(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362166
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】建設機械における燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
F02M 37/08 20060101AFI20180712BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20180712BHJP
E02F 9/00 20060101ALI20180712BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
F02M37/08 A
F02M37/00 301R
F02M37/08 J
E02F9/00 Q
E02F9/26 B
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-239563(P2014-239563)
(22)【出願日】2014年11月27日
(65)【公開番号】特開2016-102409(P2016-102409A)
(43)【公開日】2016年6月2日
【審査請求日】2016年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】505236469
【氏名又は名称】キャタピラー エス エー アール エル
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】田中 純
(72)【発明者】
【氏名】森田 大蔵
(72)【発明者】
【氏名】島本 充功
(72)【発明者】
【氏名】河口 敦
【審査官】
松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−096580(JP,A)
【文献】
特開2011−173590(JP,A)
【文献】
実開平05−018939(JP,U)
【文献】
国際公開第2012/023229(WO,A1)
【文献】
特開2010−070007(JP,A)
【文献】
特開2011−189886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/08、37/00
E02F 9/00、9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクと、該燃料タンクに燃料を供給するための燃料供給ポンプと、燃料タンクに供給される燃料の濾過をするストレーナと、燃料タンク内の残存燃料の量を計測する燃料ゲージからの信号を受けて燃料の残存量の演算をし、該演算した残存データを燃料メータに出力して表示させる制御部とを備えて構成される建設機械において、前記制御部は、燃料供給ポンプが作動状態であるときに、燃料ゲージからの信号に基づいて燃料タンク内に燃料が供給されているか否かの判断をする燃料供給判断手段と、該燃料供給判断手段で燃料供給が無いと判断されたときに燃料供給ポンプを停止させる燃料供給ポンプ停止手段とが備えられていることを特徴とする建設機械における燃料供給装置。
【請求項2】
制御部は、前記燃料ゲージからの信号に基づいて燃料供給判断手段で燃料供給があると判断された場合に、単位時間当たりの燃料供給量を演算して該燃料供給量が予め設定される設定供給量よりも多いか否かを判断する燃料供給量判断手段が備えられ、該燃料供給量判断手段で燃料供給量が設定供給量よりも多くないと判断されたときに燃料供給ポンプ停止手段による燃料供給ポンプの停止が行われるようになっていることを特徴とする請求項1記載の建設機械における燃料供給装置。
【請求項3】
報知手段が設けられており、制御部は、燃料供給ポンプ停止手段による燃料供給ポンプの停止が行われたときに、報知手段による報知を行うための報知制御手段が備えられていることを特徴とする請求項1または2記載の建設機械における燃料供給装置。
【請求項4】
制御部は、燃料供給ポンプ停止手段による燃料供給ポンプの停止は、燃料供給停止条件になったことが予め設定されるタイマ時間継続することで行うタイマ制御手段が備えられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1記載の建設機械における燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械における燃料供給装置の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベル等の建設機械においては、作業現場にてドラム缶等の燃料容器から直接燃料を供給することがあり、このような場合に備えて走行機体に燃料供給ポンプ(燃料ポンプ、燃料補給ポンプ)を搭載しているものがある。このようなものにおいて、燃料供給ポンプを用いて燃料供給する場合、燃料が満杯になったことをセンサで検知して燃料供給ポンプを自動的に停止するようにしたものが知られている(例えば特許文献1、2)。
また、作業現場では塵埃が飛び交うような環境が悪い条件下で燃料供給をする場合があり、このような場合を考慮して、ストレーナ(濾過器)を設けて燃料タンク内に異物が混入しないよう対処しているが、ストレーナが詰まった場合、燃料供給が遅くなって作業性が悪く、そこでストレーナ内の圧力をセンサで検知し、検知圧力が所定以上になった場合、ストレーナが詰まったと判断して燃料供給ポンプを自動停止するようにしたものが知られている(例えば特許文献3参照)。
さらにまた、燃料供給中において燃料容器が空になって燃料供給が停止したような場合、燃料供給ポンプが空回りして焼き付いてしまうことになり、これを回避するため、燃料供給が無くなったことを検知するセンサを設け、該センサにおいて燃料供給が無くなった信号があった場合、燃料供給ポンプを自動的に停止するようにしたものが知られている(例えば特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−264078号公報
【特許文献2】特開2005−16332号公報
【特許文献3】特開2011−173590号公報
【特許文献4】実開平7−13549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のものは、何れも専用のセンサを用いて検知し、これに基づいて燃料供給ポンプを自動的に対しするようにしているため、部品点数が多くなるうえ、これらセンサのメンテナンスをする必要があって作業性が悪いだけでなく、コストアップにつながるという問題があり、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、燃料タンクと、該燃料タンクに燃料を供給するための燃料供給ポンプと、燃料タンクに供給される燃料の濾過をするストレーナと、燃料タンク内の残存燃料の量を計測する燃料ゲージからの信号を受けて燃料の残存量の演算をし、該演算した残存データを燃料メータに出力して表示させる制御部とを備えて構成される建設機械において、前記制御部は、燃料供給ポンプが作動状態であるときに、
燃料ゲージからの信号に基づいて燃料タンク内に燃料が供給されているか否かの判断をする燃料供給判断手段と、該燃料供給判断手段で燃料供給が無いと判断されたときに燃料供給ポンプを停止させる燃料供給ポンプ停止手段とが備えられていることを特徴とする建設機械における燃料供給装置である。
請求項2の発明は、制御部は、
前記燃料ゲージからの信号に基づいて燃料供給判断手段で燃料供給があると判断された場合に、
単位時間当たりの燃料供給量を演算して該燃料供給量が予め設定される設定供給量よりも多いか否かを判断する燃料供給量判断手段が備えられ、該燃料供給量判断手段で燃料供給量が設定供給量よりも多くないと判断されたときに燃料供給ポンプ停止手段による燃料供給ポンプの停止が行われるようになっていることを特徴とする請求項1記載の建設機械における燃料供給装置である。
請求項3の発明は、報知手段が設けられており、制御部は、燃料供給ポンプ停止手段による燃料供給ポンプの停止が行われたときに、報知手段による報知を行うための報知制御手段が備えられていることを特徴とする請求項1または2記載の建設機械における燃料供給装置である。
請求項4の発明は、制御部は、燃料供給ポンプ停止手段による燃料供給ポンプの停止は、燃料供給停止条件になったことが予め設定されるタイマ時間継続することで行うタイマ制御手段が備えられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1記載の建設機械における燃料供給装置である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、燃料供給中に燃料容器が空になって燃料供給が途中でなくなった場合に、燃料ゲージからの指令に基づいて燃料メータの表示制御を行う制御部により燃料供給が無くなったことを判断することができることになって、専用の燃料供給センサを不要にできる。
請求項2の発明とすることにより、ストレーナが詰まったことを制御部により判断することができることになって、専用のストレーナ詰りセンサを不要にできる。
請求項3の発明とすることにより、燃料供給が途中でなくなったり、燃料供給量が少なかったりして燃料供給ポンプが停止したことを報知手段による報知で知ることができ、作業性が向上する。
請求項4の発明とすることにより、燃料供給が途中でなくなったり、燃料供給量が少なかったりして燃料供給ポンプが停止することが、確実に行われることになる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。図面において、1は作業機械の一例である油圧ショベルの走行機体であって、該走行機体1は、クローラ式の下部走行体2に上部旋回体3を縦軸回りに旋回自在に搭載しているが、上部旋回体2には、ブーム4a、アーム4b、バケット4cを備えて構成されるフロント作業部4、運転室(キャブ)5、エンジンルーム6、カウンタウエイト7、燃料タンク8、作動油タンク9等の各種の部材装置が設けられていること等は何れも従来通りである。
【0009】
前記燃料タンク8の燃料供給口8aには燃料供給用のホース10が接続されるが、該ホース10は、本実施の形態では、燃料供給口8aにセットされたストレーナ11と燃料供給ポンプ12とが一体型になったものの燃料供給ポンプ12の供給口に接続されている。そして燃料タンク8内に燃料を供給する場合、ホース10の先端をドラム缶等の燃料容器13に差し込んだ状態で運転室5内に設けた燃料供給スイッチ14をON操作すると、その操作信号がマイクロコンピュータを備えて構成される制御部CPUに入力することになり、これに基づき制御部CPUでは燃料供給ポンプ12に作動指令を出力し、これにより燃料供給ポンプ12が作動することになって燃料がストレーナ11を経由して燃料タンク8内に供給されるようになっている。尚、燃料供給ポンプ12とストレーナ11とは一体型ではなく別体となっていても勿論よい。
【0010】
燃料タンク8の側面板8bには燃料ゲージ15が設けられるが、該燃料ゲージ15の燃料タンク8内に延出したゲージ本体15aには支軸15bを支点として上下方向に揺動するアーム15cが設けられ、該アーム15cの先端にフロート15dが設けられている。そして燃料タンク8内に残存する燃料の表面に浮かんだ状態でフロート15dが上下動することに伴うアーム15cの揺動量(揺動角)をポテンショメータ15eが電気的信号に変換し、この信号が前記制御部CPUに入力するようになっており、制御部CPUでは、この入力した電気的信号に基づいて燃料タンク8内の燃料の残存量を演算し、演算結果を燃料メータ16に表示するよう制御指令を出力するようになっている。
【0011】
前記制御部CPUでは、燃料供給スイッチ14がON操作された場合に、燃料供給量の判別制御をするようになっており、以下、この制御手順について、
図4に示すフローチャート図を用いて説明する。前述したように、燃料供給スイッチ14がON操作されると、燃料供給量判別制御ルーチンが開始されるが、ここではまず燃料供給があったか否か、つまりポテンショメータ15eからの電気信号が燃料増加側に変化しているか否かの判断がなされ(S1)、燃料供給が無かったとしてNOと判断された場合に、第一タイマ17がセットされているか否かの判断がなされ(S2)、セットされていないとしてNOの判断がなされた(第一タイマ17がリセットされている)場合には第一タイマ17をセット(S3)し、S1の燃料供給があったか否かの判断にリターンする。そしてS1において再び燃料供給が無かったと判断され、S2において第一タイマ17がセットされているとしてYESの判断がなされると、第一タイマ17がカウントするカウント時間C1が予め設定されているタイマ時間(例えば5秒間)T1を超えている(C1>T1)か否かの判断がなされ(S4)、超えていないとしてNOの判断がなされると、再びS1の燃料供給があったか否かの判断にリターンする。一方、S4において超えているとしてYESの判断がなされると、燃料供給が無いとして燃料供給ポンプ12に対して停止指令を出力する(S5)と共に、ブザー等の第一報知手段18に報知指令を出力する(S6)ようになっている。
【0012】
これに対し、前記S1で燃料供給があるとしてYESの判断がなされると、単位時間当たりの供給量(増加量)Uを演算し(S7)、供給量Uが予め設定される単位時間当たりの設定供給量Xよりも多いか否か(U>X?)の判断がなされ(S8)、多くないとしてNOの判断がなされると、第二タイマ19がセットされているか否かの判断がなされ(S9)、セットされていないとしてNOの判断がなされると、第二タイマ19がセットされ(S10)、S1の燃料供給があったか否かの判断にリターンする。これに対し前記S9の判断で、第二タイマ19がセットされているとしてYESの判断がなされると、第二タイマ19がカウントするカウント時間C2が予め設定されているタイマ時間(例えば10秒間)T2を超えている(C2>T2)か否かの判断がなされ(S11)、超えていないとしてNOの判断がなされると、再びS1の燃料供給があったか否かの判断にリターンする。一方、S11において第二タイマ19のカウント時間C2がタイマ時間T2を超えている(C2>T2)としてYESの判断がなされると、燃料供給量が設定供給量よりも少ないとして燃料供給ポンプ12に対して停止指令を出力する(S12)と共に、第二報知手段20に報知指令を出力する(S13)ようになっている。
【0013】
一方、前記S8の判断で、単位時間当たりの燃料供給量Uが予め設定される単位時間当たりの設定供給量Xよりも多い(U>X)としてYESの判断がなされると、燃料タンク8が満杯(満タン)であるか否かの判断がなされ(S14)、満タンでないとしてNOと判断された場合、再びS1の燃料供給があったか否かの判断にリターンする。また満タンであるとしてYESと判断された場合、燃料供給ポンプ12に対して停止指令を出力する(S15)と共に、第三報知手段21に対して報知指令を出力して(S16)燃料供給作業が終了した旨を報知するようになっている。
因みに、第一、第二、第三報知手段18、20、21は一つのものであってもよく、一つである場合には報知内容を状況に合わせて異ならしめることで、燃料供給ポンプ12が停止した事情をオペレータが認識することができる。
【0014】
叙述の如く構成された本発明を実施するための形態において、燃料供給スイッチ14がON操作された燃料供給中に、燃料容器13が空になって燃料供給が無かった場合に、燃料供給ポンプ12が自動的に停止することになって燃料供給ポンプ12が焼き付いてしまうことを防止できることになるが、この燃料供給ポンプ12の自動的な停止は、燃料タンク9内の燃料の残存量を監視する燃料ゲージ15からの信号に基づいて制御部CPUが燃料供給があるか否かの判断をすることに基づいて行われる結果、従来のように燃料供給を監視する専用のセンサが不要になる。この結果、部品点数を少なくできると共に、これらのメンテナンスも不要になる。
【0015】
しかもこのものでは、燃料供給中に、燃料供給量が少なすぎると判断された場合、ストレーナ11が目詰まりしているとしてこれを異常と判断し、燃料供給ポンプ12を自動的に停止することになる。この結果、ストレーナ11が目詰まりしていることに対応した措置が迅速に取れることになって作業性の向上が図れることになるが、このストレーナ11の目詰まりの判断は、燃料供給が無い場合の判断をする制御部CPUによる演算でなされることとなって、目詰まり検知をする専用のセンサが不要になって、部品点数が少なくなると共にメンテナンス性も向上する。
【0016】
そのうえこれらの異常があった場合に、第一、第二センサ18、20による報知がなされるため、オペレータは、燃料供給に異常があったことを直ちに認識できることになって都合がよい。
しかもこれらの異常があったことの判断が、予め設定されるタイマ時間を越えた場合に実行される結果、ノイズ等により異常信号が入力した場合での誤作動を防止できることになる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械における燃料供給装置の分野に利用することができる。
【符号の説明】
【0018】
1 走行機体
8 燃料タンク
11 ストレーナ
12 燃料供給ポンプ
13 燃料容器
14 燃料供給スイッチ
15 燃料ゲージ
16 燃料メータ
17 第一タイマ
18 第一報知手段
19 第二タイマ
20 第二報知手段
CPU 制御部