特許第6362251号(P6362251)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6362251逆止注出ノズルそれを用いた包装袋および、包装袋に被包装物を充填包装してなる包装体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362251
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】逆止注出ノズルそれを用いた包装袋および、包装袋に被包装物を充填包装してなる包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 75/58 20060101AFI20180712BHJP
   B65D 33/38 20060101ALI20180712BHJP
   B65D 33/00 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   B65D75/58
   B65D33/38
   B65D33/00 C
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-51361(P2014-51361)
(22)【出願日】2014年3月14日
(65)【公開番号】特開2014-208547(P2014-208547A)
(43)【公開日】2014年11月6日
【審査請求日】2016年10月20日
(31)【優先権主張番号】特願2013-63229(P2013-63229)
(32)【優先日】2013年3月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】307028493
【氏名又は名称】株式会社悠心
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】特許業務法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】二瀬 克規
【審査官】 加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−059958(JP,A)
【文献】 特開2012−158375(JP,A)
【文献】 特開2011−213408(JP,A)
【文献】 特開2007−326581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 75/58
B65D 33/00
B65D 33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質の包装袋本体の上端部分から側方への突出姿勢で、包装袋本体の内表面のシーラント層に、最外層のシーラント層によって基端部を接合させて包装袋を構成する逆止注出ノズルであって、
延伸ベースフィルム層と、それを挟んで積層したそれぞれのシーラント層とを具える表裏のそれぞれの薄肉積層フィルムを、一方のシーラント層の相互の対向姿勢で、基端辺を除く周辺部分で接合させて、中央部分に注出通路を区画してな前記包装袋本体内の液状の被包装物の注出を、前記包装袋の傾動下で外気を取り込むことなく行う一方で、包装袋の起立復帰に伴って、液状の被包装物の薄膜の介在下で、前記注出通路を自動的に密閉し、前記包装袋本体内への外気の侵入を阻止するセルフシール機能を有するものにおいて、
該逆止注出ノズルの先端部分の切除によって形成される上記注出通路の先端開口から、包装袋の傾動によって被包装物を注出させる際に、該先端開口の開口縁が、包装袋の起立姿勢において下端が包装袋本体に近づく方向に傾斜し、その傾斜角度は、包装袋の傾動に伴う前記注出通路からの被包装物の注出方向と、該被包装物への重力の作用方向とが近接する角度であって、その包装袋の起立姿勢で、該先端開口の上端を通る垂線に対して10〜30°の範囲内にあり、かつ、該開口縁が被包装物の吐出方向に曲線状に突出した形状を有していることを特徴とする逆止注出ノズル。
【請求項2】
請求項1に記載の逆止注出ノズルの基端部を、軟質の包装袋本体の上端部分で、包装袋本体の内表面のシーラント層に、外表面のシーラント層で接合させて、該逆止注出ノズルを包装袋本体から突出させてなることを特徴とする包装袋。
【請求項3】
逆止注出ノズルの、少なくとも先端開口の形成部分の外表面に、撥水性物質または撥油性物質の塗布層を有することを特徴とする請求項に記載の包装袋。
【請求項4】
請求項もしくはのいずれかに記載の包装袋内に、粘稠物もしくは粉・粒状物を含むこともある液体からなる液状の被包装物が充填包装されていることを特徴とする包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、セルフシール機能を発揮する逆止注出ノズル、それを用いた包装袋および該包装袋に液状の被包装物を充填包装してなる包装体に関するものであり、とくには、液状の被包装物の袋内残量の多少にかかわらず、その被包装物の、目的とする位置への的確なる注出を十分に担保するとともに、包装袋の起立復帰によって被包装物の所要の注出を終えた後の、注出通路の先端開口に沿う、またはその先端開口からの被包装物のたれ落ちを有効に防止する技術を提案するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の、液体注出ノズルおよびそれを用いた包装袋としては、特許文献1および2に開示されたものがある。
これらの液体注出ノズルは、袋内被包装物の注出を、包装袋内へ外気を取り込むことなく行って、自身は収縮ないしは潰れ変形によってその注出に対応する軟質の包装袋本体に適用されて、被包装物の注出の停止と同時に、液状の該被包装物による濡れによって、ノズルの注出通路を自動的に密閉して、包装袋内への外気の侵入を確実に阻止する、セルフシール逆止機能を発揮するものである。
【0003】
【特許文献1】特開2005−15029号公報
【特許文献2】特開2005−59958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、特許文献1および2に開示された液体注出ノズルはいずれも、液体注出ノズルを軟質の包装袋本体に融着等によって接合させてなる包装袋の起立姿勢の下で、液体注出ノズルの先端部分の引裂き除去等によって形成される注出通路の先端開口を、液切れ性の向上を目的として、該開口の下端が包装袋本体から遠ざかる方向に傾斜させていることから、液状の被包装物の注出の停止によって被包装物が十分に液切れせずに、注出通路の先端開口に付着残留した場合は、その付着被包装物、すなわち液体が、その先端開口に沿って流下したり、該開口の下端からたれ落ちたりして、包装袋およびその周囲を汚損するおそれがあった。
【0005】
この発明は、このような問題点に着目してなされたものであり、それの目的とするところは、従来技術の液体注出ノズルの、セルフシール逆止機能の発揮はそのままに、液状の被包装物の、目的とする位置への的確なる注出を十分に担保しつつ、注出通路の先端開口での、液切れ性を一層改善して、該先端開口への被包装物の付着残留をより効果的に防止して、被包装物による、包装袋およびその周囲の汚損のおそれを取り除いた逆止注出ノズル、それを用いた包装袋および、包装袋に被包装物を充填包装してなる包装体を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の逆止注出ノズルは、軟質の包装袋本体の上端部分から側方への突出姿勢で、包装袋本体の内表面のシーラント層に、最外層のシーラント層によって基端部を、接着剤接合、融着接合等されて包装袋を構成するとともに、包装袋内の液状の被包装物の注出を、包装袋の傾動下で、包装袋内へ外気を取り込むことなく行う一方で、包装袋の起立復帰に伴って、液状の被包装物の薄膜の介在下で、被包装物の注出通路を自動的に密閉し、包装袋内への外気の侵入を阻止する、セルフシール機能を発揮する逆止注出ノズルであって、延伸ベースフィルム層と、それを挟んで積層したそれぞれのシーラント層とを具え、所要に応じた各種のバリア層、中間層等を設けることを可とする、半折りした一枚の、または重ね合わせた二枚の表裏のそれぞれの薄肉積層フィルムを、一方のシーラント層の相互の対向姿勢で、基端辺を除く周辺部分で、接着剤接合、融着接合等させて中央部分に注出通路を区画してなり、前記包装袋本体内の液状の被包装物の注出を、前記包装袋の傾動下で外気を取り込むことなく行う一方で、包装袋の起立復帰に伴って、液状の被包装物の薄膜の介在下で、前記注出通路を自動的に密閉し、前記包装袋本体内への外気の侵入を阻止するセルフシール機能を有するものにおいて、該逆止注出ノズルの先端部分の切除、たとえば引裂き除去、切断除去によって形成される、上記注出通路の先端開口から、包装袋の傾動によって被包装物を注出させる際に、該先端開口の開口縁が、包装袋の起立姿勢において下端が包装袋本体に近づく方向に傾斜し、その傾斜角度は、包装袋の傾動に伴う前記注出通路からの被包装物の注出方向と、該被包装物への重力の作用方向とが近接する角度であって、その包装袋の起立姿勢で、該先端開口の上端を通る垂線に対して10〜30°の範囲内であり、かつ、該開口縁が被包装物の吐出方向に曲線状に突出した形状を有している
【0007】
お、注出通路の先端開口、それの側面視で曲線状に曲がって延在、該先端開口の上端と下端とを結ぶ直線の、上記垂線に対する傾斜角度を10〜30°の範囲内とする。
【0008】
さらに好ましくは、前記注出通路先端の開口縁を、被包装物の吐出方向に突出した曲線状とする。
【0009】
そして、この発明の包装袋は、先に述べたいずれかの逆止注出ノズルの基端部を、軟質の包装袋本体の上端部分で、包装袋本体の内表面のシーラント層に、外表面のシーラント層で、接着剤接合、融着接合等させて、逆止注出ノズルを包装袋本体の側方へ突出させてなるものである。
【0010】
この包装袋において、好ましくは、逆止注出ノズルの少なくとも先端開口の形成部分の外表面に、液切れ性の向上を担保する撥水性物質または撥油性物質を、適宜方法にて塗布する。撥水性物質としては、例えば、シリコーンオイルやフッ素系樹脂、アクリル系樹脂もしくはアミド系樹脂からなる撥水コート剤を用いることができ、撥油性物質としては、例えば、シリコン樹脂やテフロン(登録商標)樹脂、シリコン編成アクリル樹脂などの撥油コート剤を用いることができる。
ここで、この撥水(油)性物質は、滑水(油)性をも具えることがより好ましい。
【0011】
また、この発明の包装体は、前述したいずれかの包装袋に、粘稠物もしくは粉・粒状物を含むこともある液体からなる、液状の被包装物を充填包装してなるものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明の逆止注出ノズルでは、袋内被包装物の注出に当たっては、ノズルの先端部分を引裂き除去、切断除去等して、ノズルの注出通路に先端開口を形成した状態で包装袋を傾動させて、被包装物の水頭圧等によって前記注出通路の内表面どうしを大きく離隔させて先端開口を開放させることにより、被包装物の所要に応じた注出を行うことができ、この場合、軟質の包装袋本体を、被包装物の注出体積に応じて収縮ないしは潰れ変形させることで、包装袋内に外気を取り込むことなくその注出を行うことができる。
【0013】
この一方で、包装袋の起立復帰に伴って、袋内被包装物の注出を停止するときは、その起立復帰と同時に、注出通路が、被包装物の水頭圧等から解放されるとともに、被包装物の、包装袋本体内への戻流による負圧の発生下で、元形状に復帰することに加え、その被包装物の薄膜の介在によって濡れた内表面どうしを、包装袋本体内の減圧雰囲気のアシスト下で負圧吸着させて注出通路を自動的に密閉封止させることで、包装袋内への外気の進入を阻止するセルフシール逆止機能を、逆止注出ノズルに自動的に発揮させることができる。
【0014】
従って、この逆止注出ノズルを具える包装袋では、袋内被包装物は、被包装物の注出前はもちろん、注出中および注出後のいずれにおいても外気との接触から十分に保護されることになり、袋内被包装物の酸化、汚損等が有効に防止されることになる。
【0015】
しかも、この逆止注出ノズルでは、先端部分の引裂き除去、切断除去等によって形成される、注出通路の先端開口を、包装袋の起立姿勢で下端が包装袋本体に近づく方向に傾斜させることにより、包装袋を起立姿勢に復帰させて被包装物の注出を停止した際の最後の液滴を、それに作用する重力に基づいて、先端開口の先端面から、目的とする注出位置へ円滑に落下させることができる。
【0016】
また、前記逆止注出ノズルの先端開口の開口縁を、被包装物の吐出方向に突出した曲線状とすると、袋内被包装物の残量が少なくなって吐出の勢いが減少した場合にも、被包装物が曲線状の開口縁を伝い落ちた後、その突出先端の狭い範囲(1点)から滴下されることになるため、液切れがよくなり、被包装物が注出通路の先端開口に付着残留することがなく、液だれの発生や、包装袋およびその周囲の汚損のおそれを有効に取り除くことができる。
【0017】
なお、このような逆止注出ノズルは、一軸もしくは二軸延伸してなる延伸ベースフィルム層と、この延伸ベースフィルム層を挟んで積層したそれぞれのシーラント層とを具え、所要に応じた各種のバリア層、中間層等を設けることを可とする、一枚もしくは二枚の表裏のそれぞれの薄肉積層フィルムを、一方のシーラント層の相互の対向姿勢で基端辺を除く周辺部分で、接着剤接合、融着接合等させて中央部分に注出通路を区画することにより構成することができ、逆止注出ノズルの構成を簡単なものとするとともに、逆止注出ノズルを簡易にかつ迅速に製造することができる。
【0018】
このような逆止注出ノズルの延伸ベースフィルムは、一軸もしくは二軸延伸の、ポリエチレンテレフタレート、エチレンビニルアルコール共重合体、ナイロン、ポリプロピレン等の他、それらのいずれかに所要の蒸着層等を設けたものによって形成することができ、なかでも、それを二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム層とするときは、直線カット性のポリエステルフィルムである「エンブレットPC」(商標ユニチカ(株))を用いることが、また、二軸延伸ナイロンフィルム層とするときは、直線カット性のナイロンフィルムである「エンブレムNC」(商標ユニチカ(株))を用いることが、以下の理由により好適である。
すなわち、これらによれば、逆止注出ノズルに、一軸延伸ベースフィルム層を用いる場合に比してより高い水蒸気不透過性、ガスバリア性等を付与することができる他、逆止注出ノズルの先端部分の、手指による、直線的な引裂き除去を円滑かつ容易にし、しかも、引裂き痕を、毛羽立ち等のない十分平滑なものとして、逆止注出ノズルに、セルフシール逆止機能をより十分に発揮させることができる。
【0019】
少なくとも三層構造になる、逆止注出ノズル用の薄肉積層フィルムは、逆止注出ノズルの内外のそれぞれの表面に位置することになるシーラント層、たとえば、無延伸の各種のPE層、PP層、メタロセン触媒ポリエチレン層等のオレフィン系樹脂層、エチレン酢酸ビニル共重合体層、エチレンアクリル酸エチル共重合体層、アイオノマー層等を具えるものであり、逆止注出ノズルは、軟質の包装袋本体の内表面層としての、好ましくは、ノズル外表面のシーラント層と同種のシーラント層に、たとえば、ヒートシールによって融着接合させることにより、逆止注出ノズルの基端部を簡易、迅速に、しかも常に確実に包装袋本体に融着接合させることができ、これにより、包装袋本体の上端部分で、その側方へ突出する、逆止注出ノズルを具えた包装袋を製造することができる。
【0020】
ところで、内外の両表面にシーラント層を有する、少なくとも三層構造の積層フィルムよりなる逆止注出ノズルの基端部外表面を、包装袋本体の内表面に、このように融着接合させるに当たっての、逆止注出ノズルの内表面の相互融着を確実に防止するためには、ノズルの基端部内側に、より高融点の、または熱溶融しない離型シートを差込み配置すること、逆止注出ノズルの内外表面のそれぞれのシーラント層の溶融温度を、たとえば、材質の変更、同一材質のそれぞれのシーラント層の押出しラミネート条件の変更等によって相互に異ならせて、ノズル内表面のシーラント層の融点を、ノズル外表面のシーラント層のそれより高くすること等が有効である。
【0021】
以上のような逆止注出ノズルにおいて、包装袋の起立姿勢で、注出通路の先端開口の上端を通る垂線に対する、その先端開口下端の、包装袋本体に近づく方向に向かう傾斜角度を10〜30°の範囲内としたときは、液状の袋内被包装物の残量の多少にかかわらず、袋内被包装物の注出方向を、該被包装物への重力の作用方向に十分に近接させて、被包装物を、所要の注出位置へ高い精度をもって注出することができる。
すなわち、前記傾斜角度が10°未満では、とくに、袋内被包装物の残量が多い場合、注出圧力が大きくなりすぎて、注出位置が不安定になるおそれがあり、逆に、それが30°を越えると、とくに、袋内被包装物の残量が少なくなった場合に、包装袋の傾動量を大きくすると、注出通路の先端開口からの被包装物の流出方向と、重力の作用に基づく、被包装物の流下方向との角度差、すなわち、被包装物の曲がり量が大きくなりすぎることにより、注出方向が不安定になって、注出位置の狙いが定まらなくなり、その結果、被包装物の注出を停止した際に、被包装物が十分に液切れせず、注出通路の先端開口に付着残留し、付着被包装物が、その先端開口に沿って流下したり、該開口の下端から垂れ落ちたりするおそれがある。
【0022】
上述したいずれかの逆止注出ノズルの基端部を、軟質の包装袋本体の上端部分で、包装袋本体の内表面のシーラント層に、外表面のシーラント層で、たとえば融着接合させて、逆止注出ノズルを包装袋本体の側方へ突出させて設けた包装袋では、簡易・迅速に、かつ安価に包装袋を製造することができる。
【0023】
かかる包装袋において、逆止注出ノズルの先端部分を切除してなる注出通路の先端開口の形成部分の外表面に、撥水性物質または撥油性物質を、適宜の方法にて塗布した場合は、袋内被包装物の液切れ性をより一層高めて、液状の被包装物の意図しない滴下を有利に防止して包装袋およびその周囲の汚損をより効果的に防止することができる。
そしてこのことは、撥水(油)性物質が滑水(油)性をも有する場合にさらに効果的である。
【0024】
また、上述したいずれかの包装袋に、わさび、練りからし等の粘稠物もしくは、粉・粒状物を含むこともある調味料等の液体からなる液状の被包装物を、たとえば、頂部もしくは底部から充填包装してなる包装体では、袋内被包装物の注出等に当たって、逆止注出ノズルに、先に述べたようなセルフシール逆止機能をより十分に発揮させて、被包装物の繰り返しの注出によっても、包装袋内への外気の進入を確実に防止し、また、逆止注出ノズルの作用下で、被包装物の目的とする位置への的確なる注出を担保するとともに、注出の停止に伴う、不測の液だれの発生を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】この発明の、逆止注出ノズルの実施形態を、先端部分の切除状態で示す平面図である。
図2】逆止注出ノズルの先端部分の切除例を示す、包装袋の起立姿勢の下での側面図である。
図3】袋内被包装物が減少した場合の、注出通路の先端開口からの被包装物の注出状態を、包装袋の傾動姿勢で例示する側面図である。
図4】注出通路の先端開口からの被包装物の注出状態を、包装袋の傾動姿勢で例示する他の側面図である。
図5】この発明の、包装袋の実施形態を示す平面図である。
図6】この発明の、包装体の実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下にこの発明の実施の形態を図面に示すところに基づいて説明する。
図1に示す逆止注出ノズル1は、図に仮想線で示す、軟質の包装袋本体2の上端部分で、その内表面のシーラント層に、側方への突出姿勢で、最外層のシーラント層によって基端部を、たとえば融着接合されて包装袋を構成する。
【0027】
ここで、この逆止注出ノズル1は、熱可塑性の延伸ベースフィルム層、たとえば、5〜40μmの厚みの一軸もしくは二軸延伸PET層もしくはNY層と、この延伸ベースフィルム層を挟んで積層したそれぞれのシーラント層、たとえば5〜80μmの厚みの無延伸のPE層もしくはPP層との、多くは三層構造になる表裏のそれぞれの薄肉積層フィルム、すなわち、輪郭形状がともに同一の表裏二枚の薄肉積層フィルム、または、中央部等で表裏に折返してなる一枚の薄肉積層フィルムを、一方のシーラント層の相互の対向姿勢で、基端辺を除く周辺部分で、たとえばヒートシールによって、図に斜線を施して示すように相互に融着接合等させて、中央部分に注出通路3を区画することによって構成することができ、図示の逆止注出ノズル1は、ノズル1の先端部分4を、たとえばV字状の折曲部5の位置で、引裂き除去、切断除去等によって切除して、注出通路3に先端開口6を形成してなる。
【0028】
このような先端開口6は、切除の一例として、図2(a)に示すように先端部分4を引裂き除去することによって形成する場合、その先端開口6は、包装袋の図2に示すような起立姿勢の下で、下端が包装袋本体2に近づく方向へ傾し、この発明では図4に示すように曲線状に傾斜する。
【0029】
ここで好ましくは、包装袋の起立姿勢で、注出通路の先端開口6の上端を通る、図2(b)に示す垂線nに対する、その先端開口6の、包装袋本体に近づく方向に向かう傾斜角度θを10〜30°の範囲内とする。
このことによれば、先にも述べたように、袋内被包装物の残量の多少にかかわらず、袋内被包装物の注出方向を、その被包装物への重力の作用方向に十分に近接させて、被包装物を、所要の注出位置へ高い精度で注出することができ、この結果として、液切れ性が大きく改善されることになり、液滴が注出通路の先端開口を伝い落ちること等に起因する、包装袋およびその周囲の汚損のおそれを有効に取り除くことができる。
なお、注出通路3の先端開口6が、側面視で曲線状もしくは折れ線状に傾斜する場合の上記傾斜角度θは、先端開口6の上端と下端とを結ぶ傾斜直線の上記垂線に対する角度をいうものとする。
【0030】
すなわち、注出通路3の先端開口6への液滴の付着の難易度について試験したところ、液状の被包装物を醤油とした場合、傾斜角度θが9〜12°の範囲では、先端開口6に液滴が付着し難く、13〜26°の範囲では、液滴の付着が無く、そして27〜38°の範囲では、先端開口6に液滴が付着し難くなることがわかった。一方、目的とする位置への袋内被包装物の注出のし易さを試験した結果では、傾斜角度θが10°未満では、袋内被包装物の残量が多い場合には、注出圧力が大きくなりすぎることに起因して、注出位置が不安定になるという不都合があり、一方、それが30°を越えると、袋内被包装物の残量の減少下では、先端開口6からの注出当初は、注出通路3の延在方向に向けて注出されることになるも、その先端開口6から離れるにつれて、注出方向が、重力の作用方向に変更されることになるため、所要の注出位置に対する狙いがつけ難いという不都合があった。
【0031】
この点については、袋内被包装物の残量が減少するに伴って包装袋の傾動角度を大きくした場合の、注出流の注出方向の変化の態様を例示した図3からも明らかであり、袋内被包装物の残量が減少するにつれて、注出圧力よりもむしろ、重力が注出方向に影響を及ぼしていることがわかる。
すなわち、傾斜角度θを0°とした場合を示す図3(a)の逆止注出ノズル1では、注出通路3の延在方向と重力の作用方向とが一致するため、被包装物の残量が減少したときは、所要の注出位置への狙いがつけ易くなる。
また、傾斜角度θを10°とした場合を示す図3(b)の逆止注出ノズル1では、注出通路3の延在方向と重力の作用方向との角度差は、それほど大きくならず、注出流の曲がり量も少ないため、所要の注出位置に対して比較的容易に注出することができる。
しかるに、傾斜角度θが10°未満では、袋内被包装物の残量が多い場合の注出に当たり、注出圧力が高くなりすぎて、逆に注出位置が不安定になるおそれが高まることになる。
そして、傾斜角度θを30°とした場合を示す図3(c)の逆止注出ノズルでは、注出方向は、注出当初は注出通路3の延在方向となるものの、その注出方向は、次第に重力の作用方向に大きく曲がることになるため、角度θが30°を越えると、所要の注出位置へ狙いを定めることが困難になる不都合がある。
【0032】
また、図4は、注出通路3の先端開口6からの被包装物の注出状態を例示するものであり、先端開口6の開口縁6aは、図2に示すような起立姿勢の下で、下端が包装袋本体2に近づく方向へ曲線状に傾斜する共に、開口縁6aが被包装物の吐出方向に突出した形状となっている。このように開口縁6aが、被包装物の吐出方向へ突出した曲線状からなることで、袋内被包装物の残量が減少し、注出流が弱くなった場合にも、被包装物は傾斜した曲線状の開口縁6aを伝い落ちた後、該開口縁6aの突出先端位置6bの1点より滴下されることになるため、液切れ性が向上し、被包装物が先端開口6に付着残留することがなく、液だれの発生や、包装袋の汚損等を抑制することができる。
【0033】
以上に述べたいずれかの逆止注出ノズル1は、その基端部の外表面のシーラント層を、軟質の包装袋本体2の上端部分の内表面のシーラント層に融着接合等させて、該包装袋本体2の側方へ突出させ、液状の被包装物の充填包装のために、たとえば、底部を開放してなる図5に平面図で示すような包装袋7を構成する。
なお、図5では、注出通路3に先端開口6を形成した状態を示しているも、包装袋7への被包装物の充填包装時には、逆止注出ノズル1の先端部分4は切除されていないことはもちろんである。
【0034】
かかる包装袋7において、好ましくは、逆止注出ノズル1の先端部分4を切除することにより形成される、少なくとも、先端開口6の形成部分の外表面に撥水性または撥油性を有する、より好ましくは滑水(油)性をも有する物質を、適宜の方法で塗布することで、被包装物の液切れ性をより一層高めることができる。
【0035】
そしてさらに、上述したいずれかの包装袋7に、図ではそれの底部から、粘稠物もしくは粉・粒状物を含むこともある液体からなる液状の被包装物を充填包装して、図6に斜視図で示すような包装体8としたときは、袋内被包装物の、逆止注出ノズル1からの注出等に当たり、逆止注出ノズル1に、前述したような各種の機能を十分に発揮させることができる。
【符号の説明】
【0036】
1 逆止注出ノズル
2 包装袋本体
3 注出通路
4 先端部分
5 折曲部
6 先端開口
6a 開口縁
6b 突出先端位置
7 包装袋
8 包装体
n 垂線
θ 傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6