(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362225
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】害虫忌避剤
(51)【国際特許分類】
A01N 31/04 20060101AFI20180712BHJP
A01P 17/00 20060101ALI20180712BHJP
A01N 25/34 20060101ALI20180712BHJP
A01N 25/02 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
A01N31/04
A01P17/00
A01N25/34 B
A01N25/02
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-155176(P2016-155176)
(22)【出願日】2016年8月8日
(65)【公開番号】特開2018-24583(P2018-24583A)
(43)【公開日】2018年2月15日
【審査請求日】2017年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000201733
【氏名又は名称】曽田香料株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松尾 健治
(72)【発明者】
【氏名】白川 俊文
【審査官】
早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−199806(JP,A)
【文献】
特開2005−075730(JP,A)
【文献】
特開2003−201203(JP,A)
【文献】
特開2015−074616(JP,A)
【文献】
特開平06−227906(JP,A)
【文献】
特開平05−208902(JP,A)
【文献】
特開2015−113313(JP,A)
【文献】
国際公開第01/070661(WO,A2)
【文献】
松原義治ら,数種のテルペン炭化水素とグリコールからテルペニルヒドロキシアルキルエーテルの合成,油化学,1975年,24(3),pp. 166-170
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N31/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
(式中、nは1、2のいずれかを表す。またRはメチル、水素のいずれかを表す。)で示される化合物を有効成分とする
ダニ忌避剤。
【請求項2】
2−ターピニルオキシエタノールを有効成分とするダニ忌避剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な害虫忌避剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、防虫剤として、虫除けスプレーまたは殺虫剤に含まれるN,N-ジエチル-m-トルアミド(DEET)もしくはピレスロイド系化合物(ピレストリン、シネリン、ジャスモリン、アレスリン、テトラメトリン、レスメトリン、フラメトリン、フェノトリン、ペルメトリン、シフェノトリン、ベラトリン、エトフェンプロックス、シフルトリン、テフルトリン、ビフェントリン、シラフルオフェン)が提案されているが、安全性、臭気などに問題があった。
【0003】
例えば、DEETは世界的に何十年と使用され続けているが低用量のDEETで神経系への影響があった事例があり、現在では小児(12歳未満)に使用させる場合には使用制限を設けている。(非特許文献1)。
【0004】
また、DEETまたはピレスロイド系化合物は揮発性であり、該成分を繊維構造物に付与した後、高温で熱処理すると、成分が蒸発して繊維上に残らないなどの問題がある。
一方、植物精油に含有される化合物(例えば、モノテルペン系化合物等)の中には、害虫忌避効果を発揮するものがあることが知られている。例えば、特許文献1には、害虫忌避成分(A)として、シトロネラールと、ターピネオール、メントール、リモネン、ゲラニオール、シトロネロール、カンフェン等から選ばれる1種又は2種以上とを含み、害虫忌避成分(A)中におけるシトロネラールの含有量が2〜10質量%である害虫忌避剤揮散組成物が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、天然に存在する成分テルピネン−4−オールを有効成分とする衣料用防虫剤が、開示されている。
【0006】
さらに、特許文献3には、β−フェニルエチルアルコールまたはそれとジヒドロジャスモン酸メチルを有効成分として含有する蚊忌避剤が開示されている。これらは、植物精油に含有される化合物、あるいは香料として利用されている化合物であり安全性は高いものの、揮発性が高いことで持続性に課題が残る場合がある。
【0007】
例えば繊維製品、塗料、家庭用雑貨、壁材などに害虫忌避効果を求める場合、臭気が少なく、揮散性が低く、長期間の持続性が高い忌避剤が求められる。
【0008】
テルペン系化合物の中には、例えばボルネオール、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、リモネン、ゲラニオール、リナロール、メントール、テルピネオール、チモールなどが挙げられ、それぞれの成分で忌避効果が得られるが、揮発性が高いために繊維や雑貨などを加工する際の加熱時に、これらの残存率が低くなる。
【0009】
一方、特許文献4には、2−フェノキシエタノールおよび/または2−ジヒドロターピニルオキシエタノールを有効成分として含有する繊維害虫成虫忌避剤が開示されている。これらは、消費者の嗜好に合う、実質的に臭いのないものであるが、特定の害虫でしか対応できていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−201203号公報
【特許文献2】特開平06−227906号公報
【特許文献3】特開平05−208902号公報
【特許文献4】特開2001−199806号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】厚生労働省医薬食品局安全対策課、ディートを含有する医薬品及び医薬部外品に関する安全対策について、[online]、平成17年8月24日、http://www.mhlw.go.jp/topics/2005/08/tp0824-1.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、安全性が高く、持続性の高い害虫忌避剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の害虫忌避剤の有効成分は、式(1)(式中、nは1、2のいずれかを表す。またRはメチル、水素のいずれかを表す。)に示すα−ターピネオールの誘導体である。
【0014】
【0015】
このものは、テレビン油などの天然精油に含まれるα−ピネンとエチレングリコール、ジエチレングリーコール、プロピレングリコールなどのグリコール類を反応させることで製造できる。
【0016】
具体的には、2−ターピニルオキシエタノール、2−ターピニルオキシイソプロパノール、2−ターピニルオキシエチレンオキシエタノールなどが対象である。特に2−ターピニルオキシエタノールは、ほとんど匂いがなく高沸点溶剤、香料の保留剤、金属ペースト・ガラスペースト溶剤として市販されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明に寄れば、当該化合物を有効成分とする、それ自体は無臭で、持続性に優れた害虫忌避剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の当該化合物は、蚊や、ダニ、衣類害虫などの害虫に対して忌避性が高いものの、人体に対しては安全性が高い、テルペン系化合物の誘導体の一部である。
【0019】
本発明の有効成分である当該化合物の中には、それ自体を溶剤などとして使用するために市販されている化合物2−ターピニルオキシエタノールがある。
【0020】
本発明の害虫忌避剤は、通常の害虫忌避剤に使用される担体や成分等と組合せ、製剤化することにより調製される。
【0021】
例えば、本発明の害虫忌避剤は、そのまま、あるいはこれを溶剤に溶解または可溶化して、液体製剤とすることができる。溶剤としては、アルコール類、グリコール類、炭化水素類、グリコールエーテル類、水などを用いることができる。本発明の有効成分が一様に分散するよう、必要に応じて界面活性剤、増粘剤などを加えて調整することができる。この液体製剤は、そのまま容器に入れた製剤としたり、吸い上げ芯で吸い上げて揮散させる液芯型製剤としたり、浸透透過性フィルムを有する容器に入れフィルムを通して揮散させる製剤としたり、ゲル化剤を加えてゲル製剤とすることもできる。対象物によっては、液体製剤を直接対象物に塗布、含浸したり、スプレー製剤として対象物に散布することも可能である。
【0022】
また、本発明の害虫忌避剤は、担体に担持させて固体製剤とすることもできる。担体としては、セルロース、レーヨン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、羊毛、タルク、クレー、素焼き、陶磁器粉などからなる粉末、顆粒、錠剤、シート、マット、フェルト、スポンジ、板、紙、織布、不織布、フィルム状などの多孔性または非多孔性担体を用いることができる。担持の方法としては、滴下、散布、噴霧などによる含浸、塗布、印刷、練り混みなどを挙げることができる。
【0023】
本発明の害虫忌避剤の調製に当たっては、必要に応じて、ピレスロイド系化合物など他の防虫剤とともに使用することができる。また、必要に応じて、防カビ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の任意成分を加えることもできる。さらに、香料を適宜加えれば、微香を有する防虫剤や快い香りをもつ防虫剤を得ることもできる。
【0024】
本発明の害虫忌避剤が適用され得る害虫としては、衛生害虫、不快害虫、農業害虫などである。より具体的には、例えばアカイエカ、コガタアカイエカ、チカイエカ、ネッタイイエカなどイエカ属、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカなどヤブカ属、シナハマダラカなどハマダラカ属などを含む蚊類、イエバエ、サシバエなどイエバエ科、ヒメイエバエなどヒメイエバエ科、ケブカクロバエなどクロバエ科、シマバエ科、キイロショウジョウバエなどショウジョウバエ科、ツェツェバエ科、ノミバエ科、センチニクバエなどニクバエ科などを含むハエ類、オオチョウバエ、ホシチョウバエなどのチョウバエ類、セスジユスリカ、アカムシユスリカなどのユスリカ類の飛翔害虫が挙げられる。これら飛翔害虫にはたとえばコガタアカイエカ、ヒトスジシマカ、ネッタイシマカ、サシバエ、ツェツェバエなどの吸血性昆虫もしくは刺咬性害虫と呼ばれ病原体を媒介することが知られるものを含んでいる。また、イガ、コイガなどヒロズコガ科、ノシメマダラメイガなどメイガ科などのガ類が挙げられ、これらのガ類はその幼虫が衣料害虫として知られている。また、ヒメカツオブシムシ、ヒメマルカツオブシムシなどカツオブシムシ科、ゾウムシ科、コクヌスト科、シバンムシ科の甲虫類が挙げられる。これらは、食品、農作物などの食害をなすものとして知られており、カツオブシムシ科の甲虫ではさらに衣料品に対する食害をなすものもある。さらに、ダニ類としてはマダニ、イエダニ、コナダニ、ヒョウヒダニ、ホコリダニ、ツメダニ、ハダニ等が挙げられる。これらダニ類にはマダニ、イエダニ等のように吸血性のものや、ヒトを含む動物に寄生するもの、アレルゲンとなるもの、食品や農作物などの食害をなすものが知られている。
【0025】
本発明の害虫忌避剤の調製は、例えば、液体製剤または固体製剤とすればよい。製剤化に当たって当該化合物の使用量は、特に制約されるものではないが、一般的には、1製剤当り0.01〜50重量%が好ましい。
【0026】
本発明の害虫忌避剤はそれ自体が無臭であり適宜副資材と組み合わせることで任意の形態で使用することができる。
【0027】
例えば、皮膚外用剤としてスプレー剤、塗布剤、貼付剤とすることができる。家庭用衛生材用品として、芳香消臭剤、抗菌剤などと組み合わせて、固体又は液体の揮散剤、スプレー、清掃用液剤などとすることもできる。園芸用品としてスプレーなどとして使用することもできる。前記の使用方法については、本発明の害虫忌避剤を添加する他には、それぞれ一般に行われる方法に従って製造することができる。
【0028】
さらには、繊維、木材、紙、セラミック材料などに固定化して害虫忌避効果を付加した、衣料、建築材料、壁紙、装飾品などとすることもできる。これらの固定化方法は液剤の含浸、吹き付け、マイクロカプセル化しての付着させる方法など公知の方法を使用することができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、本例中の忌避率はそれぞれ次の方法により求めた。
【0030】
(1)ヒトスジシマカの忌避率
被験者の手に厚手の木綿製軍手を填めた上にさらに木綿製内履き手袋を重ねて填め、その上に30×30cmの検体を巻き付け、できるだけ皺にならないように輪ゴムでとめる。
ヒトスジシマカを放った28×28×28cmの全面ナイロンゴース貼りのケージに手首から先を3分間挿入し、1分毎に3回、検体の上に止まった供試虫の数を数え累積飛来数とする。
【0031】
試験は、無処理検体を巻き付けた場合の無処理区累積飛来数を計数した後、約20分間供試虫を休ませ、処理検体を巻き付けた場合の処理区累積飛来数を計数する。
忌避率の計算は以下の式を用いた。
【0032】
忌避率(%)={(無処理検体の累積飛来数-処理検体の累積飛来数)/無処理検体の累積飛来数}×100
【0033】
(実施例1)
2−ターピニルオキシエタノール(日本テルペン株式会社製)をイソプロピルアルコールに溶かした溶液中に、ポリエステル繊維を浸漬させた。繊維に対して忌避成分が0.5重量%となるように、室温で乾燥した。忌避率は、82%だった。
【0034】
(実施例2)
実施例1と同様に、繊維に対して忌避成分が1.0重量%含有する繊維を調製した。忌避率は、95%だった。
【0035】
(2)ヤケヒョウヒダニの忌避率
繊維製品の防ダニ性試験 JIS L 1920侵入阻止法忌避試験に準じた。試験期間中、25℃、75%Rh、全暗、密閉で、試験開始後24時間後に観察した。
【0036】
忌避率(%)={(無処理検体の累積ダニ数-処理検体の累積ダニ数)/無処理検体の累積ダニ数}×100
【0037】
(実施例3)
2−ターピニルオキシエタノール(日本テルペン株式会社製)をイソプロピルアルコールに溶かした溶液中に、ポリエステル繊維を浸漬させた。繊維に対して忌避成分が0.2重量%となるように室温で乾燥した。
防ダニ性試験結果は、無処理検体の累積ダニ数:5309、処理検体の累積ダニ数:564。忌避率は84.8%だった。