特許第6362171号(P6362171)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6362171気密端子およびその気密端子を用いたアルミ電解コンデンサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362171
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】気密端子およびその気密端子を用いたアルミ電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/10 20060101AFI20180712BHJP
   H01G 9/00 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   H01G9/10 A
   H01G9/10 F
   H01G9/00 290L
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-87465(P2015-87465)
(22)【出願日】2015年4月22日
(65)【公開番号】特開2016-207822(P2016-207822A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2017年1月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】300078431
【氏名又は名称】ショット日本株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西脇 進
(72)【発明者】
【氏名】山本 英文
【審査官】 小池 秀介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−158066(JP,A)
【文献】 特開平04−188653(JP,A)
【文献】 特開2010−114132(JP,A)
【文献】 特開2007−002280(JP,A)
【文献】 特開平10−130881(JP,A)
【文献】 特開2000−182907(JP,A)
【文献】 特開2001−267190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G9/00−9/012
9/04−9/042
9/048−9/06
9/08−9/14
9/15−9/18
9/22
H01R9/00
9/15−9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のベースに形成された通孔を貫通するようにリードが絶縁ガラスによって気密封着された気密端子において、前記ベースの全表面と、少なくともパッケージ内部のインナーリード表面との両方にアルミニウムめっき層が被覆され、パッケージ外部に露出するアウターリードの所望表面はアルミニウムめっき層が被覆されていないことを特徴とする気密端子。
【請求項2】
前記絶縁ガラスは、前記アルミニウムの溶融温度以下の温度で封着したガラスであることを特徴とする請求項1に記載の気密端子。
【請求項3】
金属製のベースに形成された通孔を貫通するリードが絶縁ガラスによって気密封着された気密端子を用意し、この気密端子の全体を溶融アルミニウム浴中に浸漬させて引き揚げ、リードおよびベースの全表面に溶融アルミニウムめっきを施し、次いでリードのアウターリードのみアルミニウム腐食液中に浸漬させてパッケージ外部に露出するアウターリードのアルミニウムめっき層を剥離したこと特徴とする気密端子の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の気密端子のパッケージ内部のインナーリードに、酸化被膜を表面に形成した陽極用アルミニウム箔、電解液を含浸させた電解紙、陰極用アルミニウム箔からなるコンデンサ素子を電気接続し、コンデンサ素子を覆うアルミニウムケースをベースに圧入して圧着させて組み立てたアルミ電解コンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気・電子装置に用いられる気密端子およびその気密端子を用いたアルミ電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子に用いる一般的な気密端子は、コバール材(鉄:54%、ニッケル:28%、コバルト:18%の合金)からなるベースと、同じくコバール材からなるリードと、ベースとリードとを封着した絶縁ガラスと、ベースに圧入されて固定される鉄製のキャップを備える。ベースには一対の通孔が形成されており、この通孔を貫通するようにリードがガラスによって電気絶縁され気密封着されている。このような気密端子においては通常、プリント基板実装時のアウターリードのはんだ付け性の確保のため、気密端子の全表面にはんだ合金めっき、錫めっき、ニッケルめっき、金めっきなどの電解めっきが施される。電解めっき方法としては、多数の気密端子を通液性の有るバレル内に収納し、バレルごとめっき浴内に浸漬させて、バレルを回転させ、多数の気密端子に一度にめっきを施すバレルめっき法が採用されている。また、はんだ合金めっき、ニッケルめっき、金めっき等を、ベースとリードへ別々に選択めっきを施す方法としては、例えば、特許文献1に記載の製造方法等が提案されている。
【0003】
一方、電子回路を構成する受動部品にアルミ電解コンデンサがある。アルミ電解コンデンサは、陽極用高純度アルミニウム箔表面に形成された酸化被膜を誘電体として、陰極用アルミニウム箔、電解液、コンデンサ紙から構成されている。特に陽極箔と陰極箔を対向させ、両極間にコンデンサ紙を挿み込んで円筒状に巻き込んだものを素子と呼ぶ。この状態では静電容量が僅少であるため、コンデンサ紙に電解液を含浸させて電解紙とすると陽極箔表面と陰極箔表面が電気的につながり、陽極箔表面のアルミニウム酸化皮膜を誘電体とする大きな静電容量を有するコンデンサ素子が得られる。(非特許文献1参照)この電解液は真の陰極の役割を果たしており、電解液の極性溶媒がドライアップしてしまうとアルミ電解コンデンサは寿命となる。一般にアルミ電解コンデンサは、電子回路を構成する部品のうち最も寿命が短い部類に属するため、近年、その長寿命化が図られている。
【0004】
従来の円筒型のアルミ電解コンデンサは、円板状のゴムパッキンを円筒ケースの開口部に挿着し、ケース開口部の円周を均等にかしめてシールする構成になっている。最近の電子回路は、機械装置の狭隘な隙間に実装されることが多く、従来の円筒型アルミ電解コンデンサに加えて、高さの低い平板型をしたアルミ電解コンデンサなど非円筒型の異形パッケージ形状のものが増えて来ている。これら異形パッケージを用いたアルミ電解コンデンサは、ケース底部の形状が方形や楕円形となるので、従来の円板状ゴムパッキンのようにケース端部を均等にかしめてシールすることが困難になってきている。また、該ゴムパッキンは、経時変化に弱く、気密性、耐熱性も共に劣るため部品の長寿命化に対応し難い。
【0005】
アルミ電解コンデンサの長寿命化の一環として、該コンデンサ素子を収めるパッケージに気密端子が利用できれば、電解液のドライアップを防止でき、しかもケース封止も簡単な圧入封止ができケース底部の形状に左右されないので大変都合がよい。しかし、従来の圧入封止が可能な気密端子は、鉄または鉄基合金の母材に、はんだめっき、錫めっき、ニッケルめっき、金めっきなどの軟質金属の電気めっき被覆を施したもので、これら従来のめっき被膜は電解液に長期間接触させると、めっき金属あるいは母材金属を構成する異種金属が電解液に次第に溶け込んで汚染しコンデンサの特性に悪影響を及ぼすため用いることができない。アルミ地金のベース材およびリード材を気密端子へ適用することも考えられるが、アルミニウムと膨張係数が適合するガラス材が無いこと、気密端子のガラス封着が約1,000℃に達する高温工程のためアルミ材が溶解してしまうことなどの理由で忌避され、実用化は困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−342649号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「アルミニウム電解コンデンサテクニカルノート CAT.1101G」,ニチコン株式会社,2014年,p.1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記課題を解消するため提案するものであり、アルミ電解コンデンサの電解液に長期間接触しても、端子金属または母材金属が電解液を汚染しない気密端子を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、金属製のベースに形成された通孔を貫通するように、リードが絶縁ガラスによって気密封着された気密端子において、ベース表面およびパッケージ内部のインナーリード表面にアルミニウムめっき層が被覆され、パッケージ外部に露出するアウターリードの所望表面にはアルミニウムめっき層が被覆されていないものである。
【0010】
本発明によれば、ベースとインナーリードから電解液へ異種金属の溶出が無く、気密性、信頼性に優れた気密端子を提供することができる。
【0011】
さらに、本発明の気密端子のインナーリードに、酸化被膜を表面に形成した陽極用アルミニウム箔、電解液を含浸させた電解紙、陰極用アルミニウム箔からなるコンデンサ素子を電気接続し、このコンデンサ素子を覆うアルミニウムケースをベースに気密圧着したアルミ電解コンデンサを提供することができる。
【0012】
このような選択的なめっき被覆を実現するために、金属製のベースに形成された通孔を貫通するリードが絶縁ガラスによって気密封着された気密端子を用意し、この気密端子のインナーリードおよびベースを溶融アルミニウム浴中に部分浸漬させて引き揚げ、インナーリードおよびベースの表面のみに溶融アルミニウムめっきを施したものである。その後、この気密端子は、酸化被膜を表面に形成した陽極用アルミニウム箔、電解液を含浸させた電解紙、陰極用アルミニウム箔からなるコンデンサ素子をインナーリードに電気接続し、このコンデンサ素子を覆うアルミニウムケースをベースに圧入して圧着させアルミ電解コンデンサに組み立てられる。
【0013】
また、選択的なめっきを実現する別の手段として、金属製のベースに形成された通孔を貫通するリードが絶縁ガラスによって気密封着された気密端子を用意し、この気密端子の全体を溶融アルミニウム浴中に浸漬させて引き揚げ、リードおよびベースの全表面に溶融アルミニウムめっきを施し、次いでリードのアウターリードのみアルミニウム腐食液中に浸漬させてパッケージ外部に露出するアウターリードのアルミニウムめっき層を剥離したものである。その後、この気密端子は、酸化被膜を表面に形成した陽極用アルミニウム箔、電解液を含浸させた電解紙、陰極用アルミニウム箔からなるコンデンサ素子をインナーリードに電気接続し、このコンデンサ素子を覆うアルミニウムケースをベースに圧入して圧着させアルミ電解コンデンサに組み立てられる。
【0014】
さらに別の手段として、金属ベースの全表面と、少なくともリードのインナー側を溶融アルミニウム浴中に浸漬させて引き揚げ、ベースおよびインナーリード側のみに溶融アルミニウムめっきを施したベースとリードとを用意し、これを低軟化温度ガラスでアルミニウムめっきの溶融温度以下で封止して、金属製のベースに形成された通孔を貫通するリードが絶縁ガラスにより気密封着したものである。その後、この気密端子は、酸化被膜を表面に形成した陽極用アルミニウム箔、電解液を含浸させた電解紙、陰極用アルミニウム箔からなるコンデンサ素子をインナーリードに電気接続し、このコンデンサ素子を覆うアルミニウムケースをベースに圧入して圧着させアルミ電解コンデンサに組み立てられる。
【0015】
本発明によれば、気密端子のベースおよび少なくともインナーリードの露出面に、選択的にアルミニウムの厚膜めっき被覆を行うことができる。インナーリードに施すアルミニウムめっき層は、局部電池腐食が電圧負荷により促進されるのを防止するため、アルミニウム純度99.5%以上のものが好適であり、望ましくはアルミニウム純度99.8%以上のものを用いるとよい。従来、専ら臨海建築物の鋼材、ボルトナットなどの建築資材や船舶用の配管材に用いられてきた溶融アルミ被覆は、比較的厚膜のアルミ被覆を製膜できるが表面凹凸が多いため膜厚のバラツキが大きく、アルミ純度も低い。これを改善するため、溶融アルミニウム浴の槽壁材料は、溶融アルミニウムと反応しない高純度セラミックス材を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、気密端子のベースおよび少なくともインナーリードの露出部にアルミニウムめっき層を被覆してあるため、アルミ電解コンデンサの電解液に接触してもインナーリードからの異種金属による電解液の汚染を抑えることができ、かつアウターリードの所望表面にアルミニウムめっき層がないため、アウターリード部のはんだ付け性の確保という目的も達成できる。しかも、ベースに施したアルミニウムめっき層は軟金属であるため、コンデンサ素子の封止にアルミニウムケースの冷間圧入が利用でき、かしめや接着等の煩雑な工程が不要となる。
【0017】
また、アルミニウムめっき層をアルミニウム純度99.5%以上望ましくは99.8%以上のものを用いることによりリードの電解腐食を防止する。これは、特に電圧負荷が架かる陽極リードの局部電池反応の進行を抑制する効果がある。
【0018】
本構成により、気密端子のコンプレッションシールを適用できるため、高気密、高信頼性が発揮でき、電解液のドライアップを防いでアルミ電解コンデンサの寿命を格段に伸ばすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る気密端子10を示し、(a)は平面図を、(b)は(a)のD−Dに沿って切断した正面断面図を、(c)は下面図を示す。
図2】本発明に係るアルミ電解コンデンサ20を示し、(a)は平面図を、(b)は(a)のD−Dに沿って切断した正面断面図を、(c)は下面図を示す。
図3】本発明に係る気密端子およびこの気密端子を用いたアルミ電解コンデンサの製造方法を示した工程フロー図を示し、(a)は気密端子10の工程フロー図30およびアルミ電解コンデンサ20の工程フロー図30−2を、(b)は気密端子10の工程フロー図40およびアルミ電解コンデンサ20の工程フロー図40−2を、(c)は気密端子10の工程フロー図50およびアルミ電解コンデンサ20の工程フロー図50−2を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の気密端子ならびにアルミ電解コンデンサ、およびその製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
本発明の請求項1に記載の発明は、図1に示すように、鋼または鉄合金からなる金属製のベース11と、このベース11に形成された通孔を貫通する鋼または鉄合金からなるリード12と、このリード12とベース11とを絶縁ガラス13によって気密封着された気密端子において、ベース11はベース表面に、リード12は少なくともパッケージ内部のインナーリード12−1表面に、それぞれアルミニウムめっき層14が被覆され、さらにリード12は、パッケージ外部に露出するアウターリード12−2の所定表面はアルミニウムめっき層が被覆されていないことを特徴とする気密端子10である。
【0022】
本発明の請求項2に記載の発明は、図2に示すように、請求項1記載のインナーリード12−1に、酸化被膜を表面に形成した陽極用アルミニウム箔、電解液を含浸させた電解紙、陰極用アルミニウム箔からなるコンデンサ素子15を電気接続し、このコンデンサ素子15を覆うアルミニウムケース16をベース11に気密圧着したアルミ電解コンデンサ20である。
【0023】
本発明に係る請求項1の気密端子10および請求項2のアルミ電解コンデンサ20のアルミニウムめっき層は、アルミニウム純度99.5%以上望ましくは99.8%以上のものが好適である。これによりリードの電解腐食を防止でき、特に電圧負荷が架かる陽極リードの局部電池反応の進行を抑制する効果がある。
【0024】
本発明に係る請求項1の気密端子10および請求項2のアルミ電解コンデンサ20にアルミニウムめっき層を施す方法は、少なくともインナーリードに高純度のアルミニウム膜を施工できればよく、特定の工法に限定されない。該アルミニウム膜の施工方法には、例えば、以下の請求項3ないし請求項8の製造方法が好適に利用できる。
【0025】
本発明の請求項3に記載の発明は、図3(a)の工程フロー図30に示すように、鋼または鉄合金からなる金属製のベースと、このベースに形成された通孔を貫通するリードと、このリードとベースを封着する絶縁ガラスのタブレットとを組み合わせて封着治具にセットする部品振込工程31、封着治具にセットした各部品を加熱炉に通してリードとベースとを絶縁ガラスによって封着するガラス封着工程32、ガラス封着された気密端子のインナーリードおよびベースを溶融アルミニウム浴中に浸漬させて引き揚げる溶融めっき工程33からなる気密端子10の製造方法である。
【0026】
工程フロー図30の方法で製造された気密端子10は、インナーリードおよびベースの表面のみに溶融アルミニウムめっきが施される。
【0027】
本発明の請求項4に記載の発明は、図3(a)の工程フロー図30−2に示すように、請求項3記載の気密端子のインナーリードに、酸化被膜を表面に形成した陽極用アルミニウム箔、電解液を含浸させた電解紙、陰極用アルミニウム箔からなるコンデンサ素子を電気接続する素子実装工程34、このコンデンサ素子を覆うアルミニウムケースをベースに圧入して圧着させる圧入工程35で組み立てたアルミ電解コンデンサ20の製造方法である。
【0028】
本発明の請求項5に記載の発明は、図3(b)の工程フロー図40に示すように、鋼または鉄合金からなる金属製のベースと、このベースに形成された通孔を貫通する鋼または鉄合金からなるリードと、このリードとベースを封着する絶縁ガラスのタブレットとを組み合わせて封着治具にセットする部品振込工程41、封着治具にセットした各部品を加熱炉に通してリードとベースとを絶縁ガラスによって封着するガラス封着工程42、ガラス封着された気密端子の全体を溶融アルミニウム浴中に浸漬させて引き揚げる溶融めっき工程43、リードおよびベースの全表面に施した溶融アルミニウムめっきを、リードのアウターリード部のみアルカリ性のアルミニウム腐食液中に浸漬させてパッケージ外部に露出するアウターリードのアルミニウムめっき層を剥離するめっき剥離工程44からなる気密端子10の製造方法である。
【0029】
工程フロー図40の方法で製造された気密端子10は、一旦、リードおよびベースの全表面に施したに溶融アルミニウムめっきを、アウターリードのめっき層を剥離して、インナーリードおよびベースの表面のみに溶融アルミニウムめっきが施される。
【0030】
本発明の請求項6に記載の発明は、図3(b)の工程フロー図40−2に示すように、請求項5記載の気密端子のインナーリードに、酸化被膜を表面に形成した陽極用アルミニウム箔、電解液を含浸させた電解紙、陰極用アルミニウム箔からなるコンデンサ素子を電気接続する素子実装工程45、このコンデンサ素子を覆うアルミニウムケースをベースに圧入して圧着させる圧入工程46で組み立てたアルミ電解コンデンサ20の製造方法である。
【0031】
本発明の請求項7に記載の発明は、図3(c)の工程フロー図50に示すように、鋼または鉄合金からなる金属ベースの全表面と、鋼または鉄合金からなるリードの少なくともインナー側を溶融アルミニウム浴中に浸漬させて引き揚げ、ベースおよびインナーリード側のみに溶融アルミニウムめっきを施したベースとリードとを用意する部品めっき工程51、めっき済みのリードをめっき済みのベースの通孔に挿通させ、このリードとベースを封着する低軟化温度ガラスからなる絶縁ガラスのタブレットとを組み合わせて封着治具にセットする部品振込工程52、封着治具にセットした各部品を加熱炉に通してリードとベースとを絶縁ガラスによってアルミニウムめっきの溶融温度以下の温度で封着するガラス封着工程53からなる気密端子10の製造方法である。なお、上述の工程フロー図50には、不要部分のアルミニウムめっき被膜を除去する目的で、めっき剥離工程51−2を必要に応じて追加してもよい。
【0032】
工程フロー図50の方法で製造された気密端子10は、リードおよびベースの所定表面に溶融アルミニウムめっきを施した後、両者をガラス封着することで、インナーリードおよびベースの表面のみに溶融アルミニウムめっきが施された気密端子10となる。
【0033】
本発明の請求項8に記載の発明は、請求項7記載の気密端子10のインナーリードに、酸化被膜を表面に形成した陽極用アルミニウム箔、電解液を含浸させた電解紙、陰極用アルミニウム箔からなるコンデンサ素子を電気接続する素子実装工程54、このコンデンサ素子を覆うアルミニウムケースをベースに圧入して圧着させる圧入工程55で組み立てたアルミ電解コンデンサ20の製造方法である。
【0034】
本発明の請求項3ないし請求項8の発明に用いる溶融アルミニウム浴は、少なくとも溶融アルミとの接触面を高純度のアルミナ材、マグネシア材、ジルコニア材、黒鉛材、炭化ケイ素材から選択された壁面にしたものが好適である。特に望ましくはジルコニア材、炭化ケイ素材が好ましい。また、溶融アルミニウム浴の温度は、670〜700℃の範囲が作業温度として望ましい。さらに作業中の溶融アルミニウム液上面をハロゲン化アルカリ塩、ハロゲン化金属塩、リン酸塩、硼酸塩から選択されたアルミ還元性の無機溶融塩で覆って空気接触を防ぐとボイドやつららを少なくでき膜厚の均一性も良くでき好適である。無機溶融塩を用いた場合は、溶融めっき工程ならびに部品めっき工程の後に水洗または極性溶剤を洗浄剤に用いた洗浄工程を設けるとよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は電気・電子装置に用いられるアルミ電解コンデンサのパッケージに利用できる。
【符号の説明】
【0036】
10・・・気密端子、
11・・・ベース、
12・・・リード、
12−1・・・インナーリード、
12−2・・・アウターリード、
13・・・絶縁ガラス、
14・・・アルミニウムめっき層、
15・・・コンデンサ素子、
16・・・アルミニウムケース、
20・・・アルミ電解コンデンサ、
30,30−2,40,40−2,50,50−2・・・工程フロー図
51・・・部品めっき工程、
31,41, 52・・・部品振込工程、
32,42,53・・・ガラス封着工程、
33,43・・・溶融めっき工程、
44,53−2・・・めっき剥離工程、
34,45,54・・・素子実装工程、
35,46,55・・・圧入工程。
図1
図2
図3