(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、非可視光であるレーザ光を送信するレーザ送信器を有する射撃装置に照準眼鏡を装着し、該照準眼鏡によりレーザ送信器の照準方向を合わせてレーザ光を照射するようにした射撃訓練装置がある。レーザ光を用いた従来の射撃訓練装置は、レーザ光線を照射する射撃装置と目標物である標的により構成される。射撃装置は、レーザ光線を照射するレーザ送信器、このレーザ送信器の照準を合わせる照準眼鏡、この照準眼鏡の照準方向を調整するための可視レーザ光を使用した照準送信器から構成される。
レーザ送信器は、模擬銃に取り付けられ、該模擬銃の引金が操作された際に非可視光であるレーザ光を標的に向けて発射する。照準眼鏡は、照準方向を調整するための調整機構を備えている。照準送信器は、レーザ送信器に対して物理的に平行となるように固定して設けられ、目に損傷を与えにくいアイセーフレーザを使用して可視レーザ光を発生する。
一方、標的には、中央部に受光器と発光器が設けられ、レーザ送信器から照射されたレーザ光が受光器に的中すると発光器が発光するようになっている。また、標的には、受光器の近傍に照準眼鏡により照準される照準用十字線および照準送信器により照準される照準校正用十字線が設けられる。すなわち、照準用十字線および照準校正用十字線は、受光器の近傍において照準眼鏡および照準送信器に対応する位置関係となるように設けられる。
上記のように構成された射撃訓練装置は、射撃訓練を実施する前に照準眼鏡が正しく照準されているかどうかの確認および調整(照準調整)を行う。
本開示に関連する先行技術文献としては、例えば特開2010−117090号公報がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】比較例に係る視準校正システムにおける視準校正方法を説明するための模式図である。
【
図2】比較例に係る視準校正システムにおける視準校正方法を説明するための模式図である。
【
図3】比較例に係る視準校正システムにおける視準校正方法を説明するための模式図である。
【
図4】実施形態に係る視準校正システムの構成を説明するための模式図である。
【
図5】実施形態に係る視準校正板本体を説明するための外観正面図である。
【
図6】実施形態に係る光学装置を説明するための外観側面図である。
【
図7】実施形態に係る入出力処理器におけるレチクルの照準点合わせを説明するためのイメージ図である。
【
図8】実施形態に係る入出力処理器における照準眼鏡で覗く画面と音声ナビゲーションを説明するためのイメージ図である。
【
図9】実施形態に係る標的板を説明するためのイメージ図である。
【
図10A】実施形態に係る処理器画面における光学装置用照準点レチクルとプロジェクタ用レチクルの算出方法を説明するための図である。
【
図10B】実施形態に係る処理器画面における光学装置用照準点レチクルとプロジェクタ用レチクルの算出方法を説明するための図である。
【
図10C】実施形態に係る処理器画面における光学装置用照準点レチクルとプロジェクタ用レチクルの算出方法を説明するための図である。
【
図11A】実施形態に係る光学装置用照準点レチクルの算出方法を説明するための図である。
【
図11B】実施形態に係る光学装置用照準点レチクルの算出方法を説明するための図である。
【
図12】実施形態に係る視準構成システムを説明するための系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。
【0009】
<比較例>
まず、本願発明者らが本開示に先立って検討した技術(以下、比較例という。)に係る視準校正システムについて
図1から
図3を用いて説明する。
図1は比較例に係る視準校正システムの初期状態における照準器の可視光軸線とレーザ送信装置の照準線との状態を示す図である。
図2は比較例に係る視準校正システムの方向調整を行った状態における照準器の可視光軸線とレーザ送信装置の照準線との状態を示す図である。
図3は比較例に係る視準校正システムにおける視準校正を確認している状態を示す図である。
図1から
図3に示すように、視準校正システム1Sは視準校正板10Sと火器70Sに装着されるレーザ送信装置であるプロジェクタ50Sとを基準の距離(20〜30m)に隔離して配置する。視準校正板10Sは、中央部に受光器15Sと発光器16Sとを備え、プロジェクタ50Sから照射されるレーザ光が受光器15Sに的中すると発光器16Sが発光するようになっている。また、視準校正装置10Sは、受光器15Sの近傍に照準器80Sにより照準される照準器用レチクル(十字線)18Sと火器用照準器(照準眼鏡)71Sにより照準される火器照準用レチクル17Sとを備える。照準器用レチクル18Sおよび火器照準用レチクル17Sは、受光器15Sの近傍において照準器80Sおよび火器用照準器71Sに対応する位置関係となるように設けられている。プロジェクタ50Sは照準器80Sと図示しない方向調整機構とを装着する。照準器80Sはプロジェクタ50Sに対して物理的に平行となるように固定して設けられる。
【0010】
任意の火器70Sに装着したプロジェクタ50Sのレーザ光軸線103Sおよびプロジェクタ50Sに装着した照準器80Sの可視光軸線101Sは、火器70Sの照準線102Sと平行ではない。
図1は火器用照準器71Sから照射される可視レーザ光を火器照準用レチクル17Sに合わせて照準器80Sから視準校正板10Sに照射した状態を示している。照準器80Sから視準校正板10Sに照射される照射位置19Sは目視が可能である。
【0011】
よって、火器用照準器71Sの照準線102Sを火器照準用レチクル17Sに合わせた状態を維持したまま、図示していないプロジェクタ50Sに装着されている方向調整機構により照準器80Sの可視光軸線101Sを照準器用レチクル18Sに合わせる。この操作により、
図2に示すように、火器70Sの照準線102Sと照準器80Sの可視光軸線101Sとプロジェクタ50Sのレーザ光軸線103Sは平行となる。
【0012】
図示していないレーザ送信器のトリガを引きプロジェクタ50Sからレーザ光線を送信し、
図3に示すように、そのレーザ光線を受光器15Sで受光し、発光器16SのLED発光により、正しく視準校正が行われたことを確認する。
【0013】
なお、射撃訓練時はレーザの受光器を備える標的が例えば数Km先に配置されたり、移動したりする。火器用照準器71Sによって標的に照準しプロジェクタ50Sからレーザ光を発射することにより、弾丸の発射を模擬して射撃訓練を行う。
【0014】
本願発明者らは比較例に係る視準校正システムでは以下の問題があることを見出した。
(1)照準器80Sで使用するレーザ光線は可視光のため、太陽光の影響により標的板上の可視光のレーザ光線が視認しにくい。
(2)標的板のどの位置に可視光のレーザ光線が照射されているのか(どの程度ずれているのか)射手に対して指示する人員が必要であり、視準校正する際は最低2人必要となる。
(3)視準校正は、訓練前の準備段階の位置づけで実施されるが、視準校正に多大な時間が費やされる。
【0015】
<視準校正システム>
実施形態に係る視準校正システムについて
図4および
図12を用いて説明する。
図4は視準校正システムの構成を示す模式図である。
図12は実施形態に係る視準構成システムを説明するための系統図である。
実施形態に係る視準校正装置システム1は、視準校正板10と、光学装置20と、光学装置20と無線または有線で接続される入出力処理器40と、を備え、視準校正装置を構成する。視準校正装置システム1は、さらに、火器70に装着されるプロジェクタ50を備え、光学装置20はプロジェクタ50に装着される。プロジェクタ50はレーザ送信装置であり、受光器15にレーザ光線を発射することによる視準校正の確認および火器用照準器(照準眼鏡)71によって標的に照準しレーザ光を発射することにより弾丸の発射を模擬した射撃訓練に使用される。なお、火器70にプロジェクタ50を装着するので、火器70は訓練者が保持する小火器よりも固定して使用する小火器や重火器の方が好ましい。
【0016】
<視準校正板>
次に、視準校正板について
図5を用いて説明する。
図5は視準校正板の外観を示す正面図である。
視準校正板10は本体11と標的板12とを備える。標的板12はプリズム取付板13と受光器15と発光器16と火器照準軸用レチクル17とを備える。プリズム取付板13は、プリズム14が装着できる構造となっている。プロジェクタ50からのレーザ光線を受光器15で受光すると、発光器16のLEDが発光するようになっている。
【0017】
<光学装置>
次に、光学装置について
図6および
図12を用いて説明する。
図6は光学装置、取付金具およびプリズムとの関係を示す図である。
光学装置20はプロジェクタ50の取り付けるための取付金具30を備え、光学装置20とプロジェクタ50の光軸が平行になるように取付金具30で固定される。光学装置20はレーザ光線201を照射するレーザ発光部21とプリズム14により反射した反射光202を受光するレーザ受光部22を有する。反射光202により光学装置20の照準がデータ処理部23で算出され、入出力処理器40に表示することができる。また、光学装置20は通信部24と表示部25と振動検知部26と音響部27と電源部28とを備える。
【0018】
<入出力処理器>
次に、入出力処理器について
図7および
図8を用いて説明する。
図7は実施形態に係る入出力処理器おけるレチクルの照準点合わせを説明するためのイメージ図である。
図8は実施形態に係る入出力処理器における照準眼鏡で覗く画面と音声ナビゲーションを説明するためのイメージ図である。
入出力処理器40は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)で構成され、
図7に示すように、画面上に光学装置20で算出した光学装置用照準点レチクル43Rおよび照準点43Cが表示可能である。PCは一例であってこれに限定されるものではなく、PC相当のものであればよい。また、光学装置用照準点レチクル43Rに照準点43Cを合わせるのに対し、音声ナビゲーション(SOUND NAVIGATION)にて、調整指示が可能である。例えば、光学装置20で算出した光学装置用照準点レチクル43Rおよび照準点43Cが
図7に示す位置関係にある場合、「距離X分右に調整して下さい。距離Y分下に調整して下さい。」と音声によるナビゲーションが行われる。その音声ナビゲーションに従って、プロジェクタ50に装着されている方向調整機構60により照準点43Cを光学装置用照準点レチクル43Rに合わせる。なお、
図7では照準点43Cが光学装置用照準点レチクル43Rに近づいて行く軌跡が示されている。
また、
図8に示すように、照準眼鏡71で覗く画面である、プロジェクタ用レチクル45R、光学装置用照準点レチクル43Rおよび火器照準軸用レチクル47Rが画面上で切換可能であり、また音声ナビゲーションが可能である。プロジェクタ用レチクル45Rは光学装置用照準点レチクル43Rに対して機械的に決定される距離AおよびBにより表示される。ここで、機械的に決定される距離AおよびBとは、光学装置20の光軸とプロジェクタ50の光軸との距離で、水平方向が距離A、垂直方向が距離B離れている。また、プロジェクタ用照準点45Cは照準点43Cに対して機械的に決定される距離AおよびBにより表示される。例えば、「照準点がレチクルと合いましたら、火器照準用レチクルを照準眼鏡の中心に合わせて下さい。」と音声によるナビゲーションが行われる。
音声ナビゲーション機能により、視準校正の手順が、全て画面と音声で把握することができる。
【0019】
<標的板>
次に、標的板について
図9を用いて説明する。
図9は標的板のイメージ図である。
標的板12にはプリズム14、受光器15、発光器16および火器照準用レチクル17を備えるが、
図7および
図8に示すように、光学装置用照準点レチクル43Rおよびプロジェクタ用レチクル45Rが入出力処理器30の画面に表示される。
図9に示すように、光学装置用照準点レチクル43Rはプリズム14の中心に、プロジェクタ用レチクル45Rは受光器15の中心に位置するように、画面上に表示される。
【0020】
<操作方法>
次に、視準校正装置の操作方法について説明する。
(1)視準校正を行う距離(例えば、20m〜30mの範囲内の所定の距離)に、視準校正板10の本体11を配置する。
(2)プロジェクタ50に光学装置20を取付金具30で取り付ける。なお、プロジェクタ50は火器70の所定の位置に装着されている。
(3)本体11に標的板12を取り付ける。なお、標的板12のプリズム取付板13にはプリズム14が取り付けられている。
(4)入出力処理器30を「ON」にし、視準校正する対象火器を選択する。
(5)光学装置20を「ON」にし、プロジェクタ50に装着している方向調整機構60を調整し、入出力処理器40上で、光学装置用照準点レチクル43Rに光学装置20で算出した照準点43Cを合わせる。
(6)プロジェクタ50から標的板12にレーザ光線を照射し、発光器16のLEDが発光することを確認する。
(7)照準眼鏡71にて、火器照準軸用レチクル47Rが中心にあることを確認する。
上記操作により、火器用照準器71の照準線102と光学装置20の光軸線101とプロジェクタ50のレーザ光軸線103とは平行となる。
【0021】
次に、上記操作方法(4)の視準校正する対象火器について
図10Aから
図10Cを用いて説明する。
図10Aから
図10Cは実施形態に係る処理器画面における光学装置用照準点レチクルとプロジェクタ用レチクルの算出図である。
図10Aは入出力処理器の画面図、
図10Bは光学装置、プロジェクタおよび方向調整機構を示す上面図、
図10Cはその側面図である。
入出力処理器40にて、視準校正する対象火器を選択することで、
図10Aに示すように、対象火器に対応したプロジェクタ用レチクル45R、照準(プリズム用)レチクル43Rおよび火器照準軸用レチクル47Rが表示される。
図10Bおよび
図10Cに示すように、光学装置20とプロジェクタ50の光軸は垂直方向に距離A、水平方向に距離B離れている。プロジェクタ用レチクル45Rは機械的に決定される距離AおよびBにより表示される。
【0022】
次に、上記操作方法(5)の光学装置用照準点レチクルの算出方法について
図11Aおよび
図11Bを用いて説明する。
図11Aおよび
図11Bは実施形態に係る光学装置用照準点レチクルの算出方法を説明するための概要図である。
図11Aは光学装置20の光軸がプリズム14に対して水平方向右に距離X、垂直方向上に距離Yずれて配置されている様子を示している。
図11Bは
図11Aの配置を入出力処理器に表示した画面を示している。
光学装置20のレーザ発光部21より送信されたレーザ光線の照射光201は、標的板12のプリズム14にて全反射され、その反射光202はプロジェクタ50から送信されるレーザ光線の入射光501と同一方向(平行)に光学装置20のレーザ受光部22に戻ってくる。戻ってきたレーザ光線はデータ処理部23にて復調され、通信部24から有線または無線通信路31により入出力処理器40にデータが送信される。入出力処理器40では、光学装置20からのデータにより視準校正中の照準位置(軌跡)を表示する。光学装置20より送信した反射光が戻ってきた際に、光学装置20で算出した照準点43Cと並行して光学装置用照準点レチクル43Rの絶対位置が確定する。レーザ受光部22への受光時間と入射角度によって照準点43Cと光学装置用照準点レチクル43Rが算出される。算出された照準点43Cと光学装置用照準点レチクル43Rは入出力処理器40に表示される。
【0023】
<効果>
本実施形態の効果を以下に説明する。
(1)入出力処理器40にて各照準点およびレチクルが表示できることにより、入出力処理器30の画面を見るだけで、容易に調整が可能となる。
(2)比較例では、標的板のどの位置に可視光のレーザ光線が照射されているのか(どの程度ずれているのか)を射手に対して指示する人員が必要であり、視準校正する際は最低2人必要だったが、本実施形態により1人で対応可能となる。
(3)入出力処理器40で対象火器を設定すると、対応する対象火器の各照準点およびレチクルが表示できるため、対象火器が増えた場合は入出力処理器40のソフトアップデートと標的板の追加のみで対応可能な拡張性を有する。
(4)入出力処理器40にて視準校正の手順が音声ナビゲーションされるため、初心者でも容易に視準校正が可能となる。
(5)視準校正要領が容易になることで、視準校正にかかる時間が短縮される。大規模な訓練において、準備時間の短縮はシステムとして大きなメリットである。
【0024】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。