特許第6362211号(P6362211)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362211
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】建物用シール剤
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/10 20060101AFI20180712BHJP
   E04B 1/66 20060101ALI20180712BHJP
   A01N 25/08 20060101ALI20180712BHJP
   A01N 25/10 20060101ALI20180712BHJP
   A01N 51/00 20060101ALI20180712BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   C09K3/10 Z
   E04B1/66 Z
   A01N25/08
   A01N25/10
   A01N51/00
   A01P7/04
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-119917(P2014-119917)
(22)【出願日】2014年6月10日
(65)【公開番号】特開2015-231969(P2015-231969A)
(43)【公開日】2015年12月24日
【審査請求日】2017年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】593151734
【氏名又は名称】ダイナガ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】599010141
【氏名又は名称】関西パテ化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】玉井 修一
(72)【発明者】
【氏名】新里 誠一
(72)【発明者】
【氏名】川上 基
【審査官】 阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−247850(JP,A)
【文献】 特開2001−2503(JP,A)
【文献】 特公昭61−29388(JP,B1)
【文献】 特開平3−232781(JP,A)
【文献】 特開2009−96843(JP,A)
【文献】 特開2004−197466(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3024879(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 25/08
A01N 25/10
A01N 51/00
A01P 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルを備えたチューブに充填されて押し出して使用されるか、又は、筒状のカートリッジに充填されてガンにて押し出して使用されるシール剤であって、
中空構造又は多孔質構造の無機材微粉を骨材として、この骨材と親水性の有機バインダーとを混合し、更に、ネオニコチノイド系防蟻剤の粉末を添加している構成であり、
前記骨材は、粒径40〜60μmとなるように粒度調整されていると共に、配合割合が湿潤時には30〜40wt%で乾燥時には65〜75wt%となるように設定されている一方、
前記防蟻剤の粉末は、前記骨材よりも小さい粒径の微粉で構成されている、
建物用シール剤。
【請求項2】
前記防蟻剤として、濃度が600〜1000ppmのチアメトキサムが使用されている
請求項1に記載した建物用シール剤。
【請求項3】
前記有機バインダーはアクリルエマルジョン樹脂である、
請求項1又は2に記載した建物用シール剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、建物やその周辺の構造物の隙間を埋めるのに使用されるシール剤に関するものであり、詳しくは、ノズルを備えたチューブに充填されて押し出して使用されるか、又は、筒状のカートリッジに充填されてガンにて押し出して使用されるシール剤に関するものである。なお、本願発明のシール剤は、パテ、コーキング剤、目地剤、充填剤と呼ぶことも可能である。
【背景技術】
【0002】
建物用のシール剤は、一般に、骨材としての体質顔料とバインダーとしての水溶性エマルジョン樹脂とを主要成分としているが、このものは、図4(B)に示すように、施工してから時間の経過とともに樹脂が収縮して、隙間や割れが生じるいわゆる肉痩せの現象が発生しやすい(図4において、符号A,Bは建物の構成部材を示し、符号Cはシール剤を示す。)。
【0003】
そこで、肉痩せを防止する方策が考えられており、その例として特許文献1には、骨材としてシリカバルーン、シラスバルーン、パーライトのような中空軽量骨材を使用し、更に、メチルセルローズを配合することが開示されている。また、特許文献2には、骨材としてガラス質バルーンを使用し、更に、界面活性剤を添加することが開示されている。
【0004】
ガラスバルーンのような無機材の中空軽量骨材を使用すると、骨材同士が当接又は近接した状態になることから、樹脂が収縮してもシール剤の嵩は殆ど目減りせず、その結果、肉痩せを防止できるものである。また、中空軽量骨材を使用すると、シール剤の軽量化にも貢献できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭61−29388号公報
【特許文献2】特開平03−232781公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、シール剤は、木造住宅においても基礎の補修や土台の補修などに多く使用されており、湿度が高くなる場所で使用されることも多い。このため、シール剤が使用されている隙間にシロアリが入り込むことがある。そして図4(B)のようにシール剤Cに肉痩せ現象が発生していると、シロアリDは隙間Eから簡単に入り込んでしまう。
【0007】
これに対して、特許文献1,2のようにシール剤にガラスバルーン等を使用して肉痩せを抑制していると、一見するとシロアリの侵入が阻止されると思われるが、実際には、シール剤もシロアリの食害を受けて、シロアリが部材間の隙間Eに侵入して、その奥にある木材が食害を受けることがある。
【0008】
つまり、シール剤自体はシロアリのエサにはならないが、シール剤は建物の構成部材に比べて柔らかいことから、シロアリはシール剤をかじりながら侵入していくのである。換言すると、シロアリは、木材にアクセスするために、シール剤の部分を蟻道にして侵入して行くのである。
【0009】
本願発明はこのような現状に鑑み成されたものであり、シール機能と防蟻機能とに優れたシール剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は、ノズルを備えたチューブに充填されて押し出して使用されるか、又は、筒状のカートリッジに充填されてガンにて押し出して使用されるシール剤を対象にしており、このシール剤は、
中空構造又は多孔質構造の無機材微粉を骨材として、この骨材と親水性の有機バインダーとを混合し、更に、ネオニコチノイド系防蟻剤の粉末を添加している
という基本構成である。
【0011】
そして、上記基本構成において、前記骨材は、粒径40〜60μmとなるように粒度調整されていると共に、配合割合が湿潤時には30〜40wt%で乾燥時には65〜75wt%となるように設定されている一方、前記防蟻剤の粉末は、前記骨材よりも小さい粒径の微粉で構成されている。
骨材の配合割合は、特に、湿潤時には35wt%程度で乾燥時には70wt%となるように設定するのが好ましい。有機バインダーの割合は、湿潤時に25〜30wt%とするのが好ましく、特に、30wt%程度が好適である。有機バインダーは、通常のシール剤と同様に親水性エマルジョン樹脂が好適であり、この場合、水も添加される。本願発明は、顔料等の他の助剤を添加することを妨げるものではない。
【0012】
骨材としては、ガラスバルーン、シラスバルーン、パーライト、フライアッシュ、タルク、塩化カルシウムなどを使用できる。品質の安定性と強度と軽量化という点から見ると、人造のガラスバルーンとフライアッシュが優れていると云える。多孔質構造の無機材も好適であるが、この場合、多孔質構造には、多数の気孔が独立したものと、多数の気孔が連続したものとの両方を含んでいる。骨材は単一種類を使用してもよいし、複数種類を混合して使用してもよい。中空構造のものと多孔質構造のものとを併用することも可能である。
【0013】
オニコチノイド系防蟻剤としては、チアメトキサムやイミダクトプリドやクロチアニジンが挙げられる。これらの防蟻剤は、1種類のみ添加してもよいし、複数種類を混合して添加してもよい。請求項2の発明では、前記防蟻剤として、濃度が600〜1000ppmのチアメトキサムが使用されている
【0014】
有機バインダーは各種の組成物を使用できるが、請求項3では、アクリルエマルジョン樹脂を使用している
【発明の効果】
【0015】
本願発明では、シール剤を構成する骨材が互いに当接又は近接した状態になることで、施工後に有機バインダーが収縮しても嵩の低下は殆どなく、従って、肉痩せを防止して高いシール性を維持できる。また、骨材はバルーン構造又は多孔質構造であるため、軽量化にも貢献している。そして、シール剤には防蟻剤が添加されているため、シロアリがシール剤に侵入することを阻止できるが、防蟻剤はネオニコチノイド系であるため、人畜に対して高い安全性を確保しつつ、高い防蟻効果を発揮する。
【0016】
つまり、シール剤は肉痩せせずに建物等の隙間はしっかりとシールされているため、シロアリが建物等の隙間に侵入するためにはシール剤を食べねばならないが、シール剤には防蟻剤が添加されているためシロアリは食べ進むことはできず、従って、シロアリの侵入が阻止されるのである。そして、チアメトキサム等のネオニコチノイド系防蟻剤は遅効性であり、防蟻剤を体内に取り込んだり身体に付着させたりしたシロアリが帰巣することで、巣に生息しているシロアリも駆除できる。
また、本願発明では、防蟻剤は骨材よりも小さいため、防蟻剤が全体に分散して、低密度(低比重)を確保しつつシロアリへの付着性を向上できる利点がある。また、製造工程での攪拌に際して、防蟻剤の分散性もよくなると云える。
【0017】
チアメトキサムは、人畜に対する高い安全性と高い防蟻性能とに特に優れているので、請求項2のように防蟻剤としてチアメトキサムを使用するのは好適である。チアメトキサムを使用する場合は、濃度は600〜1000ppmが好ましい。過少であると効果が乏しいが、過剰に使用しても効果に大きな違いはない。防蟻効果とコストとの関係で見ると、特に、500〜800ppmが好ましい。
【0018】
有機バインダーは種々のものを使用できるが、請求項3のように従来から使用されているアクリルエマルジョン樹脂を採用すると、信頼性に優れている。乾燥後に塗装を施すことも可能である。
【0019】
なお、本願発明のシール剤は、防蟻性を必要としない場所への使用も可能である。すなわち、単なるシール材としての使用も可能である。従って、例えばコンクリートの補修と木造住宅の補修とのいずれも使用できる。このように、用途に合わせて異なる種類を用意しておく必要はないため、管理や施工の手間を軽減できる利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】シール剤の模式図である。
図2】包装の一例を示す図である。
図3】施工状態の一例を示す図である。
図4】従来のシール剤の施工後の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本願発明の実施形態を説明する。図1はシール剤1の模式図であり、この図に示すように、シール剤1は、骨材2と有機バインダー(固形の樹脂成分)3とを主要材料としており、防蟻成分としてチアメトキサム4を添加している。図面では表示できないが、色を付けるための顔料も含んでいる。
【0022】
骨材2には、微細なガラス球を焼成して製造したガラスバルーンを使用しており、おおよそ40〜60μmに粒度調整されている。この場合、骨材2の全体又は大部分が40〜60μmに粒度調整されている。具体的には、60μmの篩と40μmとの篩に掛けることで粒度調整できる。人造のガラスバルーンは強度に優れているので、篩分け時や混合時に破損しない利点がある。
【0023】
有機バインダー3は、アクリルエマルジョン樹脂を使用している。正確には、アクリル樹脂を水に懸濁させたエマルジョンであり、従って、乾燥前は樹脂の成分と水とからなっている。チアメトキサム4及び顔料の含有割合はごく僅かであるので、重量の割合の点から見ると、実質的には、シール剤1は、水を除いて骨材2と有機バインダー3とで構成されている。湿潤状態で有機バインダー3に占める樹脂成分の割合は、35〜40wt%程度である。
【0024】
乾燥時での割合は、骨材2が約70wt%で有機バインダー(アクリル樹脂)3が約30wt%になっている。従って、湿潤時では、おおよそ、骨材70重量部、アクリルエマルジョン樹脂80重量部、水50重量部になっている。チアメトキサム4の添加量は、乾燥時で1000ppm程度とした。
【0025】
シール剤1の製法は従来と同様であり、微粉状態の骨材2と有機バインダー3と水とを容器に入れて混練することで、製造される。水は予め適量を有機バインダー3に混ぜていてもよいし、随時、水を添加しながら攪拌混合してもよい。チアメトキサム4は粉末であり、予め骨材2に混合して攪拌しておいてもよいし、予め有機バインダー3又は水に溶かし込んでいてもよい。顔料は、有機バインダー3に溶かし込んでおくのが一般的である。
【0026】
シール剤1は、図2では、細いノズル5を有するチューブ6に包装している。このようにチューブ方式であるため、図3に示すように、狭い隙間にも容易に注入できる。樹脂製や紙管製の筒状のカートリッジに包装して、専用のガンで施工場所に注入することも可能であるが、例えば床下や天井裏、或いは壁と壁との間の空間部での作業では、ガンを使用しづらい場合や使用できない場合がある。これに対して図2,3のチューブ6を作用すると、狭い場所での施工も容易に行える利点がある。
【0027】
シール剤1を施工場所に注入してから時間が経過すると、水が蒸発して固形の骨材2と樹脂成分のみが残る。すわなち、有機バインダー3が硬化する。これにより、部材A,B間の隙間Eがしっかりとシールされる。
【0028】
シール剤1の体積の相当量を無機材であるガラスバルーンより成る骨材2が占めているが、隣り合った骨材2は互いに当接したり近接したりしているため、有機バインダー3が時間の経過と共に収縮してもシール剤1の見かけの大きさには殆ど変化はなく、このため、肉痩せの現象は全く又は殆ど生じない。従って、雨水等に対する高いシール性を維持できる共に、木造建築物に使用した場合は、部材A,B間へのシロアリの侵入も防止できる。
【0029】
そして、木造の建物の場合、シロアリが蟻道を造るためにシール剤1を食べることがあるが、シール剤1には防蟻剤としてチアメトキサム4が添加されているため、シロアリはシール剤1を食べ進むことはできない。そして、チアメトキサム4は遅効性であるため、シール剤1を齧ったシロアリは、チアメトキサム4を体内に取り込んだり身体に付着させたりして帰巣し、すると、巣に生息していたシロアリにチアメトキサム4が転移し、これにより、巣においてもシロアリを駆除することができる。
【0030】
さて、骨材2の粒径が例えば100μm以上というように大き過ぎると、骨材2が邪魔になってシロアリに対するチアメトキサム4の接触性(付着性)が低下すると共に、骨材2の強度が小さくなってシール剤1の製造工程で破損しやすくなる問題がある。さりとて、骨材2が例えば20μmといったように過度に微細化すると、骨材2の重量が増えて中空骨材を使用する意義(軽量化・肉痩せ抑制)が失われる。
【0031】
これに対して、本実施形態のように、チアメトキサム4より大きい40〜60μmに調整しておくと、チアメトキサム4が全体に分散し、低密度(低比重)を確保し、かつ、シロアリへの付着性も向上できる利点がある。また、製造工程での攪拌に際して、チアメトキサム4の分散性もよくなると云える。
【0032】
本願発明は、上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本願発明は、シール剤に適用できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0034】
1 シール剤
2 骨材(ガラスバルーン)
3 有機バインダー(アクリルエマルジョン樹脂)
4 チアメトキサム(防蟻剤)
5 ノズル
6 チューブ
図1
図2
図3
図4