特許第6362167号(P6362167)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362167
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】被覆酸化チタンゾル
(51)【国際特許分類】
   C01G 23/047 20060101AFI20180712BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   C01G23/047
   B01J35/02 J
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-247709(P2014-247709)
(22)【出願日】2014年12月8日
(65)【公開番号】特開2016-108189(P2016-108189A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年10月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000203656
【氏名又は名称】多木化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高橋 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】上田 英和
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 雅樹
【審査官】 村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/001487(WO,A1)
【文献】 特開2006−342311(JP,A)
【文献】 特開2008−114544(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/090084(WO,A1)
【文献】 特開2007−270097(JP,A)
【文献】 特開2010−188226(JP,A)
【文献】 特開2007−185556(JP,A)
【文献】 特開2009−227500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 23/00−23/08
B01J 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核粒子と該核粒子の表面を被覆する被覆物とを含む分散粒子が分散したゾルであって、
該核粒子が酸化チタンを主成分として含む微粒子であり、
該被覆物が非晶質のNb-O系化合物及び/又は非晶質のTa-O系化合物を主成分として含む組成物である
ことを特徴とする被覆酸化チタンゾル。
【請求項2】
酸化物換算の質量比として、(Nb2O5+Ta2O5)/(TiO2+Nb2O5+Ta2O5)=5〜50質量%である請求項1記載の被覆酸化チタンゾル。
【請求項3】
前記分散粒子と分散媒とのみを実質的な構成要素とする請求項1又は2記載の被覆酸化チタンゾル。
【請求項4】
前記被覆物の表面がシラン化合物で修飾された請求項1〜3のいずれか1項記載の被覆酸化チタンゾル。
【請求項5】
分散媒が有機溶媒である請求項4記載の被覆酸化チタンゾル。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の被覆酸化チタンゾルを含有してなる薄膜形成用塗布液。
【請求項7】
以下の工程を包含する請求項1又は2記載の被覆酸化チタンゾルの製造方法。
(1)酸化チタンを主成分として含む微粒子が分散したアルカリ性の酸化チタンゾルと、非晶質のNb-O系化合物及び/又は非晶質のTa-O系化合物を主成分として含む微粒子が分散したゾルとを、混合した後、加熱処理する第一工程。
【請求項8】
以下の工程を包含する請求項3記載の被覆酸化チタンゾルの製造方法。
(1)酸化チタンを主成分として含む微粒子が分散したアルカリ性の酸化チタンゾルと、非晶質のNb-O系化合物及び/又は非晶質のTa-O系化合物を主成分として含む微粒子が分散したゾルとを、混合した後、加熱処理する第一工程。
(2)第一工程で得られた被覆酸化チタンゾルから、陽イオン(水素イオンを除く)を除去する第二工程。
【請求項9】
以下の工程を包含する請求項4記載の被覆酸化チタンゾルの製造方法。
(1)酸化チタンを主成分として含む微粒子が分散したアルカリ性の酸化チタンゾルと、非晶質のNb-O系化合物及び/又は非晶質のTa-O系化合物を主成分として含む微粒子が分散したゾルとを、混合した後、加熱処理する第一工程。
(2)第一工程で得られた被覆酸化チタンゾルから、陽イオン(水素イオンを除く)を除去する第二工程。
(3)第一工程で得られた被覆酸化チタンゾル又は第二工程で得られた被覆酸化チタンゾルと、シラン化合物とを混合した後、熟成する第三工程。
【請求項10】
以下の工程を包含する請求項5記載の被覆酸化チタンゾルの製造方法。
(1)酸化チタンを主成分として含む微粒子が分散したアルカリ性の酸化チタンゾルと、非晶質のNb-O系化合物及び/又は非晶質のTa-O系化合物を主成分として含む微粒子が分散したゾルとを、混合した後、加熱処理する第一工程。
(2)第一工程で得られた被覆酸化チタンゾルから、陽イオン(水素イオンを除く)を除去する第二工程。
(3′)第一工程で得られた被覆酸化チタンゾル又は第二工程で得られた被覆酸化チタンゾルと、シラン化合物とを混合した後、熟成する工程であって、該混合の前もしくは後、又は前後の両方において、分散媒を水から有機溶媒に置換する操作を伴う、第三′工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆酸化チタンゾルに関する。
【背景技術】
【0002】
レンズ等の光学基材にプラスチックが使用されるようになってから久しいが、プラスチックは一般的に屈折率が低いという欠点がある。この欠点を補うために、プラスチック原料への高屈折率材料の配合、あるいはプラスチック表面への高屈折率材料のコーティング等が一般的に行われている。そのような高屈折率材料として、着色が無く、透明性に優れる酸化チタンゾルが広く利用されている。
【0003】
しかし、酸化チタンは光触媒活性が高く、プラスチックを劣化させるという欠点がある。そこで、光触媒活性を抑制するために、酸化チタンの表面を光触媒活性を有さない別の酸化物等で被覆したゾルに関する技術が多数開示されている。
【0004】
例えば、特許文献1、2には、アンチモン酸化物で酸化チタンを被覆したゾルが開示されている。
【0005】
一方、特許文献3には、酸化チタン系微粒子の表面をシリカ系化合物で被覆してなる高屈折率金属酸化物微粒子を含むゾルが開示されている。
【0006】
また、特許文献4には、チタニウムを含む金属酸化物の核粒子にジルコニウム、スズ、ニオブから選ばれた1種または2種以上からなる金属元素の水和物および/または酸化物で処理した表面処理粒子の表面を、さらにケイ素とアルミニウム、ジルコニウムから選ばれた1種または2種以上からなる金属元素との複合酸化物で被覆してなることを特徴とするコアシェル型無機酸化物微粒子を含む分散液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3969968号公報
【特許文献2】特許第4730487号公報
【特許文献3】特開2011−132484号公報
【特許文献4】特許第5557662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1、2に記載のゾルは、近年、人や環境への影響が懸念されている劇物のアンチモンを含むため、安全性の観点から好ましい材料とは言い難かった。
【0009】
一般に、TiO2は高屈折率材料に分類され、SiO2は中〜低屈折率材料に分類されており、高屈折率材料からなる核粒子を中〜低屈折率材料で被覆すると、被覆された中〜低屈折率材料によって核粒子の高屈折率性が低下することが知られている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、酸化チタンを主成分として含む微粒子を核粒子としたゾルにおいて、核粒子の有する高屈折率性をできるだけ低下させないために、被覆物として安全性の高い高屈折率材料を検討する中で、高屈折率材料に分類されるNb2O5とTa2O5に着目した。しかし、結晶質のNb2O5及びTa2O5は、光触媒活性を有することが知られている。そこで、鋭意研究を重ねた結果、意外なことに、非晶質のNb-O系化合物及び/又は非晶質のTa-O系化合物を適用すれば、光触媒活性を抑制しながら高屈折率を有するゾルが得られることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0011】
即ち、本発明は下記の通りである。
[1]核粒子と該核粒子の表面を被覆する被覆物とを含む分散粒子が分散したゾルであって、該核粒子が酸化チタンを主成分として含む微粒子であり、
該被覆物が非晶質のNb-O系化合物及び/又は非晶質のTa-O系化合物を主成分として含む組成物であることを特徴とする被覆酸化チタンゾル。
[2]酸化物換算の質量比として、(Nb2O5+Ta2O5)/(TiO2+Nb2O5+Ta2O5)=5〜50質量%である上記[1]記載の被覆酸化チタンゾル。
[3]前記分散粒子と分散媒とのみを実質的な構成要素とする上記[1]又は[2]記載の被覆酸化チタンゾル。
[4]前記被覆物の表面がシラン化合物で修飾された上記[1]〜[3]のいずれか1項記載の被覆酸化チタンゾル。
[5]分散媒が有機溶媒である上記[4]記載の被覆酸化チタンゾル。
[6]上記[1]〜[5]のいずれか1項記載の被覆酸化チタンゾルを含有してなる薄膜形成用塗布液。
[7]以下の工程を包含する上記[1]又は[2]記載の被覆酸化チタンゾルの製造方法。(1)酸化チタンを主成分として含む微粒子が分散したアルカリ性の酸化チタンゾルと、非晶質のNb-O系化合物及び/又は非晶質のTa-O系化合物を主成分として含む微粒子が分散したゾルとを、混合した後、加熱処理する第一工程。
[8]以下の工程を包含する上記[3]記載の被覆酸化チタンゾルの製造方法。(1)酸化チタンを主成分として含む微粒子が分散したアルカリ性の酸化チタンゾルと、非晶質のNb-O系化合物及び/又は非晶質のTa-O系化合物を主成分として含む微粒子が分散したゾルとを、混合した後、加熱処理する第一工程。(2)第一工程で得られた被覆酸化チタンゾルから、陽イオン(水素イオンを除く)を除去する第二工程。
[9]以下の工程を包含する上記[4]記載の被覆酸化チタンゾルの製造方法。(1)酸化チタンを主成分として含む微粒子が分散したアルカリ性の酸化チタンゾルと、非晶質のNb-O系化合物及び/又は非晶質のTa-O系化合物を主成分として含む微粒子が分散したゾルとを、混合した後、加熱処理する第一工程。(2)第一工程で得られた被覆酸化チタンゾルから、陽イオン(水素イオンを除く)を除去する第二工程。(3)第一工程で得られた被覆酸化チタンゾル又は第二工程で得られた被覆酸化チタンゾルと、シラン化合物とを混合した後、熟成する第三工程。
[10]以下の工程を包含する上記[5]記載の被覆酸化チタンゾルの製造方法。(1)酸化チタンを主成分として含む微粒子が分散したアルカリ性の酸化チタンゾルと、非晶質のNb-O系化合物及び/又は非晶質のTa-O系化合物を主成分として含む微粒子が分散したゾルとを、混合した後、加熱処理する第一工程。(2)第一工程で得られた被覆酸化チタンゾルから、陽イオン(水素イオンを除く)を除去する第二工程。(3′)第一工程で得られた被覆酸化チタンゾル又は第二工程で得られた被覆酸化チタンゾルと、シラン化合物とを混合した後、熟成する工程であって、該混合の前もしくは後、又は前後の両方において、分散媒を水から有機溶媒に置換する操作を伴う、第三′工程。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光触媒活性が低く高屈折率を有するゾルを提供することが可能となり、プラスチック原料に配合したり、プラスチック表面にコーティングする高屈折率材料として好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〈被覆酸化チタンゾル〉
本発明の被覆酸化チタンゾルは、核粒子と該核粒子の表面を被覆する被覆物とを含む分散粒子が分散したゾルであって、該核粒子が酸化チタンを主成分として含む微粒子であり、該被覆物が非晶質のNb-O系化合物及び/又は非晶質のTa-O系化合物を主成分として含む組成物であることを特徴とするものである。
【0014】
核粒子と該核粒子の表面を被覆する被覆物とから構成される微粒子は、コア−シェル(コアシェル)型微粒子とも呼ばれるものである。ここで付記として、酸化チタンの光触媒活性を高めるために、アナターゼ型酸化チタンのナノ粒子にニオブ又はタンタルがドープされた分散液が開示されているが(例えば特開2011−167620号公報)、ドープ型は本発明とは全く別異なものである。
【0015】
本発明の被覆酸化チタンゾルにおいて、核粒子は、酸化チタンを主成分として含む微粒子である。酸化チタンの形状は、高屈折率が得られるのであれば特に限定はないが、ゾルの安定性の観点から非晶質よりも結晶質であることが好ましい。結晶質の結晶構造としては、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型等を例示することができる。
【0016】
核粒子中の酸化チタンの含有量は100モル%でもよいが、必要に応じて他の遷移金属元素又はその化合物を含有しても構わない。尚、他の遷移金属元素又はその化合物を含有するときは、核粒子中において酸化チタンが主成分となるように、例えば、酸化チタン(TiO2)の含有量が50質量%以上となるよう設定することが好ましい。他の遷移金属元素としては、例えば、モリブデン、スズ、ジルコニウム、ハフニウム等が挙げられる。
【0017】
被覆物は、非晶質のNb-O系化合物及び/又は非晶質のTa-O系化合物を主成分として含む組成物からなる。一般に、ニオブ又はタンタルの酸化物のうち、結晶質のものは光触媒活性を有することが知られているので、本発明では非晶質のものを用いる。
【0018】
ここで、Nb-O系化合物、Ta-O系化合物とは、両化合物を代表してNb-O系化合物で説明すると、化合物中に少なくともニオブと酸素とを含有する化合物であることを意味するものであり、ニオブと酸素とが含有されていれば組成に特に限定はない。Nb-O系化合物、Ta-O系化合物の具体例としては、酸化ニオブ、水酸化ニオブ、ニオブのポリ酸、酸化タンタル、水酸化タンタル、タンタルのポリ酸、ニオブ及びタンタルのポリ酸等が挙げられる。尚、ポリ酸は、[MxOy]n−(M = 金属元素)と表記されるものである。
【0019】
被覆物中の非晶質のNb-O系化合物及び/又は非晶質のTa-O系化合物の含有量は、屈折率と分散安定性の観点から100モル%であることが好ましいが、本発明の効果が損なわれない範囲において他の化合物を含有しても構わない。尚、他の化合物を含有するときは、被覆物中において非晶質のNb-O系化合物及び/又は非晶質のTa-O系化合物が主成分となるように、例えば、Nb2O5+Ta2O5の含有量が50質量%以上となるよう設定することが好ましい。
【0020】
被覆物の役割は、核粒子の表面を覆うことによって酸化チタンの有する光触媒活性を低減することであるため、本発明の被覆酸化チタンゾルにおいて酸化物換算の質量比として、(Nb2O5+Ta2O5)/(TiO2+Nb2O5+Ta2O5)=5〜50質量%であることが好ましい。前記質量比が5質量%を下回ると、酸化チタンの光触媒活性を十分に低減することが困難となり、また、50質量%を上回ると、ゾルの安定性が低下する傾向があるので好ましくない。
【0021】
被覆物の好適な一形態は、被覆物の少なくとも表面が負電荷を有するものである。負電荷量が多くなれば分散性が高まるため、分散剤を不要とすることができ、さらには酸性からアルカリ性までの広い範囲で安定なゾルを得ることもできる。負電荷の発揮には、とりわけポリ酸が効果的であるため、被覆物中にポリ酸が多く含まれることが好ましく、特に被覆物の主成分である非晶質のNb-O系化合物及び/又は非晶質のTa-O系化合物がポリ酸(ニオブのポリ酸、タンタルのポリ酸、又はニオブ及びタンタルのポリ酸)であることが好ましい。
【0022】
分散粒子の一形態は、核粒子と該核粒子の表面を被覆する被覆物とのみを構成要素とするものであるが、本発明の効果が損なわれない範囲において分散粒子中に他の化合物を含有しても構わない。
【0023】
本発明の被覆酸化チタンゾルは、分散粒子と分散媒の他に、製造原料に由来する副成分やゾルを安定分散させるための分散剤などを含有してもよいが、被覆物の表面が多量の負電荷を保持しているときは、分散粒子と分散媒とのみを実質的な構成要素とすることもできる。ここで、「分散粒子と分散媒とのみを実質的な構成要素とする」とは、分散粒子と分散媒の他に、製造原料に由来する副成分のうち、製造工程における通常の除去処理操作によって除去し切れなかったものの含有は許容するという趣旨である。
【0024】
以下、分散粒子と分散媒とのみを実質的な構成要素とする被覆酸化チタンゾルを「高純度ゾル」と称し、それ以外の成分(副成分、分散剤等)を含む被覆酸化チタンゾルを「基本ゾル」と称する。また、高純度ゾルと基本ゾルを合わせたものを「本発明のゾル」と称する。
【0025】
高純度ゾルは、好適には、高度に安定分散し、pHは水溶媒中で概ね2〜6の範囲となる性状を有するものである。また、高純度ゾルは、酸、アルカリ等の様々な成分を含有させて任意のpHに調整することができ、しかも安定分散が可能である。
【0026】
本発明のゾルのさらなる一形態は、高純度ゾル又は基本ゾルの被覆物の表面がシラン化合物で修飾されたもの(以下、「修飾ゾル」という)である。修飾ゾルは、分散媒を水ではなく有機溶媒としたいときに特に好適なゾルである。シラン化合物で修飾することにより、ゾルの安定性を高めたり、樹脂との相溶解性を高めることも可能である。
【0027】
修飾ゾル中のシラン化合物の含有量については、シラン化合物の含有量が多すぎると屈折率が低下するので、シラン化合物をSiO2換算したときに、SiO2/(TiO2+Nb2O5+Ta2O5+SiO2)の質量比が20質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0028】
有機溶媒としては、例えば、アルコール類、グリコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、炭化水素類等が挙げられる。アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、ブタノール等が、グリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等が、エーテル類としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が、ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が、エステル類としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル等が、炭化水素類等としては、キシレン、トルエン、ベンゼン、ヘキサン等が例示できる。これらのうち親水性を有するものがより好ましく、具体的には、アルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類等を例示することができる。
【0029】
本発明のゾルは、分散性と安定性の観点から分散粒子の平均粒子径が5〜100nmの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは10〜80nmの範囲である。尚、上記で示した平均粒子径は、(株)堀場製作所製「動的光散乱式粒径分布測定装置 LB-500」で測定した際のメジアン径である。
【0030】
〈用途〉
本発明のゾルの用途として、本発明のゾルを含有してなる薄膜形成用塗布液とすることもできるし、本発明のゾルを配合してなる樹脂組成物とすることもできる。
【0031】
薄膜形成用塗布液においては、本発明のゾルに各種バインダーを添加することができる。バインダーの種類としては、例えば、シリカゾル、珪酸アルカリ溶液、炭酸ジルコニルアンモニウム等の無機系バインダー、ポリビニルアルコール、セルロース、樹脂エマルション等の有機系又は有機無機複合系バインダーが挙げられるが、これらの他に、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン類、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂、アクリレート、ウレタンアクリレート、シリコンアクリルレート、エポキシアクリレート等の光硬化性樹脂をバインダーとして添加してもよい。バインダーの使用量は、本発明のゾルの組成、バインダーの種類、用途、所望する膜機能等によって適宜設定すればよいが、一般的にはバインダー成分の量が薄膜形成用塗布液中の全固形分重量に対して10〜50質量%程度となるように混合することが好ましい。薄膜形成用塗布液の粘度は塗布可能な程度であれば特に限定されないが、好ましくは1〜100mPa・sの範囲である。薄膜形成用塗布液の基材への適用方法は、刷毛塗り、スプレー塗布、スピンコート、ディップコート、ロールコート、グラビアコート、バーコート等の各種の公知の塗布方法を基材の形状等を考慮して選択すればよい。
【0032】
樹脂組成物においては、本発明のゾルが配合でき、所望の機能が得られる樹脂を適宜選択すればよい。樹脂の種類としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、フッ素樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、アクリル樹脂等を挙げることができる。本発明のゾルを樹脂に配合する方法は、公知の方法を利用できるが、例えば、樹脂合成時にあらかじめ配合することもできるし、樹脂を溶媒や熱で溶解させた後、配合してもよい。
【0033】
〈製造方法〉
本発明のゾルの製造方法を、基本ゾル、高純度ゾル、修飾ゾルの順で説明する。
【0034】
(1)基本ゾルは、酸化チタンを主成分として含む微粒子が分散したアルカリ性の酸化チタンゾル(以下、「Ti系ゾル」という)と、非晶質のNb-O系化合物及び/又は非晶質のTa-O系化合物を主成分として含む微粒子が分散したゾル(以下、「Nb-Ta系ゾル」という)とを、混合した後、加熱処理する工程(第一工程)を用いることによって製造することができる。
【0035】
(2)高純度ゾルは、基本ゾルから、陽イオン(水素イオンを除く)を除去する工程(第二工程)を用いることによって製造することができる。
【0036】
(3)修飾ゾルは、基本ゾル又は高純度ゾルと、シラン化合物とを混合した後、熟成する工程(第三工程)を用いることによって製造することができる。
【0037】
(3′)有機溶媒を分散媒とする修飾ゾルは、基本ゾル又は高純度ゾルと、シラン化合物とを混合した後、熟成する工程であって、該混合の前もしくは後、又は前後の両方において、分散媒を水から有機溶媒に置換する操作を伴う工程(第三′工程)を用いることによって製造することができる。
【0038】
以下、上記各工程について詳述する。尚、前述の〈被覆酸化チタンゾル〉において説明した事項は省略する。
【0039】
(第一工程)
第一工程は、Ti系ゾルとNb-Ta系ゾルとを混合した後、加熱処理する工程であり、これにより基本ゾルを得ることができる。基本ゾルには、必要に応じて公知の分散剤を添加してもよい。
【0040】
Ti系ゾルとしては、市販品であっても、また、公知の技術により製造したものであってもよい。特に好ましい市販品として、多木化学(株)製「タイノックA-6」(アナターゼ型)、「タイノックRA-6」(ルチル型)を例示することができる。好ましい製造方法の一例として、塩化チタン、硫酸チタン等のチタンの塩をアルカリで中和した後、脱塩することで得られる酸化チタンゲルを水熱処理する方法を挙げることができる。尚、中和時又は水熱処理前に他の金属化合物を添加することによって、他の金属元素又はその化合物が酸化チタンと複合化したTi系ゾルを得ることもできる。
【0041】
Nb-Ta系ゾルとしては、市販品であっても、また、公知の技術により製造したものであってもよい。特に好ましい市販品として、ニオブがポリ酸の形態である多木化学(株)製「バイラールNB-G6000」を例示することができる。好ましい製造方法の一例として、酸化ニオブ及び/又は酸化タンタルをフッ酸(フッ酸と硫酸の混酸であってもよい)で溶解し、その液とアルカリ水溶液とをpH8以上を保持した状態で反応させ、脱塩する方法を挙げることができる。また、当該製造方法に類似し、上記「バイラールNB-G6000」の基となった特許第5441264号に記載の製造方法を用いてもよい。
【0042】
Ti系ゾルとNb-Ta系ゾルとの混合方法については、特に限定はなく、常法に従って混合すればよい。
【0043】
混合の次に行う加熱処理は、Ti系ゾルに由来する酸化チタンを主成分として含む微粒子を核粒子とし、該核粒子の表面を、Nb-Ta系ゾルに由来する非晶質のNb-O系化合物及び/又は非晶質のTa-O系化合物を主成分として含む組成物によって被覆できる条件であれば特に限定されることはない。加熱処理の条件の一例は、温度が80〜150℃、時間が1〜10時間である。また、加熱処理時のpHはアルカリ性であることが好ましい。
【0044】
Ti系ゾルとNb-Ta系ゾルの量比については、前記のように、基本ゾルにおける質量比が、(Nb2O5+Ta2O5)/(TiO2+Nb2O5+Ta2O5)=5〜50質量%となるように設定することが好ましい。
【0045】
(第二工程)
第二工程は、基本ゾルから、陽イオン(水素イオンを除く)を除去する工程であり、これにより高純度ゾルを得ることができる。基本ゾル中には、例えば、Ti系ゾル由来のアルカリ成分が副成分として含まれるので、これを除去したいときに第二工程を実施すればよい。
【0046】
陽イオン(水素イオンを除く)の除去方法としては、一般的な除去方法を使用すればよく、例えば、水を添加しながらの限外ろ過、陽イオン交換樹脂による処理等を挙げることができる。
【0047】
(第三工程)
第三工程は、基本ゾル又は高純度ゾルと、シラン化合物とを混合した後、熟成する工程であり、これにより修飾ゾルを得ることができる。尚、分散媒を水から有機溶媒に置換することを前提とするときは、基本ゾルよりも高純度ゾルを用いる方が好ましい。
【0048】
熟成は、基本ゾル又は高純度ゾル中の分散粒子の表面にシラン化合物を吸着させることを目的とするものであり、当該目的を達成することができれば特に制限なく行うことができる。特に、シラン化合物が十分に加水分解する条件で熟成を行うことが好ましい。具体的な熟成条件としては、例えば、室温〜100℃で0.5〜48時間撹拌することが挙げられる。
【0049】
シラン化合物としては、アルコキシシラン、シランカップリング剤等の珪酸化合物が好例であり、具体的な化合物として、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、へキシルトリメトキシシラン、へキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等を例示することができる。
【0050】
上記シラン化合物のうち、特にゾルの分散性を高める上で効果的なものとして、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等を例示することができる。
【0051】
シラン化合物の適用量については、前記のように、シラン化合物をSiO2換算したときに、SiO2/(TiO2+Nb2O5+Ta2O5+SiO2)の質量比が20質量%以下になるように設定することが好ましく、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0052】
(第三′工程)
第三′工程は、基本ゾル又は高純度ゾルと、シラン化合物とを混合した後、熟成する工程は第三工程と同じであるが、該混合の前もしくは後、又は前後の両方において、分散媒を水から有機溶媒に置換する操作を伴う工程であり、これにより有機溶媒を分散媒とする修飾ゾルを得ることができる。
【0053】
分散媒の水から有機溶媒への置換方法としては公知の方法を用いればよく、例えば、蒸留置換法、限外ろ過法等が挙げられる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明の詳細を実施例を挙げて説明するが、本発明はそれらの実施例によって限定されるものではない。尚、特に断らない限り%は全て質量%を示す。
【0055】
[助材]
・陽イオン交換樹脂として、オルガノ(株)製「アンバーライト IR120B」を用いた。
・限外ろ過膜として、旭化成ケミカルズ(株)製「SLP-1053」を用いた。
【0056】
[原料]
・アナターゼ型酸化チタンゾルとして、多木化学(株)製「タイノックA-6」(TiO2=6.2%、NH3=0.16%、pH11.4)を用いた。
・ルチル型酸化チタンゾルとして、多木化学(株)製「タイノックRA-6」(TiO2=6.2%、NH3=0.10%、pH10.4)を用いた。
・非晶質Nb-O系ゾルとして、多木化学(株)製「バイラールNb-G6000」(Nb2O5=6.2%、NH3=0.46%、pH8.7)を用いた。
・非晶質Ta-O系ゾルとして、以下の製造方法によって製造されたものを用いた。(1) 五酸化タンタル(多木化学(株)製)50gを10%フッ化水素酸水溶液480gに溶解した後、イオン交換水8800g添加して、フッ化タンタル酸水溶液を得た(Ta2O5=0.54%)。(2) 1%アンモニア水5000gに上記フッ化タンタル酸水溶液9000gを60分間かけて添加し、酸化タンタルゲルを得た(Ta2O5=0.35%、pH8.2)。(3) 当該酸化タンタルゲルを限外ろ過膜でろ液ECが0.4mS/cm以下になるまで洗浄し、非晶質Ta-O系ゾル600gを得た(Ta2O5=8.0%、NH3=0.34%、pH8.3)。
・シリカゾルとして、(株)アデカ製「AT-20Q」(SiO2=20.8%)を用いた。
【0057】
〔実施例1〕
アナターゼ型酸化チタンゾル1000gに非晶質Nb-O系ゾル429gを添加し、140℃、3時間の条件で水熱処理することによって、被覆酸化チタンゾル(基本ゾル)を得た。
【0058】
〔実施例2〕
実施例1で得られた基本ゾル1000gに純水770gを添加した後、陽イオン交換樹脂を過剰量添加し、室温で撹拌した後、陽イオン交換樹脂を取り除くことによって、副成分を除去した被覆酸化チタンゾル(高純度ゾル)を得た。これを限外ろ過膜を用いて濃縮した。
【0059】
〔実施例3〕
アナターゼ型酸化チタンゾル1000gに非晶質Nb-O系ゾル111gを添加し、140℃、3時間の条件で水熱処理を行い、被覆酸化チタンゾル(基本ゾル)を得た(TiO2=5.6%、Nb2O5=0.6%、pH10.0)。得られたゾル1000gに純水770gを加え、そこに陽イオン交換樹脂を過剰量添加し、室温で撹拌した後、陽イオン交換樹脂を取り除くことによって、副成分を除去した被覆酸化チタンゾル(高純度ゾル)を得た。
【0060】
〔実施例4〕
アナターゼ型酸化チタンゾル1000gに非晶質Nb-O系ゾル667gを添加し、140℃、3時間の条件で水熱処理を行い、被覆酸化チタンゾル(基本ゾル)を得た(TiO2=3.7%、Nb2O5=2.5%、pH9.2)。得られたゾル1000gに純水770gを加え、そこに陽イオン交換樹脂を過剰量添加し、室温で撹拌した後、陽イオン交換樹脂を取り除くことによって、副成分を除去した被覆酸化チタンゾル(高純度ゾル)を得た。
【0061】
〔実施例5〕
アナターゼ型酸化チタンゾル1000gに非晶質Nb-O系ゾル41gを添加し、140℃、3時間の条件で水熱処理することによって、被覆酸化チタンゾル(基本ゾル)を得た。
【0062】
〔実施例6〕
アナターゼ型酸化チタンゾル1000gに非晶質Ta-O系ゾル333g及び純水96gを添加した後、140℃、3時間の条件で水熱処理を行い、被覆酸化チタンゾル(基本ゾル)を得た(TiO2=4.3%、Ta2O5=1.9%、pH10.0)。得られたゾル1000gに純水770gを加え、そこに陽イオン交換樹脂を過剰量添加し、室温で撹拌した後、陽イオン交換樹脂を取り除くことによって、副成分を除去した被覆酸化チタンゾル(高純度ゾル)を得た。
【0063】
〔実施例7〕
ルチル型酸化チタンゾル1000gに非晶質Nb-O系ゾル429gを添加し、140℃、3時間の条件で水熱処理を行い、被覆酸化チタンゾル(基本ゾル)を得た(TiO2=4.3%、Nb2O5=1.9%、pH9.9)。得られたゾル1000gに純水770gを加え、そこに陽イオン交換樹脂を過剰量添加し、室温で撹拌した後、陽イオン交換樹脂を取り除くことによって、副成分を除去した被覆酸化チタンゾル(高純度ゾル)を得た。
【0064】
〔実施例8〕
実施例2で得られた濃縮した高純度ゾル(TiO2=4.3%、Nb2O5=1.9%)500gにメチルトリメトキシシラン8gを添加し、室温で12時間撹拌した。これを限外ろ過膜を用いてメタノールを添加しながらろ過することによって、メタノールを分散媒とする被覆酸化チタンゾル(修飾ゾル)を得た。
【0065】
〔実施例9〕
実施例6で得られた高純度ゾル(TiO2=2.2%、Ta2O5=1.0%)1000gにメチルトリエトキシシラン5gを添加し、90℃で1時間加熱した。これを限外ろ過膜を用いてメタノールを添加しながらろ過することによって、メタノールを分散媒とする被覆酸化チタンゾル(修飾ゾル)を得た。
【0066】
〔実施例10〕
実施例7で得られた高純度ゾル(TiO2=2.2%、Nb2O5=1.0%)1000gにメチルトリエトキシシラン5gを添加し、90℃で1時間加熱した。これを限外ろ過膜を用いてメタノールを添加しながらろ過することによって、メタノールを分散媒とする被覆酸化チタンゾル(修飾ゾル)を得た。
【0067】
〔比較例1〕
アナターゼ型酸化チタンゾル1000gを、140℃、3時間の条件で水熱処理をした。これに純水770gを加えた後、陽イオン交換樹脂を過剰量添加し、室温で撹拌したところ、増粘・凝集してしまったため、ゾルを得ることはできなかった。
【0068】
(分析)
以下の分析項目において、特に断らない限り実施例1〜10において最終的に得られた各ゾル(注:実施例2は濃縮後のゾル)を対象として分析を行った。また、アナターゼ型酸化チタンゾル(「タイノックA-6」;参考例1)及び非晶質Nb-O系ゾル(「バイラールNb-G6000」;参考例2)については、すべての分析項目で分析を行った。結果を表1と表2に示した。
【0069】
[成分分析]
ゾルを乾燥後、800℃焼成することで得られた焼成固形分濃度と、ゾルを乾燥後、(株)リガク製 蛍光X線分析装置 Supermini200で測定した値とを用いて、各金属酸化物成分の濃度を算出した。
【0070】
[アンモニア量]
実施例1〜7で得られたゾル中のアンモニア量は、Tecator社製 ケルダール自動蒸留滴定装置 ケルテック2300により測定した窒素量から求めた。
【0071】
[pH]
実施例1〜7で得られたゾルのpHは、(株)堀場製作所製 pHメーター D-53Sを用いて測定した。
【0072】
[EC]
実施例1〜7で得られたゾルのECは、東亜電波工業(株)製 電気伝導度計 CM-14Sを用いて測定した。
【0073】
[Haze]
実施例1〜7で得られたゾルについては純水、実施例8〜10で得られたゾルについてはメタノールでそれぞれ固形分濃度1%に希釈した後、日本電色工業(株)製 ヘーズメーターCOH400によりHazeを測定した。
【0074】
[平均粒子径]
実施例1〜7で得られたゾルについては純水、実施例8〜10で得られたゾルについてはメタノールでそれぞれ固形分濃度1%に希釈した後、(株)堀場製作所製 動的光散乱式粒度分布測定装置 LB-500により分散粒子の平均粒子径を測定した。
【0075】
[光触媒活性]
ゾルを純水で固形分濃度2%に調整し、56×72mmのスライドガラスにスピンコートした。スピンコートの条件は1000rpmで10秒間である。150℃で20分間乾燥することにより得られた薄膜について、メチレンブルーの分解試験で光触媒活性を評価した(試験方法はJIS R1703-2に従った)。
【0076】
[屈折率]
5%ポリビ二ルアルコール水溶液に、実施例1〜7のゾルをポリビニルアルコール水溶液とゾルの混合液の総固形分量に対して金属酸化物量が70%となるように配合した。次に、この液を56×72mmのスライドガラスにスピンコートした。スピンコートの条件は1000rpmで10秒間である。得られた薄膜を110℃で20分間乾燥した後、フィルメトリクス(株)製 F-20を用いて屈折率を測定した。
【0077】
[保存安定性]
ゾルを40℃恒温槽に保存し、その外観変化を観察した。3ヶ月以上外観変化が無かったものを○、1〜2ヶ月で増粘、沈殿がみられたものを△、1ヶ月以内に増粘、沈殿が見られたものを×として評価した。
【0078】
表2より、実施例1〜7で得られたゾルは、Nb-O系化合物又はTa-O系化合物で被覆されていることにより、非被覆の参考例1と比較して光媒活性が低減し、且つ高い屈折率を有することが分かった。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】