特許第6362262号(P6362262)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362262
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】角度推定装置および角度推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 3/48 20060101AFI20180712BHJP
   G01S 3/74 20060101ALI20180712BHJP
   G01S 7/02 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   G01S3/48
   G01S3/74
   G01S7/02 216
【請求項の数】9
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2014-208417(P2014-208417)
(22)【出願日】2014年10月9日
(65)【公開番号】特開2016-80369(P2016-80369A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】白川 和雄
(72)【発明者】
【氏名】黒野 泰寛
【審査官】 ▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−233916(JP,A)
【文献】 特開2005−257298(JP,A)
【文献】 特開2012−032321(JP,A)
【文献】 特表2009−527757(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0012710(US,A1)
【文献】 石崎亮多 外3名,“EM/SAGEアルゴリズムを用いた2D−DOA推定のためのCSS法による平面アレーアンテナ校正法”,電子情報通信学会2012年総合大会講演論文集 通信1 PROCEEDINGS OF THE 2012 IEICE GENERAL CONFERENCE,2012年 3月 6日,Page 185
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 3/00 − G01S 3/74
G01S 3/80 − G01S 3/86
G01S 7/00 − G01S 7/46
G01S 7/52 − G01S 7/64
G01S 13/00 − G01S 15/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の受信部を含み、キャリブレーションによって設定された重みを用いて前記複数の受信部に入射された各信号を重み付けする受信回路と、
前記受信回路によって重み付けされた各信号に基づいて前記各信号の入射角度を推定する推定部と、
前記受信回路の特性に対する前記重みの誤差がない状態における、前記誤差および前記各信号の入射角度に応じて変化する評価値を算出可能な評価関数による前記評価値の算出結果と前記推定部によって推定された前記各信号の入射角度とを対応付けて保存する保存部と、
前記推定部によって推定された前記各信号の入射角度が、前記保存部によって保存された前記各信号の入射角度近傍の値に対応する角度である場合、前記評価関数に基づく評価値を算出し、算出した評価値と前記保存部によって保存された評価値との比較に基づいて前記誤差の発生を検出する検出部と、
を有することを特徴とする角度推定装置。
【請求項2】
前記保存部は、前記誤差がない状態における前記受信回路の特性を反映したモードベクトルの測定値を保存し、
前記推定部は、前記複数の受信部間における前記各信号に基づく所定の行列の固有値分解を含む処理により前記各信号の入射角度を推定し、
前記評価関数は、前記推定部における角度推定の際に用いる前記所定の行列を固有値分解して得られる行および固有値を組み合わせることによって生成される行列Wを用いて定義される関数(下記(1)式)であることを特徴とする請求項1に記載の角度推定装置。
【数1】
前記(1)式において、Cは前記誤差、θは前記推定部によって推定された入射角度、a0(θ)は前記モードベクトルの測定値、Hは複素共役転置、fは前記評価値を示す。
【請求項3】
前記検出部は、前記(1)式の前記行列Wと、前記各信号について前記推定部によって推定された入射角度θ1〜θkに関する角度行列A0=[a0(θ1),…,a0(θk)]の一般逆行列と、に基づいて前記誤差の値を検出することを特徴とする請求項2に記載の角度推定装置。
【請求項4】
前記受信回路は、前記複数の受信部によって受信された各信号を増幅するアンプ、アンプからの出力信号を復調するミキサ、ミキサからの出力をデジタル信号に変換するA/D
(Analog to Digital)変換器、および信号処理部を含み、
前記推定部は、前記受信回路によって重み付けされた各信号の角度スペクトラムの走査に基づいて前記各信号の入射角度を推定し、
前記保存部は、前記推定部によって推定された前記各信号の入射角度θm(m=1〜M)に基づく前記モードベクトルの測定値b0(θm)とともに、前記モードベクトルの測定値b0(θmを用いてモードベクトルモデルb(θm)(角度は変数扱い)を生成、保存しておき(下記(2)式)、
前記検出部は、前記推定部によって推定された入射角度が、前記保存部によって保存された前記各信号の入射角度θmの近傍の角度であった場合、θmに代えて該推定角度θkを前記モードベクトルモデルb(θm)に代入し、角度行列W=[b(θ1),…,b(θk)]を生成し、前記評価関数(下記(3)式)に基づいて評価値を算出することを特徴とする請求項1に記載の角度推定装置。
【数2】
【数3】
前記(2)式において、θは前記推定部によって推定された入射角度、gは前記受信回路の総合特性、jは虚数単位、φは空間位相、Tは転置を示す。前記(3)式において、Cは前記誤差、b0(θ)は前記モードベクトル、Wは角度行列、Hは複素共役転置を示す。
【請求項5】
複数の受信部を含み、キャリブレーションによって設定された重みを用いて前記複数の受信部に入射された各信号を重み付けする受信回路と、
前記受信回路によって重み付けされた各信号に基づいて前記各信号の入射角度を推定する推定部と、
互いに異なる2つの受信部からの信号の組み合わせ毎に、前記組み合わせを構成する受信部の間隔と、前記組み合わせから得られる2つの信号を用いて算出される前記推定部による推定結果と、に基づいて前記組み合わせの空間位相を算出し、前記組み合わせ毎に算出した空間位相の相違に基づいて前記受信回路の特性に対する前記重みの誤差の発生を検出する検出部と、
を有することを特徴とする角度推定装置。
【請求項6】
複数の受信部を含み、キャリブレーションによって設定された重みを用いて前記複数の受信部に入射された各信号を重み付けする受信回路と、
前記受信回路によって重み付けされた各信号に基づく所定の行列の固有値分解を含む処理により前記各信号の入射角度を推定する推定部と、
前記受信回路の特性に対する前記重みの誤差がない状態における前記受信回路の特性を反映したモードベクトルの測定値を保存する保存部と、
前記推定部によって推定された前記各信号の入射角度が所定の入射角度である場合、前記保存部によって保存されたモードベクトルの測定値と、前記誤差および前記各信号の入射角度に応じて変化する評価値を算出可能な関数と、に基づく行列W(下記(4)式)を算出し(ただし、Lの列数はV-Hの行数と等しく定める)、算出した前記行列Wと、前記重みの誤差がない状態における複数の入射角度θm(m=1〜M)についてMUSIC(MUltiple SIgnal Classification)法により得られる雑音固有ベクトルEnと、所定の関数(下記(5)式)と、に基づいて前記誤差の発生を検出する検出部と、
を有することを特徴とする角度推定装置。
【数4】
【数5】
前記(4)、(5)式において、Vは前記推定部における角度推定の際に用いる前記所定の行列を固有値分解した固有ベクトルから得られる行列、Ωは前記所定の行列の固有値、Hは複素共役転置、Cは前記誤差、θは前記推定部によって推定された入射角度を示す。
【請求項7】
複数の受信部を含み、キャリブレーションによって設定された重みを用いて前記複数の受信部に入射された各信号を重み付けする受信回路によって重み付けされた各信号に基づいて前記各信号の入射角度を推定し、
前記受信回路の特性に対する前記重みの誤差がない状態における、前記誤差および前記各信号の入射角度に応じて変化する評価値を算出可能な評価関数による前記評価値の算出結果と、推定した前記各信号の入射角度とを対応付けて保存し、
推定した前記各信号の入射角度が、保存した前記各信号の入射角度近傍の値に対応する角度である場合、前記評価関数に基づく評価値を算出し、算出した評価値と保存した評価値との比較に基づいて前記誤差の発生を検出する、
ことを特徴とする角度推定方法。
【請求項8】
複数の受信部を含み、キャリブレーションによって設定された重みを用いて前記複数の受信部に入射された各信号を重み付けする受信回路によって重み付けされた各信号に基づいて前記各信号の入射角度を推定し、
互いに異なる2つの受信部からの信号の組み合わせ毎に、前記組み合わせを構成する受信部の間隔と、前記組み合わせから得られる2つの信号に基づいて算出される前記入射角度の推定結果から空間位相を算出し、前記組み合わせ毎に算出した空間位相の相違に基づいて前記受信回路の特性に対する前記重みの誤差の発生を検出する、
ことを特徴とする角度推定方法。
【請求項9】
複数の受信部を含み、キャリブレーションによって設定された重みを用いて前記複数の受信部に入射された各信号を重み付けする受信回路によって重み付けされた各信号に基づく所定の行列の固有値分解を含む処理により前記各信号の入射角度を推定し、
前記受信回路の特性に対する前記重みの誤差がない状態における前記受信回路の特性を反映したモードベクトルの測定値を保存し、
推定した前記各信号の入射角度が所定の入射角度である場合、保存したモードベクトルの測定値と、前記誤差および前記各信号の入射角度に応じて変化する評価値を算出可能な関数と、に基づく行列W(下記(6)式)を算出し(ただし、Lの列数はV-Hの行数と等しく定める)、算出した前記行列Wと、前記重みの誤差がない状態における複数の入射角度θm(m=1〜M)についてMUSIC(MUltiple SIgnal Classification)法により得られる雑音固有ベクトルEnと、所定の関数(下記(7)式)と、に基づいて前記誤差の発生を検出する、
ことを特徴とする角度推定方法。
【数6】
【数7】
前記(6)、(7)式において、Vは角度推定の際に用いる前記所定の行列を固有値分解した固有ベクトルから得られる行列、Ωは前記所定の行列の固有値、Hは複素共役転置、Cは前記誤差、θは推定された入射角度を示す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角度推定装置および角度推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のセンサで受信された対象物からの反射波を復調して生成したベースバンド信号ベクトルを用いて共分散行列を生成し、その部分行列を取り出して当該部分行列から算出した正則行列の固有値を用いて対象物が存在する角度を算出する装置がある(例えば、下記特許文献1参照。)。また、複数のセンサによって受信された到来信号から生成したベースバンド信号(以降、誤解がない場合には単に受信信号と記す)の相関ベクトルを組み合わせて空間平均共分散行列Rを得て、空間平均共分散行列Rによる(RRH-1(H:複素共役転置)を用いて、角度分布または代数方程式から到来信号の到来方向を推定する装置がある(例えば、下記特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−103132号公報
【特許文献2】国際公開第2006/067869号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、正しい推定角度を得るためにセンサも含めた全受信回路の特性を含めて各信号に与える重みを求める操作(キャリブレーション)を行う際、重みの誤差自体の発生を検出することができないという問題がある。キャリブレーションの誤差が発生すると、例えば、実際の受信信号の入射角度に対して推定角度にズレが生じるため、再度のキャリブレーション等を要する。
【0005】
1つの側面では、本発明は、キャリブレーション誤差の発生を検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によれば、複数の受信部を含み、前記受信部の受信回路において前記受信部に入射された各信号にキャリブレーションによって設定された重み付けを施し、当該信号に基づいて各信号の入射角度を推定し、前記受信回路の特性に由来する重みの誤差がない状態における前記受信回路の特性を反映したモードベクトルの測定値を保存し、前記誤差がない状態における前記誤差および前記各信号の入射角度に応じて変化する評価値を算出可能な評価関数による前記評価値の算出結果と推定した前記各信号の入射角度とを対応付けて保存し、事後推定した前記各信号の入射角度が、保存した前記各信号の入射角度近傍の値に対応する角度である場合、保存したモードベクトルの測定値と前記評価関数とに基づく評価値を算出し、算出した評価値と保存した評価値との比較に基づいて前記誤差の発生を検出する、角度推定装置および角度推定方法が提案される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、キャリブレーション誤差の発生を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態1にかかる角度推定装置の機能的構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、角度推定装置の構成の一例を示す説明図である。
図3図3は、信号処理部のハードウェア構成の一例を示す図である。
図4図4は、角度推定装置を車両のレーダ装置に適用した場合の一例を示す説明図である。
図5図5は、Q−ESPRIT法で角度推定を行った場合の計算結果を示す説明図である。
図6図6は、目標が2つ存在する場合の角度スペクトラムを角度と距離に対して示した説明図である。
図7図7は、距離が一定のときの角度スペクトラムを示す説明図である。
図8図8は、キャリブレーション誤差の発生の検出例を示す説明図(その1)である。
図9図9は、キャリブレーション誤差の発生の検出例を示す説明図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を参照して、開示技術の好適な実施の形態1〜4を詳細に説明する。
【0010】
(実施の形態1)
(角度推定装置の機能的構成)
図1は、実施の形態1にかかる角度推定装置の機能的構成の一例を示すブロック図である。角度推定装置100は、超音波、電波、光、などを用いて、物体を捜索、探知、測距または測角する装置に用いられる。具体的には、角度推定装置100は、ソナーやレーダなどに用いられる。角度推定装置100は、受信回路101と、推定部102と、保存部103と、検出部104と、を有する。受信回路101は、複数の受信部105と、複数の受信部105によって受信された各信号を増幅する不図示のアンプを含む。受信部105は、例えば、センサアレイ、アンテナなどである。
【0011】
受信回路101は、例えばアンプ、ミキサ、フィルタ、A/D(Analog to Digital)コンバータ、およびSPU(Signal Processing Unit)等を含む。受信回路101は、キャリブレーションによって設定された重みを用いて複数の受信部105に入射された各信号を重み付けする。各信号は、不図示の送信部から送信されて目標物によって反射された信号である。キャリブレーションは、例えば工場出荷時などに行われる。
【0012】
推定部102は、受信回路101によって重み付けされた各信号に基づいて各信号の入射角度を推定する。保存部103は、受信回路101の特性に対する重みの誤差(以下「キャリブレーション誤差」という)がない状態における受信回路101の特性を反映したモードベクトル(エラーフリーモードベクトル)の測定値を保存する。また、保存部103は、キャリブレーション誤差がない状態における、評価関数による評価値(参照値)の算出結果と推定部102による各信号の入射角度とを対応付けて保存する。
【0013】
評価関数は、キャリブレーション誤差および各信号の入射角度に応じて変化する評価値を算出可能な関数である。保存部103は、キャリブレーション誤差がない状態における、例えば入射角度1°の場合におけるモードベクトルの測定値と、評価関数による評価値の算出結果(上記参照値)と、推定部102によって推定された入射角度1°と、を対応付けて保存する。なお、キャリブレーション誤差がない状態における、例えば入射角度1°の場合における(エラーフリー)モードベクトルの測定値を、以降、誤解が無い場合には単にモードベクトルの測定値と記す。また、保存部103は、複数の入射角度に対応する評価値の算出結果と、複数の入射角度とを対応付けて保存してもよい。
【0014】
検出部104は、推定部102によって推定された各信号の入射角度が、保存部103によって保存された各信号の入射角度近傍の値に対応する角度である場合、保存部103によって保存されたモードベクトルの測定値と評価関数とに基づく評価値を算出する。例えば、保存部103によって保存された各信号の入射角度近傍の値に対応する角度は、保存部103によって保存された各信号の入射角度と同じ角度でもよいし、その近傍の角度でもよい。例えば、保存部103によって保存された各信号の入射角度1°に対応する入射角度は、1°またはその近傍の角度である。近傍の具体的定義は、装置の角度推定の分解能に対して、例えば、数σ程度とする。ここでいうσは、雑音電力ではなく、角度を示す値である。
【0015】
検出部104は、保存部103によって保存された各信号の入射角度に対応する入射角度と、モードベクトルの測定値と、評価関数と、に基づいて評価値(算出値)を算出する。また、検出部104は、算出した評価値と保存部103によって保存された評価値(参照値)との比較に基づいてキャリブレーション誤差の発生を検出する。検出部104は、例えば、算出した評価値と保存部103によって保存された評価値との比率によってキャリブレーション誤差の発生を検出する。例えば、検出部104は、算出した評価値と保存部103によって保存された評価値との比が1とは異なる場合にキャリブレーション誤差の発生を検出する。
【0016】
また、推定部102は、複数の受信部間における各信号の空間位相差に基づいて各信号の入射角度を推定する。具体的には、推定部102は、ESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Techniques)法により各信号の入射角度を推定する。
【0017】
また、推定部102は、受信回路101によって重み付けされた各信号の共分散行列を計算し、スペクトラム走査処理に基づいて各信号の入射角度を推定する。スペクトラムの走査処理に基づいて入射角度を推定する手法は、Capon法、MUSIC(MUltiple SIgnal Classification)法、プリズム法およびLP(Linear Prediction)法などが挙げられる。
【0018】
(角度推定装置の構成の一例)
図2は、角度推定装置の構成の一例を示す説明図である。角度推定装置100は、発振回路201と、方向性結合器202と、パワーアンプ203と、送信アンテナ204と、受信アンテナ205と、ローノイズアンプ206と、ミキサ207と、A/D変換器208と、信号処理部209と、を有する。なお、ミキサ207とA/D変換器208との間には通常LPF(Low Pass Filter)等のベースバンド回路が入るが、説明を簡単にするため、これらのコンポーネントについては割愛した。
【0019】
発振回路201は、RF−VCO(Radio Frequency−Voltage Controlled Oscillator)111と、BB−OSC(Base Band−Oscillator)112と、を有する。RF−VCO111は、電圧により発振周波数を制御する発振器である。BB−OSC112は、RF−VCO111に変調用信号を加えて周波数変調を施すことによって、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)信号を得て、FMCW信号を方向性結合器202へ出力する。
【0020】
方向性結合器202は、発振回路201から出力された信号をパワーアンプ203およびミキサ207へ出力する。パワーアンプ203は、方向性結合器202から出力された信号を電力増幅して送信アンテナ204へ出力する。送信アンテナ204は、M個(ここでは1個)のセンサ素子を有する送信用センサアレイである。送信アンテナ204は、パワーアンプ203から出力された信号をプローブ信号として目標探知範囲に放射する。
【0021】
受信アンテナ205は、N個(ここでは4個)のセンサ素子を有する受信用センサアレイである。受信アンテナ205は、送信アンテナ204から送信されて、例えば先方車両等の目標物体で反射された反射信号を受信する。受信アンテナ205は、受信した信号をローノイズアンプ206へ出力する。ローノイズアンプ206は、受信アンテナ205から出力された信号を増幅し、ミキサ207へ出力する。ミキサ207は、ローノイズアンプ206から出力された信号と、方向性結合器202から出力された信号とをミキシングし、ミキシングした信号をA/D変換器208へ出力する。
【0022】
A/D変換器208は、ミキサ207から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換して、信号処理部209へ出力する。信号処理部209は、推定部221と、角度行列再生部222と、参照値テーブル223と、スペクトラム比較部224と、を有する。推定部221は、A/D変換器208から出力された信号を用いて周知の手法で目標の距離、速度、角度等を推定し、推定結果を角度行列再生部222へ出力する。
【0023】
角度行列再生部222は、推定部221から出力された推定結果を用いて角度行列を再生し、参照値テーブル223およびスペクトラム比較部224へ出力する。参照値テーブル223は、エラーフリーモードベクトルや角度行列再生部222から出力された角度行列を記録したり、キャリブレーションの異常を判定するための参照値を更新したりする。スペクトラム比較部224は、角度行列再生部222から出力された行列と、参照値テーブル223に記録されている参照値と、を比較してキャリブレーション誤差の有無を判定する。
【0024】
図1に示した受信部105は、例えば受信アンテナ205によって実現される。また、図1において説明した受信回路101は、例えばローノイズアンプ206、ミキサ207によって実現される。
【0025】
(信号処理部のハードウェア構成の一例)
図3は、信号処理部のハードウェア構成の一例を示す図である。図3に示すように、信号処理部209は、CPU(Central Processing Unit)301と、メモリ302と、インタフェース303と、を備えている。CPU301、メモリ302およびインタフェース303は、バス309によって接続されている。
【0026】
CPU301は、信号処理部209の全体の制御を司る。メモリ302には、例えばメインメモリおよび補助メモリが含まれる。メインメモリは、例えばRAM(Random Access Memory)である。メインメモリは、CPU301のワークエリアとして使用される。補助メモリは、例えば磁気ディスク、光ディスク、フラッシュメモリなどの不揮発メモリである。補助メモリには、信号処理部209を動作させる各種のプログラムが記憶されている。補助メモリに記憶されたプログラムは、メインメモリにロードされてCPU301によって実行される。
【0027】
インタフェース303は、ユーザインタフェースや通信インタフェースを含む。ユーザインタフェースは、例えば、ユーザからの操作入力を受け付ける入力デバイスや、ユーザへ情報を出力する出力デバイスなどを含む。また、通信インタフェースは、例えば、無線や有線によって信号処理部209の外部装置との間で通信を行うインタフェースである。インタフェース303は、CPU301によって制御される。
【0028】
図1に示した、推定部102と、保存部103と、検出部104とは、メモリ302に記憶されたプログラムをCPU301に実行させることにより、その機能を実現する。なお、装置構成によっては受信回路101を制御する場合もある。また、図2に示した、推定部221と、角度行列再生部222と、スペクトラム比較部224とは、メモリ302に記憶されたプログラムをCPU301に実行させることにより、その機能を実現する。また、図1に示した保存部103と、図2に示した参照値テーブル223は、メモリ302によってその機能を実現する。
【0029】
(角度推定装置を車両のレーダ装置に適用した場合の一例)
図4は、角度推定装置を車両のレーダ装置に適用した場合の一例を示す説明図である。図4に示すように、車両400に搭載されるレーダ装置は、前方の車両401,402を探知して測距する。例えば、車両401は、車両400の前方の角度+θ方向に位置している。車両402は、車両400の前方の角度−θ方向に位置している。
【0030】
レーダ装置は、プローブ信号を前方の目標探知範囲に放射し、車両401,402に反射されて戻ってきた反射信号を受信し、反射信号の到来角度(入射角度)を推定する。ここで、本願に開示のレーダ装置(角度推定装置100)は、角度推定の際に用いるキャリブレーション(重み)の値に誤差が発生しているか否かを検出する。
【0031】
(信号処理部による角度推定の原理について)
図2に戻り、信号処理部209による角度推定の原理について説明する。説明を簡単にするため、送信アンテナ204の数Mを1とし、受信アンテナ205の数Nを4とする。受信アンテナ205はX軸上に等しい間隔dで直線状に配置されているものとする。なお、このような受信アンテナ205をULA(Uniform Linear Array)という。
【0032】
探知範囲にK個の目標が存在し、送信アンテナ204から送信されたプローブ信号が各目標によって反射されると、この反射されたRFエコー信号を受信アンテナ205が受信する。RFエコー信号は、アレイ軸の垂線方向(Y軸)を0基準として、互いに異なる角度θkで入射してくるものとする。つまり、エコー信号がその到来方向を推定すべき信号であり、エコー信号の到来方向が目標の角度ということになる。
【0033】
このとき、n番目のアンテナで受信されたRFエコー信号とプローブ信号とをミキシングおよび復調して得られたエコー信号vn(t)は、1番目の受信アンテナ205を位相基準とした場合、下記(1)式によって表すことができる。また、空間位相φは、下記(2)式によって表すことができる。なお、gn(θk)はn番目のアンテナ素子の特性、xk(t)はベースバンド信号、nn(t)は雑音信号、φn,kは素子1を基準にしたときの素子nにおける第m波の受信位相、λは搬送波の波長、jは虚数単位、tは時間を示す。
【0034】
【数1】
【0035】
【数2】
【0036】
これをベクトルとして書き下せば下記(3)式が得られる。
【0037】
【数3】
【0038】
ただし、下記(4)式、(5)式および(6)式に示す関係がある。
【0039】
【数4】
【0040】
【数5】
【0041】
【数6】
【0042】
上記(3)〜(6)式において、v(t)は出力信号ベクトルを示し、x(t)はベースバンドベクトルを示し、n(t)は雑音ベクトルを、a(θk)はモードベクトル(方向ベクトル)を示し、Tは転置を示す。
【0043】
そして、x(t)とn(t)との間に相関がないものとして、上記(3)式からv(t)の共分散行列を計算すると、下記(7)式が得られる。
【0044】
【数7】
【0045】
これがアレイアンテナを用いて目標の角度推定を行う場合の基本的な演算対象となる。具体的には、Rvvが到来方向の推定の基本的な対象式となる。上記(7)式において、RvvはN×N次元の共分散行列である。また、上記(7)式において、E{・}は期待値(アンサンブルまたは時間平均)を表し、Hは複素共役転置を表し、Iは単位行列を表し、σ2は雑音ベクトルn(t)の分散(雑音電力)を表し、σ2Iは雑音ベクトルの共分散行列を表す。ただし、Rxxは下記(8)式で定義されるベースバンド信号の共分散行列である。
【0046】
【数8】
【0047】
上記(8)式において、RxxはK×K次元のベースバンド信号の共分散行列となる。以下において、時刻tを省略する。
【0048】
ここで、エコー信号は、同じ信号源からの送信信号が目標によって反射されてきたものであるから本質的にコヒーレントである。そのため、共分散行列の階数(以下、rank)と目標数Kとの関係は下記(9)式のようになる。
【0049】
【数9】
【0050】
θをパラメータとして生成される角度ベクトルa(θ)は、下記(10)式によって表すことができる。
【0051】
【数10】
【0052】
例えば、Capon法においてRvvの逆行列Rvv-1と、上記(10)式を用いて下記(11)式の角度スペクトルPCapon(θ)を定義することができる。パラメータθを変更しながらPCapon(θ)を計算し、これがピークを示すθの値をもって目標の角度情報として採用することができる。
【0053】
【数11】
【0054】
しかし、上記(9)式を参照すると明らかなように、行列Rvvは逆行列をもたない。そのため、一般にはRvvのrankを回復するために空間平均という処理を施した上で、逆行列や固有値から角度推定を行う(なお、空間平均後のRvvもRvvと書く)。以下にその技術を簡単に説明する。
【0055】
(a)前方空間平均:Rvvの主対角線方向に沿ってQ×Qの部分行列をとり(N−Q+1個できる)、これらを足し合わせて平均する。
【0056】
(b)後方空間平均:アレイの基準点を反転させて、上記(a)と同様の操作が行われる。
【0057】
(c)前後方空間平均:上記(a)、(b)を組み合わせた手法であり、通常用いられる。
【0058】
空間平均を用いることにより、Rvvのrankは回復するので、角度スペクトルPCapon等を用いて目標角度の推定は可能になる。しかしながら、例えば上記(a)からも明らかなようにRvvから部分行列を取り出して、平均処理をかけるということは、目標角度の推定精度に上記(4)式の各素子アンテナの特性gn(θk)が、加算的な形で反映されてしまうことを意味する。
【0059】
そこで、このような影響を避けるため、レーダ視野角(FOV:Field Of View)内で全ての素子アンテナの特性が概ね一定値となるように補正処理(キャリブレーション)を施しておく。具体的には、いくつか既知の角度に目標をおいて角度推定を行い、真値と推定値との差を最小化するようにgn(θk)への補正係数を定める。これにより、キャリブレーション後の角度行列を、下記(12)式のように表すことができる。
【0060】
【数12】
【0061】
この状態で任意の手法で角度推定を行えば、その手法の最良の精度での推定値が得られる。ところが、装置を実際に利用している間にハードウェアの経時変化等によりキャリブレーション値がずれると、各受信アンテナ205への着信信号の振幅や位相が変化した結果が得られる。キャリブレーション値がずれる主な原因は、受信アンテナ205そのものの特性変化というよりも、後段のRF回路の特性変化であり、キャリブレーション誤差Cは下記(13)式のようにモデル化できる。
【0062】
【数13】
【0063】
すなわち、最初にキャリブレーションを行った後にキャリブレーション誤差が発生したときの受信信号w(t)は、下記(14)式のように表すことができる。
【0064】
【数14】
【0065】
(ESPRIT法による推定結果について)
ここで、ESPRIT法による推定結果について説明する。上述したように、このような状態で角度推定を行うと、推定値には誤差が含まれる。ここで、図5を用いて、Q(Quick)−ESPRIT法で角度推定を行った場合の計算結果について説明する。なお、Q−ESPRIT法は、例えば、特開2012−103132号公報に記載の「高速化ESPRIT法」と同様の手法である。
【0066】
図5は、Q−ESPRIT法で角度推定を行った場合の計算結果を示す説明図である。図5において、横軸は距離(bin index)、縦軸は推定角度(Estimated Azimuth)を示している。例えば、距離20m(28bin)であり、角度±3°の位置に、速度0km/hの2つの目標が存在するものとする。なお、図5の横軸の単位「bin」は、FFT(Fast Fourier Transform)の区切り(インデックス)を示しており、距離に相当する。28binは、例えば、距離20mに相当する。
【0067】
図5において、実線(グラフ501,503)は、キャリブレーション誤差がない場合の計算結果を示している。また、点線(グラフ502,504)は、受信アンテナ205b,205cに−0.75dBのキャリブレーション誤差が発生した場合の計算結果を示している。
【0068】
具体的には、グラフ501は、キャリブレーション誤差がない場合の角度+3°の位置の目標に対する計算結果を示している。グラフ502は、キャリブレーション誤差が発生した場合の角度+3°の位置の目標に対する計算結果を示している。グラフ503は、キャリブレーション誤差がない場合の角度−3°の位置の目標に対する計算結果を示している。グラフ504は、キャリブレーション誤差が発生した場合の角度−3°の位置の目標に対する計算結果を示している。図5の28binにおけるグラフ501,502(またはグラフ503,504)間の角度の相違に示すように、わずか0.75dBのキャリブレーション誤差が発生しただけで0.5°程度の推定誤差が生じることがわかる。
【0069】
(PRISM法およびMUSIC法による推定結果について)
次に、PRISM法およびMUSIC法による推定結果について説明する。
【0070】
図6は、目標が2つ存在する場合の角度スペクトラムを角度と距離に対して示した説明図である。図6において、図5と同様に、例えば、距離20m(28bin)、角度±3°の位置に、速度0km/hの2つの目標が存在するものとする。図6の(a)はPRISM法を用いて計算した角度スペクトラムである。また、図6の(b)はMUSIC法(FBSS(前後方空間平均)−MUSIC法)を用いて計算した角度スペクトラムである。図6の(a)、(b)の横軸は角度を示し、縦軸は距離を示している。
【0071】
図6の(a)、(b)において、角度スペクトラムが仮定した2つの目標位置に集約している場合、つまり、角度スペクトラムが2つの目標付近で点状に表示されているほど、高い精度で目標の到来方向が推定されていることを示している。図6の(a)の領域601において、横軸が±3°、縦軸が28binの付近に、角度スペクトラムが表示されている。また、図6の(b)の領域602においても、横軸が±3°、縦軸が28binの付近に、角度スペクトラムが表示されている。
【0072】
図6では、誤差の発生が把握しづらいので、図7に目標の存在する距離において図6の角度スペクトラム(a)、(b)を紙面上部から下部へ輪切りにし、横軸に角度(図6と同様)、縦軸にスペクトラム(図6のZ軸相当)を取って書き直したものを示す。図7は、距離が一定のときの角度スペクトラムを示す説明図である。図7において、グラフ701,702は、レーダから20m離れた±3°の位置に、2つのターゲットを置いた場合の、各手法による計算結果を示している。具体的には、グラフ701は、MUSIC法による計算結果を示している。グラフ702は、PRISM法による計算結果を示している。グラフ701,702のいずれも、ピークが±3°の位置からずれており、推定誤差が生じていることがわかる。
【0073】
(評価関数f(C,θ)について)
ここで、装置を運用している最中に信号処理でキャリブレーション誤差の発生を検出するためには、角度θに対する値がキャリブレーション誤差Cだけに反応して変化する評価関数f(C,θ)を用いる。一方、出荷時のキャリブレーションを行った後、エラーフリーモードベクトルa0(θ)の測定値、および、FOV(レーダ視野角)内の複数の角度θm(m=1〜M)に対する評価関数の計算値(参照値f(I,θm))をそれぞれ保存しておく。
【0074】
そして、動作中に角度θmの近傍の角度出力θkが得られた場合、評価関数f(C,θ)の算出値f(C,θk)を算出して、参照値f(I,θm)と比較を行い、この相違が事前に定めておいた閾値を超えた場合にキャリブレーション誤差が発生したものと判定する。なお、評価関数f(C,θ)において、キャリブレーション誤差Cの値自体は、入力されないし、導出もされない。キャリブレーション誤差が発生した場合は、警告を発したり、補正操作を試みたりすればよい。
【0075】
実施の形態1では、Q−ESPRIT法を用いた場合の評価関数の導出法について説明する。まず、キャリブレーション誤差が発生した状態の受信信号ベクトルをwとし、下記(15)式のように部分ベクトルを取得する(上記(14)式参照)。なお、以降の記述においては説明を簡単にするため雑音成分を無視する。
【0076】
【数15】
【0077】
ここでは受信アンテナ205の数を4としているので、w1、w2は、サブアレイ(受信アンテナ205a〜205c)、(受信アンテナ205b〜205d)からの信号である。次に、Cの要素が極端に1から外れていなければ、ESPRIT法の大前提である2つのサブアレイ間に下記(16)式の回転不変関係が成り立つ。
【0078】
【数16】
【0079】
これにより、J1CA0が以下の様にQR分解されたとすれば、上記(16)式は下記(17)式のように書き換えられる。
【0080】
【数17】
【0081】
ここで次の2つの行列からU1-12を計算して固有値分解すると、下記(18)式に示すように、VとΩが求まる。
【0082】
【数18】
【0083】
以上が、キャリブレーション誤差が存在する場合のQ−ESPRIT法のアルゴリズムである。
【0084】
(Q−ESPRIT法による評価関数について)
Q−ESPRIT法における評価関数は以下のように導出することができる。上記(17)式および(18)式を参照すると、下記(19)式に示すように、キャリブレーション誤差を含む角度行列CAが再生できることがわかる。ただし、簡単に予想できることであるから説明については割愛するが、ここで示した誤差を含んだ角度行列の表記は一例である。
【0085】
【数19】
【0086】
エラーフリーモードベクトルa0(θ)と上記(19)式とを用いることにより、下記(20)式に示す評価関数f(C,θ)を得ることができる。ここで、下記(20)式に示す評価関数f(C,θ)は、図1の推定部102において角度推定を行う際に得られる所定の行列U1-12(上記(18)式参照)を固有値分解した複数の行列V,Ωの組み合わせに基づく行列Wを用いて表される関数である。なお、Q−ESPRIT法では、rank(Rvv)=N−1と固定して角度推定を行うので、N=4であれば常に3個の推定角度が得られる。
【0087】
【数20】
【0088】
目標の角度としてθkなる推定値が得られた場合、上記(20)式を用いてθkに対応する評価関数f(C,θ)の値f(C,θk)を算出する。そして、算出した値f(C,θk)と参照値f(I,θm)と、を比較して、差分や比率などの相違が、予め定めた閾値を超えた場合にキャリブレーション誤差が発生したものと判定することができる。つまり、キャリブレーション誤差のない状態で計算・保存しておいた角度θmに対する評価関数の基準値f(I,θm)(Iは単位行列)と、θm近傍の到来角度θkの検出時に計算した評価関数の値f(C,θk)とを比較する。
【0089】
評価関数f(C,θ)は、到来角度とキャリブレーション誤差とに反応するから、f(I,θm)とf(C,θk)とを比較することによりキャリブレーション誤差の発生を検出できる。なお、参照値f(I,θm)は、算出値f(C,θk)と同様に、Q−ESPRIT法によって算出された値である。
【0090】
(キャリブレーション誤差の振幅成分の推定について)
上記(20)式から、明らかに下記(21)式が成り立つ。キャリブレーション誤差の大きさは、行列:C(A00H)CHの対角要素とエラーフリーモードベクトルa0(θk)とを用いて推定される。ここで、図1に示した検出部104は、上記(20)式のWWHの対角要素から得られる誤差に関する値に基づいて、誤差の発生した受信部105(受信アンテナ205)を検出することができる。具体的には、誤差に関する値は、例えば、下記(21)式の|c12〜|c42である。
【0091】
【数21】
【0092】
上記(21)式右辺に示すように、WWHの対角要素がキャリブレーション誤差の2乗に比例する。右辺の|c12〜|c42は、キャリブレーション誤差がない場合、全て1になる。ところが、キャリブレーション誤差があると、|c12〜|c42のいずれかの値は1とはならない。
【0093】
そのため、|c12〜|c42のうち、例えば、1とはならないものや、1との相違(例えば差分)が閾値以上のものや、それぞれ他の値と明らかに異なるものなどを、キャリブレーション誤差の発生した受信アンテナ205として特定できる。特定した受信アンテナ205を通知することにより、メンテナンス時における再度のキャリブレーション時に役立てることができる。
【0094】
また、図1に示した検出部104は、キャリブレーション誤差に関する値(|c12〜|c42)の平方根に基づいて、キャリブレーション誤差の振幅成分を検出する。具体的には、検出部104は、キャリブレーション誤差が生じている|c12〜|c42の平方根を算出することにより、キャリブレーション誤差の振幅成分を検出することができる。キャリブレーション誤差の振幅成分を通知することにより、メンテナンス時における再度のキャリブレーション時に役立てることができる。
【0095】
(位相誤差を考慮した場合のキャリブレーションの検出について)
キャリブレーションのズレが角度推定へおよぼす影響は、位相成分に比べて振幅成分の方が深刻であることが多いが、キャリブレーションのズレが大きくなると位相成分についても問題になる。ここで、図1に示した検出部104は、行列Wと、角度行列A0=[a0(θ1),…,a0(θk)]の一般逆行列と、に基づいて、誤差の値を検出する。下記(22)式に示すように、上記(19)式の行列CA0(=W)の右側からA0の一般逆行列(A0の上付き添え字+が一般逆行列を示す)をかけることにより、位相誤差も含めたキャリブレーション誤差Cの値を直接求めることができる。なお、一般逆行列は、擬似行列ともいう。
【0096】
【数22】
【0097】
これにより、キャリブレーション誤差Cの値を得ることができる。
【0098】
(キャリブレーション誤差の発生の検出例)
図8は、キャリブレーション誤差の発生の検出例を示す説明図(その1)である。図8の説明図は、上記(20)式を用いた場合のキャリブレーション誤差の発生の検出例を示している。図8において、横軸は角度を示し、縦軸は角度相関を示している。図8のグラフ801で横軸の位置がθmに対応する角度相関値は、エラーフリー時における真の角度θmに対応する評価関数の値f(I,θm)を示している。
【0099】
一方、グラフ802は、キャリブレーション誤差が生じている場合における角度相関を示している。真の角度θmに対し、キャリブレーション誤差Cが発生した後で推定された到来角度θkにおける評価関数の値f(C,θk)は、参照値に比べて低い値を示している。グラフ802は、キャリブレーション誤差の正/負に応じて、グラフ801の上/下にレベルがシフトする。角度推定装置100は、グラフ801,802との相違が閾値を超えた場合にキャリブレーション誤差が発生したものと判定する。
【0100】
このように、角度推定装置100は、運用中に得た受信信号から、角度θに対する値がキャリブレーション誤差Cだけに反応して変化する評価関数f(C,θ)によって得られる算出値f(C,θk)と、エラーフリー時の参照値f(I,θm)とを比較する。このため、角度推定装置100の運用中にキャリブレーション誤差の発生を自律して検出することができる。具体的には、受信信号の実際の到来角度が既知でない状態であっても、キャリブレーション誤差の発生を検出することができる。
【0101】
また、キャリブレーション誤差が発生した場合に警告を発してもよい。これにより、ユーザにキャリブレーション誤差の補正(修理)を促すことができる。また、キャリブレーション誤差が発生した場合、例えば、上述または後述の手段を用いて補正処理を行ってもよい。これにより、角度推定装置100による到来角度の推定精度が低下することを抑えることができる。
【0102】
(実施の形態2)
次に、角度推定装置100の実施の形態2について説明する。実施の形態1では、ESPRIT法によるキャリブレーション誤差の推定について説明したが、実施の形態2ではスペクトラム走査型の手法によるキャリブレーション誤差の推定について説明する。実施の形態2においては、実施の形態1と異なる部分について説明を行う。
【0103】
(スペクトラム走査型の手法による評価関数について)
Capon法、MUSIC法、プリズム法およびLP法といったスペクトラム走査型の手法(ESPRIT型以外の手法)における評価関数は、以下のように導出することができる。例えば、キャリブレーション誤差が生じた場合は、上記(10)式はキャリブレーション誤差を含んだ異なる式となる。
【0104】
ここで、キャリブレーション誤差が存在しないとき、図1に示した保存部103は、検出部104によって推定された各信号の入射角度θm(m=1〜M)と合わせて、角度毎にモードベクトルの測定値b0(θm)を保存しておく。さらに、モードベクトルは個々のアンテナ素子の角度θに対する特性を用いて、下記(23)式のようにモデル化できるので、先のデータb0(θm)を用いてモードベクトルのモデルb(θ)を生成し、同様に保存部103に保存しておく。gは、受信回路101(より具体的には、図2の受信アンテナ205a〜dからA/D変換器208までのアナログ回路)の総合特性である。
【0105】
また、検出部104は、動作中に推定部102によって推定された入射角度が、保存部103に保存された各信号の入射角度の近傍(近傍の定義は上述)の角度であった場合、該推定角度を上述のモードベクトルモデルに代入する。そして、検出部104は、角度行列W=[b(θ1),…,b(θk)]を生成し、これとエラーフリー時に得たモードベクトルモデルb0(θ)とを用いて、下記(24)式で定義される評価関数の値を算出する。勿論、下記(24)式のθは変数である。
【0106】
【数23】
【0107】
【数24】
【0108】
上記(24)式に示す評価関数f(C,θ)を用いて、θm近傍の到来角度θkの検出時に算出値f(C,θk)を算出することができる。この算出値f(C,θk)の算出値と、参照値f(I,θm)とを比較して、相違が予め定めた閾値を超えた場合にキャリブレーション誤差が発生したものと判定することができる。なお、参照値f(I,θm)は、算出値f(C,θk)と同様に、スペクトラム走査型の手法によって算出された値である。
【0109】
(キャリブレーション誤差の発生の検出例)
図9は、キャリブレーション誤差の発生の検出例を示す説明図(その2)である。図9の説明図は、上記(24)式を用いた場合のキャリブレーション誤差の検出例を示している。図9において、横軸は角度を示し、縦軸は角度相関を示している。図9のグラフ901は、エラーフリー時(参照値)を示している。一方、グラフ902は、キャリブレーション誤差が生じている場合を示している。グラフ902は、キャリブレーション誤差の正/負に応じて、グラフ901の上/下にレベルがシフトする。角度θmの近傍の角度θkにおけるグラフ901,902との相違が閾値を超えた場合にキャリブレーション誤差が発生したものと判定される。
【0110】
このように、スペクトラム走査型の手法によっても、評価関数f(C,θ)によって得られる算出値f(C,θk)と、エラーフリー時の参照値f(I,θm)とを比較することにより、キャリブレーション誤差の発生を検出することができる。このように、実施の形態2についても実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0111】
(実施の形態3)
次に、角度推定装置100の実施の形態3について説明する。実施の形態3では位相誤差を考慮したキャリブレーション誤差の検出について説明する。実施の形態3においては、実施の形態1,2と異なる部分について説明を行う。
【0112】
まず、図1に示した検出部104は、各受信アンテナ205からの出力信号のうち、互いに異なるアンテナ由来の2つの信号の組み合わせを取り出す。そして、検出部104は、組み合わせ毎に、組み合わせを構成する受信部105(受信アンテナ205)の間隔と、組み合わせから得られる2つの信号を用いて推定部102で算出される推定結果とに基づいて、2つの信号間の空間位相を算出する。また、検出部104は、組み合わせ毎に算出した空間位相の相違(空間位相差)に基づいて受信回路101の特性に対する重みの誤差の発生を検出する。
【0113】
具体的には、N本の受信アンテナ205による着信信号から1組(互いに異なる2本)ずつの信号を取り出して、N2組のモノパルスレーダとして各モノパルスレーダに着信した信号間の空間位相を計算する。そして、各組の位相のズレから誤差行列(上記(13)式参照)の位相成分を推定することができる。具体的には、p番目とq番目のアンテナ(アンテナ間隔をdpqとし、αpq=dpq/λ)を有するモノパルスレーダから得られる目標の角度をχpqとし(言うまでも無いが、目標が複数ある場合、χpqは各目標の角度をベクトル的に合成した値となる)、(p、q)の組み合わせ方を適当な番号r=1…N2で区別すれば、位相の相違zrについて下記(25)式を得る。
【0114】
【数25】
【0115】
αrはdrによって定まる定数であるから、位相に関して、下記(26)式を得る。
【0116】
【数26】
【0117】
上記(26)式は、N2組分、得られる。キャリブレーション誤差がなければ、各χrは同じ値をとるはずである。そのため、各χrがばらついているのであれば、位相誤差(キャリブレーション誤差)が発生しているものと推定できる。そこで、例えばパラメータベクトルφを導入して、評価関数ε(C;φ)を下記(27)式によって定義し、同式が最小となるφの値を最小二乗問題として求めれば、その解が位相誤差の推定値となる。下記(27)式では、展開の一例も示す。
【0118】
【数27】
【0119】
上記(27)式により、キャリブレーション誤差における位相誤差を検出することができる。実施の形態3によれば、角度推定装置100の運用中にキャリブレーション誤差(位相誤差)を自律して検出することができる。具体的には、受信信号の実際の到来角度が既知でない状態であっても、上述の如き操作で位相誤差を検出することができる。
【0120】
(実施の形態4)
次に、角度推定装置100の実施の形態4について説明する。実施の形態4では、雑音固有ベクトルEnを用いたキャリブレーション誤差の検出について説明する。実施の形態4においては、実施の形態1〜3と異なる部分について説明を行う。
【0121】
図1に示した検出部104は、推定部102によって推定された各信号の入射角度が所定の入射角度(例えばθk)である場合、保存部103によって保存されたモードベクトルの測定値に基づいて、評価関数による評価値を算出する。評価関数は、キャリブレーション誤差および各信号の入射角度に応じて変化する評価値を算出可能な関数である。
【0122】
評価関数は、重みの誤差がない状態で複数の入射角度θm(m=1〜M)についてMUSIC法を適用して得られる雑音固有ベクトルから成る行列En(煩雑なので、以下雑音固有ベクトルと記す)と行列W(例えば上記(20)式参照)とによって表される。
【0123】
行列Wは、例えば、保存部103によって保存されたモードベクトルの測定値と、キャリブレーション誤差および各信号の入射角度に応じて変化する評価値を算出可能な関数と、に基づく行列である。行列Wは、例えば、下記(28)式によって表すことができる。Vは、推定部102における角度推定の際に用いる所定の行列(例えばU1-12(上記(18)式参照))を固有値分解した固有ベクトルから得られる行列である。また、Ωは、所定の行列(例えばU1-12)の固有値である。
【0124】
また、例えば、Lは、J1およびJ2と同様に行列から特定の要素を取り出すベクトルである(上記(16)式参照)。Lを表す01×2は1行2列の行ベクトルを示し、1はスカラーを示す(なお、Lの列数はV-Hの行数と等しく定め、どれか一つの列の値のみを1とする。この例は最終要素を1としたものを示す)。また、例えば、m行n列の行ベクトルを示す0m×nによりLを表すことも可能である。この場合、どれか一つの列の値のみを1とすることも可能であるし、どれか一つの列の値のみを1以外の他の値とすることも可能である。
【0125】
【数28】
【0126】
例えば、行列Wは、複数の受信部105間における各信号の空間位相差に基づいて各信号の入射角度を推定する際に用いる所定の行列U1-12(上記(18)式参照)を固有値分解した時に得られる複数の行列の組み合わせV,Ωに基づく行列とすることができる。また、行列Wは、上述した実施の形態2における上記(23)式および上記(24)式で定義される角度行列とすることもできる。
【0127】
本実施形態における評価関数は、f(C,θ)=EnHなる式によって定義される。検出部104は、この評価関数と、雑音固有ベクトルEnと、行列Wと、に基づいて、キャリブレーションの誤差の発生を検出する。
【0128】
検出部104は、予め保存部103に記憶されている雑音固有ベクトルEnを、推定部102によって推定された各信号の入射角度が、所定の入射角度である場合に保存部103から取得してもよい。また、検出部104は、推定部102によって推定された各信号の入射角度が所定の入射角度である場合に、雑音固有ベクトルEnを算出してもよい。
【0129】
具体的には、実施の形態4では、行列W(=A0)と、キャリブレーション後に複数の角度m(m=1〜M)についてMUSIC法を用いて雑音固有ベクトルEnを求め、これらを保存しておく。雑音固有ベクトルEnは、キャリブレーション誤差がない状態において算出される値である。また、雑音固有ベクトルEnは、例えば、「受信アンテナ205の数」から「信号数」を減算した値が1以上のときに限って算出可能な値である。信号数とは、目標物の数である。例えば、雑音固有ベクトルEnは、受信アンテナ205が4本であれば、目標の数が3つ以下の場合に算出可能なベクトルである。
【0130】
雑音固有ベクトルEnは、MUSIC法を用いて算出した雑音固有ベクトルである。MUSIC法は、信号の共分散行列に固有値分解を適用して、該行列を、信号固有空間を張るベクトルと雑音固有空間を張るベクトルとで表記し、信号部分空間と雑音部分空間との直交性を利用して目標の角度推定を行う手法である。
【0131】
また、下記(29)式には信号共分散行列Rvvに固有値分解をして得られる関係式を示す。Esは信号部分空間を張る固有ベクトルを要素とする行列であり、Enは雑音固有空間を張るベクトルを要素とする行列であり、Λsは信号部分空間の固有値であり、σ2は雑音電力である。なお、下記(29)式において、vは着信信号を示し、sはシグナルを示し、nはノイズを示す。
【0132】
【数29】
【0133】
ここで、周知の如く、信号部分空間を張るベクトルからなる行列Esは信号の角度行列と並行、すなわち、Es‖A0であり、一方、Es⊥Enであるから、En⊥A0であり、したがってキャリブレーション誤差がない場合には、Esn=0となる。そのため、キャリブレーション誤差がない場合は、f(I,θ)=EnH=En0H=0となる。一方、キャリブレーション誤差が生じている場合は、f(C,θ)=EnH=EnCAH≠0となる。このように、f(C,θ)が0であるか否かにより、キャリブレーション誤差を検出することができる。
【0134】
実施の形態4によれば、角度推定装置100の運用中にキャリブレーション誤差の発生を自律して検出することができる。具体的には、受信信号の実際の到来角度が既知でない状態であっても、キャリブレーション誤差の発生を検出することができる。
【0135】
上述した実施の形態1〜4に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0136】
(付記1)複数の受信部を含み、キャリブレーションによって設定された重みを用いて前記複数の受信部に入射された各信号を重み付けする受信回路(信号処理部を含む)と、
前記受信回路によって重み付けされた各信号に基づいて前記各信号の入射角度を推定する推定部と、
前記受信回路の特性に対する前記重みの誤差がない状態における前記受信回路の特性を反映したモードベクトルの測定値を保存し、前記誤差がない状態における、前記誤差および前記各信号の入射角度に応じて変化する評価値を算出可能な評価関数による前記評価値の算出結果と前記推定部による前記各信号の入射角度とを対応付けて保存する保存部と、
前記推定部によって推定された前記各信号の入射角度が、前記保存部によって保存された前記各信号の入射角度近傍の値に対応する角度である場合、前記保存部によって保存されたモードベクトルの測定値と前記評価関数とに基づく評価値を算出し、算出した評価値と前記保存部によって保存された評価値との比較に基づいて前記誤差の発生を検出する検出部と、
を有することを特徴とする角度推定装置。
【0137】
(付記2)前記推定部は、前記複数の受信部間における前記各信号の空間位相差を用いて前記各信号の入射角度を推定し、
前記評価関数は、前記推定部における角度推定の際に用いる所定の行列を固有値分解して得られる複数の行列を組み合わせることによって生成される行列Wを用いて定義される関数(下記(30)式)であることを特徴とする付記1に記載の角度推定装置。
【数30】
前記(30)式において、Cは前記誤差、θは前記推定部によって推定された入射角度、a0(θ)は前記モードベクトル、Hは複素共役転置を示す。
【0138】
(付記3)前記検出部は、前記(30)式のWWHの対角要素から得られる前記誤差に関する値に基づいて前記複数の受信部のうちの前記誤差の発生した受信部を検出することを特徴とする付記2に記載の角度推定装置。
【0139】
(付記4)前記検出部は、前記誤差に関する値に基づいて前記誤差の振幅成分を検出することを特徴とする付記3に記載の角度推定装置。
【0140】
(付記5)前記検出部は、前記(30)式の前記行列Wと、角度行列A0=[a0(θ1),…,a0(θk)]の一般逆行列と、に基づいて前記誤差の値を検出することを特徴とする付記2〜4のいずれか一つに記載の角度推定装置。
【0141】
(付記6)前記受信回路は、前記複数の受信部によって受信された各信号を増幅するアンプ、アンプからの出力信号を復調するミキサ、ミキサからの出力をデジタル信号に変換するA/D(Analog to Digital)変換器、および信号処理部を含み、
前記推定部は、前記受信回路によって重み付けされた各信号の角度スペクトラムの走査に基づいて前記各信号の入射角度を推定し、
前記保存部は、前記推定部によって推定された前記各信号の入射角度θm(m=1〜M)に基づく前記モードベクトルの測定値b0(θm)とともに、このデータを用いてモードベクトルモデルb(θm)(角度は変数扱い)を生成、保存しておき(下記(31)式)、
前記検出部は、前記推定部によって推定された入射角度が、前記保存部によって保存された前記各信号の入射角度θmの近傍の角度であった場合、θmに代えて該推定角度θkを前記モードベクトルモデルb(θm)に代入し、角度行列W=[b(θ1),…,b(θk)]を生成し、前記評価関数(下記(32)式)に基づいて評価値を算出することを特徴とする付記1に記載の角度推定装置。
【数31】
【数32】
前記(31)式において、θは前記推定部によって推定された入射角度、gは前記受信回路(より具体的には受信部から前記A/D変換器までのアナログ回路)の総合特性、jは虚数単位、φは空間位相、Tは転置を示す。前記(32)式において、Cは前記誤差、b0(θ)は前記モードベクトル、Wは角度行列、Hは複素共役転置を示す。
【0142】
(付記7)複数の受信部を含み、キャリブレーションによって設定された重みを用いて前記複数の受信部に入射された各信号を重み付けする受信回路(信号処理部を含む)と、
前記受信回路によって重み付けされた各信号に基づいて前記各信号の入射角度を推定する推定部と、
互いに異なる2つの受信部からの信号の組み合わせ毎に、前記組み合わせを構成する受信部の間隔と、前記組み合わせから得られる2つの信号を用いて算出される前記推定部による推定結果と、に基づいて前記組み合わせの空間位相を算出し、前記組み合わせ毎に算出した空間位相の相違に基づいて前記受信回路の特性に対する前記重みの誤差の発生を検出する検出部と、
を有することを特徴とする角度推定装置。
【0143】
(付記8)複数の受信部を含み、キャリブレーションによって設定された重みを用いて前記複数の受信部に入射された各信号を重み付けする受信回路(信号処理部を含む)と、
前記受信回路によって重み付けされた各信号に基づいて前記各信号の入射角度を推定する推定部と、
前記受信回路の特性に対する前記重みの誤差がない状態における前記受信回路の特性を反映したモードベクトルの測定値を保存する保存部と、
前記推定部によって推定された前記各信号の入射角度が所定の入射角度である場合、前記保存部によって保存されたモードベクトルの測定値と、前記誤差および前記各信号の入射角度に応じて変化する評価値を算出可能な関数と、に基づく行列W(下記(33)式)を算出し、算出した前記行列Wと、前記重みの誤差がない状態における複数の入射角度θm(m=1〜M)についてMUSIC(MUltiple SIgnal Classification)法により得られる雑音固有ベクトルEnと、所定の関数(下記(34)式)と、に基づいて前記誤差の発生を検出する検出部と、
を有することを特徴とする角度推定装置。
【数33】
【数34】
前記(33)、(34)式において、Vは前記推定部における角度推定の際に用いる所定の行列(U1-12)を固有値分解した固有ベクトルから得られる行列、Ωは前記所定の行列の固有値、Hは複素共役転置、Cは前記誤差、θは前記推定部によって推定された入射角度を示す。
【0144】
(付記9)複数の受信部を含み、キャリブレーションによって設定された重みを用いて前記複数の受信部に入射された各信号を重み付けする受信回路によって重み付けされた各信号に基づいて前記各信号の入射角度を推定し、
前記受信回路の特性に対する前記重みの誤差がない状態における前記受信回路の特性を反映したモードベクトルの測定値を保存し、前記誤差がない状態における、前記誤差および前記各信号の入射角度に応じて変化する評価値を算出可能な評価関数による前記評価値の算出結果と、推定した前記各信号の入射角度とを対応付けて保存し、
推定した前記各信号の入射角度が、保存した前記各信号の入射角度近傍の値に対応する角度である場合、保存したモードベクトルの測定値と前記評価関数とに基づく評価値を算出し、算出した評価値と保存した評価値との比較に基づいて前記誤差の発生を検出する、
ことを特徴とする角度推定方法。
【0145】
(付記10)複数の受信部を含み、キャリブレーションによって設定された重みを用いて前記複数の受信部に入射された各信号を重み付けする受信回路によって重み付けされた各信号に基づいて前記各信号の入射角度を推定し、
互いに異なる2つの受信部からの信号の組み合わせ毎に、前記組み合わせを構成する受信部の間隔と、前記組み合わせから得られる2つの信号に基づいて算出される前記入射角度の推定結果から空間位相を算出し、前記組み合わせ毎に算出した空間位相の相違に基づいて前記受信回路の特性に対する前記重みの誤差の発生を検出する、
ことを特徴とする角度推定方法。
【0146】
(付記11)複数の受信部を含み、キャリブレーションによって設定された重みを用いて前記複数の受信部に入射された各信号を重み付けする受信回路によって重み付けされた各信号に基づいて前記各信号の入射角度を推定し、
前記受信回路の特性に対する前記重みの誤差がない状態における前記受信回路の特性を反映したモードベクトルの測定値を保存し、
推定した前記各信号の入射角度が所定の入射角度である場合、保存したモードベクトルの測定値と、前記誤差および前記各信号の入射角度に応じて変化する評価値を算出可能な関数と、に基づく行列W(下記(35)式)を算出し、算出した前記行列Wと、前記重みの誤差がない状態における複数の入射角度θm(m=1〜M)についてMUSIC(MUltiple SIgnal Classification)法により得られる雑音固有ベクトルEnと、所定の関数(下記(36)式)と、に基づいて前記誤差の発生を検出する、
ことを特徴とする角度推定方法。
【数35】
【数36】
前記(35)、(36)式において、Vは角度推定の際に用いる所定の行列(U1-12)を固有値分解した固有ベクトルから得られる行列、Ωは前記所定の行列の固有値、Hは複素共役転置、Cは前記誤差、θは推定された入射角度を示す。
【符号の説明】
【0147】
100 角度推定装置
101 受信回路
102,221 推定部
103 保存部
104 検出部
105 受信部
201 発振回路
202 方向性結合器
203 パワーアンプ
204 送信アンテナ
205(205a〜205d) 受信アンテナ
206 ローノイズアンプ
207 ミキサ
208 A/D変換器
209 信号処理部
222 角度行列再生部
223 参照値テーブル
224 スペクトラム比較部
301 CPU
302 メモリ
303 インタフェース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9