(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、火災報知設備にあっては、受信機から引き出された伝送路に、固有のアドレスを設定した複数の火災感知器を接続し、火災感知器で火災を検出した場合に、アドレスを含む火災検出信号を受信機に送信し、受信機で火災警報を出力するようにしている。
【0003】
また、火災報知設備にあっては、設備を施工した場合、設置した火災感知器が所定の場所に正しく設置されていることを確認する目的で火災感知器の作動確認をおこなう必要があり、その中で、試験治具を用いて火災感知器を実際に作動させる感知器試験を行う。
【0004】
感知器試験は、受信機に一人、感知器側に一人の2名の係員により行われる。感知器側の係員は、支持ポールの先端に試験ヘッドを設けた試験治具を使用し、試験ヘッドを例えば煙感知器を覆うように下から密着させ、この状態で試験ヘッドから煙を流入させる煙感知器を動作するか、あるいは磁石によるリードスイッチ等の動作で煙感知器を擬似的に動作し、受信機の係員が火災感知器の動作試験に伴う火災受信の有無を確認し、インターホンなどで連絡を取りながら試験作業を進めている。
【0005】
このように、感知器試験は少なくとも2名の係員が必要であり、作業工数の削減を目的として、これを1名でできるようにした感知器試験システムが期待されている。例えば受信機に火災受信を検出して試験結果として打ち出すプリンタを設け、試験治具を用いて警戒区域に設置している火災感知器の動作試験を行い、感知器試験が終了した時点でプリンタの記録内容をみることで、動作試験を行った火災感知器が正常か異常かを判断する感知器試験システムである。
【0006】
このような係員1名による感知器試験では、受信機側に係員がつかず、感知器試験に伴う受信機からの火災警報の復旧操作が行えないことから、感知器試験に先立ち、例えば地区音響警報については警報停止操作を行っておき、また受信機から出す主音響警報については、復旧操作によらず、火災検出信号が受信されている間だけ警報を出力するように設定する操作を行うことになる
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、係員1名による感知器試験を可能とした感知器試験システムにあっては、感知器の試験作業中に実際に火災が発生した場合、受信機から火災警報が出力されるが、この火災警報が感知器試験によるものか、実際に起きた火災によるものかの区別がつきにくく、また受信機からの警報音が聞こえにくい場所で作業している場合もあり、火災に気付くまでに時間がかかり、迅速且つ適正な対処ができなくなる恐れがある。
【0009】
また、感知器試験の作業中に、係員が火災を知った場合、受信機に戻って地区音響災警報を出力させる操作を必要とし、地区音響警報が出力されるまでに時間がかかる問題もある。
【0010】
本発明は、係員1名による試験作業であっても、感知器試験中に起きた火災を確実に知って迅速且つ適切に対処可能とする火災報知設備の感知器試験システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(
感知器試験システム)
また、本発明は、火災感知器から送信された固有の感知器識別情報(感知器アドレス)を含む火災検出信号を受信機で受信して火災警報を出力する火災報知設備の感知器試験システムに於いて、
火災感知器に設けられ、読み取り可能にタグ識別情報(タグID)を記憶したタグ手段と、
火災感知器の試験治具に配置され、タグ手段のタグ識別情報を読み取ってタグ読取信号を外部へ送信すると共に、外部から受信した試験判定信号に基づく判定結果を報知する感知器試験端末手段と、
受信機で火災検出信号を受信した場合に、当該火災検出信号に含まれる感知器識別情報を含む感知器識別信号を外部に移報出力する移報手段と、
感知器識別信号とタグ読取信号とに基づき試験結果を判定し、判定結果を感知器試験端末手段に送信して報知させる感知器試験判定手段と、
を備え、
受信機は、操作部による感知器試験モードの設定操作を検出した場合に、所定の火災警報動作を禁止する感知器試験モードを設定し、
感知器試験判定手段は、タグ読取信号を受信することなく感知器識別信号のみを受信して火災を判定した場合、試験モード解除信号を受信機に出力して感知器試験モードを解除させる。
【0013】
(受信機との一体化)
感知器試験判定手段を、受信機の機能として設ける。
【0014】
(有線伝送)
火災感知器は前記受信機から引き出された伝送路に接続される。
【0015】
(無線伝送)
受信機から引き出された伝送路に無線中継器を接続し、火災感知器は火災検出信号を無線中継器へ無線送信し、無線中継器は火災感知器から受信した火災検出信号を、伝送路を介して受信機に送信する。
【0016】
感知器試験端末手段は
、タグ読取信号を無線送信し、
感知器試験判定手段は、判定結果を無線送信する。
【発明の効果】
【0017】
(基本的な効果)
本発明による火災報知設備の感知器試験システムによれば、火災感知器の動作試験を試験治具により行う場合に、試験治具側の感知器試験端末手段により、火災感知器に設けたタグ手段のタグ識別情報を読み取ってタグ読取信号を受信機側に配置した感知器試験判定手段に送信し、受信機の移報手段により火災検出信号を受信した場合に感知器識別信号を感知器試験判定手段に移報出力し、感知器試験判定手段は、感知器識別信号とこれに対応するタグ読取信号との両方を受信した場合は試験した火災感知器の正常を判定し、感知器識別信号を受信することなくタグ読取信号のみを受信した場合は試験した火災感知器の異常を判定し、更に、タグ読取信号を受信することなく感知器識別信号のみを受信した場合は火災を判定し、各判定結果を感知器試験端末手段に送信して報知させるようにしたため、係員1名により試験治具を用いた試験作業を可能にすると共に、試験作業中に火災が起きた場合は、感知器試験判定手段でタグ読取信号を受信することなく感知器識別信号のみを受信することで実火災を判定して係員側に通知し、係員1名による試験作業であっても、感知器試験中に起きた火災を確実に知って迅速且つ適切に対処可能とする。
【0018】
(感知器試験モードの自動解除による効果)
また、感知器試験作業に伴い受信機に地区音響停止等の所定の火災警報動作を禁止する感知器試験モードを設定した場合、感知器試験判定手段でタグ読取信号を受信することなく感知器識別信号のみを受信して火災を判定した場合に、試験モード解除信号を受信機に出力して感知器試験モードを解除させるようにしたため、感知器試験を行っている係員に実火災が通知された場合、受信機に戻って行う操作を必要とすることなく、受信機の感知器試験モードが自動的に解除され、通常監視中の場合と同様に、実火災に基づく火災検出信号の受信により火災警報を出力することができ、感知器試験中に起きた火災に対し迅速且つ適切な対処可能とする。
【0019】
また、万が一、感知器試験を行っている係員が、感知器試験モードを解除し忘れて、建物を離れた場合があったとしても、感知器試験判定手段でタグ読取信号を受信することなく感知器識別信号のみを受信して火災を判定した場合に、受信機の感知器試験モードが自動的に解除され、通常監視中の場合と同様に、実火災に基づく火災検出信号の受信により火災警報を出力することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(感知器試験システムの概要)
図1は本発明による火災報知設備の感知器試験システムの概略を示した説明図である。
図1に示すように、建物の管理人室などに設置した受信機10からは建物内の警戒区域に向けて伝送路12が引き出されており、警戒区域内の所定の感知区域ごとに設置した火災感知器14を伝送路12に接続している。
【0022】
火災感知器14は火災に伴う煙を検出する煙感知器又は火災に伴う熱を検出する熱感知器である。火災感知器14には固有の感知器識別情報としてアドレスが予め設定されている。火災感知器14は煙濃度又は温度の検出信号から火災を検出した場合、自己のアドレスを含む火災検出信号を受信機10に送信する。
【0023】
受信機10は伝送路12を介して火災感知器14が送信した火災検出信号を受信すると、主音響警報、地区音響警報、代表火災表示、地区火災表示等による火災警報の出力を行う。なお、受信機10と火災感知器14の間で行う火災検出信号の伝送方式は、ポーリング方式や割込方式として知られた適宜の伝送方式がとられる。
【0024】
このような火災報知設備に対し本発明の感知器試験システムにあっては、火災感知器14にタグ手段としてタグ18を設け、試験治具16に感知器試験端末手段として感知器試験端末装置24を装着し、受信機10に移報手段として移報通信部(図示せず)を設け、更に、受信機10側に感知器試験判定手段として感知器試験判定装置26を設ける。
【0025】
試験治具16は、係員22が持つ支持ポール16aの先端に試験ヘッド16bを装着しており、試験ヘッド16bは上方に開いたカップ形状であり、内部に煙又は熱を発生する試験部を備え、火災感知器14に設けたタグ18に記憶した情報を非接触で読み出すタグリーダ20を設け、更に、支持ポール16aの下部に感知器試験端末装置24を装着している。
【0026】
火災感知器14に設けたタグ18は、電源を内蔵していないパッシブ型であり、CPU、メモリ、通信部、アンテナを実装したICチップで構成し、タグ識別情報として固有のタグIDをメモリに記憶しており、感知器試験のために火災感知器14を下から覆うように試験治具16の試験ヘッド16bを火災感知器14に嵌め入れると、試験ヘッド16bに設けたタグリーダ20から送信している読取電波の受信により電源を生成して動作し、メモリからタグIDを読み取り、タグIDを含むタグ読取信号をタグリーダ20に送信し、タグリーダ20から感知器試験端末装置24へ送信し、更に感知器試験端末装置24から受信機10側の感知器試験判定装置26へタグ読取信号を送信している。
【0027】
受信機10側に設けた感知器試験判定装置26は、受信機10で火災検出信号を受信した場合に、内蔵した移報通信部により出力される感知器アドレスを含む感知器識別信号と、感知器試験端末装置24から送信されるタグ読取信号を受信し、次の判定制御を行う。
(1) 所定時間内に感知器識別信号とこれに対応するタグ読取信号との両方を受信した場合は試験した火災感知器の正常を判定し、正常判定信号を送信する。
(2) 所定時間内に感知器識別信号を受信することなくタグ読取信号のみを受信した場合は試験した火災感知器の異常を判定し、異常判定信号を送信する。
(3) 所定時間内にタグ読取信号を受信することなく感知器識別信号のみを受信した場合は火災を判定し、火災判定信号を送信する。
【0028】
感知器試験判定装置26から送信された各判定信号は、試験治具16に装着している感知器試験端末装置24で受信され、感知器試験端末装置24は正常、異状、又は火災の何れかの判定結果を報知して係員22に知らせる。
【0029】
また感知器試験判定装置26は、タグ読取信号を受信することなく感知器識別信号のみを受信して火災を判定した場合、受信機10に対し試験モード解除信号を送信し、受信機10で感知器試験に伴う所定の警報出力を禁止する感知器試験モードの設定が行われていた場合、この感知器試験モードを解除して通常の監視モードに戻す制御を行わせる。
【0030】
また感知器試験判定装置26は、所定時間内に感知器識別信号を受信することなくタグ読取信号のみを受信した場合、受信機10に対し感知器の蓄積・遅延機能モード解除信号を送信し、受信機10で感知器の蓄積・遅延機能モードの設定が行われていた場合、この感知器の蓄積・遅延機能モードを解除して、感知器の火災検出信号を早期に取得し、試験時間を短縮できる。
【0031】
(感知器試験端末装置の構成)
図2は
図1における感知器側の試験治具及び感知器試験端末装置の実施形態を示した説明図である。
【0032】
図2に示すように、試験治具16の試験ヘッド16bには火災感知器14に設けたタグ18に記憶したタグIDを読み取るタグリーダ20を設け、また試験治具16の支持ポール16aの下部には感知器試験端末装置24を装着している。
【0033】
感知器試験端末装置24は、右側に取り出して示す回路ブロック図のように、制御部30、タグリーダ20を接続したタグ通信部32、アンテナ36を接続した通信部34、報知部38及び操作部40を備え、図示しない電池電源により動作する。
【0034】
制御部30は、例えばプログラムの実行により実現される機能あり、ハードウェアとしては、CPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等を使用する。
【0035】
タグ通信部32は、制御部30の指示を受けて読取要求信号をタグリーダ20に送信してタグ18の読取動作を行わせ、これにより得られたタグIDを含むタグ読取信号を受信して制御部30に出力するインタフェースとして動作する。
【0036】
通信部34は、制御部30からの指示により、タグIDを含むタグ読取信号を受信機側の感知器試験判定装置26へ無線送信し、また感知器試験
判定装置26から受信した各種の判定信号を制御部30に出力する。
【0037】
報知部
38は、制御部30の指示に基づき、試験判定結果して正常又は異常を報知し、更に、感知器試験中に起きた火災を報知する。報知部
38には例えば音を出力するスピーカ又はブザーなどの音響素子に加え、例えば表示色の異なる正常表示LED38a(緑)、異常表示LED16c(黄)、火災警報LED16c(赤)を設けており、音と表示により正常、異常または火災を報知する。
【0038】
操作部40は、例えば電源スイッチを備え、試験治具16により火災感知器14の動作試験を行う場合に電源スイッチをオン操作して感知器試験端末装置24を動作状態とする。
【0039】
制御部30は、操作部40の電源スイッチをオンした動作状態で、所定周期毎にタグ通信部32に指示してタグリーダ20によるタグ18の読取動作を繰り返しており、タグ通信部32を介してタグ読取信号を受信した場合、通信部34に指示してタグ読取信号を無線送信させる制御を行う。
【0040】
また、制御部30は、通信部34を介して感知器試験判定装置26が送信した正常、異常、又は火災の判定信号を受信した場合、報知部38に指示して音響出力を行うと共に、正常で正常LED38aを点灯し、異常で異常LED38bを点灯し、火災で火災LED38cを点灯又は点滅させる制御を行う。
【0041】
(受信機及び感知器試験判定装置の構成)
図3は、
図1における受信機及び感知器試験判定装置の実施形態を示した回路ブロック図である。
【0042】
図3に示すように、受信機10は、受信制御部42、伝送回路部44、報知部46、操作部48、移報通信部50を備える。受信制御部42は、例えばプログラムの実行により実現される機能あり、ハードウェアとしては、CPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等を使用する。
【0043】
伝送回路部44は、複数の伝送路12を引き出しており、
図1に示したように、伝送路12に火災感知器14を接続し、火災感知器14の火災検出または試験動作により送信された感知器アドレスを含む火災検出信号を受信して受信制御部42に出力する。
【0044】
報知部46は、受信制御部
42の指示に基づき、主音響警報の出力、及び図示しない警戒区域に設置した地区音響装置で行う地区音響警報の出力、代表火災灯による火災表示、地区表示灯による火災地区表示等を行う。
【0045】
操作部48は、受信制御に必要な各種の操作スイッチを備え、感知器試験に関連するスイッチとして感知器試験モード設定スイッチを設けており、感知器試験を行う場合には、感知器試験モード設定スイッチを操作して例えば主音響と地区音響を禁止するといった所定の警報禁止モードを設定する。
【0046】
移報通信部50は、移報手段として機能し、受信制御部42で火災感知器からの火災検出信号の受信に基づく指示を受けて、当該火災検出信号に含まれる感知器アドレスを含む感知器識別信号を感知器試験判定装置26に出力する。
【0047】
受信制御部42は、伝送回路部44を介して火災検出信号を受信した場合、報知部46に火災警報の出力を指示する制御を行い、これにより報知部46は主音響と地区音響による音響警報と、代表火災表示と地区火災表示による警報表示を行う。
【0048】
また、受信制御部42は、操作部48に設けた感知器試験モード設定スイッチの設定操作を検出した場合は、感知器試験モードを設定し、火災検出信号の受信した場合、報知部46による主音響及び地区音響を禁止する制御を行う。また、受信制御部42は、感知器試験モードの設定中に、移報通信部50を介して感知器試験判定装置26から感知器試験モード解除信号を受信した場合、感知器試験モードを解除して、報知部46による主音響及び地区音響の禁止を解除する制御を行う。
【0049】
(感知器試験判定装置の構成)
図3に示すように、感知器試験判定装置26は、判定制御部52、アンテナ56を接続した通信部54、及び受信機10と接続する移報通信部58を備える。判定制御部52は、例えばプログラムの実行により実現される機能あり、ハードウェアとしては、CPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等を使用する。電源は受信機10から受けても良いし、電池電源を内蔵しても良い。
【0050】
通信部54は、試験治具16に装着した感知器試験端末装置24からのタグ読取信号を受信して判定制御部52に出力すると共に、判定制御部52の指示を受けて正常、異常、又は火災の判定信号を無線送信する。
【0051】
移報通信部58は、受信機10の移報通信部50と信号線接続し、受信機10側から受信した感知器識別信号を判定制御部52に出力すると共に、判定制御部52の指示を受けて感知器試験モード解除信号を受信機10に出力する。
【0052】
判定制御部52は、そのメモリに、
図4に示す感知器アドレスとタグIDの対応テーブルを記憶しており、この対応テーブルを利用して感知器試験の正常、異常、更に火災を判定する。
【0053】
判定制御部52は、感知器識別信号とこれに対応するタグ読取検出信号の両方を受信した場合は試験した火災感知器の正常を判定する。例えば
図1のアドレスA1の火災感知器14に設けたタグ18にタグIDとしてID1を記憶していたとすると、この火災感知器14の動作試験に伴い受信した感知器識別信号に含まれる感知器アドトレスA1により
図4の対応テーブルを参照して対応するタグID=ID1を読出し、受信したタグ識別信号に含まれるタグID=ID1に一致することで、感知器識別信号とこれに対応するタグ読取検出信号の両方の受信を判別し、試験した火災感知器の正常を判定する。
【0054】
また、判定制御部52は、感知器識別信号を受信することなくタグ読取信号のみを受信した場合は試験した火災感知器の異常を判定し、通信部54に指示して異常判定信号を送信する制御を行う。この場合、判定制御部52は、タグ読取信号のタグIDにより
図4の対応テーブルを参照することで、異常と判定した感知器アドレスを取得することができ、例えばメモリに試験データとして異常と判定した感知器アドレスを記憶して利用可能とする。
【0055】
また、判定制御部52は、感知器識別信号のみを受信した場合は火災を判定し、通信部54に指示し火災判定信号を送信すると共に、移報通信部58に指示して感知器試験モード解除信号を送信させる制御を行う。
【0056】
また、判定制御部52は、感知器試験中に別の火災感知器で火災を検出した場合、感知器試験による感知器識別信号とこれに対応するタグ読取信号の受信に続き、またはそれ以前に火災に伴う別の感知器識別信号を受信する場合がある。この場合、感知器試験の正常と火災を逐次判定することになるが、火災判定を優先し、通信部54に指示して火災判定信号を送信する制御を行う。
【0057】
(火災感知器の試験作業)
火災報知設備において火災感知器14の動作試験を行う場合、係員は受信機10の感知器試験モード設定スイッチを操作して受信機10に主音響及び地区音響を禁止する感知器試験モードを設定する。
【0058】
続いて係員は火災感知器14の設置場所に行き、感知器試験端末装置24の電源スイッチをオンして動作状態とし、試験治具16を使用して火災感知器14の動作試験を行う。このとき火災感知器14に設けたタグ18のタグIDがタグリーダ20により読み取られ、感知器試験端末装置24はタグIDを含むタグ読取信号を受信機10側の感知器試験判定装置26へ送信する。
【0059】
また試験治具16により試験動作した火災感知器14は伝送路12を介して感知器アドレスを含む火災検出信号を受信機10に送信し、これを受信した受信機10は感知器試験モードの設定により主音響と地区音響の音響警報は行わないが、火災代表表示と地区表示は行い、受信機10においても、感知器試験による動作が分かる。また、受信機10は火災検出信号の受信に基づき感知器試験判定装置26に感知器アドレスを含む感知器識別信号を送信する。
【0060】
このため感知器試験判定装置26は感知器識別信号とこれに対応するタグ読取信号を受信することから、試験した感知器が正常であると判定し、感知器試験端末装置24に正常判定信号を送信して正常を報知し、これにより係員22は感知器動作試験の試験結果が正常であることを知り、次の火災感知器14の試験を行う。
【0061】
一方、試験を行った火災感知器14に何らかの障害があった場合は、受信機10で火災検出信号が受信されないため、受信機10から感知器試験判定装置26に感知器識別信号が出力されず、このため感知器試験判定装置26はタグ識別信号のみの受信から試験した火災感知器が異常であると判定し、感知器試験端末装置24に異常判定信号を送信して異常を報知し、これにより係員22は感知器動作試験の試験結果が異常であることを知り、火災感知器交換などの必要な対処を行う。
【0062】
一方、感知器試験の作業中に、別の場所で火災が発生し、その場所の火災感知器から火災検出信号が送信された場合、感知器試験判定装置26は受信機10から感知器識別信号を受信するが、感知器試験端末装置24からタグ読取信号は受信せず、このため火災と判定し、感知器試験端末装置24に火災判定信号を送信して火災を報知し、これにより係員22は別の場所で火災が発生したことを知り、必要な対処を行うことができる。
【0063】
また、感知器試験判定装置26は火災判定した場合に受信機10に感知器試験モード解除信号を送信し、これを受けて受信機10の感知器試験モードが解除され、そのとき受信している火災検出信号に基づき、主音響及び地区音響による火災警報を、感知器試験により阻害されることなく、確実に出力することができる。
【0064】
(無線火災感知器を用いた火災報知設備)
図5は無線火災感知器を用いた火災報知設備の感知器試験システムの概略を示した説明図である。
【0065】
図5に示すように、建物の管理人室などに受信機10を設置すると共に、警戒区域内の所定の感知区域ごとに無線火災感知器60を設置し、更に、無線火災感知器60の通信可能エリアに無線中継器62を設置し、受信機10に伝送路12で接続している。
【0066】
無線火災感知器60は火災に伴う煙又は熱を検出し、固有の感知器アドレスを含む火災検出信号を無線送信する。無線火災感知器60から送信した火災検出信号は無線中継器62で受信され、伝送路12を介して受信機10に送信される。受信機10は伝送路12を介して無線中継器62から無線火災感知器60が送信した火災検出信号を受信すると、主音響警報、地区音響警報、代表火災表示、地区火災表示等による火災警報の出力を行う。
【0067】
このような無線火災感知器60を設けた火災報知設備についても、
図1の火災報知設備の場合と同様に、本発明の感知器試験システムとして、無線火災感知器60火災感知器14にタグ18を設け、試験治具16にタグリーダ20を備えた感知器試験端末装置24を装着し、受信機10に移報手段として移報通信部(図示せず)を設け、受信機10に感知器試験判定装置26を接続する。ここで、感知器試験端末装置24、受信機10及び感知器試験判定装置26の構成は、
図2及び
図3の実施形態と同様であることから、説明を省略する。
【0068】
これにより感知器試験判定装置26は、試験治具16の感知試験端末装置24からのタグ読取信号と無線火災感知器60からの感知器識別信号の両方を受信した場合は、試験した無線火災感知器60の正常を判定し、正常判定信号を感知器試験端末装置24に送信して正常を報知し、またタグ読取信号のみを受信した場合は試験した無線火災感知器60の異常を判定し、異常判定信号を感知器試験端末装置24に送信して異常を報知し、更に、感知器識別信号のみを受信した場合は火災を判定し、火災判定信号を感知器試験端末装置24に送信して火災を報知すると共に、受信機10に感知器試験モード解除信号を送信して感知器試験モードを解除して音響警報を出力させる。
【0069】
[本発明の変形例]
(感知器試験端末装置)
上記の実施形態にあっては、試験治具に対し感知器試験端末装置を外部装置として設けているが、試験治具(タグリーダ)との通信が可能である機能を有していれば、スマートフォン、PDAなど携帯端末であっても良い。
【0070】
(感知器試験判定装置)
上記の実施形態にあっては、受信機に対し感知器試験判定装置を外部装置として設けているが、感知器試験判定装置の機能を受信機に内蔵しても良い。
【0071】
(感知器試験端末装置と感知器試験判定装置との通信)
受信機側に設置した感知器試験判定装置と、試験治具に装着した感知器試験端末装置との間の通信距離は、試験する火災感知器の設置場所により様々であり、両者間で電波が届かない場合も想定され、その場合には、必要に応じて中継装置を間に設置して中継通信を行うようにする。このために使用する中継装置は、固定設置したものでもよいし、感知器試験の際に一時的に設置して使用する携帯型のものでも良い。
【0072】
(その他)
また、本発明は上記の実施形態に限定されず、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。