(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362258
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】農業用薬液供給装置
(51)【国際特許分類】
A01G 25/02 20060101AFI20180712BHJP
【FI】
A01G25/02 601P
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-116756(P2014-116756)
(22)【出願日】2014年6月5日
(65)【公開番号】特開2015-228830(P2015-228830A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2017年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】514142991
【氏名又は名称】守屋 勉
(73)【特許権者】
【識別番号】514142197
【氏名又は名称】神林 輝彦
(73)【特許権者】
【識別番号】514142201
【氏名又は名称】市川 昌裕
(73)【特許権者】
【識別番号】514142212
【氏名又は名称】古内 良明
(74)【代理人】
【識別番号】100082153
【弁理士】
【氏名又は名称】小原 二郎
(72)【発明者】
【氏名】守屋 勉
(72)【発明者】
【氏名】神林 輝彦
(72)【発明者】
【氏名】市川 昌裕
(72)【発明者】
【氏名】古内 良明
【審査官】
田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−248079(JP,A)
【文献】
特開2007−295884(JP,A)
【文献】
実開平05−056264(JP,U)
【文献】
特開2009−220108(JP,A)
【文献】
実開平04−078959(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 25/02
A01M 7/02
A01C 23/00
B05B 7/24−7/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
灌漑用の給水配管に介装され、給水配管に接続される上流側端部および下流側端部を有する外筒体と、
前記外筒体の上流側端部の内周側に組合される内筒体とを備え、
当該外筒体と内筒体との間の流路に前記内筒体を流れる水流により負圧を生じさせる環状の負圧室が形成され、
前記外筒体の周壁には、一方の端部で外部の薬液容器に連通し、他方の端部で前記流路の負圧室に開口する薬液の流入孔が形成された農業用薬液供給装置において、
前記流入孔は、外筒体の軸心に向かうにしたがい外筒体の下流端部に近づくように傾斜して形成されていることを特徴とする農業用薬液供給装置。
【請求項2】
前記流入孔の孔軸が前記外筒体の軸線に対して傾斜する角度を45〜80度の範囲に設定されていることを特徴とする請求項1記載の農業用薬液供給装置。
【請求項3】
前記薬液供給装置中、少なくとも外筒体を熱可塑性樹脂の一体成形により形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の農業用薬液供給装置。
【請求項4】
前記薬液供給装置の内筒体を前記外筒体の上流側端部の内周側に樹脂の材料弾性を利用した圧入によって着脱可能に組合せたことを特徴とする請求項3記載の農業用薬液供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は農業用薬液供給装置に係り、特に灌漑用の給水配管を有する圃場等において給水管路の一部に介装接続されて管路の給水中に肥料、農薬等の薬液を供給し、これらを水と混合して作物に施用する農業用薬液供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圃場等の作物に施用する肥料や農薬(以下薬液という)は所定濃度の溶液として供給することが望ましいが、圃場に灌漑用の給水配管系が設けられている場合には配管の途中に薬液の混合供給管を介装接続しておくことにより給水配管の水流中にこれらの薬液を混合し水によって均一な濃度に希釈された薬液を灌水作業と同時に対象区域の作物に供給することができる。
【0003】
この場合配水管路の薬液供給装置を設ける部分の管路をオリフィス形状に絞って流路の断面積を減少させ、このオリフィス部分に外部からの薬液供給管を接続して薬液を吸入混合するいわゆるベンチュリー方式の薬液供給装置が近年用いられている。
【0004】
この装置では管路の上流側から供給される水流がオリフィスで絞られて速度が増大する際にこの部分の圧力が低下して負圧を生じ、これによって薬液供給管からの薬液を吸引するようになされている。このような薬液供給装置では薬液供給のためのポンプ等の動力を必要とせず可動部がないので構造が簡単で作業や保守の労力が軽減されるため近年次第に実用化されている(特許文献1 特開平9−248079)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−248079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような薬液供給装置では、水中に混合される薬液の流量(濃度)は専ら給水管路のオリフィス部分に形成される負圧によって与えられるので、供給源(水道元栓など)の水圧が変動すると混合される薬液の濃度も変化する。特に管路の水圧が低下した場合には薬液の吸引混合量が大幅に減少するため一定時間の灌水作業の間に所定量の薬液が供給されない場合が生じる。
【0007】
したがってこのような用途に用いられる薬液供給装置としては、負圧によって薬液を管路オリフィス部の水流に吸引して混合する際に前記ベンチュリー効果を極力円滑に生じさせる構造とし、給水管路の水圧が低下した場合にも充分対応できるようにすることが望まれる。
【0008】
ここで薬液供給装置は圃場の灌漑水配管の一部に薬液供給のために設けれている部材であり、使用する薬液による腐食および自然条件(降雨、塩害、紫外線照射等)による経時劣化を生じるので基本的には所定期間での交換が必要となる消耗部品と考えられる。このため薬液供給装置はその構造が簡単でかつ製作の容易な低コストのものであることが求められる。
【0009】
前記特許文献1には薬液流入量の調節のための機構が開示されているが構造が複雑であり、またオリフィス部自体についてベンチュリー作用をより効果的に与える構造は何ら示唆されていない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、灌漑用の給水配管に介装され、給水配管に接続される上流側端部および下流側端部を有する外筒体と、前記外筒体の上流側端部の内周側に組合される内筒体とを備え、当該外筒体と内筒体との間の流路に断面積を減少させることにより水流の速度を増大させて負圧を生じさせる負圧室が形成され、前記外筒体の周壁には、一方の端部で外部の薬液容器に連通し、他方の端部で前記流路の負圧室に開口する薬液の流入孔が形成された農業用薬液供給装置において、前記流入孔は、外筒体の軸心に向かうにしたがい外筒体の下流端部に近づくように傾斜して形成されている。
【0011】
また本発明においては、前記流入孔の孔軸が前記外筒体の軸線に対して傾斜する角度が55〜65度の範囲に設定されている。
【0012】
また本発明においては、前記薬液供給装置中、少なくとも外筒体が熱可塑性樹脂を材料としてその一体成形により形成されている。
【0013】
さらに本発明においては、前記薬液供給装置の内筒体が前記外筒体の上流側端部の内周側に樹脂の材料弾性を利用した圧入によって前記外筒体に対して着脱可能に組合されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明のによれば灌漑用の給水配管に介装され、給水配管に接続される上流側端部および下流側端部を有する外筒体と、前記外筒体の上流側端部の内周側に組合される内筒体とを備え、当該外筒体と内筒体との間の流路に断面積を減少させることにより水流の速度を増大させて負圧を生じさせる負圧室が形成され、前記外筒体の周壁には、一方の端部で外部の薬液容器に連通し、他方の端部で前記流路の負圧室に開口する薬液の流入孔が形成されているので、薬液容器からの薬液が水流の速度の増大によって生じた負圧により負圧室に吸引されて給水配管中の水流と混合され外筒体の下流側端部から放出される。したがって、本発明の農業用薬液供給装置においては灌漑用の給水の際に薬液容器からの薬液を特定の動力を必要とせずに水流中に混合して圃場に供給することができる。
【0015】
前記流入孔は、外筒体の軸心に向かうにしたがい外筒体の下流端部に近づくように傾斜して形成されており、吸引孔から負圧室に供給される薬液は水流に対して円滑に吸引され効果的に混合される。この理由は必ずしも明らかでないが、吸引孔の孔軸が外筒の軸心に対してほぼ90度を開口している場合に比較して傾斜して開口する場合には薬液の吸引混合時に渦流や乱流を生じることが少なくベンチュリー作用による吸引混合効果がより促進されるためと考えられる。この傾斜角度を45〜80度の範囲とした場合は薬液の吸引圧力が著しく増大する。
【0016】
また本発明において、前記薬液供給装置中、少なくとも外筒体を熱可塑性樹脂の一体成形により形成すると装置を低コストで量産することができ、また薬液による経時腐食や野外の圃場に設置される場合の自然劣化が効果的に抑止される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る薬液供給装置の側断面図である。
【
図3】本発明に係る薬液供給装置の孔部に薬液供給容器の継手を接続した状態を示す側面図である
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る農業用薬液供給装置(以降単に薬液供給装置という)1は、
図1に示すように、外筒体2と、外筒体2に同心状に内蔵される内筒体3とを備えて構成されるものであり、内部には軸心O1に沿って水の流路が形成される。外筒体2および内筒体3はポリ塩化ビニル(PVC)等の熱可塑性樹脂を用いて一体成形により形成されている。
【0019】
外筒体2は、たとえば外径が34mm程度、長さが150mm程度に形成されており、上流側および下流側端部の外周にはそれぞれ図示しない給水管の端部と螺合させるための雄ねじ4が螺設されている。外筒体2の内部には、上流寄りの一端側から順に、大内径部5A、小内径部5B、中内径部5Cが形成されている。大内径部5Aと小内径部5Bとは、それぞれ後記する内筒体3の頭部3Aと筒軸部3Bの上流寄りとを支持するための部位である。一方、中内径部5Cは、大内径部5Aおよび小内径部5Bに比して長い流路として形成されている。また、大内径部5Aの上流寄りおよび中内径部5Cの下流寄りには、それぞれ上流端、下流端に向けて漸次拡径する拡径部5D,5Eが形成されている。
【0020】
内筒体3は、上流寄りの一端側に大径の頭部3Aが、下流寄りの他端側に小径長尺の筒軸部3Bが形成された形状を有し、内部には所定径の内筒流路6が形成されている。内筒流路6の内径はたとえば4.5mmである。内筒流路6の一端側には、下流に向けて漸次縮径するテーパ面6Aが形成されている。内筒体3は、たとえば頭部3Aの外筒体2の大内径部5Aへの圧入によりこれらの材料の弾性により嵌合固定される。そして、筒軸部3Bの上流寄りが外筒体2の小内径部5Bに支持されることで、筒軸部3Bの軸触れが抑制される。筒軸部3Bの下流端は外筒体2の中内径部5Cの軸心O1方向の中間部に位置する。なお、筒軸部3Bと外筒体2の小内径部5Bとの間には、0.15mm程度の隙間が形成される。
【0021】
内筒体3の筒軸部3Bの下流寄り部位と外筒体2の中内径部5Cとの間には、内筒体3の下流端から流出する水流により、負圧が生じる環状の負圧室7が形成される。負圧室7における外筒体2と内筒体3との隙間Tは、0.1〜1mmの範囲に設定することが好ましい。実施例では、筒軸部3Bの外径を6.5mm、中内径部5Cを8mmとし、隙間Tを0.75mmとしている。また、負圧室7の軸心O1方向の長さLはたとえば10〜30mm程度であり、実施例では30mmとしている。
【0022】
外筒体2の軸方向中程よりも上流寄りの外周面には略円錐台状を呈した継手取り付け台座8が突設されている。この継手取り付け台座8には軸心O1と直交するように雌ねじ孔9が螺設されており、雌ねじ孔9には
図3に示すように継手10が結合される。継手10は、たとえば一端側に雌ねじ孔9に螺合する雄ねじ10Aが形成され、他端側に薬液のタンク(図示せず)のホースに対する接続部10Bが形成されている。継手10の内部には開閉バルブ(図示せず)が内蔵されており、開閉レバー10Cの開閉動作により内蔵バルブによる薬液の流路の開閉が行われる。
【0023】
そして外筒体2には、雌ねじ孔9の底部と前記負圧室7とを連通するように薬液の流入孔11が形成されている。流入孔11は、雌ねじ孔9の底部から負圧室7に向かうにしたがい、つまり外筒体2の軸心O1に向かうにしたがい外筒体2の下流側に近づくように傾斜して形成されており、流入孔11の孔軸O2と外筒体2の軸心O1との交差角度(鋭角)θが、たとえば45〜80度の範囲(図示例では約60度)に設定されている。負圧室7に臨む流入孔11の孔開口部は概ね、負圧室7の軸心O1方向の長さLの中程に位置している。流入孔11の孔径はたとえば5mm程度である。
【0024】
「作用」
薬液供給装置1は、通常は灌漑給水管の配管の途中に介在するように取り付けられる。雌ねじ孔9には継手10が接続され、継手10のホース接続部10Bには、たとえば薬液貯留タンクから薬液を供給するホース(図示せず)が接続されている。薬液の供給時には、継手10の開閉レバー10Cを「開」側に回動操作する。
【0025】
給水管中の水が薬液供給装置1内を流れて流路断面積の減少した内筒体3の下流端から噴出する際に、内筒体3周りに形成された負圧室7に速度の増加した水流により負圧が発生する。この負圧により薬液貯留タンクの薬液が吸引され、流入孔11を通して負圧室7に流入して下流側で水と混合される。従来、流入孔の孔軸が外筒体2の軸心と交差する角度には特に考慮がなされておらず通常はこれと直交するように形成されていた。この場合では、配管中の水圧が低下して薬液供給装置内を流れる水量が減少して負圧が小さくなると、薬液の吸引量が減少し又はが吸引されなくなる場合が生じた。これに対し、流入孔11の孔軸O2と軸心O1との交差角度θを45〜80度の範囲に設定すると管路水圧がある程度低下した場合であっても、流入孔11から薬液を効果的に吸引することができる。交差角度を60度に設定した本発明の実施例では90度設定の場合と比較して薬液吸入み圧力が約10%(11〜12%)増大した。
【0026】
また、前記効果は負圧室7における外筒体2と内筒体3との隙間Tを0.1〜1mmの範囲に設定することにより、一層増大させることができる。
【0027】
尚前記流入孔11を含む
図1に示す外筒体2は熱可塑性樹脂の一体成形により金型を用いて製造される。熱可塑性樹脂としては前記ポリ塩化ビニル(PVC)の他、樹脂特性の改良のため種々の可塑剤、安定剤の添加、他の熱可塑性樹脂の配合によりポリマアロイ化したPVC等種々の樹脂が用いられる。外筒体を合成樹脂製とすることにより薬液による腐食や種々の環境要因による経時劣化を効果的に防止することができる。また構成材を樹脂とすることにより金型による一体成形が可能になり同一規格の外筒体を容易に量産することができ、材料及び製作コストが大幅に低減される。
【0028】
内筒体3も同様に熱可塑性樹脂により一体成形することができるが本実施例ではこれを外筒体2とは別部材として形成し、外筒体2の上流側端部から、樹脂部材の弾性を利用して圧入嵌合させることに組合せる。内筒体3は変質しやすい部分であるが、これを外筒体2に着脱可能に嵌合させることによりこの部分のみを選択的に交換することも可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 薬液供給装置
2 外筒体
3 内筒体
7 負圧室
10 継手
11 流入孔
θ 交差角度