(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
吸収体と、この吸収体の表側及び裏側をそれぞれ覆う液透過性トップシート及び液不透過性シートと、幅方向両側にそれぞれ前後方向に沿って延在された立体ギャザーとを備えており、
前記立体ギャザーは、複数層構造のギャザーシートと、このギャザーシートの層間に前後方向に沿って固定された、細長状のギャザー弾性伸縮部材とを有するものであり、
前記ギャザーシートは、吸収性物品の側部に固定された付根部分と、この付根部分から突出する突出部分と、この突出部分のうち前後端部にそれぞれ設けられ、倒伏状態で本体部の表面に対して固定された倒伏部と、突出部分のうち前後の倒伏部間に位置する非固定の自由部分と、を有しており、
このギャザーシートにおける前記自由部分の少なくとも先端部に、前記ギャザー弾性伸縮部材が前後方向に伸張した状態で固定されている、
吸収性物品において;
前記ギャザーシートにおける、前記ギャザー弾性伸縮部材の一方側及び他方側にそれぞれ位置する第1層及び第2層は、前後方向に間欠的に配された、前記ギャザー弾性伸縮部材と交差して連続する接着剤又は溶着加工により接合されて、接合加工部が形成されており、
前記ギャザー弾性伸縮部材が、前記接合加工部と交差する位置で前記第1層及び第2層の少なくとも一方に固定されており、
前記弾性伸縮部材の収縮に伴い前記第1層及び第2層が収縮することにより、前記第1層及び第2層における接合加工部間に位置する部分が互いに反対向きに膨らんでそれぞれ襞が形成されており、
前記接合加工部は、少なくとも前記自由部分における先端部より基端側の部分全体にわたるように、前記ギャザーシートの突出方向に連続している、
ことを特徴とする吸収性物品。
前記ギャザーシートの突出部分は、表面側において幅方向中央側に向かって延出する基端側部分と、この基端側部分の先端から幅方向外側に折り返された先端側部分とを有している、請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
吸収体と、この吸収体の表側及び裏側をそれぞれ覆う液透過性トップシート及び液不透過性シートと、幅方向両側にそれぞれ前後方向に沿って延在された立体ギャザーとを備えており、
前記立体ギャザーは、複数層構造のギャザーシートと、このギャザーシートの層間に前後方向に沿って固定された、細長状のギャザー弾性伸縮部材とを有するものであり、
前記ギャザーシートは、吸収性物品の側部に固定された付根部分と、この付根部分から突出する突出部分と、この突出部分のうち前後端部にそれぞれ設けられ、倒伏状態で本体部の表面に対して固定された倒伏部と、突出部分のうち前後の倒伏部間に位置する非固定の自由部分と、を有しており、
このギャザーシートにおける前記自由部分の少なくとも先端部に、前記ギャザー弾性伸縮部材が前後方向に伸張した状態で固定されている、
吸収性物品において;
前記ギャザーシートにおける、前記ギャザー弾性伸縮部材の一方側及び他方側にそれぞれ位置する第1層及び第2層は、前後方向に間欠的に配された、前記ギャザー弾性伸縮部材と交差して連続する接着剤又は溶着加工により接合されて、接合加工部が形成されており、
前記ギャザー弾性伸縮部材が、前記接合加工部と交差する位置で前記第1層及び第2層の少なくとも一方に固定されており、
前記弾性伸縮部材の収縮に伴い前記第1層及び第2層が収縮することにより、前記第1層及び第2層における接合加工部間に位置する部分が互いに反対向きに膨らんでそれぞれ襞が形成されており、
前記接合加工部が、前記ギャザー弾性伸縮部材に沿う方向に往復しつつ前記ギャザー弾性伸縮部材と直交する方向に連続する波状をなしている、
ことを特徴とする吸収性物品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、立体ギャザーの肌への当りを柔軟にするために、柔軟性に優れたギャザーシートを用いる等、立体ギャザーの剛性(コシ)を低下させると、装着中にヨレやズレが発生し易くなり、漏れの発生を助長するおそれがある。かといって、立体ギャザーは肌に対して弾力的に密着する部分であるから、単に剛性を高めたのでは、装着者の動きに対して追従変形し難くなるだけでなく、肌触りが硬質となってしまう。
【0007】
そこで、本発明の主たる課題は、立体ギャザーにおける肌触りの柔軟性及び追従変形性の低下を抑えつつ剛性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
吸収体と、この吸収体の表側及び裏側をそれぞれ覆う液透過性トップシート及び液不透過性シートと、幅方向両側にそれぞれ前後方向に沿って延在された立体ギャザーとを備えており、
前記立体ギャザーは、複数層構造のギャザーシートと、このギャザーシートの層間に前後方向に沿って固定された、細長状のギャザー弾性伸縮部材とを有するものであり、
前記ギャザーシートは、吸収性物品の側部に固定された付根部分と、この付根部分から突出する突出部分と、この突出部分のうち前後端部にそれぞれ設けられ、倒伏状態で本体部の表面に対して固定された倒伏部と、突出部分のうち前後の倒伏部間に位置する非固定の自由部分と、を有しており、
このギャザーシートにおける前記自由部分の少なくとも先端部に、前記ギャザー弾性伸縮部材が前後方向に伸張した状態で固定されている、
吸収性物品において;
前記ギャザーシートにおける、前記ギャザー弾性伸縮部材の一方側及び他方側にそれぞれ位置する第1層及び第2層は、前後方向に間欠的に配された、前記ギャザー弾性伸縮部材と交差して連続する接着剤又は溶着加工により接合されて、接合加工部が形成されており、
前記ギャザー弾性伸縮部材が、前記接合加工部と交差する位置で前記第1層及び第2層の少なくとも一方に固定されており、
前記弾性伸縮部材の収縮に伴い前記第1層及び第2層が収縮することにより、前記第1層及び第2層における接合加工部間に位置する部分が互いに反対向きに膨らんでそれぞれ襞が形成されており、
前記接合加工部は、少なくとも前記自由部分における先端部より基端側の部分全体にわたるように、前記ギャザーシートの突出方向に連続している、
ことを特徴とする吸収性物品。
【0009】
(作用効果)
本発明の立体ギャザーでは、第1層及び第2層を接合する接合加工部がギャザー弾性伸縮部材と交差して連続し、立体ギャザーの突出方向に連続する襞が形成されるため、この襞が骨のような役割を果たして立体ギャザーの突出方向の剛性が高くなり、ヨレやズレが発生し難くなる。そして、その割には、襞は前後方向に間欠的であるため、装着者の動きに対して追従変形し易いものとなる。さらに、接合加工部は硬質なものとなるが、襞間、潰れた襞の壁部、倒れた襞により肌側に露出し難くなるため、肌触りが硬質となり難い点も重要である。
【0010】
なお、本発明において接合加工部を形成するための接着剤が連続するとは、接合加工部とギャザー弾性伸縮部材とが交差する部分において、ギャザー弾性伸縮部材の第1層側及び第2層側の両方で接着剤が伸縮方向と交差する方向に連続する形態の他、ギャザー弾性伸縮部材が介在するためにいずれか一方側では接着剤が連続するが他方側では伸縮方向と交差する方向に接着剤が不連続となっている形態も含む。
【0011】
また、本発明において接合加工部を形成するための溶着加工が連続するとは、第1層及び第2層の少なくとも一方で溶着加工跡が連続する限り、第1層及び第2層とギャザー弾性伸縮部材とがそれぞれ溶着して第1層及び第2層が間接的に溶着することにより溶着が連続する形態だけでなく、接合加工部とギャザー弾性伸縮部材とが交差する部分においてギャザー弾性伸縮部材が介在するために第1層及び第2層間の溶着が連続しない形態も含む。
【0012】
さらに、ギャザー弾性伸縮部材が接合加工部と交差する位置でシートに固定されているとは、ギャザー弾性伸縮部材と接合加工部とが交差する位置で、ギャザー弾性伸縮部材とシートとが接着(接着剤による接着の他、溶着を含む。以下同じ。)されている形態だけでなく、ギャザー弾性伸縮部材とシートとは接着されていないが、伸縮方向と交差する方向の接合加工部の間隔がギャザー弾性伸縮部材の自然長時の太さよりも狭く、ギャザー弾性伸縮部材が接合加工部間に挟持されることで固定される結果、ギャザー弾性伸縮部材の収縮力が接合加工部と交差する位置でシートに伝達される形態も含まれる。後者の原理は、例えば、特開2008−154998号公報、特開2009−106667号公報記載の原理と共通するものである。
【0013】
<請求項2記載の発明>
各接合加工部の伸縮方向の幅が4mm以下であり、隣り合う接合加工部の間隔が4〜8mmである、請求項1記載の吸収性物品。
【0014】
(作用効果)
本項記載の発明は、隣り合う接合加工部の間隔及び各接合加工部の伸縮方向の幅を特定の範囲で組み合わせ、立体ギャザー表面に形成される襞に十分な高さと倒れにくさを両立させるものである。本発明において、各接合加工部の伸縮方向の幅は隣り合う襞の間隔に影響を及ぼすものであり、この幅が4mmを超えると、隣り合う襞の間が広くなり過ぎ、個々の襞が独立した見栄えとなるだけでなく、厚み方向の圧縮力により襞が潰れ広がる、倒れる等の変形をするとき、隣り合う襞が支え合う作用が弱くなる結果、変形に対する抵抗あるいは変更後の復元も弱くなり、結果的にフンワリ感が不十分となってしまう。
【0015】
しかも、単に接合加工部の伸縮方向の幅を4mm以下とするだけで、隣り合う接合加工部の間隔を4mm未満8mm超とした場合には次のようになる。すなわち、隣り合う接合加工部の間隔は剛性及び追従変形性に影響するものであり、3mm以下になると襞が殆ど形成されず、襞による立体ギャザーの突出方向の剛性向上が乏しいものとなる(伸縮方向に間欠的に接合加工部を設ける意味が無くなる)。また、接合加工部の間隔が8mmを超えると、包装時の圧縮により襞が不規則に潰れてしまい、襞による肌触りの柔軟性の向上が損なわれるおそれがある。これに対して、接合加工部の伸縮方向の幅を4mm以下とし、かつ接合加工部の間隔を4〜8mmとすると、剛性及び追従変形性のバランスが良く、かつ、襞による肌触りの柔軟性も十分に確保される。
【0016】
<請求項3記載の発明>
前記ギャザー弾性伸縮部材は、前記自由部分の先端側に、複数本間隔を空けて設けられており、
これらギャザー弾性伸縮部材における隣り合うギャザー弾性伸縮部材の間隔が10mm以下である、請求項1又は2記載の吸収性物品。
【0017】
(作用効果)
隣り合うギャザー弾性伸縮部材の間隔(中心間隔ではない)が10mmを超えると、襞の厚みが伸縮方向と交差する方向に変化し、襞の形状が不規則になり易い。よって、襞を規則的な形状とするならば、隣り合う弾性伸縮部材の間隔は10mm以下とすることが好ましい。
【0018】
<請求項4記載の発明>
前記第1層及び第2層はそれぞれ、厚み0.1〜1mm、目付10〜20g/m
2の不織布である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0019】
(作用効果)
本発明は、このような第1層及び第2層に特に好適なものである。
【0020】
<請求項5記載の発明>
前記立体ギャザーを完全に伸長した状態における前記ギャザー弾性伸縮部材の伸長率が150〜350%である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0021】
(作用効果)
このような伸長率を採用することにより、上述の本発明の作用効果がより顕著なものとなる。なお、伸長率とは自然長を100%としたときの値を意味する。
【0022】
<請求項6記載の発明>
前記ギャザーシートの突出部分は、表面側において幅方向中央側に向かって延出する基端側部分と、この基端側部分の先端から幅方向外側に折り返された先端側部分とを有している、請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0023】
(作用効果)
このように突出部分が折り返されて、先端側部分が面的に身体に接する面接触タイプの立体ギャザーは、線接触タイプと比べて、ヨレやズレが発生すると好ましい接触状態が維持され難い一方で、肌に対する当りは強くなり難い。よって、このような面接触タイプの立体ギャザーに本発明を適用すると、面接触タイプの短所である形状維持性を本発明の襞による剛性向上により補いつつ、剛性向上により短所となりかねない肌触りの悪化を面接触タイプの長所により補うことができるため好ましい。
【0024】
<請求項7記載の発明>
前記接合加工部が、前記ギャザー弾性伸縮部材と直交する方向に対し傾斜した方向に沿って連続している、請求項1〜6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0025】
(作用効果)
本発明の立体ギャザーでは、ギャザー弾性伸縮部材と交差する方向に延びる襞が前後方向に多数形成されるため、通気性の点では好ましいものとなるが、襞間を通って漏れが発生するおそれがある。そこで、本項記載のように、接合加工部の向きを傾斜させて、襞間の通路長を長くし、漏れ防止性を高めるのは一つの好ましい形態である。
【0026】
<請求項8記載の発明>
吸収体と、この吸収体の表側及び裏側をそれぞれ覆う液透過性トップシート及び液不透過性シートと、幅方向両側にそれぞれ前後方向に沿って延在された立体ギャザーとを備えており、
前記立体ギャザーは、複数層構造のギャザーシートと、このギャザーシートの層間に前後方向に沿って固定された、細長状のギャザー弾性伸縮部材とを有するものであり、
前記ギャザーシートは、吸収性物品の側部に固定された付根部分と、この付根部分から突出する突出部分と、この突出部分のうち前後端部にそれぞれ設けられ、倒伏状態で本体部の表面に対して固定された倒伏部と、突出部分のうち前後の倒伏部間に位置する非固定の自由部分と、を有しており、
このギャザーシートにおける前記自由部分の少なくとも先端部に、前記ギャザー弾性伸縮部材が前後方向に伸張した状態で固定されている、
吸収性物品において;
前記ギャザーシートにおける、前記ギャザー弾性伸縮部材の一方側及び他方側にそれぞれ位置する第1層及び第2層は、前後方向に間欠的に配された、前記ギャザー弾性伸縮部材と交差して連続する接着剤又は溶着加工により接合されて、接合加工部が形成されており、
前記ギャザー弾性伸縮部材が、前記接合加工部と交差する位置で前記第1層及び第2層の少なくとも一方に固定されており、
前記弾性伸縮部材の収縮に伴い前記第1層及び第2層が収縮することにより、前記第1層及び第2層における接合加工部間に位置する部分が互いに反対向きに膨らんでそれぞれ襞が形成されており、
前記接合加工部が、前記ギャザー弾性伸縮部材に沿う方向に往復しつつ前記ギャザー弾性伸縮部材と直交する方向に連続する波状をなしている、
ことを特徴とする吸収性物品。
【0027】
(作用効果)
本発明の立体ギャザーでは、ギャザー弾性伸縮部材と交差する方向に延びる襞が前後方向に多数形成されるため、通気性の点では好ましいものとなるが、襞間を通って漏れが発生するおそれがある。そこで、本項記載のように、接合加工部を波状に形成して襞間の通路を波状に延在させ、通路長の増加だけでなく通路壁への衝突性を向上させて、漏れ防止性を高めるのは一つの好ましい形態である。
【0028】
【0029】
【発明の効果】
【0030】
以上のとおり、本発明によれば、立体ギャザーにおける肌触りの柔軟性及び追従変形性の低下を抑えつつ剛性を高めることができる等の利点がもたらされる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ詳説する。
図1〜
図8は、パンツタイプ使い捨ておむつの一例100を示している。このパンツタイプ使い捨ておむつ100は、製品外面(裏面)をなす外装体12と、外装体12の内面に貼り付けられた内装体200とから構成されているものである。符号Yは展開状態におけるおむつの全長(前身頃Fのウエスト開口部WOの縁から後身頃Bのウエスト開口部WOの縁までの縦方向長さ)を示しており、符号Xは展開状態におけるおむつの全幅を示している。
【0033】
内装体200は、尿等の排泄物等を吸収保持する部分であり、外装体12は着用者の身体に対して内装体200を支えるための部分である。なお、断面図における点模様部分は各構成部材を接合する接合部分を示しており、ホットメルト接着剤などのベタ、ビード、カーテン、サミット若しくはスパイラル塗布などにより、また弾性伸縮部材の固定部分はこれに代えて又はこれとともにコームガンやシュアラップ塗布などの弾性伸縮部材の外周面への塗布により形成されるものである。また、「前後方向」とは腹側(前側)と背側(後側)を結ぶ方向を意味し、「幅方向」とは前後方向と直交する方向(左右方向)を意味し、「上下方向」とはおむつ100の装着状態、すなわちおむつ100の前身頃両側部と後身頃両側部を重ね合わせるようにおむつ100を股間部で2つに折った際に胴周り方向と直交する方向、換言すればウエスト開口部WO側と股間部側とを結ぶ方向を意味する。
【0034】
(内装体)
内装体200は任意の形状を採ることができるが、図示の形態では長方形である。内装体200は、
図3〜
図5に示されるように、身体側となるトップシート30と、液不透過性シート11と、これらの間に介在された吸収要素50とを備えているものであり、吸収機能を担う本体部である。符号40は、トップシート30を透過した液を速やかに吸収要素50へ移行させるために、トップシート30と吸収要素50との間に設けられた中間シート(セカンドシート)を示しており、符号60は、内装体200の両脇に排泄物が漏れるのを防止するために、内装体200の両側に設けられた、身体側に起立する立体ギャザー60を示している。
【0035】
(トップシート)
トップシート30は、液を透過する性質を有するものであり、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを例示することができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンボンド法、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、エアスルー法、ポイントボンド法、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
【0036】
また、トップシート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、トップシート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。
【0037】
立体ギャザー60を設ける場合、トップシート30の両側部は、液不透過性シート11と立体ギャザー60との間を通して、吸収要素50の裏側まで回りこませ、液の浸透を防止するために、液不透過性シート11及び立体ギャザー60に対してホットメルト接着剤等により接着するのが好ましい。
【0038】
(中間シート)
トップシート30を透過した液を速やかに吸収体へ移行させるために、トップシート30より液の透過速度が速い、中間シート(「セカンドシート」とも呼ばれている)40を設けることができる。この中間シート40は、液を速やかに吸収体へ移行させて吸収体による吸収性能を高めるばかりでなく、吸収した液の吸収体からの「逆戻り」現象を防止し、トップシート30上を常に乾燥した状態とすることができる。中間シート40は省略することもできる。
【0039】
中間シート40としては、トップシート30と同様の素材や、スパンレース、スパンボンド、SMS、パルプ不織布、パルプとレーヨンとの混合シート、ポイントボンド又はクレープ紙を例示できる。特にエアスルー不織布が嵩高であるため好ましい。エアスルー不織布には芯鞘構造の複合繊維を用いるのが好ましく、この場合芯に用いる樹脂はポリプロピレン(PP)でも良いが剛性の高いポリエステル(PET)が好ましい。目付けは20〜80g/m
2が好ましく、25〜60g/m
2がより好ましい。不織布の原料繊維の太さは2.2〜10dtexであるのが好ましい。不織布を嵩高にするために、原料繊維の全部又は一部の混合繊維として、芯が中央にない偏芯の繊維や中空の繊維、偏芯且つ中空の繊維を用いるのも好ましい。
【0040】
図示の形態の中間シート40は、吸収体56の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の長手方向長さは、吸収体56の長さと同一でもよいし、液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。
【0041】
(液不透過性シート)
液不透過性シート11の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂等からなるプラスチックフィルムや、不織布の表面にプラスチックフィルムを設けたラミネート不織布、プラスチックフィルムに不織布等を重ねて接合した積層シートなどを例示することができる。液不透過性シート11には、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている不透液性かつ透湿性を有する素材を用いることが好ましい。透湿性を有するプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性プラスチックフィルムが広く用いられている。このほかにも、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂または疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、プラスチックフィルムを用いずに液不透過性としたシートも、液不透過性シート11として用いることができる。
【0042】
液不透過性シート11は、防漏性を高めるために、吸収要素50の両側を回りこませて吸収要素50のトップシート30側面の両側部まで延在させるのが好ましい。この延在部の幅は、左右それぞれ5〜20mm程度が適当である。
【0043】
また、液不透過性シート11の内側、特に吸収体56側面に、液分の吸収により色が変化する排泄インジケータを設けることができる。
【0044】
(立体ギャザー)
立体ギャザー60は、内装体200の両側縁に沿って前後方向全体にわたり延在する帯状部材であり、横方向に移動する尿や軟便を遮断し、横漏れを防止するために設けられているものである。本実施の形態の立体ギャザー60は、内装体200の側部から起立するように設けられ、付け根側の部分は幅方向中央側に向かって斜めに起立し、中間部より先端側の部分は幅方向外側に向かって斜めに起立するものである。
【0045】
より詳細には、立体ギャザー60は、内装体200の前後方向長さに等しい長さを有する帯状のシート状素材を幅方向に折り返して二つに折り重ね、二層構造としたギャザーシート62と、このギャザーシート62の層間に前後方向に沿って固定された、細長状のギャザー弾性伸縮部材63とを有するものである。ギャザーシート62のうち先端部と反対側に位置する基端部(幅方向においてシート折り返し部分と反対側の端部)は内装体200の側縁部の裏面に固定された付根部分65とされ、この付根部分65以外の部分は付根部分65から突出する突出部分66(折り返し部分側の部分)とされている。また、突出部分66は、幅方向中央側に向かう付け根側部分と、この付け根側部分の先端から幅方向外側に折り返された先端側部分とからなる。この形態は面接触タイプの立体ギャザーであるが、幅方向外側に折り返されない線接触タイプの立体ギャザー(図示略)も採用することができる。そして、突出部分66のうち前後方向両端部が倒伏状態でトップシート30の側部表面に対してホットメルト接着剤やヒートシールにより固定された倒伏部67とされる一方で、これら倒伏部67の間に位置する前後方向中間部は非固定の自由部分68とされ、少なくともこの自由部分68に、複数本のギャザー弾性伸縮部材63が幅方向に間隔をあけてそれぞれ前後方向に伸長した状態で固定されている。
【0046】
ギャザーシート62は図示形態のように折り畳むことにより複数層構造とする他、複数枚の素材貼り合わせて複数層構造とすることもできる。ギャザーシート62のシート状素材としてはスパンボンド不織布(SS、SSS等)やSMS不織布(SMS、SSMMS等)、メルトブロー不織布等の柔軟で均一性・隠蔽性に優れた不織布に、必要に応じてシリコーンなどにより撥水処理を施したものを好適に用いることができる。不織布としては、厚み0.1〜1.0mm、目付10〜20g/m
2の不織布が好ましい。ギャザー弾性伸縮部材63としては糸ゴム等を用いることができる。スパンデックス糸ゴムを用いる場合は、太さは470〜1240dtexが好ましく、620〜940dtexがより好ましい。固定時の伸長率は、150〜350%が好ましく、200〜300%がより好ましい。なお、用語「伸長率」は自然長を100%としたときの値を意味する。また、図示のように、二つに折り重ねたギャザーシートの間に防水フィルム64を介在させることもできる。
【0047】
立体ギャザー60の自由部分に設けられるギャザー弾性伸縮部材63の本数は2〜6本が好ましく、3〜5本がより好ましい。配置間隔60dは3〜10mmが適当である。このように構成すると、ギャザー弾性伸縮部材63を配置した範囲で肌に対して面で当たりやすくなる。先端側だけでなく付け根側にもギャザー弾性伸縮部材63を配置しても良い。
【0048】
立体ギャザー60の付根部分65の固定対象は、内装体200におけるトップシート30、液不透過性シート11、吸収要素50等適宜の部材とすることができる。
【0049】
かくして構成された立体ギャザー60では、ギャザー弾性伸縮部材63の収縮力が前後方向両端部を近づけるように作用するが、突出部分66のうち前後方向両端部が起立しないように固定されるのに対して、それらの間は非固定の自由部分とされているため、自由部分のみが
図3に示すように身体側に当接するように起立する。特に、付根部分65が内装体200の裏面側に位置していると、股間部及びその近傍において立体ギャザー60が幅方向外側に開くように起立するため、立体ギャザー60が脚周りに面で当接するようになり、フィット性が向上するようになる。
【0050】
立体ギャザー60の寸法は適宜定めることができるが、乳幼児用紙おむつの場合は、例えば
図7に示すように、立体ギャザー60の起立高さ(展開状態における突出部分66の幅方向長さ)W6は15〜60mm、特に20〜40mmであるのが好ましい。また、立体ギャザー60をトップシート30表面と平行になるように、平坦に折り畳んだ状態において最も内側に位置する折り目間の離間距離W3は60〜190mm、特に70〜140mmであるのが好ましい。
【0051】
なお、図示形態と異なり、内装体200の左右各側において立体ギャザーを二重に(二列)設けることもできる。
【0052】
(吸収要素)
吸収要素50は、吸収体56と、この吸収体56の全体を包む包装シート58とを有する。包装シート58は省略することもできる。
【0053】
(吸収体)
吸収体56は、繊維の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100〜300g/m
2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30〜120g/m
2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1〜16dtex、好ましくは1〜10dtex、さらに好ましくは1〜5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、2.54cm当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。吸収体56中には高吸収性ポリマー粒子を分散保持させるのが好ましい。
【0054】
吸収体56は長方形形状でも良いが、
図6にも示すように、前端部、後端部及びこれらの間に位置し、前端部及び後端部と比べて幅が狭い括れ部とを有する砂時計形状を成していると、吸収体56自体と立体ギャザー60の、脚周りへのフィット性が向上するため好ましい。
【0055】
また、吸収体の寸法は適宜定めることができるが、前後方向及び幅方向において、内装体の周縁部又はその近傍まで延在しているのが好ましい。なお、符号56Xは吸収体56の幅を示している。
【0056】
(高吸収性ポリマー粒子)
吸収体56には、その一部又は全部に高吸収性ポリマー粒子を含有させることができる。高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子54としては、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用でき、例えば500μmの標準ふるい(JIS Z8801−1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)でふるい上に残る粒子の割合が30重量%以下のものが望ましく、また、180μmの標準ふるい(JIS Z8801−1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)でふるい上に残る粒子の割合が60重量%以上のものが望ましい。
【0057】
高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量(JIS K7223−1996「高吸水性樹脂の吸水量試験方法」)が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0058】
高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度(JIS K7224−1996高吸水性樹脂の吸水速度試験方法)が40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が40秒を超えると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0060】
高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、当該吸収体56の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50〜350g/m
2とすることができる。ポリマーの目付け量が50g/m
2未満では、吸収量を確保し難くなる。350g/m
2を超えると、効果が飽和する。
【0061】
必要であれば、高吸収性ポリマー粒子は、吸収体56の平面方向で散布密度あるいは散布量を調整できる。たとえば、液の排泄部位を他の部位より散布量を多くすることができる。男女差を考慮する場合、男用は前側の散布密度(量)を高め、女用は中央部の散布密度(量)を高めることができる。また、吸収体56の平面方向において局所的(例えばスポット状)にポリマーが存在しない部分を設けることもできる。
【0062】
(包装シート)
包装シート58を用いる場合、その素材としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMS不織布(SMS、SSMMS等)が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン複合材などを使用できる。目付けは、5〜40g/m
2、特に10〜30g/m
2のものが望ましい。
【0063】
包装シート58の包装形態は適宜定めることができるが、製造容易性や前後端縁からの高吸収性ポリマー粒子の漏れ防止等の観点から、吸収体56の表裏面及び両側面を取り囲むように筒状に巻き付け、且つその前後縁部を吸収体56の前後から食み出させ、この食み出し部分を表裏方向に潰してホットメルト接着剤等の接合手段により接合する形態が好ましい。
【0064】
(外装体)
外装体12は、股間部から腹側に延在する前身頃Fを構成する部分と、股間部から背側に延在する後身頃Bを構成する部分とを有し、これら前身頃Fの両側部と後身頃Bの両側部とが接合されて、
図8に示すように、装着者の胴を通すためのウエスト開口部WO及び脚を通すための左右一対の脚開口部LOが形成されているものである。符号12Aは接合部分を示している(以下、この部分をサイドシール部ともいう)。なお、股間部とは、展開状態における前身頃Fのウエスト端縁から後身頃Bのウエスト端縁までの前後方向中央を意味し、それよりも前側の部分及び後側の部分が前身頃F及び後身頃Bをそれぞれ意味する。
【0065】
外装体12は、サイドシール部12Aを有する縦方向範囲(ウエスト開口部WOから脚開口部LOの上端に至る縦方向範囲)として定まる胴周り部Tと、脚開口部LOを形成する部分の前後方向範囲(前身頃Fのサイドシール部12Aを有する縦方向領域と後身頃Bのサイドシール部12Aを有する縦方向領域との間)して定まる中間部Lとを有する。胴周り部Tは、概念的にウエスト開口部の縁部を形成する「ウエスト縁部」Wと、これよりも下側の部分である「ウエスト下部」Uとに分けることができる。これらの縦方向の長さは、製品のサイズによって異なり、適宜定めることができるが、一例を挙げると、ウエスト縁部Wは15〜40mm、ウエスト下部Uは65〜120mmとすることができる。一方、中間部Lの両側縁は被着者の脚周りに沿うように括れており、ここが着用者の脚を入れる部位となる。この結果、外装体12は、全体としては略砂時計形状をなしている。外装体12の括れの程度は適宜定めることができ、
図1〜
図8に示す形態のように、すっきりとした外観とするために最も幅が狭い部分では内装体200の幅より狭くすることが好ましいが、最も幅が狭い部分でも内装体200の幅以上となるように定めてもよい。
【0066】
外装体12は、
図3〜
図5に示されるように、二枚のシート材12S,12Hをホットメルト接着剤等の接着剤により張り合わせて形成されるものであり、内側に位置する内側シート材12Hはウエスト開口部WOの縁までしか延在していないが、外側シート材12Sは内側シート材12Hのウエスト側の縁を回り込んでその内側に折り返されており、この折り返し部分12rは内装体200のウエスト側端部上までを被覆するように延在されている。
【0067】
シート材12S,12Hとしては、シート状のものであれば特に限定無く使用できるが、不織布であるのが好ましい。不織布は、その原料繊維が何であるかは特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。不織布を用いる場合、その坪量は10〜30g/m
2程度とするのが好ましい。
【0068】
また、外装体12を通して後述する印刷シート25のデザインを製品外面から良好に視認できるように、外装体12の総目付けは20〜60g/m
2程度であるのが好ましく、外装体12のJIS K 7105に規定される全光線透過率が40%以上、特に50%以上となっているのが好ましい。
【0069】
そして、外装体12には、胴周りに対するフィット性を高めるために、両シート材12S,12H間に糸ゴム等の細長状弾性伸縮部材15〜19が所定の伸長率で設けられている。細長状弾性伸縮部材15〜19としては、合成ゴムを用いても、天然ゴムを用いても良い。外装体12の両シート材12S,12Hの貼り合せや、その間に挟まれる細長状弾性伸縮部材15〜19の固定には種々の塗布方法によるホットメルト接着またはヒートシールや超音波接着を用いることができる。外装体12全面を強固に固定するとシートの風合いを損ねるため好ましくない。これらを組合せ、細長状弾性伸縮部材15〜19の接着は強固にし、それ以外の部分は接着しないか弱く接着するのが好ましい。
【0070】
より詳細には、後身頃B及び前身頃Fのウエスト縁部Wにおける内側シート材12Hの内側面と外側シート材12Sの折り返し部分12rの外側面との間には、幅方向全体にわたり連続するように、複数のウエスト縁部弾性伸縮部材17が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸長率で幅方向に沿って伸長された状態で固定されている。また、ウエスト縁部弾性伸縮部材17のうち、ウエスト下部Uに隣接する領域に配設される1本または複数本については、内装体200と重なっていてもよいし、内装体200と重なる幅方向中央部を除いてその幅方向両側にそれぞれ設けてもよい。このウエスト縁部弾性伸縮部材17としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm
2、特に0.1〜1.0mm
2程度)の糸ゴムを、4〜12mmの間隔で3〜22本程度、それぞれ伸長率150〜400%、特に220〜320%程度で固定するのが好ましい。また、ウエスト縁部弾性伸縮部材17は、その全てが同じ太さと伸長率にする必要はなく、例えばウエスト縁部Wの上部と下部で弾性伸縮部材の太さと伸長率が異なるようにしてもよい。
【0071】
また、前身頃F及び後身頃Bのウエスト下部Uにおける内側シート材12Hの外側面と外側シート材12Sの内側面との間には、内装体200と重なる幅方向中央部を除いて、その上側および幅方向両側の各部位に、幅方向全体にわたり連続するように、細長状弾性伸縮部材からなるウエスト下部弾性伸縮部材15,19が複数本、上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸長率で幅方向に沿って伸長された状態で固定されている。
【0072】
ウエスト下部弾性伸縮部材15,19としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm
2、特に0.1〜1.0mm
2程度)の糸ゴムを、1〜15mm、特に3〜8mmの間隔で5〜30本程度、それぞれ伸長率200〜350%、特に240〜300%程度で固定するのが好ましい。
【0073】
また、前身頃F及び後身頃Bの中間部Lにおける内側シート材12Hの外側面と外側シート材12Sの内側面との間には、内装体200と重なる幅方向中央部を除いて、その幅方向両側の各部位に、幅方向全体にわたり連続するように、細長状弾性伸縮部材からなる中間部弾性伸縮部材16、18が複数本、上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸長率で幅方向に沿って伸長された状態で固定されている。
【0074】
中間部弾性伸縮部材16,18としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm
2、特に0.1〜1.0mm
2程度)の糸ゴムを、5〜40mm、特に5〜20mmの間隔で2〜10本程度、それぞれ伸長率150〜300%、特に180〜260%で固定するのが好ましい。
【0075】
なお、図示のように、ウエスト下部弾性伸縮部材及び中間部弾性伸縮部材15,19,16,18が、内装体200と重なる幅方向中央部を除いてその幅方向両側にそれぞれ設けられていると、内装体200が幅方向に必要以上に収縮することがなく、モコモコと見た目が悪かったり吸収性が低下したりすることがない。この形態には、幅方向両側にのみ弾性伸縮部材が存在する形態の他、内装体200を横切ってその幅方向一方側から他方側まで弾性伸縮部材が存在しているが、内装体200と重なる幅方向中央部では弾性伸縮部材が細かく切断され、収縮力が作用せず(実質的には、弾性伸縮部材を設けないことに等しい)に、その幅方向両側のみが収縮力作用部分として構成されている形態も含まれる。もちろんウエスト下部弾性伸縮部材及び中間部弾性伸縮部材15,19,16,18の配設形態は上記例に限るものではなく、ウエスト下部Uの幅方向全体にわたり伸縮力が作用するように、ウエスト下部弾性伸縮部材及び中間部弾性伸縮部材15,19,16,18の一部または全部を、内装体200を横切ってその幅方向一方側から他方側まで設けることもできる。
【0076】
また、各部の細長状弾性伸縮部材15〜19が後述する印刷シート25を横切る場合において、細長状弾性伸縮部材15〜19として酸化チタンを含有するゴムを用いる場合には、酸化チタンの含有量が低い(例えば2%以下の)ものあるいは酸化チタンを含有しないものを用いるのが好ましい。
【0077】
(後処理テープ)
外装体12の後身頃Bの外面における幅方向中央部には、後処理テープ90(固定手段)を設けることができる。後処理テープ90は、おむつ100をトップシート30が内側に且つ前身頃Fが内側となるように丸め若しくは折り畳んだ状態で固定するためのものである。一般的な後処理テープ90は、
図5に示すように、基端部91が外装体12の外面に接着剤等により固定されるとともに、この基端部91よりも先端側の部分は三つ折り(断面Z字状)や二つ折りで折り畳まれて、折り重なり部分間が仮止め接着剤92により剥離可能に固定(仮固定)されている。また、先端部に白色等の不透明色に着色された摘み部93を有するとともに、この摘み部93を除く部分が透明または半透明であり、この後処理テープ90における透明または半透明の部分を通して、後処理テープ90の外面側から後述するデザインが視認可能になっている。具体的な構造は適宜構成することができるが、図示形態では、全体を透明又は半透明の複数の基材を長手方向に連結して形成するとともに、摘み部93に着色テープ94を張り合わせた構造を採用している。
【0078】
廃棄時には、おむつ100をトップシート30が内側になるとともに前身頃Fが内側となるように丸め若しくは折り畳んだ後、後処理テープ90の折り重なり部分を剥離して展ばし、丸めた若しくは折り畳んだおむつ100の後身頃Bからウエスト開口部WOを越えて反対側の外面まで巻き付けるようにして接着剤により固定する。後処理テープ90は、不使用時にはコンパクトに折り畳まれ、使用時には長尺状に展開できる三つ折り形状のものが特に好適である。
【0079】
後処理テープ90等の固定手段は、前身頃Fに設けてもよく、後身頃Bと前身頃Fの両方に設けてもよい。
【0080】
(印刷シート)
液不透過性シート11と外装体12との間(外装体12の層間を含む)には、印刷によりデザインの施された印刷シート25が設けられている。外装体12を省略し、印刷シート25が外面に露出する形態とすることもできる。また、図示例の印刷シート25は、それが配置される身頃よりも小さい面積を有しており、前身頃F及び後身頃Bに個別に設けられているが、前身頃Fから股間部を通り後身頃Bまで一体的に連続するように設けることもできる。
【0081】
印刷シート25の寸法・形状は特に限定されないが、機能を十分なものとするためには十分に面積を大きくするのが好ましく、例えば、印刷シート25の幅は吸収体56の幅の50〜120%程度であるのが好ましく、印刷シート25の長さは少なくとも腹側及び背側の片側で物品全長Yの15〜30%程度であるのが好ましい。また、印刷シート25の形状はトリムロスが発生しない点では図示例のような矩形であるのが好ましいが、円形や楕円形、三角形、六角形等の幾何学形状、若しくはデザインの周囲に沿う形状にカットしても良い。
【0082】
印刷シート25のシート材としては、プラスチックフィルムや不織布、紙などを用いることができるが、嵩高く通気性の高い素材が好ましい。プラスチックフィルムを用いる場合は、ムレ防止のため透湿性を有することが望ましい。不織布や紙は透湿性を有するため好ましく、デザイン印刷を施す場合、不織布にあっては平滑性が高く印刷しやすいもの、紙にあっては強度が高くインクの滲み難いものを用いるのが好ましい。特に好ましいものとしては、目付け15〜35g/m
2程度、厚み0.1〜0.3mm程度のクレープ紙(薄葉紙)や、目付け10〜25g/m
2程度、厚み0.1〜0.3mm程度の不織布(特にスパンボンド部の繊度が1.0〜3.0dtex程度のスパンボンド不織布やSMS不織布)を挙げることができる。クレープ紙を用いる場合は、クレープ率は5〜20%程度、特に5〜15%程度のものを用いるのが好ましい。クレープ率が20%以上であると、インクの定着量は大きくなるが滲みが生じてデザイン印刷には適さない。クレープ率が5%以下であるとインクが浸透しにくいため定着量が少ない。
【0083】
(外装体分割構造)
上述の例では、前身頃Fから後身頃Bまでを一体的な外装体12により連続的に覆っているが、外装体が、装着者の胴周りのうち腹側を覆う腹側外装体と背側を覆う背側外装体とに分割されており、腹側外装体の幅方向中央部内面に内装体の前端部がホットメルト接着剤等により連結されるとともに、背側外装体の幅方向中央部内面に内装体の後端部がホットメルト接着剤等により連結されており、腹側外装体と背側外装体とが股間側で連続しておらず、離間されている形態も採用することができる。この離間距離は150〜250mm程度とすることができる。この場合、内装体における液不透過性シートの裏面には、内装体の裏面全体を覆うように、あるいは腹側外装体と背側外装体との間に露出する部分全体を覆うように、股間部外装体を固定することもできる。股間部外装体としては、前述した外装体に用いられるものと同様の資材を用いることができる。股間部外装体も本発明の外装体に相当する。
【0084】
(特徴部分について)
立体ギャザー60は、例えば
図9に示すように、ギャザーシート62の第1層62a及び第2層62bが、前後方向に間欠的に配された、ギャザー弾性伸縮部材63と交差して連続する接着剤71(ホットメルト接着剤71等)により接合されることにより、接合加工部70が形成されている。
【0085】
ギャザー弾性伸縮部材63は、接合加工部70と交差する位置で第1層62a及び第2層62bの少なくとも一方に接着剤71により固定される。ギャザー弾性伸縮部材63の固定のために接合加工部形成用とは別の接着剤を弾性伸縮部材又は層62a,62bに塗布することもできるが、図示形態では、接合加工部70を形成するための接着剤71がギャザー弾性伸縮部材63と交差する方向に連続しているため、この接着剤71を利用してギャザー弾性伸縮部材63を第1層62a及び第2層62bの少なくとも一方に固定している。製造に際しては、接着剤71を第1層62a及び第2層62bのいずれか一方又は両方に塗布し、両層62a,62bを接合する時にギャザー弾性伸縮部材63を両層62a,62b間に挟み込めばよい。
【0086】
図9に示す形態は、第1層62aにおける第2層62b側の面に、前後方向には間欠的にかつ前後方向と交差する方向には所定の幅で連続的に接着剤71を塗布し、第2層62bにおける第1層62a側の面には、接着剤71を塗布せずに、第1層62a及び第2層62b間にギャザー弾性伸縮部材63を伸長状態で挟み、第1層62a及び第2層62b、並びに第1層62a及びギャザー弾性伸縮部材63をそれぞれ接着剤71により接合したものである。この場合、接合加工部70とギャザー弾性伸縮部材63とが交差する部分のうち、ギャザー弾性伸縮部材63の第1層62a側で接着剤71が伸縮方向と交差する方向に連続することによりギャザー弾性伸縮部材63が第1層62aに固定されるとともに、ギャザー弾性伸縮部材63の第2層62b側では接着剤71が伸縮方向と交差する方向に不連続となる。図中にはこの不連続となる部分を符号72により示している。第2層62bにおいて接着剤71が間欠的に存在することより第2層62bの柔軟性の低下、ひいては第1層62a及び第2層62bの全体としての柔軟性の低下を抑制できる。また、ギャザー弾性伸縮部材63は接合加工部70と交差する部分では第1層62a側だけとはいえ接着剤71が連続するから、襞80は立体ギャザー60の突出方向に連続的となる。
【0087】
なお、第1層62a及び第2層62bに同様のパターンで接着剤71を塗布することも可能である。この場合、
図10に示すように、接合加工部70とギャザー弾性伸縮部材63とが交差する部分のうち、ギャザー弾性伸縮部材63の第1層62a側及び第2層62b側の両方で接着剤71が伸縮方向と交差する方向に所定の幅で連続するため、ギャザー弾性伸縮部材63をより強固に固定でき、剛性もより均一に向上する利点がある。また、図示しないが第2層63bに接着剤を塗布し、第1層63aには接着剤を塗布せずに弾性伸縮部材を挟みこんで固定することも可能である。
【0088】
また、
図11に示すように、溶着加工により接合加工部70を形成することもできる。溶着部分は符号75により示されている。溶着加工としては、ヒートシール、超音波溶着等、公知の加工手法を採用することができる。ここで、接合加工部70を形成するための溶着加工が連続するとは、第1層62a及び第2層62bの少なくとも一方で溶着加工跡が連続する限り、第1層62a及び第2層62bとギャザー弾性伸縮部材63とがそれぞれ溶着して第1層62a及び第2層62bが間接的に溶着することにより溶着が連続する形態だけでなく、接合加工部70とギャザー弾性伸縮部材63とが交差する部分72においてギャザー弾性伸縮部材63が介在するために第1層62a及び第2層62b間の溶着が連続しない形態も含み、いずれの場合も接合加工部は連続的となるため、連続的な襞80が形成される。例えば、第1層62a及び第2層62b間にギャザー弾性伸縮部材63を挟んだ状態で、ヒートシールや超音波溶着によりギャザー弾性伸縮部材63を横切る連続的なパターンで溶着を行い、ギャザー弾性伸縮部材63を溶融させずに第1層62a及び第2層62bを溶融させると、第1層62a及び第2層62bとギャザー弾性伸縮部材63とが溶着しないために後者の形態となる。
【0089】
ギャザー弾性伸縮部材63は、接合加工部70と交差する位置で第1層62a及び第2層62bの少なくとも一方に固定される。この固定の形態には、ギャザー弾性伸縮部材63と接合加工部70とが交差する位置で、ギャザー弾性伸縮部材63とシートとが接着(ホットメルト接着剤71等の接着剤71による接着だけでなく、溶着も含む。)されている形態だけでなく、ギャザー弾性伸縮部材63とシートとは接着されていないが、伸縮方向と交差する方向の接合加工部70の間隔がギャザー弾性伸縮部材63の自然長時の太さよりも狭く、ギャザー弾性伸縮部材63が接合加工部70間に挟持されることで固定される結果、ギャザー弾性伸縮部材63の収縮力が接合加工部70と交差する位置でシートに伝達される形態(特開2008−154998号公報、特開2009−106667号公報参照)も含まれる。より詳細には、後者の形態は、
図12(a)に示すように、固定時の伸長率よりも高い伸長率に伸ばしたギャザー弾性伸縮部材63を第1層62a及び第2層62b間に挟んだ状態で、ヒートシールや超音波溶着によりギャザー弾性伸縮部材63を横切る連続的なパターンで接合加工部70の溶着を行い、ギャザー弾性伸縮部材63を溶融させずに第1層62a及び第2層62bを溶融させ、第1層62a及び第2層62bとギャザー弾性伸縮部材63とを溶着させずに、その後に
図12(b)に示すように、ギャザー弾性伸縮部材63の張力を解放し、ギャザー弾性伸縮部材63を収縮させて直径を拡大させ、ギャザー弾性伸縮部材63を接合加工部70間に挟持させることで製造することができる。これにより、製造される伸縮構造は、第1層62a及び第2層62bの少なくとも一方で溶着加工跡が連続するものの、接合加工部70とギャザー弾性伸縮部材63とが交差する部分においてギャザー弾性伸縮部材63が介在するために第1層62a及び第2層62b間の溶着が連続せず、かつギャザー弾性伸縮部材63が接合加工部70間に挟持されることで固定される形態となる。
【0090】
溶着により接合加工部70を形成すると、接合加工部70がホットメルト接着剤による接合と比べて硬くなり易いが、剛性向上効果は高いため、これらのバランスを考慮して、溶着加工を採用するかホットメルト接着剤を採用するか適宜選択すれば良い。
【0091】
各接合加工部70の伸縮方向の幅70w及び、隣り合う接合加工部70の間隔70dは適宜定めることができるが、各接合加工部70の伸縮方向の幅70wは、4mm以下であると好ましく、2mm以下であるとより好ましく、1.5mm以下であると特に好ましい。また、シート接合部70の伸縮方向の幅70wは、1mm以上とすると製造容易性の観点からは好ましいが、柔軟性の観点からは0.5mm以上とすることが好ましい。また、隣り合う接合加工部70の間隔70dは4〜8mmであることが好ましく、特に5〜7mmであることが好ましい。
【0092】
隣り合うギャザー弾性伸縮部材63の間隔は適宜定めることができるが、立体ギャザーの先端側において肌に接触しうる部分では、隣り合うギャザー弾性伸縮部材63の間隔63dは10mm以下、特に3〜8mmとすると、襞の形状が不規則になり難いため好ましい。
【0093】
接合加工部70は、ギャザーシート62の先端まで連続させても良いが、接合加工部70は硬質な部分であるとともに、立体ギャザー60の先端は最も強く肌に当たる部分であるため、
図14に示すように、立体ギャザー60の先端から基端側に若干離間させるのも好ましい形態である。この場合における立体ギャザー60先端と接合加工部70との離間距離は0.5〜4mm程度とすることが望ましい。このことからも判るように、接合加工部70は、ギャザーシート62の突出方向全体にわたり設ける他、突出部分66の全体、自由部分68の全体等、一部のみとし、他の部分は従来と同様に接合することもできる。
【0094】
接合加工部70が伸縮方向に間欠的であると、ギャザー弾性伸縮部材63の固定力の低下は避けられず、ギャザー弾性伸縮部材63が抜けて収縮力が作用しなくなるおそれがある。特に、各接合加工部70の伸縮方向の幅70wは狭いことが望ましいが、その場合、ギャザー弾性伸縮部材63と接合加工部70とが交差する位置が小さくなり、この小さな位置でギャザー弾性伸縮部材63を固定することが必要となり、ギャザー弾性伸縮部材63の固定力の確保が重要となる。そこで、ギャザー弾性伸縮部材63を接合加工部70と交差する位置以外でも部分的に第1層62a及び第2層62bの少なくとも一方に固定し、ギャザー弾性伸縮部材63の固定を補強することも一つの好ましい形態である。例えば、第1層62a及び第2層62bの少なくとも一方におけるギャザー弾性伸縮部材63の両端部が位置する領域に、補強用のホットメルト接着剤等の接着剤を塗布し、この接着剤により第1層62a及び第2層62bに対するギャザー弾性伸縮部材63の固定を補強することができる。
【0095】
以上に述べた立体ギャザー60では、ギャザー弾性伸縮部材63の収縮に伴い、
図9(b)に示すように、第1層62a及び第2層62bにおける接合加工部70間に位置する部分がそれぞれ収縮し、互いに反対向きに膨らんで襞80が形成される。
図9(b)は自然長の状態であるが、装着時にはこの状態からギャザー弾性伸縮部材63がある程度まで伸長され、
図9(c)に示すように、襞80の裾が広がり、それに伴い襞80の高さ80hが低くなる。その結果、この立体ギャザー60では、第1層62a及び第2層62bを接合する接合加工部70がギャザー弾性伸縮部材63と交差して連続し、立体ギャザー60の突出方向に連続する襞80が形成されるため、この襞80が骨のような役割を果たして立体ギャザー60の突出方向の剛性が高くなり、ヨレやズレが発生し難くなる。そして、その割には、襞80は前後方向に間欠的であるため、装着者の動きに対して追従変形し易いものとなる。さらに、接合加工部70は硬質なものとなるが、襞80間、潰れた襞80の壁部、倒れた襞80により肌側に露出し難くなるため、肌触りが硬質となり難い点も重要である。
【0096】
特に、各接合加工部70の伸縮方向の幅は隣り合う襞80の間隔に影響を及ぼすものであり、この幅が4mmを超えると、隣り合う襞80の間が広くなり過ぎ、個々の襞80が独立した見栄えとなるだけでなく、厚み方向の圧縮力により襞80が潰れ広がる、倒れる等の変形をするとき、隣り合う襞80が支え合う作用が弱くなる結果、変形に対する抵抗あるいは変更後の復元も弱くなり、結果的にフンワリ感が不十分となってしまう。しかも、単に接合加工部70の伸縮方向の幅を4mm以下とするだけで、隣り合う接合加工部70の間隔を4mm未満8mm超とした場合には次のようになる。すなわち、隣り合う接合加工部70の間隔は剛性及び追従変形性に影響するものであり、3mm以下になると襞80が殆ど形成されず、襞80による立体ギャザー60の突出方向の剛性向上が乏しいものとなる(伸縮方向に間欠的に接合加工部70を設ける意味が無くなる)。また、接合加工部70の間隔が8mmを超えると、包装時の圧縮により襞80が不規則に潰れてしまい、襞80による肌触りの柔軟性の向上が損なわれるおそれがある。これに対して、接合加工部70の伸縮方向の幅を1〜4mmとし、かつ接合加工部70の間隔を4〜8mmとすると、剛性及び追従変形性のバランスが良く、かつ、襞80による肌触りの柔軟性も十分に確保される。
【0097】
また、図示形態の立体ギャザー60のように、ギャザーシート62の突出部分66は、表面側において幅方向中央側に向かって延出する基端側部分と、この基端側部分の先端から幅方向外側に折り返された先端側部分とを有する面接触タイプであると、線接触タイプと比べて、ヨレやズレが発生すると好ましい接触状態が維持され難い一方で、肌に対する当りは強くなり難い。よって、このような面接触タイプの立体ギャザー60に上述の伸縮構造を適用すると、面接触タイプの短所である形状維持性を襞80による剛性向上により補いつつ、剛性向上により短所となりかねない肌触りの悪化を面接触タイプの長所により補うことができるため好ましい。
【0098】
図9〜
図11に示す形態では、接合加工部70をギャザー弾性伸縮部材63と直交する方向に沿って直線状に連続させており、ギャザー弾性伸縮部材63と交差する方向に延びる襞80が前後方向に多数形成されるため、通気性の点では好ましいものとなるが、襞80間を通って漏れが発生するおそれがある。そこで、
図13(a)に示すように、接合加工部70の向きを傾斜させて、襞80間の通路長を長くし、漏れ防止性を高めるのは一つの好ましい形態である。なお、この場合、接合加工部70を直線状とする他、湾曲させる等しても良い。
【0099】
また、
図13(b)に示すように、接合加工部70を波状に形成して襞80間の通路を波状に延在させ、通路長の増加だけでなく通路壁への衝突性を向上させて、漏れ防止性を高めるのも一つの好ましい形態である。この波状の接合加工部70は、図示例のような三角波状(ジグザグ状)の他、正弦波状等の他の周期的又は非周期的な波状とすることもできる。
【0100】
<効果確認試験>
各種伸縮シートを作製し、JIS L1096:2010「織物及び編物の生地試験方法」の剛軟度A法(45度カンチレバー法)に準じて剛軟度を測定するとともに、被験者10人に伸縮シートの手触りの柔らかさ・硬さを5段階(非常に柔らかい、柔らかい、どちらともいえない、硬い、非常に硬い)で官能評価してもらい、その平均値を評価値とした。
【0101】
各伸縮シートは、第1層62a及び第2層62bとして2枚の不織布を用意し、一方の不織布の表面に、不織布の製造時のMD方向(ライン流れ方向)に間隔を空けて、不織布の製造時のCD方向(MD方向と直交する方向)に直線状に延びるようにホットメルト接着剤を塗布し、その上に、ギャザー弾性伸縮部材63としての細長状の弾性伸縮部材を当該一方の不織布のMD方向に沿って伸長させた状態で当該一方の不織布のCD方向に5mmの間隔63d(中心間隔)を空けて平行に配置し、その上から他方の不織布を一方の不織布に方向を合わせて貼り付け、一方の不織布の対向面に塗布した接着剤71としてのホットメルト接着剤により、不織布同士を接合するとともに不織布に対して弾性伸縮部材を固定することによって製造した。したがって、伸縮シートの構造は
図9に示すものと同種類となる。
【0102】
不織布としては、繊維径15μm、目付13g/m
2、圧力0.0049N/cm
2における厚み0.16mmのポリプロピレン繊維スパンボンド不織布を使用した。また、弾性伸縮部材としては、太さ620dtexの合成糸ゴムを使用し、固定時の伸長率は240%とした。ホットメルト接着剤の塗布量(塗布部分の単位面積当たりの重量)は20g/m
2とした。
【0103】
伸縮シートとしては、ホットメルト接着剤による接合加工部70の幅(伸縮方向)を2mm、隣り合う接合加工部70の間隔70dを6mmとした実施例1、接合加工部の幅70wを5mm、隣り合う接合加工部の間隔70dを1mmとした比較例1、及び接合加工部70の幅70wを5mm、隣り合う接合加工部70の間隔70dを10mmとした比較例2の三種類を作製した。剛軟度の測定に際しては、各伸縮シートから
図15に示すように自然長状態での寸法が不織布のMD方向20mm、CD方向150mmの試験片I、及び
図16に示すように自然長状態での寸法が不織布のMD方向150mm、CD方向20mmの試験片IIの二種類を切り出して、自然長状態で剛軟度を測定した。
【0104】
試験及び評価の結果を表1に示した。実施例1と比較例1,2との比較より、各接合加工部70の伸縮方向の幅70w、及び隣り合う接合加工部70の間隔70dが本発明の範囲内にあると、肌触りが柔軟で、追従変形性の低下が少ないものでありながら、剛性が高いものとなることが判明した。
【0106】
<明細書中の用語の説明>
明細書中の以下の用語は、明細書中に特に記載が無い限り、以下の意味を有するものである。
【0108】
・「目付け」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度20±5℃、相対湿度65%以下)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を相対湿度10〜25%、温度50℃を超えない環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から米坪板(200mm×250mm、±2mm)を使用し、200mm×250mm(±2mm)の寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、20倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
【0109】
・「厚み」は、自動厚み測定器(KES−G5 ハンディ圧縮計測プログラム)を用い、荷重:0.098N/cm
2、及び加圧面積:2cm
2の条件下で自動測定する。
【0110】
・クレープ紙の「クレープ率」は次のようにして測定される、湿潤時の伸び率を意味する。すなわち、試験片からMD方向100mm×CD方向25mm(MD方向、CD方向は紙製造時の方向)の寸法の試料を切り取る。水で濡らした筆を用いて試料を濡らした後、破れない程度に限界までMD方向に引張り、皺を伸ばす。試料の余分な水分を取り除いた後、MD方向の長さを計測する。次の式によりクレープ率(伸び率)を算出する。
クレープ率 = {(皺伸ばし後の長さ)−100}/100×100