(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362219
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】ガスの冷却方法及び装置
(51)【国際特許分類】
F28C 3/02 20060101AFI20180712BHJP
C04B 7/60 20060101ALI20180712BHJP
C04B 7/44 20060101ALI20180712BHJP
B01F 3/02 20060101ALI20180712BHJP
F27D 17/00 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
F28C3/02
C04B7/60ZAB
C04B7/44
B01F3/02
F27D17/00 104D
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-45624(P2015-45624)
(22)【出願日】2015年3月9日
(65)【公開番号】特開2016-166684(P2016-166684A)
(43)【公開日】2016年9月15日
【審査請求日】2017年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】佐野 雄哉
(72)【発明者】
【氏名】和田 肇
【審査官】
西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】
特許第4744299(JP,B2)
【文献】
特開2011−056434(JP,A)
【文献】
特開平06−170197(JP,A)
【文献】
特開昭59−039331(JP,A)
【文献】
特開平11−060297(JP,A)
【文献】
特開平11−316015(JP,A)
【文献】
特公平4−74635(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28C 3/02
B01F 3/02
C04B 7/44
C04B 7/60
F27D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温のガスの流れ方向に対して実質的に垂直な同一面上に、低温のガスを前記高温ガスの流れに吐出するための吐出口を複数設け、
前記高温ガスの流れにおける前記複数の吐出口が存在する同一面の近傍の領域を複数の独立した流路に分割し、
該分割した流路の各々に前記複数の吐出口の各々から前記低温ガスを吐出して前記高温ガスを冷却することを特徴とするガスの冷却方法。
【請求項2】
前記複数の吐出口を前記高温ガス流れに沿って複数段設け、
前記高温ガスの最下流側における前記複数の吐出口の近傍の領域のみを複数の独立した流路に分割することを特徴とする請求項1に記載のガスの冷却方法。
【請求項3】
前記高温ガスは、セメントキルンの窯尻からプレヒータの最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路より抽気されるセメントキルン排ガスの一部であることを特徴とする請求項1又は2に記載のガスの冷却方法。
【請求項4】
高温のガスが流れる流路と、該高温ガスの流れ方向に対して実質的に垂直な同一面上に、低温のガスを前記高温ガスの流れに吐出するための複数の吐出口と、
前記高温ガスの流れにおける前記複数の吐出口が存在する同一面の近傍の領域を複数の独立した流路に分割する分割板とを備え、
該分割板によって分割された流路の各々に前記複数の吐出口の各々から前記低温ガスを吐出して前記高温ガスを冷却することを特徴とするガスの冷却装置。
【請求項5】
前記分割板の前記流路の軸線方向の長さは、前記吐出口の開口径の1倍以上10倍以下であることを特徴とする請求項4に記載のガスの冷却装置。
【請求項6】
前記複数の吐出口は、前記高温ガス流れに沿って複数段配置され、
前記分割板は、前記高温ガスの最下流側における前記複数の吐出口の近傍にのみ配置されることを特徴とする請求項4又は5に記載のガスの冷却装置。
【請求項7】
セメントキルンの窯尻からプレヒータの最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路からセメントキルン排ガスの一部を冷却しながら抽気するプローブの下流側に配置されることを特徴とする請求項4、5又は6に記載のガスの冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスの冷却方法及び装置に関し、特に、セメントキルンの窯尻等から燃焼ガスの一部を抽気して塩素を除去するための塩素バイパスシステム等に使用されるガスの冷却方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セメント製造設備におけるプレヒーターの閉塞等の問題を引き起こす原因となる塩素を除去するために塩素バイパスシステムが用いられている。また、近年の塩素含有リサイクル資源の活用量の増加に伴い、セメントキルンに持ち込まれる塩素の量が増加し、塩素バイパスシステムの能力の増大が不可避となっている。
【0003】
この塩素バイパスシステムは、セメントキルンの入口フード付近より燃焼ガスの一部を抽気するため、入口フード付近にプローブを突設し、プローブの後段に抽気ガス処理設備が設けられている。プローブの先端は、入口フード付近で1000℃程度の高温に晒されるため、プローブを熱損傷から保護する必要がある。また、入口フード部におけるプローブの設置スペースに制約があるため、プローブの小型化が望まれる。
【0004】
そこで、特許文献1には、高温の燃焼ガスが流れる内筒と、内筒を囲繞する外筒と、内筒に穿設された低温のガスの吐出口と、内筒と外筒との間に低温のガスを供給し、吐出口から低温のガスを、高温の燃焼ガスの吸引方向に対して直角中心方向に吐出させる低温ガス供給手段とを備える燃焼ガス抽気プローブが提案されている。
【0005】
上記塩素バイパスシステムでは、プローブで抽気ガスを直接350℃程度以下に急冷することで、抽気ガス中の塩素等の揮発性成分をバイパスダストの微粉部分に効率よく濃縮させている。しかし、近年の塩素バイパスシステムの大型化に伴うプローブの大型化を避けるため、特許文献2に記載のように、2段階の直接冷却システムを採用し、プローブで抽気ガスを450℃〜550℃に冷却した後、2段目で350℃程度まで冷却することも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4744299号公報
【特許文献2】特開2011−056434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記塩素バイパスシステムの2段目における抽気ガスの冷却においても、上記特許文献1に記載の高い塩素除去能力を有する冷却方法を適用することができるが、抽気ガスに対して相対的に低温ガスの量が少ないことと、圧損の増加を抑制するために抽気ガスの流路径を大きくしているため、冷却能力が低下する傾向にあった。
【0008】
一方、塩素バイパスシステムの能力を増強するにあたり、設備コストを低く抑えるため、プローブや2段階の直接冷却によって抽気ガスを冷却した後、抽気ガス処理設備を分岐させ、段階的に分岐系統を増設することで対応している。そのため、直接冷却後の抽気ガスは各々の分岐系統で固気分離処理されるが、設備保護の観点からもすべての分岐系統において抽気ガスを350℃程度以下になるように冷却風量を制御している。
【0009】
しかし、上記冷却能力の低下により、直接冷却風量が増大する傾向にあった。そのため、抽気ガス量が低下したり、これを補うためにファンを増速した場合は塩素バイパス排ガス量が増大し、排ガスをセメントキルンに付設されるプレヒータに戻した場合の熱損失が増大するという問題があった。これを回避するため、分岐系統の各々における抽気ガス温度を制御しながら低温ガスを吐出させることも考えられるが、刻々と変化する燃焼ガスの偏流に対応して低温ガス量を制御するシステム等が必要となり、設備コスト及び運転コストの増大に繋がる。
【0010】
そこで、本発明は、上記従来技術における問題点に鑑みてなされたものであって、低コストで効率よくガスを冷却する方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、ガスの冷却方法であって、高温のガスの流れ方向に対して実質的に垂直な同一面上に、低温のガスを前記高温ガスの流れに吐出するための吐出口を複数設け、前記高温ガスの流れにおける前記複数の吐出口が存在する同一面の近傍の領域を複数の独立した流路に分割し、該分割した流路の各々に前記複数の吐出口の各々から前記低温ガスを吐出して前記高温ガスを冷却することを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、分割して流路径を小さくした各々に低温ガスを吐出することにより、分割した流路を流れる各々の高温ガスとの混合性が改善されるため、効率よく高温ガスを冷却することができる。また、高温ガスは、分割流路で冷却された後、分割流路の下流側で合流するため、各分割流路間に温度差が生じても均一な温度となり、後段に冷却後のガスの処理系統が分岐している場合でも、各々の分岐系統毎に低温ガス量を制御する必要がなく、設備コスト等の上昇を回避できる。さらに、複数の吐出口が存在する同一面の近傍の領域のみを分割したため、圧力損失を最小限に抑えることができる。
【0013】
上記ガスの冷却方法において、前記複数の吐出口を前記高温ガス流れに沿って複数段設け、前記高温ガスの最下流側における前記複数の吐出口の近傍の領域のみを複数の独立した流路に分割することができる。これによって、簡易な構成により、最下流の複数の吐出口の後段に冷却後のガスの処理系統が分岐している場合等に対応することができる。
【0014】
上記ガスの冷却方法において、前記高温ガスは、セメントキルンの窯尻からプレヒータの最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路より抽気されるセメントキルン排ガスの一部とすることができ、塩素バイパスシステムにおいて、設備コスト及び運転コストの増加を最小限に抑えながら塩素バイパスシステムの能力を増強することができる。
【0015】
また、本発明は、ガスの冷却装置であって、高温のガスが流れる流路と、該高温ガスの流れ方向に対して実質的に垂直な同一面上に、低温のガスを前記高温ガスの流れに吐出するための複数の吐出口と、前記高温ガスの流れにおける前記複数の吐出口が存在する同一面の近傍の領域を複数の独立した流路に分割する分割板とを備え、該分割板によって分割された流路の各々に前記複数の吐出口の各々から前記低温ガスを吐出して前記高温ガスを冷却することを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、上記発明と同様に、効率よく高温ガスを冷却することができ、後段に冷却後のガスの処理系統が分岐している場合でも、各々の分岐系統毎に低温ガス量を制御する必要がなく、設備コスト等の上昇を回避でき、圧力損失を最小限に抑えることができる。
【0017】
上記ガスの冷却装置において、前記分割板の前記流路の軸線方向の長さを、前記吐出口の開口径の1倍以上10倍以下となるように構成することができる。これにより、冷却性能の向上と圧力損失の低減のバランスを最適化することができる。
【0018】
上記ガスの冷却装置において、前記複数の吐出口を、前記高温ガス流れに沿って複数段配置し、前記分割板を、前記高温ガスの最下流側における前記複数の吐出口の近傍にのみ配置することができ、簡易な構成により、最下流の複数の吐出口の後段に冷却後のガスの処理系統が分岐している場合等に対応することができる。
【0019】
上記ガスの冷却装置を、セメントキルンの窯尻からプレヒータの最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路からセメントキルン排ガスの一部を冷却しながら抽気するプローブの下流側に配置することができ、塩素バイパスシステムにおいて、設備コスト及び運転コストの増加を最小限に抑えながら塩素バイパスシステムの能力を増強することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、低コストで効率よくガスを冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係るガスの冷却装置を備える塩素バイパスシステムを示す全体構成図である。
【
図2】
図1に示す2次冷却器の全体構成を示す図であって、(a)は概略斜視図、(b)は(a)のA−A矢視図、(c)は(a)のB−B矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下では、本発明に係るガスの冷却方法及び装置を塩素バイパスシステムに適用した場合を例にとって説明する。
【0023】
図1は、本発明に係るガスの冷却装置を備える塩素バイパスシステムを示し、このシステム1は、セメントキルン2の窯尻からプレヒータの最下段サイクロン(不図示)に至るまでのキルン排ガス流路より、燃焼排ガスの一部(図中符号G)を抽気するプローブ3と、プローブ3内に冷風A1を供給して燃焼排ガスGを急冷する冷却ファン4と、抽気ガスG1をさらに冷却する2次冷却器5と、2次冷却ガスG2を粗粉D1と、塩素分が偏在している微粉D2を含む排ガスG3とに分離するサイクロン7と、排ガスG3を冷却する冷却器8と、排ガスG3に含まれる微粉D4を回収するバッグフィルタ10と、冷却器8で回収された微粉D3と上記微粉D4とを塩素バイパスダストD5として貯留するダストタンク11、排気ファン12等で構成される。ここで、2次冷却器5が本発明に係るガスの冷却装置に相当する。
【0024】
上記プローブ3、冷却ファン4、サイクロン7、冷却器8、バッグフィルタ10、ダストタンク11及び排気ファン12は、従来の塩素バイパスシステムに用いられている装置であって、これらについての詳細説明を省略する。
【0025】
2次冷却器5は、
図2に詳細に示すように、プローブ3の出口ダクト(内筒の出口)に接続され、流入口5b及び流出口5cを有する本体5aと、抽気ガス(高温ガス)G1の流れ方向に対して実質的に垂直な同一面5g(
図2(c)参照)上に、冷却ファン6(
図1参照)からの冷風(低温ガス)A2を抽気ガスG1の流れに吐出するための4つの吐出口5dと、4つの吐出口5dが存在する同一面5gの近傍の領域を独立した4つの流路に分割する、上面視十字状の4枚の分割板5eとを備え、分割板5eによって分割された4つの分割流路5fの各々に4つの吐出口5dの各々から冷風A2を吐出して抽気ガスG1を冷却する。
【0026】
分散板5eの流路の軸線方向の長さLは、吐出口5dの開口径Dの4倍程度になるように設定される。これにより、抽気ガスG1の冷却性能の向上と、抽気ガスG1による圧力損失の低減のバランスを最適化することができる。
【0027】
流出口5cが4つに分かれているのは、
図1に示すように、プローブ3からの抽気ガスG1の増加に伴って2次冷却ガスG2が増加し、2次冷却ガスG2を4系統のガス抽気排出設備(サイクロン7、冷却器8及びバグフィルタ10等、
図1では1系統のみ図示)で処理することを考慮したものであり、ガス抽気排出設備が1系統の場合には、流出口5cを分ける必要はない。
【0028】
次に、上記構成を有する塩素パイパスシステム1の動作について、
図1及び
図2を参照しながら説明する。
【0029】
プローブ3で抽気された燃焼排ガスGは、冷却ファン4からの冷風A1によって450〜550℃程度に冷却され、冷却後の抽気ガスG1は2次冷却器5に供給される。
【0030】
2次冷却器5において、流入口5bから流入した抽気ガスG1を、分割板5eで分割された4つの分割流路5fに導入し、この分割流路5fの各々に4つの吐出口5dの各々から冷風A2を吐出し、抽気ガスG1と冷風A2とを混合して抽気ガスG1を350℃程度に冷却する。
【0031】
上述のように、分割流路5fの各々に冷風A2を吐出することにより、各々の分割流路5fにおける抽気ガスG1に適量の冷風A2を混合することができると共に、抽気ガスG1と冷風A2とを効率よく混合することができるため、抽気ガスG1の冷却性能を向上させることができる。そのため、冷風A2の吐出量を少なく抑えることができると共に、熱量損失を抑えることができる。また、冷風A2が吐出される部分の近傍のみを分割したため、圧力損失を最小限に抑えることができる。
【0032】
2次冷却器5からの2次冷却ガスG2は、サイクロン7に導入され、粗粉D1と、塩素分が偏在している微粉D2を含む排ガスG3とに分離される。ここで、粗粉D1は塩素含有量が少ないため、セメント原料系へ戻すことができる。
【0033】
サイクロン7から排出された微粉D2を含む排ガスG3は、冷却器8に供給され、冷却ファン9からの冷風A3で間接的に冷却された後、冷却器8及びバッグフィルタ10で微粉D3、D4が回収される。回収された微粉D3、D4からなる塩素バイパスダストD5は、ダストタンク11に貯留される。一方、バッグフィルタ10の排ガスG4は、SOxを含むため、排気ファン12を介してセメントキルンに付設されたプレヒータ等に戻して脱硫する。
【0034】
尚、上記実施の形態においては、2次冷却器5としてガスの冷却装置を塩素バイパスシステムに適用した場合について説明したが、本発明は、高温ガスを低温ガスで直接冷却するものであれば他の用途にも適用可能である。
【0035】
また、2次冷却器5内を4つの分割流路5fに分割したが、高温ガスと低温ガスの混合冷却性及び低温ガスの供給配管の数等を考慮した設備点数を勘案すると、この4分割乃至3分割が好ましい。但し、2以上の任意の数の分割流路5fを形成することもでき、これに伴って2以上の任意の数の吐出口5dを設けることができる。
【0036】
上記
図2に示した2次冷却器5と、分割板5eを設けずに高温ガスの流路を分割しない2次冷却器について、4つの流出口5cにおけるガス温度を熱流体シミュレーションソフトを用いて計算したところ、表1に示すような結果となった。尚、抽気ガスは、温度1150℃、ガス量235Nm
3/min、低温ガスは、温度20℃、1次低温ガス量295Nm
3/min、2次低温ガス量420Nm
3/minの設定にて実施した。
【0038】
同表より、実施例の方が4つの流出口5cにおけるガス温度のばらつきが小さく、効率よく高温ガスが冷却されていることが判る。
【符号の説明】
【0039】
1 塩素パイパスシステム
2 セメントキルン
3 プローブ
4 冷却ファン
5 2次冷却器
5a 本体
5b 流入口
5c 流出口
5d 吐出口
5e 分割板
5f 分割流路
5g 同一面
6 冷却ファン
7 サイクロン
8 冷却器
9 冷却ファン
10 バッグフィルタ
11 ダストタンク
12 排気ファン
A1〜A3 冷風
D1 粗粉
D2 微粉
D3、D4 微粉
D5 塩素バイパスダスト
G 燃焼排ガスの一部
G1 抽気ガス
G2 2次冷却ガス
G3、G4 排ガス