特許第6362208号(P6362208)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362208
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】有機色素複合体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09B 67/22 20060101AFI20180712BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20180712BHJP
   H01G 9/20 20060101ALI20180712BHJP
   H01L 51/46 20060101ALI20180712BHJP
   C09B 47/00 20060101ALN20180712BHJP
   C09B 47/04 20060101ALN20180712BHJP
【FI】
   C09B67/22 F
   C09K3/00 T
   H01G9/20 113A
   H01L31/04 154C
   !C09B47/00
   !C09B47/04
【請求項の数】7
【全頁数】50
(21)【出願番号】特願2013-224496(P2013-224496)
(22)【出願日】2013年10月29日
(65)【公開番号】特開2015-86268(P2015-86268A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年10月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】591282205
【氏名又は名称】島根県
(73)【特許権者】
【識別番号】598041795
【氏名又は名称】神戸天然物化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松林 和彦
(72)【発明者】
【氏名】兒玉 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝一
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕
(72)【発明者】
【氏名】赤澤 雅子
【審査官】 阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平3−285365(JP,A)
【文献】 Journal de Physique IV: Proceedings,2004年,Vol.117,p.101-113
【文献】 Journal of Photochemistry and Photobiology A: Chemistry,2001年,Vol.138, No.1,p.7-22
【文献】 Journal of Physical Chemistry C,2012年,Vol.116, No.30,p.15867-15877
【文献】 Journal of Optoelectronics and Advanced Materials,2000年,Vol.2, No.5,p.498-514
【文献】 Journal of Optoelectronics and Advanced Materials,2011年,Vol.13, No.11-12,p.1405-1411
【文献】 Chemistry of Materials,2004年,Vol.16, No.11,p.2083-2090
【文献】 Chemical Physics Letters,2005年,Vol.406, No.4-6,p.360-365
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 67/22
C09K 3/00
H01G 9/20
H01L 51/46
C09B 47/00
C09B 47/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式(1)
【化1】
(式中、R1〜R8はそれぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換のアリールまたは置換もしくは無置換のヘテロアリールであり、前記置換アリールまたは前記置換ヘテロアリールの置換基は、炭素数1〜3のアルキル基、カルボキシ基またはハロゲンから選択され、上記R1〜R8のうち、4つ以上が同時に水素原子ではなく、
1〜X8はOであり、n1〜n8はそれぞれ独立して0または1であり、
1はフタロシアニンと結合しうる任意の少なくとも1つの原子または原子団を表す)
で表されるフタロシアニン誘導体またはその塩と、
以下の一般式(2)
【化2】
(式中、A、B、C、およびDはそれぞれ独立して1価の有機基を示し、前記A〜Dのうち少なくとも2つは置換もしくは無置換のアリールまたは置換もしくは無置換のヘテロアリールであり、
2はポルフィリンと結合しうる任意の少なくとも1つの原子または原子団を表す)
で表されるポルフィリン誘導体またはその塩との複合体。
【請求項2】
前記M1およびM2はそれぞれ独立して、水素原子、典型金属元素、半金属元素、または遷移金属元素から選択されることを特徴とする請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記A〜Dのうち少なくとも3つは置換もしくは無置換のアリールまたは置換もしくは無置換のヘテロアリールであることを特徴とする請求項1に記載の複合体。
【請求項4】
以下の一般式(1)
【化3】
(式中、R1〜R8はそれぞれ独立して水素原子、置換もしくは無置換のアリールまたは置換もしくは無置換のヘテロアリールであり、前記置換アリールまたは前記置換ヘテロアリールの置換基は、炭素数1〜3のアルキル基、カルボキシ基またはハロゲンから選択され、上記R1〜R8のうち、4つ以上が同時に水素原子ではなく、
1〜X8はOであり、n1〜n8はそれぞれ独立して0または1であり、
1はフタロシアニンと結合しうる任意の少なくとも1つの原子または原子団を表す)
で表されるフタロシアニン誘導体またはその塩と、
以下の一般式(2)
【化4】
(式中、A、B、C、およびDはそれぞれ独立して1価の有機基を示し、前記A〜Dのうち少なくとも2つは置換もしくは無置換のアリールまたは置換もしくは無置換のヘテロアリールであり、
2はポルフィリンと結合しうる任意の少なくとも1つの原子または原子団を表す)
で表されるポルフィリン誘導体またはその塩と
を液体媒体中で混合することを含む複合体の製造方法。
【請求項5】
以下の一般式(1)
【化5】
(式中、R1〜R8はそれぞれ独立して水素原子、置換もしくは無置換のアリールまたは置換もしくは無置換のヘテロアリールであり、前記置換アリールまたは前記置換ヘテロアリールの置換基は、炭素数1〜3のアルキル基、カルボキシ基またはハロゲンから選択され、上記R1〜R8のうち、4つ以上が同時に水素原子ではなく、
1〜X8はOであり、n1〜n8はそれぞれ独立して0または1であり、
1はフタロシアニンと結合しうる任意の少なくとも1つの原子または原子団を表す)
で表されるフタロシアニン誘導体またはその塩と、
以下の一般式(2)
【化6】
(式中、A、B、C、およびDはそれぞれ独立して1価の有機基を示し、前記A〜Dのうち少なくとも2つは置換もしくは無置換のアリールまたは置換もしくは無置換のヘテロアリールであり、
2はポルフィリンと結合しうる任意の少なくとも1つの原子または原子団を表す)
で表されるポルフィリン誘導体またはその塩と
の複合体を含む太陽電池用光増感色素。
【請求項6】
請求項5に記載の光増感色素を酸化物半導体上に吸着させたことを特徴とする酸化物半導体電極。
【請求項7】
請求項6の酸化物半導体電極、透明電極、電解質および対電極を含む色素増感太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フタロシアニン誘導体とポルフィリン誘導体とからなる新規有機複合体に関する。また本発明は、該複合体を利用した機能性材料に関し、詳細には該複合体を含む金属酸化物半導体電極および該電極を含む色素増感太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
有機色素は、その骨格や置換基、配位金属等を変更することにより、その吸収波長および発光波長を移動させることができることから、所望の吸収/発光波長を有する構造の設計が数多く検討されている。
【0003】
このような所望の吸収/発光波長を有する有機色素は電子デバイスをはじめとする種々の分野で有用であり、例えば、発光素子分野では有機色素の設計により、色の異なる発光素子を提供することができる。
【0004】
また、有機色素増感太陽電池分野では、より効率よく太陽光エネルギーを利用できるように、より広域の波長を吸収できる有機色素が好ましい。
【0005】
従来、色素増感太陽電池に用いられてきた色素は、大部分が赤色を示すポリピリジンRu系色素であった(特許文献1〜4)。近年、ポリピリジン系以外の骨格を有する色素の開発が行われており、例えば、ポルフィリン系色素(特許文献5および6)やフタロシアニン系色素の利用なども試みられている(特許文献7および8)。
【0006】
さらに、複数の色素を用いた色素増感太陽電池の研究も行われている(例えば、非特許文献1等参照)。しかしながら、このような方法では、それぞれ単独の色素の吸収領域しか利用することができなかった。
【0007】
さらに、複数の有機色素を組み合わせる場合、色素同士の相性も重要であり、波長特性に基づき選択された組み合わせであっても、変換効率を向上することができない場合も多い。特に、色素増感太陽電池に利用するのに好ましい近赤外領域の光を効率よく利用可能な色素は少なく、色素の組み合わせも限られていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−272721号公報
【特許文献2】特開2003−212851号公報
【特許文献3】特開2005−47857号公報
【特許文献4】特開2005−120042号公報
【特許文献5】特願2012−027274号明細書
【特許文献6】特願2012−027276号明細書
【特許文献7】特許第4953658号公報
【特許文献8】特開2011−60669号公報
【特許文献9】国際公開第2012/014414号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Aswani Yella, Michael Grazel, et al. Science, Vol. 334, ppp.629 (2011)
【非特許文献2】実験化学講座 第2版、11巻、第521〜552頁、丸善、昭和40年7月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、より広域の吸収波長を有する、特に近赤外領域においてより広域の吸収波長を有する有機色素複合体を提供することを目的とする。さらに、該複合体の機能性材料への利用を目的とする。詳細には、該複合体を用いた電子デバイス、さらに詳細には、該会合体を酸化物半導体上に吸着させた金属酸化物半導体電極、および該酸化物半導体電極を用いた色素増感太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、下記式(1)の構造を有するフタロシアニン誘導体と式(2)の構造を有するポルフィリン誘導体との複合体が、これらの構成分子単独の吸収波長の和とは異なる新たな吸収波長を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
【化1】
【0013】
(式中、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換のアリールまたは置換もしくは無置換のヘテロアリールであり、または隣りあったRおよびRn+1が共通する一の置換もしくは無置換のアリールまたは置換もしくは無置換のヘテロアリールを形成してもよく、
〜Xはそれぞれ独立して、O、S、CHから選択され、n〜nはそれぞれ独立して0または1であり、
はフタロシアニンと結合しうる任意の少なくとも1つの原子または原子団を表す)
【0014】
【化2】
【0015】
(式中、A、B、C、およびDはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、または1価の有機基を示し、前記A〜Dのうち少なくとも2つは置換もしくは無置換のアリールまたは置換もしくは無置換のヘテロアリールであり、
はポルフィリンと結合しうる任意の少なくとも1つの原子または原子団を表す)
【発明の効果】
【0016】
本発明は、各構成分子単独の吸収波長の単なる和とは異なる、より広域の吸収波長を有する新規有機色素複合体を提供できる。このような有機色素複合体は機能性材料として利用することができ、例えば、より広域の太陽光エネルギーを吸収することにより、これを用いた色素増感太陽電池の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】aは、ロシアニン誘導体A、ポルフィリン誘導体P1、および有機色素複合体(A+P1)を二酸化チタン上に吸着させた際の紫外・可視吸収スペクトルである。bは、フタロシアニン誘導体A、ポルフィリン誘導体P1、およびこれらの有機色素複合体(A+P1)のエタノール溶液(5μmol/L)中の紫外・可視吸収スペクトルである。
図2】本発明の有機色素複合体を用いた色素増感太陽電池の構造である。
図3】本発明の有機色素複合体(A+P1)エタノール溶液の溶液濃度を変化させた紫外・可視吸収スペクトルである。
図4】エタノール中のフタロシアニン誘導体Aとポルフィリン誘導体P1との混合比率を変化させて形成した本発明の有機色素複合体(A+P1)の紫外・可視吸収スペクトルである。
図5】本発明の有機色素複合体(A+P1)および比較例1〜7のエタノール溶液での紫外・可視吸収スペクトルである。
図6】本発明の有機色素複合体(A+P1)ならびにフタロシアニン誘導体A単独およびポルフィリン化合物P1単独を用いて、それぞれ形成された色素増感太陽電池の分光感度である。
図7】本発明のフタロシアニン誘導体A、ポルフィリン誘導体P1、およびこれらの有機色素複合体(A+P1)を用いて作製した太陽電池の外観である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、フタロシアニン誘導体とポルフィリン誘導体とからなる新規有機色素複合体に関する。また本発明は、該複合体を利用した機能性材料に関し、詳細には、該複合体を用いた電子デバイス、さらに詳細には該複合体を含む金属酸化物半導体電極および該電極を含む色素増感太陽電池に関する。
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の単なる一例であって、当業者であれば、適宜設計変更可能である。
【0020】
有機色素複合体
本発明の有機色素複合体は、式(1)の構造を有するフタロシアニン誘導体と式(2)の構造を有するポルフィリン誘導体とからなる。
【0021】
(フタロシアニン誘導体)
本発明のフタロシアニン誘導体は、下記式(1)の構造を有する化合物およびその塩である。
【0022】
【化3】
【0023】
上記の一般式(1)において、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換のアリールまたは置換もしくは無置換のヘテロアリールであり、または隣りあったRおよびRn+1が共通する一の置換もしくは無置換のアリールまたは置換もしくは無置換のヘテロアリールを形成してもよい。好ましくは、上記R〜Rのうち、4つ以上が同時に水素原子とはならない。
【0024】
前記式(1)を構成するアリールは、これらに限定されないが、フェニレン環およびナフタレン環を含み、前記式(1)を構成するへテロアリールとしては、チオフェン環、ピロール環、フラン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環などの5員環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、1,2,3−トリアジン環などの6員環を含む。
【0025】
前記式(1)を構成するアリールまたはヘテロアリールは、メチル基、エチル基などの炭素数1〜6のアルキル基;ベンジル基などのアラルキル基;ビニル基などのアルケニル基;シアノ基;アミノ基;アシル基;メトキシ基、エトキシ基などの炭素数1〜6のアルコキシ基;カルボニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基;フェノキシ基、ベンジルオキシ基などのアリールオキシ基;ジエチルアミノ基、イソプロピルアミノ基などのジアルキルアミノ基;ジベンジルアミノ基、ジフェネチルアミノ基などのジアラルキルアミノ基;ニトロ基;トリフルオロメチル基などのα−ハロアルキル基;ハロゲン;水酸基;スルホ基により置換されてもよい。
【0026】
上記一般式(1)において、X〜Xはそれぞれ独立して、O、S、CHから選択され、n〜nはそれぞれ独立して0または1である。好ましくはX〜XはOである。また好ましくは、n〜nのうち、少なくとも5つが1である。
【0027】
上記一般式(1)において、Mはフタロシアニンと結合しうる任意の少なくとも1つの原子または原子団を表す。Mは中心原子単体であってもよく、中心原子が他の物質と結合した中心原子団であってもよい。
【0028】
本発明の式(1)のフタロシアニン誘導体において、中心原子は1個でもよく、2個以上であってもよい。中心原子が2個以上であるものの具体例としては、無金属フタロシアニン誘導体が挙げられる。無金属フタロシアニン誘導体においては、窒素に結合した2個の水素がそれぞれ中心原子となる。
【0029】
また、中心原子団を中心原子とともに構成する他の物質は任意である。例えば、これらに限定されないが、他の物質と結合した中心原子団Mは、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物であってもよい。
【0030】
また、水素原子以外のMは、典型金属元素、半金属元素、遷移金属元素であってもよい。Mが水素原子以外の中心原子単体である場合、中心元素Mは、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、銅、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ロジウム、オスミニウム、鉛、および錫からなる金属元素の群またはケイ素から選択される。好ましくは、亜鉛および銅である。
【0031】
式(1)で表されるフタロシアニン誘導体は、例えば、以下の化合物A〜Dおよびその塩を含む。なお本発明のフタロシアニン誘導体の製造方法に関しては、後述する実施例において具体的に詳述する。
【0032】
【化4】
【0033】
(ポルフィリン誘導体)
本発明のポルフィリン誘導体は、下記式(2)を有する化合物およびその塩である。
【0034】
【化5】
【0035】
上記の一般式(2)において、A、B、C、およびDはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、または1価の有機基を示し、前記A〜Dのうち少なくとも2つは置換もしくは無置換のアリール基または置換もしくは無置換のヘテロアリール基である。
【0036】
1価の有機基の具体例としては、これらに限定されないが、メチル基、エチル基などの炭素数1〜6のアルキル基;ベンジル基などのアラルキル基;ビニル基などのアルケニル基;フェニルエチニル基などのアルキニル基;シアノ基;アミノ基;アシル基;メトキシ基、エトキシ基などの炭素数1〜6のアルコキシ基;カルボニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基;フェノキシ基、ベンジルオキシ基などのアリールオキシ基;ジエチルアミノ基、イソプロピルアミノ基などのジアルキルアミノ基;ジベンジルアミノ基、ジフェネチルアミノ基などのジアラルキルアミノ基;ニトロ基;トリフルオロメチル基などのα−ハロアルキル基;水酸基;スルホ基;置換もしくは無置換のフェニレン環およびナフタレン環などのアリール基;チオフェン環、ピロール環、フラン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環などの5員環、およびピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、1,2,3−トリアジン環などの6員環を含む置換もしくは無置換のヘテロアリール基を含む。前記式(2)を構成するアリールまたはヘテロアリールは、1または複数のハロゲンまたは1価の有機基により、さらに置換されていてもよい。
【0037】
また、上記一般式(2)において、Mはポルフィリンと結合しうる任意の少なくとも1つの原子または原子団を表す。Mは中心原子単体であってもよく、中心原子が他の物質と結合した中心原子団であってもよい。
【0038】
本発明の式(2)のポルフィリン誘導体において、中心原子は1個でもよく、2個以上であってもよい。中心原子が2個以上であるものの具体例としては、無金属ポルフィリン誘導体が挙げられる。無金属ポルフィリン誘導体においては、窒素に結合した2個の水素がそれぞれ中心原子となる。
【0039】
また、中心原子団を中心原子とともに構成する他の物質は任意である。例えば、これらに限定されないが、他の物質と結合した中心原子団Mは、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物であってもよい。
【0040】
また、水素原子以外のMは、典型金属元素、半金属元素、遷移金属元素であってもよい。Mが水素原子以外の中心原子単体である場合、中心元素Mは、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、銅、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ロジウム、オスミニウム、鉛、および錫からなる金属元素の群またはケイ素から選択される。好ましくは、亜鉛、銅、鉄、およびコバルトである。
【0041】
式(2)で表されるポルフィリン誘導体は、例えば、表1で示される以下の化合物P1〜P15およびそれらの塩を含む。なお本発明のポルフィリン誘導体の製造方法に関しては、後述する実施例において具体的に詳述する。
【0042】
【化6】
【0043】
【表1-1】
【0044】
【表1-2】
【0045】
(有機色素複合体の調製)
本発明の有機色素複合体は、上記式(1)を有するフタロシアニン誘導体と上記式(2)を有するポルフィリン誘導体とを溶媒中で混合することにより形成することができる。具体的には、これらに限定されないが、(i)該フタロシアニン誘導体溶液と該ポルフィリン誘導体溶液を混合することにより、(ii)一方の化合物を溶解させた溶液に、もう一方の化合物を溶解させることにより、または(iii)該フタロシアニン誘導体と該ポルフィリン誘導体とを固形状態で混合し、溶媒で溶解することにより、本発明の有機色素複合体を形成してもよい。
【0046】
本発明の有機色素複合体は、上記式(1)のフタロシアニン誘導体と上記式(2)のポルフィリン誘導体との会合体を含む。
【0047】
該会合体は、混合されたフタロシアニン誘導体およびポルフィリン誘導体のいずれとも異なる新たな吸収スペクトルを有する。図1aは、(i)フタロシアニン誘導体A、(ii)ポルフィリン誘導体P1、および(iii)これらの有機色素複合体(A+P1)を二酸化チタン上に吸着させた際の紫外・可視吸収スペクトルを示す。図1bはこれらの化合物のエタノール溶液(5μmol/L)中での紫外・可視吸収スペクトルをそれぞれ示す。
【0048】
有機色素複合体を形成するために用いることのできる溶媒は、混合するフタロシアニン誘導体およびポルフィリン誘導体が溶解するものであればよい。具体的には、これらに限定されないが、ペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の鎖状および環状飽和脂肪族系溶媒;トルエン、キシレン、ナフタレン、テトラヒドロナフタレン、メチルナフタレン、ジフェニルメタン、アニソール等の芳香族系溶媒;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロナフタレン等のハロゲン化芳香族系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒;エチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等の脂肪族多価アルコール類;アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等の鎖状および環状ケトン系溶媒;ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサリン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等の鎖状および環状エーテル系溶媒;ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルフォラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリノン、2−ブチロラクトン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒;n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン等の含窒素化合物;およびこれらの混合物を含む。好ましくは、エタノール、クロロホルムである。
【0049】
該フタロシアニン誘導体およびポルフィリン誘導体の混合工程の作業温度は、下限は使用する溶媒の凝固点以上であり、上限は使用する溶媒の沸点以下である。具体的には、10℃以上、200℃以下が好ましい。
【0050】
本発明の有機色素複合体は、少なくともその一部において上記会合体が形成する濃度で混合される。具体的には、有機色素複合体の濃度として1μmol/L以上が好ましく、5μmol/L以上がより好ましい。形成された有機色素複合体は、溶媒を除去し、固体状態にしてもよい。
【0051】
上記式(1)のフタロシアニン誘導体および上記式(2)のポルフィリン誘導体は、少なくとも一部が上記会合体を形成する比率で混合され、例えば、1:9〜9:1の比で混合することができる。
【0052】
機能性材料
本発明の有機色素複合体は、機能性材料として利用することができる。詳細には、該複合体を用いた電子デバイス、さらに詳細には、該複合体を酸化物半導体上に吸着させた金属酸化物半導体電極、および該酸化物半導体電極を用いた色素増感太陽電池に用いることができる。
【0053】
(金属酸化物半導体電極)
本発明は、さらに該有機色素複合体を用いた金属酸化物半導体電極に関する。本発明の金属酸化物半導体電極は、上述した本発明の有機色素複合体を金属酸化物半導体で形成された電極の表面に吸着させたものである。この金属酸化物半導体電極は、好ましくは多孔質電極とする。これによって、前記電極の実質的な表面積を増大させることができ、前記電極への光増感色素の吸着量を増大させて、前記金属酸化物半導体電極を含む太陽電池の光電変換効率を増大させることができるようになる。
【0054】
本発明の金属酸化物半導体には、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、もしくはタンタルの酸化物、またはチタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、もしくはニオブ酸カリウムなどのぺロブスカイト構造を有する化合物を用いることができる。
【0055】
該有機色素複合体を金属酸化物半導体薄膜上に吸着させる方法としては、任意の公知の方法を用いることができる。たとえば、二酸化チタン等の金属酸化物半導体薄膜を本発明の有機色素複合体溶液に所定の温度で浸漬する方法(ディップ法、ローラ法、エヤーナイフ法など)および、該有機色素複合体溶液を金属酸化物半導体層状面に塗布する方法(ワイヤーバー法、アプリケーション法、スピン法、スプレー法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法など)を挙げることができる。
【0056】
(色素増感太陽電池)
本発明はさらに、透明電極1、上記金属酸化物半導体電極2、電解質3、および対電極4を含む色素増感太陽電池に関する(図2参照)。
【0057】
透明電極1は、透明基板上に透明導電層を形成して構成される(図示せず)。透明基板は、汎用のガラス基板、石英基板、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、およびポリエチレンなどの透明プラスチック基板を用いることができる。透明導電層は、酸化スズ、フッ素ドープ酸化スズ、ITO、ATO、酸化亜鉛、アルミドープ酸化亜鉛、またはこれらの表面に酸化スズもしくはフッ素ドープ酸化スズの皮膜を設けた光透過性の透明導電層から構成することができる。
【0058】
電解質3としては、固体状、および液体状のものを用いることができる。具体的には、ヨウ素系電解質、臭素系電解質、セレン系電解質、硫黄系電解質、キノン/ヒドロキノン系電解質、およびコバルト錯体系電解質を用いることができる。これらに限定されないが、I、LiI、ジメチルプロピルイミダゾリウムヨージド、t−ブチルピリジン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイド等を、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、3−メトキシプロピオニル、炭酸プロピレン等の電気的に不活性な有機溶剤に溶かした溶液等が好適に用いられる。
【0059】
また、電解質組成物中の成分の揮発を低減する目的で、上述した電解質組成物にゲル化剤またはポリマー架橋モノマーを溶解させ、ゲル状電解質として使用してもよい。さらに上記電解質と可塑剤とを用いてポリマーに溶解させ、可塑剤を揮発除去することで全固体型の色素増感太陽電池を形成してもよい。
【0060】
対電極4は、例えば、チタン、Al、SUS等の金属基板、ガラス基板またはプラスチック基板の上に形成される白金、カーボン、ニッケル、クロム、ステンレス、フッ素ドープ酸化スズおよびITOなどの導電層から構成される。また、対電極4は白金あるいはカーボンなどの触媒層(図示せず)を含んでもよく、さらに白金は硫黄材料で処理されていてもよい(例えば、特許文献9参照)。
【実施例】
【0061】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
1.フタロシアニン誘導体の合成
(フタロシアニン誘導体Aの合成)
【0062】
化合物1の合成
【0063】
【化7】
【0064】
窒素雰囲気下、4,5−ジクロロフタロニトリル(19.0g、96.4mmol)、2,6−ジメチルフェノール(35.3g、289mmol)、炭酸カリウム(46.6g、337mmol)をDMF(190mL)に加え、100℃で16時間攪拌した。冷却後、水に分散し、析出した固体を濾取、減圧乾燥し粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。ついで酢酸エチルを用いて再結晶を行い、化合物1(20.6g、55.4mmol、収率58%、白色固体)を得た。
【0065】
化合物2の合成
【0066】
【化8】
【0067】
窒素雰囲気下、4−ヨードフタロニトリル(11.1g、43.7mmol)、4−(メトキシカルボニル)フェニルボロン酸(15.7g、87.2mmol)、炭酸ナトリウム(18.5g、175mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(4.96g、4.3mmol)をDMF(480mL)と水(155mL)の混合溶液に加え、90℃で2時間攪拌した。冷却後、酢酸エチルおよび水を加え、有機相を抽出した。抽出した有機相を硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物2(7.58g、28.9mmol、収率66%、白色固体)を得た。
【0068】
フタロシアニン誘導体Aの合成
【0069】
【化9】
【0070】
窒素雰囲気下、化合物1(34.15g、92.7mmol)、化合物2(8.11g、30.9mol)、塩化亜鉛(8.42g、61.8mmol)を2−ジメチルアミノエタノール1Lに加え、140℃で4時間攪拌した。冷却後、減圧濃縮し、残渣にメタノールを加えた。析出した固体を濾取、減圧乾燥し、粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、メチルエステル中間体を得た。
【0071】
該中間体をTHF600mL、エタノール100mLおよび1mol/L水酸化ナトリウム水溶液100mLの混合溶液に溶解し、1時間加熱還流した。冷却後、塩酸で中和し、有機溶媒を減圧留去後、残渣をクロロホルムで抽出した。抽出した有機相を水洗し、硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。ついで酢酸エチルを用いて再結晶を行い、化合物A(4.66g、3.28mmol、収率11%、緑色固体、TOF−MS m/z1417[M+H])を得た。
【0072】
(フタロシアニン誘導体Bの合成)
【0073】
【化10】
【0074】
窒素雰囲気下、化合物1(3.00g、8.14mmol)、塩化亜鉛(2.22g、16.3mmol)を2−ジメチルアミノエタノール60mLに加え、140℃で4時間撹拌した。冷却後、減圧濃縮し、残渣にメタノールを加え析出した固体を濾取した。得られた粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し化合物B(1.06g、0.69mmol、収率34%、緑色固体、TOF−MS m/z1537[M+H])を得た。
【0075】
(フタロシアニン誘導体Cの合成)
【0076】
【化11】
【0077】
化合物1(0.2g、0.54mmol)、塩化銅(0.036g、0.27mmol)を2−ジメチルアミノエタノール10mLに加え、140℃で2時間撹拌した。冷却後、減圧濃縮し、得られた粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し化合物C(0.055g、0.035mmol、収率26%、緑色固体)を得た。
【0078】
(フタロシアニン誘導体Dの合成)
化合物3の合成
【0079】
【化12】
【0080】
窒素雰囲気下、4,5−ジクロロフタロニトリル(2.0 g、10.2 mmol)、2,6−ジイソプロピルフェノール(4.6 g、25.8 mmol)、炭酸カリウム(3.8 g、27.5 mmol)をDMF(40mL)に加え、80〜100℃で12時間攪拌した。冷却後、水800 mLに分散し、析出した固体を濾取した。これを酢酸エチルに溶解させ、水洗した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧濃縮し粗体を得た。これをメタノールでスラリー洗浄することにより化合物3(2.8g、5.8 mmol、収率57%、薄緑色固体)を得た。
【0081】
フタロシアニン誘導体Dの合成
【0082】
【化13】
【0083】
窒素雰囲気下、化合物3(2.00g、4.16mmol)、塩化亜鉛(1.13g、8.32mmol)を2−ジメチルアミノエタノール40mLに加え、140℃で4時間撹拌した。冷却後、減圧濃縮し、残渣にメタノールを加え析出した固体を濾取した。得られた粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し化合物D(0.64g。0.32mmol、収率31%、緑色固体、TOF−MS m/z1986[M+H])を得た。
【0084】
2.ポルフィリン誘導体の合成
(ポルフィリン誘導体P1の合成)
4‐(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)ベンズアルデヒドの合成
【0085】
【化14】
【0086】
反応容器に、4‐ブロモベンズアルデヒド(9.17g)、2‐(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐4,4,5,5‐テトラメチル‐1,3,2‐ジオキサボロラン(14.00g)、リン酸三カリウム(11.00g)、トルエン(150mL)と、ジクロロ[1,1‐ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)(0.20g)を加えて撹拌し、70℃に加熱した。反応終了後、反応液をセライトに通過させ、ろ液を濃縮した。これをシリカゲルカラム(クロロホルム)で展開分離し、生成物(4‐(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)ベンズアルデヒド、7.79g)を得た。
【0087】
5‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)‐10,15,20‐トリ[4‐(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)フェニル]ポルフィリンの合成
【0088】
【化15】
【0089】
反応容器に、ピロール(0.92g)、4‐(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)ベンズアルデヒド(2.79g)、テレフタルアルデヒド酸メチル(0.56g)、クロロホルム(130mL)とエタノール(0.5ml)を加え、約10℃に冷却した。そこへ、三フッ化ホウ素(0.47g)を滴下し、そのまま2時間撹拌した。この溶液に、2,3‐ジクロロ‐5,6‐ジシアノ‐1,4‐ベンゾキノン(2.32g)を加え、さらに1時間撹拌した。反応液をセライトとシリカゲルに通過させ、ろ液を濃縮して粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム/ヘキサン=3/2)により展開分離し、生成物(5‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)‐10,15,20‐トリ[4‐(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)フェニル]ポルフィリン、0.34g)を得た。
【0090】
5‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)‐10,15,20‐トリ[4‐(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)フェニル]ポルフィリン亜鉛(II)錯体の合成
【0091】
【化16】
【0092】
5‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)‐10,15,20‐トリ[4‐(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)フェニル]ポルフィリン(0.33g)をクロロホルム(16.5mL)に溶解させた。そこへ、メタノール(6mL)に溶解させた酢酸亜鉛二水和物(0.62g)を滴下した。反応終了をTLCで確認後、水を加えて分液した。有機相を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去し、粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム)で展開分離し、紫色生成物(5‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)‐10,15,20‐トリ[4‐(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)フェニル]ポルフィリン亜鉛(II)錯体、0.33g)を得た。
【0093】
5‐(4‐カルボキシルフェニル)‐10,15,20‐トリ[4‐(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)フェニル]ポルフィリン亜鉛(II)錯体(ポルフィリン誘導体P1)の合成
【0094】
【化17】
【0095】
5‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)‐10,15,20‐トリ[4‐(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)フェニル]ポルフィリン亜鉛(II)錯体(0.31g)をTHF(30mL)と水(7mL)に溶解させた。そこへ48%水酸化ナトリウム(0.70g)を加え、原料が無くなるまで約68℃で加熱した。反応終了後、THFを留去した。残渣に3%ギ酸水を加え、弱酸性にした。紫色沈殿物を回収して、紫色生成物(5‐(4‐カルボキシルフェニル)‐10,15,20‐トリ[4‐(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)フェニル]ポルフィリン亜鉛(II)錯体、0.28g)を得た。
H‐NMR(δ/ppm,THF,400MHz)0.96(t,9H),1.50‐1.40(m,18H),1.81(quin,6H),2.95(t,6H),6.92(d,3H),7.51(d,3H),8.00(d,6H),8.20(d,6H),8.31(d,2H),8.43(d,2H),8.84‐8.96(m,8H)
(ポルフィリン誘導体P2の合成)
2‐ホルミル‐5‐ヘキシルチオフェンの合成
【0096】
【化18】
【0097】
2‐ヘキシルチオフェン(20.0g)と脱水テトラヒドロフラン(100mL)を入れた反応容器を、−10℃まで冷却し、そこへn‐ブチルリチウム(90mL)を滴下した。2時間後、DMF(18mL)をゆっくり滴下した。この溶液を、10℃で1時間撹拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液を滴下し、ヘキサンで抽出した。有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去して得られた油状物を、シリカゲルカラム(クロロホルム/ヘプタン=1/1)により展開分離し、生成物(2‐ホルミル‐5‐ヘキシルチオフェン、22.8g)を得た。
【0098】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリンの合成
【0099】
【化19】
【0100】
反応容器に、ピロール(2.73g)、2‐ホルミル‐5‐ヘキシルチオフェン(6.0g)、テレフタルアルデヒド酸メチル(1.67g)、クロロホルム(1500mL)とエタノール(6mL)を加え、約10℃に冷却した。そこへ、三フッ化ホウ素(1.45g)を滴下し、そのまま2時間撹拌した。この溶液に、2,3‐ジクロロ‐5,6‐ジシアノ‐1,4‐ベンゾキノン(6.94g)を加え、さらに1時間撹拌した。反応液をセライトとシリカゲルに通過させ、ろ液を濃縮して粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム/ヘキサン=3/1)により展開分離し、生成物(5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン、1.43g)を得た。
【0101】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体の合成
【0102】
【化20】
【0103】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン(1.35g)をクロロホルム(160mL)に溶解させた。そこへ、メタノール(38mL)に溶解させた酢酸亜鉛二水和物(3.77g)を滴下した。反応終了をTLCで確認後、水を加えて分液した。有機相を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去し、粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム)で展開分離し、紫色生成物(5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体、1.53g)を得た。
【0104】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体(ポルフィリン誘導体P2)の合成
【0105】
【化21】
【0106】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体(1.40g)をTHF(210mL)と水(70mL)に溶解させた。そこへ48%水酸化ナトリウム(7.0g)を加え、原料が無くなるまで約68℃で加熱した。反応終了後、THFを留去した。残渣に3%ギ酸水を加え、弱酸性にした。沈殿物を回収し、シリカゲルカラム(クロロホルム→クロロホルム/THF=5/1)で展開分離して、紫色生成物(5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体、1.27g)を得た。
H‐NMR(δ/ppm,CDCl,400MHz)0.98(t,9H),1.45(m,12H),1.61(quin,6H),1.96(quin,6H),3.14(t,6H),7.17(d,3H),7.71(d,3H),8.35(d,2H),8.53(d,2H),8.89(d,2H),9.23(d,2H),9.24(s,4H)
【0107】
(ポルフィリン誘導体P3の合成)
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリンの合成
【0108】
【化22】
【0109】
反応容器に、ピロール(2.73g)、2‐ホルミル‐5‐ヘキシルチオフェン(6.0g)、テレフタルアルデヒド酸メチル(1.67g)、クロロホルム(1500mL)とエタノール(6mL)を加え、約10℃に冷却した。そこへ、三フッ化ホウ素(1.45g)を滴下し、そのまま2時間撹拌した。この溶液に、2,3‐ジクロロ‐5,6‐ジシアノ‐1,4‐ベンゾキノン(6.94g)を加え、さらに1時間撹拌した。反応液をセライトとシリカゲルに通過させ、ろ液を濃縮して粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム/ヘキサン=3/1)により展開分離し、生成物(5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン、1.43g)を得た。
【0110】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン銅(II)錯体の合成
【0111】
【化23】
【0112】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン(0.53g)をクロロホルム(100mL)に溶解させた。そこへ、メタノール(40mL)に溶解させた酢酸銅(0.50g)を滴下した。反応終了をTLCで確認後、溶媒を留去し、粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム/ヘキサン=1/1)で展開分離し、紫色生成物(5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン銅(II)錯体、0.42g)を得た。
【0113】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリン銅(II)錯体(ポルフィリン誘導体P3)の合成
【0114】
【化24】
【0115】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン銅(II)錯体(0.42g)をTHF(100mL)と水(10mL)に溶解させた。そこへ48%水酸化ナトリウム(1.50g)を加え、原料が無くなるまで約68℃で加熱した。反応終了後、THFを留去した。残渣に3%ギ酸水を加え、弱酸性にした。沈殿物を回収し、シリカゲルカラム(クロロホルム→クロロホルム/THF=5/1)で展開分離して、紫色生成物(5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリン銅(II)錯体、0.40g)を得た。
【0116】
(ポルフィリン誘導体P4の合成)
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリンコバルト(II)錯体の合成
【0117】
【化25】
【0118】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン(0.53g)をクロロホルム(100mL)に溶解させた。そこへ、メタノール(70mL)に溶解させた酢酸コバルト四水和物(0.70g)を滴下した。反応終了をTLCで確認後、溶媒を留去し、粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム/ヘキサン=1/2)で展開分離し、紫色生成物(5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリンコバルト(II)錯体、0.50g)を得た。
【0119】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリンコバルト(II)錯体(ポルフィリン誘導体P4)の合成
【0120】
【化26】
【0121】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリンコバルト(II)錯体(0.50g)をTHF(150mL)と水(15mL)に溶解させた。そこへ48%水酸化ナトリウム(2.00g)を加え、原料が無くなるまで約68℃で加熱した。反応終了後、THFを留去した。残渣に3%ギ酸水を加え、弱酸性にした。沈殿物を回収し、シリカゲルカラム(クロロホルム→クロロホルム/THF=5/1)で展開分離して、紫色生成物(5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリンコバルト(II)錯体、0.29g)を得た。
【0122】
(ポルフィリン誘導体P5の合成)
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリン(ポルフィリン誘導体P5)の合成
【0123】
【化27】
【0124】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン(0.15g)をTHF(50mL)と水(10mL)に溶解させた。そこへ48%水酸化ナトリウム(1.50g)を加え、原料が無くなるまで約68℃で加熱した。反応終了後、THFを留去した。残渣に3%ギ酸水を加え、弱酸性にした。沈殿物を回収し、シリカゲルカラム(クロロホルム→クロロホルム/THF=5/1)で展開分離して、紫色生成物(5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリン、0.10g)を得た。
H‐NMR(δ/ppm,CDCl,400MHz)0.98(t,9H),1.40‐1.50(m,12H),1.60(quin,6H),1.96(quin,6H),3.14(t,6H),7.17(d,3H),7.71(d,3H),8.35(d,2H),8.54(d,2H),8.78‐9.14(m,8H)
【0125】
(ポルフィリン誘導体P6の合成)
5‐ホルミルチオフェン‐2‐カルボン酸メチルエステルの合成
【0126】
【化28】
【0127】
反応容器に、5‐ホルミルチオフェン‐2‐カルボン酸(0.50g)、4‐ジメチルアミノピリジン(0.11g)、メタノール(0.87g)とクロロホルム(12mL)を加え、5℃まで冷却した。そこへ1‐(3‐ジメチルアミノプロピル)‐3‐エチルカルボジイミド塩酸塩(0.74g)を加えた。室温で1時間撹拌後、3mol/L塩酸(8mL)を投入した。反応液をクロロホルムで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去して粗生成物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム)で精製し、黄色生成物(5‐ホルミルチオフェン‐2‐カルボン酸メチルエステル、0.45g)を得た。
【0128】
5‐(5‐メトキシカルボニルチオフェン‐2‐イル)‐10,15,20‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)ポルフィリンの合成
【0129】
【化29】
【0130】
反応容器に、ピロール(1.26g)、2‐ホルミル‐5‐ヘキシルチオフェン(2.77g)、5‐ホルミルチオフェン‐2‐カルボン酸メチルエステル(0.80g)、クロロホルム(700mL)とエタノール(3mL)を加え、約10℃に冷却した。そこへ、三フッ化ホウ素(0.67g)を滴下し、そのまま2時間撹拌した。この溶液に、2,3‐ジクロロ‐5,6‐ジシアノ‐1,4‐ベンゾキノン(3.20g)を加え、さらに1時間撹拌した。反応液をセライトとシリカゲルに通し、ろ液を濃縮して粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム/ヘキサン=3/2→5/1)により展開分離し、生成物(5‐(5‐メトキシカルボニルチオフェン‐2‐イル)‐10,15,20‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)ポルフィリン、1.43g)を得た。
【0131】
5‐(5‐メトキシカルボニルチオフェン‐2‐イル)‐10,15,20‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体の合成
【0132】
【化30】
【0133】
5‐(5‐メトキシカルボニルチオフェン‐2‐イル)‐10,15,20‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)ポルフィリン(0.50g)をクロロホルム(60mL)に溶解させた。そこへ、メタノール(14mL)に溶解させた酢酸亜鉛二水和物(1.39g)を滴下した。反応終了をTLCで確認後、水を加えて分液した。有機相を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去し、粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム)で展開分離し、紫色生成物(5‐(5‐メトキシカルボニルチオフェン‐2‐イル)‐10,15,20‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体、0.42g)を得た。
【0134】
5‐(5‐カルボキシルチオフェン‐2‐イル)‐10,15,20‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体(ポルフィリン誘導体P6)の合成
【0135】
【化31】
【0136】
5‐(5‐メトキシカルボニルチオフェン‐2‐イル)‐10,15,20‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体(0.41g)をTHF(60mL)と水(20mL)に溶解させた。そこへ48%水酸化ナトリウム(2.00g)を加え、原料が無くなるまで約68℃で加熱した。反応終了後、THFを留去した。残渣に3%ギ酸水を加え、弱酸性にした。クロロホルムで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去し、シリカゲルカラム(クロロホルム→クロロホルム/THF=5/1)で展開分離して、紫色生成物(5‐(5‐カルボキシルチオフェン‐2‐イル)‐10,15,20‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体、0.40g)を得た。
H‐NMR(δ/ppm,CDCl,400MHz)0.98(t,9H),1.41‐1.47(m,12H),1.60(quin,6H),1.96(quin,6H),3.14(t,6H),7.17(d,3H),7.70(d,3H),7.94(d,2H),8.26(d,2H),9.12(d,2H),9.23(s,4H),9.26(d,2H)
【0137】
(ポルフィリン誘導体P7の合成)
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐(4'‐メトキシカルボニル)ビフェニル)ポルフィリンの合成
【0138】
【化32】
【0139】
反応容器に、ピロール(1.07g)、2‐ホルミル‐5‐ヘキシルチオフェン(2.35g)、4'‐ホルミルビフェニル‐4‐カルボン酸メチルエステル(0.96g)、クロロホルム(120mL)とエタノール(3mL)を加え、約10℃に冷却した。そこへ、三フッ化ホウ素(0.57g)を滴下し、そのまま2時間撹拌した。この溶液に、2,3‐ジクロロ‐5,6‐ジシアノ‐1,4‐ベンゾキノン(2.80g)を加え、さらに1時間撹拌した。反応液をセライトとシリカゲルに通過させ、ろ液を濃縮して粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム)により展開分離し、生成物(5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐(4'‐メトキシカルボニル)ビフェニル)ポルフィリン、0.40g)を得た。
【0140】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐(4'‐メトキシカルボニル)ビフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体の合成
【0141】
【化33】
【0142】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐(4'‐メトキシカルボニル)ビフェニル)ポルフィリン(0.40g)をクロロホルム(100mL)に溶解させた。そこへ、メタノール(40ml)に溶解させた酢酸亜鉛二水和物(0.60g)を滴下した。反応終了をTLCで確認後、水を加えて分液した。有機相を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去し、粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム)で展開分離し、紫色生成物(5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐(4'‐メトキシカルボニル)ビフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体、0.40g)を得た。
【0143】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐(4'‐カルボキシル)ビフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体(ポルフィリン誘導体P7)の合成
【0144】
【化34】
【0145】
5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐(4'‐メトキシカルボニル)ビフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体(0.40g)をTHF(70mL)と水(30mL)に溶解させた。そこへ48%水酸化ナトリウム(3.00g)を加え、原料が無くなるまで約68℃で加熱した。反応終了後、THFを留去した。残渣に3%ギ酸水を加え、弱酸性にした。沈殿物を回収し、シリカゲルカラム(クロロホルム→クロロホルム/酢酸エチル=5/1)で展開分離して、紫色生成物(5,10,15‐トリ(5‐ヘキシルチオフェン‐2‐イル)‐20‐(4‐(4'‐カルボキシル)ビフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体、0.37g)を得た。
H‐NMR(δ/ppm,CDCl,400MHz)0.96‐1.00(m,9H),1.44‐1.46(m,12H),1.60(quin,6H),1.96(quin,6H),3.14(t,6H),7.17(d,3H),7.70(d,3H),8.04(d,4H),8.33(d,4H),8.98‐9.25(m,8H)
【0146】
(ポルフィリン誘導体P8の合成)
2‐(4‐ヘキシルフェニル)‐4,4,5,5‐テトラメチル‐1,3,2‐ジオキサボロランの合成
【0147】
【化35】
【0148】
反応容器に、1‐ブロモ‐4‐ヘキシルベンゼン(10.00g)、ビス(ピナコレート)ジボラン(12.60g)、酢酸カリウム(12.13g)とDMF(200mL)を加えて撹拌した。そこへビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(0.61g)を投入して80℃に加温した。一晩加熱撹拌した後、クロロホルムと水を加えて分液洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を留去した。これをシリカゲルカラム(ヘキサン→ヘキサン/クロロホルム=1/2)で精製して、生成物(2‐(4‐ヘキシルフェニル)‐4,4,5,5‐テトラメチル‐1,3,2‐ジオキサボロラン、9.30g)を得た。
【0149】
5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐カルバルデヒドの合成
【0150】
【化36】
【0151】
反応容器に2‐(4‐ヘキシルフェニル)‐4,4,5,5‐テトラメチル‐1,3,2‐ジオキサボロラン(5.10g)、5‐ブロモチオフェン‐2‐カルバルデヒド(4.07g)、10%炭酸ナトリウム水溶液(55mL)とジオキサン(60mL)を加えて撹拌した。そこへテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(598mg)を投入し、80℃に加温した。一晩加熱撹拌した後、クロロホルムと水を加えて分液洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を留去した。これをシリカゲルカラム(ヘキサン/クロロホルム=4/1→クロロホルム)で精製して、生成物(5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐カルバルデヒド、4.70g)を得た。
【0152】
5,10,15‐トリ[5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリンの合成
【0153】
【化37】
【0154】
ピロール(1.58g)、5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐カルバルデヒド(4.80g)、テレフタルアルデヒド酸メチル(0.97g)をクロロホルム(180mL)とエタノール(3mL)に溶解させ、約10℃に冷却した。そこへ、三フッ化ホウ素(0.83g)を滴下し、そのまま2時間撹拌した。この溶液に、2,3‐ジクロロ‐5,6‐ジシアノ‐1,4‐ベンゾキノン(4.10g)を入れ、さらに1時間撹拌した。反応液をセライトとシリカゲルに通過させ、ろ液を濃縮して粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム)により展開分離し、生成物(5,10,15‐トリ[5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン、0.50g)を得た。
【0155】
5,10,15‐トリ[5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体の合成
【0156】
【化38】
【0157】
5,10,15‐トリ[5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン(0.50g)をクロロホルム(120mL)に溶解させた。そこへ、メタノール(60mL)に溶解させた酢酸亜鉛二水和物(0.70g)を滴下した。反応終了をTLCで確認後、水を加えて分液した。有機相を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去し、粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(ヘキサン/クロロホルム=2/1)で展開分離し、紫色生成物(5,10,15‐トリ[5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体、0.40g)を得た。
【0158】
5,10,15‐トリ[5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体の(ポルフィリン誘導体P8)合成
【0159】
【化39】
【0160】
5,10,15‐トリ[5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体(0.40g)をTHF(50mL)と水(30mL)に溶解させた。そこへ48%水酸化ナトリウム(3mL)を加え、約68℃で加熱した。反応終了後、THFを留去した。残渣に3%ギ酸水を加え、弱酸性にした。クロロホルムで抽出し、有機相を水洗した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させて溶媒を留去した。これをシリカゲルカラム(クロロホルム→クロロホルム/酢酸エチル=4/1)で精製して、紫色生成物(5,10,15‐トリ[5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体、0.30g)を得た。
H‐NMR(δ/ppm,CDCl,400MHz)0.92(t,9H),1.30‐1.42(m,18H),1.69(quin,6H),2.69(t,6H),7.31(d,6H),7.67(d,3H),7.79(d,6H),7.87(d,3H),8.36(d,2H),8.52(d,2H),8.91‐9.34(m,8H)
【0161】
(ポルフィリン誘導体P9の合成)
9‐(2‐チオフェン)‐3,6‐ジ‐t‐ブチルカルバゾールの合成
【0162】
【化40】
【0163】
反応容器に、3,6‐ジ‐t‐ブチルカルバゾール(12.46g)、銅(8.23g)、炭酸カリウム(8.15g)、2‐ブロモチオフェン(8.73g)とニトロベンゼン(100mL)を加え、160℃で1日加熱撹拌した。反応液にクロロホルムを投入し、セライト中を通過させた。ろ液を濃縮し、シリカゲルカラム(クロロホルム/ヘキサン=1/2)で分離精製して、生成物(9‐(2‐チオフェン)‐3,6‐ジ‐t‐ブチルカルバゾール、6.75g)を得た。
【0164】
9‐[(2‐ホルミル)チオフェン‐5‐イル]‐3,6‐ジ‐t‐ブチルカルバゾールの合成
【0165】
【化41】
【0166】
9‐(2‐チオフェン)‐3,6‐ジ‐t‐ブチルカルバゾール(6.75g)を脱水THF(50mL)に溶解させ、0℃まで冷却した。そこへn‐ブチルリチウム(13mL)をゆっくりと滴下した。30分後、DMF(1.6mL)を投入した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去し、シリカゲルカラム(ヘキサン/酢酸エチル=20/1→10/1→8/1)で精製して、黄色生成物(9‐[(2‐ホルミル)チオフェン‐5‐イル]‐3,6‐ジ‐t‐ブチルカルバゾール、5.65g)を得た。
【0167】
5,10,15‐トリ[5‐(3,6‐ジ‐t‐ブチル‐9H‐カルバゾール‐9‐イル)チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリンの合成
【0168】
【化42】
【0169】
反応容器に、ピロール(0.62g)、テレフタルアルデヒド酸メチル(0.38g)、9‐[(2‐ホルミル)チオフェン‐5‐イル]‐3,6‐ジ‐t‐ブチルカルバゾール(2.70g)、クロロホルム(150mL)とエタノール(2mL)を入れ、約10℃に冷却した。そこへ、三フッ化ホウ素(0.36g)を滴下し、そのまま2時間撹拌した。この溶液に、2,3‐ジクロロ‐5,6‐ジシアノ‐1,4‐ベンゾキノン(1.70g)を加え、さらに1時間撹拌した。反応液をセライトとシリカゲルに通過させ、ろ液を濃縮して粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム)により展開分離し、生成物(5,10,15‐トリ[5‐(3,6‐ジ‐t‐ブチル‐9H‐カルバゾール‐9‐イル)チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン、0.98g)を得た。
【0170】
5,10,15‐トリ[5‐(3,6‐ジ‐t‐ブチル‐9H‐カルバゾール‐9‐イル)チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体の合成
【0171】
【化43】
【0172】
5,10,15‐トリ[5‐(3,6‐ジ‐t‐ブチル‐9H‐カルバゾール‐9‐イル)チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン(0.98g)をクロロホルム(100mL)に溶解させた。そこへ、メタノール(40mL)に溶解させた酢酸亜鉛二水和物(0.70g)を滴下した。反応終了をTLCで確認後、水を加えて分液した。有機相を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去し、粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム)で展開分離し、紫色生成物(5,10,15‐トリ[5‐(3,6‐ジ‐t‐ブチル‐9H‐カルバゾール‐9‐イル)チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体、1.00g)を得た。
【0173】
5,10,15‐トリ[5‐(3,6‐ジ‐t‐ブチル‐9H‐カルバゾール‐9‐イル)チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体(ポルフィリン誘導体P9)の合成
【0174】
【化44】
【0175】
5,10,15‐トリ[5‐(3,6‐ジ‐t‐ブチル‐9H‐カルバゾール‐9‐イル)チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体(1.00g)をTHF(150mL)と水(15mL)に溶解させた。そこへ48%水酸化ナトリウム(1.5g)を加え、原料が無くなるまで約68℃で加熱した。反応終了後、THFを留去した。残渣に3%ギ酸水を加え、弱酸性にした。紫色沈殿物を回収して、紫色生成物(5,10,15‐トリ[5‐(3,6‐ジ‐t‐ブチル‐9H‐カルバゾール‐9‐イル)チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体、0.70g)を得た。
H‐NMR(δ/ppm,CDCl,400MHz)1.53(s,54H),7.63(dd,3H),7.67(t,6H),7.88(t,6H),8.01(dd,3H),8.22(s,6H),8.41(d,2H),8.59(d,2H),9.02(d,2H),9.42(d,2H),9.48(s,4H)
【0176】
(ポルフィリン誘導体P10の合成)
5‐ブロモ‐5'‐ホルミル‐2,2'‐ビチオフェンの合成
【0177】
【化45】
【0178】
5‐ホルミル‐2,2'‐ビチオフェン(5.00g)をDMF(6mL)に溶解させ、0℃に冷却した。そこへN‐ブロモスクシンイミド(4.80g)を投入した。反応終了後、水を加え、分液洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去して粗生成物を得た。これをTHFと酢酸エチルで洗浄して、生成物(5‐ブロモ‐5'‐ホルミル‐2,2'‐ビチオフェン、6.00g)を得た。
【0179】
5‐(5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル)チオフェン‐2‐カルバルデヒドの合成
【0180】
【化46】
【0181】
反応容器に、5‐ブロモ‐5'‐ホルミル‐2,2'‐ビチオフェン(5.52g)、2‐(4‐ヘキシルフェニル)‐4,4,5,5‐テトラメチル‐1,3,2‐ジオキサボロラン(6.23g)、10%炭酸ナトリウム水溶液(65mL)、ジオキサン(60mL)とキシレン(20mL)を加えて撹拌した。そこへテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0.66g)を投入し、80℃に加温した。4時間加熱撹拌した後、クロロホルムと水を加えて分液洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を留去した。これをシリカゲルカラム(ヘキサン/クロロホルム=1/1→クロロホルム)で精製して、生成物(5‐(5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル)チオフェン‐2‐カルバルデヒド、5.40g)を得た。
【0182】
5,10,15‐トリ[5‐[5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル]チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリンの合成
【0183】
【化47】
【0184】
ピロール(1.38g)、5‐(5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル)チオフェン‐2‐カルバルデヒド(5.40g)、テレフタルアルデヒド酸メチル(0.85g)をクロロホルム(150mL)とエタノール(2mL)に溶解させ、約10℃に冷却した。そこへ、三フッ化ホウ素(0.73g)を滴下し、そのまま2時間撹拌した。この溶液に、2,3‐ジクロロ‐5,6‐ジシアノ‐1,4‐ベンゾキノン(3.40g)を入れ、さらに1時間撹拌した。反応液をセライトとシリカゲルに通過させ、ろ液を濃縮して粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(クロロホルム)により展開分離し、生成物(5,10,15‐トリ[5‐[5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル]チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン、0.40g)を得た。
【0185】
5,10,15‐トリ[5‐[5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル]チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体の合成
【0186】
【化48】
【0187】
5,10,15‐トリ[5‐[5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル]チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン(0.40g)をクロロホルム(80mL)に溶解させた。そこへ、メタノール(20mL)に溶解させた酢酸亜鉛二水和物(0.45g)を滴下した。反応終了をTLCで確認後、水を加えて分液した。有機相を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去し、粗成生物を得た。これをシリカゲルカラム(ヘキサン/クロロホルム=1/2→クロロホルム)で展開分離し、紫色生成物(5,10,15‐トリ[5‐[5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル]チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体、0.20g)を得た。
【0188】
5,10,15‐トリ[5‐[5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル]チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体(ポルフィリン誘導体P10)の合成
【0189】
【化49】
【0190】
5,10,15‐トリ[5‐[5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル]チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体(0.20g)をTHF(50mL)と水(30mL)に溶解させた。そこへ48%水酸化ナトリウム(3mL)を加え、原料が無くなるまで約68℃で加熱した。反応終了後、THFを留去した。残渣に3%ギ酸水を加え、弱酸性にした。クロロホルムで抽出し、有機相を水洗した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させて溶媒を留去した。これをシリカゲルカラム(クロロホルム→クロロホルム/酢酸エチル=4/1)で精製して、紫色生成物(5,10,15‐トリ[5‐[5‐(4‐ヘキシルフェニル)チオフェン‐2‐イル]チオフェン‐2‐イル]‐20‐(4‐カルボキシルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体、0.15g)を得た。
H‐NMR(δ/ppm,THF,400MHz)0.92(t,9H),1.30‐1.40(m,18H),1.67(quin,6H),2.65(t,6H),7.25(d,6H),7.41(t,3H),7.45(t,3H),7.64(d,6H),7.70(t,3H),7.86(t,3H),8.31(d,2H),8.45(d,2H),8.86(d,2H),9.25(d,2H),9.27(s,4H)
【0191】
(ポルフィリン誘導体P11の合成)
5,10,15,20−テトラキス(4−メトキシカルボニルフェニル)−21H,23H−ポルフィリンの合成
【0192】
【化50】
【0193】
反応容器に、ピロール(1.48g)、テレフタルアルデヒド酸メチル(3.60g)、クロロホルム(600mL)とエタノール(9mL)を加えた。そこへ、三フッ化ホウ素(0.94g)を滴下し、そのまま2時間撹拌した。この溶液に、2,3‐ジクロロ‐5,6‐ジシアノ‐1,4‐ベンゾキノン(3.74g)を加え、さらに1時間撹拌した。反応液をセライトとシリカゲルに通過させ、ろ液を濃縮して粗成生物を得た。これをシリカゲルカラムで展開分離し、生成物(5,10,15,20−テトラキス(4−メトキシカルボニルフェニル)−21H,23H−ポルフィリン、0.45g)を得た。
【0194】
【化51】
【0195】
5,10,15,20−テトラキス(4−メトキシカルボニルフェニル)−21H,23H−ポルフィリン(0.40g)をクロロホルム(50mL)に溶解させた。そこへ、メタノール(12ml)に溶解させた酢酸亜鉛二水和物(1.24g)を滴下した。反応終了をTLCで確認後、水を加えて分液した。有機相を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去し、粗成生物を得た。これをシリカゲルカラムで展開分離し、紫色生成物(5,10,15,20−テトラキス(4−メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体、0.38g)を得た。
5,10,15,20−テトラキス(4−カルボキシフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体 (ポルフィリン誘導体P11)の合成
【0196】
【化52】
【0197】
5,10,15,20−テトラキス(4−メトキシカルボニルフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体(0.35g)をTHF(35mL)と水(8mL)に溶解させた。そこへ48%水酸化ナトリウム(0.8g)を加え、原料が無くなるまで約68℃で加熱した。反応終了後、残渣に3%ギ酸水を加え、弱酸性にした。沈殿物を回収し、シリカゲルカラムで展開分離して、紫色生成物(5,10,15,20−テトラキス(4−カルボキシフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体 、0.29g)を得た。
【0198】
(ポルフィリン誘導体P12の合成)
5,10,15,20−テトラキス(4−メトキシフェニル)−21H,23H−ポルフィリンの合成
【0199】
【化53】
【0200】
反応容器に、p−メトキシフェニルジピロメタン(1.00g)、p−アニスアルデヒド(0.54g)とジクロロメタン(200mL)を加えた。そこへ、トリフルオロ酢酸(0.80g)を滴下し、1時間撹拌した。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.90g)を加え、1時間撹拌した。この溶液に、p−クロラニル(1.48g)を加え、さらに2時間撹拌した。反応液をセライトとシリカゲルに通し、ろ液を濃縮して粗成生物を得た。これをシリカゲルカラムにより展開分離し、生成物(5,10,15,20−テトラキス(4−メトキシフェニル)−21H,23H−ポルフィリン、0.13g)を得た。
【0201】
5,10,15,20−テトラキス(4−メトキシフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体 (ポルフィリン誘導体P12)の合成
【0202】
【化54】
【0203】
5,10,15,20−テトラキス(4−メトキシフェニル)−21H,23H−ポルフィリン(0.12g)をクロロホルム(30mL)に溶解させた。そこへ、メタノール(10mL)に溶解させた酢酸亜鉛二水和物(0.55g)を滴下した。反応終了をTLCで確認後、溶媒を留去し、粗成生物を得た。これをシリカゲルカラムで展開分離し、紫色生成物(5,10,15,20−テトラキス(4−メトキシフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体、0.08g)を得た。
【0204】
(ポルフィリン誘導体P15の合成)
5,10,15−トリ(4−メトキシカルボニルフェニル)−20−フェニルエチニル−21H,23H−ポルフィリンの合成
【0205】
【化55】
【0206】
反応容器に、ピロール(0.66g)、テレフタルアルデヒド酸メチル(1.21g)、フェニルプロパギルアルデヒド(0.32g)、クロロホルム(500mL)とエタノール(7mL)を加えた。そこへ、三フッ化ホウ素(0.42g)を滴下し、そのまま2時間撹拌した。この溶液に、2,3‐ジクロロ‐5,6‐ジシアノ‐1,4‐ベンゾキノン(1.67g)を加え、さらに1時間撹拌した。反応液をセライトとシリカゲルに通過させ、ろ液を濃縮して粗成生物を得た。これをシリカゲルカラムにより展開分離し、生成物(5,10,15−トリ(4−メトキシカルボニルフェニル)−20−フェニルエチニル−21H,23H−ポルフィリン、0.16g)を得た。
【0207】
5,10,15−トリ(4−メトキシカルボニルフェニル)−20−フェニルエチニルポルフィリン亜鉛(II)錯体の合成
【0208】
【化56】
【0209】
5,10,15−トリ(4−メトキシカルボニルフェニル)−20−フェニルエチニル−21H,23H−ポルフィリン(0.13g)をクロロホルム(20mL)に溶解させた。そこへ、メタノール(5mL)に溶解させた酢酸亜鉛二水和物(0.42g)を滴下した。反応終了をTLCで確認後、水を加えて分液した。有機相を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去し、粗成生物を得た。これをシリカゲルカラムで展開分離し、紫色生成物(5,10,15−トリ(4−メトキシカルボニルフェニル)−20−フェニルエチニルポルフィリン亜鉛(II)錯体、0.11g)を得た。
【0210】
5,10,15−トリ(4−カルボキシフェニル)−20−フェニルエチニルポルフィリン亜鉛(II)錯体 (ポルフィリン誘導体P15)の合成
【0211】
【化57】
【0212】
5,10,15−トリ(4−メトキシカルボニルフェニル)−20−フェニルエチニルポルフィリン亜鉛(II)錯体(0.10g)をTHF(12mL)と水(4mL)に溶解させた。そこへ48%水酸化ナトリウム(0.40g)を加え、原料が無くなるまで約68℃で加熱した。反応終了後、THFを留去した。残渣に3%ギ酸水を加え、弱酸性にした。沈殿物を回収し、シリカゲルカラムで展開分離して、紫色生成物(5,10,15−トリ(4−カルボキシフェニル)−20−フェニルエチニルポルフィリン亜鉛(II)錯体、0.06g)を得た。
【0213】
(ポルフィリン誘導体P13およびP14)
5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィリン(ポルフィリン誘導体P13、CAS番号:917−23−7)は、和光純薬工業(株)から市販されているものを用いた。また、テトラキス(4−カルボキシフェニル)ポルフィリン(ポルフィリン誘導体P14,CAS番号:14609−54−2)は、東京化成工業(株)から市販されているものを用いた。
【0214】
3.比較化合物
比較例として、フタロシアニン亜鉛錯体(比較化合物Pc−a、CAS番号:13420−04−8、東京化成工業(株)製)および21H,23H−ポルフィリン(比較化合物Por−a、CAS番号:101−60−0、フナコシ(株)製)を用いた。
【0215】
【化58】
【0216】
4.有機色素複合体の合成
得られたフタロシアニン誘導体Aのエタノール溶液と、ポルフィリン誘導体P1のエタノール溶液を、下記実施例で設定したAとP1の混合比率および濃度となるように、25℃で混合した。
【0217】
5.有機色素複合体の評価
(紫外・可視吸収スペクトルの測定)
(a)二酸化チタン上に吸着された状態での紫外・可視吸収スペクトル測定
ガラス基板(フッ素ドープ酸化スズ膜形成ガラス、35mm×33mm)上に、二酸化チタンペースト(触媒化成製、PST−21NR)を、スクリーン印刷により正方形状(1cm×1cm、膜厚0.8μm)に印刷し、乾燥後、500℃で焼成した。形成された二酸化チタン膜を、フタロシアニン誘導体Aのエタノール溶液(0.1mmol/L)、ポルフィリン誘導体P1エタノール溶液(0.1mmol/L)、および有機色素複合体(A+P1)エタノール溶液(0.1mmol/L)に、それぞれ25℃で12時間浸漬した。浸漬後、該基板をエタノールで洗浄し、乾燥させ、紫外・可視吸収スペクトルを測定した。結果を図1(a)に示す。
(b)エタノール中での紫外・可視吸収スペクトル測定
フタロシアニン誘導体A、ポルフィリン誘導体P1、および有機色素複合体A+P1のそれぞれ5μmol/Lエタノール溶液を調整し、紫外・可視吸収スペクトルを測定した。結果を図1(b)に示す。
【0218】
図1(a)および図1(b)のいずれにおいても、吸収スペクトルの長波長シフトが観測された。
【0219】
(有機色素複合体の会合定数の測定)
Rose−Drago法(非特許文献2参照)に従い、エタノール溶液中での有機色素複合体(A+P1)の会合定数を測定した。結果を表2に示す。
【0220】
【数1】
【0221】
【0222】
【表2】
【0223】
表2に示すとおり、有機色素複合体(A+P1)は、非常に大きな会合定数を有する会合体を形成していることがわかった。
【0224】
(有機色素複合体を濃度変化させた場合の紫外・可視吸収スペクトルの測定)
上記有機色素複合体(A+P1)の溶液濃度を1.25μmol/L、2.5μmol/L、5.μmol/L、10μmol/L、20μmol/L、および30μmol/Lに変化させ、それぞれの溶液の紫外・可視吸収スペクトルを測定した。結果を図3に示す。
【0225】
図3のとおり、有機色素複合体(A+P1)は、濃度1.25μmol/Lの極低濃度であっても一部に会合体を形成していることがわかった。
【0226】
(フタロシアニン誘導体とポルフィリン誘導体との混合比率を変化させた場合の紫外・可視吸収スペクトルの測定)
上記有機色素複合体(A+P1)の合成において、フタロシアニン誘導体Aとポルフィリン誘導体P1との混合比率を変えて調整し、得られた溶液の紫外・可視吸収スペクトルを測定した。結果を図4に示す。
【0227】
図4のとおり、本発明の有機色素複合体(A+P1)は混合比率1:9〜9:1の範囲で、その一部が会合体を形成していることがわかった。
【0228】
(種々の有機色素複合体の形成)
上記有機色素複合体(A+P1)と同様に、フタロシアニン誘導体A〜Dまたは比較化合物Pc−aと、ポルフィリン誘導体P1〜P15または比較化合物Por−aとを1:1の比率で混合し、有機色素複合体または有機色素混合物の5μmol/Lエタノール溶液を作成した。その結果を表3および図5に示す。該溶液中での会合体の形成の有無は、フタロシアニン誘導体およびポルフィリン誘導体を1:1で混合した際に、用いたフタロシアニン誘導体単独の最大吸収スペクトルを基準に、当該波長の吸収スペクトルがフタロシアニン誘導体単独の場合の90%以下となり、その長波長側に新たな吸収波長が観察された場合に、会合体が形成されたものと判断した。
【0229】
【表3-1】
【0230】
【表3-2】
【0231】
表3および図5から明らかなように、比較例5〜7では、フタロシアニン誘導体およびポルフィリン誘導体のそれぞれの吸収スペクトルが単に重なり合っただけであり、会合体の吸収スペクトルは観測されなかった。
【0232】
(色素増感太陽電池の作製)
(1)以下の手順により、上記合成例により調製した有機色素複合体(A+P1:実施例1)ならびにフタロシアニン誘導体A単独およびポルフィリン誘導体P1単独を用いた色素増感太陽電池をそれぞれ作製した。
【0233】
i. ガラス基板(フッ素ドープ酸化スズ膜形成ガラス、35mm×33mm)上に、
二酸化チタンペースト(触媒化成製、PST−21NR)を、スクリーン印刷により正方形状(1cm×1cm、膜厚8μm)に印刷し、乾燥後、その上にさらに二酸化チタンペースト(触媒化成製、PST−400C)を膜厚4μmにスクリーン印刷した。これを500℃で焼成し、発電層を形成した。
【0234】
ii. 前記発電層を形成した電極をフタロシアニン誘導体Aのエタノール溶液(0.1mmol/L)、ポルフィリン誘導体P1エタノール溶液(0.1mmol/L)、および有機色素複合体(A+P1)エタノール溶液(0.1mmol/L)に、それぞれ25℃で12時間浸漬した。浸漬後、該基板をエタノールで洗浄し、乾燥させ、アノード電極を得た。
【0235】
iii. 上記アノード電極の発電層の周囲に接着剤を施し、このアノード電極と、別途用意した電解液注入孔を有するチオアセトアミドで処理した白金被覆チタン板(カソード電極)とを、該接着剤により接着し、両電極が50μm程度の一定間隔を置いて平行に配置されるようにした。
【0236】
iv. 次いで、該電解液注入口より電解液を注入した。ここで、電解液には、ヨウ素(0.1molM/L)、ヨウ化リチウム(0.1mol/L)、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウムヨウ化物(0.8mol/L)、およびN−メチルベンゾイミダゾール(0.5mol/L)が、それぞれカッコ内に記載した濃度になるように3−メトキシプロピオニトリルに添加された溶液を用いた。
【0237】
v. 接着剤を用いて該電解液注入孔を封止し、アノード電極上に端子取り出しのためのハンダを塗布して実験用セルを完成させた。
【0238】
(分光感度の測定)
作製した太陽電池セルの分光感度を分光感度測定装置(分光計器株式会社製CEP−2000)で測定した。結果を図6に示す。また、これらの太陽電池セルの外観を図7に示す。
【0239】
(性能試験)
上記のようにして得られた色素増感太陽電池につきその性能を評価した。
【0240】
セルを作成後、該セルを庫内温度85℃の乾燥機(ヤマト科学株式会社製 DK810)内に設置した。24時間後セルを取り出し室温まで冷却した後、AM1.5,1SUN(100mW/cm)の照射条件下でセルの変換効率を測定した。結果を表4に示す。
【0241】
【表4】
【0242】
なお光電変換効率は下記式により計算した。
光電変換効率(%)=
100×[(短絡電流密度×開放電圧×曲線因子)/(照射太陽光エネルギー)]
【0243】
上記表4のとおり、本発明の有機色素複合体を光増感色素として用いて作製した色素増感太陽電池は、高い光電変換効率を示した。これは、図6で明らかなように、本発明の有機色素複合体が、構成するフタロシアニン誘導体およびポルフィリン誘導体の吸収波長の単なる和とは異なる、より長波長側に広がった吸収波長を有することから、より広い範囲の光を吸収することができ、光電変換効率が向上したものと考えられる。
【符号の説明】
【0244】
1 透明電極
2 金属酸化物半導体電極
3 電解質
4 対電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7