特許第6362210号(P6362210)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362210
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】脆性板の熱割断方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 33/09 20060101AFI20180712BHJP
   B26F 3/08 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   C03B33/09
   B26F3/08
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-47686(P2014-47686)
(22)【出願日】2014年3月11日
(65)【公開番号】特開2015-171961(P2015-171961A)
(43)【公開日】2015年10月1日
【審査請求日】2017年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】512247924
【氏名又は名称】八江 正信
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】八江 正信
(72)【発明者】
【氏名】青山 泰典
(72)【発明者】
【氏名】上山 勉
(72)【発明者】
【氏名】宮岸 喜幸
(72)【発明者】
【氏名】山口 作太郎
【審査官】 原 和秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−092837(JP,A)
【文献】 特開平05−285938(JP,A)
【文献】 特開2012−254927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 33/02−33/09
B26F 3/00
B28D 5/00− 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脆性板の厚み方向の両面のうち一方の面に加熱縁を当てがうとともに他方の面に冷却縁を前記加熱縁に沿って当てがって、且つ、脆性板の厚み方向の両面のうち、前記加熱縁が当てがわれる一方の面側に前記加熱縁に沿って当てがわれる押え縁と、前記冷却縁が当てがわれる他方の面側に前記冷却縁に沿って当てがわれる押え縁とのうち、少なくとも一つの前記押え縁を脆性板に当てがった状態で、その一方の面側より低温の他方の面側とその一方の面側との間の温度差で一方の面側の膨張と他方の面側の圧縮とによって生じる熱応力を原因として発生する曲げモーメントにより、脆性板を前記加熱縁及び前記冷却縁に沿って一方の面側から他方の面側へ向けて熱割断を行うことを特徴とする脆性板の熱割断方法。
【請求項2】
脆性板の厚み方向の両面のうち一方の面に加熱縁を当てがうとともに他方の面に冷却縁を前記加熱縁に沿って当てがって、且つ、前記加熱縁と前記冷却縁との間に脆性板の厚み方向の両面に沿うギャップを設けるとともに、脆性板の厚み方向の両面のうち、前記加熱縁が当てがわれる一方の面側に前記加熱縁に沿って当てがわれる押え縁と、前記冷却縁が当てがわれる他方の面側に前記冷却縁に沿って当てがわれる押え縁とのうち、少なくとも一つの前記押え縁を脆性板に当てがった状態で、その一方の面側より低温の他方の面側とその一方の面側との間の温度差で一方の面側の膨張と他方の面側の圧縮とによって生じる熱応力を原因として発生する曲げモーメントにより、脆性板を前記ギャップで一方の面側から他方の面側へ向けて熱割断を行うことを特徴とする脆性板の熱割断方法。
【請求項3】
前記脆性板の一方の面における前記ギャップの幅方向の中央部に形成した予備亀裂に沿って、前記熱割断を行うことを特徴とする請求項2に記載の脆性板の熱割断方法。
【請求項4】
前記ギャップの幅方向の寸法を、0.001mm〜1.0mmの範囲に設定することを特徴とする請求項3に記載の脆性板の熱割断方法。
【請求項5】
線条に連続して延設された前記加熱縁及び前記冷却縁により、前記熱割断を行うことを特徴とする請求項1に記載の脆性板の熱割断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極薄ガラス板などの脆性板を熱割断する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、脆性板をダイヤモンドカッターによる傷入れ加工で切断する方法においては、傷入れ加工後にブレイク工程を加工後の後処理として必要とするばかりではなく、ブレイク工程により切断縁にクラックが発生する。
【0003】
脆性板をダイヤモンド砥石により切断する方法においては、高精度な切り出しが可能であるが、切断面及び切断端面にマイクロクラックが無数に発生するために次工程で端面研削及び面取りを加工後の後処理として必要とし、また、ウエット加工であるために洗浄工程と乾燥工程を加工後の後処理として必要とし、最終製品単価を高騰させる。
【0004】
脆性板をレーザー光によるアブレーション加工で切断する方法においても、高精度な切り出しが可能であるが、切断面及び切断端面にマイクロクラックが無数に発生するために次工程にて端面研削及び面取りを加工後の後処理として必要とし、また、設備価格が高価になるばかりではなく、プラズマ化したデブリの処理のために洗浄工程と乾燥工程を加工後の後処理として必要とし、最終製品単価を高騰させる。
【0005】
そこで、例えば下記の特許文献1に示すように、脆性板に対しレーザー光により切断縁に沿う熱衝撃を与えて脆性板を熱割断する方法が開発されている。この熱割断方法においては、レーザー光により切断縁の両側に生じる熱応力(圧縮応力や引張応力)が不均一となって安定しないために切断縁の直進性に劣るとともに、設備価格が高価となって最終製品単価を高騰させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−40665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、レーザー光による熱割断方法に代わる新たな熱割断方法を提供して、脆性板における切断縁の直進性を向上させることを主目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
後記実施形態(図1に示す第1実施形態、図2に示す第2実施形態、図3に示す第3実施形態、図4に示す第4実施形態、)の図面の符号を援用して本発明を説明する。
請求項1の発明にかかる脆性板の熱割断方法においては、脆性板(3)の厚み方向(Z)の両面(3a,3b)のうち一方の面(3a)に加熱縁(7)を当てがうとともに他方の面(3b)に冷却縁(14)を加熱縁(7)に沿って当てがって、且つ、脆性板(3)の厚み方向(Z)の両面(3a,3b)のうち、前記加熱縁(7)が当てがわれる一方の面(3a)側に加熱縁(7)に沿って当てがわれる押え縁(8)と、前記冷却縁(14)が当てがわれる他方の面(3b)側に冷却縁(14)に沿って当てがわれる押え縁(15)とのうち、少なくとも一つの押え縁(8,15)を脆性板(3)に当てがった状態で、その一方の面(3a)側より低温の他方の面(3b)側とその一方の面(3a)側との間の温度差で一方の面(3a)側の膨張と他方の面(3b)側の圧縮とによって生じる熱応力を原因として発生する曲げモーメントにより、脆性板(3)を加熱縁(7)及び冷却縁(14)に沿って一方の面(3a)側から他方の面(3b)側へ向けて熱割断を行う。
【0009】
請求項1の発明では、ガラス板などの脆性板(3)の熱割断方法において、脆性板(3)の厚み方向(Z)の両面(3a,3b)のうち一方の面(3a)に当てがわれる加熱縁(7)を採用したので、形態を維持することができる加熱縁(7)から平均的に発生する熱により、切断縁の両側に生じる熱応力(引張応力や圧縮応力)を平均化して安定させることができる。また、脆性板(3)における他方の面(3b)に当てがわれる冷却縁(14)を採用したので、形態を維持することができる冷却縁(14)により他方の面(3b)の冷却を助長して、脆性板(3)における一方の面(3a)側と他方の面(3b)側との間の温度差を大きくし、脆性板(3)に曲げモーメントを発生させ易くすることができる。従って、脆性板(3)を加熱縁(7)や冷却縁(14)に沿って熱割断する際に切断縁の直進性を高めることができる。加えて、脆性板(3)に当てがった押え縁(8,15)により、加熱縁(7)や冷却縁(14)や押え縁(8,15)に沿って脆性板(3)に応力集中が発生し易くなって、切断縁の直進性をより一層高めることができる。
【0012】
求項の発明にかかる脆性板の熱割断方法においては、脆性板(3)の厚み方向(Z)の両面(3a,3b)のうち一方の面(3a)に加熱縁(7)を当てがうとともに他方の面(3b)に冷却縁(14)を加熱縁(7)に沿って当てがって、且つ、前記加熱縁(7)と前記冷却縁(14)との間に脆性板(3)の厚み方向(Z)の両面(3a,3b)に沿うギャップ(G)を設けるとともに、脆性板(3)の厚み方向(Z)の両面(3a,3b)のうち、前記加熱縁(7)が当てがわれる一方の面(3a)側に加熱縁(7)に沿って当てがわれる押え縁(8)と、前記冷却縁(14)が当てがわれる他方の面(3b)側に冷却縁(14)に沿って当てがわれる押え縁(15)とのうち、少なくとも一つの押え縁(8,15)を脆性板(3)に当てがった状態で、その一方の面(3a)側より低温の他方の面(3b)側とその一方の面(3a)側との間の温度差で一方の面(3a)側の膨張と他方の面(3b)側の圧縮とによって生じる熱応力を原因として発生する曲げモーメントにより、脆性板(3)をギャップ(G)で一方の面(3a)側から他方の面(3b)側へ向けて熱割断を行う。請求項の発明では、加熱縁(7)と冷却縁(14)との間のギャップ(G)や、脆性板(3)に当てがった押え縁(8,15)により、ギャップ(G)脆性板(3)に応力集中が発生し易くなって、切断縁の直進性をより一層高めることができる。
【0013】
請求項の発明を前提とする請求項の発明においては、前記脆性板(3)の一方の面(3a)における前記ギャップ(G)の幅方向(Y)の中央部に形成した予備亀裂(22)に沿って、前記熱割断を行う。請求項の発明では、予備亀裂(22)により脆性板(3)の熱割断を促進させることができる。
【0014】
請求項の発明を前提とする請求項の発明においては、前記ギャップの幅方向の寸法を、0.001mm〜1.0mmの範囲に設定する。
【0015】
請求項1の発明を前提とする請求項の発明においては、線条に連続して延設された前記加熱縁(7)及び冷却縁(14)により、前記熱割断を行う。請求項の発明では、直線条や曲線条や環条やそれらを組み合わせた線条をなす切断縁により、脆性板(3)を各種の形態で熱割断することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、脆性板(3)の熱割断において、脆性板(3)における切断縁の直進性をレーザー光による熱割断方法と比較して向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】(a)は第1実施形態にかかる脆性板の熱割断方法を実施する場合の熱割断状態を概略的に示す部分断面図であり、(b)は(a)中A部の部分拡大断面図であり、(c)は脆性板の熱割断方法を説明するための原理図である。
図2】(a)は第2実施形態にかかる脆性板の熱割断方法を実施する場合の熱割断状態を概略的に示す部分断面図であり、(b)は(a)中B部の部分拡大断面図である。
図3】(a)は第3実施形態にかかる脆性板の熱割断方法を実施する場合の熱割断状態を概略的に示す部分断面図であり、(b)は(a)中C部の部分拡大断面図である。
図4】(a)は第4実施形態にかかる脆性板の熱割断方法を実施する場合の熱割断状態を概略的に示す部分断面図であり、(b)は(a)中D部の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
まず、第1実施形態にかかる脆性板の熱割断方法について図1を参照して説明する。
加工台1にはその表裏両面間で加工孔1aが貫通して帯状に形成され、加工台1の表面には加工孔1aを挟む両側で粘着シート2が貼られ、粘着シート2上には厚み方向Zで互いに平行な表裏両面3a,3bを有する極薄ガラス板などの脆性板3が載せられて固定されている。加工孔1aは、脆性板3の熱割断形態に合わせて、両端を有する直線条や、両端を有する曲線条や、無端の環条や、それらを組み合わせた線条に連続して延設されている。
【0022】
加工台1の表面側には加熱側可動体4が加工孔1aに沿って配置されている。加熱側可動体4においては、加熱装置(図示せず)及び振動発生装置(図示せず)に接続された加熱体5と、加熱体5に対し加工台1の表面に沿って並ぶ加熱側押え体6とが一体的に取着されている。加熱側可動体4において、脆性板3の表裏両面3a,3bのうち表面3aに面する下端部は、下向きのV状に形成され、表面3aに沿う幅方向Yの中央部で加工孔1aに沿って線条(両端を有する直線条や、両端を有する曲線条や、無端の環条や、それらを組み合わせた線条)に連続して延設された加工縁4aを有している。加熱側可動体4の加工縁4aにおいては、加熱体5の下端部に形成された加熱縁7と、加熱側押え体6の下端部に形成された加熱側押え縁8とが、脆性板3の表面3aに沿って幅方向Yで並び、互いに沿って線条に連続して延設されている。加熱体5の下端部には加熱縁7から脆性板3の表面3aに対し上方に離間するように傾斜する加熱側輻射面9が形成されている。加熱側押え体6の下端部には加熱側押え縁8から脆性板3の表面3aに対し上方に離間するように傾斜する傾斜面10が形成されている。
【0023】
加工台1の裏面側には冷却側可動体11が加工孔1aに沿って配置されている。冷却側可動体11においては、冷却装置(図示せず)及び振動発生装置(図示せず)に接続された冷却体12と、冷却体12に対し加工台1の裏面に沿って並ぶ冷却側押え体13とが一体的に取着され、冷却体12が加熱側押え体6に対する反対側で脆性板3を介して配置されているとともに、冷却側押え体13が加熱体5に対する反対側で脆性板3を介して配置されている。冷却側可動体11において、脆性板3の表裏両面3a,3bのうち裏面3bに面する上端部は、上向きのV状に形成され、裏面3bに沿う幅方向Yの中央部で加工孔1aに沿って線条に連続して延設された加工縁11aを有している。冷却側可動体11の加工縁11aにおいては、冷却体12の上端部に形成された冷却縁14と、冷却側押え体13の上端部に形成された冷却側押え縁15とが、脆性板3の裏面3bに沿って幅方向Yで並び、互いに沿って線条に連続して延設されている。冷却体12の上端部には冷却縁14から脆性板3の裏面3bに対し下方に離間するように傾斜する冷却側輻射面16が形成されている。冷却側押え体13の上端部には冷却側押え縁15から脆性板3の裏面3bに対し下方に離間するように傾斜する傾斜面17が形成されている。
【0024】
加熱側可動体4において、加熱縁7と加熱側押え縁8との間で側面18,19が相対向している。冷却側可動体11において、冷却縁14と冷却側押え縁15との間で側面20,21が相対向している。加熱縁7の側面18の下端部18aを通って脆性板3の厚み方向Zに延びる想定線L7と、冷却側押え縁15の側面21の上端部21aを通って脆性板3の厚み方向Zに延びる想定線L15とは、互いに一致している。加熱側押え縁8の側面19の下端部19aを通って脆性板3の厚み方向Zに延びる想定線L8と、冷却縁14の側面20の上端部20aを通って脆性板3の厚み方向Zに延びる想定線L14とは、互いに一致している。想定線L7及び想定線L15と想定線L8及び想定線L14とは脆性板3の表面3a及び裏面3bに沿うギャップGを空けて互いに離間している。ちなみに、想定線L7と想定線L14との間のギャップを第一のギャップGとし、また、想定線L7と想定線L8との間のギャップや、想定線L15と想定線L14との間のギャップをそれぞれ第二のギャップGとしている。
【0025】
次に、脆性板3の熱割断作用を説明する。
例えば、脆性板3の熱割断形態が両端を有する直線条の場合には、加工孔1aの幅方向Yの中央部に対応する直線条の切断予定線が交差する脆性板3の表面3aの端縁などに予備亀裂22が形成されている。加工孔1aの幅方向Yの中央部に対応して、加熱側可動体4の加工縁4a(加熱縁7及び加熱側押え縁8)を脆性板3の表面3aに対し所定圧力で当てがうとともに、加工孔1aに通した冷却側可動体11の加工縁11a(冷却縁14及び冷却側押え縁15)を脆性板3の裏面3bに対し所定圧力で当てがった状態では、直線条の切断予定線及び予備亀裂22がギャップGの幅方向Yの中央部に位置している。加熱側可動体4の加熱側輻射面9及び傾斜面10と脆性板3の表面3aとの間、冷却側可動体11の冷却側輻射面16及び傾斜面17と脆性板3の裏面3bとの間には、それぞれ隙間Sが生じる。脆性板3は室温程度に設定されている。
【0026】
加熱縁7が冷却側押え縁15の真上域で脆性板3の表面3aを加熱するとともに、冷却縁14が加熱側押え縁8の真下域で脆性板3の裏面3bを冷却すると、表面3a側と裏面3b側との間の温度差により、表面3a側の膨張と裏面3b側の圧縮とによる熱応力(引張応力や圧縮応力)が、加熱縁7特にその側面18の下端部18aや、冷却縁14特にその側面20の上端部20aばかりでなく、加熱側押え縁8特にその側面19の下端部19aや、冷却側押え縁15特にその側面21の上端部21aに集中して、ギャップGに開放された脆性板3の表面3a及び裏面3bで生じる。その熱応力を原因として発生する曲げモーメントにより、脆性板3がギャップGで表面3a側から裏面3b側へ向けて熱割断される。最大の熱応力は、ギャップGの幅方向Yのほぼ中央部で生じ、表面3a側と裏面3b側との間の温度差が大きいほど大きくなる。例えば、極薄ガラス板である脆性板3の表面3aと裏面3bとの間の厚みWを0.03mm≦W≦1.0mm程度に設定する場合、ギャップGの幅方向Yの寸法を0.001mm≦G≦1.0mm程度に設定するとともに、加熱温度と冷却温度との間の温度差Tを200度≦T≦500度程度に設定することができる。なお、ガラス板を熱割断する際には圧縮力が引張力に対し弱い特性を生かすことができる。
【0027】
その熱割断の際、脆性板3の予備亀裂22は亀裂の発生を促進させる。また、脆性板3に伝達される超音波振動は、振動荷重負荷による高歪み速度のせん断変形により割断面を平滑にする。さらに、加熱側輻射面9は隙間Sを介して脆性板3の表面3aの温度上昇を助長するとともに、冷却側輻射面16は隙間Sを介して脆性板3の裏面3bの温度下降を助長する。
【0028】
ちなみに、脆性板3の材質や厚みや切断長さなどの各種条件に応じて、加熱縁7の加熱温度及び加熱面積や、冷却縁14の冷却温度及び冷却面積や、ギャップGの幅方向Yの寸法や、予備亀裂22及び超音波振動の有無などを設定することができる。
【0029】
なお、脆性板3の熱割断形態が、両端を有する曲線条や、無端の環条や、それらを組み合わせた線条である場合も同様である。
次に、第2実施形態にかかる脆性板の熱割断方法について第1実施形態との相違点を中心に図2を参照して説明する。
【0030】
加熱側可動体4の加工縁4aで加熱側押え縁8が省略されて加熱縁7のみが設けられ、冷却側可動体11の加工縁11aで冷却側押え縁15が省略されて冷却縁14のみが設けられている。加熱縁7の側面18の下端部18aを通って脆性板3の厚み方向Zに延びる想定線L7と、冷却縁14の側面20の上端部20aを通って脆性板3の厚み方向Zに延びる想定線L14とは、脆性板3の表面3a及び裏面3bに沿うギャップGを空けて互いに離間している。
【0031】
加熱縁7が脆性板3の表面3aを加熱するとともに、冷却縁14が脆性板3の裏面3bを冷却すると、表面3a側と裏面3b側との間の温度差により、表面3a側の膨張と裏面3bの圧縮とによる熱応力(引張応力や圧縮応力)が、加熱縁7特にその側面18の下端部18aや、冷却縁14特にその側面20の上端部20aに集中して、ギャップGに開放された脆性板3の表面3a及び裏面3bで生じる。その熱応力を原因として発生する曲げモーメントにより、脆性板3がギャップGで表面3a側から裏面3b側へ向けて熱割断される。
【0032】
次に、第3実施形態にかかる脆性板の熱割断方法について第1実施形態との相違点を中心に図3を参照して説明する。
冷却体12が加熱体5に対する反対側で脆性板3を介して配置されているとともに、冷却側押え体13が加熱側押え体6に対する反対側で脆性板3を介して配置されている。加熱縁7の側面18の下端部18aを通って脆性板3の厚み方向Zに延びる想定線L7と、冷却縁14の側面20の上端部20aを通って脆性板3の厚み方向Zに延びる想定線L14とは、互いに一致している。加熱側押え縁8の側面19の下端部19aを通って脆性板3の厚み方向Zに延びる想定線L8と、冷却側押え縁15の側面21の上端部21aを通って脆性板3の厚み方向Zに延びる想定線L15とは、互いに一致している。想定線L7及び想定線L8と想定線L14及び想定線L15とは脆性板3の表面3a及び裏面3bに沿うギャップGを空けて互いに離間している。
【0033】
加熱縁7が冷却縁14の真上域で脆性板3の表面3aを加熱するとともに、冷却縁14が加熱縁7の真下域で脆性板3の裏面3bを冷却すると、表面3a側と裏面3b側との間の温度差により、表面3a側の膨張と裏面3bの圧縮とによる熱応力(引張応力や圧縮応力)が、加熱縁7特にその側面18の下端部18aや、冷却縁14特にその側面20の上端部20aばかりでなく、加熱側押え縁8特にその側面19の下端部19aや、冷却側押え縁15特にその側面21の上端部21aに集中して、ギャップGに開放された脆性板3の表面3a及び裏面3bで生じる。その熱応力を原因として発生する曲げモーメントにより、脆性板3がギャップGで表面3a側から裏面3b側へ向けて熱割断される。
【0034】
次に、第4実施形態にかかる脆性板の熱割断方法について第2実施形態との相違点を中心に図4を参照して説明する。
加熱縁7の側面18の下端部18aを通って脆性板3の厚み方向Zに延びる想定線L7と、冷却縁14の側面20の上端部20aを通って脆性板3の厚み方向Zに延びる想定線L14とが、互いに一致して、脆性板3の表面3a及び裏面3bに沿うギャップGは生じていない。加熱縁7を脆性板3の厚み方向Zで冷却縁14の真上域に配置するとともに、冷却縁14を脆性板3の厚み方向Zで加熱縁7の真下域に配置することができる。
【0035】
加熱縁7が脆性板3の表面3aを加熱するとともに、冷却縁14が脆性板3の裏面3bを冷却すると、表面3a側と裏面3b側との間の温度差により、表面3a側の膨張と裏面3bの圧縮とによる熱応力(引張応力や圧縮応力)が、加熱縁7特にその側面18の下端部18aや、冷却縁14特にその側面20の上端部20aに集中して、脆性板3の表面3a及び裏面3bで生じる。その熱応力を原因として発生する曲げモーメントにより、脆性板3が表面3a側から裏面3b側へ向けて熱割断される。
【0036】
第1〜4実施形態においては、例えば下記の方法により、加熱側可動体4及び冷却側可動体11を脆性板3に当てがうことができる。
・ 加熱側可動体4の加工縁4aを脆性板3の表面3aに当てがう加熱初期タイミングと、冷却側可動体11の加工縁11aを脆性板3の裏面3bに当てがう冷却初期タイミングとのうち、一方を他方より遅らせるか、または、その加熱初期タイミングと冷却初期タイミングとを同じにして、熱割断を行う。
【0037】
・ 加熱側可動体4の加工縁4aと冷却側可動体11の加工縁11aとのうち、一方を脆性板3に当てがった状態で、他方を脆性板3に接近させて脆性板3に当てがうことにより、熱割断を行う。
【0038】
・ 加熱側可動体4の加工縁4a及び冷却側可動体11の加工縁11aを脆性板3に当てがった状態で、加工縁4aと加工縁11aとのうち、一方を他方に沿って脆性板3で摺動させることにより、他方に対する一方の当接位置を変化させながら熱割断を行う。
【0039】
・ 加熱側可動体4の加工縁4a及び冷却側可動体11の加工縁11aを脆性板3に当てがった状態で、加工縁4aと加工縁11aとのうち、一方を他方に対し傾動させることにより、他方に対する一方の当接面積を次第に大きくしながら熱割断を行う。
【0040】
本実施形態は下記の効果を有する。
(1) 加熱縁7を有する加熱体5を採用したので、形態を維持することができる加熱縁7から平均的に発生する熱により、切断縁の両側に生じる熱応力(引張応力や圧縮応力)を平均化して安定させることができる。従って、脆性板3に対しレーザー光により切断縁に沿う熱衝撃を与えて脆性板を熱割断する従来の方法と比較して、切断縁の直進性を高めることができる。
【0041】
(2) 冷却縁14を有する冷却体12を採用したので、形態を維持することができる冷却縁14から平均的に発生する熱により、脆性板3における表面3a側と裏面3b側との間の温度差を大きくし、脆性板3に曲げモーメントを発生させ易くすることができる。従って、切断縁の直進性をより一層高めることができる。
【0042】
(3) 脆性破壊の原理を活用して平滑な割断面を得ることができるとともに、切断粉の発生がなく、ドライ加工である。従って、脆性板をダイヤモンドカッターによる傷入れ加工で切断する従来の方法や、脆性板をダイヤモンド砥石により切断する従来の方法や、脆性板をレーザー光によるアブレーション加工で切断する従来の方法と比較して、加工後の後処理を必要としない。
【0043】
(4) 加熱縁7と冷却縁14と加熱側押え縁8と冷却側押え縁15との間で相互に生じさせたギャップGにより、加熱縁7や冷却縁14や押え縁8,15やギャップGに沿って脆性板3に応力集中が発生し易くなって、切断縁の直進性をより一層高めることができる。
【0044】
(5) 脆性板3に当てがった押え縁8,15により、加熱縁7及び冷却縁14ばかりでなく、押え縁8,15に沿って脆性板3に応力集中が発生し易くなって、切断縁の直進性をより一層高めることができる。
【0045】
(6) 加熱縁7及び冷却縁14を直線条や曲線条や環条やそれらを組み合わせた線条に連続して延設したので、切断縁が加熱縁7及び冷却縁14に合わせて直線条や曲線条や環条やそれらを組み合わせた線条をなし、脆性板3を各種の形態で熱割断することができる。
【0046】
(7) 予備亀裂22により、脆性板3の熱割断を促進させることができる。
(8) 加熱縁7及び冷却縁14に伝達される超音波振動により、振動荷重負荷による高歪み速度のせん断変形で平滑な割断面を得ることができる。
【0047】
(9) 加熱体5の加熱側輻射面9により脆性板3の表面3a側の温度上昇を助長するとともに、冷却体12の冷却側輻射面16により脆性板3の裏面3b側の温度下降を助長して、脆性板3における表面3a側と裏面3b側との間の温度差を大きくし、脆性板3に曲げモーメントを発生させ易くすることができる。
【0048】
前記実施形態以外にも例えば下記のように構成してもよい。
・ 第1実施形態または第3実施形態において、加熱側押え縁8と冷却側押え縁15とのうち一方を省略することができる。
【0049】
・ 第1〜4実施形態において、加熱側可動体4を加工台1の裏面側に配置し、冷却側可動体11を加工台1の表面側に配置することができる。
・ 第1実施形態の冷却側可動体11において、冷却体12と冷却側押え体13との間に支持体を配置し、熱割断時にその支持体によりギャップGの幅方向Yの中央部で脆性板3の裏面3bを支えることができる。
【0050】
・ 第1実施形態の冷却側可動体11において、冷却体12に代えて冷却側押え体13を配置するとともに、両冷却側押え体13間に冷却体を配置し、熱割断時にその冷却体によりギャップGの幅方向Yの中央部で脆性板3の裏面3bを支えることができる。
【0051】
・ 第3実施形態の冷却側可動体11において、冷却体12に代えて加熱体を配置するとともに、その加熱体と冷却側押え体13との間に冷却体を配置し、熱割断時にその冷却体によりギャップGの幅方向Yの中央部で脆性板3の裏面3bを支えることができる。
【0052】
・ ガラス板以外に、サファイアやシリコンやSiCやGaAsなど、各種の材質や硬度を有する材料からなる脆性板3を熱割断することができる。
・ 予備亀裂22や超音波振動については省略してもよい。
【0053】
・ 加熱体5の加熱側輻射面9や冷却体12の冷却側輻射面16を省略してもよい。
・ 第1実施形態または第3実施形態において、加熱側可動体4の外周に円形状の加工縁4aを形成して加熱体5の外周に円形線状の加熱縁7を形成するとともに加熱側押え体6の外周に円形線状の加熱側押え縁8を形成し、また、冷却側可動体11の外周に円形状の加工縁11aを形成して冷却体12の外周に円形線状の冷却縁14を形成するとともに冷却側押え体13の外周に円形線状の冷却側押え縁15を形成する。この加熱側可動体4の加工縁4aを脆性板3の表面3aに当てがうとともに、この冷却側可動体11の加工縁11aを加熱側可動体4の加工縁4aの真下域で脆性板3の裏面3bに当てがった状態で、加熱側可動体4及び冷却側可動体11を同じ回転速度で切断予定線に沿って繰り返し往復運動させて脆性板3を熱割断する。その際、加工縁4aを脆性板3の表面3aに当てがった後に、加工縁11aを脆性板3の裏面3bに当てがうことができる。加熱側可動体4の加熱側押え体6及び冷却側可動体11の冷却側押え体13を省略した第2実施形態または第4実施形態も同様である。
【0054】
・ 第1実施形態または第3実施形態において、前述したように脆性板3を熱割断する前に脆性板3に予熱処理を行う。例えば、脆性板3の表面3aを予め加熱した後に、脆性板3の裏面3bに対し切断予定線に沿って液体窒素または冷媒流体(冷媒液や冷媒気体)を噴射する。その場合、冷却側可動体11における冷却体12と冷却側押え体13との間の隙間を噴射通路に利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
3…脆性板、3a…表面(一方の面)、3b…裏面(他方の面)、7…加熱縁、8…加熱側押え縁、14…冷却縁、15…冷却側押え縁、Z…脆性板の厚み方向、G…ギャップ。
図1
図2
図3
図4