特許第6362112号(P6362112)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362112
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】薬剤手撒き装置
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/00 20060101AFI20180712BHJP
【FI】
   A61J3/00 310F
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-135703(P2015-135703)
(22)【出願日】2015年7月6日
(65)【公開番号】特開2017-12696(P2017-12696A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2017年8月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151472
【氏名又は名称】株式会社トーショー
(74)【代理人】
【識別番号】100106345
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 香
(72)【発明者】
【氏名】大村 義人
【審査官】 佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−151399(JP,A)
【文献】 特開2010−11986(JP,A)
【文献】 特開2014−128740(JP,A)
【文献】 特表2014−526289(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/010216(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多行多列に並んだ多数のマスを具備した予備撒きカセットより列数の多い多行多列に並んだ多数の区画室を具備していて前記予備撒きカセットから一括して薬剤を受け取る多列コンベアと、その行数より個数の多い一列に並んだ多数の区画室を具備していて前記多列コンベアから一列分ずつ薬剤を受け取る単列コンベアとを備えた薬剤手撒き装置において、前記区画室がコンベア進行方向に分割も合体も可能な前後の分割体を具備したものであり、縦面内のコンベア送りによって前記区画室が薬剤排出位置に来ると前記分割体が前後に割れ、縦面内のコンベア送りによって前記区画室が薬剤排出位置を過ぎてから薬剤受取位置に来るまでの間に前記分割体が合わさるようになっていることを特徴とする薬剤手撒き装置。
【請求項2】
多行多列に並んだ多数のマスを具備した予備撒きカセットより行数の多い多行多列に並んだ多数の区画室を具備していて前記予備撒きカセットから一括して薬剤を受け取る多列コンベアを備えた薬剤手撒き装置において、前記区画室がコンベア進行方向に分割も合体も可能な前後の分割体を具備したものであり、縦面内のコンベア送りによって前記区画室が薬剤排出位置に来ると前記分割体が前後に割れ、縦面内のコンベア送りによって前記区画室が薬剤排出位置を過ぎてから薬剤受取位置に来るまでの間に前記分割体が前後に合わさるようになっていることを特徴とする薬剤手撒き装置。
【請求項3】
前記分割体のうち前側のものである前方分割体よりも側方に出ている当接部が、前記分割体のうち後ろ側のものである後方分割体に形成されており、薬剤排出位置に来た前記区画室の後方分割体の当接部が当接する被当接部材が、コンベア送りの対象外の所に装備されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された薬剤手撒き装置。
【請求項4】
縦面内のコンベア送りによって前記区画室が複数個直線状に並ぶと、前側の区画室の後方分割体が後ろ側の区画室によって前方へ押されて、前側の区画室における前後の分割体が合体するようになっていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載された薬剤手撒き装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、多数のマスが縦横に即ち多行多列に並んで形成された予備撒きカセットから一括して薬剤を受け取る作動部(作動部材)を具えた薬剤手撒き装置に関し、詳しくは、作動部が多列コンベアを具えており、多列コンベアが多行多列の区画室を具えている薬剤手撒き装置に関する。
なお、マスと区画室は、何れも薬剤を区分収容するものであり、ほぼ同義語・類義語と言えるが、本願では、予備撒きカセットの区分収容体をマスと呼び、作動部のコンベアの区分収容体を区画室と呼んで、呼び分ける。
【背景技術】
【0002】
薬剤分包機に組み込まれる薬剤手撒き装置は(例えば特許文献1〜6参照)、多行多列に並んだ多数のマスを具備した予備撒きカセットと、それより列数の多い多行多列に並んだ多数の区画室を具備していて前記予備撒きカセットから一括して薬剤を受け取る多列コンベアと、その行数より個数の多い一列に並んだ多数の区画室を具備していて前記多列コンベアから一列分ずつ薬剤を受け取る単列コンベアとを備えている。
それらの単列コンベアと多列コンベアとが、各区画室単位ひいては各マス単位で薬剤を逐次排出する作動部を成しており、その駆動が専用や兼用の手段にて制御される。
【0003】
予備撒きカセットは、薬剤分包機への組み込みに際して分包機筐体から引出可能に及び/又は着脱可能に装備されるものであり、筐体から引き出した状態や抜き取った状態で各マスへの薬剤投入すなわち予備撒きが人手や代行装置によって行われる。
予備撒き済みの予備撒きカセットは、使用時に薬剤分包機にセットされて多列コンベアの上方に位置し、その状態で開操作がなされると、各マスの底を一斉に開いて、各マス内の薬剤をそれぞれ直下の多列コンベアの区画室へ投下する。
これにより、手撒き時の区分状態を維持したまま薬剤が予備撒きカセットから作動部の多列コンベアへ移し替えられる。
【0004】
多列コンベアと単列コンベアは、列数と向きは異なるが、何れも、縦面内(鉛直面内)を循環するベルト(コンベア)の外周面に多数の区画室(区画部材,区分収容体)を上記の縦面内で揺動しうる状態で列設したものであり、循環運動によってベルトの上側に来ている区画室に薬剤を受け入れ、その後の循環運動によってベルトの一端部で下向きになった区画室から薬剤を落下させ、その後の循環運動によってベルトの下側を移動させて区画室をベルトの他端部へ送り更にベルトの上側へ戻すようになっている。
このように縦面内でコンベア及び区画室列を循環移動させる作動部では、区画室は薬剤の受入と放出を同じ開口から行う。
【0005】
そして、多列コンベアを一区画分だけ循環運動させると、手撒き時の区分状態を維持したまま、多列コンベアから一列分の薬剤が単列コンベアへ移し替えられ、さらに単列コンベアを一区画分だけ循環運動させると、やはり手撒き時の区分状態を維持したまま、先ほど移された一列分の薬剤のうちから一区画室分の薬剤が落下排出される。
このような動作が繰り返されることにより、薬剤が、作動部から一区画室分ずつ排出されるので、予備撒きカセットの各マス単位で且つ手撒き時の区分を反映する形で、薬剤分包機での分包に供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−80103号公報
【特許文献2】特開2007−209600号公報
【特許文献3】特開2007−297066号公報
【特許文献4】特開2010−005225号公報
【特許文献5】特開2010−011986号公報
【特許文献6】特開2010−013145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような従来の薬剤手撒き装置では、作動部の区画室が、それが多列コンベアの区画室であれ単列コンベアの区画室であれ、コンベア端部でのベルト折り返しに伴って薬剤排出時に上向きから下向きへ傾動・揺動することで重力だけでなく遠心力や振動の作用も利用して薬剤を開口から放出するようになっている(例えば特許文献1,4〜6参照)。
また、そのような薬剤の放出を円滑かつ確実に行なわせるために、各区画室について、開口を内底より広くしたり、内側面に縦線状突起を形成したり、内底面に微小突起を形成するといった、更なる改良もなされている(例えば特許文献4〜6参照)。
【0008】
しかしながら、一部の薬剤では、例えば錠剤を裁断した半錠の薬剤などでは、破断面の存在に起因して区画室の内面との当接態様が一様でなく多様なため、時には上述の対策でも効果が足りなくて円滑には放出されず、放出に時間を要することがある。
区画室からの薬剤放出の時間が長くなるのは稀とは言え、その発現時期を予測できないので、薬剤排出を確実に行わせるには、最長排出時間に合わせて作動部全体の動作サイクルを常に長くしておくことが必要になるため、分包処理の能率が低下する。
そこで、区画室から薬剤をより円滑かつ確実に放出する薬剤手撒き装置を実現することが技術課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の薬剤手撒き装置は(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであるが、作動部に多列コンベアと単列コンベアとが含まれている従来の薬剤手撒き装置をベースにしており、次のようになっている。
多行多列に並んだ多数のマスを具備した予備撒きカセットより列数の多い多行多列に並んだ多数の区画室を具備していて前記予備撒きカセットから一括して薬剤を受け取る多列コンベアと、その行数より個数の多い一列に並んだ多数の区画室を具備していて前記多列コンベアから一列分ずつ薬剤を受け取る単列コンベアとを備えた薬剤手撒き装置において、前記区画室がコンベア進行方向に分割も合体も可能な前後の分割体を具備したものであり、縦面内のコンベア送りによって前記区画室が薬剤排出位置に来ると前記分割体が前後に割れ、縦面内のコンベア送りによって前記区画室が薬剤排出位置を過ぎてから薬剤受取位置に来るまでの間に前記分割体が合わさるようになっていることを特徴とする。
ここで、行と列は交差する2方向それぞれにおける並びであるが、どの並びが行に該当するのか列に該当するのかは相対的なものであり、2方向のうち何れか一方向の並びを行に該当するとすれば他方向の並びが列に該当することとなる。
【0010】
また、本発明の薬剤手撒き装置は(解決手段2)、やはり上述した課題を解決するために創案されたものであるが、作動部から単列コンベアを省いて多列コンベアを残した構成の薬剤手撒き装置に係り、次のようになっている。
多行多列に並んだ多数のマスを具備した予備撒きカセットより行数の多い多行多列に並んだ多数の区画室を具備していて前記予備撒きカセットから一括して薬剤を受け取る多列コンベアを備えた薬剤手撒き装置において、前記区画室がコンベア進行方向に分割も合体も可能な前後の分割体を具備したものであり、縦面内のコンベア送りによって前記区画室が薬剤排出位置に来ると前記分割体が前後に割れ、縦面内のコンベア送りによって前記区画室が薬剤排出位置を過ぎてから薬剤受取位置に来るまでの間に前記分割体が前後に合わさるようになっていることを特徴とする。
ここでも、行と列との関係は上述したものと同じである。
【0011】
さらに、本発明の薬剤手撒き装置は(解決手段3)、上記解決手段1,2の薬剤手撒き装置であって、前記分割体のうち前側のものである前方分割体よりも側方に出ている当接部が、前記分割体のうち後ろ側のものである後方分割体に形成されており、薬剤排出位置に来た前記区画室の後方分割体の当接部が当接する被当接部材が、コンベア送りの対象外の所に装備されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の薬剤手撒き装置は(解決手段4)、上記解決手段1〜3の薬剤手撒き装置であって、縦面内のコンベア送りによって前記区画室が複数個直線状に並ぶと、前側の区画室の後方分割体が後ろ側の区画室によって前方へ押されて、前側の区画室における前後の分割体が合体するようになっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
このような本発明の薬剤手撒き装置にあっては(解決手段1,2)、区画室が既述したように薬剤の受入口と放出口を兼ねる開口を有するものであって縦面内でのコンベア送りによって縦面内で循環移動するものであるところ、そのような区画室を、コンベア送りされて循環移動する区画室をコンベア進行方向における前後に分割するとともに、その前後の分割体を分割も合体も可能なように構成したうえで、コンベア送りによって区画室が薬剤排出位置に来ると分割体が前後に割れ、コンベア送りによって区画室が薬剤排出位置を過ぎてから薬剤受取位置に来るまでの間に分割体が合わさるようにしたことにより、区画室が、薬剤受取位置では従来通り上面開口の箱体となって不都合なく予備撒きカセットのマスから落下薬剤を受け取り、薬剤排出位置では、前後の分割体の割れによって開口を大きく広げるとともに付随的に軽い衝撃や振動も生じる。そのため、区画室の開口が一定だったときよりも円滑かつ確実に、薬剤が区画室の開口から放出されることとなる。
したがって、この発明によれば、区画室から薬剤をより円滑かつ確実に放出する薬剤手撒き装置を実現することができる。
【0014】
また、本発明の薬剤手撒き装置にあっては(解決手段3)、コンベア送りされる区画室のうち後方分割体に当接部を形成しておくとともに、コンベア送りされない支持部材などに被当接部材を装備させて、コンベア送りにより区画室が薬剤排出位置に来るとその前方分割体は被当接部材に当接せず後方分割体の当接部が被当接部材に当接するようにしたことにより、前方分割体がコンベア送りで前進するときに後方分割体が当接にて一時停止することから、区画室の前後分割がコンベア送りに随伴して行われるので、区画室の前後分割のために駆動機構や制御手段を設けるまでもなく簡便に、薬剤排出位置に来た区画室の分割体を前後に割ることができる。
したがって、この発明によれば、区画室から薬剤をより円滑かつ確実に放出する薬剤手撒き装置を簡便に実現することができる。
【0015】
さらに、本発明の薬剤手撒き装置にあっては(解決手段4)、縦面内のコンベア送りによって区画室が複数個直線状に並ぶと前側の区画室の後方分割体が後ろ側の区画室によって前方へ押されて前側の区画室における前後の分割体が合体するようにしたことにより、区画室の前後の分割体の合体がコンベア送りに随伴して行われるので、区画室の合体のために駆動機構や制御手段を設けるまでもなく簡便に、割れた区画室を合わせることができる。しかも、それは、多数の区画室をコンベアに列設する際にコンベアの直線部分で前後の区画室が押し合う程度に密に区画室を並べるといったことで簡便に具現化される。
したがって、この発明によれば、区画室から薬剤をより円滑かつ確実に放出する薬剤手撒き装置を簡便に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例1について、薬剤手撒き装置の構造を示し、(a)が薬剤手撒き装置を装備した薬剤分包機の正面図(B矢視)、(b)がその薬剤分包機の右側面図(矢印Aの逆向き視)、(c)が薬剤手撒き装置の要部の正面図(B矢視)、(d)が単列コンベアの要部の左側面図(A矢視)、(e)が合体している区画室の斜視図、(f)が前後に割れている区画室の斜視図である。
図2】薬剤手撒き装置の動作状態を時系列で示しており、(a)〜(f)何れも一コンベア(多列コンベア内の一コンベア又は単列コンベア)のうち薬剤排出位置近傍部分の模式図である。
図3】本発明の実施例2について、薬剤手撒き装置の構造を示し、(a)が薬剤手撒き装置の要部の左側面図(A矢視)、(b)がその平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
このような本発明の薬剤手撒き装置について、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1〜2により説明する。
図1〜2に示した実施例1は、上述した解決手段1,3,4(出願当初の請求項1,3,4)を具現化したものであり、図3に示した実施例2は、上述した解決手段2〜4(出願当初の請求項2〜4)を具現化したものである。
なお、それらの図示に際しては、簡明化等のため、ベース・フレーム等の静止支持部材や,引出レール等の可動支持部材,ボルト等の締結具,電動モータ等の駆動源,ギヤ・タイミングベルト等の伝動部材,モータドライバ等の電気回路,コントローラ等の電子回路などは図示を割愛し、発明の説明に必要なものや関連するものを中心に図示した。
【実施例1】
【0018】
本発明の薬剤手撒き装置の実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1は、(a)が薬剤手撒き装置20を装備した薬剤分包機10の正面図(B矢視)、(b)がその薬剤分包機10の右側面図(矢印Aの逆向き視)、(c)が多列コンベア40と単列コンベア50とを具備した薬剤手撒き装置20の要部の正面図(B矢視)、(d)が単列コンベア50の要部の左側面図(A矢視)、(e)が合体している区画室60の斜視図、(f)が前後に割れている区画室60*の斜視図である。
【0019】
なお、図1では、合体状態の区画室には単に符号「60」を付し、前後に割れている区画室には「*」付きの符号「60*」を付している。
また、図2(a)は、多列コンベア40における各列のコンベア或いは単列コンベア50のうち薬剤排出位置の近傍に来ている部分の模式図である。
【0020】
薬剤分包機10は(図1(a),(b)参照)、ここでは錠剤分包機を図示したが、その概要を説明すると、筐体11の上段部の引出体の棚に着脱自在に設置された多数の錠剤フィーダから排出された薬剤と、薬剤手撒き装置20から排出された薬剤とを、何れもホッパ13(薬剤収集機構)にて収集し、更に筐体11の下段部の包装機12に送り込んで、分包紙に区分包装させることで、分包するようになっている。
【0021】
薬剤手撒き装置20は、そのような薬剤分包機10の筐体11の中段部に内装されており、薬剤を手撒きするときには、薬剤手撒き装置20のうち後述する上段の予備撒きカセット30を筐体11の前面から引き出すことができる。また、手撒き終了後は押し戻し操作やスイッチ操作にて予備撒きカセット30を筐体11の中に収納し、その状態で、薬剤分包機10の分包動作に連動して薬剤をホッパ13へ逐次排出するようになっている。
この薬剤手撒き装置20は(図1(c),(d)参照)、先に言及した上段の予備撒きカセット30と、以下に述べる中段の多列コンベア40(コンベヤー)と、下段の単列コンベア50(コンベヤー)とを具えている(例えば特許文献1〜6参照)。
【0022】
予備撒きカセット30は、多数のマス(区分収容体)33,33…を具備したカセット枠と図示しない引出部材とシャッタ作動部材とモータ等を具えており、カセット枠は引出部材によって支持されて筐体11の前面パネルの開口から前方(矢印Bの反対方向)へ引き出し可能になっており、図示しないスイッチ操作に応じてモータが作動することによってカセットが筐体11から出入りするようになっている。多数のマス33,33…は、何れも薬剤投入のため上面が解放されており、何れも底面が両開きや片開きのシャッタを装備していて、シャッタ作動部材によって全マス同時に開閉されるようになっており、多行多列に例えば前後方向(矢印B方向)6行・左右方向(矢印A方向)11列に並んだ状態でカセット枠に取り付けられている(例えば特許文献1〜6参照)。
【0023】
多列コンベア40は、収納状態の予備撒きカセット30の直下に位置して筐体11に内蔵されており、複数の無端ベルト(コンベア)24,24…と、複数の区画室60,60…と、図示しないモータ及び伝動機構とを具えている(例えば特許文献1〜6参照)。無端ベルト24は、何れも、可撓性・弾性に富んだ合成ゴムや軟質プラスチック等から作られ、左右に配された支軸に掛け回して張設されて、モータの作動によって縦面内で循環動作するようになっている。また、多列コンベア40は、予備撒きカセット30の直下に来ている複数の区画室60,60…それぞれに予備撒きカセット30の各マス33から一括して薬剤を受け取るために、区画室60の行数(前後方向・矢印B方向における並び数)はマス33の行数と同じであるが、区画室60の列数(左右方向・矢印A方向における並び数)は無端ベルト24の上側部分だけでもマス33の列数と同じか多くなっている。
【0024】
単列コンベア50は、多列コンベア40の一端(図では左端)の直下に位置して筐体11に内蔵されており、一本の無端ベルト(コンベア)24と、複数の区画室60,60…と、図示しないモータ及び伝動機構とを具えている(例えば特許文献1〜6参照)。無端ベルト24は、やはり可撓性・弾性に富んだ合成ゴムや軟質プラスチック等から作られ、前後に配された短い支軸に掛け回して張設されて、電動モータの作動によって縦面内で循環動作するようになっている。単列コンベア50が複数の区画室60,60…に多列コンベア40から左端の一列分ずつ薬剤を受け取るために、単列コンベア50における複数の区画室60,60…の並びは一列であるが、その個数は、無端ベルト41の上側部分だけでも、多列コンベア40において多行多列に配置された区画室60,60…の各列における区画室60の個数すなわち行数と同じかそれより多くなっている。
【0025】
区画室60は(図1(c)〜(f)参照)、多列コンベア40のものも、単列コンベア50のものも、一面全体が解放されて開口になっており他の五面に板体が配されている角箱状の区分収容体であり、平面視・開口視でマス33とほぼ同じ面積を占有している。開口は、マス33から落下した薬剤の受け入れに用いられるとともに、受け入れて収容した薬剤の排出・放出にも兼用されるので、一面だけであり、区画室60は薬剤の円滑な出し入れのために開口面が内底面より少し広くなっている。区画室60の底部には取付部64が形成されており、その取付部64を直に或いは揺動軸ピン等を介在させて無端ベルト24の外周面に係着させることで、区画室60が無端ベルト24にコンベア送り可能な植設状態で取り付けられる。
【0026】
無端ベルト24が上述したように縦面内(鉛直面内)で循環動作するものであり、そのような無端ベルト24の外周面に複数の区画室60,60…が各区画室の幅とほぼ同じピッチで列設されているため、複数の区画室60,60…は、無端ベルト24の循環動作によって縦面内のコンベア送りがなされ、無端ベルト24の上側の直進部分では、開口を上にして直線状に而も密に並び、無端ベルト24の下側の直進部分では、開口を下にして直線状に而も密に並び、無端ベルト24の転回部分では、他の区画室60から離れるとともに、開口を外側にしてUターンするものとなる(例えば特許文献4〜6参照)。
【0027】
また(図1(e),(f)参照)、区画室60は、無端ベルト24のコンベア進行方向において前後に位置する前方分割体61と後方分割体62とを具備したものであり、それら前後の分割体61,62は、底部を連結部63に連結されていて、連結部63を中心にして揺動することで分割も合体も可能になっており、前後の分割体61,62が合わさると区画室60が箱状になり(図1(e)参照)、分割体61,62が前後に分かれると区画室60が割れて開き開口が広がるものとなっている(図1(f)参照)。
【0028】
さらに(図1(e),(f)参照)、区画室60は、後方分割体62に当接部65が形成されている。当接部65は、後方分割体62の側面に植設されたピン様の小さな突起物を例示したが、前方分割体61よりも側方に出ていれば良い。
被当接部材22は(図1(c),(d),図2(a)参照)、棒状のものの先端部だけを例示したが、コンベア送りの対象外であって常態では静止している基部や支持枠などに装着されており、無端ベルト24及び区画室60が前向き直進を終えて下向きに転回する所である薬剤排出位置に被当接部分を位置させている。そして、薬剤排出位置に区画室60がコンベア送りされて来ると、その区画室60の前方分割体61は素通りさせるが、後方分割体62の当接部65は当接させるようになっている。
【0029】
この実施例1の薬剤手撒き装置20及びそれを装備した薬剤分包機10について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。
図2は、薬剤手撒き装置20の要部の動作状態を時系列で示しており、図2(a)〜(f)は、何れも、多列コンベア40における各列のコンベア或いは単列コンベア50のうち薬剤排出位置の近傍に来ている部分の模式図である。なお、複数の区画室60,60…のうち個別に指摘したいものについては60a,60b,60cの符号を付している。
【0030】
このような薬剤手撒き装置20では、手撒きに先立って予備撒きカセット30が薬剤分包機10の筐体11から引き出され(図1(b)参照)、そのマス33に図示しない指示箋や表示に従って薬剤が手撒きされ、手撒き後は、予備撒きカセット30が筐体11の中に戻される。このとき、多列コンベア40も単列コンベア50も初期状態で停止しており、それらの区画室60は総て空になっている(図2(a)参照)。そして、薬剤収納状態の予備撒きカセット30から薬剤8が一括して多列コンベア40に移し替えられる。すなわち、多数のマス33,33…に区分けされた薬剤8,8…が、各マス33からその直下に一つずつ対応して位置する区画室60へ落下するので(図2(b)参照)、手撒き時の区分状態を維持したまま、無端ベルト24の上で即ち薬剤受取位置で開口を上に向けている複数の区画室60,60…に移し替えられる(図2(c)参照)。
【0031】
それから、薬剤分包機10の自動分包に連動して、多列コンベア40の区画室60,60…のうち薬剤排出位置に来た先頭の一列分の薬剤8,8…が単列コンベア50の区画室60,60…に区分状態を維持しながら移し替えられ、さらに単列コンベア50の複数の区画室60,60…のうち薬剤排出位置に来た先頭の一室分の薬剤8がホッパ13を介して包装機12に投入される。そして、一室分ずつ小分けした薬剤8の投入が繰り返されて、単列コンベア50が空になると、多列コンベア40から先頭一列分の薬剤が単列コンベア50に移し替えられ、一室分ずつ小分けした薬剤8の投入が再開される。
【0032】
こうして薬剤8が手撒き時の区分に従って自動で薬剤手撒き装置20から一区分ずつ分包に供されるが、その際に薬剤8が区画室60から排出される状況を詳述する。
無端ベルト24が駆動されて縦面内で循環運動を始めると(図2(d)参照)、その縦面内のコンベア送りによって複数の区画室60,60…が循環移動を始め、無端ベルト24の上側に並んでいる区画室60,60…のうち先頭の区画室60aが前進から下向きに傾動し始めるとともに、その下方で既に横向きか下斜めになっていた区画室60bが、そのうち少なくとも区画室60bの前方分割体61は、下向きになる。
【0033】
すると、無端ベルト24の上側部分と下側部分が張設によって直線状になっているうえ、区画室60,60…が直線状に並ぶと密接するように列設されていることから、区画室60bの前方分割体61によって、その前の区画室60cが、そのうち少なくとも区画室60cの後方分割体62は、後ろから前へ押されるため、区画室60cにおける前後の分割体61,62が無端ベルト24の下側で前後に合わさるので、区画室60が薬剤排出位置を過ぎてから薬剤受取位置に来るまでの間に前後の分割体61,62が前後に合わさって区画室60が薬剤受取可能な一面解放箱体に戻る。
【0034】
それから、無端ベルト24による縦面内のコンベア送りが進んで、区画室60aが薬剤排出位置まで傾動して横向きかそれに近い傾斜状態になると(図2(e)参照)、区画室60aの当接部65が被当接部材22に当接して移動を妨げられる。そのため、更なる縦面内のコンベア送りによって(図2(f)参照)、区画室60aが薬剤排出位置を更に傾動すると、区画室60aは、前方分割体61だけが傾動し後方分割体62が傾動を止められるので、前後の分割体61,62の開口側が離れる。
【0035】
こうして、区画室60aの分割体61,62が前後に割れて、区画室60の開口が一気に広がるとともに、区画室60の前方分割体61が斜め下向きになるので、区画室60aに収容されていた薬剤8,8…が円滑かつ確実に放出される。
そして、無端ベルト24による縦面内のコンベア送りが区画室60,60…列設ピッチで1ピッチ分だけ完了する前に、区画室60aでは、前方分割体61の転回の進行に伴う連結部63の進行によって後方分割体62の当接部65が被当接部材22から外れるので、上述した1ピッチ分のコンベア送り完了時には、後続の区画室60から薬剤8,8…を排出する態勢が整う(図2(c)参照)。
【実施例2】
【0036】
本発明の薬剤手撒き装置の実施例2について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図3は、(a)が薬剤手撒き装置70の要部の左側面図(A矢視)、(b)が薬剤手撒き装置70の要部の平面図である。ここでも、合体している区画室には単に符号「60」を付し、前後に割れている区画室には*付きの符号「60*」を付している。
【0037】
この薬剤手撒き装置70が上述した実施例1の薬剤手撒き装置20と相違するのは、予備撒きカセット30が予備撒きカセット71になった点と、多列コンベア40が多列コンベア72になった点と、単列コンベア50が省かれた点である。
予備撒きカセット71は、基本的に多列コンベア40の構成を踏襲しているが、予備撒きカセット30では6行(矢印B方向の並び数)・11列(矢印A方向の並び数)で66個設けられていた多数のマス33,33…が、予備撒きカセット71では7行(矢印B方向の並び数)・8列(矢印A方向の並び数)の56個になっている。
【0038】
多列コンベア72は、薬剤受取位置の区画室60,60…を6個から予備撒きカセット71のマス行数の7個に増やした単列コンベア50と同様のものを基本単位のコンベアにしており、さらに、それが予備撒きカセット71のマス列数の8単位ほど左右(矢印Aの方向)に並べて設けられている。
しかも、多列コンベア72では、8個の各コンベアがそれぞれ独立して縦面内で循環運動できるよう、個別に小型モータが無端ベルトの下方などに付設されるとともに、隣り合っている無端ベルトの間隙に収まる薄いギヤ等の伝動部材も個別に付設されている。
【0039】
また、多列コンベア72の何れの単位コンベアも、薬剤排出側の端部をホッパ13の上方に位置させているので、排出した薬剤を他のコンベアの介在無しでホッパ13へ送り込むことができる。
このような薬剤手撒き装置70も、多列コンベア72による縦面内のコンベア送りを各列の単位コンベアについて適切に同期させる制御を行うことにより、上述した薬剤手撒き装置20と同様に、収容薬剤を一区画室分ずつ、ひいては手撒き薬剤を一マス分ずつ、落下排出して分包に供するものとなる。
【0040】
[その他]
上記実施例の区画室60では、前方分割体61と後方分割体62とが合体時に分割箇所で当接し合うだけであったが、前方分割体61の両側部と後方分割体62の両側部とが内外に重なるようになっていても良く、例えば前方分割体61の長い両側部の一部が後方分割体62の短い両側部の内側に入り込むようにしても良い。
上記実施例1では、多列コンベア40と単列コンベア50とに同じ区画室60が採用されていたが、区画室60は、多列コンベア40と単列コンベア50とで全く同じである必要はなく、基本構成が共通していて本発明の実施に必要な機能を発揮するものであれば、サイズや各部寸法などは異なっていても良い。
【0041】
上記実施例の多列コンベア40,70では、各列の間に何も無いものを図示したが、区画室60の移動を安定化させる仕切板などを各列の間や列外等に設けても良く、飛び跳ねた薬剤8の不所望な紛失や混入を防止する隙間閉塞板などを適宜箇所に設けても良い。
上記実施例では、表示について言及しなかったが、2度撒きの文字や,使用するマスの個数,縦横のマス数,使用すべきマスの位置,マス群の周囲の囲みなどを示す表示器を予備撒きカセット30に付設しても良く(例えば特許文献1参照)、予備撒きカセットを出し入れ可能な枠体の上面に装備した開閉式の蓋体について、薬品名を選択可能に画面表示させるとともに選択薬剤の手撒き範囲を点灯させても良い(例えば特許文献2参照)。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の薬剤手撒き装置は、図1(a),(b)に示した錠剤分包機に組み込める他、散薬分包機や錠剤散薬混合タイプの薬剤分包機にも組み込むことができる。筐体に薬剤手撒き装置と包装機とを装備して、手撒き式の分包機にすることもできる。
また、筐体に薬剤手撒き装置を装備する具体的な態様は、上記実施例のように予備撒きカセットを筐体から引き出し可能に実装する態様に限られる訳ではない。予備撒きカセットのマスに薬剤を手撒きできれば良いので、例えば、予備撒きカセットを筐体上面に固定しても良く、予備撒きカセットを筐体の天板に着脱するのでも良い。
【符号の説明】
【0043】
8…薬剤、10…薬剤分包機(錠剤分包機)、11…筐体、
12…包装機、13…ホッパ(薬剤収集機構)、
20…薬剤手撒き装置、22…被当接部材、24…無端ベルト(コンベア)、
30…予備撒きカセット、33…マス(区分収容体)、
40…多列コンベア(コンベヤー)、50…単列コンベア(コンベヤー)、
60…区画室(区分収容体)、61…前方分割体、62…後方分割体、
63…連結部、64…取付部、65…当接部、
70…薬剤手撒き装置、71…予備撒きカセット、72…多列コンベア
図1
図2
図3