特許第6362222号(P6362222)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362222
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】脱水微細繊維状セルロースの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08B 15/00 20060101AFI20180712BHJP
   C08B 16/00 20060101ALI20180712BHJP
   D21H 11/18 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   C08B15/00
   C08B16/00
   D21H11/18
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-548685(P2015-548685)
(86)(22)【出願日】2013年12月19日
(65)【公表番号】特表2016-511772(P2016-511772A)
(43)【公表日】2016年4月21日
(86)【国際出願番号】FI2013051184
(87)【国際公開番号】WO2014096547
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2016年10月25日
(31)【優先権主張番号】20126341
(32)【優先日】2012年12月20日
(33)【優先権主張国】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】504186286
【氏名又は名称】ケミラ ユルキネン オサケイティエ
【氏名又は名称原語表記】KEMIRA OYJ
(74)【代理人】
【識別番号】100087594
【弁理士】
【氏名又は名称】福村 直樹
(74)【復代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】ヘアッグブロム,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ヴオレンパロ,ヴェリマッティ
【審査官】 安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/156882(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/156880(WO,A1)
【文献】 特開2012−036517(JP,A)
【文献】 特開2010−240513(JP,A)
【文献】 特開昭59−189141(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0193590(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B 15/00
C08B 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)水性MFCスラリーを準備し
ii)任意に、機械的手段によって前記MFCスラリーを脱水して、部分的に脱水したMFCスラリーを作り、
iii)前記MFCスラリー、又は部分的に脱水したMFCスラリーを、超吸水性高分子を含む一種以上の吸収材料に接触させることにより、前記MFCスラリー、又は部分的に脱水したMFCスラリーを一以上の乾燥操作に付して脱水微細繊維状セルロース(MFC)を製造する
段階を有することを特徴とする、脱水微細繊維状セルロース(MFC)の製造方法。
【請求項2】
前記MFCスラリー又は前記部分的に脱水されたMFCスラリーを第一の吸収材料と接触させ、次いで第二の吸収材料と接触させて脱水MFCを製造することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第一の吸収材料が、セルロース性材料を含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第二の吸収材料が、カルボキシル基又はカルボキシレート基を有する超吸水性高分子を含むことを特徴とする、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記乾燥操作を少なくとも1回繰り返すことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記MFCスラリーの乾物含量が多くとも6重量%であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記部分的に脱水されたMFCスラリーの乾物含量が多くとも20重量%であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記脱水MFCの乾物含量が少なくとも20重量%であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記脱水MFCは、MFCの材料特性を実質的に劣化させることなく、水に再分散させることができることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
記方法が移動している基板上で行われ、前記MFCスラリー又は前記部分的に脱水されたMFCスラリーが該基板に載置されて該基板と共に乾燥セクションに移動し、該MFCに吸収材料を一定時間接触させ、その後、該吸収材料を除去し、任意で、この操作を繰り返して脱水MFCを製造することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が移動している基板上で行われ、前記MFCスラリー又は前記部分的に脱水されたMFCスラリーが該基板に載置されて該基板と共に第一の乾燥セクションに移動し、第一の吸収材料を該MFCに一定時間接触させ、その後、第一の吸収材料を除去し、次いで、得られたMFCスラリーを載置した基板は第二の乾燥セクションに移動し、第二の吸収材料をこのMFCに一定時間接触させ、その後、第二の吸収材料を除去して脱水MFCを製造することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
去された吸収材料が再生されて、吸収材料として再使用されることを特徴とする、請求項10又は11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱水微細繊維状セルロースの製造方法に関する。製造された脱水微細繊維状セルロースは、微細繊維状セルロールの材料物性を劣化させることなく、水に再分散させることができる。
【背景技術】
【0002】
微細繊維状セルロース(以後、MFCと略称する。)は、ナノセルロースとも称される。MFCはセルロース源となる材料、通常は木材パルプから製造される。MFC微細繊維は、高圧ホモジナイザーを用いて木材を基材とする繊維から単離される。ホモジナイザーは、繊維の細胞壁を剥離して、マイクロ繊維及び/又はナノ繊維を遊離させるのに使用されている。高いエネルギー消費量を低減するために、予備処理が採用されることもある。そのような予備処理の例としては、酵素/機械予備処理と、例えば、カルボキシメチル化又はTEMPOを媒体とする酸化による帯電した官能基の導入とを挙げることができる。
【0003】
機械的性質、皮膜形成性、及び粘性などのMFCの特性によって、MFCは、紙及び厚紙の製造、石油及び採鉱、複合体技術、食品産業、医薬品製造業、化粧品での使用などの数多くの応用が考えられる興味深い材料となっている。
【0004】
従来技術の以下の文献はMFCの製造に関している。
【0005】
US 4,483,743は、小径のオリフィスを有する高圧ホモジナイザーにセルロースの液体懸濁液を通し、該懸濁液を少なくとも3000 psig(20670 kPa)の圧力低下と高速剪断作用とに付し、さらに、高速減速衝突に付した後に、セルロース懸濁液が実質的に安定になるまで前記懸濁液を前記オリフィスに通過させることを繰り返す。製造されたMFCは280%を超える保水性を有する。このMFCは、紙製品及び不織シートと共に使用して強度を向上させることができる。この種の工程によって製造されたMFCは、通常、約25〜100nmの幅を有する一方で、その長さははるかに長いものとなっている。
【0006】
WO 2007/091942 A1は、微細繊維状セルロースの改良された製造方法を開示している。開示された方法は、高圧ホモジナイザーにおける目詰まりとエネルギー消費量が多いことに関する問題を解消することができるとされている。この文献によると、微細繊維状セルロースは、ヘミセルロースを含有するパルプ、好ましくは亜硫酸パルプを叩解して、このパルプを木材分解酵素で処理し、さらにパルプをホモジナイズすることによって製造される。酵素はセルラーゼ、好ましくはエンドグルカナーゼ型のセルラーゼであり、最も好ましくは単成分エンドグルカナーゼである。パルプは酵素処理の前若しくは後に、又は酵素処理の前と後との両方に叩解することができる。得られた微細繊維状セルロースは食品製造物、化粧品製造物、医薬品製造物、紙製品、複合材料、コート剤、又はレオロジー改質剤(例えば、掘削泥水)に使用することができる。
【0007】
更に別のタイプの微細繊維状セルロースが、ラングミュア2008, 第24巻, 2008年, 第784頁〜795頁にウォクベルク・ラルスら(Wagberg Lars et al., Langmuir 2008, Vol. 24, 2008, pages 784-795)によって記載されている。この微細繊維状セルロースは、カルボキシメチル化セルロース繊維の高圧均質化によって製造される。繊維は亜硫酸軟材溶解パルプ繊維である。製造されたMFCは、通常、幅が約5〜15nmであり、長さを1μmよりも長くすることができる。
【0008】
バイオマクロモレキュール, 第8巻, No. 8, 2007年, 第2485頁〜第2491頁に斉藤ら(Saito et al. Biomacromolecules, Vol. 8, No. 8, 2007, pp. 2485-2491)によって記載されているパルプ繊維の酸化前処理等の、他の化学的前処理法も知られている。パルプ繊維を2,2,6,6-テトラメチルピぺリジン-1-オキシルラジカル(TEMPO)を媒体とする系で酸化し、次いで、機械的な処理を行う。この酸化前処理によって、セルロースの一級水酸基をカルボキシレート基に変える。製造したナノファイバは、通常、幅が約3〜4nmであり、長さが数μmである。
【0009】
以下の従来技術の文献は、MFC又は他のセルロース性材料を乾燥/脱水することに関している。
【0010】
MFC懸濁液の乾物含量が増加すると、不可逆性の凝集現象が起こることが記録されている。MFCの凝集又は角質化を防止する主要な方法は、セルロース鎖同士の協同水素結合の形成を阻止する立体障害又は静電官能基を導入することである。最も有用な添加物の中には、ポリヒドロキシ官能化添加剤、特にグリコシド、炭水化物ガム、CMC等のセルロース誘導体、デンプン、及びオリゴ糖のような、炭水化物又は炭水化物に関連する化合物がある。残念ながら、角質化を防ぐためには、このような物質が多量に必要であるようである。このことは、例えば、食品における使用、及び複合材料などにおいて、MFCの最終的な用途を厳しく制限する場合がある。
【0011】
WO 2012/107642は、ナノ線維性セルロースの水性ゲルを、水混和性有機溶媒によって脱水する方法を開示している。好ましい溶媒はエタノールである。ナノ線維性セルロースの乾物含量を95%にもすることができる、と、記載されている。
【0012】
WO 2005/028752は、形成された乾燥繊維材料の製造方法を開示している。出発原料は、水性リグノセルロース繊維パルプであり、これを有効な圧縮方向及び圧縮圧力下で脱水し、次いで60〜120℃の温度の乾燥炉で乾燥する。好ましい態様においては、固定された孔のない上側プレートと、取り外し可能な孔のある底部と、機械的に駆動される、孔のある又は孔のないピストン上部と、機械的に駆動される孔のない下側プレートとを有する形成容器に水性リグノセルロース繊維を圧入し、脱水する。
【0013】
WO 2011/095335は、乾燥した微細繊維状セルロースの製造方法を開示しており、エタノール等の液体に入れたセルロースパルプの混合物が高い剪断作用に付されてMFCスラリーを形成し、MFC液体中のエタノールが加圧下で液体の二酸化炭素に置換され、この液体二酸化炭素が蒸発によって除去されて乾燥したMFCが得られる。
【0014】
JP60186548は、MFCの固形成分に対して少なくとも10重量%の量のグルコース又はショ糖等の水溶性物質をMFCの水性懸濁液に添加して、微細繊維状セルロース脱水及び乾燥する方法を開示している。得られたMFC組成物は、再分散性及び懸濁性に優れていると言われている。
【0015】
US 4,481,076は、セルロースの原繊維間に水素結合が生成するのを抑制することのできる化合物に微細繊維状セルロースを懸濁し、得られた懸濁液を、好ましくは、50℃〜70℃の温度で乾燥することによって、微細繊維状セルロースの水性懸濁液を乾燥する方法を記載している。好ましい化合物はショ糖などのポリヒドロキシ化合物である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】US 4,483,743
【特許文献2】WO 2007/091942 A1
【特許文献3】WO 2012/107642
【特許文献4】W0 2005/028752
【特許文献5】W0 2011/095335
【特許文献6】JP 60186548
【特許文献7】US 4,481,076
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Wagberg Lars et al., Langmuir 2008, Vol. 24, 2008, pages 784-795
【非特許文献2】Saito et al. Biomacromolecules, Vol. 8, No. 8, 2007, pp. 2485-2491
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は以下の課題を解決することを目的としている。
【0019】
MFCは、固形分が非常に少ない状態で製造されることが多く、通常、その濃度は1%〜6%である。輸送をより容易に行い、さらに加工を行うために、固形分をより高くすることが求められている。
【0020】
乾物含量を増加すると、不可逆的な凝集及び角質化が起こり、これによって、乾燥後の再分散が困難になっている。
【0021】
このように、本発明の目的は、乾燥中の凝集を防止する実施可能な方法を得ることと、固形分量が高く、再分散可能なMFC製造物を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明によると、前記課題は、一種以上の吸収材を用いた乾燥操作に、水性MFCスラリーを1回以上付して、脱水したMFCを製造することによって解決されることが見出された。得られた脱水MFCは容易に水に再分散させることができる。使用された吸収材は、再生させて吸収材料として再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】対照試料と本発明の試料とについて得られた透過率曲線を示している。
図2】本発明の方法を実施するための装置の略図である。
【発明の詳細な説明】
【0024】
水の三相系の相図を見ると、MFCスラリーにおいて液体水分量を低減させる方法は、凍結乾燥、蒸発及び超臨界乾燥のみであるように思われる。蒸発はMFC原繊維の不可逆的凝集に至り、凍結乾燥はエネルギーを必要とすると共に時間がかかり、また、超臨界乾燥は水に望ましくない性質を与え、即ち、水を高腐食性にしてしまうので、効果的に水を除去し、薬剤を使用することなく満足な結果を得る選択肢は限られているように思われる。しかしながら、本発明によると、MFC原繊維の特性を同時に保ちながら、MFCスラリーから水を除去するために気液相境界を横断する必要も該境界を周る必要も必ずしもなく、水の除去が可能であることが、驚くべきことに発見された。MFC原繊維からの水の輸送を液相中で、即ち、吸収材を用いることによって通常の周囲温度及び圧力で行うことができることが発見されたのである。液相中にあることによって、前記不可逆的な水素結合の形成が顕著に減少し、それによって、水分量の少ないMFC材料を損傷のないものにしておくことができる。
【0025】
このように、本発明は、脱水微細繊維状セルロース(MFC)の製造方法を提供し、該方法は、
i)水性MFCスラリーを準備し
ii)任意に、機械的手段によって前記MFCスラリーを脱水して、部分的に脱水したMFCスラリーを作り、
iii)前記MFCスラリー、又は部分的に脱水したスラリーを、一種以上の吸収材を用いた一以上の乾燥操作に付して脱水MFCを製造する
【0026】
この明細書で使用されている「微細繊維状セルロース」という用語(MFCとも示されている)は、例えば、先に検討した文献に記載されているタイプの、微細繊維状/ミクロフィブリルセルロースと、ナノセルロースとも称されるナノフィブリル状/ナノフィブリルセルロース(NFC)とを含む。
【0027】
上記のように、MFCは、セルロース源となる材料、典型的には、木材パルプから製造される。MFCの製造に使用することのできる適切なパルプとしては、晒パルプ、半晒パルプ、未晒亜硫酸パルプ、硫酸塩パルプ、及びソーダパルプなどの木材基材の全タイプの化学パルプを含むことができる。さらに、通常5%未満の少量のヘミセルロースを含む溶解パルプも使用することができる。
【0028】
MFC原繊維は、高圧ホモジナイザーを用いて木材基材の繊維から単離される。高圧ホモジナイザーは繊維の細胞壁を剥離して、マイクロ繊維及び/又はナノ繊維を遊離させるのに使用されている。高いエネルギー消費量を低減するために、予備処理が採用されることもある。そのような予備処理の例としては、酵素/機械予備処理と、例えば、カルボキシメチル化又はTEMPOを媒体とする酸化による、帯電した官能基の導入とを挙げることができる。MFC繊維の幅と長さとは具体的な製造工程に応じて変化する。MFCの典型的な幅は約3〜約100nm、好ましくは約10〜約30nmであり、典型的な長さは約100nm〜約2μm、好ましくは約100〜約1000nmである。
【0029】
本発明の方法で使用される「吸収材料」は、繊維、不織布、布、顆粒等の形態であってもよい固体の非水溶性材料である。好ましい材料はセルロース系材料、綿、吸水性ポリマー、特に超吸水性高分子、及び大量の水を吸収する能力を有する他の材料である。
【0030】
超吸水性高分子(SAP)又はハイドロゲルは、非水溶性の親水性高分子であり、膨潤して、自身の重量の10〜1000倍もの大量の水、食塩溶液、又は生理液を吸収することができる。これらの物質は、高分子電解質、又は他の高親水性の高分子マトリックスを有し、通常、溶解を避けるために巨大分子鎖に沿って架橋部位を有している。これらの高分子化合物は、水の存在下で、その解離した形態と平衡状態になっているカルボキシル基、又はカルボキシレート基を一般に含んでいる。負電荷の静電反発作用の結果、高分子コイルはそれ自身を延伸し、また、幅を広くする。カルボキシレート基同士も、水素結合を介して、追加量の水と相互作用する。架橋構造が存在することによって、高分子を溶解させることなく、三次元ネットワークを膨潤させ、ゲルを形成することが可能になる。
【0031】
好ましいSAPは、部分的に中和されたアクリル酸(AA)又はアクリルアミド(AM)に基づいた共重合体ネットワークである。また、メタクリル酸、メタクリルアミド、アクリロニトリル、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、N-ビニルピロリドン、ビニルスルホン酸、及び酢酸ビニル等の他のモノマーも使用することができる。
【0032】
通常、アクリルモノマー、好ましくはアクリル酸、そのナトリウム又はカリウム塩、及びアクリルアミドからSAPが製造される。SAPの製造は、重合と架橋又は水溶性プレポリマーの架橋とを同時に行うことを含む。好適な二官能性の架橋剤は、N,N’-メチレンビスアクリルアミド(MBA)である。
【0033】
本発明の方法の利点は、乾燥操作及び再生において、吸収材料の外に、MFCに悪影響を与え得る薬剤が全く必要とされないことである。他の利点としては、乾燥操作を周囲温度及び圧力下で行うことができることである。
【0034】
MFCスラリーの乾物含量は、通常、多くとも6重量%であり、好ましくは1〜6重量%、より好ましくは1〜5重量%、最も好ましくは1.5〜4重量%である。
【0035】
部分的に脱水されたMFCスラリーを作るために、前記MFCスラリーの機械的手段による任意の脱水を、プレス法、遠心分離、又は真空濾過等の濾過によって行うことができる。
【0036】
部分的に脱水されたMFCスラリーの乾物含量は、通常、多くとも20重量%であり、好ましくは多くとも18重量%、より好ましくは多くとも15重量%、最も好ましくは5〜15重量%である。
【0037】
好適な態様においては、MFCスラリー又は部分的に脱水されたMFCスラリーを、超吸水性高分子等の吸収材料と接触させ、脱水MFCが製造される。この乾燥操作は、所望の乾物含量を得るために1回又は数回繰り返される。好ましくは、超吸水性材料等の吸収材料を、MFCスラリー又は部分的に脱水されたMFCスラリーの表面に接触させる。
【0038】
他の好ましい態様においては、MFCスラリー又は部分的に脱水されたMFCスラリーを第一の吸収材料と接触させ、次いで第二の吸収材料と接触させて脱水MFCを製造する。
【0039】
第一の吸収材料としては、濾紙等のセルロース性材料を挙げることができる。例えば、MFCスラリー又は部分的に脱水されたMFCスラリーを、濾紙等のセルロース性材料の2枚のシートの間に置くことによるなど、乾燥操作は様々な方式で行うことができる。所望の中間乾物量を得るために、乾燥操作を1回又は数回繰り返すことができる。濾紙等のセルロース性材料の2枚のシートには、水分の除去を高めるために、機械的手段による圧力が加えられる。
【0040】
第二の吸収材料は、先に記載の超吸水性ポリマー等の吸収材料を含むことができる。所望の乾物含量を得るために、乾燥操作を1回又は数回繰り返すことができる。好ましくは、超吸水性高分子等の吸収材料を、MFCスラリー又は部分的に脱水されたMFCスラリーの表面に接触させる。
【0041】
脱水MFCの乾物含量は、通常、少なくとも20重量%であり、好ましくは少なくとも25重量%、より好ましくは少なくとも40重量%、最も好ましくは少なくとも60重量%である。乾物含量がこのようであると、非脱水物、即ち、全く乾燥されていないMFCに比べて輸送コストを大幅に低減することができる。
【0042】
一態様においては、前記脱水方法が移動している基板上で次のように行われる。即ち、MFCスラリー又は部分的に脱水されたMFCスラリーは基板に載置されて基板と共に乾燥セクションに移動し、運ばれてきたMFCに吸収材料を一定時間接触させ、その後、吸収材料を除去する。そして、任意で、この操作を1回又は数回繰り返して所望の乾物含量を有する脱水MFCを製造する。
【0043】
別の態様においては、前記脱水方法が移動している基板上で次のように行われる。MFCスラリー又は部分的に脱水されたMFCスラリーは基板に載置されて基板と共に第一の乾燥セクションに移動し、第一の吸収材料を運ばれてきたMFCに一定時間接触させ、その後、第一の吸収材料を除去する。次いで、得られたMFCスラリーを載置した基板は第二の乾燥セクションに移動し、第二の吸収材料をこのMFCに一定時間接触させ、その後、第二の吸収材料を除去して脱水MFCを製造する。第一の乾燥セクション及び/又は第二の乾燥セクションにおいて、所望の乾物含量を有する脱水MFCを製造するために、前記乾燥操作を1回又は数回繰り返すことができる。
【0044】
本発明によると、除去された吸収材料を再生して、この方法における吸収材料として再使用することができる。この再生は、例えば、炉にて、高い温度で所定時間、吸収材料を乾燥することによって容易に行うことができる。乾燥温度は、吸収材料の材料特性が損なわれないように選択するのがよい。赤外システムなどの他の乾燥システムも使用することができる。
【0045】
好ましい態様においては、本発明の方法によって得られる脱水MFCは、MFCの材料特性を実質的に劣化させることなく、水に再分散させることができる。
脱水されたMFCの再分散性は、粘度及び透過率測定の手段により評価することができる。非脱水MFCと脱水して再分散させたMFCとについて得られる結果を比較すると、以下の方法で測定した粘度又は透過率の相違は30%以下であり、好ましくは20%以下である。
i)剪断速度5rpmで300秒、V−72型スピンドル使用のRVDV−II+P型のブルックフィールド粘度計によって、2分間超音波処理した試料の粘度を測定する。
ii)波長300〜1100nmで島津製作所製のUV−1800型紫外可視分光光度計によって、0.1%の乾燥固形分を有する2分間超音波処理した試料の透過率を測定する。
【好ましい態様の詳細な説明】
【0046】
図2は、本発明による脱水MFCを製造する方法を実施するための装置1を示している。移動ベルトには参照符号2が付されている。MFCスラリーは前記移動ベルト2と共に動かされている。この装置の第一セクションは濾過セクション3であり、ここでは自由水がスラリーから除去される。その後、部分的に脱水されたMFCスラリーを2枚の第一親水性膜4と4’との間に挟み、次いで、2枚の中間親水性膜5と5’との間に挟む。これらの親水性膜は、乾燥ユニット6,6’と7,7’とでそれぞれ再生される。そして、水分量が低下したMFCスラリーは、超吸水材料の形態である親水性膜8によって最終的な吸収が行われるセクションに案内される。参照符号9及び10は、再生された超吸水材料導入口を示し、参照符号11及び12は乾燥ユニット13で再生される超吸収材料排出口を示している。脱水MFCはシート14の形態で留められる。
【0047】
[方法]
(粘度)
MFC試料を脱イオン水に分散させて、目標乾燥固形分含量1.5%、体積80mLとした。粘度測定の前に、Sonics(R) VCX 750型超音波ホモジナイザー(ソニックス&マテリアルズ インコーポレイテッド、ニュータウン、コネチカット、アメリカ合衆国)を用いて、1分間+1分間、試料を超音波処理した。2度の超音波処理の間に金属スパチュラでの攪拌を行った。その後、懸濁液を水浴中で22±1℃まで冷却し、安定した温度の滑らかな懸濁液を得るためにスパチュラで時々攪拌した。V-72型羽根型スピンドル(ブルックフィールド・エンジニアリング・ラボラトリーズ インコーポレイテッド、ミドルバラ、マサチューセッツ、アメリカ合衆国)を備えたRVDV-II+P型粘度計(ブルックフィールド・エンジニアリング・ラボラトリーズ インコーポレイテッド、ミドルバラ、マサチューセッツ、アメリカ合衆国)を用いて粘度を測定した。このタイプのスピンドルは、測定される剪断速度範囲で必要とされるトルクの10〜100%を示した。試料の量が限られているので、スピンドルを半分まで試料に浸漬した。したがって、粘度の真の値は、測定値の2倍になる(ブルックフィールド・エンジニアリング・ラボラトリーズ インコーポレイテッド、操作マニュアル)。測定値を信頼性のあるものにするために必要とされていることであるが、ショット(Schott)社の100mLのデュラン(Duran)ビーカーの直径(47.8mm)は比較的大きいV-72型スピンドルの幅(21.6mm)の2倍以上ある。さらに、ビーカーの底とV-72型スピンドルとの間は、スピンドルの幅より大きく空けられていた。スピンドルを浸漬した後に、システムを1分間静置した。その後、0.5、5、10、50、及び100rpmの剪断速度を与えた。100rpmはこの粘度計で測定可能な最大の剪断速度であり、最小の剪断速度は0.5rpmにした。不安定になりやすいように思われたので、剪断速度0.5、5、10rpmに対しては測定時間を300秒とした。剪断速度がより高い場合は、100秒後には、既に安定した粘度値を示していた。懸濁液を測定した後に、懸濁液を再び金属スパチュラで攪拌し、2回目の測定の前に40分静置した。最後に、105℃の熱風乾燥器内で重量が一定になるまで乾燥することによって、MFCスラリーの乾燥固形分含量を確認した。
【0048】
(透過率)
高純度の水(21℃における抵抗率が16.5Mオーム・cm以上)を添加して、粘度測定に用いた、乾燥固形分含量がわかっているMFCスラリー試料から0.1%乾燥固形分含量のMFC40gを製造した。高純度の水は不純物の量を最小化するために用いられた。また、全試料の透過率範囲に適しているので固形分含量を0.1%にすることとした。マグネチックスターラーを用いて、300rpmで10分間、懸濁液を攪拌した。その後、Sanies(R) VCX 750型超音波ホモジナイザー(サニーズ&マテリアルズ インコーポレイテッド、ニュータウン、コネチカット、アメリカ合衆国)を用いて、1分間+1分間、懸濁液を超音波処理した。2度の超音波処理の間と最後に、マグネチックスターラーを用いて、300rpmで0.5分間、懸濁液を攪拌した。波長300〜1100nmでUV-1800型紫外可視分光光度計(島津製作所製、京都、日本)によって、透過率を測定した。Johnson et al.(2009 Cellulose, 16, 第227頁〜第238頁)に比べて広い波長範囲が選択されたが、それは、同量の調製試料に対してより多くのデータが得られたからである。使用されたセルはリンスされ、高純度の水を入れてブランクとして測定された。セルの経路長は1cmであった。次いで、セルをリンスし、測定するMFCスラリーを満たした。1つの試料につき3回の測定を行った。2回目と3回目の測定は、1回目の測定の開始から、それぞれ5分後、10分後に行われた。
【0049】
[例1]
WO 2011/154601号公報に記載されているように調製された微結晶性セルロース(MCC)と水との混合物を出発原料として使用した。脱水処理に付されるMFCスラリーは、動作圧力2000 barのM-110P型マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディクス コーポレーション)に3回通すことによって、このMCCと水との混合物から作られた。このMFCスラリーをそのまま(水を全く除去せずに)使用したものを対照とした。
【0050】
超吸水性高分子(SAP)は、フリーラジカル開始剤としての2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド(VA-044)と架橋剤としてのN,N’-メチレンビスアクリルアミド(MBA)とを用いることによって、アクリル酸(20%)からフリーラジカル重合によって製造された。得られた酸重合体は、酸基の約72%がカルボン酸ナトリウム基に転化されるように水酸化ナトリウムで中和されて、ポリ(アクリル酸ナトリウム)を形成した。
【0051】
濾紙(ワットマン濾紙)と前記超吸水性高分子(SAP)、ハイグレードN,N’−メチレンビスアクリルアミド(MBA)とを用いた吸収材料によってMFCスラリーから水を除去した。脱水処理に付されるMFCスラリーを濾過して自由水を除去し、その後、濡れたMFCと水との残留物を2枚の濾紙の間に10〜15分置いた。濾紙が残留物から水を吸い取ったら、濾紙を炉に移送して水を蒸発させた。部分的に乾燥したMFC残留物を新しい濾紙対の間に置いた。炉で乾燥した濾紙を用いて、負荷をかけて吸水システムに与える圧力を増しながら、この手順を3回繰り返すことにより、最終的な乾物含量を24.20%にすることができた。この乾物含量によって、超吸水性高分子(SAP)による吸水に適した、平滑で堅い表面が得られる。超吸水性高分子の顆粒をMFCの表面に直接当てた。SAP高分子による吸水が30分間行われ、然る後、SAP高分子は剥離によって除去され、炉で乾燥された。再生SAP高分子を用いてこの処理を2回行い、2回目の吸水によって最終的な乾物含量61.23%を達成した。
【0052】
先に記載したようにして行われた粘度と透過率との測定により、再分散性を評価した。
【0053】
粘度の測定結果を次の表に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
粘度は粒子の凝集の程度とよく関連付けられるので、上記結果は優れた再分散性を示している。
【0056】
1回目と2回目及び3回目との測定におけるピーク透過率変化を以下の表に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
透過率測定の結果は図1に示されている。対照試料(脱水処理が行われていない)について得られた透過率曲線と、本発明の試料(脱水処理と再分散がなされている)について得られた透過率曲線とは非常によく似ている。
【0059】
透過率は粒子の凝集の程度とよく関連付けられるので、上記結果は優れた再分散性を示している。
図1
図2