【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、特許文献1および2に開示された液体注出ノズルはいずれも、液体注出ノズルを軟質の包装袋本体に融着等によって接合させてなる包装袋の起立姿勢の下で、液体注出ノズルの先端部分の引裂き除去等によって形成される注出通路の先端開口を、液切れ性の向上を目的として、該開口の下端が包装袋本体から遠ざかる方向に傾斜させていることから、液状の被包装物の注出の停止によって被包装物が十分に液切れせずに、注出通路の先端開口に付着残留した場合は、その付着被包装物、すなわち液体が、その先端開口に沿って流下したり、該開口の下端からたれ落ちたりして、包装袋およびその周囲を汚損するおそれがあった。
【0005】
この発明は、このような問題点に着目してなされたものであり、それの目的とするところは、従来技術の液体注出ノズルの、セルフシール逆止機能の発揮はそのままに、液状の被包装物の、目的とする位置への的確なる注出を十分に担保しつつ、注出通路の先端開口での、液切れ性を一層改善して、該先端開口への被包装物の付着残留をより効果的に防止して、被包装物による、包装袋およびその周囲の汚損のおそれを取り除いた逆止注出ノズル、それを用いた包装袋および、包装袋に被包装物を充填包装してなる包装体を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の逆止注出ノズルは、軟質の包装袋本体の上端部分から側方への突出姿勢で、包装袋本体の内表面のシーラント層に、最外層のシーラント層によって基端部を、接着剤接合、融着接合等されて包装袋を構成するとともに、包装袋内の液状の被包装物の注出を、包装袋の傾動下で、包装袋内へ外気を取り込むことなく行う一方で、包装袋の起立復帰に伴って、液状の被包装物の薄膜の介在下で、被包装物の注出通路を自動的に密閉し、包装袋内への外気の侵入を阻止する、セルフシール機能を発揮する逆止注出ノズルであって、延伸ベースフィルム層と、それを挟んで積層したそれぞれのシーラント層とを具え、所要に応じた各種のバリア層、中間層等を設けることを可とする、半折りした一枚の、または重ね合わせた二枚の表裏のそれぞれの薄肉積層フィルムを、一方のシーラント層の相互の対向姿勢で、基端辺を除く周辺部分で、接着剤接合、融着接合等させて中央部分に注出通路を区画してな
り、前記包装袋本体内の液状の被包装物の注出を、前記包装袋の傾動下で外気を取り込むことなく行う一方で、包装袋の起立復帰に伴って、液状の被包装物の薄膜の介在下で、前記注出通路を自動的に密閉し、前記包装袋本体内への外気の侵入を阻止するセルフシール機能を有するものにおいて、該逆止注出ノズルの先端部分の切除、たとえば引裂き除去、切断除去によって形成される、上記注出通路の先端開口から、包装袋の傾動によって被包装物を注出させる際に、該先端開口
の開口縁が、包装袋の起立姿勢において
、下端が包装袋本体に近づく方向に
傾斜し、その傾斜角度は、包装袋の傾動に伴う前記注出通路からの被包装物の注出方向と、該被包装物への重力の作用方向とが近接する角度であって、その包装袋の起立姿勢で、該先端開口の上端を通る垂線に対して
10〜30°の範囲内
であり、かつ、該開口縁が被包装物の吐出方向に曲線状に突出した形状を有している。
【0007】
なお、注出通路の先端開口
は、それの側面視で曲線
状に曲がって延在
し、該先端開口の上端と下端とを結ぶ直線の、上記垂線に対する傾斜角度を10〜30°の範囲内とする。
【0008】
さらに好ましくは、前記注出通路先端の開口縁を、被包装物の吐出方向に突出した曲線状とする。
【0009】
そして、この発明の包装袋は、先に述べたいずれかの逆止注出ノズルの基端部を、軟質の包装袋本体の上端部分で、包装袋本体の内表面のシーラント層に、外表面のシーラント層で、接着剤接合、融着接合等させて、逆止注出ノズルを包装袋本体の側方へ突出させてなるものである。
【0010】
この包装袋において、好ましくは、逆止注出ノズルの少なくとも先端開口の形成部分の外表面に、液切れ性の向上を担保する撥水性物質または撥油性物質を、適宜方法にて塗布する。撥水性物質としては、例えば、シリコーンオイルやフッ素系樹脂、アクリル系樹脂もしくはアミド系樹脂からなる撥水コート剤を用いることができ、撥油性物質としては、例えば、シリコン樹脂やテフロン(登録商標)樹脂、シリコン編成アクリル樹脂などの撥油コート剤を用いることができる。
ここで、この撥水(油)性物質は、滑水(油)性をも具えることがより好ましい。
【0011】
また、この発明の包装体は、前述したいずれかの包装袋に、粘稠物もしくは粉・粒状物を含むこともある液体からなる、液状の被包装物を充填包装してなるものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明の逆止注出ノズルでは、袋内被包装物の注出に当たっては、ノズルの先端部分を引裂き除去、切断除去等して、ノズルの注出通路に先端開口を形成した状態で包装袋を傾動させて、被包装物の水頭圧等によって前記注出通路の内表面どうしを大きく離隔させて先端開口を開放させることにより、被包装物の所要に応じた注出を行うことができ、この場合、軟質の包装袋本体を、被包装物の注出体積に応じて収縮ないしは潰れ変形させることで、包装袋内に外気を取り込むことなくその注出を行うことができる。
【0013】
この一方で、包装袋の起立復帰に伴って、袋内被包装物の注出を停止するときは、その起立復帰と同時に、注出通路が、被包装物の水頭圧等から解放されるとともに、被包装物の、包装袋本体内への戻流による負圧の発生下で、元形状に復帰することに加え、その被包装物の薄膜の介在によって濡れた内表面どうしを、包装袋本体内の減圧雰囲気のアシスト下で負圧吸着させて注出通路を自動的に密閉封止させることで、包装袋内への外気の進入を阻止するセルフシール逆止機能を、逆止注出ノズルに自動的に発揮させることができる。
【0014】
従って、この逆止注出ノズルを具える包装袋では、袋内被包装物は、被包装物の注出前はもちろん、注出中および注出後のいずれにおいても外気との接触から十分に保護されることになり、袋内被包装物の酸化、汚損等が有効に防止されることになる。
【0015】
しかも、この逆止注出ノズルでは、先端部分の引裂き除去、切断除去等によって形成される、注出通路の先端開口を、包装袋の起立姿勢で下端が包装袋本体に近づく方向に傾斜させることにより、包装袋を起立姿勢に復帰させて被包装物の注出を停止した際の最後の液滴を、それに作用する重力に基づいて、先端開口の先端面から、目的とする注出位置へ円滑に落下させることができる。
【0016】
また、前記逆止注出ノズルの先端開口の開口縁を、被包装物の吐出方向に突出した曲線状とすると、袋内被包装物の残量が少なくなって吐出の勢いが減少した場合にも、被包装物が曲線状の開口縁を伝い落ちた後、その突出先端の狭い範囲(1点)から滴下されることになるため、液切れがよくなり、被包装物が注出通路の先端開口に付着残留することがなく、液だれの発生や、包装袋およびその周囲の汚損のおそれを有効に取り除くことができる。
【0017】
なお、このような逆止注出ノズルは、一軸もしくは二軸延伸してなる延伸ベースフィルム層と、この延伸ベースフィルム層を挟んで積層したそれぞれのシーラント層とを具え、所要に応じた各種のバリア層、中間層等を設けることを可とする、一枚もしくは二枚の表裏のそれぞれの薄肉積層フィルムを、一方のシーラント層の相互の対向姿勢で基端辺を除く周辺部分で、接着剤接合、融着接合等させて中央部分に注出通路を区画することにより構成することができ、逆止注出ノズルの構成を簡単なものとするとともに、逆止注出ノズルを簡易にかつ迅速に製造することができる。
【0018】
このような逆止注出ノズルの延伸ベースフィルムは、一軸もしくは二軸延伸の、ポリエチレンテレフタレート、エチレンビニルアルコール共重合体、ナイロン、ポリプロピレン等の他、それらのいずれかに所要の蒸着層等を設けたものによって形成することができ、なかでも、それを二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム層とするときは、直線カット性のポリエステルフィルムである「エンブレットPC」(商標ユニチカ(株))を用いることが、また、二軸延伸ナイロンフィルム層とするときは、直線カット性のナイロンフィルムである「エンブレムNC」(商標ユニチカ(株))を用いることが、以下の理由により好適である。
すなわち、これらによれば、逆止注出ノズルに、一軸延伸ベースフィルム層を用いる場合に比してより高い水蒸気不透過性、ガスバリア性等を付与することができる他、逆止注出ノズルの先端部分の、手指による、直線的な引裂き除去を円滑かつ容易にし、しかも、引裂き痕を、毛羽立ち等のない十分平滑なものとして、逆止注出ノズルに、セルフシール逆止機能をより十分に発揮させることができる。
【0019】
少なくとも三層構造になる、逆止注出ノズル用の薄肉積層フィルムは、逆止注出ノズルの内外のそれぞれの表面に位置することになるシーラント層、たとえば、無延伸の各種のPE層、PP層、メタロセン触媒ポリエチレン層等のオレフィン系樹脂層、エチレン酢酸ビニル共重合体層、エチレンアクリル酸エチル共重合体層、アイオノマー層等を具えるものであり、逆止注出ノズルは、軟質の包装袋本体の内表面層としての、好ましくは、ノズル外表面のシーラント層と同種のシーラント層に、たとえば、ヒートシールによって融着接合させることにより、逆止注出ノズルの基端部を簡易、迅速に、しかも常に確実に包装袋本体に融着接合させることができ、これにより、包装袋本体の上端部分で、その側方へ突出する、逆止注出ノズルを具えた包装袋を製造することができる。
【0020】
ところで、内外の両表面にシーラント層を有する、少なくとも三層構造の積層フィルムよりなる逆止注出ノズルの基端部外表面を、包装袋本体の内表面に、このように融着接合させるに当たっての、逆止注出ノズルの内表面の相互融着を確実に防止するためには、ノズルの基端部内側に、より高融点の、または熱溶融しない離型シートを差込み配置すること、逆止注出ノズルの内外表面のそれぞれのシーラント層の溶融温度を、たとえば、材質の変更、同一材質のそれぞれのシーラント層の押出しラミネート条件の変更等によって相互に異ならせて、ノズル内表面のシーラント層の融点を、ノズル外表面のシーラント層のそれより高くすること等が有効である。
【0021】
以上のような逆止注出ノズルにおいて、包装袋の起立姿勢で、注出通路の先端開口の上端を通る垂線に対する、その先端開口下端の、包装袋本体に近づく方向に向かう傾斜角度を10〜30°の範囲内としたときは、液状の袋内被包装物の残量の多少にかかわらず、袋内被包装物の注出方向を、該被包装物への重力の作用方向に十分に近接させて、被包装物を、所要の注出位置へ高い精度をもって注出することができる。
すなわち、前記傾斜角度が10°未満では、とくに、袋内被包装物の残量が多い場合、注出圧力が大きくなりすぎて、注出位置が不安定になるおそれがあり、逆に、それが30°を越えると、とくに、袋内被包装物の残量が少なくなった場合に、包装袋の傾動量を大きくすると、注出通路の先端開口からの被包装物の流出方向と、重力の作用に基づく、被包装物の流下方向との角度差、すなわち、被包装物の曲がり量が大きくなりすぎることにより、注出方向が不安定になって、注出位置の狙いが定まらなくなり、その結果、被包装物の注出を停止した際に、被包装物が十分に液切れせず、注出通路の先端開口に付着残留し、付着被包装物が、その先端開口に沿って流下したり、該開口の下端から垂れ落ちたりするおそれがある。
【0022】
上述したいずれかの逆止注出ノズルの基端部を、軟質の包装袋本体の上端部分で、包装袋本体の内表面のシーラント層に、外表面のシーラント層で、たとえば融着接合させて、逆止注出ノズルを包装袋本体の側方へ突出させて設けた包装袋では、簡易・迅速に、かつ安価に包装袋を製造することができる。
【0023】
かかる包装袋において、逆止注出ノズルの先端部分を切除してなる注出通路の先端開口の形成部分の外表面に、撥水性物質または撥油性物質を、適宜の方法にて塗布した場合は、袋内被包装物の液切れ性をより一層高めて、液状の被包装物の意図しない滴下を有利に防止して包装袋およびその周囲の汚損をより効果的に防止することができる。
そしてこのことは、撥水(油)性物質が滑水(油)性をも有する場合にさらに効果的である。
【0024】
また、上述したいずれかの包装袋に、わさび、練りからし等の粘稠物もしくは、粉・粒状物を含むこともある調味料等の液体からなる液状の被包装物を、たとえば、頂部もしくは底部から充填包装してなる包装体では、袋内被包装物の注出等に当たって、逆止注出ノズルに、先に述べたようなセルフシール逆止機能をより十分に発揮させて、被包装物の繰り返しの注出によっても、包装袋内への外気の進入を確実に防止し、また、逆止注出ノズルの作用下で、被包装物の目的とする位置への的確なる注出を担保するとともに、注出の停止に伴う、不測の液だれの発生を効果的に防止することができる。