特許第6362133号(P6362133)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6362133水溶性重合体からなる分散液を用いた抄紙方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362133
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】水溶性重合体からなる分散液を用いた抄紙方法
(51)【国際特許分類】
   D21H 17/41 20060101AFI20180712BHJP
   D21H 21/10 20060101ALI20180712BHJP
   D21H 23/14 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   D21H17/41
   D21H21/10
   D21H23/14
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-123903(P2014-123903)
(22)【出願日】2014年6月17日
(65)【公開番号】特開2016-3414(P2016-3414A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2017年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000142148
【氏名又は名称】ハイモ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】村田 奈穂
(72)【発明者】
【氏名】堀 秀行
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−006831(JP,A)
【文献】 特開2003−155689(JP,A)
【文献】 特開昭62−191598(JP,A)
【文献】 特開2001−353407(JP,A)
【文献】 特開2004−176184(JP,A)
【文献】 特開2007−016086(JP,A)
【文献】 特開2011−208316(JP,A)
【文献】 特表2006−509096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B1/00−1/38
D21C1/00−11/14
D21D1/00−99/00
D21F1/00−13/12
D21G1/00−9/00
D21H11/00−27/42
D21J1/00−7/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製紙工程における抄紙時、抄紙前の製紙原料のファンポンプに供給される白水循環系の希釈用白水に、下記一般式(1)及び/又は(2)で表されるカチオン性単量体5〜50モル%、下記一般式(3)で表されるアニオン性単量体0〜30モル%、及び非イオン性単量体50〜95モル%を含有する単量体混合物を重合して得た水溶性重合体からなる分散液であり、該水溶性重合体の重量平均分子量が800万〜2000万、且つ、1モル/L食塩水溶液中において、25℃で測定した固有粘度が13〜25dl/gの範囲である水溶性重合体からなる分散液を添加することを特徴とする抄紙方法。

一般式(1)
は水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基、Rは水素、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基であり、同種でも異種でも良い。Aは酸素またはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基またはアルコキシレン基、Xは陰イオンをそれぞれ表わす。

一般式(2)
は水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基、Xは陰イオンをそれぞれ表わす。
一般式(3)
は水素、メチル基又はカルボキシメチル基、QはSO、CSO、CONHC(CHCHSO、CCOOあるいはCOO、Rは水素又はCOOY、YあるいはYは水素又は陽イオンをそれぞれ表わす。
【請求項2】
前記水溶性重合体からなる分散液の形態が、塩水中分散液であることを特徴とする請求項1に記載の抄紙方法。
【請求項3】
前記水溶性重合体からなる分散液の形態が、油中水型エマルジョンであることを特徴とする請求項1に記載の抄紙方法。
【請求項4】
前記水溶性重合体の0.2質量%水溶液中において25℃で測定した粘度が、300mPa・s以下であることを特徴とする請求項1に記載の抄紙方法。
【請求項5】
前記抄紙前の製紙原料に、重量平均分子量が800万〜2000万のポリアクリルアミド系水溶性重合体を併用することを特徴とする請求項1に記載の抄紙方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抄紙工程における製紙原料の歩留向上あるいは濾水性向上を図る抄紙方法に関するものであり、詳しくは、抄紙工程において水溶性重合体を使用してワイヤー上の製紙原料の歩留を向上する、あるいは濾水性を向上する抄紙方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製紙のワイヤー工程で抄紙する際に製紙原料をワイヤー上に留める、あるいは濾水を促進するためにポリアクリルアミド系(PAM系)ポリマーが歩留向上剤あるいは濾水性向上剤として汎用されている。しかし、近年の製紙の抄紙工程においては、古紙配合率の増加や用水のクローズド化によって抄紙原料中には微細繊維、灰分、濁度成分等の夾雑物の割合が増加傾向にあり、これらの割合の増加はPAM系ポリマーの効果を抑制し、歩留効果あるいは濾水性を低下させる要因となっている。ワイヤー上での製紙原料の歩留あるいは濾水性が低下することは生産性の低下、更には製紙原料中に含まれる填料あるいは紙力剤やサイズ剤といった製紙用薬剤の歩留が低下し紙製品の品質低下を招く要因の一つとなる。一般的には歩留向上剤や濾水性向上剤の添加場所は、製紙原料がワイヤー上で抄紙される直前のインレット原料と呼ばれるパルプ乾燥固形分濃度が0.5〜1.5質量%程度の製紙原料に添加されている。これに対して、歩留あるいは濾水性改善のために歩留向上剤あるいは濾水性向上剤の様々な添加場所の検討がされている。例えば、特許文献1では、希釈用の白水に水溶性のカチオン化剤を添加する方法が開示されており、カチオン化剤としてカチオン性のポリアクリルアミドも例示されている。特許文献2では、モジュールジェット型抄紙機において紙を抄紙する場合、製紙原料及びヘッドボックスに返送される白水に歩留向上剤を添加する方法が開示され、実施例では重量平均分子量が15万〜60万と低分子量の水溶液重合タイプのポリマーが使用されている。特許文献3では、ヘッドボックスで主水性流を希釈水性流と混合する際に、希釈水性流に重量平均分子量が500万までの低分子量カチオン有機ポリマーを添加する方法が、又、特許文献4では、特許文献3と同様に希釈水性流に非イオン性あるいはアニオン性有機ポリマーを添加する方法が開示されている。しかし、これら方法に対して、更なる歩留向上あるいは濾水性向上を図るために最適なポリマーの適用が要望されている。
【0003】
【特許文献1】特開平2−80690号公報
【特許文献2】特開2004−176184号公報
【特許文献3】特表2007−501344号公報
【特許文献4】特表2000−505843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、製紙の抄紙工程で水溶性重合体を用いた抄紙方法に関するものであり、詳しくは白水循環系において、水溶性重合体を用いた歩留向上あるいは濾水性向上を図る抄紙方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため鋭意検討を行なった結果、特定の組成、物性を有する水溶性重合体からなる分散液を抄紙工程の白水循環系の製紙原料に適用することで製紙原料の歩留向上あるいは濾水性向上を達成することができることを見出し本発明に達した。
【発明の効果】
【0006】
本発明における水溶性重合体からなる分散液を抄紙工程の白水循環系の製紙原料に添加することで、微細繊維分や灰分、濁度成分等の夾雑物割合の多い製紙原料に対しても高い歩留あるいは濾水性向上効果を得ることができ生産性の向上や紙品質の向上を達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明における水溶性重合体からなる分散液は、下記一般式(1)及び/又は(2)で表されるカチオン性単量体5〜50モル%、下記一般式(3)で表されるアニオン性単量体0〜30モル%、及び非イオン性単量体50〜95モル%を含有する単量体混合物を重合して製造したものである。製造方法として、塩水中分散重合あるいは油中水型エマルジョン重合により製造されたものである。この重合方法によって得られた分散液は、溶解時の分散性が粉末品や水溶液重合品に比べて優れるため、添加時に局所に偏在することなく紙料中に浸透する結果、白水の様に低濃度で微細繊維の多い原料であっても過凝集を引き起こすことが少ない添加が可能である。
一般式(1)
は水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基、Rは水素、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基であり、同種でも異種でも良い。Aは酸素またはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基またはアルコキシレン基、Xは陰イオンをそれぞれ表わす。
一般式(2)
は水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基、Xは陰イオンをそれぞれ表わす。
一般式(3)
は水素、メチル基又はカルボキシメチル基、QはSO、CSO、CONHC(CHCHSO、CCOOあるいはCOO、Rは水素又はCOOY、YあるいはYは水素又は陽イオンをそれぞれ表わす。
【0008】
本発明における水溶性重合体からなる分散液を製造する際に使用するイオン性単量体のうち、カチオン性単量体、即ち一般式(1)及び/又は(2)で表される単量体は5〜50モル%であり、5モル%より少ないと重合体の電荷中和作用が低下し好ましくはなく、50モル%を超えると高分子量のものが得られ難くなるので好ましくはない。より好ましくは10〜40モル%の範囲である。
【0009】
本発明で使用する一般式(1)で表されるカチオン性単量体は、以下の様なものがある。即ち、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートやジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メチルジアリルアミン等の塩化メチルや塩化ベンジルによる四級化物である。その例として一般式(1)で表わされるカチオン性単量体は、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物である。この中で、特に(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウム塩化物を0〜4モル%の範囲で使用すると高分子量のものが安定して得られるので好ましい場合がある。一般式(2)で表わされるカチオン性単量体は、ジアリルメチルアンモニウム塩化物、ジアリルジメチルアンモニウム塩化物等がある。これらから選択される一種以上を使用する。
【0010】
本発明における水溶性重合体からなる分散液を製造する際に使用する一般式(3)で表されるアニオン性単量体は0〜30モル%の範囲である。30モル%より多いと高い分子量の製造が難しくなる。
【0011】
本発明で使用する一般式(3)で表されるアニオン性単量体は、ビニルスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸あるいは2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フタル酸あるいはp−カルボキシスチレン酸等が挙げられる。これらから選択される一種以上を使用する。
【0012】
本発明で使用する非イオン性単量体は、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、ジアセトンアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、アクリロイルモルホリン等が挙げられる。これらから選択される一種以上を使用する。
【0013】
本発明における水溶性重合体からなる分散液を塩水中分散重合法によって行なう場合は、特開昭61−123610号公報、特開62−20511号公報、特開2007−16086号公報等によって開示されている公知の方法によって製造することができる。即ち、塩水溶液中において、該塩水溶液中に溶解可能な高分子分散剤を共存させイオン性単量体及び非イオン性単量体混合物を分散重合して製造する。その場合、重合遅延性物質を全単量体に対し0.5〜5モル%添加することにより、増粘が抑制可能であり、重量平均分子量が高い水溶性重合体を製造することができる。又、前記重合遅延性物質はイタコン酸、マレイン酸、フタル酸、アリルアミンおよびジアリルジメチルアンモニウムクロライドから選択される一種以上である。
【0014】
塩水中分散重合時の重合条件は通常、使用する単量体や共重合モル%によって適宜決定し、温度としては0〜100℃の範囲で行う。重合開始はラジカル重合開始剤を使用する。これら開始剤は油溶性あるいは水溶性のどちらでも良く、アゾ系、過酸化物系、レドックス系の何れでも重合することが可能である。油溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2’−アゾビスイソブチロニトリル、1、1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2、2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2、2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4、4−アゾビス(4−メトキシ−2、4−ジメチル)バレロニトリル等が挙げられ、水混溶性溶剤に溶解し添加する。
【0015】
水溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2、2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩酸塩、4、4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等が挙げられる。又、レドックス系の例としては、ペルオキソ二硫酸アンモニウムと亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、トリメチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン等との組み合わせが挙げられる。更に過酸化物の例としては、ペルオキソ二硫酸アンモニウム或いはカリウム、過酸化水素、ベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、オクタノイルペルオキサイド、サクシニックペルオキサイド、t−ブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエート等を挙げることができる。これら開始剤の中で最も好ましいのは、水溶性アゾ開始剤の2、2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2、2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩酸塩である。アゾ系開始剤の添加率は、重合開始時、単量体当たり50〜500ppm、好ましくは70〜200ppm添加する。しかし、一回の添加では重合率が低くなるので、数回に分けて添加することが好ましい。
【0016】
又、レドックス系開始剤で共重合する場合、40℃以上の条件で重合を開始させると重合の制御は難しく、急激な温度上昇や重合液の塊状化などが起きて、高重合度で安定な分散液が得られないため、15〜35℃が好ましい。この開始剤の添加率は、重合開始時、単量体当たり5〜100ppm、好ましくは10〜50ppm添加する。しかし、一回の添加では重合率が低くなるので、数回添加することが好ましい。添加回数としては、2〜5回、好ましくは2〜3回である。これらイオン性高分子からなる高分子分散剤の添加量としては、対単量体1〜30質量%であり、好ましくは2〜20質量%である。1質量%以下では、分散剤としての効果がなく、30質量%以上では、分散液の粘性が高くなる上、コスト的に不利になる。
【0017】
本発明における水溶性重合体からなる分散液を製造する際の重合時あるいは重合後、構造変性剤として架橋性単量体を使用しても良い。使用する場合は、架橋性単量体を単量体総量に対し、0.00005〜0.050質量%の範囲内で存在させる。単量体組成や重合条件により異なるが、0.050質量%を超えると架橋が進行しすぎて水不溶性となるため本発明の用途としては好ましくはない。架橋性単量体の例としては、N,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、トリアリルアミン、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール、ジメタクリル酸−1,3−ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、N−ビニル(メタ)アクリルアミド、N−メチルアリルアクリルアミド、アクリル酸グリシジル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、アクロレイン、グリオキザール、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられ、N,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミドが好ましく適用されている。
【0018】
本発明における水溶性重合体からなる分散液を製造する際に使用する高分子分散剤は、イオン性、非イオン性とも使用可能であるが、好ましくはイオン性、さらに好ましくはカチオン性である。カチオン性高分子分散剤の場合、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物やジメチルジアリルアンモニウム塩化物などのカチオン性単量体の(共)重合体を高分子分散剤として使用するが、カチオン性単量体と非イオン性単量体との共重合体も使用可能である。非イオン性単量体の例としては、アクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N、N−ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、ジアセトンアクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等であるが、アクリルアミドとの共重合体が好ましい。
【0019】
また、非イオン性高分子分散剤としては、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド/ポリビニルカプロラクタム共重合体、アクリルアミド/スチレン共重合体、無水マレイン酸/ブテン共重物の完全アミド化物などアミド基と若干の疎水性基を有する水溶性重合体も有効である。
【0020】
これらカチオン性高分子分散剤の分子量としては、5,000〜200万、好ましくは5万〜100万である。また、非イオン性高分子分散剤の分子量としては、1,000〜10万、好ましくは1,000〜5万である。これら非イオン性あるいはイオン性高分子分散剤の添加量は、単量体に対して1〜20質量%であり、好ましくは5〜15質量%である。
【0021】
使用する塩類としては、ナトリウムやカリウムのようなアルカリ金属イオンやアンモニウムイオンなどの陽イオンとハロゲン化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオンなどの陰イオンとを組み合わせた塩が使用可能であるが、多価陰イオンとの塩がより好ましい。これら塩類の塩濃度としては、10質量%〜飽和濃度まで使用できる。
【0022】
本発明における水溶性重合体からなる分散液について、水溶性重合体の固有粘度を求める際、1モル/L食塩水溶液で希釈した数点の重合体希釈液を毛細管粘度計によって25℃で測定した還元粘度ηsp/cを測定し濃度c横軸にしてプロットし、その濃度をゼロに外挿する。重合体濃度0.1質量%以下に1モル/L食塩水溶液において希釈した数点の重合体希釈液を毛細管粘度計により25℃で測定した還元粘度ηsp/c(単位:dl/g)のプロットをηsp/c=[η]+k×cの式(cは重合体濃度で単位はg/dl、[η]は固有粘度)に近似した時の係数kは、そのプロットの近似直線の傾きである。製造条件によっては、塩水中分散重合で製造した水溶性重合体のkは20以下と殆ど傾きがない場合がある。これは、それぞれの高分子鎖が相互作用をしないナノスケール粒子状になっていることが推察される。抄紙条件によっては、塩水中分散重合で製造した水溶性重合体が高分子量で更に粒子性が高い、係数kが10以下の重合体が効果的な場合がある。この場合は、水溶性重合体からなる分散液は塩水溶液中の析出重合であるため、析出時重合体濃度が非常に高い状態になる。その結果、分子は結晶化しやすい状態に置かれ、局部的に高濃度になりやすく、結晶化を促進していると考えられる。従って高分子の一部が結晶化あるいはその他の結合によって溶液中で縮まった分子になっていると推定される。このような状態にある高分子を抄紙工程に適用した場合、製紙原料中で微粒子の様な挙動を示すため、形成されたフロックが巨大化せず小さく締ったものとなりシェアに強い。従って歩留が向上するだけでなく、濾水性や搾水性も良く、地合も良好な紙が抄紙できる。
【0023】
一般に塩水溶液中での分散重合法は重合過程で反応液の粘度が上昇することがあり、それを防ぐため、連鎖移動剤等を使用している。その結果、重合体の分子量が低下する場合があった。本発明は分子量を高くするために、連鎖移動剤を極力少量使用し、あるいは実質的には全く用いないことで重合する。それによる重合過程での粘度上昇を減少させるために、単量体の分割添加、疎水性単量体の微量使用、塩析し易い単量体の使用等の技術を用いて、分子量の高い水溶性重合体を製造することも可能である。
【0024】
本発明における分散液を構成する水溶性重合体は、歩留向上剤あるいは濾水性向上剤として高分子量のものが要望されるため、光散乱法による重量平均分子量が、800万から2000万の範囲であり、1000万から2000万の範囲が好ましい。800万より小さいと大きな歩留あるいは濾水性向上効果が得られず、2000万より大きいと凝集力が強くなり過ぎて形成フロック中に過多に水分を取り込み濾水性の低下を招いたり、地合いが低下したりするため好ましくはない。1モル/L食塩水溶液中において25℃で測定した固有粘度では、13〜25dl/gの範囲である。
【0025】
本発明における水溶性重合体からなる分散液の油中水型エマルジョンの製造方法としては、特開平10−140496号公報や特開2011−99076号公報等に挙げられる公知の方法に準じて適宜に製造することができる。即ち、カチオン性単量体、アニオン性単量体及び非イオン性単量体からなる単量体混合物を水、水と非混和性の炭化水素からなる油状物質、油中水型エマルジョンを形成するに有効な量とHLBを有する少なくとも一種類の界面活性剤を混合し、強攪拌し油中水型エマルジョンを形成させた後、重合する。
【0026】
油中水型エマルジョンを製造する場合、無機塩を添加することができる。無機塩を添加することで油中水型エマルジョンの粘性が低下するため白水に添加時、更に分散性が高まり均一なフロックの形成、地合の低下を抑制でき好ましい。塩を添加するタイミングは、イオン性単量体と非イオン性単量体からなる単量体混合物を混合した水溶液中や共重合後の油中水型エマルジョン中或いは油中水型エマルジョン希釈液中、等である。
【0027】
添加する無機塩は、ナトリウムやカリウムの様なアルカリ金属イオンやアンモニウムイオン等の陽イオンと、ハロゲン化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン等の陰イオンとを組み合わせた塩が使用可能である。これら塩類の濃度としては、0.5質量%〜15質量%である。
【0028】
また、分散媒として使用する炭化水素からなる油状物質の例としては、パラフィン類或いは灯油、軽油、中油等の鉱油、或いはこれらと実質的に同じ範囲の沸点や粘度等の特性を有する炭化水素系合成油、或いはこれらの混合物が挙げられる。含有量としては、油中水型エマルジョン全量に対して20質量%〜50質量%の囲であり、好ましくは20質量%〜35質量%の範囲である。
【0029】
油中水型エマルジョンを形成するに有効な量とHLBを有する少なくとも一種類の界面活性剤の例としては、HLB3〜11のノニオン性界面活性剤であり、その具体例としては、ソルビタンモノオレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。これら界面活性剤の添加量としては、油中水型エマルジョン全量に対して0.5〜10質量%であり、好ましくは1〜5質量%の範囲である。
【0030】
重合後は、転相剤と呼ばれる親水性界面活性剤を添加して油の膜で被われたエマルジョン粒子が水になじみ易くし、中の水溶性高分子が溶解しやすくする処理を行ない、水で希釈しそれぞれの用途に用いる。親水性界面活性剤の例としては、カチオン性界面活性剤やHLB9〜15のノ二オン性界面活性剤であり、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル系、ポリオキシエチレンアルコールエーテル系等である。
【0031】
重合条件は通常、使用する単量体や共重合モル%によって適宜決めていき、温度としては20〜80℃の範囲で行ない、好ましくは20〜60℃の範囲で行なう。重合開始はラジカル重合開始剤を使用する。これら開始剤は油溶性あるいは水溶性のどちらでも良く、アゾ系、過酸化物系、レドックス系何れでも重合することが可能である。油溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1、1−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2、2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2、2’−アゾビス−2−メチルプロピオネート、4、4’−アゾビス−(4−メトキシ−2、4−ジメチル)バレロニトリル等が挙げられる。
【0032】
水溶性アゾ開始剤の例としては、2、2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2、2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩酸塩、4、4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等が挙げられる。またレドックス系の例としては、ペルオキソ二硫酸アンモニウムと亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、トリメチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン等との組み合わせが挙げられる。更に過酸化物の例としては、ペルオキソ二硫酸アンモニウム或いはカリウム、過酸化水素、ベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、オクタノイルペルオキサイド、サクシニックペルオキサイド、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート等を挙げることができる。
【0033】
次に本発明における水溶性重合体からなる分散液を適用する抄紙工程について説明する。抄紙工程でのワイヤーパートでの製紙原料の歩留向上や濾水性向上、プレスパートやドライヤーパートでの搾水性向上などの目的で歩留向上剤あるいは濾水性向上剤として、ポリアクリルアミド系(PAM系)ポリマーが一般的に使用されている。製紙工程において上流からパルプ乾燥固形分濃度が2.0質量%以上で移送されてきた高濃度の製紙原料が抄紙機の直前では白水や清水等によりパルプ乾燥固形分濃度が2.0質量%より低い製紙原料に希釈されている。一般的には0.5〜1.5質量%に希釈されており、これらはインレット原料やヘッドボックス原料と呼ばれており、これら原料(以下、インレット原料とする。)に対して歩留向上剤あるいは濾水性向上剤が添加され抄紙される。しかし、本発明における水溶性重合体からなる分散液は、希釈に用いられる白水に添加される。白水は、ワイヤーから流れ落ちた製紙原料であり、白水サイロ、白水ピット等と呼ばれる槽に集められ、そこからファンポンプに供給され、パルプ乾燥固形分濃度が2.0質量%以上の製紙原料に混合される。本発明における水溶性重合体は、白水サイロや白水ピットに添加しても良く、パルプ乾燥固形分濃度が2.0質量%以上の製紙原料に混合される前の白水循環系の何れの場所でも良い。白水に対して効率良くミキシングされることが要望されるので、白水サイロや白水ピットよりもこれらの槽の出口からの白水循環系が好ましい。通常、白水はパルプ乾燥固形分濃度が1.0質量%より低い濃度であるが、本発明における水溶性重合体は、インレット原料のパルプ乾燥固形分濃度に対して、添加率0.002〜0.1質量%の範囲で添加する。添加濃度は、水溶性重合体原液を0.05〜0.5質量%水溶液に希釈して使用する。水溶液の粘性が高過ぎると白水への分散性が低下し好ましくはないため、分散性の指標として0.2質量%水溶液中において25℃で測定した粘度が、300mPa・s以下であることが好ましい。更に好ましくは250mPa・s以下である。
【0034】
本発明における水溶性重合体からなる分散液を白水に添加する。白水中の微細繊維割合はインレット原料に比べて高く、この白水に添加すると粉末品や水溶液重合品に比べて分散性が良く、尚且つ高分子量であるため、白水中の微細繊維間に浸透し、強固なフロックを形成すると推測される。予め白水中の微細繊維分とフロックを形成させておくことにより、その後パルプ乾燥固形分濃度が2.0質量%以上の製紙原料と混合され、スクリーンを通過する間にフロックが徐々に破壊され微細なフロックとなることで脱水が促進し、一方で微細なフロック間と水溶性重合体との架橋吸着作用により、凝集が生じ、締まったフロックが形成され、歩留あるいは濾水性効果が向上すると考えらえる。
【0035】
本発明における水溶性重合体からなる分散液を使用する紙の種類としては、新聞用紙、上質印刷用紙、中質印刷用紙、グラビア印刷用紙、PPC用紙、塗工原紙、微塗工紙、包装用紙、ライナーや中芯原紙の板紙などいずれでも使用可能である。特に歩留率や濾水性の向上による生産性の向上が要望される板紙に適用すると効果的である。
【0036】
本発明における水溶性重合体からなる分散液は、紙力剤、サイズ剤、硫酸バンド、凝結剤やその他の製紙用薬品と併用することができ、歩留向上あるいは濾水性向上処方としてその他のカチオン性水溶性重合体、両性水溶性重合体、アニオン性水溶性重合体、ベントナイトあるいはコロイダルシリカ等とも併用することができる。一般的に歩留向上剤あるいは濾水性向上剤を一液で使用する場合、本発明における水溶性重合体からなる分散液の様なポリアクリルアミド系水溶性重合体が汎用され、添加場所は、せん断工程であるファンポンプやスクリーンの前後が一般的であり、本発明における水溶性重合体と併用する場合も、これらポリアクリルアミド系水溶性重合体は、ファンポンプやスクリーン前後のパルプ乾燥固形分濃度0.5〜1.5質量%のインレット原料に添加する。少ない添加率で最も歩留あるいは濾水性を向上させるには最終せん断工程であるスクリーン前後に添加するのが好ましい。又、分割して添加しても良い。併用するポリアクリルアミド系水溶性重合体の製品形態は規定せず、水溶液重合、油中水型エマルジョン重合、油中水型分散重合、塩水中分散重合何れでも可能である。又、ポリアクリルアミド系水溶性重合体の構成単位として、前記一般式(1)及び/又は(2)で表されるカチオン性単量体、前記一般式(3)で表されるアニオン性単量体、及び非イオン性単量体を任意のモル%組成比を含有したものであり、本発明の水溶性重合体からなる分散液の組成が適用されたものが好ましい。又、光散乱法による重量平均分子量では、800万から2000万の範囲が好ましい。1モル/L食塩水溶液中において、25℃で測定した固有粘度では、13〜25dl/gの範囲であることが好ましい。本発明における水溶性重合体からなる分散液をインレット原料と白水循環系に併用しても良い。
【実施例】
【0037】
以下に本発明における水溶性重合体からなる分散液を用いた抄紙方法について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
本発明における水溶性重合体からなる分散液として、塩水液中分散重合法、油中水型エマルジョン重合法の常法により試料1〜5を調製した。又、市販品の粉末試料6及び試料7としてポリエチレンイミン系濾水性向上剤(水溶液重合品、製品濃度25%、pH7のカチオン当量値5.2meq/g、0.2質量%水溶液粘度4mPa・s)を用意した。これらの試料は、何れも清水で溶解し、0.1質量%水溶液にして試験に使用した。
【0039】
(表1)
試料1:重合時に無機塩として硫酸アンモニウムを使用し塩水中分散重合により製造したもの。重合体濃度0.1質量%以下に1モル/L食塩水溶液において希釈した数点の重合体希釈液を毛細管粘度計により25℃で測定した還元粘度ηsp/cのプロットをηsp/c=[η]+k×cの式に近似した時の係数kの値6.9。固有粘度は18.3dl/g。
試料2:重合時に無機塩として硫酸アンモニウムを使用し塩水中分散重合によ
り製造したもの。固有粘度は13.7dl/g。
試料3、5:重合時に食塩を所定量添加して油中水型エマルジョン重合により製造したもの。
単量体組成:
DMQ:アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物
DMBZ:アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウム塩化物
AAM:アクリルアミド
0.2質量%水溶液粘度:高分子濃度が0.2質量%になるように溶解したときの25℃において測定した粘度。
0.5質量%塩水溶液粘度:4質量%塩化ナトリウム水中に高分子濃度が0.5質量%になるように溶解したときの25℃において測定した粘度。
【0040】
(実施例1)動的濾水性試験機DDA(Dynamic Drainage Analyzer、マツボー社製)による濾水性試験を実施した。某製紙会社で入手した板紙製造原料である白水の所定量を、底部に315メッシュワイヤーの付いたDDA攪拌槽に投入した。これに、表1記載の試料1を対インレット原料固形分に対して200ppm添加(白水循環系添加想定)、攪拌回転数600rpmで15秒間攪拌後、種箱原料の所定量をDDA撹拌層に投入、攪拌回転数600rpmで15秒間攪拌(インレット原料の完成、pH6.2、電気伝導度328mS/m、SS分14738ppm、Ash分2461ppm、WhatmanNo.41濾紙濾過液をHACH社製2100P型で測定した濁度1022NTU)、更に攪拌回転数600rpmで30秒間攪拌後(スクリーン入口想定)、300mBarの減圧下で、紙料を吸引し、ワイヤー上にシートを形成した時点の濾水時間及び120秒間吸引した後の減圧度、即ち最終減圧度を測定した。最終減圧度はワイヤー上に形成したシートの透気度で表され、シート透気度に最も影響する因子はフロックの大きさであり地合いの指標となる。又、同様な試験を試料2〜4についても実施した。その結果を表2に示す。
【0041】
(実施例2)実施例1と同様な製紙原料を用いて同様な動的濾水性試験機DDAによる濾水性試験を実施した。板紙製造原料である白水の所定量を、底部に315メッシュワイヤーの付いたDDA攪拌槽に投入した。これに、表1記載の試料1を対インレット原料固形分に対して100ppm添加(白水循環系添加想定)、攪拌回転数600rpmで15秒間攪拌後、種箱原料の所定量をDDA撹拌層に投入、攪拌回転数600rpmで15秒間攪拌後(インレット原料の完成)、試料1を対インレット原料固形分に対して100ppm添加(スクリーン入口添加想定)、攪拌回転数600rpmで30秒間攪拌後、300mBarの減圧下で、紙料を吸引し、ワイヤー上にシートを形成した時点の濾水時間及び最終減圧度を測定した。その結果を表2に示す。
【0042】
(比較例1)実施例1と同様な製紙原料を用いて同様な動的濾水性試験機DDAによる濾水性試験を実施した。板紙製造原料である白水の所定量を、底部に315メッシュワイヤーの付いたDDA攪拌槽に投入した。攪拌回転数600rpmで15秒間攪拌後、種箱原料の所定量をDDA撹拌層に投入、攪拌回転数600rpmで15秒間攪拌後(インレット原料の完成)、表1記載の試料1を対インレット原料固形分に対して200ppm添加(スクリーン入口添加想定)、攪拌回転数600rpmで30秒間攪拌後、300mBarの減圧下で、紙料を吸引し、ワイヤー上にシートを形成した時点の濾水時間及び最終減圧度を測定した。又、試料3あるいは7についても同様な試験を実施した。その結果を表2に示す。
【0043】
(比較例2)実施例1と同様な製紙原料を用いて同様な動的濾水性試験機DDAによる濾水性試験を実施した。板紙製造原料である白水の所定量を、底部に315メッシュワイヤーの付いたDDA攪拌槽に投入した。これに、表1記載の試料6を対インレット原料固形分に対して200ppm添加(白水循環系添加想定)、攪拌回転数600rpmで15秒間攪拌後、種箱原料の所定量をDDA撹拌層に投入、攪拌回転数600rpmで15秒間攪拌(インレット原料の完成)、更に攪拌回転数600rpmで30秒間攪拌後、300mBarの減圧下で、紙料を吸引し、ワイヤー上にシートを形成した時点の濾水時間及び最終減圧度を測定した。又、試料7についても同様な試験を実施した。その結果を表2に示す。
【0044】
(表2)
【0045】
(実施例3)実施例1と同様な板紙製造原料を用いて、ブリット式ダイナミックジャーテスターによる歩留率の測定試験を実施した。200メッシュワイヤー使用。板紙製造原料である白水の所定量を、ブリット式ダイナミックジャーテスターに投入した。これに、表1記載の試料1を対インレット原料固形分に対して200ppm添加(白水循環系添加想定)、攪拌回転数1200rpmで15秒間攪拌後、種箱原料の所定量をダイナミックジャーテスターに投入、攪拌回転数1200rpmで15秒間攪拌(インレット原料の完成)、攪拌回転数1200rpmで30秒間攪拌後(スクリーン入口添加想定)、濾液を採取しADVANTEC、No.2濾紙にて濾過後、SSを測定、総歩留率を測定後、濾紙を525℃で2時間灰化し、灰分歩留率を測定した。又、試料5についても同様な試験を実施した。その結果を表3に示す。
【0046】
(比較例3)実施例1と同様な板紙製造原料を用いて、ブリット式ダイナミックジャーテスターによる歩留率の測定試験を実施した。200メッシュワイヤー使用。板紙の製造原料である白水の所定量を、ブリット式ダイナミックジャーテスターに投入した。攪拌回転数1200rpmで15秒間攪拌後、種箱原料の所定量をダイナミックジャーテスターに投入、攪拌回転数1200rpmで15秒間攪拌(インレット原料の完成)、試料7を対インレット原料固形分に対して200ppmあるいは300ppm添加(スクリーン入口添加想定)、攪拌回転数1200rpmで30秒間攪拌後、濾液を採取しADVANTEC、No.2濾紙にて濾過後、SSを測定、総歩留率を測定後、濾紙を525℃で2時間灰化し、灰分歩留率を測定した。その結果を表3に示す。
【0047】
(表3)
【0048】
本発明における水溶性重合体からなる分散液を白水循環系に添加した実施例1、2では、濾水時間が比較例1、2に対して短縮しており濾水性が優れていることが分かった。又、本発明における水溶性重合体からなる分散液を白水循環系に添加した実施例3では、スクリーン入口に添加した比較例3に対して同程度の歩留効果を示した。通常のインレット原料に歩留向上剤あるいは濾水性向上剤を添加するよりも白水循環系に添加することで歩留は維持し濾水性を改善することが確認できた。
【0049】
(実施例4)製紙会社の板紙製造マシンで、インレット原料(pH6.3、SS分13845ppm、WhatmanNo.41濾紙濾過液をHACH社製2100P型で測定した濁度890NTU)、紙中灰分7.8質量%対成紙、坪量280g/m2の条件で、スクリーン通過前に試料7のポリエチレンイミン系濾水剤を250ppm(対インレット原料乾燥固形分)添加時、ワイヤー総歩留率68%、灰分歩留率44%であった。これに対して本発明における水溶性重合体からなる分散液試料1を白水循環ラインに100ppm添加した結果、ポリエチレンイミン系濾水剤をスクリーン通過前に添加時と同等の歩留効果並びに濾水効果が得られた。








【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】本発明における水溶性重合体からなる分散液を、製紙工程において適用する場所を図示したフロー図である。(1)の種箱あるいはマシンチェストと呼ばれる場所から供給される高濃度製紙原料が、(2)のファンポンプに供給される白水により低濃度製紙原料に希釈され、(3)のスクリーン、(4)のインレットを通じて(5)のワイヤーにより抄紙される。本発明における水溶性重合体からなる分散液は、ワイヤーから流れ落ちた白水(6)が集まる(7)の白水サイロや白水ピット、あるいは(8)の白水循環系に添加される。
【符号の説明】
【0051】
(1)種箱あるいはマシンチェスト
(2)ファンポンプ
(3)スクリーン
(4)インレット
(5)ワイヤー
(6)白水
(7)白水サイロあるいは白水ピット(水溶性重合体からなる分散液添加場所)
(8)白水循環系(水溶性重合体からなる分散液添加場所)
図1