【実施例】
【0061】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
1.フタロシアニン誘導体の合成
(フタロシアニン誘導体Aの合成)
【0062】
化合物1の合成
【0063】
【化7】
【0064】
窒素雰囲気下、4,5−ジクロロフタロニトリル(19.0g、96.4mmol)、2,6−ジメチルフェノール(35.3g、289mmol)、炭酸カリウム(46.6g、337mmol)をDMF(190mL)に加え、100℃で16時間攪拌した。冷却後、水に分散し、析出した固体を濾取、減圧乾燥し粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。ついで酢酸エチルを用いて再結晶を行い、化合物1(20.6g、55.4mmol、収率58%、白色固体)を得た。
【0065】
化合物2の合成
【0066】
【化8】
【0067】
窒素雰囲気下、4−ヨードフタロニトリル(11.1g、43.7mmol)、4−(メトキシカルボニル)フェニルボロン酸(15.7g、87.2mmol)、炭酸ナトリウム(18.5g、175mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(4.96g、4.3mmol)をDMF(480mL)と水(155mL)の混合溶液に加え、90℃で2時間攪拌した。冷却後、酢酸エチルおよび水を加え、有機相を抽出した。抽出した有機相を硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物2(7.58g、28.9mmol、収率66%、白色固体)を得た。
【0068】
フタロシアニン誘導体Aの合成
【0069】
【化9】
【0070】
窒素雰囲気下、化合物1(34.15g、92.7mmol)、化合物2(8.11g、30.9mol)、塩化亜鉛(8.42g、61.8mmol)を2−ジメチルアミノエタノール1Lに加え、140℃で4時間攪拌した。冷却後、減圧濃縮し、残渣にメタノールを加えた。析出した固体を濾取、減圧乾燥し、粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、メチルエステル中間体を得た。
【0071】
該中間体をTHF600mL、エタノール100mLおよび1mol/L水酸化ナトリウム水溶液100mLの混合溶液に溶解し、1時間加熱還流した。冷却後、塩酸で中和し、有機溶媒を減圧留去後、残渣をクロロホルムで抽出した。抽出した有機相を水洗し、硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。ついで酢酸エチルを用いて再結晶を行い、化合物A(4.66g、3.28mmol、収率11%、緑色固体、TOF−MS m/z1417[M+H]
+)を得た。
【0072】
(フタロシアニン誘導体Bの合成)
【0073】
【化10】
【0074】
窒素雰囲気下、化合物1(3.00g、8.14mmol)、塩化亜鉛(2.22g、16.3mmol)を2−ジメチルアミノエタノール60mLに加え、140℃で4時間撹拌した。冷却後、減圧濃縮し、残渣にメタノールを加え析出した固体を濾取した。得られた粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し化合物B(1.06g、0.69mmol、収率34%、緑色固体、TOF−MS m/z1537[M+H]
+)を得た。
【0075】
(フタロシアニン誘導体Cの合成)
【0076】
【化11】
【0077】
化合物1(0.2g、0.54mmol)、塩化銅(0.036g、0.27mmol)を2−ジメチルアミノエタノール10mLに加え、140℃で2時間撹拌した。冷却後、減圧濃縮し、得られた粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し化合物C(0.055g、0.035mmol、収率26%、緑色固体)を得た。
【0078】
(フタロシアニン誘導体Dの合成)
化合物3の合成
【0079】
【化12】
【0080】
窒素雰囲気下、4,5−ジクロロフタロニトリル(2.0 g、10.2 mmol)、2,6−ジイソプロピルフェノール(4.6 g、25.8 mmol)、炭酸カリウム(3.8 g、27.5 mmol)をDMF(40mL)に加え、80〜100℃で12時間攪拌した。冷却後、水800 mLに分散し、析出した固体を濾取した。これを酢酸エチルに溶解させ、水洗した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧濃縮し粗体を得た。これをメタノールでスラリー洗浄することにより化合物3(2.8g、5.8 mmol、収率57%、薄緑色固体)を得た。
【0081】
フタロシアニン誘導体Dの合成
【0082】
【化13】
【0083】
窒素雰囲気下、化合物3(2.00g、4.16mmol)、塩化亜鉛(1.13g、8.32mmol)を2−ジメチルアミノエタノール40mLに加え、140℃で4時間撹拌した。冷却後、減圧濃縮し、残渣にメタノールを加え析出した固体を濾取した。得られた粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し化合物D(0.64g。0.32mmol、収率31%、緑色固体、TOF−MS m/z1986[M+H]
+)を得た。
【0084】
2.ポルフィリン誘導体の合成
(ポルフィリン誘導体P1の合成)
4‐(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)ベンズアルデヒドの合成
【0085】
【化14】
【0086】
反応容器に、4‐ブロモベンズアルデヒド(9.17g)、2‐(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐4,4,5,5‐テトラメチル‐1,3,2‐ジオキサボロラン(14.00g)、リン酸三カリウム(11.00g)、トルエン(150mL)と、ジクロロ[1,1‐ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)(0.20g)を加えて撹拌し、70℃に加熱した。反応終了後、反応液をセライトに通過させ、ろ液を濃縮した。これをシリカゲルカラム(クロロホルム)で展開分離し、生成物(4‐(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)ベンズアルデヒド、7.79g)を得た。
【0087】
5‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)‐10,15,20‐トリ[4‐(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)フェニル]ポルフィリンの合成
【0088】
【化15】
【0089】
反応容器に、ピロール(0.92g)、4‐(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)ベンズアルデヒド(2.79g)、テレフタルアルデヒド酸メチル(0.56g)、クロロホルム(130mL)とエタノール(0.5ml)を加え、約10℃に冷却した。そこへ、三フッ化ホウ素(0.47g)を滴下し、そのまま2時間撹拌した。この溶液に、2,3‐ジクロロ‐5,6‐ジシアノ‐1,4‐ベンゾキノン(2.32g)を加え、さらに1時間撹拌した。反応液をセライトとシリカゲルに通過させ、ろ液を濃縮して粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム/ヘキサン=3/2)により展開分離し、生成物(5‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)‐10,15,20‐トリ[4‐(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)フェニル]ポルフィリン、0.34g)を得た。
【0090】
5‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)‐10,15,20‐トリ[4‐(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)フェニル]ポルフィリン亜鉛(II)錯体の合成
【0091】
【化16】
【0092】
5‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)‐10,15,20‐トリ[4‐(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)フェニル]ポルフィリン(0.33g)をクロロホルム(16.5mL)に溶解させた。そこへ、メタノール(6mL)に溶解させた酢酸亜鉛二水和物(0.62g)を滴下した。反応終了をTLCで確認後、水を加えて分液した。有機相を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去し、粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム)で展開分離し、紫色生成物(5‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)‐10,15,20‐トリ[4‐(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)フェニル]ポルフィリン亜鉛(II)錯体、0.33g)を得た。
【0093】
5‐(4‐カルボキシルフェニル)‐10,15,20‐トリ[4‐(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)フェニル]ポルフィリン亜鉛(II)錯体(ポルフィリン誘導体P1)の合成
【0094】
【化17】
【0095】
5‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)‐10,15,20‐トリ[4‐(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)フェニル]ポルフィリン亜鉛(II)錯体(0.31g)をTHF(30mL)と水(7mL)に溶解させた。そこへ48%水酸化ナトリウム(0.70g)を加え、原料が無くなるまで約68℃で加熱した。反応終了後、THFを留去した。残渣に3%ギ酸水を加え、弱酸性にした。紫色沈殿物を回収して、紫色生成物(5‐(4‐カルボキシルフェニル)‐10,15,20‐トリ[4‐(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)フェニル]ポルフィリン亜鉛(II)錯体、0.28g)を得た。
1H‐NMR(δ
H/ppm,THF,400MHz)0.96(t,9H),1.50‐1.40(m,18H),1.81(quin,6H),2.95(t,6H),6.92(d,3H),7.51(d,3H),8.00(d,6H),8.20(d,6H),8.31(d,2H),8.43(d,2H),8.84‐8.96(m,8H)
(ポルフィリン誘導体P2の合成)
2‐ホルミル‐5‐ヘキシルチオフェンの合成
【0096】
【化18】
【0097】
2‐ヘキシルチオフェン(20.0g)と脱水テトラヒドロフラン(100mL)を入れた反応容器を、−10℃まで冷却し、そこへn‐ブチルリチウム(90mL)を滴下した。2時間後、DMF(18mL)をゆっくり滴下した。この溶液を、10℃で1時間撹拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液を滴下し、ヘキサンで抽出した。有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去して得られた油状物を、シリカゲルカラム(クロロホルム/ヘプタン=1/1)により展開分離し、生成物(2‐ホルミル‐5‐ヘキシルチオフェン、22.8g)を得た。
【0098】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリンの合成
【0099】
【化19】
【0100】
反応容器に、ピロール(2.73g)、2‐ホルミル‐5‐ヘキシルチオフェン(6.0g)、テレフタルアルデヒド酸メチル(1.67g)、クロロホルム(1500mL)とエタノール(6mL)を加え、約10℃に冷却した。そこへ、三フッ化ホウ素(1.45g)を滴下し、そのまま2時間撹拌した。この溶液に、2,3‐ジクロロ‐5,6‐ジシアノ‐1,4‐ベンゾキノン(6.94g)を加え、さらに1時間撹拌した。反応液をセライトとシリカゲルに通過させ、ろ液を濃縮して粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム/ヘキサン=3/1)により展開分離し、生成物(5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン、1.43g)を得た。
【0101】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体の合成
【0102】
【化20】
【0103】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン(1.35g)をクロロホルム(160mL)に溶解させた。そこへ、メタノール(38mL)に溶解させた酢酸亜鉛二水和物(3.77g)を滴下した。反応終了をTLCで確認後、水を加えて分液した。有機相を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去し、粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム)で展開分離し、紫色生成物(5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体、1.53g)を得た。
【0104】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体(ポルフィリン誘導体P2)の合成
【0105】
【化21】
【0106】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体(1.40g)をTHF(210mL)と水(70mL)に溶解させた。そこへ48%水酸化ナトリウム(7.0g)を加え、原料が無くなるまで約68℃で加熱した。反応終了後、THFを留去した。残渣に3%ギ酸水を加え、弱酸性にした。沈殿物を回収し、シリカゲルカラム(クロロホルム→クロロホルム/THF=5/1)で展開分離して、紫色生成物(5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体、1.27g)を得た。
1H‐NMR(δ
H/ppm,CDCl
3,400MHz)0.98(t,9H),1.45(m,12H),1.61(quin,6H),1.96(quin,6H),3.14(t,6H),7.17(d,3H),7.71(d,3H),8.35(d,2H),8.53(d,2H),8.89(d,2H),9.23(d,2H),9.24(s,4H)
【0107】
(ポルフィリン誘導体P3の合成)
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリンの合成
【0108】
【化22】
【0109】
反応容器に、ピロール(2.73g)、2‐ホルミル‐5‐ヘキシルチオフェン(6.0g)、テレフタルアルデヒド酸メチル(1.67g)、クロロホルム(1500mL)とエタノール(6mL)を加え、約10℃に冷却した。そこへ、三フッ化ホウ素(1.45g)を滴下し、そのまま2時間撹拌した。この溶液に、2,3‐ジクロロ‐5,6‐ジシアノ‐1,4‐ベンゾキノン(6.94g)を加え、さらに1時間撹拌した。反応液をセライトとシリカゲルに通過させ、ろ液を濃縮して粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム/ヘキサン=3/1)により展開分離し、生成物(5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン、1.43g)を得た。
【0110】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン銅(II)錯体の合成
【0111】
【化23】
【0112】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン(0.53g)をクロロホルム(100mL)に溶解させた。そこへ、メタノール(40mL)に溶解させた酢酸銅(0.50g)を滴下した。反応終了をTLCで確認後、溶媒を留去し、粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム/ヘキサン=1/1)で展開分離し、紫色生成物(5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン銅(II)錯体、0.42g)を得た。
【0113】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリン銅(II)錯体(ポルフィリン誘導体P3)の合成
【0114】
【化24】
【0115】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン銅(II)錯体(0.42g)をTHF(100mL)と水(10mL)に溶解させた。そこへ48%水酸化ナトリウム(1.50g)を加え、原料が無くなるまで約68℃で加熱した。反応終了後、THFを留去した。残渣に3%ギ酸水を加え、弱酸性にした。沈殿物を回収し、シリカゲルカラム(クロロホルム→クロロホルム/THF=5/1)で展開分離して、紫色生成物(5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリン銅(II)錯体、0.40g)を得た。
【0116】
(ポルフィリン誘導体P4の合成)
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリンコバルト(II)錯体の合成
【0117】
【化25】
【0118】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン(0.53g)をクロロホルム(100mL)に溶解させた。そこへ、メタノール(70mL)に溶解させた酢酸コバルト四水和物(0.70g)を滴下した。反応終了をTLCで確認後、溶媒を留去し、粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム/ヘキサン=1/2)で展開分離し、紫色生成物(5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリンコバルト(II)錯体、0.50g)を得た。
【0119】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリンコバルト(II)錯体(ポルフィリン誘導体P4)の合成
【0120】
【化26】
【0121】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリンコバルト(II)錯体(0.50g)をTHF(150mL)と水(15mL)に溶解させた。そこへ48%水酸化ナトリウム(2.00g)を加え、原料が無くなるまで約68℃で加熱した。反応終了後、THFを留去した。残渣に3%ギ酸水を加え、弱酸性にした。沈殿物を回収し、シリカゲルカラム(クロロホルム→クロロホルム/THF=5/1)で展開分離して、紫色生成物(5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリンコバルト(II)錯体、0.29g)を得た。
【0122】
(ポルフィリン誘導体P5の合成)
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリン(ポルフィリン誘導体P5)の合成
【0123】
【化27】
【0124】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン(0.15g)をTHF(50mL)と水(10mL)に溶解させた。そこへ48%水酸化ナトリウム(1.50g)を加え、原料が無くなるまで約68℃で加熱した。反応終了後、THFを留去した。残渣に3%ギ酸水を加え、弱酸性にした。沈殿物を回収し、シリカゲルカラム(クロロホルム→クロロホルム/THF=5/1)で展開分離して、紫色生成物(5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリン、0.10g)を得た。
1H‐NMR(δ
H/ppm,CDCl
3,400MHz)0.98(t,9H),1.40‐1.50(m,12H),1.60(quin,6H),1.96(quin,6H),3.14(t,6H),7.17(d,3H),7.71(d,3H),8.35(d,2H),8.54(d,2H),8.78‐9.14(m,8H)
【0125】
(ポルフィリン誘導体P6の合成)
5‐ホルミルチオフェン‐2‐カルボン酸メチルエステルの合成
【0126】
【化28】
【0127】
反応容器に、5‐ホルミルチオフェン‐2‐カルボン酸(0.50g)、4‐ジメチルアミノピリジン(0.11g)、メタノール(0.87g)とクロロホルム(12mL)を加え、5℃まで冷却した。そこへ1‐(3‐ジメチルアミノプロピル)‐3‐エチルカルボジイミド塩酸塩(0.74g)を加えた。室温で1時間撹拌後、3mol/L塩酸(8mL)を投入した。反応液をクロロホルムで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去して粗生成物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム)で精製し、黄色生成物(5‐ホルミルチオフェン‐2‐カルボン酸メチルエステル、0.45g)を得た。
【0128】
5‐(5‐メトキシカルボニルチオフェン‐2‐イル)‐10,15,20‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)ポルフィリンの合成
【0129】
【化29】
【0130】
反応容器に、ピロール(1.26g)、2‐ホルミル‐5‐ヘキシルチオフェン(2.77g)、5‐ホルミルチオフェン‐2‐カルボン酸メチルエステル(0.80g)、クロロホルム(700mL)とエタノール(3mL)を加え、約10℃に冷却した。そこへ、三フッ化ホウ素(0.67g)を滴下し、そのまま2時間撹拌した。この溶液に、2,3‐ジクロロ‐5,6‐ジシアノ‐1,4‐ベンゾキノン(3.20g)を加え、さらに1時間撹拌した。反応液をセライトとシリカゲルに通し、ろ液を濃縮して粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム/ヘキサン=3/2→5/1)により展開分離し、生成物(5‐(5‐メトキシカルボニルチオフェン‐2‐イル)‐10,15,20‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)ポルフィリン、1.43g)を得た。
【0131】
5‐(5‐メトキシカルボニルチオフェン‐2‐イル)‐10,15,20‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体の合成
【0132】
【化30】
【0133】
5‐(5‐メトキシカルボニルチオフェン‐2‐イル)‐10,15,20‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)ポルフィリン(0.50g)をクロロホルム(60mL)に溶解させた。そこへ、メタノール(14mL)に溶解させた酢酸亜鉛二水和物(1.39g)を滴下した。反応終了をTLCで確認後、水を加えて分液した。有機相を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去し、粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム)で展開分離し、紫色生成物(5‐(5‐メトキシカルボニルチオフェン‐2‐イル)‐10,15,20‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体、0.42g)を得た。
【0134】
5‐(5‐カルボキシルチオフェン‐2‐イル)‐10,15,20‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体(ポルフィリン誘導体P6)の合成
【0135】
【化31】
【0136】
5‐(5‐メトキシカルボニルチオフェン‐2‐イル)‐10,15,20‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体(0.41g)をTHF(60mL)と水(20mL)に溶解させた。そこへ48%水酸化ナトリウム(2.00g)を加え、原料が無くなるまで約68℃で加熱した。反応終了後、THFを留去した。残渣に3%ギ酸水を加え、弱酸性にした。クロロホルムで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去し、シリカゲルカラム(クロロホルム→クロロホルム/THF=5/1)で展開分離して、紫色生成物(5‐(5‐カルボキシルチオフェン‐2‐イル)‐10,15,20‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体、0.40g)を得た。
1H‐NMR(δ
H/ppm,CDCl
3,400MHz)0.98(t,9H),1.41‐1.47(m,12H),1.60(quin,6H),1.96(quin,6H),3.14(t,6H),7.17(d,3H),7.70(d,3H),7.94(d,2H),8.26(d,2H),9.12(d,2H),9.23(s,4H),9.26(d,2H)
【0137】
(ポルフィリン誘導体P7の合成)
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐(4'‐メトキシカルボニル)ビフェニル)ポルフィリンの合成
【0138】
【化32】
【0139】
反応容器に、ピロール(1.07g)、2‐ホルミル‐5‐ヘキシルチオフェン(2.35g)、4'‐ホルミルビフェニル‐4‐カルボン酸メチルエステル(0.96g)、クロロホルム(120mL)とエタノール(3mL)を加え、約10℃に冷却した。そこへ、三フッ化ホウ素(0.57g)を滴下し、そのまま2時間撹拌した。この溶液に、2,3‐ジクロロ‐5,6‐ジシアノ‐1,4‐ベンゾキノン(2.80g)を加え、さらに1時間撹拌した。反応液をセライトとシリカゲルに通過させ、ろ液を濃縮して粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム)により展開分離し、生成物(5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐(4'‐メトキシカルボニル)ビフェニル)ポルフィリン、0.40g)を得た。
【0140】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐(4'‐メトキシカルボニル)ビフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体の合成
【0141】
【化33】
【0142】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐(4'‐メトキシカルボニル)ビフェニル)ポルフィリン(0.40g)をクロロホルム(100mL)に溶解させた。そこへ、メタノール(40ml)に溶解させた酢酸亜鉛二水和物(0.60g)を滴下した。反応終了をTLCで確認後、水を加えて分液した。有機相を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去し、粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム)で展開分離し、紫色生成物(5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐(4'‐メトキシカルボニル)ビフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体、0.40g)を得た。
【0143】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐(4'‐カルボキシル)ビフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体(ポルフィリン誘導体P7)の合成
【0144】
【化34】
【0145】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐(4'‐メトキシカルボニル)ビフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体(0.40g)をTHF(70mL)と水(30mL)に溶解させた。そこへ48%水酸化ナトリウム(3.00g)を加え、原料が無くなるまで約68℃で加熱した。反応終了後、THFを留去した。残渣に3%ギ酸水を加え、弱酸性にした。沈殿物を回収し、シリカゲルカラム(クロロホルム→クロロホルム/酢酸エチル=5/1)で展開分離して、紫色生成物(5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐(4'‐カルボキシル)ビフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体、0.37g)を得た。
1H‐NMR(δ
H/ppm,CDCl
3,400MHz)0.96‐1.00(m,9H),1.44‐1.46(m,12H),1.60(quin,6H),1.96(quin,6H),3.14(t,6H),7.17(d,3H),7.70(d,3H),8.04(d,4H),8.33(d,4H),8.98‐9.25(m,8H)
【0146】
(ポルフィリン誘導体P8の合成)
2‐(4‐ヘキシルフェニル)‐4,4,5,5‐テトラメチル‐1,3,2‐ジオキサボロランの合成
【0147】
【化35】
【0148】
反応容器に、1‐ブロモ‐4‐ヘキシルベンゼン(10.00g)、ビス(ピナコレート)ジボラン(12.60g)、酢酸カリウム(12.13g)とDMF(200mL)を加えて撹拌した。そこへビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(0.61g)を投入して80℃に加温した。一晩加熱撹拌した後、クロロホルムと水を加えて分液洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を留去した。これをシリカゲルカラム(ヘキサン→ヘキサン/クロロホルム=1/2)で精製して、生成物(2‐(4‐ヘキシルフェニル)‐4,4,5,5‐テトラメチル‐1,3,2‐ジオキサボロラン、9.30g)を得た。
【0149】
5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐カルバルデヒドの合成
【0150】
【化36】
【0151】
反応容器に2‐(4‐ヘキシルフェニル)‐4,4,5,5‐テトラメチル‐1,3,2‐ジオキサボロラン(5.10g)、5‐ブロモチオフェン‐2‐カルバルデヒド(4.07g)、10%炭酸ナトリウム水溶液(55mL)とジオキサン(60mL)を加えて撹拌した。そこへテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(598mg)を投入し、80℃に加温した。一晩加熱撹拌した後、クロロホルムと水を加えて分液洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を留去した。これをシリカゲルカラム(ヘキサン/クロロホルム=4/1→クロロホルム)で精製して、生成物(5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐カルバルデヒド、4.70g)を得た。
【0152】
5,10,15‐トリ[5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリンの合成
【0153】
【化37】
【0154】
ピロール(1.58g)、5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐カルバルデヒド(4.80g)、テレフタルアルデヒド酸メチル(0.97g)をクロロホルム(180mL)とエタノール(3mL)に溶解させ、約10℃に冷却した。そこへ、三フッ化ホウ素(0.83g)を滴下し、そのまま2時間撹拌した。この溶液に、2,3‐ジクロロ‐5,6‐ジシアノ‐1,4‐ベンゾキノン(4.10g)を入れ、さらに1時間撹拌した。反応液をセライトとシリカゲルに通過させ、ろ液を濃縮して粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム)により展開分離し、生成物(5,10,15‐トリ[5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン、0.50g)を得た。
【0155】
5,10,15‐トリ[5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体の合成
【0156】
【化38】
【0157】
5,10,15‐トリ[5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン(0.50g)をクロロホルム(120mL)に溶解させた。そこへ、メタノール(60mL)に溶解させた酢酸亜鉛二水和物(0.70g)を滴下した。反応終了をTLCで確認後、水を加えて分液した。有機相を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去し、粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(ヘキサン/クロロホルム=2/1)で展開分離し、紫色生成物(5,10,15‐トリ[5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体、0.40g)を得た。
【0158】
5,10,15‐トリ[5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体の(ポルフィリン誘導体P8)合成
【0159】
【化39】
【0160】
5,10,15‐トリ[5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体(0.40g)をTHF(50mL)と水(30mL)に溶解させた。そこへ48%水酸化ナトリウム(3mL)を加え、約68℃で加熱した。反応終了後、THFを留去した。残渣に3%ギ酸水を加え、弱酸性にした。クロロホルムで抽出し、有機相を水洗した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させて溶媒を留去した。これをシリカゲルカラム(クロロホルム→クロロホルム/酢酸エチル=4/1)で精製して、紫色生成物(5,10,15‐トリ[5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体、0.30g)を得た。
1H‐NMR(δ
H/ppm,CDCl
3,400MHz)0.92(t,9H),1.30‐1.42(m,18H),1.69(quin,6H),2.69(t,6H),7.31(d,6H),7.67(d,3H),7.79(d,6H),7.87(d,3H),8.36(d,2H),8.52(d,2H),8.91‐9.34(m,8H)
【0161】
(ポルフィリン誘導体P9の合成)
9‐(2‐チオフェン)‐3,6‐ジ‐t‐ブチルカルバゾールの合成
【0162】
【化40】
【0163】
反応容器に、3,6‐ジ‐t‐ブチルカルバゾール(12.46g)、銅(8.23g)、炭酸カリウム(8.15g)、2‐ブロモチオフェン(8.73g)とニトロベンゼン(100mL)を加え、160℃で1日加熱撹拌した。反応液にクロロホルムを投入し、セライト中を通過させた。ろ液を濃縮し、シリカゲルカラム(クロロホルム/ヘキサン=1/2)で分離精製して、生成物(9‐(2‐チオフェン)‐3,6‐ジ‐t‐ブチルカルバゾール、6.75g)を得た。
【0164】
9‐[(2‐ホルミル)チオフェン‐5‐イル]‐3,6‐ジ‐t‐ブチルカルバゾールの合成
【0165】
【化41】
【0166】
9‐(2‐チオフェン)‐3,6‐ジ‐t‐ブチルカルバゾール(6.75g)を脱水THF(50mL)に溶解させ、0℃まで冷却した。そこへn‐ブチルリチウム(13mL)をゆっくりと滴下した。30分後、DMF(1.6mL)を投入した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去し、シリカゲルカラム(ヘキサン/酢酸エチル=20/1→10/1→8/1)で精製して、黄色生成物(9‐[(2‐ホルミル)チオフェン‐5‐イル]‐3,6‐ジ‐t‐ブチルカルバゾール、5.65g)を得た。
【0167】
5,10,15‐トリ[5‐(3,6‐ジ‐t‐ブチル‐9H‐カルバゾール‐9‐イル)チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリンの合成
【0168】
【化42】
【0169】
反応容器に、ピロール(0.62g)、テレフタルアルデヒド酸メチル(0.38g)、9‐[(2‐ホルミル)チオフェン‐5‐イル]‐3,6‐ジ‐t‐ブチルカルバゾール(2.70g)、クロロホルム(150mL)とエタノール(2mL)を入れ、約10℃に冷却した。そこへ、三フッ化ホウ素(0.36g)を滴下し、そのまま2時間撹拌した。この溶液に、2,3‐ジクロロ‐5,6‐ジシアノ‐1,4‐ベンゾキノン(1.70g)を加え、さらに1時間撹拌した。反応液をセライトとシリカゲルに通過させ、ろ液を濃縮して粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム)により展開分離し、生成物(5,10,15‐トリ[5‐(3,6‐ジ‐t‐ブチル‐9H‐カルバゾール‐9‐イル)チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン、0.98g)を得た。
【0170】
5,10,15‐トリ[5‐(3,6‐ジ‐t‐ブチル‐9H‐カルバゾール‐9‐イル)チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体の合成
【0171】
【化43】
【0172】
5,10,15‐トリ[5‐(3,6‐ジ‐t‐ブチル‐9H‐カルバゾール‐9‐イル)チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン(0.98g)をクロロホルム(100mL)に溶解させた。そこへ、メタノール(40mL)に溶解させた酢酸亜鉛二水和物(0.70g)を滴下した。反応終了をTLCで確認後、水を加えて分液した。有機相を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去し、粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム)で展開分離し、紫色生成物(5,10,15‐トリ[5‐(3,6‐ジ‐t‐ブチル‐9H‐カルバゾール‐9‐イル)チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体、1.00g)を得た。
【0173】
5,10,15‐トリ[5‐(3,6‐ジ‐t‐ブチル‐9H‐カルバゾール‐9‐イル)チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体(ポルフィリン誘導体P9)の合成
【0174】
【化44】
【0175】
5,10,15‐トリ[5‐(3,6‐ジ‐t‐ブチル‐9H‐カルバゾール‐9‐イル)チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体(1.00g)をTHF(150mL)と水(15mL)に溶解させた。そこへ48%水酸化ナトリウム(1.5g)を加え、原料が無くなるまで約68℃で加熱した。反応終了後、THFを留去した。残渣に3%ギ酸水を加え、弱酸性にした。紫色沈殿物を回収して、紫色生成物(5,10,15‐トリ[5‐(3,6‐ジ‐t‐ブチル‐9H‐カルバゾール‐9‐イル)チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体、0.70g)を得た。
1H‐NMR(δ
H/ppm,CDCl
3,400MHz)1.53(s,54H),7.63(dd,3H),7.67(t,6H),7.88(t,6H),8.01(dd,3H),8.22(s,6H),8.41(d,2H),8.59(d,2H),9.02(d,2H),9.42(d,2H),9.48(s,4H)
【0176】
(ポルフィリン誘導体P10の合成)
5‐ブロモ‐5'‐ホルミル‐2,2'‐ビチオフェンの合成
【0177】
【化45】
【0178】
5‐ホルミル‐2,2'‐ビチオフェン(5.00g)をDMF(6mL)に溶解させ、0℃に冷却した。そこへN‐ブロモスクシンイミド(4.80g)を投入した。反応終了後、水を加え、分液洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去して粗生成物を得た。これをTHFと酢酸エチルで洗浄して、生成物(5‐ブロモ‐5'‐ホルミル‐2,2'‐ビチオフェン、6.00g)を得た。
【0179】
5‐(5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル)チオフェン‐2‐カルバルデヒドの合成
【0180】
【化46】
【0181】
反応容器に、5‐ブロモ‐5'‐ホルミル‐2,2'‐ビチオフェン(5.52g)、2‐(4‐ヘキシルフェニル)‐4,4,5,5‐テトラメチル‐1,3,2‐ジオキサボロラン(6.23g)、10%炭酸ナトリウム水溶液(65mL)、ジオキサン(60mL)とキシレン(20mL)を加えて撹拌した。そこへテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0.66g)を投入し、80℃に加温した。4時間加熱撹拌した後、クロロホルムと水を加えて分液洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を留去した。これをシリカゲルカラム(ヘキサン/クロロホルム=1/1→クロロホルム)で精製して、生成物(5‐(5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル)チオフェン‐2‐カルバルデヒド、5.40g)を得た。
【0182】
5,10,15‐トリ[5‐[5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル]チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリンの合成
【0183】
【化47】
【0184】
ピロール(1.38g)、5‐(5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル)チオフェン‐2‐カルバルデヒド(5.40g)、テレフタルアルデヒド酸メチル(0.85g)をクロロホルム(150mL)とエタノール(2mL)に溶解させ、約10℃に冷却した。そこへ、三フッ化ホウ素(0.73g)を滴下し、そのまま2時間撹拌した。この溶液に、2,3‐ジクロロ‐5,6‐ジシアノ‐1,4‐ベンゾキノン(3.40g)を入れ、さらに1時間撹拌した。反応液をセライトとシリカゲルに通過させ、ろ液を濃縮して粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム)により展開分離し、生成物(5,10,15‐トリ[5‐[5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル]チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン、0.40g)を得た。
【0185】
5,10,15‐トリ[5‐[5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル]チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体の合成
【0186】
【化48】
【0187】
5,10,15‐トリ[5‐[5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル]チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン(0.40g)をクロロホルム(80mL)に溶解させた。そこへ、メタノール(20mL)に溶解させた酢酸亜鉛二水和物(0.45g)を滴下した。反応終了をTLCで確認後、水を加えて分液した。有機相を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去し、粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(ヘキサン/クロロホルム=1/2→クロロホルム)で展開分離し、紫色生成物(5,10,15‐トリ[5‐[5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル]チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体、0.20g)を得た。
【0188】
5,10,15‐トリ[5‐[5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル]チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体(ポルフィリン誘導体P10)の合成
【0189】
【化49】
【0190】
5,10,15‐トリ[5‐[5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル]チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体(0.20g)をTHF(50mL)と水(30mL)に溶解させた。そこへ48%水酸化ナトリウム(3mL)を加え、原料が無くなるまで約68℃で加熱した。反応終了後、THFを留去した。残渣に3%ギ酸水を加え、弱酸性にした。クロロホルムで抽出し、有機相を水洗した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させて溶媒を留去した。これをシリカゲルカラム(クロロホルム→クロロホルム/酢酸エチル=4/1)で精製して、紫色生成物(5,10,15‐トリ[5‐[5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル]チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体、0.15g)を得た。
1H‐NMR(δ
H/ppm,THF,400MHz)0.92(t,9H),1.30‐1.40(m,18H),1.67(quin,6H),2.65(t,6H),7.25(d,6H),7.41(t,3H),7.45(t,3H),7.64(d,6H),7.70(t,3H),7.86(t,3H),8.31(d,2H),8.45(d,2H),8.86(d,2H),9.25(d,2H),9.27(s,4H)
【0191】
(ポルフィリン誘導体P11の合成)
5,10,15,20−テトラキス(4−メトキシカルボニルフェニル)−21H,23H−ポルフィリンの合成
【0192】
【化50】
【0193】
反応容器に、ピロール(1.48g)、テレフタルアルデヒド酸メチル(3.60g)、クロロホルム(600mL)とエタノール(9mL)を加えた。そこへ、三フッ化ホウ素(0.94g)を滴下し、そのまま2時間撹拌した。この溶液に、2,3‐ジクロロ‐5,6‐ジシアノ‐1,4‐ベンゾキノン(3.74g)を加え、さらに1時間撹拌した。反応液をセライトとシリカゲルに通過させ、ろ液を濃縮して粗成生物を得た。これをシリカゲルカラムで展開分離し、生成物(5,10,15,20−テトラキス(4−メトキシカルボニルフェニル)−21H,23H−ポルフィリン、0.45g)を得た。
【0194】
【化51】
【0195】
5,10,15,20−テトラキス(4−メトキシカルボニルフェニル)−21H,23H−ポルフィリン(0.40g)をクロロホルム(50mL)に溶解させた。そこへ、メタノール(12ml)に溶解させた酢酸亜鉛二水和物(1.24g)を滴下した。反応終了をTLCで確認後、水を加えて分液した。有機相を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去し、粗成生物を得た。これをシリカゲルカラムで展開分離し、紫色生成物(5,10,15,20−テトラキス(4−メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体、0.38g)を得た。
5,10,15,20−テトラキス(4−カルボキシフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体 (ポルフィリン誘導体P11)の合成
【0196】
【化52】
【0197】
5,10,15,20−テトラキス(4−メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体(0.35g)をTHF(35mL)と水(8mL)に溶解させた。そこへ48%水酸化ナトリウム(0.8g)を加え、原料が無くなるまで約68℃で加熱した。反応終了後、残渣に3%ギ酸水を加え、弱酸性にした。沈殿物を回収し、シリカゲルカラムで展開分離して、紫色生成物(5,10,15,20−テトラキス(4−カルボキシフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体 、0.29g)を得た。
【0198】
(ポルフィリン誘導体P12の合成)
5,10,15,20−テトラキス(4−メトキシフェニル)−21H,23H−ポルフィリンの合成
【0199】
【化53】
【0200】
反応容器に、p−メトキシフェニルジピロメタン(1.00g)、p−アニスアルデヒド(0.54g)とジクロロメタン(200mL)を加えた。そこへ、トリフルオロ酢酸(0.80g)を滴下し、1時間撹拌した。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.90g)を加え、1時間撹拌した。この溶液に、p−クロラニル(1.48g)を加え、さらに2時間撹拌した。反応液をセライトとシリカゲルに通し、ろ液を濃縮して粗成生物を得た。これをシリカゲルカラムにより展開分離し、生成物(5,10,15,20−テトラキス(4−メトキシフェニル)−21H,23H−ポルフィリン、0.13g)を得た。
【0201】
5,10,15,20−テトラキス(4−メトキシフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体 (ポルフィリン誘導体P12)の合成
【0202】
【化54】
【0203】
5,10,15,20−テトラキス(4−メトキシフェニル)−21H,23H−ポルフィリン(0.12g)をクロロホルム(30mL)に溶解させた。そこへ、メタノール(10mL)に溶解させた酢酸亜鉛二水和物(0.55g)を滴下した。反応終了をTLCで確認後、溶媒を留去し、粗成生物を得た。これをシリカゲルカラムで展開分離し、紫色生成物(5,10,15,20−テトラキス(4−メトキシフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体、0.08g)を得た。
【0204】
(ポルフィリン誘導体P15の合成)
5,10,15−トリ(4−メトキシカルボニルフェニル)−20−フェニルエチニル−21H,23H−ポルフィリンの合成
【0205】
【化55】
【0206】
反応容器に、ピロール(0.66g)、テレフタルアルデヒド酸メチル(1.21g)、フェニルプロパギルアルデヒド(0.32g)、クロロホルム(500mL)とエタノール(7mL)を加えた。そこへ、三フッ化ホウ素(0.42g)を滴下し、そのまま2時間撹拌した。この溶液に、2,3‐ジクロロ‐5,6‐ジシアノ‐1,4‐ベンゾキノン(1.67g)を加え、さらに1時間撹拌した。反応液をセライトとシリカゲルに通過させ、ろ液を濃縮して粗成生物を得た。これをシリカゲルカラムにより展開分離し、生成物(5,10,15−トリ(4−メトキシカルボニルフェニル)−20−フェニルエチニル−21H,23H−ポルフィリン、0.16g)を得た。
【0207】
5,10,15−トリ(4−メトキシカルボニルフェニル)−20−フェニルエチニルポルフィリン亜鉛(II)錯体の合成
【0208】
【化56】
【0209】
5,10,15−トリ(4−メトキシカルボニルフェニル)−20−フェニルエチニル−21H,23H−ポルフィリン(0.13g)をクロロホルム(20mL)に溶解させた。そこへ、メタノール(5mL)に溶解させた酢酸亜鉛二水和物(0.42g)を滴下した。反応終了をTLCで確認後、水を加えて分液した。有機相を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去し、粗成生物を得た。これをシリカゲルカラムで展開分離し、紫色生成物(5,10,15−トリ(4−メトキシカルボニルフェニル)−20−フェニルエチニルポルフィリン亜鉛(II)錯体、0.11g)を得た。
【0210】
5,10,15−トリ(4−カルボキシフェニル)−20−フェニルエチニルポルフィリン亜鉛(II)錯体 (ポルフィリン誘導体P15)の合成
【0211】
【化57】
【0212】
5,10,15−トリ(4−メトキシカルボニルフェニル)−20−フェニルエチニルポルフィリン亜鉛(II)錯体(0.10g)をTHF(12mL)と水(4mL)に溶解させた。そこへ48%水酸化ナトリウム(0.40g)を加え、原料が無くなるまで約68℃で加熱した。反応終了後、THFを留去した。残渣に3%ギ酸水を加え、弱酸性にした。沈殿物を回収し、シリカゲルカラムで展開分離して、紫色生成物(5,10,15−トリ(4−カルボキシフェニル)−20−フェニルエチニルポルフィリン亜鉛(II)錯体、0.06g)を得た。
【0213】
(ポルフィリン誘導体P13およびP14)
5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィリン(ポルフィリン誘導体P13、CAS番号:917−23−7)は、和光純薬工業(株)から市販されているものを用いた。また、テトラキス(4−カルボキシフェニル)ポルフィリン(ポルフィリン誘導体P14,CAS番号:14609−54−2)は、東京化成工業(株)から市販されているものを用いた。
【0214】
3.比較化合物
比較例として、フタロシアニン亜鉛錯体(比較化合物Pc−a、CAS番号:13420−04−8、東京化成工業(株)製)および21H,23H−ポルフィリン(比較化合物Por−a、CAS番号:101−60−0、フナコシ(株)製)を用いた。
【0215】
【化58】
【0216】
4.有機色素複合体の合成
得られたフタロシアニン誘導体Aのエタノール溶液と、ポルフィリン誘導体P1のエタノール溶液を、下記実施例で設定したAとP1の混合比率および濃度となるように、25℃で混合した。
【0217】
5.有機色素複合体の評価
(紫外・可視吸収スペクトルの測定)
(a)二酸化チタン上に吸着された状態での紫外・可視吸収スペクトル測定
ガラス基板(フッ素ドープ酸化スズ膜形成ガラス、35mm×33mm)上に、二酸化チタンペースト(触媒化成製、PST−21NR)を、スクリーン印刷により正方形状(1cm×1cm、膜厚0.8μm)に印刷し、乾燥後、500℃で焼成した。形成された二酸化チタン膜を、フタロシアニン誘導体Aのエタノール溶液(0.1mmol/L)、ポルフィリン誘導体P1エタノール溶液(0.1mmol/L)、および有機色素複合体(A+P1)エタノール溶液(0.1mmol/L)に、それぞれ25℃で12時間浸漬した。浸漬後、該基板をエタノールで洗浄し、乾燥させ、紫外・可視吸収スペクトルを測定した。結果を
図1(a)に示す。
(b)エタノール中での紫外・可視吸収スペクトル測定
フタロシアニン誘導体A、ポルフィリン誘導体P1、および有機色素複合体A+P1のそれぞれ5μmol/Lエタノール溶液を調整し、紫外・可視吸収スペクトルを測定した。結果を
図1(b)に示す。
【0218】
図1(a)および
図1(b)のいずれにおいても、吸収スペクトルの長波長シフトが観測された。
【0219】
(有機色素複合体の会合定数の測定)
Rose−Drago法(非特許文献2参照)に従い、エタノール溶液中での有機色素複合体(A+P1)の会合定数を測定した。結果を表2に示す。
【0220】
【数1】
【0221】
【0222】
【表2】
【0223】
表2に示すとおり、有機色素複合体(A+P1)は、非常に大きな会合定数を有する会合体を形成していることがわかった。
【0224】
(有機色素複合体を濃度変化させた場合の紫外・可視吸収スペクトルの測定)
上記有機色素複合体(A+P1)の溶液濃度を1.25μmol/L、2.5μmol/L、5.μmol/L、10μmol/L、20μmol/L、および30μmol/Lに変化させ、それぞれの溶液の紫外・可視吸収スペクトルを測定した。結果を
図3に示す。
【0225】
図3のとおり、有機色素複合体(A+P1)は、濃度1.25μmol/Lの極低濃度であっても一部に会合体を形成していることがわかった。
【0226】
(フタロシアニン誘導体とポルフィリン誘導体との混合比率を変化させた場合の紫外・可視吸収スペクトルの測定)
上記有機色素複合体(A+P1)の合成において、フタロシアニン誘導体Aとポルフィリン誘導体P1との混合比率を変えて調整し、得られた溶液の紫外・可視吸収スペクトルを測定した。結果を
図4に示す。
【0227】
図4のとおり、本発明の有機色素複合体(A+P1)は混合比率1:9〜9:1の範囲で、その一部が会合体を形成していることがわかった。
【0228】
(種々の有機色素複合体の形成)
上記有機色素複合体(A+P1)と同様に、フタロシアニン誘導体A〜Dまたは比較化合物Pc−aと、ポルフィリン誘導体P1〜P15または比較化合物Por−aとを1:1の比率で混合し、有機色素複合体または有機色素混合物の5μmol/Lエタノール溶液を作成した。その結果を表3および
図5に示す。該溶液中での会合体の形成の有無は、フタロシアニン誘導体およびポルフィリン誘導体を1:1で混合した際に、用いたフタロシアニン誘導体単独の最大吸収スペクトルを基準に、当該波長の吸収スペクトルがフタロシアニン誘導体単独の場合の90%以下となり、その長波長側に新たな吸収波長が観察された場合に、会合体が形成されたものと判断した。
【0229】
【表3-1】
【0230】
【表3-2】
【0231】
表3および
図5から明らかなように、比較例5〜7では、フタロシアニン誘導体およびポルフィリン誘導体のそれぞれの吸収スペクトルが単に重なり合っただけであり、会合体の吸収スペクトルは観測されなかった。
【0232】
(色素増感太陽電池の作製)
(1)以下の手順により、上記合成例により調製した有機色素複合体(A+P1:実施例1)ならびにフタロシアニン誘導体A単独およびポルフィリン誘導体P1単独を用いた色素増感太陽電池をそれぞれ作製した。
【0233】
i. ガラス基板(フッ素ドープ酸化スズ膜形成ガラス、35mm×33mm)上に、
二酸化チタンペースト(触媒化成製、PST−21NR)を、スクリーン印刷により正方形状(1cm×1cm、膜厚8μm)に印刷し、乾燥後、その上にさらに二酸化チタンペースト(触媒化成製、PST−400C)を膜厚4μmにスクリーン印刷した。これを500℃で焼成し、発電層を形成した。
【0234】
ii. 前記発電層を形成した電極をフタロシアニン誘導体Aのエタノール溶液(0.1mmol/L)、ポルフィリン誘導体P1エタノール溶液(0.1mmol/L)、および有機色素複合体(A+P1)エタノール溶液(0.1mmol/L)に、それぞれ25℃で12時間浸漬した。浸漬後、該基板をエタノールで洗浄し、乾燥させ、アノード電極を得た。
【0235】
iii. 上記アノード電極の発電層の周囲に接着剤を施し、このアノード電極と、別途用意した電解液注入孔を有するチオアセトアミドで処理した白金被覆チタン板(カソード電極)とを、該接着剤により接着し、両電極が50μm程度の一定間隔を置いて平行に配置されるようにした。
【0236】
iv. 次いで、該電解液注入口より電解液を注入した。ここで、電解液には、ヨウ素(0.1molM/L)、ヨウ化リチウム(0.1mol/L)、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウムヨウ化物(0.8mol/L)、およびN−メチルベンゾイミダゾール(0.5mol/L)が、それぞれカッコ内に記載した濃度になるように3−メトキシプロピオニトリルに添加された溶液を用いた。
【0237】
v. 接着剤を用いて該電解液注入孔を封止し、アノード電極上に端子取り出しのためのハンダを塗布して実験用セルを完成させた。
【0238】
(分光感度の測定)
作製した太陽電池セルの分光感度を分光感度測定装置(分光計器株式会社製CEP−2000)で測定した。結果を
図6に示す。また、これらの太陽電池セルの外観を
図7に示す。
【0239】
(性能試験)
上記のようにして得られた色素増感太陽電池につきその性能を評価した。
【0240】
セルを作成後、該セルを庫内温度85℃の乾燥機(ヤマト科学株式会社製 DK810)内に設置した。24時間後セルを取り出し室温まで冷却した後、AM1.5,1SUN(100mW/cm
2)の照射条件下でセルの変換効率を測定した。結果を表4に示す。
【0241】
【表4】
【0242】
なお光電変換効率は下記式により計算した。
光電変換効率(%)=
100×[(短絡電流密度×開放電圧×曲線因子)/(照射太陽光エネルギー)]
【0243】
上記表4のとおり、本発明の有機色素複合体を光増感色素として用いて作製した色素増感太陽電池は、高い光電変換効率を示した。これは、
図6で明らかなように、本発明の有機色素複合体が、構成するフタロシアニン誘導体およびポルフィリン誘導体の吸収波長の単なる和とは異なる、より長波長側に広がった吸収波長を有することから、より広い範囲の光を吸収することができ、光電変換効率が向上したものと考えられる。