特許第6362253号(P6362253)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6362253超高速電子検出器および該検出器を組み込んだ走査型電子ビーム検査装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362253
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】超高速電子検出器および該検出器を組み込んだ走査型電子ビーム検査装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/244 20060101AFI20180712BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20180712BHJP
   H01J 37/12 20060101ALI20180712BHJP
   H01J 37/141 20060101ALI20180712BHJP
   H01J 37/143 20060101ALI20180712BHJP
   H01J 37/09 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   H01J37/244
   H01J37/28 B
   H01J37/12
   H01J37/141 Z
   H01J37/143
   H01J37/09 Z
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-93413(P2014-93413)
(22)【出願日】2014年4月30日
(65)【公開番号】特開2015-210998(P2015-210998A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2017年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】591012668
【氏名又は名称】株式会社ホロン
(74)【代理人】
【識別番号】100089141
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 守弘
(72)【発明者】
【氏名】山田 恵三
【審査官】 杉田 翠
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−260306(JP,A)
【文献】 特開2012−248304(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0270439(US,A1)
【文献】 実開昭51−017454(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0230620(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T1/00−1/16
1/167−7/12
H01J37/244
43/00−43/30
H01L31/00−31/02
31/0232
31/0248
31/0264
31/08
31/10
31/107−31/108
31/111
31/18
51/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルから放出あるいはサンプルで反射された電子ビームを超高速に検出する超高速電子検出器において、
前記サンプルから放出された電子ビームあるいはサンプルで反射された電子ビームを受ける第1の開口部と、
前記第1の開口部で受けられた電子ビームあるいは受けられて増幅された電子ビームを、加速する加速電圧を印加し、かつ前記第1の開口部の面積よりも小さい第2の開口部を有するダイオード検出器と
前記第1の開口部と前記第2の開口部との間に集束レンズを設け、第1の開口部から放出された電子ビームの面積を縮小して第2の開口部に入射させる縮小入射手段と
を備えたことを特徴とする超高速電子検出器。
【請求項2】
前記第1の開口部は、当該第1の開口部を有するメッシュあるいはMCPとしたことを特徴とする請求項1記載の超高速電子検出器。
【請求項3】
前記第2の開口部を有するダイオード検出器として、超高速動作可能かつ電子を検出可能なダイオードとしたことを特徴とする請求項1あるいは請求項2記載の超高速電子検出器。
【請求項4】
前記第1の開口部および前記第2の開口部のいずれか1つ以上に、当該開口部の軸に同軸にチューブ状であって、かつ前記電子ビームを当該軸の中心から所定距離離れた円環状に偏向する電圧を印加するリターリング電極を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の超高速電子検出器。
【請求項5】
前記第1の開口部と前記第2の開口部との間に静電レンズを設けると共に必要に応じて加速電圧を印加し、第1の開口部から放出された電子ビームの面積を縮小かつ加速して第2の開口部に入射させることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の超高速電子検出器。
【請求項6】
前記第1の開口部と前記第2の開口部との間に磁界レンズを設けると共に加速電圧を印加し、第1の開口部から放出された電子ビームの面積を縮小かつ加速して第2の開口部に入射させることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の超高速電子検出器。
【請求項7】
前記第1の開口部から第2の開口部を有するダイオード検出器までの部分(第1の開口部自身を除く)を磁気シールドおよび静電シールドのいずれか1つ以上の構造を持たせ、ノイズの影響を低減したことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の超高速電子検出器。
【請求項8】
前記サンプルと前記第1の開口部との間に、当該サンプルから放出された2次電子を吸引する正の数V以上の電圧を印加したことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の超高速電子検出器。
【請求項9】
前記第1の開口部と前記第2の開口部との間に当該第1の開口部から放出された電子ビームを加速して当該第2の開口部を有する前記ダイオード検出器で電子ビームの検出感度が最高となる正の電圧を印加したことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の超高速電子検出器。
【請求項10】
請求項1から請求項9記載のいずれかの超高速電子検出器を組み込んだ走査型電子ビーム検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプルから放出あるいはサンプルで反射された電子ビームを超高速に検出する超高速電子検出器および該検出器を組み込んだ走査型電子ビーム検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスはムーアの法則に従って、毎年縮小が進み、最先端デバイスでは量産段階のデバイスでも最小フィーチャーサイズが20nmを切ろうとしている。小さなフィーチャーサイズを実現するためには、より小さなパターンを形成できる露光技術が必要である。
【0003】
従来は波長193nmのレーザー光線が露光に使用されてきたが、光学的に分解できる限度を既に大きく超えているため、近年では波長が13.5mmのEUV光を利用する露光技術が精力的に進められている。
【0004】
この技術は日本発と言われる技術であるが、10年以上昔からASML等の会社で実用化に向けて研究開発されている。露光装置本体光学系はほぼ完成しているが、現状のEUV露光装置は経済的量産に必要とされる100Wから200Wの光源パワーを得ることが出来ないため、20nm世代の露光に使用することはスキップされた。
【0005】
その代わりに既存の波長193nm露光プロセスを複数回繰り返し行うことでさらに小さなフィーチャーサイズを実現することができる、いわゆるダブルあるいはトリプル露光技術が実際の生産現場では用いられている。
【0006】
原理上は波長193nmのレーザー光線を用いた液浸リソグラフィーを複数回繰り返すことにより幾らでも小さなパターンを作ることが可能であるが、従来よりも1ケタ高い精度のnmオーダーのアライメント精度が必要なことや化学増幅レジストの大きな分子構造から来る大きなラフネス等が繰り返し露光プロセスの制限になることが知られている。現在は、経済的限度と言われている露光プロセスを2回繰り返すダブルパターニングが実用に供せられており比較的構造の簡単なメモリーデバイスでは、20nmから16nmのライン&スペースを実現するために利用されている。
【0007】
構造の簡単なメモリーデバイスだけでなく、CPUやロジックデバイスも機能拡充や消費電力低減のためにパターン縮小を行うことが必要である。ロジックデバイスは繰り返しの無い複雑なパターンを利用するためロジックデバイスをダブルあるいはトリプル露光で作るためには相当複雑なパターンが必要である。本来1回の露光で実現出来るパターンを複数回の露光で利用可能な用に2枚のフォトマスク上のパターンに分割するためには非常に複雑な計算が必要である。パターンによっては分割計算が発散するなどして必要な結果が得られない場合がある。
【0008】
これらの複雑さを回避する目的で、コンプリメンタリーリソグラフィーと呼ばれる、主にインテルが提唱しているリソグラフィー容易化技術が使われようとしている。この露光方法では、複雑なロジック回路をメモリー回路の様なL&Sの簡単なパターンに還元したパターンを利用することに特徴がある。このようにすることで、複雑なロジックデバイスのパターンを最も露光しやすいL&Sパターンとそのラインをカットするプロセスのみに限定しているため、複雑なパターン分割計算が必要なく、プロセスは簡単で、計算上は8nm程度まで行くとされている。
【0009】
一方、以上述べたように193nm露光技術が延命されると、それに利用されるフォトマスクはレイヤー毎に露光回数分増加し、従来以上に多くのマスク検査や精密な測定が要求されるようになる。例えば、ダブルパターニングでは、2枚のフォトマスクを順次重ねて用いるため、2枚のマスク間のマスク上に形成されているラインの絶対位置精度やアライメント精度が今まで以上に重要である。より細かいパターンを露光するための光学補正も複雑かつ、精密になる。インバースリソグラフィーを用いたマスクなどは、高次の回折高まで使用するため、補正に利用するパターンサイズはさらに小さい。マスクの生産に当たっては、従来は無視できていた大きさの欠陥がデバイス歩留まりに効いてくるなど、従来以上に欠陥密度を下げる必要があるし、細かいパーティクルも観察の対象になる。
【0010】
以上の要求のため、フォトマスクには従来以上に高分解能で高速な欠陥検査が要求されている。これらの要求に答える有力な方法に、電子ビーム検査装置がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の電子ビーム検査装置は分解能に対しては十分であるが、検査速度に関しては要求とは程遠く遅いという問題があった。その大きな理由は、従来電子ビーム検査装置で利用可能な2次電子検出装置には飽和特性や応答速度に問題があり、速度を上げるとともに画像SNRが劣化するため、分解能と検査速度を両立できないという問題があった。
【0012】
詳述すれば、従来のGHzの応答速度を持つ高速電子検出手段の1つであるMCP(マルチチャンネルプレート、マイクロチャンネルプレート)が知られている。このデバイスはファイバーガラスを大量に束ねてエッチングすることで、ミクロンオーダーの電子が通れるチャンネルを何百万本と大量に作り、その内壁を電子増倍作用が起こるように処理したものである。MCP両端には電子倍増を行うために0から数キロボルトの高圧が印加されており、MCPに入射した電子は各チャンネルの壁に衝突しながら増倍され、最終的には入射した電子数の1000倍以上の電子数となる。MCPは1mm以下の厚みを持つ非常に薄いデバイスのため、入射電子が出射するまでの時間は非常に短くばらつきも無いので、1GHz(1ns)程度の高速応答が可能である。高速検査装置で利用するためには、1ピクセル当たり10個から1000個以上の電子を照射する。検査速度上昇に比例して照射電流量は増加し、サンプル表面から発生する大量の電子を検出することが必要なため、大量に検出装置に入射される信号電子を入射量に比例して増倍し電流に変換する必要がある。
【0013】
しかし、従来から用いられている、電子増倍装置であるMCPは電子が1つ1つゆっくりと入射される場合には、1つ1つのチャンネルにおいて理想的な電子増倍作用が起こり、1個の電子を10の6乗個に増倍することが可能であるが、大量の電子を同時に入射すると電子増倍に使用される各チャンネルが全て埋まってしまい、実質的に増倍出来ないデッドタイムと呼ばれる時間が生じる。これが飽和と呼ばれる現象である。この飽和が起こると、デッドタイム中は増幅が行われないので、入射した電子数と出力される電子数の間に比例関係が無く成り、増幅作用のリニアリティーが担保出来ず画像SNRが劣化し本来必要とする高速検査が実現できない。つまり、幾ら照射電流値あるいはMCPに入射される電子数を多くしても、出力電流が一定に成り、画像SNRを上げることが出来なくなる。MCPの出力電流上限は出力電流を増強したMCPで精々数十マイクロアンペアーである。そのため、SNR10が得られる周波数は高々100MHz以下に抑えられてしまい、高速検査装置を実現できないという問題があった。
【0014】
また、MCPの寿命は、通常のCDSEMで使用される様な低い出力電流時で大凡1年である。MCPは入射電子を増倍するためにチャンネル内部にアルカリ金属の薄い層を設けている。この層を形成しているアルカリ金属は電子を増倍するたびに、電子と共に真空に飛散するため、MCPの増倍率は出力電流量に比例して落ちて行く性質がある。MCPの寿命はMCPに印加することが出来る最大電圧が所望の増倍率を下った時と定めている。そのため検査装置のように連続的に大電流出力を行うと出力電流値に比例して増倍率が減少して急激に寿命が短く成り実用上使えないという大きな問題があった。
【0015】
一方、高速応答可能で出力電流が大きく取れる電子検出素子としてフォトダイオードがある。電子顕微鏡の世界では反射電子検出器などと呼ばれて、信号電子の持つエネルギーに比例した電流を検出するために用いられる。この場合の検出器には、高い検出速度要求が無いので、信号電子の検出効率を上げるために1平方センチメートルよりも大きな面積を持つフォトダイオードが一般に利用される。反射電子検出装置として使う場合は、信号電子のエネルギーが大事なので、信号電子に外部からエネルギーを与える使い方はしていない。
【0016】
フォトダイオードは高速光通信で使われる素子ではGHzオーダー以上の応答速度を持つものがある。フォトダイオードは増幅原理が上述したMCPとは異なり、チャンネルもなく、出力抵抗が非常に小さいためMCPで見られるような飽和現象が無く、100mAを超える出力電流を出すことが可能で、非常に大きな入射電子があっても増幅率の直線性を失わないという大きな利点がある。フォトダイオードの電子増幅作用は半導体基板の内部で行われるため、MCPに見られるような素子劣化は非常に小さく長寿命であるという点も大きな利点である。
【0017】
しかしながら、全てのサイズのフォトダイオードが高速応答特性を持つわけではなく、GHzのような高速応答可能なフォトダイオードのサイズはデバイスの電気容量をpFオーダー以下に抑えて高速性を担保するために、通常約1mmφよりも小さいことが必要とされる。これはフォトダイオードの応答速度とデバイスの電気容量すなわちデバイス面積は図13に示すように反比例の性質があるためである。電子検出可能なフォトダイオードとして利用可能なダイオードには色々な種類があるが、例えばPNダイオード、PINダイオード、アバランシェダイオード等いずれの半導体デバイスでも同様の傾向を持っている。理由は、これらのデバイスが等価回路的に電気容量を内蔵するためであり、出力された電流を電圧に変換するための増幅器に接続した際に、時定数が大きくなる等の影響が現れる。同様に、PN接合を持つ半導体デバイスは雑音を発生するが、面積が大きいほど暗電流や雑音が大きくなる。
【0018】
電子銃から照射されたプライマリービームによってサンプル表面に発生する信号電子(2次電子あるいは反射電子)は一旦、対物レンズの磁界で収束され、らせん運動をしながら上昇した後、サンプル直上の数mmの位置で四方に広がり、検出器の場所ではcmオーダーの広がりとなり、電子ビーム照射点の直上が一番電子強度の強いガウス分布となる。
【0019】
サンプル上の電子ビーム照射点で発生した殆どの信号電子を回収検出するためには図13に示したようにcmサイズの大きなサイズのフォトダイオードを利用する必要がある。フォトダイオードをcmオーダーに大きくすれば電子検出率は高まるものの、デバイスの電気容量が増加して応答速度がMHz以下と極端に落ち、高速検査装置としては使い物に成らないと同時、現在の半導体技術ではダイサイズがcm台に大きくてGHzの高速応答性を持つフォトダイオードは知られていないという問題があった。
【0020】
また、従来、MCPとフォトダイオードを重ね合わせたデバイスが提案されているが、MCPとフォトダイオードの大きさが同じcm大であり、フォトダイオードの電気容量が非常に大きいため実際には高速応答し得ないという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明では、電子ビームによる高速検査を実現可能にする超高速電子検出装置および該検出装置を組み込んだ走査型電子ビーム検査装置を提供することを目的とする。
【0022】
そのため、本発明は、サンプルから放出あるいはサンプルで反射された電子ビームを超高速に検出する超高速電子検出器において、サンプルから放出された電子ビームあるいはサンプルで反射された電子ビームを受光する第1の開口部と、第1の開口部で受光された電子ビームあるいは受光されて増幅された電子ビームを、加速する加速電圧を印加し、かつ第1の開口部の面積よりも小さい第2の開口部を有するダイオード検出器とを備えるようにしている。
【0023】
この際、第1の開口部は、当該第1の開口部を有するメッシュあるいはMCPとするようにしている。
【0024】
また、第2の開口部を有するダイオード検出器として、超高速動作可能かつ電子を検出可能なダイオードとするようにしている。
【0025】
また、第1の開口部および第2の開口部のいずれか1つ以上に、当該開口部の軸に同軸にチューブ状であって、かつ電子ビームを当該軸の中心から所定距離離れた円環状に偏向する電圧を印加するリターリング電極を設けるようにしている。
【0026】
また、第1の開口部と第2の開口部との間に静電レンズを設けると共に必要に応じて加速電圧を印加し、第1の開口部から放出された電子ビームの面積を縮小かつ加速して第2の開口部に入射させるようにしている。
【0027】
また、第1の開口部から第2の開口部を有するダイオード検出器までの部分(第1の開口部自身を除く)を磁気シールドおよび静電シールドのいずれか1つ以上の構造を持たせ、ノイズの影響を低減するようにしている。
【0028】
また、サンプルと前記第1の開口部との間に、サンプルから放出された2次電子を吸引する正の数V以上の電圧を印加するようにしている。
【0029】
また、第1の開口部と第2の開口部との間に第1の開口部から放出された電子ビームを加速して第2の開口部を有するダイオード検出器で電子ビームの検出感度が最高となる正の電圧を印加するようにしている。
【0030】
また、超高速電子検出器を組み込んだ走査型電子ビーム検査装置を構成するようにしている。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、電子ビームを超高速に検出するために、サンプルから放出された電子ビームあるいはサンプルで反射された電子ビームを第1の開口部で受光し、この受光された電子ビームあるいは受光されて増幅された電子ビームを加速すると共に第1の開口部の面積よりも小さい第2の開口部を有するダイオード検出器に縮小入射することにより、電子ビーム受光素子の面積を非常に小さくして超高速検出が可能となる。
【0032】
また、本発明の超高速電子検出器を組み込んだ走査型電子ビーム検査装置では、サンプル(例えばマスク)から放出あるいは反射された電子ビームを超高速に検出して寸法測長、欠陥検出などの短時間に行い、スループットを大幅に向上できる。
【0033】
また、シールドした場合には、電子ビーム装置のどこにでも配置できる効果がある。
【0034】
また、寿命の長い超高速かつ大電流出力可能な電子検出器をうることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明は、サンプルから放出された電子ビームあるいはサンプルで反射された電子ビームを第1の開口部で受光し、この受光された電子ビームあるいは受光されて増幅された電子ビームを加速すると共に第1の開口部の面積よりも小さい第2の開口部を有するダイオード検出器に縮小入射し、電子ビーム受光素子の面積を非常に小さくして超高速検出を実現した。
【0036】
また、本発明の超高速電子検出器を組み込んだ走査型電子ビーム検査装置では、サンプル(例えばマスク)から放出あるいは反射された電子ビームを超高速に検出して寸法測長、欠陥検出などの短時間に行い、スループットの大幅な向上を実現した。
【実施例1】
【0037】
図1は、本発明の1実施例構成図を示す。図1はプライマリー電子ビーム11をサンプル1に照射し、発生した2次電子、反射電子を第1の開口部2、第2の開口部4、フォトダイオード5の構成により超高速に信号電子(電子ビーム)12を検出する構成を模式的に記載したものである。
【0038】
図1において、サンプル1は、図示外の対物レンズで細く絞られたプライマリー電子ビーム11を照射しつつ平面走査(X方向およびY方向の走査)し、放出あるいは反射された信号電子12をもとに拡大画像を生成する対象の試料(例えばマスク)である。
【0039】
第1の開口部2は、サンプル1から放出あるいは反射された信号電子12を収集(必要に応じて正の電圧を印加して信号電子12を収集)するものであって、導電性のメッシュ3や後述するMCP9などの信号電子12を収集し通過あるいは収集して増幅し通過させるものである。
【0040】
メッシュ3は、サンプル1から放出あるいは反射された信号電子12を収集(2次電子のときは更に正の電圧を印加して収集)したり、更に反射させて増幅したりなどするものである。尚、メッシュ3の代わりに、後述するMCP9とし、当該MCP8で入射した信号電子を増幅して出力したりするものである。
【0041】
第2の開口部4は、メッシュ3(MCP9など)を通過(あるいは増幅されて通過)し、所定電圧に加速された信号電子12を検出する、第1の開口部2の面積よりも小さい面積を持つ開口部であって、当該第2の開口部4を有する検出器(図示ではフォトダイオード5)を配置する部分である。
【0042】
フォトダイオード5は、第2の開口部4の面積を有する、信号電子12を検出するダイオードの一例であって、例えばPNダイオード、PINダイオード、アバランシェダイオード等の一般にフォトダイオードと呼ばれているもの、光通信で利用されるInGaAs/InP、ガリウムやインジウム、ヒ素、りんなどの化合物を用いたものであり、PINダイオードやアバランシェダイオードを用いるときは適切な逆バイアスを印加したものである。いずれにしても、第1の開口部2を通過した信号電子12を所定高電圧(例えば数KVから数十KV程度)に加速した該信号電子12を第2の開口部4を有するダイオード5で高感度に検出することができるものであれば、いずれのダイオードでもよい。
【0043】
プライマリー電子通過穴6は、図示外の電子銃、集束レンズで集束された1次電子(例えば数KV以上に加速された1次電子)を、図示では右から左方向に通過させる軸上かつ同心円に設けた細い穴(1次電子が通過するに十分な例えば1mmないし数mm直径の穴)である。
【0044】
プライマリー電子ビーム11は、プリマリー電子通過穴6を右から左方向に通過した1次電子ビームであって、図示外の偏向器によりサンプル1上を平面走査し、該サンプル1の表面から2次電子を放出させたり、反射電子を反射させたりなどするための1次電子ビームである。
【0045】
信号電子12は、プライマリー電子ビーム11でサンプル1上を平面走査したときに放出された2次電子、反射された反射電子などである。
【0046】
電界13は、サンプル1と第1の開口部2を有するメッシュ3との間に電圧を印加して生成された電界を模式的に表したものであって、サンプル1から放出された特に2次電子(あるいは低加速の反射電子)を該メッシュ3に収集(吸引して収集)するためのものである。
【0047】
吸引電圧14は、サンプル1と第1の開口部2を有するメッシュ3との間に、信号電子12を該メッシュ3の方向に吸引するための電界を発生させるための正の電圧である。
【0048】
加速電圧15は、第1の開口部2を有するメッシュ3と、第2の開口部4を有するフォトダイオード5との間に、メッシュ3を通過した信号電子12を該フォトダイオード5の方向に加速するための電界を発生させる高電圧(例えば数KVないし数十KV)である。
【0049】
次に、図1の構成の動作を説明する。
【0050】
(1)プリマリー電子通過穴6を右から左方向に通過した図示外の電子銃、集束レンズで発生・集束されたプライマリー電子ビーム11は、サンプル1を照射した状態で、図示外の偏向器により所定領域が平面走査され、2次電子を放出、反射電子を反射する。
【0051】
(2)(1)でサンプルから放出された2次電子(あるいは低加速の反射電子)はサンプル1と第1の開口部2を有するメッシュ3との間に正の吸引電圧14が印加されているので、メッシュ3に向けて吸引される。実際にはサンプル1の右側は図示外の対物レンズの強磁界が存在するために、2次電子(信号電子12)は軸上を螺旋しながら右方向に走行し、該磁界がなくなった場所で放射状に発散するが、このときにメッシュ3に印加された正の電圧(吸引電圧14)に吸引されて該メッシュ3に向けて走行する。
【0052】
(3)(2)でメッシュ3に向けて走行した信号電子12は、第1の開口部2を有する該メッシュ3の穴を通過(あるいは穴の壁面に衝突して増幅されて通過)する。
【0053】
(4)(3)でメッシュ3を通過した信号電子12は、該メッシュ3と、第1の開口部2の面積よりも小さい面積を持つ第2の開口部4を有するフォトダイオード5との間に正の加速電圧(例えば数KVから数十KV〜)15が印加されているので、該加速電圧15で加速されて第2の開口部4を有する該フォトダイオード5に入射する。
【0054】
(5)(4)でフォトダイオード5に入射した高加速の信号電子12は、該フォトダイオード5の内部で散乱を繰り返して増幅(例えば数千倍)され、図示外の出力端子から増幅された信号を出力する。
【0055】
(6)(5)で出力された信号をもとに、サンプル1を平面走査した走査信号に同期して画像を図示外のディスプレイ上に表示する。
【0056】
(7)以上により、サンプル1から放出・反射された信号電子12を第1の開口部2を有するメッシュ3に集束し、該メッシュ3を通過した信号電子を第1の開口部2の面積よりも小さく、かつ高加速にして第2の開口部4を有するフォトダイオード5に入射し、該フォトダイオード5で増幅して出力することにより、信号電子12を検出する検出面積を小さくしてフォトダイオード5の容量を小さくし、高速検出を可能にすると共に、信号電子12を高電圧に加速してフォトダイオード5で増幅して高感度検出を可能にすることを同時に実現した。
【0057】
(8)更に、詳述すれば、上述したフォトダイオード5は入射エネルギーに比例した電流に変換する装置である。フォトダイオード5に入射した信号電子12は多重散乱を内部で起こし、入射エネルギーに比例した複数の電荷を発生させる。これにより、電子増倍作用が得られ、後述する図12に示すように15KV程度の入射エネルギーをもった信号電子12の場合は、約3000倍程度の増倍率が得られる。通常(従来)は、プライマリー電子ビーム11の照射によって発生した信号電子12の持つエネルギーを分析するために使われるので、信号電子12のエネルギーのまま、フォトダイオード5に入射する使い方がされる。本発明では従来とは全く逆にフォトダイオード5に入射する電子のエネルギーが全てほぼ一定になるように、信号電子12が本来持つエネルギーよりも非常に高いエネルギーを与えて(例えば2次電子の持つ数eVのエネルギーよりも非常に高い15KV程度の非常に高いエネルギーを与えて該2次電子(信号電子12)のバラつきを低減して)、各1個の入射電子がほぼ同じだけ増幅されるようにしているという特徴がある。このようにすることで、プライマリー電子ビーム11のサンプル1への照射により発生した電子(信号電子12)の個数にほぼ比例した出力電流を図1のフォトダイオード5から得ることが出来るようになる。
【0058】
(9)例えば、電子走査型の高速検査装置では、数十nA以上の照射電流が用いられるため、信号電子12も数十nA以上が得られる。この信号電子12を本発明の図1の装置で検出すればフォトダイオード5による数千倍の増幅作用で数十μA以上の大きな出力電流が得られる。この増幅率は信号電子(例えば2次電子)12の電流量にほぼ正確に比例するため、信号電子12の量に比例した出力電流量がフォトダイオード5から得られる。例えば、帯域が500MHzの高速電流増幅アンプのノイズは数μA RMSのレベルである。数十マイクロアンペアー以上の図1の装置のフォトダイオード5からの出力電流があれば、検査に必要とされるSNR10以上の画像を取得出来るようになるという効果が発生する。
【0059】
以下順次詳細に説明する。
【0060】
図2は、本発明のPNダイオード構造例を示す。
【0061】
図2の(a)は上面模式図を示し、図2の(b)は断面模式図を示し、図2の(c)は等価回路を示す。
【0062】
図2において、図示のPNダイオードは、既述した図1のフォトダイオード5の構造を模式的に示した1例であって、図2の(a)、(b)に示すように、例えば直径7mm程度で、幅1mm程度の円環状のPNダイオードである。この円環状のPNダイオードの部分が図1の第2の開口部4に相当し、該第2の開口部4を有するフォトダイオード5が本発明に係わるものであって、信号電子12がこの第1の開口部2よりも小さく縮小されて第2の開口部4に集束され、図2の円環状の部分を有するPNダイオードで増幅検出されるものである。尚、PNダイオードの中心には、図1で既述したプライマリー電子通過穴(例えば1mmないし数mm)6を設けてもよい。
【0063】
以上のように、円環状のPNダイオードの部分で縮小された信号電子12が検出されるため、上記(8)、(9)で説明したように、該PNダイオードの検出面の面積を小さくして容量を小さくし、かつ該PNダイオードの検出領域で入射した高加速の信号電子12を多重散乱させて1000倍程度に増幅(後述する図12参照)することにより、高速かつ高感度に信号電子12を検出することが可能となる。
【0064】
図3は、本発明の他の実施例構成図(その1)を示す。図3は、プライマリー電子通過穴6の部分にリターディング電極7、および外周部にガード電極8を設けた例を示す。他の構成は図1と同一であるので、説明を省略する。
【0065】
図3において、リターディング電極7は、プライマリー電子ビーム11をサンプル1に照射し、そのときに放出された信号電子12のうち低加速の電子(2次電子、低加速の電子)が逆方向(図3で左から右方向)にプライマリー電子通過穴6を通過してしまう事態を回避し、負の電圧を印加して第1の開口部2を有するメッシュ3に吸引されるようにするための負の電圧を印加する円筒状の電極である。
【0066】
リターディング電界7−1は、リターディング電極7に負の所定電圧を印加したことで、サンプル1から放出された信号電子12のうち低加速の電子(2次電子、反射電子のうちの低加速の電子)を偏向して第1の開口部2を有するメッシュ3に収集させるための電界である。
【0067】
以上のように、第1の開口部2および第2の開口部4の軸の近傍に円筒状のリターディング電極7を配置し、負の電圧を印加してリターディング電界7−1を発生させることにより、サンプル1から放出された低加速の信号電子12がプライマリー電子通過穴6を逆方向に通過することを防止し、第1の開口部2を有するメッシュ3に収集させ、信号電子12の収集効率を高めることが可能となる。
【0068】
また、図3において、ガード電極8は、第1の開口部2を有するメッシュ3を通過(あるいは増幅して通過)して加速された信号電子12が、第1の開口部2の面積よりも小さい第2の開口部4を有するフォトダイオード5(既述した図2の(a)参照)の外側への照射を防止し、フォトダイオード5の円環状の部分に縮小照射して高効率に収集するように、電界を印加するための電極である。
【0069】
以上のように、図1の第1の開口部2と、該第1の開口部2の面積よりも小さい面積の第2の開口部4との間の外側に、信号電子12が逃げないようにガード電極8に負の電圧を印加することにより、第1の開口部2を有するメッシュ3を通過(増幅して通過)して加速された信号電子を、全て縮小して第2の開口部4を有するフォトダイオード5の円環状の部分に照射し、収集効率を高めることが可能となる。
【0070】
図4は、本発明の他の実施例構成図(その2)を示す。図4は、図1のメッシュ3の代わりにMCP9を設けた他の実施例構成図を示す。
【0071】
図4の(a)は構成図を示し、図4の(b)はMCP9のチャンネルを拡大した模式図を示し、図4の(c)はチャンネルを拡大した信号電子の増幅の様子を模式的に示す。
【0072】
図4において、MCP9は、中心に穴のあいたマイクロチャンネルプレート(MCP)と呼ばれる電子増倍デバイスであって、数KVのバイアス電圧を印加して使用するデバイスである。1枚のMCP9で最大1000倍程度増幅することができる。2枚利用すれば最大100万倍増幅することもできる。本発明では直線性が担保できる比較的低い増幅率の範囲で利用することに特徴がある。
【0073】
次に、動作を説明する。
【0074】
(1)サンプル1から放出された信号電子12が第1の開口部2を有するMCP9に入射すると、入射した信号電子12はバイアス電圧の印加されたMCP9によって10倍から1000倍程度に増幅される。
【0075】
(2)MCP9で増倍された信号電子12のエネルギーは一旦2次電子程度の低いエネルギーの信号電子12に戻っている。そのためMCP9を通過した信号電子12は電界型あるいは磁界型あるいは両者型の電子収束手段10によって容易に第1の開口部2よりも小さい面積の第2の開口部4を持つフォトダイオード5の検出部分(図2参照)に集束(縮小)され、かつ、第1の開口部2を有するMCP9と第2の開口部4を有するフォトダイオード5との間に印加された加速電圧14により加速され、フォトダイオード5に高加速の信号電子12が入射される。フォトダイオード5は1つでも良いし、複数の小さな開口面積を持つフォトダイオード5を幾つか並列に並べても良い。もちろんプライマリー電子ビーム11が通過できる穴を確保した円環状あるいは貫通穴が空いているフォトダイオード5でも良い。フォトダイオード5は既述したように図12に示す入射エネルギーに比例した電子増倍作用を示すため、信号電子12は入射エネルギーに比例して増幅される。
【0076】
(3)本発明では、従来とは異なり、フォトダイオード5に入射する時のエネルギーが信号電子12の発生時のエネルギーでは無く、後から加える加速電圧14に比例したエネルギーになることに特徴がある。例えば15KVのバイアス電圧(加速電圧15)を用いて信号電子12を加速した後フォトダイオード5に入射するとそれぞれの信号電子12をもとの信号電子12のエネルギーとは無関係に約3000倍に増倍することができる。信号電子12の検出器の総合倍率はMCP9の倍率とフォトダイオード5の倍率とを乗算したものになる。フォトダイオード5はMCP9と異なり出力抵抗が非常に小さいため、飽和がなかなかしないので、入射電子数が多い場合には最大数百mAの出力電流を取ることができる。
【0077】
以上の図4に示すようにMCP9とフォトダイオード5を組み合わせ、両者が増幅直線性を保っている増幅状態で利用することにより、通常のSEM観察で利用する数pA程度の極小電流から高速検査装置で通常利用される数十nA以上の大電流信号電子までをリニアリティーを保ったまま100mA以上の電流に増倍することが出来る。
【0078】
(4)尚、図12に示すように、フォトダイオード5で増倍された信号電子12は数十μAから数百mAの信号電流となり、帯域が1GHzある超高速電流電圧変換アンプによって電圧信号に変換できる。帯域1GHzの高速アンプのノイズレベルは数μA RMSオーダーなので、SNR10以上の高品質のアナログ信号を容易に得ることが出来る。SNRが十分大きいので、帯域をもっと広げることも可能である。出力電流が100mAと大きい場合には、50Ω程度の抵抗で終端するだけで十分な電圧に変換できる。このアナログ信号を高速A/D変換器にて所望のビット数のデジタル信号に変換してコンピュータに取り込み画像処理をして画像形成、測定、検査等に利用することができる。
【0079】
図5は、本発明の他の実施例構成図(その3)を示す。図5は、図4の電子集束手段10として磁界型の集束レンズ21を用いた他の実施例構成図を示す。
【0080】
図5において、集束レンズ21は、入射した信号電子12をさらに小さなフォトダイオード5に縮小するために、第1の開口部2を有するメッシュ3(あるいはMCP9)と、第2の開口部4を有するフォトダイオード5との外周周辺に配置された磁界型の集束レンズである。集束レンズ21は電磁レンズであり、磁場を発生させるコイルあるいは永久磁石とポールピースからなり、ポールピースには僅かなギャップがあって、その場所から強い磁場が漏れてレンズとして働くものである。尚、磁界型の集束レンズ21に限られることなく、静電型の集束レンズ21でもよい。
【0081】
リターディング電極7は、既述したように、信号電子12を第1の開口部2を有するメッシュ3に集束するための負の電圧を印加する電極である。
【0082】
次に、動作を説明する。
【0083】
(1)第1開口部2を有するメッシュ3(あるいはMCP9)を通過した増幅された信号電子12は、電磁型の集束レンズ21によって集束(縮小)され、第2の開口部4を有する小型フォトダイオード5(図2参照)に入射される。
【0084】
(2)集束(縮小)された信号電子12は小型フォトダイオード5に入射するのに最適な加速電圧14によって加速される。また、縮小された信号電子12が入射する第2の開口部4を有する小型フォトダイオード5の検出領域には、超小型のGHzに応答する高速フォトダイオードが存在し、高速の信号電子の散乱毎に電子を増幅し、検出・増幅した信号電子12に対応する信号を出力する。
【0085】
(3)この際、図5の集束レンズ21を利用することで、信号電子12を第1の開口部2の面積よりも小さい第2の開口部4の面積に更に小さく縮小することが可能となり、かつ、面積が小さくなったことに対応した小型フォトダイオード5に垂直に入射させることができるため、無駄なく高効率に信号電子12を増幅することができるようになる。
【0086】
図6は、本発明の他の実施例構成図(その4)を示す。
【0087】
図6において、電子検出器ユニット22は、数cm程度のサイズを持つ第1の開口部2を有する導電性のメッシュ3(あるいはMCP9)、第2の開口部4を有する小型フォトダイオード5をパーマロイ等の高透磁率を有する磁気シールド部材で囲み内部の電磁レンズが発生する磁場などが外部の電子ビームに影響を与えないようにシールド、および全体を1つの部品として扱えるように一体化(ユニット化)したものである。
【0088】
第1の開口部2を有するメッシュ3(あるいはMCP9)は、サンプル1から放出、反射された信号電子12を収集するものである。
【0089】
集束レンズ21は、第1の開口部2を有するメッシュ3を通過した信号電子12を、第2の開口部4を有する小型フォトダイオード5の検出領域に集束(縮小)するレンズであって、磁界型レンズ(あるいは静電型レンズ)である。
【0090】
磁気シールド23(あるいは静電シールド23)は、内部に設けた集束レンズ(磁界型、静電型)21、加速電圧14などの影響が外部の電子ビームに影響を与えないようにシールド(磁気シールド、静電シールド)するために磁性材(導電材)で囲むものである。
【0091】
以上により、第1の開口部2を有するメッシュ3(あるいはMCP9)のみが外部に開放されている面に限ることにより、内部にある集束レンズ21および加速電圧14などが発生する磁場、電界が外部に漏れるのを阻止し、これらが外部の電子ビームに影響を与えることを防止できる。
【0092】
尚1:図6では第1の開口部2を有するメッシュ3と記載されているが、MCP9に代えてもよい。
【0093】
尚2:図6では集束レンズ21として磁界型の集束レンズの構成が記載されているが、静電型の集束レンズ21に代えてもよい(後述する図7参照)。
【0094】
尚3:図6では、サンプル1から放出、反射された信号電子12を第1の開口部2を有するメッシュ3(あるいはMCP9)に入射している構成が記載されているが、このメッシュ3(あるいはMCP9)を無くし、サンプル1から放出、反射された信号電子12を第1の開口部2をそのまま通過させ、集束レンズ21で縮小し、加速して直接に第2の開口部4を有する小型フォトダイオード5に入射するようにしてもよい。
【0095】
尚4:図6の第2の開口部4を有する小型フォトダイオード5の前面に、更に、入射した信号電子12を加速あるいは減速するための電圧を印加するメッシュ3−1を設け、このメッシュ3−1と小型フォトダイオード5との間に信号電子12を加速あるいは減速する任意電圧を印加し、加速あるいは減速した信号電子12を小型フォトダイオード5に入射させ、増幅率を増減したり、所望増幅率になるように調整したり、増幅率が可及的に高くかつ直線性の良好な範囲に調整したりしてもよい。
【0096】
図7は、本発明の他の実施例構成図(その5)を示す。図7は、図6に記載の磁界型の集束レンズ21を静電型の集束レンズ21に、磁気シールド23を静電シールド23にそれぞれ代えた構成を示したものである。
【0097】
図7において、集束レンズ21は、静電型の集束レンズであって、所定電圧を静電型のレンズの電極として図示の構成にして印加し、第1の開口部2を有するメッシュ3(あるいはMCP9)を通過した信号電子12を、縮小して第2の開口部4を有する小型フォトダイオード5の検出面に入射させるものである。
【0098】
静電シールド23は、電子検出器ユニット22を構成する第1の開口部2を有するメッシュ3(あるいはMCP9)、集束レンズ21(静電型)、第2の開口部4を有する小型フォトダイオード5を収納する容器の材料であって、内部に発生する電界ノイズなどが外部に漏洩することを防止するものである。
【0099】
以上により、第1の開口部2を有するメッシュ3(あるいはMCP9)のみが外部に開放されている面に限ることにより、内部にある集束レンズ21および加速電圧14などが発生するここでは電界が外部に漏れるのを阻止し、これらが外部の電子ビームに影響を与えることを防止できる。
【0100】
図8は、本発明の他の実施例構成図(その6)を示す。図8は、第1の開口部2の内側に円筒状のリターディング電極7を配置、および第2の開口部4を有する小型フォトダイオード5の前面にメッシュ3−1を配置した構成例を示す。
【0101】
図8において、リターディング電極7は、サンプル1から放出、反射された信号電子12のうち低加速の信号電子(2次電子、低加速の反射電子)12が逆方向に走行するのを阻止し、第1の開口部2を有するMCP9(あるいはメッシュ3)に入射する電界を発生させる電圧を印加する、内部にプライマリー電子ビーム11が通過する穴を有する円筒状の電極である。
【0102】
メッシュ3−1は、第2の開口部4を有する小型フォトダイオード5の前面に配置したメッシュであって、該メッシュ3−1と小型フォトダイオード5との間に電圧を印加し、小型フォトダイオード5に入射する信号電子12のエネルギーを調整(増減)し、増幅率を増減したり、所望増幅率になるように調整したり、増幅率が可及的に高くかつ直線性の良好な範囲に調整したりなどするためのものである。メッシュ3−1は、既述した第1の開口部2を有するメッシュ3のうちのいずれか、あるいは両者を設けるようにしてもよい。
【0103】
図9は、本発明の他の実施例構成図(その7)を示す。図9は、図6から図8に記載した電子検出器ユニット22の中心(軸)部分にプライマリー電子ビーム11が通過する穴を設けると共に当該穴の部分にリターディング電極7を設けて走査型電子顕微鏡に組み込んだ様子を模式的に示したものである。
【0104】
ここでは、図示の電子検出器ユニット22は、第1の開口部2を有するMCP9,集束レンズ(電磁型、静電型)21、第1の開口部2の面積より小さい面積の第2の開口部4を有するフォトダイオード5からなり、中心(軸)にプライマリー電子ビーム11を通過させる穴および当該穴の部分にリターディング電極7を設けた構成としている。
【0105】
以上の構成を走査型電子顕微鏡に組み込むことにより、プライマリー電子ビーム11をサンプル1に照射しつつ平面走査し、そのときに放出された2次電子、反射された反射電子などからなる信号電子12を第1の開口部2を有するMCP9で収集・増幅し、集束レンズ(電磁型、静電型)21で縮小(第1の開口部2の面積よりも小さい第2の開口部4の面積に縮小)し、加速電圧14で加速した信号電子12をフォトダイオード5に入射して増幅することにより、信号電子12を検出する検出面積を小さくしてフォトダイオード5の検出面の面積を小にして容量を小さくし、高速検出を可能にすると共に、信号電子12をフロント部分でMCP9で増幅し、更に高電圧に加速してフォトダイオード5で増幅して高感度検出を可能にすることを同時に実現した。
【0106】
図10は、本発明の他の実施例構成図(その8)を示す。図10は、図6から図8に記載した電子検出器ユニット22の4つを、図示のように、軸(プライマリー電子ビームが通過する軸)を中心に配置すると共に、軸の周りにリターディング電極7を設けて走査型電子顕微鏡に組み込んだ様子を模式的に示したものである。
【0107】
ここでは、図示の4つの電子検出器ユニット22は、図6から図8で既述した第1の開口部2を有するMCP9(あるいはメッシュ3),集束レンズ(電磁型、静電型)21、第1の開口部2の面積より小さい面積の第2の開口部4を有するフォトダイオード5などからなるものである。
【0108】
以上の構成を走査型電子顕微鏡に組み込むことにより、プライマリー電子ビーム11をサンプル1に照射しつつ平面走査し、そのときに放出された2次電子、反射された反射電子などからなる信号電子12を、4つの電子検出器ユニット22でそれぞれ検出・増幅することにより、各電子検出ユニット22でそれぞれ高速検出できると共に、高感度検出できる。
【0109】
更に、4つを軸の周りに対称に配置し、例えば
(1)左右差信号=(A+C)−(B+D)
(2)上下差信号=(A+B)−(C+D)
の演算を行なうことにより、左右方向あるいは上下方向の差信号の画像を表示し、左右方向あるいは上下方向から見た強調表示画像を表示することが可能となる。
【0110】
例えば真上からの観察では分かりにくい、斜め方向のnmオーダー厚みのCr薄膜のパターンエッジから放出、反射された信号電子12を上記(1)あるいは(2)のような差信号を演算して強調し、境界のはっきりした画像を得ることが出来る。
【0111】
尚、図10では4つの電子検出器ユニット22を配置したが、これに限られず、1つの電子検出器ユニット22を配置してフォトダイオード5について既述した図2のリング状の部分を4つに分割(上下左右に4分割)したり、2つの電子検出器ユニット22を配置して各フォトダイオード5について既述した図2のリング状の部分を2つにそれぞれ分割(1つを上下に2分割、および他の1つを左右に2分割)したりしてもよい。
【0112】
図11は、本発明の説明図(その1)を示す。図11は、既述した図1から図10で用いた本発明の信号電子12の検出・増幅系を模式的に表したものである。
【0113】
図11の(a)は回路構成例を示し、図11の(b)は等価回路例を示す。
【0114】
図11において、信号電子12は、図1から図10に記載した、プライマリー電子ビーム11をサンプル1に照射しつつ平面走査したときに該サンプル1から放出された2次電子、反射された反射電子などからなる信号電子である。
【0115】
MCP9あるいはメッシュ3(メッシュ3−1)は、第1の開口部2を有し、信号電子12を収集し、増幅するものである。
【0116】
フォトダイオード5は、第1の開口部2の面積よりも小さい面積を持つ第2の開口部4を有するダイオードであって、検出面積を小さくして高速検出可能、かつ信号電子12を加速して入射して増幅するものである。
【0117】
I/Vアンプは、電流を電圧に変換する、低ノイズのアンプである。
【0118】
A/Dは、アナログ信号をデジタル信号に高速変換する変換器である。
【0119】
以上の構成を採用することにより、図1から図10で既述したサンプル1から放出、反射された信号電子12の面積を縮小かつ加速して小さな検出面積を有するダイオード5に入射して検出・増幅することにより、超高速かつ高S/N比の画像信号を取得することが可能となる。
【0120】
図12は、フォトダイオードの像倍率ー電子エネルギーの説明図を示す。図12において、横軸は電子のエネルギー(KeV)を表し、縦軸は増倍率を表す。
【0121】
図12に示す曲線は、フォトダイオードに入射する電子エネルギー(KeV)に対する入射した電子の像倍率の関係を表したものであって、数KVから数十KVの範囲で図示のような増加傾向を持つ曲線となる。
【0122】
図13は、本発明の説明図(その2)を示す。図2において、横軸はフォトダイオードの検出器面積(平方mm)を表し、縦軸はフォトダイオードの応答速度(ns)を表す。
【0123】
図13において、本発明の領域は、高速増幅可能なフォトダイオードの検出器面積の例を表し、ここでは、10平方mm以下であって、そのときの応答速度は10ns以下である。それ以上は従来の領域である。
【0124】
したがって、本発明では、サンプル1から放出、反射された信号電子が入射する第1の開口部2を有するメッシュ3(あるいはMCP9)を通過(増幅・通過)した信号電子12を、集束レンズ21により第1の開口部2の面積よりも小さい第2の開口部4を有する小型のフォトダイオード5の検出領域に縮小・加速して入射し、該フォトダイオード5で高速検出かつ増幅することにより、超高速かつ低ノイズの画像信号を取得することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0125】
図1】本発明の1実施例構成図である。
図2】本発明のPNダイオード構造例である。
図3】本発明の他の実施例構成図(その1)である。
図4】本発明の他の実施例構成図(その2)である。
図5】本発明の他の実施例構成図(その3)である。
図6】本発明の他の実施例構成図(その4)である。
図7】本発明の他の実施例構成図(その5)である。
図8】本発明の他の実施例構成図(その6)である。
図9】本発明の他の実施例構成図(その7)である。
図10】本発明の他の実施例構成図(その8)である。
図11】本発明の説明図(その1)である。
図12】フォトダイオードの像倍率ー電子エネルギーの説明図である。
図13】本発明の説明図(その2)である。
【符号の説明】
【0126】
1:サンプル
2:第1の開口部
3、3−1:メッシュ
4:第2の開口部
5:ダイオード、フォトダイオード、小型ダイオード
6:プライマリー電子通過穴
7:リターディング電極
7−1:リターディング電界
8:ガード電極
9:MCP
9−1:チャンネル
9−2:信号電子
10:電子集束手段
11:プライマリー電子ビーム
12:信号電子
13:電界
14:吸引電圧
15:加速電圧
21:集束レンズ
22:電子検出器ユニット
23:シールド、磁気シールド、静電シールド
25:電子銃
26:偏向器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13