(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6362236
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】バーナー用触媒金具、操作方法、および熱風溶接機
(51)【国際特許分類】
F23C 13/02 20060101AFI20180712BHJP
F23D 14/18 20060101ALI20180712BHJP
F23D 14/28 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
F23C13/02
F23D14/18 B
F23D14/28 A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-523010(P2017-523010)
(86)(22)【出願日】2016年10月24日
(86)【国際出願番号】JP2016081498
【審査請求日】2017年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】516141820
【氏名又は名称】株式会社TOSHO
(74)【代理人】
【識別番号】100167184
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】東 義春
【審査官】
藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】
実開平4−108124(JP,U)
【文献】
米国特許第4911143(US,A)
【文献】
特開2001−173906(JP,A)
【文献】
特開2000−179807(JP,A)
【文献】
特開昭63−207914(JP,A)
【文献】
特開平5−306804(JP,A)
【文献】
特開平5−322110(JP,A)
【文献】
特開平5−231622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23C 13/02
F23D 14/18
F23D 14/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状をなし一端側がバーナーの炎の噴出部位に装着され、内部に触媒作用を発揮する部材が配置され側部に開口部が形成された筐体と、
前記開口部を覆う筒部と把持部とを備え、前記バーナーの炎の噴出前に前記開口部を開いておき、噴出後に前記開口部の開口面積を小さくする調節部と、
を有し、
前記筐体には突起が設けられており、
前記調節部は、前記開口部が開いている第1の位置において前記突起と係合する第1の係合部と、前記開口部を全て覆う第2の位置において前記突起と係合する第2の係合部と、を有する溝部を有し、
前記把持部が把持され前記筒部が回転することにより、前記突起と前記第1の係合部との係合が解除され、前記筒部が前記開口部の開口面積を小さくする方向に移動された後に前記筒部が回転することにより、前記突起が前記第2の係合部に係合するよう構成されていることを特徴とするバーナー用触媒金具。
【請求項2】
筒状をなし一端側がガスバーナーの炎の噴出部位に装着され、内部に触媒作用を発揮する部材が配置され側部に開口部が形成された筐体と、前記開口部を覆う筒部と把持部とを備え、前記開口部の開口面積を調節する調節部と、を有し、前記調節部は、前記開口部が開いている第1の位置において前記筐体に設けられた突起と係合する第1の係合部と、前記開口部を全て覆う第2の位置において前記突起と係合する第2の係合部と、を有する溝部を有するバーナー用触媒金具が取り付けられたガスバーナーを用意し、
前記バーナーの炎の噴出前に前記開口部を開いておき、噴出後に前記開口部の開口面積を小さくするときに、前記把持部を把持して前記筒部を回転させることにより、前記突起と前記第1の係合部との係合を解除し、前記筒部を前記開口部の開口面積を小さくする方向に移動した後に前記筒部を回転させることにより、前記突起を前記第2の係合部に係合させることを特徴とする操作方法。
【請求項3】
筒状をなし一端側がバーナーの炎の噴出部位に装着され、内部に触媒作用を発揮する部材が配置され側部に開口部が形成された筐体と、前記開口部を覆う筒部と把持部とを備え、前記バーナーの炎の噴出前に前記開口部を開いておき、噴出後に前記開口部の開口面積を小さくする調節部と、を有するバーナー用触媒金具と、
燃料ガスを収容するガスタンクからの燃料ガスを噴出する噴出部と前記燃料ガスの流量を調節する調節部とを備えるバーナー本体と、を有し、
前記筐体には突起が設けられており、
前記調節部は、前記開口部が開いている第1の位置において前記突起と係合する第1の係合部と、前記開口部を全て覆う第2の位置において前記突起と係合する第2の係合部と、を有する溝部を有し、
前記把持部が把持され前記筒部が回転することにより、前記突起と前記第1の係合部との係合が解除され、前記筒部が前記開口部の開口面積を小さくする方向に移動された後に前記筒部が回転することにより、前記突起が前記第2の係合部に係合するよう構成されていることを特徴とする熱風溶接機。
【請求項4】
前記把持部が前記筒部に対して着脱可能である請求項1に記載のバーナー用触媒金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバーナー用触媒金具、操作方法、および熱風溶接機に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスの熱源を利用して、温風や熱風を発生させる装置が知られている。例えば、知られている装置においては、ガスノズルから噴出したガスは、高速ガス流の噴出効果によって吸気口から空気を吸引する。こうして、混合部で燃料ガスは空気と混合された混合ガスとなって、燃焼室に供給される。燃焼室の内部には触媒体が設けられており、混合ガスは触媒体の内部を通過するものである。このときに触媒体の触媒作用によって触媒燃焼し、燃焼熱を発生するようになっている。燃焼室の混合ガス入口と反対側には、点火装置が設けられている。
【0003】
使用者は、始動時には混合ガスに点火する。点火された混合ガスによって、触媒体の下流には小さな火炎が形成される。この火炎によって触媒体は加熱され、触媒体の温度が上昇する。こうして触媒体が活性温度に達すると、触媒体の表面で触媒燃焼が開始される。触媒燃焼が開始されると、火炎が触媒燃焼で吸収されて火炎は消滅する。この状態で、燃焼室に供給している混合ガスは、触媒体の全体で触媒燃焼を行ない、燃焼ガスは排気口から排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−179807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
小型で携帯できるサイズのバーナーを用いて強い熱風を作成する場合を考える。この場合、火力の強いバーナーを用いて限られたスペースに触媒体を置いて熱風を作成することになる。触媒体を加熱する際には多量の空気をスペースに取り入れないと火が消えてしまう。しかし、多量の空気をスペースに取り入れ続けると、今度は触媒体に触媒作用を発揮させた後に炎を消すことが困難である。
1つの側面では、本発明は、小型で携帯できるサイズのバーナーを用いて多量の熱風を作成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、開示のバーナー用触媒金具が提供される。このバーナー用触媒金具は、筒状をなし一端側がバーナーの炎の噴出部位に装着され、内部に触媒作用を発揮する部材が配置され側部に開口部が形成された筐体と、バーナーの炎の噴出前に開口部を開いておき、噴出後に開口部の開口面積を小さくする調節部と、を有している。
【発明の効果】
【0007】
1態様では、小型で携帯できるサイズのバーナーを用いて多量の熱風を作成することができる。
本発明の上記および他の目的、特徴および利点は本発明の例として好ましい実施の形態を表す添付の図面と関連した以下の説明により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】第2の位置に位置しているときの筒部を説明する図である。
【
図5】第1の位置と第2の位置を説明する断面図である。
【
図6】変形例のバーナー用触媒金具を説明する図である。
【
図7】変形例のバーナー用触媒金具を説明する図である。
【
図8】異なる形状の把持部を取り付けたときのバーナー用触媒金具を説明する図である。
【
図9】ノズルが装着された変形例のバーナー用触媒金具を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態の熱風溶接機を、図面を参照して詳細に説明する。
<実施の形態>
図1は、実施の形態の熱風溶接機を示す図である。
実施の形態の熱風溶接機1は、例えば、長尺シート等のつなぎ目の溶接や、シートの補修等に用いられる。
【0010】
熱風溶接機1は、バーナー本体2にガスボンベ100が取り付けられている。ガスボンベ100としては、例えば、プロパン、ブタン等の液化石油ガスが充填されるカセットコンロ用のカセットボンベ等が挙げられる。
【0011】
バーナー本体2は、ガスボンベ100の液化ガスを燃料にして炎を噴出する。このバーナー本体2は、ガスボンベ100を装着する装着部21と、ガスボンベ100に充填されている液体ガスを気化したガスを火口管22に導くガス流路(図示せず)とを有している。また、バーナー本体2は、火口管22において空気と混合された混合ガスに点火する点火部(図示せず)を有している。
また、バーナー本体2には、ガス流路を流れるガスの流量を調節する調節ネジ23が設けられている。
火口管22の先端側にはバーナー用接触金具3が、火口管22に対して着脱自在に取り付けられている。
バーナー用接触器具3は、筐体31と、調節部32とを有している。
【0012】
筐体31は、筒状をなしている。この筐体31の側部には、空気を筐体31内部に取り入れる開口部311が形成されている。なお、開口部の形状や、数は図示のものに限定されない。
調節部32は、開口部311の開口面積を調節する際に用いる。
バーナー用接触器具3の先端側にはV字型のノズル4がバーナー用接触器具3に対して着脱自在に取り付けられている。
【0013】
ノズル4には、溶接棒(図示せず)を通す筒41が設けられている。なお、本実施の形態では、長尺シート等のつなぎ目の溶接を行う場合に適するノズル4を図示している。しかし、熱風の利用用途に応じてノズル4は、任意の形状のものに付け替えることができる。
【0014】
熱風溶接機1では、火口管22から噴出した炎により、バーナー用接続器具3において触媒作用(触媒燃焼)を起こして熱風に変える。この熱風を用いて溶接棒を溶かし、長尺シート等のつなぎ目を溶接する。
図2は、筐体を説明する図である。
図2は、筐体31を基端側から見た図である。
【0015】
筐体31内には、網目形状のセラミック312が配置されている。セラミック312は、触媒作用(触媒燃焼)を起こすときに用いられる。このセラミック312には触媒作用を起こす粉末が付着している。以下の説明では、粉末が付着したセラミック312を「触媒体」と言う。
図3は、調節部を説明する図である。
【0016】
調節部32は、筐体31よりも半径が一回り大きな筒状の筒部321を有している。筒部321は、筐体31の長手方向(
図3中上下方向)に相対的な位置の移動が可能である。
また、調節部32は、把持部322を有している。利用者は、筐体31に対して筒部321の位置を移動させる際に把持部322を使用する。
筐体31の側部には、突起313が設けられており、筒部321の側部には、突起313に対応する溝部321aが形成されている。
溝部321aは、係合部321a1と、係合部321a2とを有している。
【0017】
係合部321a1は、筒部321が開口部311を覆わず、開口部311が全て開口した位置(
図3に示す位置、以下「第1の位置」という)において突起313と係合することにより、筒部321を第1の位置に保持する。
【0018】
係合部321a2は、筒部321が開口部311を全て覆う位置(以下「第2の位置」という)において突起313と係合することにより、筒部321を第2の位置に保持する係合部321a2とを有する。
【0019】
第1の位置において、開口部311から筐体31内部に触媒体が触媒作用を発揮する際に十分な空気を取り入れることができる。なお、第1の位置において筒部321が開口部311を一部覆っていてもよい。筒部321が開口部311を覆う面積は、筒部321内に取り入れる空気の量によって適宜選択することができる。
【0020】
筒部321を第1の位置から第2の位置に移動させる際には、利用者は把持部322を把持して時計回り(
図3では紙面奥側から紙面手前側に)に回転させる。これにより、突起313と係合部321a1との係合状態が解除される。そして、利用者は
図3の上方向に把持部322を移動させる。これにより、開口部311の開口面積が少しずつ小さくなる。
その後、突起313が溝部321aに当接する時点では、開口部311の全てが筒部321により覆われている。
利用者は把持部322を反時計回りに回転させる。これにより、突起313が係合部321a2に係合する。
【0021】
図4は、第2の位置に位置しているときの筒部を説明する図である。
図5は、第1の位置と第2の位置を説明する断面図である。
図5(a)が第1の位置のバーナー用接触器具3の断面図であり、
図5(b)が第2の位置のバーナー用接触器具3の断面図である。
次に、熱風溶接機1の利用方法の一例を説明する。
【0022】
利用者は、把持部322を把持して筒部321を第1の位置に保持する。その後、利用者は、調節ネジ23を用いて火口管22にガスを排出させる。その後、利用者は点火部を操作して混合ガスに点火する。点火されたガスによって勢いの強い火炎が発生し、触媒体が加熱され、触媒体の温度が上昇する。その後、利用者は、把持部322を把持して筒部321を第2の位置に保持する。これにより、筒部321内部に供給される空気の量が低減する。このため火炎は見た目消滅するが、本体2と火口管22の間から筒部321には一定量の空気は供給されるため、触媒体が活性温度に達し、触媒体の表面で触媒燃焼が開始される。このとき、触媒体自体は青白い炎で燃焼し続ける。ノズル4の先端部からは熱風が排出され、利用者はこの熱風を利用して溶接棒を用いて長尺シート等のつなぎ目の溶接を行う。
【0023】
以上述べたように、熱風溶接機1によれば、点火の際に取り入れる空気の量を調整できる。具体的には、点火時には、開口部311から多量の空気を取り入れ、その後開口部311を覆うようにした。これにより、小型で携帯できるサイズのバーナーを用いて火力の強い炎を起こした場合においても筐体31内のスペース内で触媒作用を起こし、強い熱風を作成することができる。
<第1変形例>
【0024】
図6および
図7は、変形例のバーナー用触媒金具を説明する図である。
図1と同じ機能を持つ部分には同じ符号を付している。なお、
図6ではノズル4の表記を省略している。
【0025】
変形例のバーナー用接触器具3aは、調節部32aの形状が
図1に示すバーナー用接触器具1とは異なっている。具体的には、調節部32aは、把持部322が筒部321に対して着脱可能になっている。筒部321には、突起323、324が設けられている。また、変形例の把持部322には、突起323、324に対応する孔部(図示せず)が設けられている。これにより、利用者が右利きであっても左利きであっても、使いやすい方に把持部322をセットすることができる。また、把持部322を取り外すことで作業の妨げにならない。さらに、熱風により把持部322が加熱され、誤って利用者に触れてしまうことを抑制することができる。
さらに、調節部32aにおいては、把持部322とは異なる形状の把持部を筒部321に取り付けることもできる。
図8は、異なる形状の把持部を取り付けたときのバーナー用触媒金具を説明する図である。なお、
図8ではノズル4の表記を省略している。
【0026】
把持部322aは、突起323、324に係合する係合部322a1を有している。係合部322a1には、係合部322a1を突起323、324から着脱できる遊びが設けられている。係合部322a1を突起323、324に係合させる際には、利用者は把持部322aの取っ手部分を把持してバーナー用接触器具3aの先端側から把持部322aを潜らせる。
【0027】
図8に示す状態においては、利用者は把持部322aの取っ手部分を把持して筒部321を時計回り、反時計回りに回転させることで突起313を係合部321a1に係合させたり、係合部321a2に係合させたりすることができる。
図9は、ノズルが装着された変形例のバーナー用触媒金具を説明する図である。
【0028】
把持部322aの環状部分の切り欠き部322a2(切り欠き部の他方の端部は調節部32aの裏に隠れてみえない)の長さは筒部321の断面の直径よりも大きく形成されている。このため、ノズル4が装着された状態であっても把持部322aを筒部321から離脱させることができる。
【0029】
以上、本発明のバーナー用触媒金具、操作方法、および熱風溶接機を、図示の実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物や工程が付加されていてもよい。
また、本発明は、前述した各実施の形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0030】
上記については単に本発明の原理を示すものである。さらに、多数の変形、変更が当業者にとって可能であり、本発明は上記に示し、説明した正確な構成および応用例に限定されるものではなく、対応するすべての変形例および均等物は、添付の請求項およびその均等物による本発明の範囲とみなされる。
【符号の説明】
【0031】
1 熱風溶接機
2 バーナー本体
21 装着部
22 火口管
23 調節ネジ
3、3a バーナー用接触器具
31 筐体
100 ガスボンベ
311 開口部
312 セラミック
313 突起
32 調節部
321 筒部
321a 溝部
321a1、321a2 係合部
322、322a 把持部
323、324 突起
【要約】
多量の熱風を作成すること。熱風溶接機1は、筒状をなし一端側がバーナーの炎の噴出部位に装着され、内部に触媒作用を発揮する部材が配置され側部に開口部311が形成された筐体31と、バーナーの炎の噴出前に開口部311を開いておき、噴出後に開口部311の開口面積を小さくする調節部32と、を有する。