、リードフレーム形状に形成するとともに、半導体素子搭載部と端子部のうち少なくとも一つの側面に、半導体素子搭載側の面から半導体素子搭載側とは反対側のはんだ実装側の面方向略垂直にた端面と、はんだ実装側の面から半導体素子搭載側面方向へ凹状にエッチングされた円弧面と、端面と円弧面とに接続する先端面とからなる突起部を形成する工程と、を有する。
【0021】
本発明による突起部を形成する方法として、例えば、半導体素子搭載部を含む形状側面周囲に突起部形成のためのごく細い幅のレジスト層を形成した状態でエッチングすることにより、該突起部形成のためのレジスト層を形成した部分のエッチングによる金属板の溶解時間を他の部位より遅らせて、他の部位の形状形成が完了した状態で、突起部を形成することを試みた。
【0022】
前記方法での突起部の形成にあたり、図1に示す如く、半導体素子搭載部を含む面にレジスト層2を形成すると共に、その裏側つまり樹脂封止後に露出する面側へ、ごく狭い幅のレジスト層3を形成てエッチングを行った結果、半導体素子搭載部の面から略垂直方向へ延伸した端面を有する突起部4を形成することができた。しかし、形成された突起部4の厚みは10〜15μmと非常に薄く、エッチングコンディションのわずかな違いでも形状の出来栄えが大きく変動して突起部が消失してしまい、突起部を維持することが困難であった。また、突起部4の先端形状が鋭利であり、樹脂封止後のクラックの起点となる虞が大きかった(図2及び図3参照)。
【0023】
これを回避するためには、突起部4の厚みをできるだけ持たせて、エッチングコンディションに違いが生じても、安定して突起部が形成される状態を作る必要があると考えた。その方法として、図4に示すように、樹脂封止後に露出する面側に形成したレジスト層3の幅Bと、レジスト層2とレジスト層3との間のレジスト層の形成されていない箇所の幅Aとを制御することを試みた。その結果、樹脂封止後に露出する面側に形成したレジスト層3の幅Bを90μmとし、レジスト層2とレジスト層3との間のレジスト層の形成されていない箇所の幅Aを95μmとしたときに、厚みが50μmであり、先端面における円弧面と接続する部位が、先端面における端面と接続する部位よりもはんだ実装側の面に近い位置にあり、且つ、円弧面は、はんだ実装側の面と接続する部位から先端面と接続する部位に至るまで一つながりの略半円の円弧形状の面であり、円弧面における最も半導体素子搭載側の面に近い部位が、先端面における端面と接続する部位と同程度の高さ位置又は先端面における端面と接続する部位よりも半導体素子搭載側の面に近い位置にある突起部4を安定して形成できることが分かった。
【0024】
また、上記のように、幅Bを90μmとし幅Aを95μmとしたときは、突起部4の先端部の形状についても、鋭利な形状ではなく略平面状又は丸みを帯びた形状に形成できることが分かった。これにより、樹脂封止後の突起部4の先端からの樹脂クラックの発生も抑止され得ることが確認された。
【0025】
以上、突起部4は、半導体素子搭載部の一側面に形成されるものとして説明したが、この突起部4は、半導体素子搭載部の両側面に形成してもよい。また、端子部の一側面に形成してもよいし、端子部の両側面に形成してもよい。また、突起部4の側面方向への突出長さは、10μm以内、厚さが50μm以上であり、先端面における円弧面と接続する部位が、先端面における端面と接続する部位よりもはんだ実装側の面に近い位置にあり、且つ、円弧面は、はんだ実装側の面と接続する部位から先端面と接続する部位に至るまで一つながりの略半円の円弧形状の面であり、円弧面における最も半導体素子搭載側の面に近い部位が、先端面における端面と接続する部位と同程度の高さ位置又は先端面における端面と接続する部位よりも半導体素子搭載側の面に近い位置にある。
【実施例1】
【0026】
本実施例を、図4,5を用いて説明する。リードフレーム用金属板1として、厚さ0.2mm、幅180mmの帯状銅材(株式会社神戸製鋼所製:KLF−194)を用い、この金属板の両面に、厚さ20μmの感光性レジスト層(旭化成イーマテリアルズ株式会社製:ネガ型感光性レジストAQ−2058)を形成した。そして、突起部4を形成するため、樹脂封止後露出する面側に幅B:90μmのエッチングレジストパターン層を形成するためのパターン(図4参照)を含むリードフレーム用デザインを施したガラスマスク(コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社製:HY2−50P)を用い、感光性レジスト層を施した金属板1の両面を露光し、突起部4を形成するためのエッチングレジストパターンを含むリードフレームエッチングレジストパターン層を形成した。このとき、樹脂封止後露出する面側において、リードフレーム形成用のエッチングレジスト層2と突起部4を形成するためのエッチングレジスト層3との間の開口幅A:95μmとした(図4参照)。
【0027】
そして、突起部形成用のパターンを含むエッチングレジストパターン層を形成した金属板1を塩化第二鉄溶液にてエッチングし、金属板1の樹脂封止後露出する面へ施した突起部形成のためのごく細いエッチングレジスト層3により、その部分のエッチング進行を遅らせ、突出長さ0μm、高さ90μm、厚さ50μm、先端面における円弧面と接続する部位が、先端面における端面と接続する部位よりもはんだ実装側の面に近い位置にあり、且つ、円弧面は、はんだ実装側の面と接続する部位から先端面と接続する部位に至るまで一つながりの略半円の円弧形状の面であり、円弧面における最も半導体素子搭載側の面に近い部位が、先端面における端面と接続する部位と同程度の高さ位置又は先端面における端面と接続する部位よりも半導体素子搭載側の面に近い位置にある突起部4を含むリードフレーム形状を形成し、その後、エッチングレジスト層を剥離して帯状の銅材リードフレームを得た(図5写真参照)。その後、帯状のままごく薄い金属めっきを施した。その後、短冊状にカットし、封止樹脂止め用の樹脂テープを貼り付け、完成されたリードフレーム製品とした。
【実施例2】
【0028】
次に、図4及び図5を用いて、実施例2の説明をする。本実施例は、実施例1と同じ形状の突起部4を有するリードフレームであるが、エッチング後にレジストパターン層の剥離をする前に、粗面化処理を施し、その後にレジストパターン層を剥離してめっき処理を施した点で実施例1と異なる。
【0029】
リードフレーム用金属板1として、厚さ0.2mm、幅180mmの帯状銅材(株式会社神戸製鋼所製:KLF−194)を用い、この金属板の両面に、厚さ20μmの感光性レジスト層(旭化成イーマテリアルズ株式会社製:ネガ型感光性レジストAQ−2058)を形成した。そして、突起部4を形成するため、樹脂封止後露出する面側に幅B:90μmのエッチングレジストパターン層を形成するためのパターン(図4参照)を含むリードフレーム用デザインを施したガラスマスク(コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社製:HY2−50P)を用い、感光性レジスト層を施した金属板1の両面を露光し、突起部4を形成するためのエッチングレジストパターンを含むリードフレームエッチングレジストパターン層を形成した。このとき、樹脂封止後露出する面側において、リードフレーム形成用のエッチングレジスト層2と突起部4を形成するためのエッチングレジスト層3との間の開口幅A:95μmとした(図4参照)。
【0030】
そして、突起部形成用のパターンを含むエッチングレジストパターン層を形成した金属板1を塩化第二鉄溶液にてエッチングし、金属板1の樹脂封止後露出する面へ施した突起部形成のためのごく細いエッチングレジスト層3により、その部分のエッチング進行を遅らせ、突出長さ0μm、高さ90μm、厚さ50μm、先端面における円弧面と接続する部位が、先端面における端面と接続する部位よりもはんだ実装側の面に近い位置にあり、且つ、円弧面は、はんだ実装側の面と接続する部位から先端面と接続する部位に至るまで一つながりの略半円の円弧形状の面であり、円弧面における最も半導体素子搭載側の面に近い部位が、先端面における端面と接続する部位と同程度の高さ位置又は先端面における端面と接続する部位よりも半導体素子搭載側の面に近い位置にある突起部4を含むリードフレーム形状を形成した(図5写真参照)。その後、エッチングレジストパターン層を剥離せずに、帯状のリードフレームを、有機酸系又は過酸化水素−硫酸系の粗化液を用いて、突起部を含むエッチングレジストパターン層により保護されない部位の表面を平均粗さ(Ra)が0.12〜0.20μmとなるように粗面化して、より樹脂密着性を向上させたリードフレームとした。その後、エッチングレジストパターン層を剥離して、帯状のまま薄い金属めっきを施した。その後、短冊状にカットし、封止樹脂止め用の樹脂テープを貼り付け、完成されたリードフレーム製品とした。
【実施例3】
【0031】
次に、図4及び図5を用いて、実施例3の説明をする。本実施例は、実施例1と同じ形状の突起部4を有するリードフレームであるが、エッチング前にめっきレジストパターン層を形成し、半導体素子搭載部と端子部にめっきを施し、その後めっきレジストを剥離した後、エチッングレジストパッターン層を形成してエッチングすることによりリードフレームパターンを形成し、エッチングレジストパタン層を剥離する前に粗面化処理を施し、その後にエッチングレジストパターン層を剥離するようにした点で実施例1とは異なる。
【0032】
リードフレーム用金属板1として、厚さ0.2mm、幅180mmの帯状銅材(株式会社神戸製鋼所製:KLF−194)を用い、この金属板の両面に、厚さ20μmの感光性レジスト層(旭化成イーマテリアルズ株式会社製:ネガ型感光性レジストAQ−2058)を形成した。そして、めっきレジスト層を形成するため、リードフレームに施すめっき部位のパターンを有するガラスマスクをパターン位置合わせした状態で金属板1の表裏面上に被せて、この両面をガラスマスクを介して紫外線にて露光した。露光後にガラスマスクを外し、感光性レジスト層付金属板を現像液に浸漬して現像すると、紫外線が遮光された部分すなわち半導体素子搭載部及び端子部などめっきを施す部分の感光性レジスト層のみが除去されためっきレジスト層が得られる。
【0033】
次に、めっきレジスト層が形成された金属板1をめっき槽へ入れて、該金属板1の金属が露出した部分へAgめっきを3μm厚となるように施した。その後、めっきレジスト層を剥離することにより、めっき層付金属板が得られる。なお、この場合、めっきの種類については、上記のAgめっきに限定されるものではなく、例えばNi/Pd/Auなど、一般的にリードフレームに適用可能ないかなる種類の金属であっても良く、また、いかなるめっき構成であっても良い。
【0034】
次に、金属板1の表裏面全体に再度感光性レジスト層を形成した。そして、突起部4を形成するため、樹脂封止後露出する面側に幅B:90μmのエッチングレジストパターン層を形成するためのパターン(図4参照)を含むリードフレーム用デザインを施したガラスマスク(コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社製:HY2−50P)を用い、感光性レジスト層を施した金属板1の両面を露光し、突起部4を形成するためのエッチングレジストパターンを含むリードフレームエッチングレジストパターン層を形成した。このとき、樹脂封止後露出する面側において、リードフレーム形成用のエッチングレジスト層2と突起部4を形成するためのエッチングレジスト層3との間の開口幅A:95μmとした(図4参照)。なお、このガラスマスクのパターンは、上記のめっきを施された部位よりも外形が50μm大きく、得られたリードフレームエッチングレジストパターン層はめっきの施された領域を完全に覆うことができる。
【0035】
そして、突起部形成用のパターンを含むエッチングレジストパターン層を形成した金属板1を塩化第二鉄溶液にてエッチングし、金属板1の樹脂封止後露出する面へ施した突起部形成のためのごく細いエッチングレジスト層3により、その部分のエッチング進行を遅らせ、突出長さ0μm、高さ90μm、厚さ50μm、先端面における円弧面と接続する部位が、先端面における端面と接続する部位よりもはんだ実装側の面に近い位置にあり、且つ、円弧面は、はんだ実装側の面と接続する部位から先端面と接続する部位に至るまで一つながりの略半円の円弧形状の面であり、円弧面における最も半導体素子搭載側の面に近い部位が、先端面における端面と接続する部位と同程度の高さ位置又は先端面における端面と接続する部位よりも半導体素子搭載側の面に近い位置にある突起部4を含むリードフレーム形状を形成した(図5写真参照)。その後、エッチングレジストパターン層を剥離せず残したまま、帯状のリードフレームを、有機酸系又は過酸化水素−硫酸系の粗化液を用いて、突起部を含むエッチングレジストパターン層により保護されない部位の表面を平均粗さ(Ra)が0.12〜0.20μmとなるように粗面化した。その後、エッチングレジストパターン層を剥離して、表面が樹脂密着性を向上させた粗面となっているモールドロック用の側面突起部を有するリードフレームを得た。
【比較例】
【0036】
リードフレーム用金属板1として、厚さ0.2mm、幅180mmの帯状銅材(株式会社神戸製鋼所製:KLF−194)を用い、この金属板の両面に、厚さ20μmの感光性レジスト層(旭化成イーマテリアルズ株式会社製:ネガ型感光性レジストAQ−2058)を形成した。そして、突起部4を形成するため、樹脂封止後露出する面側に幅B:110μmのエッチングレジストパターン層を形成するためのパターン(図4参照)を含むリードフレーム用デザインを施したガラスマスク(コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社製:HY2−50P)を用い、感光性レジスト層を施した金属板1の両面を露光し、突起部4を形成するためのエッチングレジストパターンを含むリードフレームエッチングレジストパターン層を形成した。このとき、樹脂封止後露出する面側において、リードフレーム形成用のエッチングレジスト層2と突起部4を形成するためのエッチングレジスト層3との間の開口幅A:125μmとした(図4参照)。
【0037】
そして、突起部形成用のパターンを含むエッチングレジストパターン層を形成した金属板1を塩化第二鉄溶液にてエッチングし、金属板1の樹脂封止後露出する面へ施した突起部形成のためのごく細いエッチングレジスト層3により、その部分のエッチング進行を遅らせ、突起部4を含むリードフレームを製造した。しかし、形成された突起部4の厚さは15μmと薄く、また部分的に突起部が変形・消失しているところもある上に先端形状も鋭利であり、樹脂封止後の密着力不足および樹脂クラックの起点となる可能性の大きい形状のものであった(図2参照)。
【符号の説明】
【0038】
1 リードフレーム用金属板
2 レジスト
3 レジスト(突起部形成用)
4 形成された突起部
図1
図2
図3
図4
図5