【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る植物の生産方法は、
白色光下で植物の栽培を行い、その途中に緑色光を暗条件下で照射するステップと、
赤色光を暗条件下で照射するステップとを有することを特徴とする。
ここで白色光とは自然光のみならず、自然光に近い人工光が含まれる趣旨である。
【0007】
詳細は後述するが、上記のように照射光をコントロールすると次の作用がある。
緑色光を暗条件下で照射して植物の青、緑光の受容体であるクリプトクロム2で緑色光を受容し、師管伴細胞内のクリプトクロム2による開花促進効果を発揮させる。
また同時に植物ホルモンのジャスモン酸を発現させる。
このジャスモン酸は死物寄生菌に対する防御たんぱく質を誘導する他に食害に対しての防御の効果を有する。
またジャスモン酸は根の伸長抑制など成長抑制効果を有する。
その後暗条件下で赤色光を照射して赤色光受容体であるフィトクロムBを刺激して成長ホルモンであるオーキシンを誘引する。
オーキシンはイチゴなどの果菜類における開花した後の果実肥大に必要な植物ホルモンである。
【0008】
本発明においては、赤色光を照射するステップの替わりに青色光を照射するステップを有するようにしてもよい。
このようにすると、緑色光を暗条件で照射して上記のように師管伴細胞内のクリプトクロム2による開花促進効果を発揮させ、同時に植物ホルモンのジャスモン酸を発現させる。
このジャスモン酸は上述したとおり死物寄生菌に対する防御たんぱく質を誘導する他に食害に対しての防御の効果を有するが、一方活物寄生菌に対しての防御効果はなく、根の伸長抑制や開花抑制など成長抑制効果を有する。
そこで緑色光の照射後に後暗条件下で青色光を照射してサリチル酸を発現させることにしたものである。
サリチル酸はジャスモン酸と拮抗作用を持ち、かつ開花促進効果を有する。
またサリチル酸は活物寄生菌に対する防御応答を誘引する。
従って、この方式ではジャスモン酸とサリチル酸を交互に誘引して死物寄生菌および活物寄生菌の両者に対しての防御を誘引することができ、また開花を大きく促進することができる。
【0009】
本発明は緑色光を暗条件下、例えば夜間に照射することでクリプトクロム2を刺激して開花誘導する他、成長抑制型の植物ホルモンであるジャスモン酸を一旦発生させたのちに、暗条件下で青色光または赤色光を照射し、ジャスモン酸と拮抗作用を持つサリチル酸、またはオーキシンを発現させることで植物の恒常性を保とうとする復元力を最大限発揮させる、所謂ホメオスタシス効果を活用して病原菌への耐性を高く保ちつつ収量の高い植物の生産方法を提供するものである。
なお照射のスケジュールは暗条件下での単色光照射から植物ホルモン等を誘導するまでに数時間レベルの期間を要することから太陽光利用型の植物栽培では夜間の暗条件下で単色光照射を繰り返すのが合理的である。
人工光利用型の植物栽培では暗条件を自由に設定できるので数時間置いた同一の暗期間に緑色光照射と赤色光照射又は青色光照射をすることで同一の効果が得られる。
なお、緑色光,赤色光及び青色光の照射組み合せは、上記各単色光の効果を考慮して自由に組み合せることができ、白色光と組み合せることもできる。
【0010】
緑色光照射用光源、赤色光照射用光源および青色光照射用光源は、培地上面の光量子束が各単色光光源で10〜55μmol/m
2/secに照射できるのが好ましい。
緑色光は波長530±30nmにピークがあり、赤色光は波長650±40nmにピークがあり、青色光は波長450±30nmにピークがある光源であれば蛍光灯に限らず発光ダイオード(LED)、冷陰極管エレクトロイルミネッセンス(EL)、レーザー光など他の光源も使用できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る単色光の組み合せ照射による植物の生産方法を用いて、例えば緑色光を所定時間夜間に照射し、翌晩に赤色光を所定時間照射することを複数回繰り返すと、緑色光の照射によるジャスモン酸の発現誘導と赤色光の照射によるオーキシンの発現誘導が繰り返される結果、次のような作用が生じる。
ジャスモン酸の発現によりオーキシン生合成酵素(YUCCA)が増加し(非特許文献1)、またオーキシン生成によりジャスモン酸合成経路の受容体(JAZ1)が誘導される(非特許文献2)等、いわゆるクロストークにより成長抑制ホルモンのジャスモン酸は成長促進ホルモンのオーキシンと連携して常時反転できる体制を整えて恒常性を保とうとすることで積極的にオーキシンの誘導を促し果菜類の収量が増加する。
【0012】
また、緑色光照射と青色光照射を組み合せると、ジャスモン酸とサリチル酸とを交互に発現誘導させることで死物寄生菌と活性寄生菌の両者に耐性を有するようになり、サリチル酸の積極的な誘導により花成誘導が促進される。