特許第6362259号(P6362259)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362259
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】渦電流検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/90 20060101AFI20180712BHJP
【FI】
   G01N27/90
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-161075(P2014-161075)
(22)【出願日】2014年8月7日
(65)【公開番号】特開2016-38270(P2016-38270A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2017年6月20日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成25年度 電気学会東海支部主催学生発表会 グリーン化システム・環境発電に関する電気電子・情報通信技術、平成26年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】593174870
【氏名又は名称】高島産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(72)【発明者】
【氏名】曽根原 誠
(72)【発明者】
【氏名】矢▲崎▼ 耕平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】杉村 佳奈子
(72)【発明者】
【氏名】島津 進
【審査官】 田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−272379(JP,A)
【文献】 特開2006−112976(JP,A)
【文献】 特開平5−258145(JP,A)
【文献】 米国特許第4644271(US,A)
【文献】 Luis S. Rosado et al.,Eddy currents testing probe with magneto-resistive sensors and differential measurement,Sensors and Actuators A:Physical,2014年 3月24日,Vol. 212,P. 58-67
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/72−27/90
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに逆方向に巻回され直列に接続される第1コイル部および第2コイル部を有する検出コイルと、筒状に巻回されて形成され前記検出コイルが内周側に配置される励磁コイルとを備え、
前記第1コイル部と前記第2コイル部とは、前記第1コイル部の巻回の軸方向と前記第2コイル部の巻回の軸方向と前記励磁コイルの巻回の軸方向とが略平行になるように、前記励磁コイルの巻回の軸方向に直交する方向で隣接配置され、
前記第1コイル部の内周側に、導体からなる検査対象物が配置され、
前記第2コイル部の内周側に、前記検査対象物の良品サンプルが配置されることを特徴とする渦電流検査装置。
【請求項2】
前記第1コイル部の電気的特性と前記第2コイル部の電気的特性とは等しくなっており、
前記第1コイル部と前記第2コイル部とは、前記励磁コイルの巻回の軸方向において同じ位置に配置されていることを特徴とする請求項1記載の渦電流検査装置。
【請求項3】
前記検査対象物は、2個の被溶接材が互いに溶接されて形成された溶接箇所であることを特徴とする請求項1または2記載の渦電流検査装置。
【請求項4】
前記励磁コイルの幅は、前記溶接箇所の幅よりも広くなっていることを特徴とする請求項3記載の渦電流検査装置。
【請求項5】
前記第1コイル部の幅および前記第2コイル部の幅は、前記溶接箇所の幅よりも狭くなっていることを特徴とする請求項3または4記載の渦電流検査装置。
【請求項6】
互いに逆方向に巻回され直列に接続される第1コイル部および第2コイル部を有するコイルと、前記コイルの両端が接続される励磁回路および検出回路とを備え、
前記第1コイル部と前記第2コイル部とは、前記第1コイル部の巻回の軸方向と前記第2コイル部の巻回の軸方向とが略平行になるように、前記第1コイル部の巻回の軸方向に直交する方向で隣接配置され、
前記第1コイル部の内周側に、導体からなる検査対象物が配置され、
前記第2コイル部の内周側に、前記検査対象物の良品サンプルが配置されることを特徴とする渦電流検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物に生じる渦電流を利用して検査対象物を検査する渦電流検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、異形棒鋼等の有節長尺材を連続で探傷する渦流探傷装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の渦流探傷装置は、円筒状に巻回されて形成される励磁コイルと、励磁コイルの内周側に配置される2個の検出コイルとを備えている。2個の検出コイルは、円筒状に巻回されて形成されており、励磁コイルの軸方向において所定の間隔をあけた状態で配置されている。検査の対象となる長尺材は、2個の検出コイルの内周側に配置されるとともに、検出コイルの軸方向に搬送される。
【0003】
また、特許文献1に記載の渦流探傷装置では、2個の検出コイルは、減算器に接続されている。減算器では、2個の検出コイルのうちの一方の検出コイルの出力から他方の検出コイルの出力が減算される。2個の検出コイルの間隔は、長尺材に形成される節の間隔と等しくなっている。そのため、この渦流探傷装置では、減算器からの出力が、長尺材に生じている傷に起因して変動する。したがって、この渦流探傷装置では、減算器からの出力に基づいて長尺材の傷を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−302379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の渦流探傷装置において、たとえば、2個の被溶接材が互いに溶接されて形成された溶接箇所に欠陥があるのか否かを検査する場合、溶接箇所が検出コイルを通過する際の検出コイルの出力が不規則に変動するおそれがある。そのため、この渦流探傷装置では、減算器からの出力に基づいて溶接箇所に欠陥があるのか否かを検出することが困難になるおそれがある。すなわち、この渦流探傷装置では、たとえば、検査対象物である溶接箇所が良品であるのか不良品であるのかを適切に検査することが困難になるおそれがある。また、たとえば、導体からなる液体が検査対象物である場合、特許文献1に記載の渦流探傷装置を用いて検査対象物が良品であるか否かを検査することは困難である。
【0006】
そこで、本発明の課題は、導体からなる検査対象物の種類にかかわらず、検査対象物が良品であるのか不良品であるのかを適切に検査することが可能な渦電流検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の渦電流検査装置は、互いに逆方向に巻回され直列に接続される第1コイル部および第2コイル部を有する検出コイルと、筒状に巻回されて形成され検出コイルが内周側に配置される励磁コイルとを備え、第1コイル部と第2コイル部とは、第1コイル部の巻回の軸方向と第2コイル部の巻回の軸方向と励磁コイルの巻回の軸方向とが略平行になるように、励磁コイルの巻回の軸方向に直交する方向で隣接配置され、第1コイル部の内周側に、導体からなる検査対象物が配置され、第2コイル部の内周側に、検査対象物の良品サンプルが配置されることを特徴とする。
【0008】
本発明の渦電流検査装置では、検出コイルを構成する第1コイル部および第2コイル部は、互いに逆方向に巻回されて直列に接続されている。また、本発明では、第1コイル部および第2コイル部は、第1コイル部の巻回の軸方向と第2コイル部の巻回の軸方向と励磁コイルの巻回の軸方向とが略平行になるように、励磁コイルの巻回の軸方向に直交する方向で隣接配置されている。さらに、本発明では、第1コイル部の内周側に、導体からなる検査対象物が配置され、第2コイル部の内周側に、検査対象物の良品サンプルが配置される。そのため、本発明では、検査対象物が良品である場合に、検出コイルからの出力を所定値未満とし、検査対象物が不良品である場合に、検出コイルからの出力を所定値以上とすることが可能になる。したがって、本発明では、導体からなる検査対象物の種類にかかわらず、検査対象物が良品であるのか不良品であるのかを適切に検査することが可能になる。
【0009】
本発明において、第1コイル部の電気的特性と第2コイル部の電気的特性とは等しくなっており、第1コイル部と第2コイル部とは、励磁コイルの巻回の軸方向において同じ位置に配置されていることが好ましい。このように構成すると、検査対象物が不良品であれば、検出コイルからの出力が変動するが、検査対象物が良品であれば、検出コイルからの出力がほとんど変動しないようにすることが可能になる。したがって、検出コイルが接続される検出回路の構成を簡素化しても、検査対象物が良品であるのか不良品であるのかを適切に検査することが可能になる。
【0010】
本発明において、検査対象物は、たとえば、2個の被溶接材が互いに溶接されて形成された溶接箇所である。この場合には、溶接箇所に欠陥があるのか否かを適切に検査することが可能になる。
【0011】
本発明において、励磁コイルの幅は、溶接箇所の幅よりも広くなっていることが好ましい。このように構成すると、励磁コイルが発生させる磁場の方向を示す磁力線であって溶接箇所を通過する全ての磁力線の向きを、励磁コイルの巻回の軸方向と平行な方向に近づけることが可能になる。したがって、溶接箇所に欠陥があるのか否かを精度良く検査することが可能になる。
【0012】
本発明において、第1コイル部の幅および第2コイル部の幅は、溶接箇所の幅よりも狭くなっていることが好ましい。このように構成すると、溶接箇所以外の箇所に生じている傷等に起因する検出コイルの出力の変動を抑制することが可能になる。したがって、溶接箇所に欠陥があるのか否かを精度良く検査することが可能になる。
【0013】
また、上記の課題を解決するため、本発明の渦電流検査装置は、互いに逆方向に巻回され直列に接続される第1コイル部および第2コイル部を有するコイルと、コイルの両端が接続される励磁回路および検出回路とを備え、第1コイル部と第2コイル部とは、第1コイル部の巻回の軸方向と第2コイル部の巻回の軸方向とが略平行になるように、第1コイル部の巻回の軸方向に直交する方向で隣接配置され、第1コイル部の内周側に、導体からなる検査対象物が配置され、第2コイル部の内周側に、検査対象物の良品サンプルが配置されることを特徴とする。
【0014】
本発明の渦電流検査装置では、コイルを構成する第1コイル部および第2コイル部は、互いに逆方向に巻回されて直列に接続されている。また、本発明では、第1コイル部および第2コイル部は、第1コイル部の巻回の軸方向と第2コイル部の巻回の軸方向とが略平行になるように、第1コイル部の巻回の軸方向に直交する方向で隣接配置されている。さらに、本発明では、第1コイル部の内周側に、導体からなる検査対象物が配置され、第2コイル部の内周側に、検査対象物の良品サンプルが配置される。そのため、本発明では、検査対象物が良品である場合に、検出コイルからの出力を所定値未満とし、検査対象物が不良品である場合に、検出コイルからの出力を所定値以上とすることが可能になる。したがって、本発明では、導体からなる検査対象物の種類にかかわらず、検査対象物が良品であるのか不良品であるのかを適切に検査することが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明の渦電流検査装置では、導体からなる検査対象物の種類にかかわらず、検査対象物が良品であるのか不良品であるのかを適切に検査することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態にかかる渦電流検査装置の正面図である。
図2図1のE−E断面の断面図である。
図3図1に示す渦電流検査装置の回路図である。
図4図2に示す溶接箇所に欠損部分が生じているときの状態を示す図である。
図5図1に示す検出コイルの両端間に生じる逆起電圧の一例を説明するためのグラフである。
図6図1に示す渦電流検査装置の他の使用方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
(渦電流検査装置の構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる渦電流検査装置1の正面図である。図2は、図1のE−E断面の断面図である。図3は、図1に示す渦電流検査装置1の回路図である。
【0019】
本形態の渦電流検査装置1(以下、「検査装置1」とする。)は、導体(電気伝導体)からなる検査対象物に生じる渦電流を利用して、検査対象物が良品であるのか不良品であるのかを検査するための装置である。本形態の検査対象物は、2個の被溶接材2が互いに溶接されて形成された溶接箇所3であり、検査装置1によって、溶接箇所3に欠陥があるのか否かを検査する。また、本形態の被溶接材2は、ステンレス鋼管である。具体的には、被溶接材2は、SUS304で形成された鋼管である。被溶接材2の径は小さくなっており、たとえば、被溶接材2の外径は約3mmであり、被溶接材2の肉厚は約0.25mmである。また、溶接箇所3は、2個の被溶接材2がレーザ溶接されることで形成されている。
【0020】
検査装置1は、励磁コイル5と検出コイル6とを備えている。励磁コイル5は、筒状に巻回されて形成されている。すなわち、励磁コイル5は、励磁コイル5を構成する導線が筒状に巻回されることで形成されている。本形態の励磁コイル5は、円筒状に巻回されている。励磁コイル5の表面は絶縁性の被膜で覆われている。検出コイル6は、直列に接続される第1コイル部7と第2コイル部8とから構成されている。検出コイル6の表面(すなわち、第1コイル部7および第2コイル部8の表面)は絶縁性の被膜で覆われている。
【0021】
第1コイル部7および第2コイル部8は、筒状に巻回されて形成されている。すなわち、第1コイル部7は、第1コイル部7を構成する導線が筒状に巻回されることで形成され、第2コイル部8は、第2コイル部8を構成する導線が筒状に巻回されることで形成されている。本形態の第1コイル部7および第2コイル部8は、円筒状に巻回されて形成されている。なお、1本の導線が順次巻回されることで第1コイル部7と第2コイル部8とが形成されても良いし、別体で形成された第1コイル部7と第2コイル部8とが直列に接続されても良い。
【0022】
第1コイル部7の巻回方向(すなわち、第1コイル部7を構成する導線の巻回方向)と、第2コイル部8の巻回方向(すなわち、第2コイル部8を構成する導線の巻回方向)とは逆方向となっている。すなわち、第1コイル部7と第2コイル部8とは互いに逆方向に巻回されている。たとえば、図1において、第1コイル部7は、時計回りの方向に巻回され、第2コイル部8は、反時計回りの方向に巻回されている。
【0023】
第1コイル部7の電気的特性と第2コイル部8の電気的特性とは等しくなっている。すなわち、第1コイル部7を構成する導線の径、材質、第1コイル部7の内径、外径、幅(軸方向の幅)および巻数のそれぞれと、第2コイル部8を構成する導線の径、材質、第2コイル部8の内径、外径、幅(軸方向の幅)および巻数のそれぞれとが等しくなっている。
【0024】
第1コイル部7および第2コイル部8は、励磁コイル5の内周側に配置されている。また、第1コイル部7と第2コイル部8とは、第1コイル部7の巻回の軸方向(すなわち、筒状に形成される第1コイル部7の軸方向)と、第2コイル部8の巻回の軸方向(すなわち、筒状に形成される第2コイル部8の軸方向)と、励磁コイル5の巻回の軸方向(すなわち、筒状に形成される励磁コイル5の軸方向)とが略平行になるように、励磁コイル5の軸方向に直交する方向で隣接配置されており、励磁コイル5の軸方向から見たときに、筒状に形成される第1コイル部7の軸心と筒状に形成される第2コイル部8の軸心とがずれている。本形態では、第1コイル部7と第2コイル部8とは、励磁コイル5の軸方向において、同じ位置に配置されている。すなわち、検出コイル6は、8の字コイルである。
【0025】
また、励磁コイル5の軸方向から見たときに、第1コイル部7の軸心と第2コイル部8の軸心とを結んだ仮想線の中点は、励磁コイル5の軸心とほぼ一致している。本形態では、第1コイル部7と第2コイル部8とが接触しており、図1に示すように、励磁コイル5の軸方向から見たときに、第1コイル部7と第2コイル部8との接触点と、励磁コイル5の軸心とがほぼ一致している。なお、第1コイル部7と第2コイル部8との間に隙間が形成されるように、第1コイル部7と第2コイル部8とが離れた状態で配置されても良い。
【0026】
図2に示すように、励磁コイル5の幅(軸方向の幅)H1は、溶接箇所3の幅(軸方向の幅)H2よりも広くなっている。具体的には、励磁コイル5が発生させる磁場の方向を示す磁力線であって溶接箇所3を通過する全ての磁力線の向きが励磁コイル5の軸方向とほぼ平行になるように、励磁コイル5の幅H1が設定されている。本形態では、たとえば、幅H1は約10mmであり、幅H2は約0.4mmである。また、本形態では、第1コイル部7の幅(軸方向の幅)H3および第2コイル部8の幅(軸方向の幅)H4は、溶接箇所3の幅H2と等しくなっている。
【0027】
また、本形態では、たとえば、励磁コイル5の外径は約16mmであり、励磁コイル5の肉厚は約1mmである。また、たとえば、第1コイル部7および第2コイル部8の外径は約4mmであり、第1コイル部7および第2コイル部8の肉厚は約0.02mmである。なお、本形態では、励磁コイル5を構成する導線は、励磁コイル5の径方向で重ならないように巻回されており、励磁コイル5を構成する導線の外径と励磁コイル5の肉厚とが等しくなっている。同様に、第1コイル部7を構成する導線は、第1コイル部7の径方向で重ならないように巻回されており、第1コイル部7を構成する導線の外径と第1コイル部7の肉厚とが等しくなっている。また、第2コイル部8を構成する導線は、第2コイル部8の径方向で重ならないように巻回されており、第2コイル部8を構成する導線の外径と第2コイル部8の肉厚とが等しくなっている。
【0028】
第1コイル部7の内周側には、検査対象物である溶接箇所3が配置されている。具体的には、溶接箇所3の全体が第1コイル部7の内周側に配置されている。第2コイル部8の内周側には、溶接箇所3の良品サンプル3Aが配置されている。すなわち、第2コイル8の内周側には、2個の被溶接材2が互いに溶接されて形成された溶接箇所3であって、かつ、欠陥のない溶接箇所3である良品サンプル3Aが配置されている。具体的には、良品サンプル3Aの全体が第2コイル部8の内周側に配置されている。
【0029】
図3に示すように、検出コイル6の両端は、検出回路10に接続されている。励磁コイル5の両端は、励磁回路11に接続されている。励磁回路11は、一定周期で変動する正弦波状の交流電圧を励磁コイル5に印加する。たとえば、励磁回路11は、400kHzの正弦波状の交流電圧を励磁コイル5に印加する。励磁コイル5に交流電圧が印加されると、第1コイル部7の内周側に配置される溶接箇所3、第2コイル部8の内周側に配置される良品サンプル3Aおよび被溶接材2に渦電流が発生する。なお、後述のように、検出コイル6の両端間には、一定周期で変動する正弦波状の逆起電圧が生じることがあり、検出回路10は、たとえば、半波整流回路等の整流回路を備えている。また、検出回路10は、整流回路の他に、増幅回路やAD変換回路、位相検出回路等を組み合わせて備えていても良い。
【0030】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、直列に接続される第1コイル部7と第2コイル部8とが互いに逆方向に巻回され、また、第1コイル部7の電気的特性と第2コイル部8の電気的特性とが等しくなっている。また、第1コイル部7と第2コイル部8とは、第1コイル部7の軸方向と第2コイル部8の軸方向と励磁コイル5の軸方向とが略平行になるように、励磁コイル5の軸方向に直交する方向で隣接配置されている。さらに、第1コイル部7と第2コイル部8とが励磁コイル5の軸方向において同じ位置に配置されるとともに、励磁コイル5の軸方向から見たときに、第1コイル部7の軸心と第2コイル部8の軸心とを結んだ仮想線の中点が励磁コイル5の軸心とがほぼ一致している。また、第1コイル部7の内周側に溶接箇所3が配置され、第2コイル部8の内周側に、良品サンプル3Aが配置されている。
【0031】
そのため、本形態では、第1コイル部7の内周側に配置される溶接箇所3に欠陥がなければ(すなわち、溶接箇所3が良品であれば)、励磁コイル5に交流電圧が印加されても、第1コイル部7の両端間に生じる逆起電圧と第2コイル部8の両端間に生じる逆起電圧とが相殺されて、図5の直線L1で示すように、検出コイル6の両端間に逆起電圧はほとんど生じない。
【0032】
一方、第1コイル部7の内周側に配置される溶接箇所3に欠陥があれば(すなわち、溶接箇所3が不良品であれば)、励磁コイル5に交流電圧が印加されると、検出コイル6の両端間に、励磁コイル5に印加される交流電圧の周波数と同じ周波数で変動する正弦波状の逆起電圧が生じる。すなわち、2個の被溶接材2をレーザ溶接する際の熱エネルギーが不足して、たとえば、図4(A)に示すように、被溶接材2の肉厚の半分に相当する欠損部分13aが溶接箇所3に生じていると、図5の曲線L2で示すように、検出コイル6の両端間に正弦波状の逆起電圧が生じる。また、たとえば、図4(B)に示すように、被溶接材2の径方向において溶接箇所3を貫通する欠損部分13bが溶接箇所3に生じていると、図5の曲線L3で示すように、検出コイル6の両端間に正弦波状の逆起電圧が生じる。
【0033】
したがって、本形態では、検出コイル6の両端間に生じる逆起電圧に基づいて(すなわち、検出コイル6からの出力に基づいて)、溶接箇所3に欠陥があるのか否かを適切に検査することが可能になる。特に本形態では、溶接箇所3に欠陥がある場合には、検出コイル6の両端間に逆起電圧が生じるが、溶接箇所3に欠陥がなければ、検出コイル6の両端間に逆起電圧がほとんど生じないため、検出回路10の構成を簡素化しても、溶接箇所3に欠陥があるのか否かを適切に検査することが可能になる。
【0034】
本形態では、励磁コイル5が発生させる磁場の方向を示す磁力線であって溶接箇所3を通過する全ての磁力線の向きが励磁コイル5の軸方向とほぼ平行になるように、励磁コイル5の幅H1が設定されている。そのため、本形態では、溶接箇所3に欠陥があるのか否かを精度良く検査することが可能になる。
【0035】
(他の実施の形態)
上述した形態では、第1コイル部7の幅H3および第2コイル部8の幅H4は、溶接箇所3の幅H2と等しくなっているが、幅H3、H4は、幅H2より広くても良いし、幅H2より狭くても良い。なお、幅H3、H4が幅H2より狭い場合には、溶接箇所3以外の箇所に生じている傷等に起因して検出コイル6の両端間に逆起電圧が生じるのを抑制することが可能になるため、溶接箇所3に欠陥があるのか否かを精度良く検査することが可能になる。
【0036】
上述した形態では、第1コイル部7の電気的特性と第2コイル部8の電気的特性とが等しくなっているが、第1コイル部7の電気的特性と第2コイル部8の電気的特性とが異なっていても良い。たとえば、第1コイル部7の巻数と第2コイル部8の巻数とが異なっていても良い。また、上述した形態では、第1コイル部7および第2コイル部8は、励磁コイル5の軸方向において同じ位置に配置されているが、第1コイル部7と第2コイル部8とが、励磁コイル5の軸方向においてずれていても良い。さらに、上述した形態では、励磁コイル5の軸方向から見たときに、第1コイル部7の軸心と第2コイル部8の軸心とを結んだ仮想線の中点が励磁コイル5の軸心とほぼ一致しているが、励磁コイル5の軸方向から見たときに、この仮想線の中点が励磁コイル5の軸心からずれていても良い。
【0037】
これらの場合であっても、第1コイル部7の内周側に配置される溶接箇所3に欠陥がないときに検出コイル6の両端間に生じる逆起電圧を所定値未満とし、第1コイル部7の内周側に配置される溶接箇所3に欠陥があるときに検出コイル6の両端間に生じる逆起電圧を所定値以上とすることが可能になる。したがって、これらの場合であっても、検出コイル6の両端間に生じる逆起電圧に基づいて、溶接箇所3に欠陥があるのか否かを適切に検査することが可能になる。
【0038】
上述した形態では、励磁回路11は、正弦波状の交流電圧を励磁コイル5に印加しているが、励磁回路11は、矩形波状、三角波状あるいは鋸歯波状の交流電圧を励磁コイル5に印加しても良い。また、励磁回路11は、高調波状の交流電圧を励磁コイル5に印加しても良い。また、上述した形態では、第1コイル部7および第2コイル部8は、筒状に巻回されて形成されているが、第1コイル部7および第2コイル部8は、渦巻き状に巻回されて形成されても良い。また、上述した形態では、励磁コイル5が発生させる磁場の方向を示す磁力線であって溶接箇所3を通過する全ての磁力線の向きが励磁コイル5の軸方向とほぼ平行になるように、励磁コイル5の幅H1が設定されているが、溶接箇所3を通過する磁力線の一部の向きが励磁コイル5の軸方向に対して所定の角度以上傾いていても良い。
【0039】
上述した形態では、検査装置1は、励磁コイル5を備えているが、検査装置1は、励磁コイル5を備えていなくても良い。この場合には、検出回路10および励磁回路11に検出コイル6の両端が接続される。この場合であっても、第1コイル部7の内周側に配置される溶接箇所3に欠陥があるときに検出コイル6の両端間に生じる逆起電圧と、溶接箇所3に欠陥がないときに検出コイル6の両端間に生じる逆起電圧とが相違する。したがって、上述した形態と同様に、検出コイル6の両端間に生じる逆起電圧に基づいて、溶接箇所3に欠陥があるのか否かを適切に検査することが可能になる。
【0040】
ただし、検出コイル6の両端が検出回路10および励磁回路11に接続されている場合には、インピーダンスアナライザやネットワークアナライザ等によって検出回路10を構成しなければならないため、検出回路10の構成が複雑になる。これに対して、検査装置1が励磁コイル5を備えていると、半波整流回路等によって検出回路10を構成すれば良いため、検出回路10の構成を簡素化することが可能になる。また、検査装置1が励磁コイル5を備えていると、励磁コイル5に印加される交流電圧の周波数を任意に調整することが可能になる。また、検出コイル6に大きな交流電圧を印加することは困難であるが、励磁コイル5に大きな交流電圧を印加することは可能であるため、検査装置1が励磁コイル5を備えていると、検査装置1の耐ノイズ性を高めることが可能になる。
【0041】
上述した形態では、検査装置1で検査される検査対象物は溶接箇所3であるが、溶接箇所3以外の、導体からなる検査対象物が検査装置1で検査されても良い。たとえば、検査装置1で検査される検査対象物は、溶接箇所3以外の金属部材や、カーボンナノチューブ等であっても良い。また、検査装置1で検査される検査対象物は、導体からなる固体に限定されず、導体からなる液体であっても良い。たとえば、検査装置1で検査される検査対象物は、水であっても良い。この場合には、たとえば、図6に示すように、第1コイル部7の内周側に絶縁体からなる配管21が配置され、第2コイル部8の内周側に絶縁体からなる容器22が配置される。また、配管21の中を検査対象物である水23が通過し、容器22の中に、各種の成分量が所定量となっている水の良品サンプル23Aが入れられる。なお、第1コイル部7の内周側に配管21が配置されなくても良い。この場合には、第1コイル部7の内周側を直接、水23が通過する。
【0042】
図6に示す検査装置1は、たとえば、海水を淡水化する水処理システムに搭載されて使用される。この水処理システムでは、海水を淡水化するためのフィルタを通過した後の水23が配管21を通過するように検査装置1が配置されている。この場合には、配管21を通過する水23の成分が容器22に入れられた良品サンプル23Aの成分とほぼ等しければ、検出コイル6の両端間に逆起電圧はほとんど生じないが、たとえば、配管21を通過する水23の塩分濃度が容器22に入れられた良品サンプル23Aの塩分濃度よりも高くなると、検出コイル6の両端間に逆起電圧が生じる。そのため、この水処理システムでは、検査装置1によって、配管21の中を流れる水23が良品であるのか不良品であるのかを検査することが可能になる。また、この水処理システムでは、配管21の中を流れる水23が不良品になると、たとえば、フィルタの交換等のメンテナンスが必要であることをユーザに知らせるため、警告音を鳴らす等の所定の処理が実行される。なお、図6に示す検査装置1で検査される検査対象物は、金属微粒子や化学物質が含まれる海水や水であっても良い。すなわち、図6に示す検査装置1は、金属微粒子や化学物質が含まれる海水や水の検査にも有効である。
【符号の説明】
【0043】
1 検査装置(渦電流検査装置)
2 被溶接材
3 溶接箇所(検査対象物)
3A 良品サンプル
5 励磁コイル
6 検出コイル(コイル)
7 第1コイル部
8 第2コイル部
10 検出回路
11 励磁回路
23 水(検査対象物)
23A 良品サンプル
H1 励磁コイルの幅
H2 溶接箇所の幅
H3 第1コイル部の幅
H4 第2コイル部の幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6