(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6362230
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】歯科用口腔外吸引フード、歯科用口腔外吸引装置
(51)【国際特許分類】
A61C 17/08 20060101AFI20180712BHJP
A61C 13/00 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
A61C17/08
A61C13/00 M
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-89101(P2017-89101)
(22)【出願日】2017年4月28日
【審査請求日】2017年10月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517152025
【氏名又は名称】坪内 英之
(74)【代理人】
【識別番号】504065110
【氏名又は名称】坪内 哲也
(72)【発明者】
【氏名】坪内 英之
【審査官】
増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2017−029463(JP,A)
【文献】
実開昭64−009620(JP,U)
【文献】
特開2013−087163(JP,A)
【文献】
特開2012−075703(JP,A)
【文献】
実開平01−133121(JP,U)
【文献】
特開2011−146271(JP,A)
【文献】
米国特許第06135770(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 17/06−08
A61C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状をなし、基端側が取り付け端となり、先端側が吸引口となる筒状部と、
前記筒状部の先端側周縁の一部よりもさらに先端側へ延びる透明な部分筒壁部と、を有し、
前記部分筒壁部には、外周側から内周側を見た際に視認対象を拡大するレンズ部が設けられ、
前記レンズ部は、内周側に露出しており、前記部分筒壁部に対して着脱自在に構成されている、歯科用口腔外吸引フード。
【請求項2】
筒状をなし、基端側が取り付け端となり、先端側が吸引口となる筒状部と、
前記筒状部の先端側周縁の一部よりもさらに先端側へ延びる透明な部分筒壁部と、を有し、
前記部分筒壁部には、外周側から内周側を見た際に視認対象を拡大するレンズ部が設けられ、
前記部分筒壁部のうち、少なくとも前記レンズ部の内周側には、吸引の対象となる飛散物による傷を防ぐための交換可能で透明な保護フィルムが貼り付けられている、歯科用口腔外吸引フード。
【請求項3】
前記部分筒壁部には、全体として平板状部位が形成されており、前記平板状部位の少なくとも一部に前記レンズ部が設けられている、請求項1又は2に記載のフード。
【請求項4】
床面に起立した又は天井から垂下させた固定ポールの先端に互いに回転自在に接続された複数のアームと、
前記アームの先端に取り付けられる請求項1〜3のいずれかに記載の吸引フードと、
前記吸引フード及び複数のアームを介して吸引するブロアと、を有する歯科用口腔外吸引装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科治療時に飛散物を吸引除去するための歯科用口腔外吸引装置、及びその先端に取り付けられる吸引フードに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科診療時には、患者の口から血液、唾液、切削粉塵等の飛散物が飛散する傾向にあり、口腔外における義歯の切削においても目に見えない粉塵が飛散する傾向にある。これらの飛散物を吸引除去するために、歯科用口腔外吸引装置が利用されている。例えば特許文献1には、床面に起立した又は天井から垂下させた固定ポールの先端に互いに回転自在に接続された複数のアームと、アームの先端に取り付けられた吸引フードと、吸引フード及び複数のアームを介して吸引するブロアと、を有するいわゆるビルドイン式の歯科用口腔外吸引装置が記載されている。
【0003】
従来の吸引フードは、特許文献1及び
図5に示すように、筒状をなし、基端側X1が取り付けられ、先端側X2が吸引口となる筒状部30と、筒状部30の先端側周縁の一部30aよりもさらに先端側へ延びる透明な部分筒壁部31と、を有する透明樹脂製の吸引フード3が知られている。
【0004】
歯科医師は、患者の口腔内の処置を行う際に、吸引フードを患者の胸の前方に配置し、吸引口を患者の口に向け、部分筒壁部位を患者の口の前方に対応する位置に配置することが多い。このように吸引フードを配置すれば、適切な吸引が可能となる。しかし、吸引フードの部分筒壁部位は透明ではあるものの、部分筒壁部位を通して視認することが想定されていないためか、視認性が良好とはいえない。実際には、吸引フードを患者から少し離し、患者と吸引フードの間の空間を介して患者の横から口腔内を視認することになる。このような使用方法になれば、口腔内からの飛散物を適切に吸引するとはいえない。
【0005】
処置の際には、視認対象を見やすくするために拡大レンズ部を有するメガネを用いる場合があるが、このようなメガネ式の拡大鏡は大変視野が狭く、熟練が必要となる。例えば2.5倍では手の平の指半分までしか見えず、ピントが合わせづらい。歩行時や遠くを見るときには外す必要があるため、度重なる着脱動作が必要で煩わしい。また、頭部に装着しているために、適切な拡大率にするためには、頭部を動かさなければならず、器材を取るためなどに視線を変えれば、視線を戻すたびに拡大率を調節し直さなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−75703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、その目的は、飛散物の適切な吸引と、視認対象の拡大視認するための作業の効率化と、を両立することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、次のような手段を講じている。
【0009】
すなわち、本発明の歯科用口腔外吸引フードは、筒状をなし、基端側が取り付け端となり、先端側が吸引口となる筒状部と、前記筒状部の先端側周縁の一部よりもさらに先端側へ延びる透明な部分筒壁部と、を有し、前記部分筒壁部には、外周側から内周側を見た際に視認対象を拡大するレンズ部が設けられる。
【0010】
この構成によれば、吸引フードのうち、対面が存在しない部分筒壁部にレンズ部が設けられているので、拡大メガネを着用しなくても、吸引フード(レンズ部)を介した視認が可能となる。
さらに、レンズ部を介して視認しやすい位置に吸引フードを配置すれば、自然と吸引口も視認対象の近くに配置されるので、拡大視認に必要な作業と、吸引口の位置極めとを同時に行うことができ、効率的である。
さらにまた、吸引フードを一度位置決めすれば、その位置が保持されるので、視線を動かしても、再度ピントを調節する必要もない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の歯科用口腔外吸引装置及び吸引フードを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。
【0013】
図1及び
図2に示すように、歯科用口腔外吸引装置は、床面に起立した又は天井から垂下させた固定ポール(非図示)と、固定ポールの先端に互いに回転自在に接続された複数のアーム2と、アーム2の先端に取り付けられた吸引フード3と、吸引フード3及び複数のアーム2を介して吸引するブロア4と、を有する。
図1に示す装置は、いわゆるビルドインタイプであるが、これに限定されない。吸引フード3は、アーム2の先端に着脱可能に構成されている。複数のアーム2のうち先端に近い部分のアームには、吸引フード3の向き及び位置を変更する際に使用する把手21が設けられており、歯科医師は把手21を把持して、吸引フード3の向き及び位置を変更する。
【0014】
吸引フード3は、筒状をなし、基端側X1が取り付け端となりアーム2に取り付けられ、先端側X2が吸引口となる筒状部30と、筒状部30の先端側周縁の一部30aよりもさらに先端側X2へ延びる透明な部分筒壁部31と、を有する。吸引フード3は、樹脂製であるが、これに限定されず、ガラス等の種々の材料を使用できるが、重量の観点から樹脂製が好ましい。
【0015】
部分筒壁部31には、外周側Y1から内周側Y2を見た際に視認対象を拡大するレンズ部5が設けられている。レンズ部5は、凸レンズ、フレネルレンズが採用可能である。
【0016】
筒状部30の基端部には、網部30bが設けられ、不意に大きなものを誤吸引することを防止するように構成されている。
図1及び
図2に示す例では、筒状部30は、基端から先端に向かうにつれて径が大きくなるラッパ形状に形成されているが、筒状であればこの形状に限定されない。例えば、楕円筒、四角筒など種々変更可能である。また、部分筒壁部31は、断面が部分円弧であるが、これに限定されない。
図3に示すように、平板状部位31aを有してもよい。
図3の例では、平板状部位31aの少なくとも一部にレンズ部5が設けられている。すなわち、平板状部位31aの全てをレンズ部5としてもよいし、平板状部位31aの一部のみをレンズ部5としてもよい。
【0017】
部分筒壁部31にレンズ部5を設ける方法としては、
図4に示す2つの方法が挙げられる。なお、
図4ではレンズ部5の詳細構造を図示していない。
図4(a)に示す構造は、部分筒壁部31を構成する部材の外周側Y1にレンズ部5を配置して、レンズ部5を保護する構造である。
図4(b)に示す構造は、レンズ部5を内周側Y2に露出させた構造である。
【0018】
吸引フード3を介した吸引の対象となる飛散物には、金属塵などが含まれ、これらの高硬度の物質が吸引フード3に衝突することにより、吸引フード3に傷がつき、レンズ部5を介した視認性が悪化する傾向にあると考えられる。この問題を解決するためには、
図4(b)に示す構造の場合は、レンズ部5に傷が付くため、レンズ部5を部分筒壁部31に着脱自在に構成して、交換可能にすることが好ましい。若しくは、
図4(b)に示す構造の場合には、レンズ部5の内周側Y2に、透明な保護フィルムを貼り付け、保護フィルムを交換可能にすることが好ましい。
【0019】
図4(a)の構造の場合には、少なくともレンズ部5の内周側Y2にある部分筒壁部31には、透明な保護フィルムを貼り付け、保護フィルムを交換可能にすることが好ましい。
【0020】
以上のように、本実施形態の歯科用口腔外吸引フード3は、筒状をなし、基端側X1が取り付けられ、先端側X2が吸引口となる筒状部30と、筒状部30の先端側周縁の一部30aよりもさらに先端側X2へ延びる透明な部分筒壁部31と、を有する。部分筒壁部31には、外周側Y1から内周側Y2を見た際に視認対象を拡大するレンズ部5が設けられている。
【0021】
この構成によれば、吸引フード3のうち、対面が存在しない部分筒壁部31にレンズ部5が設けられているので、拡大メガネを着用しなくても、吸引フード3(レンズ部5)を介した視認が可能となる。
さらに、レンズ部5を介して視認しやすい位置に吸引フード3を配置すれば、自然と吸引口も視認対象の近くに配置されるので、拡大視認に必要な作業と、吸引口の位置極めとを同時に行うことができ、効率的である。
さらにまた、吸引フード3を一度位置決めすれば、その位置が保持されるので、視線を動かしても、再度ピントを調節する必要もない。
【0022】
本実施形態では、レンズ部5は、内周側Y2に露出しており、部分筒壁部31に対して着脱自在に構成されている。
【0023】
この構成によれば、レンズ部5が内周側Y2に露出しているので、飛散物により傷がつき、そのうち視認性が悪くなるが、視認性が悪くなっても、部分筒壁部31に対してレンズ部5を着脱自在に構成しているので、取替え可能となり、良好な視認性を確保可能となる。
【0024】
本実施形態では、部分筒壁部31のうち、少なくともレンズ部5の内周側には、保護フィルムが貼り付けられている。
【0025】
この構成によれば、保護フィルムが代わりに傷つくことになるので、保護フィルムを交換すればよく、良好な視認性を確保可能となる。
【0026】
本実施形態では、部分筒壁部31には、全体として平板状部位31aが形成されており、平板状部位31aの少なくとも一部にレンズ部5が設けられている。
【0027】
この構成によれば、平板状部位31aを介して視認する場合には、湾曲部位を介して視認する場合に比べて、視界が湾曲しにくくなり、視認性を高めることが可能となる。平板状部位31aの一部にレンズ部5が設けられる場合には、レンズ部5が設けられていない平板状部位31aを介して視認する際にも、視認性が向上する。
【0028】
本実施形態の歯科用口腔外吸引装置は、床面に起立した又は天井から垂下させた固定ポールの先端に互いに回転自在に接続された複数のアーム2と、アーム2の先端に取り付けられる上記の吸引フード3と、吸引フード3及び複数のアーム2を介して吸引するブロア4と、を有する。
【0029】
本実施形態の吸引フード3の好ましい適用例である。
【0030】
本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
【符号の説明】
【0031】
2…アーム
3…吸引フード
30…筒状部
31…部分筒壁部
31a…平板状部位
4…ブロア
5…レンズ部
X1…基端側
X2…先端側
Y1…外周側
Y2…内周側
【要約】
【課題】飛散物の適切な吸引と、視認対象の拡大視認するための作業の効率化と、を両立する。
【解決手段】歯科用口腔外吸引フード3は、筒状をなし、基端側X1が取り付けられ、先端側X2が吸引口となる筒状部30と、筒状部30の先端側周縁の一部30aよりもさらに先端側X2へ延びる透明な部分筒壁部31と、を有する。部分筒壁部31には、外周側Y1から内周側Y2を見た際に視認対象を拡大するレンズ部5が設けられている。
【選択図】
図1