特許第6362145号(P6362145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6362145デュアルチャンバ混合シリンジ用複合プランジャ装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362145
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】デュアルチャンバ混合シリンジ用複合プランジャ装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20180712BHJP
   A61M 5/32 20060101ALI20180712BHJP
   A61M 5/28 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   A61M5/315 580
   A61M5/32 510H
   A61M5/28 520
   A61M5/315 510
   A61M5/315 500
【請求項の数】13
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2015-545085(P2015-545085)
(86)(22)【出願日】2013年11月18日
(65)【公表番号】特表2015-536204(P2015-536204A)
(43)【公表日】2015年12月21日
(86)【国際出願番号】US2013070494
(87)【国際公開番号】WO2014085118
(87)【国際公開日】20140605
【審査請求日】2016年10月25日
(31)【優先権主張番号】61/731,972
(32)【優先日】2012年11月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517295698
【氏名又は名称】ユーエヌエル ホールディングス エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】UNL Holdings LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】ダンガー,ピーター ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,モリー エム.
(72)【発明者】
【氏名】ウィーバー,フィリップ エー.
(72)【発明者】
【氏名】ルーメ,ケイトリン エム.
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネソン,ロバート イー.
【審査官】 鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0029471(US,A1)
【文献】 特表2005−508202(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/060541(WO,A1)
【文献】 特開2012−210458(JP,A)
【文献】 特表2011−509810(JP,A)
【文献】 特表2002−528182(JP,A)
【文献】 特開平8−150208(JP,A)
【文献】 米国特許第5312336(US,A)
【文献】 特開平2−302265(JP,A)
【文献】 米国特許第4820275(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
A61M 5/28
A61M 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の封止材及び送達プランジャ封止材を有する混合シリンジ用複合プランジャであって、
前記第1の封止材に係合して前記第1の封止材を軸方向移動させるように構成された混合プランジャと、
前記送達プランジャ封止材に係合して前記送達プランジャ封止材を軸方向移動させるように構成された送達プランジャと、
付勢部材を有するピルハウジングと、を備え、
前記混合プランジャ及び前記送達プランジャは、前記送達プランジャの軸方向移動が前記混合プランジャの軸方向移動を生じさせるように、前記複合プランジャの軸方向移動の少なくとも一部において前記混合プランジャ及び前記送達プランジャの協調又は同期した軸方向移動を推進するように解放可能に係合され、
前記送達プランジャを前記混合プランジャから回転により解放することによって、前記混合プランジャの単独又は独立の軸方向移動が可能となり、
前記混合プランジャは、その近位端において1つ以上の接続部材を備え、前記送達プランジャは、前記混合プランジャの前記接続部材と解放可能に係合するか解放可能に係合される1つ以上の接続凹部を備える、
複合プランジャ。
【請求項2】
前記混合プランジャと前記送達プランジャは、前記混合プランジャと前記送達プランジャとの係合が解除されるまで、協調又は同期して軸方向移動するように解放可能に係合されている、請求項1に記載の複合プランジャ。
【請求項3】
前記接続部材と前記送達プランジャの前記接続凹部との間の解放可能な係合により、前記混合プランジャと前記送達プランジャとが前記複合プランジャの軸方向移動の少なくとも一部において協調して軸方向移動することが可能になる、請求項1に記載の複合プランジャ。
【請求項4】
1つ以上のロック又はロックシステムを備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の複合プランジャ。
【請求項5】
前記1つ以上のロック又はロックシステムは、混合が完了した後に、前記送達プランジャの軸方向移動を可能にしながら前記混合プランジャの軸方向移動を阻止する、請求項4に記載の複合プランジャ。
【請求項6】
前記1つ以上のロックシステムは、前記混合プランジャを前記混合シリンジにロックする、請求項5に記載の複合プランジャ。
【請求項7】
最初は前記ピルハウジングと係合して前記付勢部材を初期エネルギ蓄積状態に維持する1つ以上の部材を備え、前記部材が前記ピルハウジングから係合解除されると、前記付勢部材は近位方向に伸張することが可能になる、請求項1から6のいずれか一項に記載の複合プランジャ。
【請求項8】
前記送達プランジャは、針又は針アセンブリの引き込みを推進する為に前記針又は前記針アセンブリと係合することが可能である、請求項7に記載の複合プランジャ。
【請求項9】
前記付勢部材によるエネルギの解放により、前記送達プランジャと係合されていた前記針又は前記針アセンブリの、シリンジバレルへの引き込みが可能になる、請求項8に記載の複合プランジャ。
【請求項10】
前記付勢部材は、前記針又は前記針アセンブリが引き込まれるまでは前記ピルハウジング内で圧縮されている圧縮ばねである、請求項7から9のいずれか一項に記載の複合プランジャ。
【請求項11】
前記ばねの圧縮解除又は伸長により、前記送達プランジャと係合されていた前記針又は前記針アセンブリの引き込みが推進される、請求項10に記載の複合プランジャ。
【請求項12】
前記複合プランジャを前記混合シリンジの1つ以上のバレル又はバレル延長部と接続するフランジコネクタを更に備える、請求項1から11のいずれか一項に記載の複合プランジャ。
【請求項13】
前記フランジコネクタは、前記混合シリンジの前記バレル延長部と係合することが可能である、請求項12に記載の複合プランジャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は混合シリンジに関する。より具体的には、本発明は、1つ以上の薬剤物質の保管、混合、及び注射を可能にするデュアルチャンバ混合シリンジ用複合プランジャ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の送達可能物質を注射前に混合する混合装置を備えたシリンジを提供することが知られている。これにより、例えば、脱水乾燥、凍結乾燥、乾燥保存、又は粉末化がなされた作用物質に、注射直前に希釈液を加えることが可能になり、これは、水和物の形で保管されると作用が劣化又は低下しやすい物質に対して特に有用である。
【0003】
ほとんどのシリンジ用混合装置は順次チャンバを利用しており、その場合、シリンジは1つのバレルを有するが、このバレルは第1のチャンバ(近位チャンバ)と第2のチャンバ(遠位チャンバ)とを有し、チャンバ同士は、例えば、メンブレン又はエラストマ封止材で仕切られている。幾つかのそのような順次チャンバ式混合シリンジは、バレルの一区画においてバイパス突起を利用することにより、近位チャンバ内の流体が仕切りのメンブレンをバイパスして遠位チャンバ内の流体又は粉体と混ざり合うことを可能にしている。
【0004】
一方では、同心バレル構成を利用する混合シリンジもある。しかしながら、これまでの同心バレル式混合シリンジは、複雑な組立部品が必要であり、あるいは、ユーザによる複数の操作ステップが必要であり、あるいは他の、製造、組み立て、又は操作を難しくさせる特殊な配慮が必要であった。例えば、幾つかの既存の同心バレル式混合シリンジは、互いに対して選択的に回転することが可能な同心の内側バレル及び外側バレルが必要であり、且つ、通過手段を内含する1つ以上の封止環が必要である。内側バレル内の穴を封止環内の通過手段に対して位置合わせする為には、これらのバレルを回転させなければならない。封止環内の通過手段は、封止環を貫通して半径方向に広がる開口と、半径方向に広がる開口から封止環の長手方向に延びる溝と、を含む。この配置により、溝は、外側バレルを半径方向に広がる開口に接続し、半径方向に広がる開口は、溝を内側バレル内の穴に選択的に接続する。これにより、流体が外側バレルから内側バレルに流入して、流体と内側バレル内の物質とが混ざり合うことが可能になる。そのような構成は、複雑な部品を必要とし、且つ、ユーザが装置を操作する為の面倒な要件を必要とする。
【0005】
他の同心バレル設計では、バレルの内側に設置されて長手軸と同軸である外側及び内側のテレスコピック管状エレメントが利用される。外側管状エレメント及びバレルは、液体のリザーバを保持するチャンバを形成する。外側管状エレメントは流体通路を内含し、流体通路は、液体がチャンバから内側管状エレメントに流入することを可能にする。内側管状エレメントは注射ポートのそばに端部があり、端部は封止材で覆われ、オリフィスを内含する。この内側管状エレメントは、弾性封止材で覆われたプランジャ端部を受ける。従って、そのような混合シリンジ構成では3つの管状エレメントが必要であり、外側同心チャンバ及び内側同心チャンバは第3のバレルの内側に存在する。
【0006】
混合シリンジ構成に同心バレルを用いることは、多大な複雑さを伴う。上述の事柄に加えて、混合シリンジにおいて同心バレルを利用する場合は、特に、容器の無菌状態の維持、封止の為の構成要素間の相互作用、通気要件、内力分布などの要因にも対処しなければならない。幾つかのデュアルチャンバシリンジでは、同心の内側バレル及び外側バレルが、流体を保持する環状空間を形成し、内側バレルと外側バレルとの間の1つ以上のアパーチャを利用することにより、液体が環状空間から内側バレルに流入して内側バレル内の物質と混ざり合うことが可能になる。液体は、管状空間内で摺動可能なプランジャの押下により、環状空間から内側バレルに押し出される。第1及び第2の封止帯が、環状空間内の内側バレルの周囲で摺動して受け止められ、これらの封止帯は内側バレルに沿って相互に間隔を空ける。これらの封止帯の位置によって、流体経路の無菌状態がどのように維持されるか、内力がどのように分布するか、並びに、通気がどのように行われるかが決定されうる。例えば、これらの封止帯は両方とも、最初はアパーチャの上部に位置して、第1の液体構成要素の為の封止された環状空間を形成してよい。この配置により、アパーチャは、プランジャの押下時に、無菌化されていなければならない環状空間において第2の封止帯より遠位にある空気をアパーチャから追い出すことを可能にする通気穴としても動作しなければならない。この通気要件は、困難さを引き起こし、設備及び処理ステップの追加を必要とする可能性があり、例えば、真空下で内側チャンバを充填することにより、内側チャンバと、外側バレルの、第2の再構成封止材の下の遠位部分と、からすべての空気を除去することなどが必要になる可能性がある。
【0007】
一般に、同心バレルを備える先行技術の混合装置は、構造が複雑であり、多くの場合は、液体物質を1つのチャンバから別のチャンバに流入させることを可能にする1つ以上のアパーチャの位置合わせを行う為にバレルを回転させる必要がある。これに加えて、無菌、封止、及び通気の為の様々な構成が使用されてきており、これらは混合装置の製造及び操作の容易さという観点で深刻な制限を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、背景技術の課題を解決するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで本発明の目的は、上記で参照されたような、先行技術の混合装置及び/又はシリンジに伴う問題のうちの1つ以上を軽減する複合プランジャ装置及び/又は複合プランジャ装置を有する混合シリンジを提供することである。
【0010】
本発明は、大まかには、混合シリンジ用複合プランジャを対象とし、複合プランジャは混合プランジャ及び送達プランジャを含み、これらは、複合プランジャの動作の少なくとも一部において協調及び/又は同期して動くことが可能である。
【0011】
本発明の第1の態様は、シリンジ混合装置用複合プランジャを提供し、前記複合プランジャは、複合プランジャの動作の少なくとも一部において混合プランジャ及び送達プランジャの協調又は同期した軸方向移動を推進するように解放可能に係合された混合プランジャ及び送達プランジャと、付勢部材を有するピルハウジングと、を含む。
【0012】
送達プランジャの軸方向の動き、移動、又は平行移動は、混合プランジャと送達プランジャとの係合が解除されるまで、混合プランジャの軸方向の動き又は移動をもたらすか引き起こすことが適切である。少なくとも1つの実施形態では、混合プランジャ及び送達プランジャの各要素は、少なくとも一部の動作において混合プランジャ及び送達プランジャが複合プランジャとして協調又は同期して移動することを可能にするように取り外し可能に係合可能であり、その後、一方又は両方の構成要素の単独又は独立の軸方向の動き又は移動を可能にするように係合解除されることが可能である。少なくとも1つの実施形態では、送達プランジャは、回転により混合プランジャから係合解除されてよい。好ましくは、混合プランジャと送達プランジャの係合解除により、送達プランジャの単独又は独立の軸方向の移動、動き、又は平行移動が可能になるか推進される。特定の実施形態では、混合プランジャは、その略近位端において1つ以上の接続部材を有してよい。送達プランジャは、混合プランジャの各接続部材と対応するか係合するか各接続部材を受ける1つ以上の接続凹部を有してよい。混合プランジャの接続部材と送達プランジャの接続凹部との間の接続は、解放可能に係合されると、送達プランジャ及び混合プランジャが複合プランジャ(即ち、一体化されたプランジャ)として軸方向に動くか移動することが可能になる。混合プランジャの接続部材と送達プランジャの接続凹部の解放により、送達プランジャの独立の軸方向移動が推進される。少なくとも1つの実施形態では、これは、混合プランジャに対する送達プランジャの軸回転を含んでよい。
【0013】
少なくとも1つの実施形態では、複合プランジャは1つ以上のロック又はロックシステムを含む。前述のように、混合プランジャの各接続部材と送達プランジャの各接続凹部は、それぞれ、送達プランジャと混合プランジャを解放可能に結合するロックを形成する。ロックの更なる一実施形態は、最初はピルハウジングと混合プランジャとを解放可能に結合して付勢部材を初期エネルギ蓄積状態で保持するロック部材を含む。ロックの更に別の実施形態は、送達プランジャが混合プランジャから係合解除されるまで回転しないようにするロック部材(例えば、カムクリップ)を含む。ロックの更に又別の実施形態はロック部材(例えば、ロックフィンガ又はロックプロング)を含み、これは、混合プランジャによる混合の完了時に、混合プランジャを定位置にロックし、その一方で、送達プランジャの軸方向の移動、動き、又は平行移動を可能にする。他の実施形態では、複合プランジャは、任意選択で、本明細書に開示のロックに対応するか、ロックを受けるか、ロックと係合することが可能な、送達プランジャの近位端のボタン、付勢面、面取り部、プロング、リップ、当接部など、及び/又はこれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上を含んでよい。
【0014】
複合プランジャは混合シリンジの混合装置に作用的に接続可能であることが適切である(これについては後で詳述する)。一実施形態では、複合プランジャは、複合プランジャを混合装置に接続する為のフランジコネクタを更に含んでよい。フランジコネクタは、フランジコネクタから略半径方向に延びるフィンガフランジを更に含んでよい。
【0015】
一実施形態では、複合プランジャを混合装置又は混合シリンジのバレル延長部(後で詳述)と係合することにより、複合プランジャが取り付けられた混合シリンジを形成することが可能である。
【0016】
複合プランジャが混合シリンジに取り付けられると、複合プランジャの付勢部材が、混合シリンジの針又は針アセンブリの引き込みを推進するように動作可能になる。付勢部材は、複合プランジャの1つ以上の構成要素の動きを推進する為にエネルギを蓄積したり解放したりすることが可能なばね部材、弾性部材、又は他の部材であってよい。少なくとも1つの実施形態では、付勢部材は圧縮ばねである。一実施形態では、複合プランジャは、ピルハウジングの1つ以上の凹部と係合して、最初は付勢部材をピルハウジング内でエネルギ蓄積状態に維持する、1つ以上の可撓部材を含んでよい。1つ以上の可撓部材が(例えば、送達プランジャ又は送達プランジャのボタンによって)ピルハウジングの1つ以上の凹部から係合解除されると、ただちに、付勢部材は近位方向に(即ち、ユーザに向かって)伸長することが可能になる。送達プランジャ又は送達プランジャ封止材と針アセンブリの1つ以上の構成要素(例えば、針)とが係合するのとほぼ同時に、又はその係合に続いて、付勢部材が伸長すると、シリンジのバレル内への針又は針アセンブリの引き込みが可能になる。
【0017】
別の態様では、本発明は、上述の第1の態様の複合プランジャを含む混合装置を提供する。
【0018】
一実施形態は混合シリンジ用混合装置を提供し、混合装置は、略同心関係にあって外側チャンバを形成する外側バレル及び内側バレルと、第1の態様の複合プランジャと、を含み、外側チャンバ内で混合プランジャが軸方向に可動である。
【0019】
混合装置は複数の封止材を含むことが好ましい。好ましくは、複数の封止材は近位封止材及び遠位封止材を含む。好ましい一実施形態では、複数の封止材は、混合プランジャに係合可能又は接続可能に結合されているか、接続可能であるか、貼り付けられていて、外側チャンバ内で摺動可能である近位封止材と、最初は内側バレル内で前記1つ以上の流体経路と封止係合している第1の位置にあって、外側チャンバ内で1つ以上の流体経路と封止係合している状態から前記1つ以上の流体経路と前記通気穴との間の中間又は少なくとも途中である第2の位置まで摺動可能である前記遠位封止材と、を含む。混合プランジャが動くと、プランジャが係合されているか接続可能に結合されているか貼り付けられている近位封止材が動く。この動きは、外側チャンバ内の第1の混合物質に中継され、同様に遠位封止材に中継される。従って、混合プランジャの軸方向移動は、間接的に(即ち、直接接触を必要とせずに)遠位封止材の前記第2の位置への軸方向移動を推進する。
【0020】
混合プランジャ及び遠位封止材が外側チャンバ内で摺動すると、1つ以上の通気穴は、空気が外側チャンバから大気中に出ることを推進するように動作可能であることが好ましい。1つ以上の通気穴は、前記外側バレルに一体的に形成されてよく、或いは、内側バレル及び/又は外側バレルに取り付けられるか貼り付けられた通気穴キャップであってよい。いずれの実施形態でも、導管、孔、多孔性メンブレン、折りたたみ可能部品などが利用されてよい。例えば、少なくとも1つの実施形態では、通気穴キャップは、1つ以上の通気導管を含むプラスチック製通気穴キャップであり、プラスチック製通気穴キャップは、外側バレルの遠位端において外側チャンバを封鎖しているが、混合プランジャが押下されて遠位封止材が移動すると、空気が1つ以上の通気導管を通り抜けて大気中に出ることを可能にする。
【0021】
一実施形態では、混合シリンジは更に、取り外し可能な安全キャップを含む。取り外し可能な安全キャップは、使用前の(例えば、輸送中の)遠位封止材の望ましくない移動を阻止することが好ましい。取り外し可能な安全キャップは、遠位封止材と隣接又は接触する為に、各通気導管に挿入可能な複数の突起を含んでよい。混合シリンジは更に、外側バレルに取り付けられているか外側バレルと一体的に形成されているバレル延長部を含んでよい。バレル延長部は、任意選択で、複合プランジャ装置のフランジとの接続を推進するフランジフックを含んでよい。
【0022】
適切なことに、混合装置は、複数の混合物質と、1つ以上の通気穴と、少なくとも1つの封止材と、を含むことが可能であり、上記複数の混合物質においては、少なくとも第1の混合物質が外側バレルと内側バレルとの間の外側チャンバ内に配置可能であり、少なくとも第2の混合物質が前記内側バレル内の内側チャンバ内に配置可能であり、内側バレルは、1つ以上の流体経路を含み、これらの流体経路を通じて第1の混合物質が内側バレル内の内側チャンバに流入して第2の混合物質との混合物を形成することが可能であり、上記1つ以上の通気穴は前記外側チャンバと流体連通し、上記少なくとも1つの封止材は、前記外側チャンバ内に配置されて、内側バレル内の前記1つ以上の流体経路と封止係合している第1の位置から、前記1つ以上の流体経路と前記1つ以上の通気穴との間の少なくとも途中である第2の位置まで軸方向移動することが可能である。少なくとも1つの実施形態では、内側バレルと外側バレルは互いに対して回転できない。少なくとも第1の混合物質の、内側バレル内の内側チャンバへの流入を推進すること、並びに、内側バレル内の前記1つ以上の流体経路と封止係合している第1の位置から、前記1つ以上の流体経路と前記通気穴との間の中間又は少なくとも途中である前記第2の位置までの前記封止材の軸方向移動を推進することの為に、混合プランジャは、外側バレルと内側バレルとの間の外側チャンバ内で軸方向移動可能であってよい。シリンジは、患者の治療の為の1つ以上の混合物質の保管、輸送、混合、及び注射の為に利用されてよい。後で詳述されるように、シリンジは更に、使用後の針を引き込む安全機能を含んでよく、これは、望ましくない針刺しを防ぎ、シリンジの再使用を阻止する。
【0023】
1つ以上の流体経路は、1つ以上のアパーチャ、穴、ボア、ポート、貫通口、又は導管を含んでよい。これらは任意の好適な形状、構成、配置、及び/又は個数であってよい。流体経路は複数のアパーチャを含むことが好ましい。これらのアパーチャは、半径方向のボアであってよく(即ち、バレルの軸に垂直であってよく)、角度が付いたボアであってよく(即ち、バレルの軸に対して角度が付いていてよく)、ヘリカルであってよく(例えば、バレル壁の厚さをトラバースする際には角度が付いた半径方向の経路であってよく)、或いは、任意の個数の他の構成であってよい。アパーチャの個数及び配置は、位置決め間隔及び配列に関しては、所望の混合特性に応じて調節されてもよい。そこで、アパーチャのこれらのパラメータは、混合シリンジの所望の混合、希釈、及び他の流体流特性を推進するように構成されてよい。適切なことに、少なくとも1つの実施形態では、混合装置は、国際公開WO2013/020170に記載されているものと実質的に同様の1つ以上の構成要素を含んでよいが、これらに限定されない。
【0024】
第1及び第2の混合物質は、1つ以上の流体又は1つ以上の固体を含んでよい。外側チャンバ内に配置可能な第1の混合物質は、流体であってよい。流体は、薬学的活性流体であってよく、或いは、希釈液などの薬学的不活性流体であってよい。内側チャンバ内に配置可能な第2の混合物質は、薬学的活性固体又は薬学的活性流体又は薬学的不活性流体であってよい。一実施形態では、内側チャンバは薬学的活性固体を収容し、外側チャンバは薬学的不活性希釈液(水など)を収容し、希釈液が1つ以上のアパーチャを通って外側チャンバから内側チャンバに流入することにより、薬学的活性固体との混合が推進される。希釈液と薬学的活性固体との間の相互作用は、その後の患者への送達に備えての薬学的活性固体の再構成を可能にする。別の実施形態では、内側チャンバは薬学的活性固体を収容し、外側チャンバは薬学的活性流体を収容し、流体が1つ以上のアパーチャを通って外側チャンバから内側チャンバに流入することにより、内側チャンバ内の薬学的活性固体との混合が推進される。薬学的活性流体と薬学的活性固体との間の相互作用は、その後の患者への送達に備えての薬学的活性固体の再構成を可能にする。更に別の実施形態では、内側チャンバは第1の薬学的活性流体を収容し、外側チャンバは第2の薬学的活性流体を収容し、第1の薬学的活性流体が1つ以上のアパーチャを通って外側チャンバから内側チャンバに流入することにより、内側チャンバ内の第2の薬学的活性流体との混合が推進される。第1の薬学的活性流体と第2の薬学的活性流体との間の相互作用は、その後の患者への送達に備えての薬学的活性流体同士の混合を可能にする。従って、混合装置は、複数の構成要素の薬学的物質の外側チャンバ及び内側チャンバ内での保管を推進することにより、輸送中及び長期保管中の薬学的物質の安定性及び有効性を維持することが可能である。
【0025】
更なる一態様では、本発明は、上述の態様の混合装置と、針を含む針アセンブリと、を含む混合シリンジを提供する。関連する一態様では、本発明は又、上述の態様の混合装置と、混合装置を針アセンブリ及び/又は(静脈内送達管などの)無針アクセス装置に接続することが可能な接続構成要素と、を含む混合シリンジを提供する。そのような接続構成要素は、幾つかの知られている接続機構を利用してよく、例えば、ルアー接続、ルアーロック接続、ねじ込み接続などを利用してよい。
【0026】
好ましい一形態では、混合シリンジは、引き込み式針を含む引き込み式混合シリンジである。送達プランジャは、引き込み式針と係合して針の引き込みを推進することが可能であることが好ましい。引き込み式針に関連して用いられている「係合(する)」という用語は、ある範囲の接続機構を意味するものであり、例えば、これには、接触、インタロック、捕捉、接続などが含まれる。適切なことに、針の引き込みは複合プランジャの付勢部材によって推進され、付勢部材は、針引き込みを推進する為にエネルギを蓄積したり解放したりすることが可能なばね部材、弾性部材、又は他の部材である。当然のことながら、引き込み式シリンジは、本明細書に開示の複合プランジャ及び/又は混合装置とともに動作可能な任意の針引き込み機構を含んでよい。針アセンブリは引き込み式針を含んでよく、引き込み式針は、プランジャ部材と係合可能なカニューレ及び針ボディを含む。プランジャ封止材が、プランジャ部材に取り付けられて前記針ボディと係合可能であることが好ましい。好ましくは、針アセンブリは更に、引き込み式針を保持する針封止材を含んでよく、この場合、引き込み式針のカニューレは針封止材を貫通して、ユーザ、患者、又は他の受容者への混合物質又は混合物の送達を可能にする。任意選択で、針アセンブリは更に、引き込み前の針の保持を支援するリテーナと、針の解放を支援するイジェクタと、を含んでよい。例えば、針アセンブリ、針アセンブリの構成要素、及び針引き込み機構は、国際公開WO2006/119570、国際公開WO2006/108243、国際公開WO2009/003234、国際公開WO2011/075760、及び国際公開WO2013/020170、及び/又は米国特許出願第13/693,915号に記載のとおりであってよいが、これらに限定されない。又、引き込み式針アセンブリが利用されるかどうかにかかわらず、針アセンブリを接続するために(例えば、WO2011/057335の場合と同様に)ねじ込み式接続及び/又はルアー接続が使用されてよいが、これらに限定されない。
【0027】
複合プランジャの組み立て、梱包、及び輸送は、混合シリンジにおけるそれら以外の部分とは切り離された構成要素として行われてよい。少なくとも1つの実施形態では、シリンジの混合装置部分は、独立した構成要素として組み立て、滅菌、及び/又は充填が行われてよく、保管及び/又は輸送のために封止メンブレンによって封止されてよい。封止メンブレンは、任意のタイプの無菌メンブレンであってよく、例えば、ファブリック封止材(具体的には、TYVEKという商品名で販売されているもののような不織布製封止材)、又は他の任意のタイプの封止無菌メンブレンであってよい。そして、複合プランジャ装置を混合装置に取り付けることによって混合シリンジが形成されてよい。封止メンブレンは、混合シリンジの動作中にユーザによって取り除かれるか自動的に取り除かれてよく、或いは、送達プランジャによって穴をあけられてよい。実施形態によっては、封止メンブレンは、内側バレルのプランジャ封止材と近位端との間の部分の無菌状態を維持するように機能するものであって、混合シリンジの動作直前又は動作中に取り除かれたり穴をあけられたりしてよい。
【0028】
更に別の態様では、本発明は複合プランジャの組み立て方法を提供し、この方法は以下のステップを含む。、
(a)混合プランジャと送達プランジャとを解放可能に係合させる。
(b)混合プランジャに付勢部材を装着する。
(c)ピルハウジング内で付勢部材にエネルギを蓄積する。
(d)ピルハウジングを混合プランジャに解放可能に係合させて付勢部材を初期エネルギ蓄積状態で保持する。
【0029】
好ましい一実施形態では、複合プランジャ装置の組み立て方法は、ステップ(b)の前に複合プランジャをフランジコネクタに貫通挿入するステップを更に含む。
【0030】
更なる一態様では、本発明は、複合プランジャを含む混合シリンジの製造方法を提供し、この方法は以下のステップを含む。
(A)混合シリンジの外側チャンバ内に第1の混合物質を配置し、混合シリンジの外側チャンバに第1の(近位)封止材を挿入して第1の混合物質と接触させる。
(B)混合シリンジの内側チャンバ内に第2の混合物質を配置し、内側チャンバにプランジャ封止材を挿入する。
(C)複合プランジャの送達プランジャを内側バレル内での軸方向平行移動に備えて位置合わせする。送達プランジャは、最初は内側バレルの1つ以上のアパーチャの近位にあってプランジャ封止材に接続することが可能である。
(D)複合プランジャのうちの混合プランジャを外側チャンバ内に取り付ける。混合プランジャは第1の(近位)封止材と接触する。
【0031】
一実施形態では、混合シリンジの製造方法は更に、複合プランジャ装置のフランジコネクタとシリンジのバレル延長部とを接続することによって複合プランジャ装置をシリンジに取り付けるステップを含んでよい。
【0032】
一実施形態では、この方法は更に、ステップ(B)の後に混合シリンジを封止メンブレンで封止するステップを含んでよい。好ましくは、この実施形態は、ステップ(C)で想定されるように送達プランジャをプランジャ封止材に接続する前に、薬剤送達の為に封止メンブレンを取り外すステップを含む。封止メンブレンは、ここまで記載されたものであってよく、たとえば、TYVEKという商品名で販売されている不織布メンブレンであってよく、これに限定されない。
【0033】
少なくとも1つの実施形態では、この方法は更に、ステップ(A)の前に、混合シリンジの外側チャンバに遠位封止材を挿入するステップを含む。少なくとも1つの実施形態では、この方法は更に、ステップ(A)の前に、1つ以上の通気穴を含む通気穴キャップを、内側バレルの、1つ以上のアパーチャより遠位に位置する部分に貼り付けるステップを含む。外側バレルの遠位端が通気穴キャップに接続されることが好ましい。
【0034】
更なる実施形態では、この方法は更に、1つ以上のアパーチャより遠位に位置する内側チャンバに針アセンブリを挿入するステップを含む。
【0035】
更に別の一態様では、本発明は、混合装置を含むシリンジの操作方法を提供し、この方法は以下のステップを含む。
(i)混合装置内で複数の物質を混合するように複合プランジャの混合プランジャを操作する。
(ii)複合プランジャの送達プランジャを回転させて送達プランジャを混合プランジャから係合解除する。
(iii)ステップ(i)で混合された物質を受容者に送達するように複合プランジャの送達プランジャを操作する。
【0036】
少なくとも1つの実施形態では、この方法は更に、ステップ(iii)の後に、針をシリンジに引き込む為に針引き込み機構を始動させるステップを含む。針引き込み機構の始動は、ほぼ全ての物質が受容者に送達されてから行われることが好ましい。
【0037】
本明細書全体を通して、特に断らない限り、「含む(comprise、comprises、又はcomprising)」は排他的ではなく包括的に使用され、従って、定められた整数又は整数の集まりは、1つ以上の他の定められていない整数又は整数の集まりを含んでよい。
【0038】
本明細書では、本発明の非限定的な実施形態を、以下の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1A】複合プランジャ装置を含む混合シリンジの一実施形態を示す図である。
図1B図1Aに示された、複合プランジャ装置を含む混合シリンジの実施形態を90度回転させて拡大した図である。
図2】複合プランジャ装置を含む混合シリンジの一実施形態の分解図である。
図3A】本発明の一実施形態による、複合プランジャ装置を有する混合シリンジの一実施形態の等角図である。
図3B図3Aの実施形態の、流体が通過する為の1つ以上のアパーチャを示す為に遠位封止材を省略した等角図である。
図3C】任意選択の安全キャップが更に取り付けられた混合シリンジの一実施形態を示す図である。
図4】複合プランジャ装置の断面図である。
図5】混合シリンジを形成する為に、図4に示された複合プランジャ装置が接続されてよい混合装置の断面図である。
図6A】複合プランジャ装置を含む混合シリンジの一実施形態を示す図であって、充填及び組み立ての後の様子を示す図である。
図6B】複合プランジャ装置を含む混合シリンジの一実施形態を示す図であって、混合シリンジの混合プランジャにより混合を推進する為に複合プランジャ装置を最初に押下した後の様子を示す図である。
図6C】複合プランジャ装置を含む混合シリンジの一実施形態を示す図であって、注射を可能にする為に送達プランジャを回転させた後の様子を示す図である。
図6D】複合プランジャ装置を含む混合シリンジの一実施形態を示す図であって、混合シリンジの送達プランジャにより薬剤送達を推進する為に複合プランジャ装置を更に押下した後の様子を示す図である。
図6E】混合シリンジが引き込み式混合シリンジである、複合プランジャ装置を含む混合シリンジの一実施形態を示す図であって、引き込み機構が始動され、針がシリンジ内に引き込まれた後の様子を示す図である。
図7A】複合プランジャ装置を含む混合シリンジの拡大断面図であって、充填及び組み立ての後の様子を示す図である。
図7B】複合プランジャ装置を含む混合シリンジの拡大断面図であって、混合シリンジの混合プランジャにより混合を推進する為に複合プランジャ装置を最初に押下した後の様子を示す図である。
図7C】複合プランジャ装置を含む混合シリンジの拡大断面図であって、注射を可能にする為に送達プランジャを回転させた後の様子を示す図である。
図7D】複合プランジャ装置を含む混合シリンジの拡大断面図であって、混合シリンジの送達プランジャにより薬剤送達を推進する為に複合プランジャ装置を更に押下した後の様子を示す図である。
図7E】混合シリンジが引き込み式混合シリンジである、複合プランジャ装置を含む混合シリンジの拡大断面図であって、引き込み機構が始動され、針がシリンジ内に引き込まれた後の様子を示す図である。
図8】引き込み前の、送達プランジャと係合している針アセンブリの一実施形態を示す図である。
図9A】本発明の少なくとも1つの実施形態による、複合プランジャ装置の混合プランジャ構成要素と送達プランジャ構成要素との間の係合解除の拡大断面図である。
図9B図9Aに示された実施形態を90度回転させた図である。
図10】混合プランジャの可撓部材とピルハウジングとの間の係合解除の拡大断面図であって、この係合解除によって付勢部材がその初期エネルギ蓄積状態から近位方向に伸長することが可能になる様子を示す図である。
図11A】複合プランジャ装置を含む引き込み式混合シリンジの、最終位置における拡大断面図である。
図11B図11Aに示された実施形態を90度回転させた図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1及び図2を参照すると、混合シリンジの一実施形態1000が、混合装置100、複合プランジャ装置10、及び引き込み式針アセンブリ400を含む。混合装置100は、壁111及び内側チャンバ112を含む内側バレル110と、壁121を含む外側バレル120と、複合プランジャ装置10と、引き込み式針アセンブリ400と、を含む。混合装置100の外側チャンバ140は、内側バレル110の壁111と外側バレル120の壁121との間に形成されている。内側バレル110及び外側バレル120は、プラスチック及びガラスを含む幾つかの材料のどれから作られてもよいが、ガラス製であることが好ましい。内側バレル110と外側バレル120は略同心関係にある為、内側バレル110と外側バレル120は略共通の中央長手軸を保有する。内側バレル110と外側バレル120は、互いに対して回転できない。
【0041】
複合プランジャ装置10は、送達プランジャ12、混合プランジャ30、付勢部材21、ピルハウジング20、カムクリップ22、及びフランジコネクタ25を含む。フランジコネクタ25は、複合プランジャ装置10を、バレル延長部126において、混合装置の内側バレル110及び/又は外側バレル120の近位端と接続する為に利用されてよい。送達プランジャ12は、ロッド13、ロックアウト凹部17、接続凹部14、及び封止係合部材15を含み、封止係合部材15は、本実施形態ではねじ込み式であり、相補的な、プランジャ封止材80のねじ込み凹部82と係合することが可能である。プランジャ封止材80は更に針係合部分81を含む。送達プランジャ12は更に、ボタン23が解放可能に接続される近位端16を含む。混合プランジャ30は、可撓部材31及びロックアウト部材37を有するヘッド32、接続部材33、及びシャフト34を含み、シャフト34は遠位端35及びロックフィンガ38を含む。図1Bに示されるように、混合プランジャ30のロックアウト部材37は、少なくとも最初は、組み立て、輸送、保管などの為に送達プランジャ12と係合していてよい。動作時には、混合プランジャ30を回転させてよく、これによって、カムクリップ22が回転し、これによって、ロックアウト部材37が、カムクリップ22によって、実線矢印で示された方向に外向きに曲げられるか付勢され、これによって、ロックアウト部材37が送達プランジャ12から外れる。本明細書において詳述されるように、ピルハウジング20の解放後、カムクリップ22は近位方向に平行移動してロックアウト部材37を解放する。ロックアウト部材37は、対応する、送達プランジャのロックアウト凹部17と係合することが可能になって、薬剤送達及び針引き込みの後に送達プランジャ12が遠位方向に動くことを防ぐ。カムクリップ22及びロックアウト部材37は、装置がロックアウトされたことをユーザに知らせる為に、触覚及び/又は聴覚のフィードバックを提供するように構成されてよい。これは、有用な任意選択の安全機能を複合プランジャ装置10に提供する。同様に、接続部材33は、送達プランジャの接続凹部14と係合することにより、混合段階が完了する前に送達プランジャ12が回転することを防ぐ。
【0042】
組み立て及び物質充填の後、複合プランジャ装置10との接続が行われるまで、封止メンブレン40が最初はバレル延長部126に位置してバレルの近位端を覆ってよい。或いは、封止メンブレンは、内側バレル110の近位端に取り付けられて内側チャンバ112だけを覆ってよい。封止部材40は、医療機器及び製薬業界で使用されている各種の無菌のファブリックや材料(例えば、TYVEK)のいずれであってもよい。封止メンブレン40の引き抜きは、自動的に行われてよく、或いは、動作時に混合シリンジのユーザによって行われてもよい。
【0043】
針アセンブリ400は、引き込み式針410と、針封止材430と、(図8に見られる)リテーナ440と、イジェクタ450と、を含み、引き込み式針410は、プランジャ係合セグメント412を有する針ボディ411と、流体端414を有するカニューレ413と、を含む。
【0044】
複合プランジャ装置10は、混合プランジャ30及び送達プランジャ12が協調及び同期して移動することを可能にする。図1図2、及び図3A〜3Cを参照すると、混合プランジャ30は、混合シリンジ1000の混合装置100の外側バレル120の外側チャンバ140内で軸方向に摺動可能であり、これによって、外側チャンバ140の流体内容物を、1つ以上のアパーチャ114を介して内側チャンバ112に送達する。送達プランジャ12は、混合シリンジ100の内側バレル110の内側チャンバ112内で軸方向に摺動可能であり、これによって、プランジャ封止材80のねじ込み凹部82と係合して、プランジャ封止材80を軸方向に摺動させて内側チャンバ110の流体内容物を送達し、その後、引き込み式針410と係合してこれを引き込む。
【0045】
典型的には、混合装置100の外側チャンバ140が液体物質を収容し、内側チャンバ112が固体物質を収容し、液体物質が内側チャンバ112内で固体物質と混ざり合って、注射に適した混合物質を形成することが可能である。しかしながら、少なくとも1つの実施形態では、外側チャンバ140及び内側チャンバ112の両方が液体物質と接触する。
【0046】
第1の(近位)封止材160が混合プランジャ30のシャフト34の遠位端35と接触する。第2の(遠位)封止材170が外側チャンバ140内で近位封止材160より遠位に位置する。第1の(近位)封止材160は、混合プランジャ30のシャフト34が接触して動くことにより、外側チャンバ140内を軸方向に摺動可能である。図3Bに最もよく示されるように、内側バレル壁111のアパーチャ114が与える流体経路によって、流体が外側チャンバ140から内側チャンバ112に流入することが可能になる。第2の(遠位)封止材170は、最初は、アパーチャ114と封止係合している(例えば、アパーチャ114を覆っている。図3A図3Bを比較されたい)。
【0047】
外側バレル120は更に、複数の通気穴122を含む通気キャップ123を含み、通気穴122と第2の(遠位)封止材170との間に通気空間142が位置する。物質はこの通気空間142と接触しない為、通気空間142は無菌でなくてよく、大気に対して開放されてよい。この特徴により、混合段階の動作において第2の(遠位)封止材170が複数の通気穴122に向かって移動して、1つ以上のアパーチャ114が開き、流体が外側チャンバから内側チャンバに流れることが可能になる。第2の(遠位)封止材170の移動後の位置の結果として、外側チャンバ140から内側チャンバ112への流体経路は無菌状態が維持される。混合シリンジ100は更に、その近位端においてバレル延長部(図では見えない)を含む。
【0048】
図3A〜3Cに示された実施形態では、外側バレル120は内側バレル110より短い。この構成は、例えば、内側バレル110の一部分の周囲に伝熱スリーブ(図示せず)を配置して、その部分に伝熱スリーブを直接接触させることが可能になるなど、幾つかの利点がある。このことは、内側チャンバ112内に配置された液体物質をその場で凍結乾燥することを可能にする上で有用であり、これは、混合シリンジ100の製造中又は製造後に液体物質を充填し、その液体物質を凍結乾燥して粉末にすることを可能にすることにより行われる。
【0049】
別の実施形態では、内側バレル110と外側バレル120は、長さがほぼ同じである。この実施形態は、外側チャンバ140を手段として、見た目をより良くしたり、容量を増やしたりしてよい。又、第1の(近位)封止材160及び第2の(遠位)封止材170は、外側チャンバ140内にも摺動可能に位置する。
【0050】
図3Cに示された実施形態では、外側バレル120のブラケット125に、任意選択の安全キャップ180が取り外し可能に取り付けられている。安全キャップ180は環状ボディ182及び突起181を含み、突起181は、遠位封止材170と隣接するか、これと接触するように、それぞれの通気穴122(図3Cでは見えない)に挿入されて貫通している。これにより、輸送時の空気圧変化に対する反応としての、或いは、意図された活性化の前の混合プランジャ30をユーザが不用意に動かすことによる、遠位封止材170の望ましくない動きが抑えられる。
【0051】
図4に示されるような複合プランジャ装置10は、図5に示されるような、混合シリンジ100の他の部分とは切り離されて組み立てられてよい。これが望ましい可能性があるのは、例えば、製薬会社が、その標準的な充填仕上げラインでシリンジに薬剤物質を充填し、そのような充填済み部品を封止して別の最終組み立て会社に出荷することを望む場合である。同様に、これは、出荷、輸送、又は他の幾つかの理由で望ましい可能性がある。複合プランジャ装置は更に、送達プランジャ12上に接続凹部14を含む。複合プランジャ30の対応する接続部材33は、接続凹部14と係合することにより、送達プランジャ12に解放可能に接続されてよく、これによって、一体化された混合プランジャ10が形成される。組み立て後、図6Aに示されるように、複合プランジャ10が混合シリンジ1000の残り部分に取り付けられてよい。上述のように、封止メンブレン40の引き抜きは、混合シリンジの動作時に、ユーザによって、又は自動的に行われてよい。従って、図1図4図6A、及び図7Aで明らかにされている実施形態において、プランジャ封止材80は、複合プランジャ10と切り離して与えられてよく、少なくとも1つの実施形態ではそのようにされることが好ましい。そのような構成では、複合プランジャ10が混合装置100に嵌め込まれてから、送達プランジャ12がプランジャ封止材80に接続される。この接続には1つ以上の既知の接続方式が利用されてよく、例えば、ねじ込み接続、穿刺接続、スナップ嵌合接続などが利用されてよく、これらは当業者であれば容易に理解されるであろう。
【0052】
混合シリンジ100の動作について、図6A〜6E及び図7A〜7Eを具体的に参照しながら説明する。これらの実施形態では、外側チャンバ140が流体物質を収容し、内側チャンバ112が固体物質を収容し、流体物質が内側チャンバ112内で固体物質と混ざり合って、注射に適した混合流体物質を形成することが可能である。図6Aにおいて明らかであるように、第2の(遠位)封止材が外側チャンバ140内で動くことを可能にする為に、(図3Cに示された)任意選択の安全キャップ180が外側バレル120から取り外されている。
【0053】
最初、第2の(遠位)封止材170は内側バレル壁111のアパーチャ114を覆うことにより、液体が外側チャンバ140から内側チャンバ112に流入しないようにしている。複合プランジャ10がボタン23及び/又は送達プランジャ12において押下されると(すなわち、針400に向かって実線矢印方向に軸方向移動すると)、混合プランジャ30が実線矢印方向に軸方向移動する。このように、送達プランジャ12を押下すると、混合プランジャ30が協調的に同時に押下される。これによって、第1の(近位)封止材160が外側チャンバ140内で遠位方向に押され、これによって、外側チャンバ140に収容された液体が押されて第2の(遠位)封止材170が移動し(すなわち、引き込み式針400に向かって移動し)、これによって、アパーチャ114が開いて、流体が外側チャンバ140から内側チャンバ112に移動することが可能になる。具体的には、混合プランジャ30が押下されると、シャフト34の遠位端35が第1の(近位)封止材160と接触し、これを外側チャンバ140内の遠位方向に押す。図6Bに示されるように、混合プランジャ30が実線矢印方向に押下され続けると、第1の(近位)封止材160が外側チャンバ140内で更に遠位方向に押されて移動し、これによって、第1の(近位)封止材160が第2の(遠位)封止材170と接触するまで、流体が外側チャンバ140から内側チャンバ112へ押し流され続ける。封止材160及び170は外側チャンバ140内で移動端に到達するまで押されてよく、移動端では第2の(遠位)封止材170が通気キャップ123と接触する。この位置では、封止材160がアパーチャ114と封止係合するか(即ち、アパーチャ114を覆うか)、封止材160及び170の両方がアパーチャ114と部分的に封止係合してもよい。後者が可能なのは、例えば、第2の(遠位)封止材170がアパーチャ114を完全に開放しなくても流体が外側チャンバ140から内側チャンバ112に流れる場合である。
【0054】
この時点で、外側チャンバ140から内側チャンバ112への流体送達が完了する。国際公開WO2013/020170に記載されているように、混合プランジャ30はロックプロング又はロックフィンガを含んでよく、これは、外向きに付勢されて、バレル延長部126の内側リップ又は内側タブと係合することにより、混合プランジャ30がこの場所を越えて近位方向に(即ち、ユーザに向かって)動くことを阻止するロックシステムを形成する。例えば、このロックシステムにより、混合プランジャ30を外側チャンバ140から引き抜くことができないようになっている。送達プランジャ12の力を、針410を通して、液体物質を注射することに向ける際には、液体物質を外側チャンバ140内に戻すのではなく、混合後の混合プランジャ30をロックすることが有用であろう。これは、第1の(近位)封止材160をアパーチャ114と封止係合するように最終的に位置づけることによっても達成可能である。同様に、混合プランジャ30を軸方向に完全に動かすこと、及び/又は、混合プランジャ30と外側バレル120の1つ以上のデテント態様とが係合することにより、送達プランジャ12、又は内側バレル110のロック態様がロック解除されて、送達プランジャの軸方向押下が可能になってよい。これにより、この装置による適正な注射処置が行われること、並びに、患者への注射の前に治療用薬剤の再構成又は混合が可能になっていることをユーザが確認する為の有用なフィードバックが提供される。以下では、ロックシステムの一実施形態を説明する。
【0055】
当然のことながら、第2の(遠位)封止材170と通気穴122との間の通気空間142は混合装置100内のどの物質とも接触することがない為、通気空間142の領域内では無菌状態を維持しなくてよい。通気空間142は空気で満たされてよく、この空気は、混合プランジャ30が押下され、第2の(遠位)封止材170が軸方向に移動したときに、外側バレル120と内側バレル110との間、及び通気穴122と第2の(遠位)封止材170との間の環状空間から放出されてよい。更に、第2の(遠位)封止材170が最初は内側バレル110の壁111のアパーチャ114を覆っている為、この、外側チャンバ140と内側チャンバ112との間の流体経路の無菌状態が、混合装置100の使用中は維持される。外側バレル120及び内側バレル110のどの非無菌部分とも接触する可能性があるのは第2の(遠位)封止材170だけであり、これは、外側チャンバ140から内側チャンバ112に流入するように仕向けられる流体が非無菌部分と接触することがない為である。
【0056】
又、当然のことながら、本発明の少なくとも1つの実施形態では、引き込み式混合シリンジ100は「閉鎖系」である。これは、注射針による以外に流体経路の通気を行うことができないことを意味する。内側チャンバ112内での物質の混合が完了すれば、シリンジ100は使用準備が整う。堅固な針シールド119が取り外され、針410のカニューレ413が受容者に挿入され、送達プランジャ12が押下されると、内側チャンバ112の混合された流体内容物が受容者に送達される。標準的な医療行為、例えば、シリンジを手動で攪拌して物質同士の混合を更に推進すること、及び/又は、注射前にシリンジに呼び水を入れて残留空気を完全に追い出すことは、針挿入及び流体内容物の注射の前に実施されてよい。
【0057】
本発明の複合プランジャ装置10は、ユーザが1つのプランジャだけを操作することにより(即ち、送達プランジャ12のみを押下することにより)シリンジの動作を駆動することを可能にする。本明細書に記載のように、最初は送達プランジャ12と混合プランジャ30とが接続されている為、送達プランジャ12を軸方向に動かすと、混合プランジャ30の協調的な関連する動きが引き起こされる。混合段階が完了した後、プランジャ12及び30の一方又は両方が互いを係合解除するように操作されてよい。例えば、少なくとも1つの実施形態では、接続部材33が、混合段階の完了後に送達プランジャ12を回転可能にして、送達プランジャ12を混合プランジャ30から係合解除する。例えば、混合プランジャ30は、送達プランジャ12の対応する接続凹部14と解放可能に係合する接続部材33を有してよい。混合段階が実施され、完了すると、接続部材33の、接続凹部14からの係合解除が行われる。一実施形態では、接続部材33の、接続凹部14からの係合解除は、接続部材14と外側バレル120の近位端との間の接続によって接続部材33が外側に(即ち、図6B及び図7Bの中空矢印方向に)押し出されることにより、行われる。係合解除後、混合プランジャ30の位置又は操作の如何に関わらず、且つ、この位置又は操作とは切り離されて、送達プランジャ12の更なる操作が行われてよく、例えば、遠位方向への軸方向移動が行われてよい。図6B及び図7Bに示された段階の終了時に、送達プランジャ12を軸Aの周りに回転させることにより、送達プランジャ12を混合プランジャ30から係合解除してよい。そのような係合解除の後、図6C及び図7Cに示されるように、送達プランジャ12及び任意選択のボタン23を軸Aの周りに回転させることが可能になる。
【0058】
混合段階の完了後、ユーザが複合プランジャ装置10の送達プランジャ12を押下し続けることにより、投与分の薬剤を患者に送達することが可能である。混合段階は、理想的には、患者への注射の前に行われる。上述のような混合及び送達プランジャ12の回転の後、送達プランジャ12を押下することにより、シリンジ1000を用いて患者への注射を行い、投与分の薬剤を送達することが可能である。これは、図6D及び図7Dにおいて、実線矢印方向の動きとして示されている。
【0059】
本発明の少なくとも1つの実施形態では、複合プランジャ装置10は、針引き込み機構を有する引き込み式混合シリンジ1000とともに利用される。本発明の少なくとも1つの実施形態では、針引き込みは、本質的には、WO2011/075760及びWO2013/0210170に記載されているものと同様である。流体内容物の送達中は、送達プランジャ12が内側チャンバ110内を図6D及び図7Dの実線矢印方向に軸方向移動する。図8に示されるように、プランジャ封止材80は針封止材430に載っており、その針封止材430はイジェクタ450に載っている。更に、イジェクタ環451がリテーナ440のアーム441A、441Bのフック端部442A、442Bを図8の実線矢印方向に半径方向外向きに動かして、針ボディ411をリテーナ440から係合解除することにより、引き込み式針410をその後の引き込みに備えて解放する。この時点で、プランジャ封止材80の凹座部81は、引き込み式針ボディ411のプランジャ係合セグメント412と係合しており、カニューレ413の近位端414が凹部86によって受けられている。これにより、引き込み式針410が挿入プランジャ12と実質的に結合される。
【0060】
図6E及び図7Eに示されるように、流体内容物の送達終了時に引き込み式針410が引き込まれる為には、ばね21が、混合プランジャ30のヘッド32とピルハウジング20との間で圧縮されてエネルギが蓄積された状態で保持されているエネルギ蓄積状態から圧縮解除されなければならない。これらの構成要素は、可撓部材31によって解放可能に係合されて保持されており、ロック窓29においてピルハウジング20内に接続されている。これらの構成要素の係合解除は、薬剤送達終了時に送達プランジャ12の近位端16及び/又はボタン23によって推進される。送達プランジャ12及び/又はボタン23が略完全に押下されて(即ち、図6D及び図7Dの実線矢印のように遠位方向に軸方向移動して)内側チャンバ110から流体が注射されると、一方又は両方が可撓部材31と接触することが可能である。この接触により、可撓部材31は半径方向外向きに(図6D及び図7Dの中空矢印方向に)動いて、ピルハウジング20のロック窓29との係合が外れる。この係合解除により、圧縮されていたばね21は、圧縮解除されてピルハウジングを押すことが可能になり、これによって、ピルハウジングが送達プランジャ12及び/又はボタン23を押して、これらを引き込む。混合プランジャ30はフランジコネクタ25及び/又はバレル延長部126とほぼ接触又は接続したままとなり、一方、針ボディ411と、カニューレ413を含む引き込み式針410とに結合された送達プランジャ12は、ばね21の圧縮解除によって軸方向に近位方向に引き込まれ、これによって引き込み式針410が引き込まれる。図6E及び図7Eは、そのような構成要素の、混合、薬剤送達、及び針引き込みの各段階が完了した後の略最終的な位置を示す。
【0061】
適切なことに、引き込み式混合シリンジ1000は、混合プランジャ30及び/又は挿入プランジャ12の為の1つ以上のロック又はロックシステムを含む。図9Aに示されるように、最初は接続部材33が、接続凹部14への解放可能な接続により、混合プランジャ30を送達プランジャ12にロックする。接続部材33は、混合段階の終了時近く又は終了時に内側バレル壁111と接触することなどにより、半径方向外向きに(中空矢印方向に)曲げられる。係合解除後、送達プランジャ12を軸Aを中心に回転させることが可能になり、且つ/又は、軸方向に更に押下することが可能になる。前述のように、付勢部材21は、最初は、混合プランジャ30のヘッド32とピルハウジング20との間で圧縮されてエネルギが蓄積された状態で保持される。これらの構成要素は、可撓部材31によって解放可能に係合されて保持されており、ロック窓29においてピルハウジング20内に接続されている。動作中は、送達プランジャ12を回転させて、カムクリップ22を回転させることが可能である。カムクリップ22が回転することにより、ロックアウト部材37がカムクリップ22によって軸から外側に、 ハッチング矢印で示される方向に曲げられるか付勢される。図9Bに示されるように、カムクリップ22が回転すると、ロックアウト部材37が送達プランジャ12から係合解除される。これらの構成要素の係合解除は、薬剤送達の終了時に送達プランジャ12の近位端16及び/又はボタン23によって推進される。送達プランジャ12及び/又はボタン23が略完全に押下されて(即ち、図9及び図10の実線矢印のように遠位方向に軸方向移動して)内側チャンバ110から流体が注射されると、一方又は両方が可撓部材31と接触することが可能である。この接触により、前述のように、可撓部材31は半径方向外向きに(図10の中空矢印方向に)動いて、ピルハウジング20のロック窓29との係合が外れ、ばね21が、圧縮解除されてピルハウジング20を押すことが可能になり、これによって、ピルハウジング20が送達プランジャ12及び/又はボタン23を押して、これらを引き込む。図11Aは、そのような構成要素の、混合、薬剤送達、及び針引き込みの各段階が完了した後の略最終的な位置を示す。実線矢印は送達プランジャ12の引き込み方向を示す。
【0062】
図11Bは、図11Aに示された実施形態を90度回転させた図を示す。ピルハウジング20が解放されると、カムクリップ22が近位方向に平行移動してロックアウト部材37を解放することが可能になる。ロックアウト部材37は、対応する、送達プランジャ12のロックアウト凹部17と係合することが可能になり、これによって、薬剤送達及び針引き込みの後に送達プランジャ12が遠位方向に動くことが阻止される。カムクリップ22及びロックアウト部材37は、装置がロックアウトされたことをユーザに知らせる為に、触覚及び/又は聴覚のフィードバックを提供するように構成されてよい。可撓部材31は、カムクリップ22に当接してカムクリップ22を定位置に保持し、これによって更に、送達プランジャ12が複合プランジャ装置10から引き抜かれるか近位方向に動くことを阻止する。これは、有用な任意選択の安全機能を複合プランジャ装置10に提供する。代替又は追加として、本発明の実施形態において他の安全機能が利用されてもよい。上述のように、複合プランジャ、混合装置、及び/又は混合シリンジは1つ以上のロックシステムを含んでよい。例えば、この1つ以上のロックシステムは、フランジコネクタ25の一部分として指フランジ24A、24B上にあるか、且つ/又はバレル延長部126の機能として組み込まれるエレメントを含んでよい。図9B及び図11Bに示されるように、この1つ以上のロックシステムの一実施形態は、当接面39を有するロックフィンガ38を含み、当接面39はそれぞれの内側タブ27と係合することにより、混合プランジャ30が混合装置100から引き抜かれることを阻止する。
【0063】
混合シリンジ100の他の何らかの変形形態も考えられる。一代替変形形態として、押下終了時に、混合プランジャ30が、混合プランジャ30の遠位方向の軸方向移動の途中で係合する相補形状のデテント態様(図示せず)によって外側バレル120にロックされてよく、これは、その後に近位方向の軸方向移動が起こらないようにする為である。これらの相補形状のデテント態様は、前述のロックプロングとともに使用されてよく、又はロックプロングの代替として使用されてよい。更に別の変形形態では、バレル延長部126は、混合プランジャ30が遠位方向に軸方向平行移動しきった時点で混合プランジャ30と係合する、外側バレル120の前述の相補形状のデテント態様(図示せず)を含んでよい。
【0064】
更に別の変形形態では、1つ以上の壊れやすいか多孔性のメンブレン、壁、封止部材などによって、内側チャンバ140が区画化されてよく(即ち、複数の区画を含んでよく)、各区画は別々の流体物質又は固体物質を収容し、混合プランジャ30の押下によって別々の流体物質又は固体物質の混合が推進される。追加又は代替として、内側チャンバ112も同様に区画化されてよく、各区画は別々の流体物質又は固体物質を含む。従って、混合装置100は、混合及び注射の為の物質を2つ以上含むことが可能である。
【0065】
複合プランジャ装置10、混合装置100及び/又は混合シリンジ1000、又は任意の個別構成要素の組み立て及び/又は製造においては、当該技術分野において知られている幾つかの材料及び方法が利用されてよい。例えば、構成要素及び/又は装置の洗浄には、イソプロピルアルコールやヘキサンなど、幾つかの知られている洗浄液が使用されてよい。製造工程においては、幾つかの知られている粘着剤や接着剤が同様に使用されてよい。更に、本発明の新規な構成要素及び装置の製造時には、知られているシリコン処理液及びシリコン処理工程が用いられてよい。内側バレルに1つ以上のアパーチャを追加する場合は、機械式穴あけやレーザ穴あけなどの知られている穴あけ方法が用いられてよい。更に、最終製品の無菌状態を確保する為に、製造段階や組み立て段階のうちの1つ以上において、知られている滅菌処理が行われてよい。
【0066】
複合プランジャ装置の組み立て、梱包、及び輸送は、混合シリンジにおけるそれら以外の部分とは切り離された構成要素として行われてよい。少なくとも1つの実施形態では、混合装置は、独立した構成要素として組み立て、滅菌、及び/又は充填が行われてよく、保管及び/又は輸送のために封止メンブレンによって封止されてよい。封止メンブレンは、任意のタイプの無菌メンブレンであってよく、例えば、ファブリック封止材(具体的にはTYVEKファブリック封止材)、又は他の任意のタイプの封止無菌メンブレンであってよい。そして、複合プランジャ装置を混合装置に取り付けることによって混合シリンジが形成されてよい。封止メンブレンは、混合シリンジの動作中にユーザによって取り除かれるか自動的に取り除かれてよく、或いは、混合シリンジの組み立て中又は動作中に、ユーザによる手動操作、又は動作中の混合シリンジの自動機能によって穴をあけられてよく、或いは、他の方法で混合シリンジの使用前又は使用中に封止を解かれてよい。
【0067】
本明細書に開示のシリンジ製造工程の充填ステップを実施する為に、幾つかの知られている充填方法及び充填設備が利用されてよい。一実施形態では、第2の流体物質は、液体物質として充填され、その場で特定のバレル伝熱設備により凍結乾燥されてよい。以上の製造工程及び組み立て工程において説明された針アセンブリ、送達プランジャ、及び他の構成要素は、上述のとおりであってもよく、それらの構成要素と同じ機能性を実現する幾つかの同様の構成要素であってもよい。
【0068】
以上の説明から理解されるように、本明細書に開示の複合プランジャ装置、混合装置、及び混合シリンジは、シリンジによる送達の前に複数の物質を混合する為の効率的で使いやすいシステムを提供する。上述されたような多くの先行技術の混合装置と異なり、流体経路を開いたり位置合わせしたりする為に使用前に内側バレル及び外側バレルを回転させたり他の方法で方向づけたりすることは不要である。本開示において回転が利用されるのは、各種動作段階を通して複合プランジャの様々な部分の係合解除を行う場合のみである。更に、上述されたような多くの先行技術の混合装置と異なり、外側バレルの通気穴及び内側バレルのアパーチャに対する遠位封止材の相対的な位置決めにより、適切な通気を実現しながら混合装置の内容物の無菌状態が維持される。
【0069】
本明細書全体を通してのねらいは、本発明をいかなる1つの実施形態又は特定の機能集合体にも限定することなく、本発明の好ましい実施形態を説明することであった。本発明から逸脱しない限り、記載及び図示された実施形態には様々な変更や修正が施されてよい。
【0070】
本明細書において参照された特許文書、科学文書、コンピュータプログラム、及びアルゴリズムのそれぞれの開示は、参照によってその全内容が本明細書に組み込まれている。
〔付記1〕
シリンジ混合装置用複合プランジャであって、前記複合プランジャの動作の少なくとも一部において混合プランジャ及び送達プランジャの協調又は同期した軸方向移動を推進するように解放可能に係合された前記混合プランジャ及び前記送達プランジャと、付勢部材を有するピルハウジングと、を備える複合プランジャ。
〔付記2〕
前記送達プランジャの軸方向移動によって前記混合プランジャの軸方向移動が引き起こされる、付記1に記載の複合プランジャ。
〔付記3〕
前記混合プランジャと前記送達プランジャは、前記混合プランジャと前記送達プランジャとの係合が解除されるまで、協調又は同期して軸方向移動するように解放可能に係合されている、付記1又は2に記載の複合プランジャ。
〔付記4〕
前記混合プランジャは、その近位端において1つ以上の接続部材を備える、付記3に記載の複合プランジャ。
〔付記5〕
前記送達プランジャは、前記混合プランジャの前記接続部材と解放可能に係合するか解放可能に係合される1つ以上の接続凹部を備える、付記4に記載の複合プランジャ。
〔付記6〕
前記接続部材と前記送達プランジャの前記接続凹部との間の解放可能な係合により、前記混合プランジャと前記送達プランジャとが前記複合プランジャの動作の少なくとも一部において協調して軸方向移動することが可能になる、付記5に記載の複合プランジャ。
〔付記7〕
前記混合プランジャと前記送達プランジャとの係合を解除することにより、前記送達プランジャの単独又は独立の軸方向移動を可能にすることができる、付記1から6のいずれか一項に記載の複合プランジャ。
〔付記8〕
前記混合プランジャと前記送達プランジャとの係合を解除することは、前記混合プランジャに対して前記送達プランジャを回転させて係合を解除することを含む、付記7に記載の複合プランジャ。
〔付記9〕
1つ以上のロック又はロックシステムを備える、付記1から8のいずれか一項に記載の複合プランジャ。
〔付記10〕
前記1つ以上のロック又はロックシステムは、混合が完了した後に、前記送達プランジャの軸方向移動を可能にしながら前記混合プランジャの軸方向移動を阻止する、付記9に記載の複合プランジャ。
〔付記11〕
前記1つ以上のロックシステムは、前記混合プランジャを前記混合装置にロックする、付記10に記載の複合プランジャ。
〔付記12〕
最初は前記ピルハウジングと係合して前記付勢部材を初期エネルギ蓄積状態に維持する1つ以上の部材を備え、前記部材が前記ハウジングから係合解除されると、前記付勢部材は近位方向に伸張することが可能になる、付記1から11のいずれか一項に記載の複合プランジャ。
〔付記13〕
前記送達プランジャは、針又は針アセンブリの引き込みを推進する為に前記針又は前記針アセンブリと係合することが可能である、付記12に記載の複合プランジャ。
〔付記14〕
前記付勢部材によるエネルギの解放により、前記送達プランジャと係合されていた前記針又は前記針アセンブリの、シリンジバレルへの引き込みが可能になる、付記13に記載の複合プランジャ。
〔付記15〕
前記付勢部材は、前記針が引き込まれるまでは前記ピルハウジング内で圧縮されている圧縮ばねである、付記12から14のいずれか一項に記載の複合プランジャ。
〔付記16〕
前記ばねの圧縮解除又は伸長により、前記送達プランジャと係合されていた前記針又は前記針アセンブリの引き込みが推進される、付記15に記載の複合プランジャ。
〔付記17〕
前記複合プランジャ装置を前記混合装置の1つ以上のバレル又はバレル延長部と接続するフランジコネクタを更に備える、付記1から16のいずれか一項に記載の複合プランジャ。
〔付記18〕
前記フランジコネクタは、前記混合装置の前記バレル延長部と係合することが可能である、付記17に記載の複合プランジャ。
〔付記19〕
シリンジ用混合装置であって、略同軸関係にあって外側チャンバを形成する外側バレル及び内側バレルと、前記混合プランジャが前記外側チャンバ内で軸方向移動可能である、付記1から18のいずれか一項に記載の複合プランジャ装置と、を備える混合装置。
〔付記20〕
前記内側バレル内に内側チャンバを更に備える、付記19に記載の混合装置。
〔付記21〕
前記送達プランジャが前記内側チャンバ内で軸方向移動可能である、付記20に記載の混合装置。
〔付記22〕
前記内側バレルの壁に1つ以上の流体経路を含む、付記19から21のいずれか一項に記載の混合装置。
〔付記23〕
前記外側バレル内に1つ以上の通気穴を含む、付記19から22のいずれか一項に記載の混合装置。
〔付記24〕
前記混合プランジャが前記外側チャンバ内で摺動すると、前記1つ以上の通気穴が、空気が前記外側チャンバから大気中に出ることを推進するように動作可能である、付記23に記載の混合装置。
〔付記25〕
前記外側チャンバ内に複数の封止材を更に含む、付記19から24のいずれか一項に記載の混合装置。
〔付記26〕
前記複数の封止材のうちの1つが、最初は前記内側バレル内の前記1つ以上の流体経路と封止係合している遠位封止材である、付記25に記載の混合装置。
〔付記27〕
前記混合プランジャの軸方向移動は、前記1つ以上の流体経路と前記1つ以上の通気穴との間の中間又は少なくとも途中である位置までの前記遠位封止材の軸方向移動を間接的に推進する、付記26に記載の混合装置。
〔付記28〕
前記複数の封止材のうちの1つが、前記混合プランジャと係合しているか結合しているか接続されているか前記混合プランジャに貼り付けられていて前記外側チャンバ内で摺動可能な近位封止材である、付記25から27のいずれか一項に記載の混合装置。
〔付記29〕
少なくとも第1の混合物質が前記外側チャンバ内に配置可能であり、少なくとも第2の混合物質が前記内側チャンバ内に配置可能である、付記19から28のいずれか一項に記載の混合装置。
〔付記30〕
前記混合プランジャの軸方向移動は、前記少なくとも第1の混合物質が前記内側バレル内の前記内側チャンバに入ることを推進する、付記29に記載の混合装置。
〔付記31〕
前記混合プランジャは、混合が完了した後に前記送達プランジャからの係合解除が可能である、付記19から30のいずれか一項に記載の混合装置。
〔付記32〕
前記混合プランジャは、前記混合プランジャに対して前記送達プランジャを回転させることによって、前記送達プランジャからの係合解除が可能である、付記31に記載の混合装置。
〔付記33〕
付記19から32のいずれか一項に記載の混合装置と、針アセンブリと、を備える混合シリンジ。
〔付記34〕
前記針アセンブリは引き込み式針を含み、前記引き込み式針は、前記送達プランジャと係合されて、前記付勢部材の蓄積エネルギが解放されたときに前記針の引き込みを推進することが可能である、付記33に記載の混合シリンジ。
〔付記35〕
複合プランジャの組み立て方法であって、
(a)混合プランジャと送達プランジャとを解放可能に係合させるステップと、
(b)前記混合プランジャに付勢部材を装着するステップと、
(c)ピルハウジング内で前記付勢部材にエネルギを蓄積するステップと、
(d)前記ピルハウジングを前記混合プランジャに解放可能に係合させて前記付勢部材を初期エネルギ蓄積状態で保持するステップと、
を含む方法。
〔付記36〕
複合プランジャを備える混合シリンジの製造方法であって、
(A)前記混合シリンジの外側チャンバ内に第1の混合物質を配置し、前記混合シリンジの前記外側チャンバに第1の(近位)封止材を挿入して前記第1の混合物質と接触させるステップと、
(B)前記混合シリンジの内側チャンバ内に第2の混合物質を配置し、前記内側チャンバにプランジャ封止材を挿入するステップと、
(C)前記複合プランジャの送達プランジャを前記内側バレル内での軸方向平行移動に備えて位置合わせするステップであって、前記送達プランジャは、最初は前記内側バレルの1つ以上のアパーチャの近位にあって前記プランジャ封止材に接続することが可能である、前記ステップと、
(D)前記複合プランジャのうちの混合プランジャを前記外側チャンバ内に取り付けるステップであって、前記混合プランジャは前記第1の(近位)封止材と接触する、前記ステップと、
を含む方法。
〔付記37〕
混合装置を備えるシリンジの操作方法であって、
(i)前記混合装置内で複数の物質を混合するように複合プランジャの混合プランジャを操作するステップと、
(ii)前記複合プランジャの送達プランジャを回転させて前記送達プランジャを前記混合プランジャから係合解除するステップと、
(iii)ステップ(i)で混合された前記物質を受容者に送達するように前記複合プランジャの前記送達プランジャを操作するステップと、
を含む方法。
〔付記38〕
付記35から37のいずれか一項に記載の方法であって、前記複合プランジャは付記1から18に記載されており、前記混合装置は付記19から32に記載されており、且つ/又は、前記混合シリンジは付記33又は34に記載されている、方法。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B